創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 作:JNEXEL
フォトントルピードによって、主武装を失ったがグロックはまだ余裕を残していた。
「いいのかよ、俺だけが相手じゃないんだぞ?」
「あ.....!?」
リョウマが振り向いた時には既に遅く、エヴィルイフリートがハザードを解放し、トラフィックフィンを吹き飛ばしてこちらへ迫って来た。ビルドスパークルはすかさず、鞭のようにスマッシュブラスターを放つもエヴィルイフリートはそれを、飛び上がって避けつつ唐竹割りを仕掛ける。
「どうした水崎ィ.....!とっておきのアレは使わないのかァ!!」
ビルドスパークルの回避が全く間に合わず、斬り伏せられてしまう。そのままエヴィルイフリートが相手の腹に足を乗せ、グリグリと穿った。
「うっ.....くっ.....!!」
ビルドスパークルがエヴィルイフリートの脚を押し返し、胸部にビルドしたメガマシンキャノンを掃射。エヴィルイフリートを仰け反らせると顔面にハイキックをぶつけ、ビームサーベルで逆袈裟斬りを浴びせた。だがやはり相手はハザードを起動させている。この程度ではかすり傷にもならない。
「とっておき?そりゃ何だ?」
横で見ていたグロックが、面白がって問いかけた。
「生憎、お前には言えるもんじゃないんだよ!」
ビルドスパークルは振り向きざまにスマッシュブラスターを一閃。グロックの反応が勝り、シールドで受け止めた。だが、彼の予測せぬ方向から思わぬ一手が。突然ウヴァルスタークのバックパックが、切断され地面に落下していた。
「何だ....俺とした事がこんなのも予測できねぇたぁ、とんだ笑いもんだな」
グロックは気配を見つけると横目で、その姿を捉える。その目は普段と違い、眉がぴくりと上がりかけていた。辻斬りを仕掛けたのは、紅のV2ガンダム――V2ガンダム セリシールトゥールビヨン。つまり、スワンが加勢に入ったのだ。
「あなたをここで討ち取ります....!今日、ここでぇッ!!」
サイドアーマーから抜き放つは、深蒼の輝きを纏う大太刀。機体の全高の約2倍程はあろうかと言う、途轍もない代物である。その名もグラビティエッジⅡ。F91-M時代にリョウマから齎されたグラビティエッジを、スワン自身の手により更に己の感覚に馴染むよう、刷新させた武装だ。
「予定変更だ、疑似タイマンと行こうぜ」
ウヴァルスタークがV2セリシールに向き直る。すると消滅せずに残っていた、バーサークアームズの亡骸から、一対の双剣が飛び立ちウヴァルスタークの手に収まった。この形態は言うなれば、"バーサークブレイド"であろうか。
「こいつにはちょっとした仕掛けがあってだな....壊れても原型さえ残ってりゃ、別の武器としても使えるのさ」
ウヴァルスタークは左右にステップしながらフェイントをかけ、バーサークブレイドを薙ぎ払った。スワンは素早く反応し、グラビティエッジⅡで受け止め、軽く浮かせると視認速度をゆうに超える速さで斬り上げた。
「遅いッ!!」
ウヴァルスタークを高く打ち上げると、V2セリシールは高度を取り、また凄まじい剣速で袈裟斬りを放った。今度はウヴァルスタークの反応が間に合い、交差したバーサークブレイドで威力を潰したが、この時点で背後を取ったV2セリシールに斬りつけられてしまう。
「このアマァ.....調子に乗りやがって!」
グロックはこの時になって初めて、相手への怒りを感じた。落下の時間を狙いバーサークブレイドの柄底からワイヤーを伸ばして、猛烈な力で振り払った。目にも留まらぬ速さで刃が風を切り、同時にV2セリシールを先に地面に叩き落とす事に成功する。
「い、今のは.....!?」
胸部装甲右側に、やや大きめの裂傷が刻まれている。スワンの予想さえ、すぐに裏切る事ができるグロックの機転の良さが活きた証左である。ウヴァルスタークは宙返りで着地すると、バーサークブレイドに紅い稲妻を纏わせ、わざと速度を緩めて近寄り始めた。
