※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

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File.63 かけがえのないANSWER

ドラグハートオーフレイムに進化した。その事実がリゲルの破綻寸前の精神を掻き乱す。

「それが何だって言うんだ......ハッ....!?」

リゲルが知覚する頃には、エンペラーブルートが遥か遠くへ撥ね飛ばされ、湖面へと突っ込んでいた。何が起こったのか釈然とせず、ひたすらに周囲を見渡すが他に変わった物は何もない。あるのは、たった1機のガンダム。日輪と業火を身に纏いし、紅蓮の闘士が上空に現れ巨大な灼熱の拳を水面に叩きつける。ドシュウウウ!!と水が瞬時に蒸発したかと思うと、地面が大きく抉り取られ、湖そのものの形までも変えてしまった。勿論エンペラーブルートも無事では済ます、前脚と左半身を灼き尽くされ水面に沈んだ。

「一体.....どうなってるんだ.....!?俺の機体がここまでやられるなんて.....!」

DG細胞により、躯体を修復するが常軌を逸する力を見せるドラグハートオーフレイムに、恐怖させられ更に動揺した。

「決まってんだろ.....覚悟が違うんだよッ!!」

「有り得ない.....!お前にそんなレベルのマシンを作れるはずは....!」

エンペラーブルートが起き上がる刹那、再びドラグハートオーフレイムの拳が顔面に突き刺さり、またしても沈められる。ドラグハートオーフレイムはエンペラーブルートに馬乗りになり、襟首の装甲を引っ掴んだ。

「力とかどうとか関係ねえ!俺はただ....お前を.....助けたいだけなんだ!ずっと戻って来ねえから、俺はここに来てからお前を探してた!なのに何なんだよこれは!どうしてこうなんなきゃ行けねぇんだ!?会えたと思えばお前は復讐する事しか考えなくなっちまってよ....!お前がどんだけ馬鹿な真似をしようとしてんのか、分かれよッ!!」

「それが何だ!俺達にはこの手段しか残っていない!グロック・ルーツを、結城 秀晃をこの手で斃す!それ以外に、親の無念を晴らす道なんてないんだ!何でお前はそれが分からない!同じ目に遭わせなきゃ、この苦しみを思い知らせる事なんて、できないじゃないか!」

「短絡的過ぎるって言ってんだろうが!どんなに憎かろうが、人を殺しちまったらそれで全部失っちまうんだぞ!?どんな理由があってもな、お前だけが悪人だって決めつけられんだよ!!そんなんじゃ、誰の為にもなりゃしねえよ!!」

弘の瞳から涙が零れ落ちる。自身もグロックが、結城 秀晃が憎くて仕方が無い。だが殺してしまえばいいと言う話は、どこか違うように思えてならなかった。理由は簡単である。社会的制裁などは関係がない。天国から見守ってくれる両親を悲しませる。遺された人間が1番やってはいけない事だと言うのを、弘は心で理解していた。本当に望が秀晃を殺害すると、本人は復讐から解放されるだろう。しかし本当にそれだけなのだろうか。殺しをしたとなれば、話はどこへでも伝わる。大学入学まで支えてくれた、叔父夫妻はどう思うか。決して喜んではくれないはずだ。誰も幸せにならない道を選ぶのが、望の本心であるはずがない。今の彼は、"自分を失っている"と言っても過言ではない。

「誰の為....?愚問だな.....両親の為に決まってるじゃないか。俺がどうなろうとこの際気にしない!奴さえ死ねば全てが終わる、それだけの事だ!結局お前は怖いんだよ....手を血で染めるのが怖くて逃げてるだけだ!そんな奴に、俺の道を捻じ曲げられてたまるか!」

エンペラーブルートがドラグハートオーフレイムを殴りつけて引き剥がし、両掌のハイメガキャノンを発射した。巨大な爆発が発生し、煙の柱が空へ立ち上る。しかしリゲルは気配を感じ取り、視線を上げた。すると煙の中からドラグハートオーフレイムが飛び出し、両手に握られた火炎の太刀を振り下ろした。その刃によってエンペラーブルートの左上の腕がスパンと斬り落とされ、更には傷口に延焼までさせて再生を阻害したのだ。

