※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.56 罪と十字架を背負うHERO

クレッセント・ブルームーンでも、シャンブロの接近に対応を強要されていた。

「何て物を持ち出していますの....!?このままでは撃墜は免れないですわ!Iフィールドとミノフスキー・クラフト最大出力、よろし?」

リタの指揮にウォレスは正気を疑った。そんな事をしてしまおうものなら、艦で一度に供給しうるエネルギーを使い果たしてしまい、ますます他方からの被弾が免れない。

「そんな無茶出来ませんよ!ただでさえエネルギーを食ってしまう物を、2つも同時にやろうって!」

「ここで全員やられる訳には行きません....!少しでも生き延びていれば、援護に回ってもらえます!」

「了解....!今はそっちに賭けるしかない!左舷、超大型Iフィールドバリア、起動準備!機関室は同時にクラフト作動だ!」

シャンブロの喉奥から、殺意の光が迸る。やがてそれは、真っ直ぐに三日月の方舟目掛け突き進んだ。弾速が通常のメガ粒子砲のそれとは遥かに異なり、とてつもない速度でクレッセント・ブルームーンへ迫る。Iフィールド展開まで残り10秒。この瞬間にも直撃する可能性は、ほぼ確定と言っても差し支えない。しかしそこへ、飛来する物体があった。

「あれは.....?」

リタはこちらへ飛んでくる物の正体に目を丸くした。G-セルフのパーフェクトパックを無理矢理移植したような、シルエットフライヤー。航空機はやがて、メガ粒子の塊とクレッセント・ブルームーンの間へ滑り込みパーフェクトパックを起動させる。バインダーが左右に開き、ホログラム状のリフレクターフィールドを発生。Iフィールド展開の4秒前と言う見事なタイミングで、メガ粒子砲を受け止め素早くエネルギーへと変換していく。

「あの天才って奴が寄越してくれたのか!へへっ。これなら楽勝だな!」

ウォレスはクルーからの準備完了の合図を受け、クレッセント・ブルームーンのIフィールドを起動する。こぼれ弾を跳ね返すだけで済んだお陰か、ミノフスキー・クラフトまでは使用する必要がなくなった。これならば航路次第ではシャンブロの間合いを離れられる。

「流石、天才の名は伊達ではないですわね」

リタはリョウマの判断に感嘆し、安堵の息をついた。シャンブロの砲撃をほぼ全て吸収したシルエットフライヤーは、そのまま相手の頭上へと向かい、今度はパーフェクトパックのバインダーを前面に展開した。砲身にエネルギーが充填されていくに従い、バックパックとシルエットフライヤー自体も赤く染まる。リョウマはタイミングを見計らい、ビルドスパークルを上昇させて距離を取った。

「さて、さっきハラハラさせられた分、盛大に仕返しさせてもらう!」

シャンブロが首を引っ込める刹那。シルエットフライヤーから発せられた光が降り注ぎ、邪龍の首を付け根から寸断した。炎に飲み込まれゆくシャンブロ。リョウマは一瞬だけ安堵して再び表情を険しくした。あれ程のMAを引き出してまで、仮想世界で勝ち取りたい物とは、一体何なのだろうか。明らかな条約違反行為を是とする、この風潮は全くもって許せなかった。

「あのシャンブロを、ああやって仕留めるとは....流石だ。水崎」

「これも全部お前の差し金か?」

背後から突き刺さる気配。もはや振り向くまでもなく、シューインなのだと察した。エヴィルイフリートがゆったりとした足取りで、ビルドスパークルの前に来、眼球状のモノアイをぼうっと光らせる。

「全てはプレイヤー達の望みのままさ。我々は単に、起爆剤を用意したに過ぎない」

「常人なら仮想世界で戦争しようだなんて考えたりはしない。競技と殺し合いは全く違う」

「何だって構わない。仮想世界が人類進化の新たなステージとなる、それでいいじゃないか!」

エヴィルイフリートがバックパックからヒートサーベルを抜き放ち、斬りかかってきた。ビルドスパークルはコピペシールドで跳ね除け、押し返した後にビームマグナムを放った。エヴィルイフリートも素早く左へ飛び退き、両腕からビームバルカンをばら撒きながら、ジグザグ軌道を描きつつ再突進する。ビルドスパークル、軽く後ろへステップするとコピペシールドの裏側に、ビームキャノンとミサイルをビルド。高誘導弾とビームによる弾幕でエヴィルイフリートの足を止める。だがエヴィルイフリートが高く飛び上がり、その身に黒い瘴気を宿し始めた。

