※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.52 取り戻すべきIDENTITY

ビルドレイザーのエミは、倒壊寸前の建物にもたれかかるビルドスパークルをせせら笑う。

「あははははっ.....!何が天才なんだ、何が開発者だ?何も大したことないじゃないか!」

ハイパービームジャベリンにエネルギーを回し、より一層光の刃が輝きを増す。だがここで振りかぶらず、エミは背後に現れた気配にゆっくりと目を向けた。青い大太刀。間違いない、エミが忌み嫌う"奴"だ。

「お前はあの時の、気持ちの悪い女....!」

そう、蒼衣を纏いし忍者のガンダムAGE-1"ナイトシーカー"が、この戦場に馳せ参じていたのだ。舞夜はじっとビルドレイザーを見つめ、状況を理解すると、即座に太刀を滑らせた。

「私の事はどう捉えようと構いません。しかし――」

突然の出来事にエミは目を見開いた。何とたった今の瞬間で、ハイパービームジャベリンを斬り落とされ、更にナイトシーカーに割り込まれ切っ先を突きつけられているではないか。

「彼の想いを踏みにじる事だけは、断じて許さない」

「な、何だ今のは.....瞬間、移動とでも言いたいのか!?」

たじろぐエミを意に介さず、ナイトシーカーは突きを放つ。ビルドレイザーは何とか躱したものの、ナイトシーカーが同じタイミングで太刀を薙ぎ払い、アンテナを切り飛ばした。ビルドレイザーは両手にクレイバズーカを装備、拡散砲弾を連射して逃走するだけの時間稼ぎに出る。だがそれはナイトシーカーには意味を成さないものだった。

「人間でない私に、そのような手は通用しない」

ナイトシーカーは拡散弾が命中する瞬間に、ホログラムと化して消失。直後にビルドレイザーの眼前に現れ、スパロクナイを投げつけてクレイバズーカを爆砕させた。

「うっ.....!?この女はいつもいつも、私の邪魔ばかりしてッ!嫌いなんだよお前はッ!!」

エミはとうとう激昂し、ハザードのリミッターを自ら外してしまった。ビルドレイザーは忽ち紫の雷光を放ちながら、激しく噴煙する。完全なる暴走を、自らの手で起こしたのだ。リョウマは本能的に危険を察して、舞夜に退避するように促したが、彼女は一歩も引く様子を見せずむしろ、相手のハザードを解除させようとまでしていた。

「舞夜、下がれ!相手をするだけ危険だ!」

「ですが、私と彼女は同じ方法でハザードを身に宿している。それなら」

「君と同じ!?一体何だって言うんだ!?」

舞夜はチラリとビルドスパークルを見、小さく頷いた。

(今どうしても、あなたをやらせる訳には行かない.....少しでも何かに結び付けられれば)

ビルドレイザーが猛ダッシュして、ビームソードで斬りかかる。するとナイトシーカーは地面をスライディングし、斬撃軌道の真下を潜り抜けて太刀で袈裟斬りを仕掛けた。しかしビルドレイザーも反射してビームソードでこれを受け止めると、相手の腹を蹴って飛び上がりキマリスヴィダールのシールドをビルド。特殊弾頭"ダインスレイヴ"を何度も撃ち込む。ナイトシーカーはアクロバティックな挙動で回避し続け、ビルの屋根から跳躍。両腕のシグルスレイヤーをアクティブにし、相手の胴を斬り開いた。しかし、ビルドレイザーは接触する寸前に右手で刃を纏めて掴んでおり、そのせいでナイトシーカーは両腕を拘束されていた。そしてビルドレイザーがシールドの先端を、ナイトシーカーの眉間に向けた。ダインスレイヴが鈍い光沢を放つ。そこから間髪入れず接射した。

「く......うぅっ.....!!」

舞夜の反射が僅かに速かった。ナイトシーカーは被弾する前に顔を逸して、メインカメラを完全に破壊されるのを防いだのだ。しかし、顔を半分も吹き飛ばされており、依然不利なのは否めない。だが両目を失って戦えなくなるよりは、遥かに良いだろう。

