※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.61 AVENGERの慟哭

「強がって一人でやろうと言うのか」

エンペラーブルートのリゲルは口角を釣り上げた。その顔にはヒビが走っており、翡翠の光が時折漏れている。グロックが彼に何をしたのかは容易に想像できてしまうが、弘には知る由もない。ただ、これまでに無いほど強力なプレッシャーを放ち続けるリゲルに、どう打ち勝つのかを考えるので精一杯だ。

「お前と俺の事なら、俺達で蹴りをつける!」

ドラグハートチャージドがダッシュ、弾幕をプラフスキーフィールドで弾きながら、跳躍するとストレートを放った。しかしエンペラーブルートはゆらりとした挙動で避け、再び手首から鉄の礫を吹き付ける。間一髪で反応が間に合い、プラフスキーフィールドで防ぐが次の行動に繋ぐ前に叩き落されてしまった。

「クッソ.....!あの腕伸びんのか....!」

エンペラーブルートの両腕はただでさえMSにしては大きいのだが、関節を伸長させることでリーチまで広げられるのだ。その上指先には、希少金属で錬成された爪を備えている。

「相変わらずだ、お前は何も知らなさ過ぎる。なのによくここまで生きてこれたもんだよ。運だけは誰よりも良かったからか?じゃあ、今度は行かせてもらう」

エンペラーブルートがバーニアを全開、背面から巨大な槍を手に取り運動エネルギーを上乗せに、ドラグハートチャージドを貫いた。

「うがぁああああッ!?」

モビルトレースシステムを使っている関係上、弘の腹部に鋭く、かつ重い激痛が襲い掛かり絶叫する。その勢いを殺さぬままエンペラーブルートは、空中へ飛び上がり山なりの軌道を描きながら急降下。地面に叩きつけた挙げ句に引きずり回し、目の前のビルに放り投げた。幸いにもチャージアーマーにプールしていた、プラフスキー粒子によって機体は修復されたが、弘自身のダメージは更に重なり虫の息となる。

「やはりその程度の力で、俺の邪魔をしようとしたのか。ガッカリだよ」

エンペラーブルートがゆっくりとした足取りでドラグハートチャージドに歩み寄り、手首のマシンガンを突きつけた。

「だから言ったじゃないか。君は俺がいなければ何も出来ない!君はどこまでも愚かだからね!親が殺された事まで、頭の中から捨て去ってしまったんじゃないかな?しかし不思議だよなぁ....?子供の頃から俺たちは比べられてきた。親たちは何も比べなかったけど、他の皆は君を選んでいた.....強いだの面白いだの何だのッ!!けど俺は悔しくても、親友が楽しく過ごしているなら何でも良かった!なのにお前は!!やりたいようにやって好きなように生きて!!俺の事なんてちっとも見向きもしなかった!!何が助けるんだ?復讐するなって?お前にあの時諭されてようやく気づいたよ.....お前の方が救いようが無いってさ!!」

リゲルの増幅された殺意が、銃弾に乗せられる。豪雨のような鉄塊がひたすらドラグハートチャージドを撃ち抜いていく。もう弘の意識は限界を迎えつつあった。それでもなお、リゲルの殺意はとどまる事を知らず、銃撃を一切やめない。やがて弾切れになったのに気づくと、リロード時間までの暇つぶしのつもりなのか、ドラグハートチャージドの頭を掴んで持ち上げ、鳩尾めがけ執拗に殴りつけ始めた。

(そんなに.....お前に恨まれてたのか.......なんで気づかなかったんだ、俺は..........)

弘は生気が消えかかった瞳で、エンペラーブルートを見つめる。これが望が長きに渡って懐き続けてきた感情だったとは。弘にとっての望は、真にかけがえのない親友だった。互いに助け合って、辛い時を乗り越えながら楽しく生きてきた。そう感じていたのは、弘だけなのか。諦観の念が弘の心を支配する。しかし、僅かに何かが輝き始めていた。

(俺とお前は.....誓ったんじゃねえか......。そうだよな......俺、今更思い出しちまった.....苦しんで来た分、それ以上に最高の人生を作ろう.....ってよ......!)

