※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.53 復讐のBEYOND

「成長し続けるとは言うが、ハザードにはまだ追いつかんか」

ウヴァルスタークが大型チェーンソーを振り抜き、ドラグハートチャージドを弾き飛ばす。すぐに反撃に出られようとも、軽く往なしては斬りつけをくりかえしながら、以前優位を保っていた。

「うるせぇッ!!」

振り上げられたチェーンソーを殴り飛ばし、ドラグハートチャージドは素早く蹴りつけ、顔面に拳を叩き込んだ。しかしながらウヴァルスタークは未だに平然としており、シールドバッシュを決めた後にライフルを放ちドラグハートチャージドをダウンさせた。

「しかし惜しかったよなぁ.....?」

グロックがしみじみと言うのが気に食わず、弘が噛み付く。

「あ?何がだよ!?」

「お前の親友はもう、その手を血で染めてるかも知んないってな?」

「んだと.....?テメェ望に何させやがった!?」

ドラグハートチャージドが全速力でタックルをぶつけ、ストームブレードを振り下ろした。すかさずウヴァルスタークもチェーンソーで受け止め、押し返して弾いた。

「俺は何もさせちゃあいない。奴が、それを選んだんだよ」

「そんな嘘が通じると思ってんのか....!」

「嘘だと思うならそれでもいいんだけどよ。そんなのより、自分の心配をした方がいいんじゃないのか?」

ウヴァルスタークがチェーンソーを振り上げ、ドラクハードチャージドの脳天を斬り裂さんとした。万事休すか。ドラグハートチャージドがミノフスキーフィールドを展開しようとした、その時。

「はぁあああああーーーッ!!」

ガキン、と金属が切断される音が響いたかと思うとチェーンソーの先端が虚しく宙を舞い、地面にぐさりと突き刺さった。何が起きたのか把握したグロックは、ニヤリと唇を歪める。

「なるほど、ね.....むしろ駆けつけない方がおかしいんだがな」

振り抜いたグラビディエッジを構え直すF91-M。スワンは強くウヴァルスタークを見据え、感覚を研ぎ澄ました。そして。

「――全力を以ってお相手します!」

F91-Mはミノフスキーブースターを展開し、勢いをつけて袈裟懸けに斬りかかる。ウヴァルスタークはそれをひょいと躱したものの、グロックは違和感を覚えた。

「完全に避けたはずなのに、ダメージが.....ちと動きが浅かったか」

今度はウヴァルスタークがライフルを連射し、F91-Mを牽制しつつリアアーマーからロングソードを引き抜いた。F91-Mは一太刀で銃弾を斬り落とし、刀身を低く構え懐へ飛び込む。

「やぁあああッ!!」

斬撃を潰さんと、ウヴァルスタークがロングソードで斬り結ぼうとした。しかし何が起こったのか、自分がF91-Mの刀身の方へ引き寄せられてしまい、見事に一閃されてダウンさせられた。

「何だ、これは.....えぇい、全く厄介なもんを使って来やがる...!」

一方のスワンは、呼吸を乱さずただ真っ直ぐに相手を見ている。

(あの二人もこの世界を守る為に戦っている....私もその力になれるなら....!)

F91-Mは空中へと飛翔し、カワセミの如く急降下した。グラビティエッジにエネルギーを集中させ、唐竹割りを見舞う。

「どうせ間に合いやしないか」

ウヴァルスタークは左肩のシールドをパージ、弾け飛ぶ勢いを利用して身代わりにし、爆発させた。

「くっ......はっ....!?」

爆破の直後にスワンはF91-Mを後退させたが、煙の中から飛び出してきたMSに一瞬気を取られた。ウヴァルスタークではなく、バンデット。F91-Mは速やかにリアアーマーからビームサブマシンガンを装備して、相手の顔面を砕いて索敵を急ぐ。ところが。

「そこだッ!!」

突然ドラグハートチャージドが背後の空間に蹴りを放った。否、彼は確かに敵の居場所を掴んでいた。黒い影が背後に来るのを見抜いていたかの様な動き。グロックは眉をピクリと動かし、ドラクハートチャージドを凝視した。

「おいおい。一体どうなってんだ、こりゃ。しかも俺が何をしようとしてんのか、一手先まで読んでるってのか.....?お前、もしかして...なるほどなぁ」

「テメェが何をしてこようが真正面から叩っ壊す!」

蹴りの勢いをそのままに、腰をひねりストレートを叩き込んだ。そこから間髪入れず、猛烈なまでの拳打のラッシュまで浴びせていく。ウヴァルスタークはただ腕を交差させて防ぐしかなく、初めて防戦一方に持ち込まれていた。