「エミ・アルファインス....あなたをこの手で断罪します」

ナイトシーカーの右目が煌々と輝く。

 

「居た.....!リョウマッ!!」

瓦礫の山から、ドラグハートチャージドが駆け下りた。それもF91-Mと、漆黒のガンダムヴィダールも伴って。

「避けろ弘!!」

リョウマの叫びに弾かれる形で、弘は頭上を見上げる。赤熱化した刃が脳天から迫りくるではないか。

「邪魔をしに来たつもりかァ!!いいだろう、この私が相手になってやる!」

プラフスキーフィールドを瞬時に展開し、斬撃を撥ね退け逆に殴り返して、地面に叩き落とした。

「上等だ!」

だが唐突に黒い風がドラクハートチャージドを突き飛ばし、出鼻を挫かれる。弘はすぐさま機体を飛び起こして、闇討ちをして来た敵を探ろうとしたが、そうする間もなく相手から正体を露わにした。

「よう、お前の相手は俺がしてやろう」

十字に刻まれた眼を持つMS――ガンダムウヴァルスタークが大型チェーンソーを地面に突き立て、指先で弘を挑発した。

「テメェまでここに来るなんてな....まとめて相手してやるよ!」

ドラクハートチャージドは僅かに身をかがめてから跳躍、手甲からビームサーベルを発しながら拳を振り下ろす。しかしウヴァルスタークはひょいと躱すと、カウンター気味に左手の爪を振り上げて相手の顔面を劈かんとした。だがドラクハートチャージドの反応が先行し、蹴りで受け流してもう一段回し蹴りを刺し込み、ウヴァルスタークをよろけさせた。

「む.....?全くお前は、少しずつ俺を驚かせてくれるねぇ」

飄々とするグロックに、弘は舌打ちをする。いつまでもこの男は、余裕を崩さないのが気に食わなかった。

「全然平気そうにしてやがる.....!今度ばかりはそうは行かせねえ!!」

ドラクハートチャージドとウヴァルスタークの戦いを横目に、シューインはエヴィルイフリートをビルドスパークルへと進ませていく。だがその足元から火薬の爆ぜる音が聞こえ、ピタリと歩みを止めた。漆黒のガンダムヴィダールが、ハンドガンの銃口を向けている。硝煙が吐き出されているということは、今の銃撃は彼によるものだと見て取れる。

「ビルドが2体もいるなんて訳が分からねーが、今はそんな事はどうでもいい。お前は俺がぶっ倒す」

カイが静かに、かつ怒りを込めて告げる。ガンプラダイバーズを、血で血を洗う争いの世界へと変えた、その張本人を許せなかった。何より、それを喜々として利用する人間など生かしておけないと考えるのが、彼なのだ。

「ふざけるなァ!!お前が私に敵うと思っているなら勘違いも甚だしい!」

シューインの感情の昂りがそうさせるのか、エヴィルイフリートから噴出される黒霧がますます強まっている。

(挑発にあっさり乗りやがったな。が、相手はハザード.....いきなり使わされるのは癪だな)

しかし、カイの指は躊躇ってなどいなかった。

「だったらこっちの.....ヴィダールフェンサーオリジンにもお誂え向きの"隠し玉"がある――Psycho-Drive、PHASE2」

ヴィダールフェンサーオリジンの装甲に紫の光線が走る。アンテナも赤い炎が揺らめくかのように輝き、双眸が強く発光した。次の瞬間――一瞬の刹那すらも近くできぬ合間に、赤い斬撃がシューインの目の前を通り抜けた。そして知覚した頃には、ヒートサーベルの刃が宙を舞い地面に突き刺さっていた。