「ぐっ......ぅうぁあああああああッ!!」

エンペラーブルートが右2列の爪を突き入れ反撃に出るがしかし、ドラグハートオーフレイムは軽やかに機体を飛び越え、右手から火炎を放ち右上の腕を焼失させた。

「人を殺すのが怖いだって?当たり前だろうが!!それが人として、当然の感覚じゃねぇのか!」

振り抜いた焔の刀が見る見るうちに形を変え、やがて自身を超える長さに。エンペラーブルートが起き上がろうとする所に、ドラグハートオーフレイムの火焔太刀が振り下ろされる。辛くもエンペラーブルートは、右手から発したIフィールドで受け止める事に成功する。しかしバックパックを燃やしていた炎が、本体にまで延焼し始め瞬く間にエンペラーブルートが火達磨になってしまった。コクピットを反響する無数のアラートに、リゲルは狂乱した。

「ギャアアアアアアアアアアアアアアアッ!!うわぁあああああああああッ!!も、燃える.....エンペラー.....ブルートが.........お前.....お前、お前ェエエッ!!!」

エンペラーブルートの腰がぐるりと回り、振り向きざまにスレッジハンマーを叩き込んだ。

「もうお前には俺を倒せねぇの....分かれよ!」

しかしドラグハートオーフレイムは回し蹴りで軽く往なし、逆に右腕を掴んでジャイアントスイングの如く振り回した。相手が動かなくなった瞬間を見計らい上空へ連れ去ると、素早く相手の襟首を掴みグルグルと宙返りをする。回転速度が急激に上昇。地面に接触する僅かな隙にドラグハートオーフレイムが足を離し、流れるような動きで背負い投げを見舞った。その衝撃は核爆弾並とも言え、大地が半球状に凹まされ更には溶岩まで噴出する始末。遥か高空まで立ち昇るキノコ雲は、その場にいない者たちでさえ威力の強さを想起させるに充分過ぎるものだった。現に救援に向かおうとしたリョウマ達ですら、思わず機体の足を止め慄いたのだから。

 

「こんな......こんな......こんな事が、あり得るのか......魂を売っても、この身を捨ててでも.....なぜお前に勝てない.......」

剣山上に乱立する岩の柱の間隙に、エンペラーブルートが挟まれ身動きを封じられる。まだ溶岩が冷却しきれていないのか、ジリジリと装甲の表面が溶かされている。リゲルは画面の端の、ドラグハートオーフレイムの姿を恨めしく睨むしかできなかった。親友である弘に対して感じてきた、複雑な感情を言葉に出来ないのが、ここまで歯痒いものだと考えた事もなかった。親の仇を討つ為に迷いを捨てたいと考えた彼は、いずれ弘と袂を分かつ覚悟までしていたはずだった。だが再会した瞬間に、そんな覚悟さえ揺らぎ弘に力を貸してもらおうとさえ考えるようになる。しかし弘は殺人をしてまで仇討ちをすると言う、リゲルの決心を理解しなかった。否。されなくて当たり前だったものを、リゲルが拒絶と受け取った、それだけで深い溝を作ってしまったのだ。彼の心の片隅では、きっとこう言いたかったのだろう。『魂まで売って復讐鬼になった俺を、止めてくれ』と――。それをハザードの力が忘れさせた。人として生きていくこと。自分だけでない世界の美しさを。何より、友が差し伸べてくれた救いの手を。

「そうか――お前はもう、俺が一生手に入れられない物を持っていたんだな......」

リゲルの言葉を、弘は目を瞑り無言で聞いていた。俺にもっと、話せるだけの心と理性があれば。結局戦いという手段でしか、リゲルを解放できなかったのは悔やまれる。しかし今はそれで良かったのだ。弘は瞼を静かに開けた。

「一生じゃねえよ。お前だって必ず出会える。まぁその前に、俺もいるけどな!」

涙を拭い、努めて笑みを浮かべる。

「まだ俺がやらなきゃいけない事は、終わってない。戦いが終わったらその時は、お前のリハビリ手伝わせろよ」

エンペラーブルートがわずかに身動ぎし、ドラグハートオーフレイムを"凝視"する。

「お前......こんな俺でも.......」

「当たり前だろ?俺とお前だぜ、こんな事で親友やめられっかよ!」

弘が笑う。リゲルの面持ちも憑き物が取れたかのようだ。

「お前は本当に.........強い漢って奴だよ......ありがとう、また会おう....」

岩石が爆ぜ、火柱がエンペラーブルートを灼き尽くしてゆく。それはまるで、リゲルに宿っていた憎悪を清めているようにも見えた。ドラグハートオーフレイムは振り向きもせず、仲間たちの元へと直走る。まだ戦いは終わってなどいない。今度はリョウマに恩返しをする番なのだから。

 

