創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius 作:JNEXEL
リョウマ・アルキメデスこと水崎 諒馬は、スワン・マスターピースを仲間に加え動き始めた。スワンの知り合いが経営していると言うカフェで作戦会議を始めるが、突然彼女の元にとある通知が届いた。その内容は、「無差別に破壊を行うダイバーがいる」と言うものだった。リョウマ、弘、スワンの3人は現場へ急行するが―。
と言う事で第7話どうぞ!
「水崎 諒馬....お前を、消す」
イフリートコラプスがふわりと浮き上がり、飛び込みながらヒートサーベルを、ビルドレイザーの頭を貫こうと切っ先を向けた。
「俺ってそんな有名人だっけ?嫌なもんだなぁ....」
口ではいつもの調子だが、リョウマは内心焦りを感じていた。振るわれるヒートサーベルを避けながら、相手に対し有効な武装はないか思考する。そして突き出されたヒートサーベルを握る左手を掴み、引き寄せてカウンターを決める。
「ウェポンビルドアッブ!」
ビルドレイザーの右腕には、先端に高速回転するドリルを持つ武器が形成された。正拳突きの要領でドリルを叩き込んだ。しかし―。
「そんな物で勝てるとは思わない事だ」
装甲に接触する瞬間、イフリートコラプスが右手に持ったヒートサーベルで一撃を受け止めた。かなりの衝撃と掘削力により刀身は砕け散るが、腕からビームの棘を発振させ逆に殴り返した。
「形成が間に合わない....!?うぁああッ!!」
イフリートコラプスの腕から発した"ビームニードル"によって、ビルドレイザーの右肩装甲が突き破られた。幸い関節に達していなかった為、戦闘の続行は可能だ。しかしこのまま真正面から戦う方が不利なのは明白だった。
「しょうがない.....ちと頭使うか。ウェポンビルドアップ」
ビルドレイザーの右腕に着いていたドリルが消失し、その代わりにイカを模したユニットを形成した。先端部に開口している穴から勢いよく黒煙を噴出し、イフリートコラプスの視界を奪った。
「そんな手を使おうが....今は勝敗など無関係だ」
シューインは真っ黒に染まったモニターを眺め、指を組んだ。レーダーの方へ目を遣ると、ジプシーのノアールロータスが2機のMSと交戦しており、上手くこちらから引き離してくれているのが分かった。何故かビルドレイザーの反応は消えていたが、何をするつもりなのか粗方見当がついていた。
ドラグハートは強引に茨を引っ張り、手繰り寄せた。森の中から引きずり出せばドラグハートにも有利な状況が生まれるが、相手もそれを警戒してか一向に出てくる気配を見せない。
「スワン!敵は見つかってんのか!」
敵の正体を探るためにスワンのF91-Mが先行したが、何ら報告が上がらなかった。弘はF91-Mに通信をかけて、状況を聞こうとしたが応答がなかった。
「アイツやられてんじゃねぇだろうな!?冗談じゃねぇよ!」
ドラグハートは大きく幅跳びをし、更に茨の根元に寄って再度引き寄せた。
「まだ探し始めたばかりなのに見つかる訳....!」
一方のスワンは、聞こえぬように愚痴をこぼすが近くからガサガサと草木が揺れる音が聞こえた。まさかと音のする方へ振り向き、カメラアイの解像度を最大にした。ジェットペネトレイターのビームマシンガンをアクティブにし、その周辺に向けて放った。その刹那、草叢からF91-Mを捕縛しようと赤い茨が飛び出してきた。スワンは素早く反応し、ウェポンセレクタからビームサーベルを選択する。F91-Mはリアアーマーからビームサーベルを引き抜き、茨を弾き更に接近していく。だが茨は軌道を大きく変え、背後からF91-Mを突き刺そうと迫る。F91-Mは真横に大きく飛び退き、回し蹴りで茨を叩き落とし草叢へ向けてビームマシンガンを斉射した。
「そこだ!!」
F91-Mの背部から翼のように伸びる、ミノフスキーブースターを展開した。青白い粒子が一気に放出され、V2ガンダムと同様の光の翼を広げはためき一つで草叢を吹き飛ばしてしまった。
「あら.....もう見つかってしまったのですね?勘の鋭いこと」
想定よりも早く居場所を掴まれた事に、ジプシーは少々驚きつつも落ち着き払っていた。そのまま左手に持った茨を勢いよく引き寄せた。木々を薙ぎ倒すような音を立てながら引き摺られたのは、ドラグハートだった。
「何てパワーだよ.....あ、アンタは!?」
「ふふ....お久しぶりですね、常岡 弘さん」
ノアールロータスを前に、弘は唖然とした。まさか諒馬の言う通り、こちらの敵だった。しかし弘としてはまだ信じたくなかった。
「冗談だろ....あの変な機体の仲間だってのか...」
「私は私の正義を貫く。それだけです」
ノアールロータスは茨の拘束を解き、一本の剣に形状を変えた。超硬度ワイヤーにより鞭のように運用できるが、一定値の電力を送り込む事で棒状に硬化し、剣としても使えるようになっている。F91-Mが割って入り、ビームマシンガンを撃ちながらドラグハートの体勢を立て直す為の時間を稼ぐ。ノアールロータスは二振りの茨の剣を華麗に振るい、光の矢を弾くと片方のみを鞭に形状変更、勢いよく薙ぎ払った。
「その程度、見える!」
F91-Mがビームシールドを展開し鞭を防いだ。そのまますかさず前進し、ジェットペネトレイターのブースターを点火して推力を引き上げた。