「ハザードォオオオオッ!!!」

「何でこうも容赦なく扱えんだよ....!」

ビルドスパークルが真横へ退避した直後、エヴィルイフリートの放つ斬撃が地面に突き刺さり、爆音と共に砂煙を巻き上げた。エヴィルイフリートが煙を突き破り、目にも留まらぬ速さでビルドスパークルに迫る。ヒートサーベルで斬り裂かんと、両腕を振り上げた。ビルドスパークルも咄嗟にビームサーベルで弾き返そうとするが、これでは間に合わないと判断し、ビームマグナムのEパックを投げつけた。ヒートサーベルとかち合う瞬間、鼓膜を突き破りそうな程の爆発と衝撃が広がり、両者諸共吹き飛ばしてしまった。ハザードを起動していたエヴィルイフリートは無事だったものの、ビルドスパークルは右腕と右脚を失ったまま、リゾートホテルらしき土地に転がった。

「ビルドアップ.....!はぁ....はぁ.....やっぱ俺には賭けは向かないようだ....」

腕と脚の残存するフレームをパージし、新たなパーツをビルドすると、そのまま合体させて起き上がる。だがその頃には、エヴィルイフリートがすぐそばまで接近していた。

「賭けに出たようだが、お前は尽く運が悪いよなぁ....ヒャハァッ!!」

エヴィルイフリートはビルドスパークルの顔面めがけ、ヒートサーベルの切っ先を振り下ろす。それよりも早くビルドスパークルは反応して、相手の胴体を蹴りつけよろめかせる。そして右腕にビルドした、ドリルクラッシャーで正拳突きを見舞った。

「それがどうした!今度こそお前をここで、倒して見せる!それだけだ!」

「出来るものならやって見るんだな!ハザードを使えば不可能ではなくなるぞ?」

ドリルクラッシャーとヒートサーベルが打ち合い、火花と閃光が散らされる。だが、生身の反応速度だけで戦うビルドスパークルの方が、防戦一方となってゆく。リョウマはハザードを使うタイミングを虎視眈々と狙っていた。それまでは秘しておかねば、"ある作戦"を実行する前に瀕死になっていてもおかしくない。

「ハザードを使わずとも....!」

ビルドスパークルの右腕の武器が、ドリルクラッシャーからGNソードⅢへと換装される。3つの銃口から粒子を集束させ、極太のビームを薙ぎ払い立て続けに、両サイドアーマーにビルドしておいた、クスィフィアス3を発射。2度に渡ってヒートサーベルの再生を阻害した。しかし。

「たかがそれだけの事で、この私を止められると思うなよッ!!」

エヴィルイフリートは有ろう事か、機体構造を無視する角度に仰け反りながら弾丸を避け、そのままシームレスに体勢を整えつつ、こちらへ接近するではないか。リョウマは舌打ちし、素早くコンソールを叩く。

「何て奴だ....だったらこれで!」

突然カッとビルドスパークルが輝きだし、シューインは何事かと眉をひそめた。エヴィルイフリートがビームニードルを叩きつけようとする間に、ビルドスパークルから力場が発生しコントロールを奪った。

「うぐっ.....?そんな小賢しい真似ッ!!」

「お前が相手なら、どんな手を使ってでも!」

ビルドスパークルは勢いよく跳躍し、GNソードⅢで斬り抜けて身を翻すと、背中から一突きして地面に叩きつけた。とは言えこれだけの攻撃を加えても、相手はハザードによって圧倒的な防御力を手にしている。決定打とはならなかったが、リョウマもそれは承知の上だった。地に伏していたエヴィルイフリートは、やはり何事もなかったかのように起き上がり、ヒートサーベルを再生させながら斬り掛かってくる。ビルドスパークルも即座にビームサーベルを抜き放ち、最上段から食らいつく刃を弾き返した。しかし向こうも間髪入れず、あらゆる方向から斬撃を加え始め、こちらもまたそれに対し応じざるを得なくなる。