先程の爆発を受けて現場に向かう二人だったが、またしても無人機の群れが現れ対処を余儀なくされる。

「クソッ.....!何でまた出てくるんだ!」

タフネスブラスターに変身したビルドスパークルは、踵に展開させた履帯を小器用に扱い、次々と敵を撃墜する。バックパックのキャノンも、スマッシュブラスターも総動員して何とか押し止められているが、そう長くは持たない。いくら継戦能力に秀でているとは言え、防御向きのこの形態では戦況そのものを動かす程の力はないのだ。そもそもビルドスパークル自体、対敵エース機に向け調整しているから当然である。

「皆さんが来るまでは、耐えるしかないですね....!」

V2セリシールもミノフスキー・ドライブを展開、光の翼を羽撃かせながら敵陣に切り込む。居合道と抜刀術が織りなす、スワン独自の剣術が光る。自身を超える長さの太刀を軽々と薙ぎ払い、敵の頭を一瞬で奪った。

「レーダーに反応.....これって!」

スワンがリョウマに知らせる。リョウマもこれは見ており、ようやく戦い余裕が生まれると期待する。

「ああ、やっと来てくれたようだな。それならずっとやりやすくなる!」

虚空から降り注ぐ翡翠の刃。それらは無人モビルスーツ達を次々と八つ裂きにし、リョウマ達の前線を確固たる物にした。そして地に降り立つは蒼衣を纏いし影と、黒き怪盗。

「ただいま到着しました。これより、援護に移ります」

「本来これは私達の得意分野ではありませんが....こう言うのも嫌いではないですし、お手伝いします」

舞夜のグレイズ・ナイトシーカー、そしてシャノアールのブリッツガンダムシャノアール。それぞれが反対方向へ飛び出し、刃を抜き放った。

「舞夜、お前が試したいって言ってた奴。今ならやれるぞ。ビルドアップ!」

「了解。シグルマギアブレイド、展開」

タフネスブラスターの両手から小型端末が飛び出し、グレイズナイトシーカーの両肩とドッキングした。するとユニットからヘクス型の力場が発生し、先程と同じ短剣"シグルマギアブレイド"を生成したのだ。舞夜の宣言がなされると、シグルマギアブレイドが一斉に射出。まるでビット兵器のように突撃を始める。

「す、凄い.....まるでクアンタみたい....」

敵を斬り伏せながら、スワンはグレイズナイトシーカーの新武装に驚愕する。

「あれが彼女の隠し玉、だそうよ」

ブリッツシャノアールがアクロバティックな挙動で、相手の頭上を飛び越え両手のビームライフルショーティーで素早く撃ち抜いた。すかさず蛇腹剣"シャ・ド・パラス"に持ち替え、勢いよく打ち付け血路を開いた。

「だとしたら、クアンタと言うよりAGE-FXですか.....あ、ご助力感謝します!」

V2セリシールがブリッツシャノアールを飛び越え、空からグラビティエッジⅡで空間ごと居合斬りを見舞う。目の前で世界が斬られていく様子を見たシャノアールは、開いた口が塞がらなかった。

「え.....?今の、何だと言うの......!?」

「私と.....リョウマさんの技術の結晶、ですっ」

スワンが優越感を漂わせるのを、シャノアールは見逃さなかった。

「そ、それは無いんじゃない?全く、困った娘だわ....!」

 

「全部倒したと思ったのに、これじゃ全然きりが無い!」

再び数を増やし始めたモビルドール。エスの気力と体力もいよいよ消耗しつつあった。後から駆けつけてきたミナの方は先に撤退させ、新たな機体の調整に専念させたはいいものの、100体近くのモビルドールを相手にする事になり、無駄に強がったかと後悔する。

「でも言い出したことなんだ、やるっきゃない!」

ストライクJOKERはバーニアを噴き、ネクサスォードにエネルギーを充填した。敵の攻撃を擦り抜けつつ両断、ストライカーパックを使わぬ利点を最大限に活かし、目の前のモビルドールを破壊する。しかしこれ以上戦闘を続けていては、いずれ袋叩きに遭い再出撃を強制されてしまう。それだけではない。相手は完全なる機械。相手の思考をわずかでも掴めば成立する、ν-Typeとしての戦い方は完全に封じられていた。ν-extを使えばその点は問題なくなるが、今度はエス自身が更に疲弊する。他のメンバー達はあちこちを転戦している事もあって、迅速な救援は望めない。普通の考えならば、このまま戦おうとすれば自殺行為である。しかしこの男は違った。