「コイツぁ、並の奴にはならないとは思ってたがここまでだったとはな....ぬぉっ?!」

ウヴァルスタークはドラクハートチャージドの右手を掴み、握りつぶそうとする。だがそうするよりも速く、ドラクハートチャージドがミドルキックを差し込み、これを未然に防いだ。これだけの動きをしているならば、暴走しているのではと疑わざるを得ないが、弘は己の意思を完全に保っていた。必ず、どんな事があってもグロックを――結城 秀晃を倒す。リゲルが、望が手を血に染めるよりも早く、この復讐に蹴りをつけるんだ。そしてリョウマ達と共にガンプラダイバーズの平和を取り戻す。弘の中に揺らめく意志が激しく燃え滾っていた。

「もうテメェに好き勝手やらせねぇ....!」

「面白い事言ってくれるな?」

ウヴァルスタークの十字の眼が瞬く。すると、建物の陰や上空から続々とMSが集まり始めた。言うまでまもなく、全て彼の手先だ。しかし弘は狼狽えもせず、ただ真っ直ぐと連中を見据える。そしてドラクハートチャージドを天高く跳躍させた。チャージアーマーから粒子のスプラッシュを迸らせ、両腕にエネルギーを集中させていく。ビームマシンガンを連射しつつ突撃するガーベラ・テトラを一瞥すると、素早く後退し即座に臨界寸前に達した、エネルギーを放出した。

「こ、これは......うわああああ!?」

もはや天災と表現せざるを得ない、怒涛の火炎と激流がガーベラ・テトラを飲み込み、その勢いを殺さぬまま巨大な龍の形を成して、大地を駆け巡る。スワンは迷わずF91-Mを飛び退かせるが、この荒々しい景色を呆然と眺めるしかなくなった。

「これが、ドラグハートの....いや、弘さんの力だって言うの....?」

 

一方、カイのヴィダールフェンサーオリジンは、執拗に付け狙ってくるエヴィルイフリートを相手にしながら、残る戦力を削り続けていた。

「野郎、目が見えてないのにこっちの動きを"視"てやがる...!」

相手の頭部は、しばらく復元出来ない様に破壊したはず。しかしエヴィルイフリートの太刀筋にさしたる変化は見られず、カイは不気味さを感じていた。

「あれだけの攻撃を受けてもやるんだ....とんでもない執念...いや、狂信がそうさせるのか」

互いの剣がぶつかり合い、再び離しては斬り結ぶ。実力は伯仲していると言う事だが、カイとしてはシューインがハザードに頼り切っている結果だと、内心唾棄した。自身の心と命を犠牲にして、本能が理性を都合よく利用して戦う。ハザードと言うのは、人間の尊厳を蹂躙して傀儡へと作り変える物に相違ない。カイはそう断じる。

「人が物に使われるなんて、とんだ笑い話だな。いいや、本当ならちっとも笑えないが、な.....」

ヴィダールフェンサーオリジンがサイドアーマーから、杭を放ち間合いを取る。射出された杭はエヴィルイフリートに次々と突き刺さり、直後に爆破した。炸裂する刀身を射撃兵器へと転身させた、バーストフェンサーと呼ばれるそれは食らうだけで、致命傷を与えられる代物である。しかし、カイは一切落とせたと言う確信を持てず、硬い表情のままモニターを睨んだ。

(アレでもまだ動こうってのか.....化け物かよ)

アントニオのドラグニルが戦場へ滑り込み、4連装ミサイルランチャーを順次発射する。

「おい、カイ!何をぼさっとしてんだ!」

「うるせえ。奴を抑えられる所まで抑えるぞ。コイツを当てられるだけの隙を作れ!」

ヴィダールフェンサーオリジンがフロントアーマーから、ハンドガン"マスタング"を引き抜く。それを見たアントニオは、やや呆れたふうに笑い、ドラグニルを前進させた。

「そういう事かよ!」

メガヒートアックスを構え、目一杯に力を込めて薙ぎ払う。エヴィルイフリートは自らの左腕を犠牲に、メガヒートアックスの斬撃を防ぐと機体の内部から眩いばかりの光を放った。