「ったく、こんな時に俺を嵌め倒そうとしたんだ。それだけは褒めてやるよ。しかし、タイミングが悪かったよな?」
バーサークブレイドを右肩に担ぎ、V2セリシールを、そしてエヴィルイフリートと交戦するビルドスパークルを睨み一言。
「今日がお前達の命日だ」
唇をニヤリと歪め、そう言い放つ。バーサークブレイドを天に掲げるや否や、虚空から無数の紅の雷光が迸り大地を穿った。敵も味方も関せず、全てを巻き込む殺意の光。スワンの反応が間に合うはずもなく、V2セリシールは何発かの直撃を受けダウンさせられる。
「何て威力なの....!」
ふとビルドスパークルの方へ目を遣ると、やはり回避が間に合わなかったらしく倒れているようだが、エヴィルイフリートに何度も踏みつけられていた。助けに行かねばと手を伸ばすが、それを遮るようにウヴァルスタークが目の前に立った。
「おいおい、相手は俺のはずだろう?」
先程の雷撃で吹き飛ばされるビルドスパークルだったが、エヴィルイフリートからの追撃も浴びせられ身動きが取れなくなってしまう。エヴィルイフリートが執拗に、ビルドスパークルの鳩尾を踏みつけ蹂躙していく。
「この戦いは誰のせいで起こったと思っているッ!!水崎ィ....お前がアーネストに忠誠を誓わなかったばっかりにィ!このザマなんだよッ!!いつかお前は....ヒーローだとか抜かしてたなァ.....やってる事はその逆なんだよ違うかッ!?所詮お前とてアーネストの前には無力!何も出来ないくせによくそんな事を宣えたなァ、ェエ!?」
狂った笑いを上げながら、罵倒するシューイン。ハザードをその身に宿したせいなのか、彼は言うなれば強化人間そのものである。リョウマはそんな彼を見て、とても救える気がしないと悲観した。強化を解く方法はすでに見つかっている。何らかのタイミングがあれば、シューインを狂気から解放してやることができたかも知れない。だが事態はそんな思惑などとっくに超越していたのだ。
「もうその手には乗らねぇ....原因が俺にあるのは分かってるからな....だからってここで立ち止まる訳には、行かないんだよ!」
ビルドスパークルがバルカン砲を放ち、エヴィルイフリートをよろけさせた。その隙を狙い飛び起きると、スマッシュブラスターで逆袈裟斬りから袈裟斬りに、そして居合斬りを決めエヴィルイフリートを見事にダウンさせることが出来た。
「ここまで来たからには、お前をここで倒すしかない!ハザードビルドアップ・オーバーフロー!」
ビルドスパークルから黒霧が噴出。やがてそれはスマッシュブラスターと、周囲に現れたアーマーに吸い込まれ赤い輝きを発する。アーマーが次々とビルドスパークルとドッキングし、ラピッドスマッシャーへと変身させた。
「おぉおおおおおッーー!!」
スマッシュブラスターを低く構え、緩やかに回り込み一気に薙ぎ払う。タイミングよく起き上がったエヴィルイフリートだが、剣で防ぐ間もなく斬りつけられ、膝をついた。
「き、貴様ァ.......!」
エヴィルイフリートがヒートサーベルを横薙ぎに振るって、ラピッドスマッシャーを転ばせようとする。しかしラピッドスマッシャーは天高く飛び上がり、スマッシュブラスターを最上段に構え、急降下の勢いを加えて叩きつけた。更に相手の顔面を蹴りつけ、ブラスターモードにしたスマッシュブラスターを放つ。
「スワン!待ってろ....!」
リョウマはすぐさまスワンの様子を確認して、彼女のもとへ急ごうとするがエヴィルイフリートに絡みつかれ、それは叶わなかった。
「お前を逃がすとでも思うたか....ハッハッハッハッハァアーーーッ!!」
エヴィルイフリートは顔面のモノアイにヒビを入れられているが、全く動きに変化がない。ラピッドスマッシャーを強引に向き直らせると、左手首にビームニードルを発振させ、ありったけの力を込めて意趣返しにとばかりに、顔を殴りつけた。
「ぐっ.....!舐めるな!!」