「お前もいい加減に認めたらどうだ?」

「何を!」

「とぼけるなァ!この戦争を引き起こした、原因の一つだとな!それに、百崎社長に拾われて生きてきた命だろう!忠誠を誓う気はないのかァ!!」

「ふざけるな!俺はこんなふざけた戦争を終わらせる為に戦ってんだ!戦争を手段にしてるのはお前達アーネストだろう!!ガンプラダイバーズを作ったのだって、こんな事の為なんかじゃない!」

剣戟は激しさを増し、やがて鍔迫り合いへと持ち込まれる。

「そう言いながら貴様は戦っているんだぞ?何者をも超える力を振りかざしてな....?」

「お前がいるからだろ!科学を殺し合いの道具にしか扱えない、お前たちが....!」

「だが君もこうなる事は予見していた」

「何だと!?」

エヴィルイフリートがビームサーベルを叩き落とし、素早く斬り払いダウンを奪った。

「仮想世界であれば、人の命は失われない。しかもガンダムという作品を題材として使えば、何が起こるか予想はつくはずだ!その結果がこの始末さ!だが君はその事実に気づいていながら、己の力の誇示したさに開発を進めた!」

「だとしても....!俺はこんな事の為だけに、力を尽くしてきたんじゃない!」

 

MAの撃退を完了したドラグハートチャージド以下、3機が現場に到着する。リゾートホテルを模した景色だが、辺り一面を瓦礫が散乱しており見る影もない。

「何だよこれ.....てかリョウマはどこに居んだ....?」

「あっ....!?あそこに!」

ミナのトライアンフヴィータの指差す先、ビルドスパークルらしき影が見えた。しかしそのすぐ近くには、禍々しい瘴気を放つMSも居た。弘とスワンはその姿を認めるや、機体に急加速をかけた。リョウマが危ない。そう直感していたのだ。

 

エヴィルイフリートはむんずとビルドスパークルのアンテナを掴み、強引に持ち上げる。

「だが現実は非情だ....いくらお前がそう宣った所で、この世界のどこにお前を称賛する人間がいる?誰がお前を助けてくれる?結局、お前は何も報われぬまま終わるしかないんだよ!ヒーロー気取りも甚だしい!」

「それでも俺は....!ヒーローを張り続ける....!称賛なんて要らない、ただ俺は....仮想世界を、希望と歓びを胸に歩いて行ける世界にする!その為にこの力を使って来た!それが独善だろうが偽善だろうが、関係無い!」

ビルドスパークルの右手が、エヴィルイフリートの腕を引き剥がした。そして勢い良く蹴り上げ、昏倒させるとリョウマは意を決する。

「俺はこの世界の未来を創る為なら、どんな力だって乗り越えてみせる!ハザードビルドアップ!」

ビルドスパークルの全身を黒い霧が覆い尽くし、各所のセンサーを激しく輝かせた。これにはシューインは鼻で嗤い、エヴィルイフリートを立ち上がらせる。

「そうやってお前は、尚も破滅の力に頼ろうとするのか?」

だがリョウマは一切動じず操縦桿を引き抜くと、ポケットから取り出したグリップ型のデバイスを差し込んだ。そして、警告表示とリミッター解除用の最終セーフティスイッチが、グリップに現れた。

「ハザードビルドアップ―― オーバーフローッ!!」

ビルドスパークルが纏っていた、瘴気が更に濃くなり電気まで帯び始める。 後少しで合流しようかと言う所で、これを目の当たりにした弘達は絶句した。

「アイツ.....何やってんだ....!?」

特にスワンは、リョウマを案ずるあまり衝動に駆られ叫びを上げてしまう。

「そんなっ.......駄目ぇええええっ!!!」

そんな彼女の叫びはリョウマにも聞こえていたが、この戦いを終わらせる方が先決だと振り切って、目の前の事に集中する。

「スマッシュブラスター!!」

ビルドスパークルが天に向け、高々と掌を掲げた。するとどこからとも無くパーツが集まり始め、続々と結合しながら剣の形を成していく。更には、ハザードによって発せられる瘴気すらも吸い上げ、手元でビルドされてゆくそれは強い色彩を放ち始めた。そして完成したのは、バスターソードとビームバズーカを組み合わせたような、大型携行兵器であった。それだけではない。ビルドスパークルの周囲に真紅の鉄塊が現れ、スマッシュブラスターからエネルギー供給を受けると、それぞれが手脚を模した形状へと変形した。そして、ビルドスパークル本体も両手脚を排して新たな装甲を身に纏う。スマッシュブラスターを手に取り、最後にドッキングした背中の一対のマント型の翼をはためかせ、紅き戦士へと変身を遂げたのだ。アンテナの青く表示された箇所も、等しく赤へと塗り替わった。ビルドスパークルガンダム[ラピッドスマッシャー]。これがこの姿の名である。