「こんなの.....有り触れた手でしかない....!そんな物で私をやろうとは」

「悪いな」

ヴィダールフェンサーオリジンが相手の目に、ハンドガンを突きつけた。

「それだけじゃ、ないのさ」

バァン!とけたたましく乾いた音がこだまする。銃口から放たれた弾丸がエヴィルイフリートのモノアイに着弾する刹那、赤い雷光が迸った。真横で見ていたリョウマは思わず瞼を閉ざしそうになるが、目の前で起きる異常現象を前に視線が釘付けになる。雷光を放ち続ける弾丸は、エヴィルイフリートの頭を一瞬で粉々にしてしまった。しかし、それだけに留まらないのをシューインは思い知らされる事となる。

「生意気なァ....ビルドシステムで再生させれ.....ば.....何っ!?どうなっている!?」

エヴィルイフリートの首から、頭部が再形成されようとする。だがそれは途中で何かに押し戻されるかの様な形で、阻害され再生その物が不可能となった。

「ブラッディ・バレット....そんな物まで持ち出していたとは....」

驚くリョウマ。ヴィダールフェンサーオリジンは、クルクルとハンドガンを回しフロントアーマーに装着して、ビルドスパークルに手を差し伸べる。

「前に比べると状況が遥かに悪かったんだ。持ち出しとかねえとろくな事になりそうも無かったんでね」

「他のダイバーには使うなよ。俺はすぐに舞夜と合流する。お前は他の奴らと一緒に――」

「言われなくても分かってんだよ。狩りの始まりと行こうじゃないか」

ビルドスパークルとヴィダールフェンサーオリジンは背中合わせに立ち、ほぼ同時にバーニアを全開にした。

「ビルドアップ!」

ビルドレイザーとナイトシーカーがもつれ合う中へ突入、形成したGNシザービットを放ち、前者を弾き飛ばした。

「諒馬!」

「情けない所を見せちまったな」

ビルドスパークルとナイトシーカーが左右に分かれ、ビルドレイザーを挟み撃ちにする形で回り込む。ビルドレイザーも両手にツインバスターライフルをビルドし、即座に照射しながら薙ぎ払わんとした。だがビルドスパークルもナイトシーカーも、縄跳びの要領でツインバスターライフルの火線を飛び越え、砲身を蹴り落とした。

「二人がかりでやろうってのかい!」

「文句があっても聞いてはやらないけどな!」

ビルドスパークルの右腕に緑の輝きを纏わせ、相手の胴にアッパーを刺した。ビルドレイザーは素早く反応して、同じく高トルクモードをビルドして防ぎ切るが、背後からナイトシーカーにバックパックを斬り裂かれ、ハザードを強制解除させられた。

「ここまでやられてもまだ戦う気ですか。あなたがこの状況を認識しない限り、救済できません。それでも良いのですか?」

ナイトシーカーが太刀の切っ先をビルドレイザーの眉間に向け、宣告する。

「あの時に何もしないで、今更救済だと!?お前たちに何が救える!?何を守れる!?貴様達が能天気なせいで、何も戻らなくなった!救うなら今すぐハジメ君を、皆を返せッ!!」

再びハザードを起動させ、ビルドレイザーはナイトシーカーに襲いかかった。ナイトシーカーは咄嗟に太刀を真横に構え、攻撃を押し返しシグルスレイヤーを突き出してビルドレイザーを弾き返す。このままではまた押されるのは時間の問題と見たリョウマは、覚悟を決める。彼女を止める為ならば、悪魔にでも何にでもなるしか無い。

「やるしかないか.....ハザードビルドアップ!」

 

交流広場第1区画。ヴェインとの戦いを終えたエスが戻って来たが、先程とは180度違い人の気配すらもなく、静まり返っていた。

「リョウマさんはまだ戻った来てないみたいだな......すぐに合流しないと....!」

手元にミニウィンドウを表示させ、リョウマがいるであろうバトルエリアを検索しようとしたが、その手が止まり別の交流広場へと向かおうとした。何かが彼を突き動かしている。そんな気がしたのだ。