ラピッドスマッシャーも右腕に高トルクモードを宿らせ、殴り返す。エヴィルイフリートの2回目の殴打が同時に飛び出し、双方共に撥ね飛ばされた。
「ハァアアアアアッ...........!お前をここでぇえ......叩きのめしてやるゥウウッ!!」
エヴィルイフリートがヒートサーベルを構え、音速にも迫る勢いで近づき、袈裟斬りを見舞う。ラピッドスマッシャーは左にロールして回避、ブラスターモードのスマッシュブラスターを撃ち込み片脚を破壊した。
「お前だけに構ってられるか!」
バーニアを全開にし、ウヴァルスタークのシールドをスマッシュブラスターで斬り捨てた。
「この俺が.....知覚できなかった.....!?」
ラピッドスマッシャーに関するデータを持ち得なかったグロックは、たった一瞬で距離を詰めてきた事実に目を疑う。
「お前が俺にハザードを寄越したが、このパターンは誤算だったようだな」
「お前さんと言うやつは....コイツぁ面白え。二人まとめてかかって来い」
ウヴァルスタークが一歩下がり、手をクイクイと動かして挑発した。
「リョウマさん....!」
ミニウィンドウ越しにスワンが頷く。リョウマもそれを認め、レバーを深く握り込んだ。
「ああ、やってやろうぜ.....ここで俺達が折れる訳には行かねえ」
ラピッドスマッシャーとV2セリシールが駆け出す。ウヴァルスタークは悠然と立つがそこから一変、2機の合間に滑りバーサークブレイドで斬り開いた。しかし両機共に斬撃を防ぎ、睨み合いが始まる。
「これから面白くなりそうだなぁ.....だが俺のフラストレーションを晴らさねぇ事には、純粋に楽しめそうも無いか」
ウヴァルスタークがラピッドスマッシャーに目を向けるが同時、リョウマの指がコンソールを叩く。
「ビルドアップ!」
ラピッドスマッシャーの左手にγ-ナノラミネートソードをビルド、素早く昇竜斬りでバーサークブレイドを弾き返した。ウヴァルスタークがもう片方の剣を突き出すが、ラピッドスマッシャーはすぐに反応して躱し、γナノラミネートソードを振り下ろし左手ごと切断してしまった。P.D.機体で唯一の、ナノラミネートアーマーに対抗できる武器。リョウマは思いつくのが遅過ぎたと悔いるが、このタイミングだからこそグロックの反応を遅らせたのだと思うことにした。
「ようやく理解したってのか....遅過ぎるんだよ!」
ウヴァルスタークがスマッシュブラスターを蹴り飛ばし、バーサークブレイドで創傷を刻んだ。ラピッドスマッシャーはダメージを受けるのと同時に、スマッシュブラスターを手放した事でハザードを強制解除させられ、ビルドスパークルに戻される。
「何だと........!?」
それらしき状況を見せていないはずだ、とリョウマは狼狽する。グロックはスマッシュブラスターを眺め、納得してビルドスパークルに視線を戻した。
「何となく分かってたよ。その武器がキーになってるって事くらいはなぁ....」
背後からの斬撃を事も無げに躱してみせ、後ろ回し蹴りを刺し返す。
「見切った!」
V2セリシールは蹴りの軌道をギリギリで避け、回り込みを織り交ぜ居合斬りを仕掛けた。グラビティエッジⅡから生み出される、超重力が働きウヴァルスタークのフレームを拉げさせながら、重い一撃を加える。
「えぇい.....奴とは相性が悪いか....それはよ〜く頭に刻んでやるよ....Ciao」
ウヴァルスタークがバトルエリアから離れてしまい、決着せずじまいとなった。
「自分から挑発して、離脱するなんて...!」
グロックの行為を許せず、スワンはウヴァルスタークが消えた虚空を睨む。彼のやり方はどこか、ブルームーンへの対処だけは片手間にやるだけ。その様に感じられてならないのだ。
ドラクハートチャージドの猛攻はとどまる事を知らず。エンペラーブルートの攻撃を瞬間瞬間で見切り、的確に拳打と蹴りを当て続ける。
「お前が乗ってるそれ.....普通じゃねぇ!呑み込まれちまう!早く手を止めろ!」
しかしリゲルはその手を緩めようとしないどころか、ますます弘への殺意を高めた。