それは、弘と望が高校卒業の日に誓った言葉。苦しみや悲しみ、悔いは最後まで消えなかったとしても、それをぶっちぎりで超えてしまうくらい、満足出来る最高の人生を作り上げよう。この言葉が彼に再び火を点ける。

エンペラーブルートの拳が迫るその時。

「今.....?へぇ、まだ動けるのか」

リゲルは面白くなさそうに舌打ちした。エンペラーブルートが振るった拳を、ドラグハートチャージドが掌で受け止めていた。サイズと出力差は歴然だが、何故かびくともしない。

「まだ......終わっちゃいねえよ。やっぱりテメェをここで止めなきゃ.....例え奴のでも命を奪えば、二度と引き返せなくなる.....!お前にそんな事、させたくねぇんだよッ!!」

チャージアーマーからスプラッシュが迸る。粒子が瞬く間に傷口を塞ぎ、ツインアイの輝きも取り戻されてゆく。そして何より、弘の身体全体を黄金の輝きが包み始めていた。

「復元した.....!?どうなってる!?」

「今は、テメェに負けられねぇええええッ!!」

ドラグハートチャージドがエンペラーブルートの拳を蹴り上げ、掴んでいた指を振りほどいて胸倉に一撃を叩き込んだ。凄まじい衝撃がコクピットを揺らし、リゲルは血反吐を吐いた。

「馬鹿な.......」

エンペラーブルートは即座に体勢を立て直し、ランスを振り下ろした。だがドラグハートチャージドは小器用に、腕の装甲を穂先の上に滑らせて受け流し、顔面に流星蹴りをお見舞いした。

「乾坤一擲のつもりだか何だか知らないが、長くは持つまい!」

蹌踉めきながらもマシンガンをばら撒き、距離を作る。しかしドラグハートチャージドの加速力の前には意味を為さず、股間部のメガ粒子砲を殴り抜けられてしまう。

「乾坤一擲?さぁ.....?何の話してんだ?」

ドラグハートチャージドがふわりと浮き上がり、エンペラーブルートを見下ろす。ここでリゲルが我を取り戻すとは思えなかったが、きっかけを得るチャンスは与えるつもりでいた。二人の間に余計な言葉は不要。ただ、拳に思いを乗せてぶつかり合う。それだけで十分だった。子供の頃から続けてきた格闘技を通して、二人はそう考えるようになった。それは今も昔も変わらない。一方のリゲルは肌が剥がれ落ちるのを見向きもせず、ただ表情を憎悪で染め上げドラグハートチャージドを睨んでいた。

「お前はいつもそうだ......俺の前を歩きながら、何も考えず接してくる.....!この復讐は間違っちゃいないはずなのに.....また俺を否定しようというのか、お前はッ!!」

マシンガンを掃射する。ドラグハートチャージドはプラフスキーフィールドを即座に開き、ジグザグ軌道で一気に距離を詰める。そのタイミングに合わせ、エンペラーブルートが掌をぐわっと広げ掴みかかった。弘はこのまま握りつぶす気なのかと思ったが、掌に配された砲口を目にし奥歯を噛む。

「こんなもん、仕込んでやがったのか....!?」

「ハハハハハ!!所詮格闘機だ!単なる一芸特化で、俺に勝てると思うなッ!!」

掌の砲口にスパークが走ったかと思うと、間髪入れず粒子の激流を放った。リゲルはとうとう感情のコントールが外れてしまい、狂ったような笑い声を上げコンソールを何度も殴りつける。