同じ頃、交流広場第5区画。建物同士の合間にある路地裏を、ヴェインが蹌踉めきながら歩いていた。全身が斬りつけられたかのような傷にまみれており、意識すらも薄れかかっていた。最早死に体も同然だ。

「俺の望む世界を....奴らに閉ざされてたまるものか......!」

執念で命を繋ぎ止めているのだろうか。彼の足取りは少しずつ重くなり、とうとう力が抜けその場に倒れ込んだ。その折、こちらへ足音が近づいてきた。誰が来たにせよ、この有様を見せる訳には行くまい。世界の導き手に立つべき者としての自覚が、ヴェインを立ち上がらせる。しかし、そんな淡い願望すらも簡単に打ち砕かれるのだった。

「お前、は――」

ヴェインが大きく目を見開く。彼の前に立つは、徹=アルマーニュだった。そして、徹の後ろからリゲルも現れヴェインはもう、どこにも逃げ場がなくなったも同然の状況だと、認めざるを得なくなった。

「いやはや、残念だったよ。君ならば計画を無事に遂行できたはずなのにね」

「白々しい事を.....貴様さえいなければ、私は今頃――!」

ヴェインに睨まれるが、徹は一笑に付した。

「君はあの時からちっとも変わっていないね。安心したよ、と言うべきかな。でもそれが命取りだったのは、自覚すべき事のように思えるが....違うかい?」

ゆっくりとヴェインの隣を歩きながら、続ける。

「君の力は、確かに君自身のカリスマ性に由縁するものがある....そしてν-Typeとしての力も絶大だった。しかしそれは同時に、君そのものの価値に直結していた。それが全て失われた時、即ち君の価値が消滅した時から、焦りに突き動かされたのかあらぬ方向へと、走ってしまった。やれやれ、君の能力は既になくなっているのにね」

「何が言いたい....!」

「忘れたかな?君は君自身の計画ではなく、この僕の計画を勧めていた、という事実を。フリューゲルオメガとレイ・ブルームーンの力。これを揃えるために、君をわざわざ解放したんだよ。そしてもう、君は用済みとなったのさ」

徹がリゲルに合図を送ると、静かにこの場から立ち去る。そしてリゲルはヴェインの眉間めがけ、銃爪を引いた。完全なる死を仮想世界では迎える事はない。しかし、ヴェイン――百崎 翼の意識自体が持たなくなっていれば、その限りではない。そう、現実の彼は二度と目を覚ますことがなくなったのだ。ヴェインは額を抑えながらのたうち回り、うめき声を上げる。頭から止めどなくながれる、紅い雫はやがて彼の周囲に小さな水溜りを作った。薄れゆく意識の中、呪詛を吐く。怒りと動揺と絶望が、彼の胸中を渦巻いていた。しかしそれも長くは持たない。

「私がいなければ、貴様は何も為せなかった......!私を、利用しただと.......?が.....ッ!ふざけた事を抜かす.......な.....!殺、し、て.....や、る........殺、し、て、や、る........!私が望む世界に......辿、り、着、く........為に......」

太陽に向かって手を伸ばし続けるが、間もなくして体が光に包まれた。そして彼の意識が完全に消えるのと同時に、ダイバー体もまた消滅する。ヴェイン・メビウス――百崎 翼と言う男は、この世から消え去ったのだ。

「遅かった.....!?」

何かに導かれるように、エスが現場に到着した。だが既に彼の姿はどこにもなく、エスは全てを悟り天を見上げる。

「こんなの、有りだなんて......信じられるか......!」

これが人の死なのか。何でこんなにも早く、本物の死を実感しなければならないのか。エスには分かるはずもない。しかし、この感触に嘘は全く無かった。憎き相手だとは言え、胸が締め付けられる。これが更に多く繰り返される事になれば、現実も仮想世界も全く違いがなくなってしまう。それでも戦争が続くのは、彼らがその実態を知らないからであろう。世界はもう、エス達だけではどうにもならない所まで来てしまったのだ。

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