「構うものか!俺は、あの男を殺す!その為なら魂を売るのだって安いものだ!お前とは違う!」
「テメェのやってる事は、奴らの得にしかならねぇ!」
振り下ろされる爪を蹴り飛ばし、ドラクハートチャージドはエンペラーブルートの両肩を掴んだ。
「殺してやりてぇのは分かるけどよ!けどよ....!そうしちまったら、その先はどうするつもりなんだよ!?お前だけが人殺しになって、ムショに入れられる!でもやられたアイツは、何もされねぇで終わんだよ!!テメェは自分の未来をここで捨てちまう気か!?」
「ハハハ.....俺が殺人罪に問われるなんて、初めから覚悟のうちさ!奴らの思い通り?そんなのどうだっていい.....あの男を殺りさえすればそれで!両親に死に損だけはさせられないからね.....!これ以上の親孝行なんて、無いじゃないか....ハハハハハハッ!!」
「テメェ.....!!」
エンペラーブルートがハンマーナックルを振り下ろす。ドラクハートチャージドは素早く飛び退き、拳に轟炎を纏わせ再突撃する。
「もういい加減落ちてくれよ.....いい加減しつこいんだよ....!」
エンペラーブルートとドラクハートチャージドの拳が激突。互いの力が拮抗し、拳の"鍔迫り合い"が起きていた。デュアルインパクト・ブレイクを受けた直後、DG細胞の力で復活したが同様にドラクハートチャージドの性能が、飛躍的に上昇していた。エネルギー切れを起こしているに関わらず、以前にも増して勢いが強まるドラクハートチャージドに、リゲルは言いようの無い不気味さを感じた。間違いなくDG細胞の再生能力でこちらのパワーも上がっているはず。だがドラクハートチャージドまで追従しようというのだ。
「お前はいつまでも.....いつまでも俺を惨めにさせるのか....!もうここで、お前を消してやる!」
エンペラーブルートの背中が蠢動する。ビクリ、ビクリと身体を震わせ背面にコブのようなものが浮き上がった。やがてそれは背部装甲を突き破り、新たなバックパックのような佇まいを成した。それでも変化は止まらない。バックパックの両側から本体と同じ腕を生やし、間髪入れずハイメガキャノンを生成すると、放射した。
「あ........!?」
3条ものメガ粒子の塊が目の前に迫り、弘は思考を止められた。ドォオオオオン!!空気を揺らさんばかりの轟音が虚空に吸い込まれる。ウヴァルスターク達の戦場からは遠く離れた場所にいるならば、助けに来る連中もそう早くは辿り着かない。爆破の衝撃でドラクハートチャージドからチャージアーマーが剥がれ落ち、更に地面を転がりながら腕やら足やらを捻じ曲げられ、スクラップその物の有様となった。
「もうここまでだ。やっぱりお前は、あの時から何一つ変わらなかった。現実が見えてないのは、お前の方だよ......弘ッ!!」
ドラグハートの頭を掴み上げ、ボロ雑巾のようになった躯体にリゲルが嗤う。しかし。
「.....いい加減.......目ェ覚ましやがれッ!!」
ドラグハートの残骸から太陽と見紛うほどの光と炎が放たれ、強固な球体を形作る。エンペラーブルートが左手の爪で劈こうとするが、火球から生じるプレッシャーに阻まれ、その手を止めてしまう。リゲルが慄く間に、ドラグハートを包む火球が爆ぜた。灼熱の光が大地を焼き尽くし、地中に眠る溶岩までもが呼び起こされ噴火した。炎や溶岩がドラグハートを包み込み、瞬時に硬化すると赤い鎧へと形を変えた。
「俺の炎が全てを叩き潰す!この極限の熱さは、誰にも止められねぇ!もう誰にもッ.....負ける気がしねぇええッ!!」
火炎が弾け飛び、進化を果たしたドラグハートが地に降り立つ。姿形こそはドラクハートチャージドより、原型機の一つであるビルドバーニングに近く、シンプルになったが全身から溢れ出る業火によって、その出で立ちはまさしく不動明王のようである。背面に現れるリングは太陽を象徴し、さながら皆既日食を思わせる。ドラグハートガンダムオーフレイム、爆誕の瞬間である。