「よく分からない奇跡に頼ったからこうなる!!ヒャッハハハハハ!アッハハハハハハ!!さようならぁあああああッ!!」

メガ粒子の渦が通り過ぎた跡は、文字通り荒野そのもの。煙が少しずつ消え、晴れてゆくがそれに比例してリゲルの顔も歪む。

「.......!?」

気がつくとエンペラーブルートの顔面に何かがぶつかり、数メートル近く撥ね飛ばされた。飛んできたものの正体を目の当たりにしたリゲル。瞼と歯を震わせ、この時初めて恐怖した。炎をまとった拳を突き出す、ドラグハートチャージド。まさか事もあろうに、至近距離で最大出力のハイメガキャノンを浴びせたはずが、またしても無傷のまま終わってしまうとは。

「おい.....まだ終わってねぇつってんだろ」

「こんな事が....こんな事があるなんて......お前は一体どこまで....俺を惨めにさせる気だぁあああ!!」

エンペラーブルートはランスを拾い上げ、再び馬上槍の要領で刺突を加える。だがドラグハートチャージドは、ひょいと身体を逸して躱すと右手から発せられた灼熱の剣で、事も無げに槍の穂先を斬り飛ばしてしまった。エンペラーブルートが反撃にとマシンガンを撃ちながら、殴りつけようとする。しかしそれをドラグハートチャージドは、蹴りの一撃で弾き返し逆に斬り落とした槍を投げつけ、リゲルを震え上がらせた。エンペラーブルートの背中が小刻みに揺れる。装甲の表面が脈動し、何かが蠢いているかのようである。バックパックにも亀裂が走る。

「DG細胞が活性化する......こうなってしまっては誰にも止めさせはしないさ......はぁああああッ!!」

バックパックが弾け飛び、血しぶきを彷彿とさせるような赤黒い液体を撒き散らした。やがてその体内から、肉塊を固めたような物体が露出し、グネグネと形を変えながらある物を作り上げる。そして生まれたのは、もう一対の凶爪を持つゼルトザームアルムだった。二組の豪腕を手に入れたエンペラーブルートは、何の躊躇いもなく前進。これまでの2倍ほどもあろうかという弾幕を広げながら、ドラグハートチャージドを追い立て始める。ドラグハートチャージドは炎の嵐を纏い、空中へ高く飛び上がると拳型のエネルギー弾を素早く撃ち込み、弾幕を相殺した。だが弘の拳打スピードに依存する仕組みに影響され、あっと言う間に押し返され始める。

「クッソ、こうなったら!!」

ドラグハートチャージドの前面にプラフスキーフィールドを発生すると、両手を腰に低く構えた。掌には炎と水の力が集い始め、眩いばかりの輝きを放った。弘の第六感で全てのエネルギーが集束されたと識る瞬間、両手を突き出し一斉に解き放った。

「デュアルインパクト・ブレイクッ!!」

獄炎と瀑布の龍が混ざり合い、黄金の龍神となって全ての弾幕を打ち消し、エンペラーブルートをも焼き払う。プラフスキーフィールドとの併用が災いして、ドラグハートチャージドの出力が一気に低下。チャージアーマーも消失してしまうがこれ程の一撃を浴びせられれば、あのエンペラーブルート言えどもただでは済まないだろう。弘もそのように感じていた。しかし現実は、そんな彼の淡い願望を容易く砕いてしまう。上半身を消し飛ばされたはずのエンペラーブルート。ところが四脚の付け根から何本かの肉柱が生え、それぞれが絡み合う形で胴体を錬成。辺りに飛び散った破片もそれに呼応されるかのように集い、まるで逆再生された映像よろしく再生してしまったのだ。デスビーストを利用している以上、DG細胞の圧倒的な恩恵を享受できる。つまりこの2機のガンプラは、姿形や原理は違えど同じ性質を持ち合わせている。そう言っても過言では無い。

 

「アイツ.....そんな技まで編み出しやがって」

ドラグハートチャージドが見せた奥義を目にし、リョウマは一人頼もしさ半分、呆れ半分に眺めていた。とは言うものの、エンペラーブルートとの決着が未だについていない現状がある。モビルドールの生産ラインとなっている、拠点を何個か制圧した事もあり、弘の援護へ向かう余裕が生まれていた。リョウマは迷わずビルドスパークルを、弘のもとへと急がせる。しかしそれを阻む者は、当然現れる。