「圧倒的不利.....へへっ.....こんなに燃える状況、他にないなぁッ!!」

ヴァイエイトの懐に飛び込み、腹を軽く斬りつける。そして相手の群れの方に蹴り飛ばし、ドミノ倒しにするとヴァイエイトをネクサスォードで射撃。纏めて20機を誘爆させる。

「そっちからも来るって言うなら...!」

Gビットがビームソードを片手に吶喊するのを認め、コクピットブロックへの背面突きでこれを阻止。左手のネクサスォードを薙ぎ払い撃ち、挟撃を仕掛ける連中を退ける。そしてストライクJOKERは姿を消した。モビルドール達が索敵に移行する刹那、突如として出現したストライクJOKERに薙ぎ倒され爆散した。

「こ、この距離ならまだ.....動けなくならずに済みそうだ.....!」

一度はZeuSを倒した人間である。ここで折れるわけには行かない、と己を奮い立たせた。だが連戦に次ぐ連戦で、既に体力が摩耗しきっていた。精神力やら根性などではどうにも出来ない所まで来ていた。

「何だ......!?身体が、重い......こんな所で終わりだってのか.......!?」

デスビーストがぬっと目の前に飛び出し、棍棒型ビームライフルを脳天めがけ振り下ろしてきた。エスはあわや撃墜かとその行く末に思考が止まる。しかし。

「.......動きが、止まった.....?」

デスビーストの動きがピタリと停止する。そう思ったが内部から光を発して爆裂した。爆風によりストライクJOKERはその場に転倒する。だがそのお陰で、この事態を引き起こした者の正体を知る事ができた。

「真っ白な.....フリーダム.....」

ストライクJOKERの視線の先、天空に1機のMSが。紫のラインが走った純白の装甲を身に纏い、ハイヒールブーツと鎧を組み合わせたような脚部を持つ躯体。そして背中には羽根型の空力制御バインダーではなく、エールストライカーやジェットストライカーの類らしき、航空機の主翼めいた物が取り付けられていた。携える火器も、フリーダムのとは異なる2つの銃口を備えたライフルであった。カラーリングと素体の特徴も相まって、エスにはどこか天使を彷彿とさせる佇まいをしている。その純白のフリーダムは、ビームライフルの下銃口にエネルギーを収束させ放出。照射されたビームの威力は凄まじく、大地を抉り取りながらモビルドールの群れを呆気なく葬り去ってしまった。そして航空翼に備え付けられたデバイスを解き放ち、更に奥に待ち構える敵に向かって突撃させる。何本ものホーミングレーザーが、次々とモビルドールを射抜くのも束の間、純白のフリーダムがサイドアーマーからビームサーベルを抜き放った。もう片方のサイドアーマーからも柄を射出し、空中でドッキングさせアンビデクストラスハルバードとし、敵陣へ突入する。着地するや否や、素早く左右に切り払い前線を作り出した。更に頭部のレーザーバルカンを掃射、敵の視界をすべて潰していきながらビームサーベル二刀流で、無駄なく且つしなやかな身のこなしで斬り伏せた。呆然と見つめるエスは、その戦い様からある人物を連想させる。

「あの動き......女の人なのか......?まるで....」

彼の独り言が聞こえたのか、純白のフリーダムがこちらにも一瞬だけ振り向いた。

「一体誰と勘違いしているんだか。て言うかよくそんなボロボロになるまで戦えるわね」

「な......何だって......!?」

一瞬でも知己の者が助けに来たのだと期待したが、物の見事に裏切られエスは唖然とした。挙げ句初対面にも関わらず、この言い様である。流石のエスでも、戸惑うしかない。

「ほら、ボサッとしてる時間は無いんじゃない!大体、こんな時に真っ当な判断が出来ないなんて、どうかしているわ。アンタは一人で戦ってるんじゃないんでしょ?」

「どうしてそれを.....!?」

小さく舌打ちが聞こえ、エスは軽く身震いした。彼女が何に苛立っているのかまでは分からないが。

「いちいちアンタに答える義理は無いっての!これだからオタクは嫌なのよね....ほらさっさと帰れ!」

純白のフリーダムが徐にストライクJOKERを立ち上がらせ、戦場から離れるのを促すかのように突き飛ばした。

「嘘だろ.....こんな経緯で撤退するのか!?あぁもうそうするしかないのは分かってんだけどさ!」

とうとうエスは髪を掻きむしり、已む無くストライクJOKERを戦場から離脱させるのだった。

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