「野郎ッ!?済まねえ、カイ!」

たった一瞬の出来事。エヴィルイフリートがドラグニルを拘束したまま爆発四散し、瓦礫にまみれた戦場を更地にしてしまう。辛くもビルにめり込んだお陰で、何とか強制退出させられずに済んだカイだが、余りに雑なやり口に呆れざるを得なかった。

「死ぬことがねえから、自爆まで視野に入るんだろうが....クソ...!」

 

ハザードを起動させたビルドスパークルが駆け出し、フロントアーマーに形成したシザーアンカーを射出、巻取りの勢いを利用してビルドレイザーとの距離を一気に縮め、飛び蹴りを浴びせる。ビルドレイザーも空中で受け身を取り、意趣返しの如くレンチメイスを振り下ろした。ビルドスパークルは即座に避け、ガンダムハンマーを振り回し相手を叩き落とすのだった。

「舞夜、一度離脱しろ。戦力を安定させる」

リョウマの指示に舞夜は頷き、ナイトシーカーをバトルエリアから転移させた。エミはナイトシーカーが消えるのを目の当たりにし、口許をニヤリと歪ませる。

「カッコつけてるつもりか?這いつくばってるしか能がないのにさぁ.....!」

だがリョウマは何一つ返す事なく、静かに相手を睨む。

(ハザードを解除するタイミングに合わせて、後退すれば奴に対して不利を背負うことはない....)

ビルドスパークルがビームソードを低く構え、走り出した。

「痛めつけられに来ようってのかい!」

ビルドレイザーの姿が次第に揺らぐ。それでもリョウマはレバーを前に倒したまま、ビルドスパークルをダッシュさせた。完全に姿を消したビルドレイザーは素早く相手の背後へ回り込み、ハイパービームジャベリンを振り上げる。完全に相手の背中はがら空き。向こうは何を考えているのかは知らないが、これで手っ取り早く決定打を与えられるなら、それに越したものはない。

「無様な最期を迎えるんだなッ!リョウマ・アルキメデス!」

しかし。エミはこの時全く予想もしていなかった。ビルドスパークルだけを見ている彼女には、到底気づくこともあるまい。リョウマはただ一言、「どうかな」と呟くのだった。ハイパービームジャベリンがまさに振り下ろされようとした、その瞬間。

「モニターが......死ぬ!?何だ、一体!?」

突如ビルドレイザーのモニターがブラックアウトした。エミが咄嗟に操縦の手を止めた、その隙を突く形でビルドスパークルが反撃に転じた。

「熟、俺は天才だよ....!」

バックパックにミノフスキードライブをビルドするや否や、光の翼を勢いよく放射してビルドレイザーを遥か後方へ弾き飛ばす。リョウマはすぐさまハザードを解除し、急ぎ追撃へと向かった。

「ビルドアップ!これで退いてくれ!」

ビルドスパークルの右腕に2連装のガトリングガンをビルド、雨あられの如く弾頭を撒き散らし相手に復帰の余裕を与えず、蜂の巣にした。自分の作った機体を撃ち抜くのは心が傷まないわけでもない。しかし、そんな事以上に何としても彼女を呪縛から解き放たなくては、と言う使命感めいた思いが勝っていた。

 

「皆、無事か!?」

ビルドスパークルが先程の地に現れると、弘達やA.ν-Tの面々が一斉に集まって来た。とは言え皆揃ってボロボロである。

「さっきのビルドもどきはどうなった?」

カイに問われ、リョウマは対処した方法をそのまま伝えた。その上で。

「言うまでもなく、彼女は奴らに扱われている状態だ。ハザードだけじゃあない、ビルドシステムまでも使いこなしていたんだ....あのまま放っておくと、恐らく更に状況が悪くなる。その前に何としても、彼女の機体を本人ごと鹵獲するしかない」

撃破ではないのだと、スワンは小さく安堵の息をつく。その矢先、クレッセント・ブルームーンからの通信が入ってきた。

「はい。こちらF91-M、スワンです......え!?」

唐突に声を上げるので、視線が一気にスワンに集中した。彼女は彼女で、少し気まずそうに頭を下げて通信を続ける。やがて話が終わると、スワンはやや低めのトーンでリョウマに告げた。

「ヴェイン・メビウスが、死んだそうです....!」

「何だと......!?こうしちゃいられない、ブルームーンに戻るぞ!」

これは完全にリョウマの想定外であった。徹という人物故に、利用し続けると見ていたがまさか事もあろうに、殺害に及ぶとは。エスが殺したのでは、等と憶測が頭を過るがリョウマは首を振って、交流広場へと転移するのだった。