「その程度の変化で私を止めようなどと!」

エヴィルイフリートがビームバルカンを掃射しながら、バーニアを全開にし突撃する。ヒートサーベルによる袈裟斬りが命中したかと思いきや、ビルドスパークルは一瞬で相手の真横を取り、逆にスマッシュブラスターで昇竜斬りを喰らわせた。

「は、速い.....!?」

しかしシューインの反応が更に追いつかなくなる。気がついた頃にはビルドスパークルの打拳を受け、ホテルに深くめり込まされた。たったの一撃で耐久値を大幅に減らされ、シューインは初めて、リョウマに対して動揺させられる。

(この威力....暴走時のシミュレーション値と全く同じ.....それでも奴は理性を保っていられるというのか!?)

ビルドスパークルのリョウマは、Gコンタイプのデバイス"ハザードエクステンダ"を握り直し、実戦投入の手応えを感じつつあった。

(ろくな実験もせずに使ってみたが、同じハザード相手なら有利は取れる.....後は"作戦次第"だけどな)

ビルドスパークルが大きく踏み込み、脱兎の如く跳躍すると最上段に構えたスマッシュブラスターを叩きつけた。またしてもエヴィルイフリートは防御が間に合わず、まともに喰らい胸部から左大腿にかけて深々と裂傷を負わされる。

「えぇい....!貴様ァ!!」

「うっ....!?」

エヴィルイフリートが意趣返しと言わんばかりに、右腕に発振させたビームニードルを叩き込もうとするが、ビルドスパークルは既の所で上体を反らしてこれを回避、カウンターキックで差し返した。そこから更に、スマッシュブラスターで袈裟斬り、横薙ぎそして軽くジャンプしての縦回転斬りを浴びせる。ここまでの猛攻なら、勝機は見えて来たのではあるまいか。この戦いを見守る者達はそう期待していた。ところが、再び状況が転じる。それは、ビルドスパークルが急速接近から突きを繰り出そうとした時だった。

「フハハッ.....フーーーーハハハハハハハハハッ!!残念だったな、水崎 諒馬ァ!!」

いきなりエヴィルイフリートが身を縮め込めたかと思うと、大きく全身を広げレーザーを放射した。これにはリョウマは目を丸くし、咄嗟にレバーを引くものの完全な回避とはならず、ビルドスパークルがその場に転倒する。

「奴め、もう対策を構築したのか....!」

「お前の新型兵器のことは、全て織り込み済みなのさ.....恨むなら、己の人望の無さを恨むんだな!」

エヴィルイフリートは両手のヒートサーベルに、ありったけの力を込めてスマッシュブラスターごと叩き斬らんとした。ビルドスパークルも素早く、スマッシュブラスターとビームシールドの2段構えで受けるが、相手の剣圧と怨念の凄まじさに押されつつあった。

二人の戦いを固唾を呑んで見守るスワンだが、とうとう我慢の限界を迎え、F91-Mを飛び立たせようとする。だがそこへ、ブリッツガンダムらしきMSが虚空から姿を現した。

「な....あなたは一体....!向こうの新手ならば...!」

F91-Mがグラビティエッジに手をかけようとした矢先、聞き覚えのある声がコクピットに木霊する。

「今ここであなたが行っても、みすみす落とされに行くようなものよ。分かっていて?」

「じ、ジプシー・ノアール!一体今までどこに....!」

「アーネストに呼び出されたのよ。契約はまだ残っているから、最後の作業を手伝って来たわ。それに、ジプシー・ノアールは向こうでの通名だから、これからはシャノアール・エスプリーク、と呼んでもらえると嬉しいわね」

ジプシー改めシャノアールの発言を、弘も聞き落とさなかった。

「やっぱりアンタ、裏切ったんだな.....!?何でリョウマについてくような真似したんだよ!?」

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