「何ッ!?」

目の前を横切る、赤い斬撃軌道。ビルドスパークルは即座にスマッシュブラスターを振り上げ、斬り結ぶ。辻斬りを仕掛けてきたのは、やはりと言うべきかエヴィルイフリートだった。

「邪魔はさせんぞ、水崎ィ......!」

「あんだけやられたってのに、懲りねぇ奴だ!」

ビルドスパークルが一歩踏み出した瞬間、別方向からも銃撃が襲いかかる。これもスマッシュブラスターを薙ぎ払い、弾き返すが想定を超える相手の出現にリョウマは「最悪だ」と吐き捨てる。何故なら、その相手とはウヴァルスタークだったのだから。

「よぉ、水崎 諒馬君。こうしてまともにやり合うのは、随分久しぶりだっけなぁ?どうだい、スリル満点のハザードライフは。十分に楽しめてるかい?」

「ふざけるなよ.....こっちは遊びでやってる訳じゃ....!」

「まぁいいじゃないの。見てたぜ?お前のハザードの乗りこなし方って奴。ここでもう一度見せてくれよな」

ウヴァルスタークは、右腕に装備した邪悪な顎(あぎと)をカチカチと慣らし、掴みかかった。ビルドスパークルが受け流そうとしたが、ここでリョウマの想像は裏切られる。顎の天面から砲身が迫り出し、赤黒い粒子の奔流を吐き出したのだ。ビルドスパークルは咄嗟にビームシールドを形成、これを何とか防ぎ切るものの今度は真横から来る、エヴィルイフリートの兜割りを浴びせられ昏倒させられる。

「バーサークアームズは割と初見殺しがしやすくてねぇ...しかし天才でも引っ掛けられちまうとは」

だがここでリョウマも反撃に出る。ビルドスパークルに高トルクモードを起動させ、バーサークアームズを殴り飛ばしながら起き上がり、その勢いのままエヴィルイフリートのヒートサーベルを殴り砕いた。

「無駄な足掻きを!」

エヴィルイフリートがすぐにヒートサーベルを再生させると、直後に袈裟懸けに振り下ろした。だがリョウマはそれを見抜いており、レバーを僅か後ろに倒した。

「ビルドアップ!」

ビルドスパークルの背後からトラフィックフィンが飛び出し、エヴィルイフリートの頭上を陣取り青黒いビームを放った。たちまちエヴィルイフリートは身動きが取れなくなり、鎖にでも縛られたかのようにその場に佇む。そこへすかさずビルドスパークルが、高トルクパンチを叩きつけ首尾よくダウンを奪った。だが呼吸を整える余裕など無い。鋼鉄の顎がすぐ目の前まで迫ってきたのだ。

「やらせるかよ!」

GNソードビットを形成。バーサークアームズを押し出し、ウヴァルスタークにも突撃させた。

「洒落臭えな」

ウヴァルスタークは左手の爪を振るい、GNソードビットを叩き落としながら急接近。ビルドスパークルの右肩を蹴りつけ、バーサークアームズのメガ粒子砲を薙ぎ払う。それでもリョウマはまだ"本当の焦り"を感じておらず、至って冷静であった。

「その武器が厄介なのは十分理解した....ならやる事は1つ!」

ビルドスパークルのバックパックが、パーフェクトパックに換装される。そのままフォトントルピードを放出し、防ぐ術を持たぬウヴァルスタークは、敢え無くバーサークアームズを無力化させられた。

「おいおい、お前ってどこまで情緒って物が欠落してんだ?メタばかりかますなんてよ」

「もう分かってるはずだ。俺はお前達を倒す為なら容赦なんてしないと」

しかしこの場でもグロックは、飄々とした姿勢を崩さない。これも彼の読みの範疇だったのだろう。

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