 

クレッセント・ブルームーンにて。リョウマ達が帰還したと言う報せを受けて、エスはゆっくりとシートを立った。だがその折、リョウマがブリッジに入ってきてしまい、エスは思わず黙り込んだ。

「ちょうど良かった、百崎が殺されたってのはどういう事なんだ?」

開口一番に聞かれる。やはりと言うべきか、余りに想定外の事が起こればリョウマとて、事情を知りたがるものだろう。

「ケリがつく前に自爆して、嫌な予感がしてたから探して見れば....殺されてた」

やり切れぬ面持ちのエスに、リョウマはこれ以上何も言わず空いたシートに腰掛けた。

「とにかく、お前が無事に帰ってきた事が一番の救いだ。目標だって達成してるんだから、気に病む必要は無い。ただ、奴が殺されたとなれば状況は変わる」

リタが向き直り紅茶を一口飲んで、リョウマに今後の方針を問うた。

「状況が変わるとはどういう話ですの?少なくとも大きな敵の一つは、削れたのでしょう?」

「問題は彼らにとって、百崎がどれ程の価値があったか、だ。もし道化程度でしかなかったら....エスを動かす為の手段に過ぎないとしたら?」

リョウマの推察にその場にいる一同が言葉を失う。ブリッジを静寂が包むが、突然雰囲気を突き破る存在が姿を現した。

「おいリョウマ!やべー事になってんぞ!」

「はぁ....何だ急に?騒々しいんだよ」

リョウマに冷ややかな視線を向けられるが、弘は全く意に介さず、彼の腕を掴んでブリッジから連れ出した。しかしリョウマは全く要領を得ず、強引に腕を引き剥がす。

「ったくお前っていつも強引過ぎなんだっつーの!んで、結局何があったってんだ?説明ぐらいしろよ」

「じゃあ何でアイツらお前の事で喧嘩してんだよ。スワンちゃんとか舞夜だけじゃあねえ、ジプシーの奴だって何故かここにいるしよ。どうなってるのか聞きてえのはこっちだ!」

弘に胸ぐらを掴まれるが、彼の目は今にも泣きそうだった。これは怒りと言うより羨望じみた物だろう。リョウマはわざと大きく溜息をつき、弘の手を押し退けてドックへ急いだ。

 

ドックはいつもに比べ、少しざわついていた。何しろ見覚えのないモビルスーツが、ここに着艦していたのだ。漆黒の鎧に、爪のような返しが付いた翼を持つガンダムタイプ。ブリッツガンダムにマガノイクタチストライカーの組み合わせと見え、ネブラブリッツガンダムの特徴そのものである。

「どうしてあなたがここに居るんですか!あなたはアーネストの人ではなかったですか!?」

ここまで敵意を剥き出しにして問い詰めるスワンの姿は、誰として見たことがない。故に他のメカニック達は呆然と眺めるしかなく、止める者は誰一人としていなかった。ネブラブリッツらしき機体の主、と見られる女はゴーグル型のデバイスを額に上げ、涼し気な顔でスワンを見下ろしている。ウェーブのかかった黒いセミロングの髪と、首から下をピッチリとしたパイロットスーツの出で立ち。ジプシー・ノアールその人である。

「そうは言うけど、私は自分の信じる正義の為に戦っているの。だから決まった勢力に居続けることは、基本的に無いわよ」

「そんな屁理屈....!あなたはコウモリですか!裏切るのに何の抵抗もないなんて!」

「あら?でも丁度いいチャンスと思わない?少しでも戦力が欲しい頃だったんじゃなくて?」

痛い所を突かれたスワン、何も言い返せず口を閉ざした。しかし受け入れがたいのに変わりはない。そこへリョウマが現れ、ようやく加勢が来たと思った――のだが。

「何事だ?さっきから言い合いばっかで....!」

「リョウマさん!あの人をとても信じられません!また裏切るかも知れない....!」

スワンの視線をたどり、ジプシーに目が向く。リョウマは眉間を押さえ「最悪だ」と漏らして手すりに背を預けた。

「アンタも入って来るタイミング考えろよな。こうなる事は分かってたろうに」

ジプシーはバツが悪そうに目を逸らしたが、リョウマに「狙ってたのか」と言い当てられ苦笑する。

「すみません。先行偵察の交代が今しがた行われたもので」

この二人の会話には何処にも殺伐とした雰囲気がない。それがスワンを一気に混乱へと突き落とした。

「え、え.....ぇええええええ!?」

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