「そう.....この足に敵うと思って?」
ノアールロータスはくるりと回りジェットペネトレイターの一撃を受け流し、背後にある大木の枝に向けて鞭を伸ばし飛び上がると、ドラグハートの頭の近くに着地した。
「この機体の機動性を舐めないでください!」
F91-Mもジェットペネトレイターのブースターを切り、グルリとバレルロールして向きを変え、両手にビームサーベルを構え斬りかかる。ノアールロータスは茨の剣を振り上げて斬り結び、胸部に埋め込まれたビームバスターを放った。着弾する直前、F91-Mがビームシールドを起動して受け止めた。だがそれでも絶えず前進し続ける。そしてスワンは間合いを得たと感じ、ビームシールドの出力を切り替えた。
「いざッ!!」
「その手を使ったのね....!」
ビームシールドは形を変え、幅広の刀身を形成した。シールドとしての機能は損なわず、ビームバスターを防ぎながら大きく踏み込んで薙ぎ払い、ノアールロータスの胸部に裂傷をつけた。
「常岡さん!立ってください!ここを切り抜けて水崎さんを助けないと!こんな所でダメになってどうするんですか!」
スワンは強引にレバーを動かしてノアールロータスを突き飛ばし、ドラグハートを引き上げて立たせた。
「.....そりゃ、そうだよな.....もうやってやるッ!!」
弘が戦意を取り戻したのに呼応し、ドラグハートの両肩から青と金の風が吹き出した。ぐっと身を屈め、そのまま一気に駆け出した。一瞬で間合いを詰められ、ジプシーは思わず目を疑った。
「こ、これだけの速度で....!?撤退するしか...!」
ノアールロータスが鞭を振り抜き、ドラグハートを弾き飛ばそうとする。しかしそれよりも早くF91-Mが動き出した。両腕のビームシールドで鞭を斬り落とし、その間にドラグハートがノアールロータスの懐へ飛び込み、渾身のストレートを顔面に叩き込んだ。
「俺の邪魔はさせねぇッ!!」
「うぁあッ...!!?り、離脱しなければ!」
殴り飛ばされた勢いを利用してバーニアを使い上昇、バトルエリアから離脱した。
「なっさけねぇ所見せちまったな....もうこれで本調子で行けるぜ!」
弘はモニター越しにサムズアップし、それを見たスワンはにっこりと笑った。
「さて、そろそろ水崎さんの援護に行きましょう!」
「けど諒馬の奴....どこにいんだよ?レーダーには映ってねぇぞ」
弘の発言を受けスワンも急いでレーダーを確認した。彼の言う通り、ビルドレイザーの反応が完全に消えていた。もしかしてさっきのイフリートにやられてしまったのでは―。そんな想像がスワンの脳裏を過ぎった。
「......と、とにかく行かないと分からないでしょ!」
F91-Mとドラグハートは森を飛び出し、先程の場所へと戻った。
「ジプシーが撤退したと言う事は、奴らか....」
シューインは遠くからやって来る2つの反応に目を細めた。となれば1対3で戦う事になるが、いずれにせよビルドレイザーで無ければ容赦なく潰す気でいた。シューインが欲しているのは、現状のビルドシステムの情報だけである。シューインはレバーを踏み込み、イフリートコラプスを高空へと飛ばした。刃が折れて使い物にならなくなった方を、脛のホルダーに収納しヒートサーベル一本のみとなった。
「真正面からとはいい度胸だな!」
ドラグハートが先行し、拳に炎を纏わせ突進する。イフリートコラプスは左腕からビームバルカンを撒き、牽制すると僅かに高度を落とした。
「お前如き相手にする価値も無い」
イフリートコラプスがヒートサーベルを振り上げ、ドラグハートの足を切断しようとした。だが何かに弾かれたかのように、刃が通らずシューインは舌打ちした。ドラグハートの膝にある青いパーツから、薄っすらと光が漏れ出ていた。
「おおっと、足をやられるところだった......今度はこっちから行かせてもらうぜッ!」
今度は右足に炎を這わせ、一回転して踵落としを叩き込んだ。イフリートコラプスは咄嗟に左肩からビームニードルを発振させ、迎え撃つが踵落としは装甲の中央部に命中し、弾け飛んだ。イフリートコラプスが一時離脱を図り飛び退くが、そこへすかさずF91-Mのジェットペネトレイターが食らいつく。ビームマシンガンを放ちながら突進した事で、イフリートコラプスの左腕を封じ込め、脇腹めがけ突きを放った。
「水崎さんの敵、討たせてもらいます!」
「何を、言っている...?」
イフリートコラプスがジェットペネトレイターの切っ先を蹴り飛ばした、その瞬間。
「勝手に殺さないでもらえるかな?俺はこの通り、ピンピンしてるんだ」
背後からワイヤーが飛んで来、イフリートコラプスの背中にアンカーを刺し込んだ。シューインはモニターにミニウィンドウを表示させ、背後の様子を見る。先程まで姿を消していたビルドレイザーがいた。機体を旋回させ、脚部ホルダーから折れたヒートサーベルを引き抜き、再装備した。
「そうか....ビルドアップ」
一方リョウマは、ウィンチユニットに逆回転をかけてイフリートコラプスを引き寄せようとした。引き込んだ上で蹴り飛ばし、再拘束して目的を聞き出そうと考えていた。しかし、イフリートコラプスの起こした現象にその思考が吹き飛んでしまった。何とイフリートコラプスの折れたヒートサーベルに、光が集い刀身を再生させ、ワイヤーを切断したのだ。
「うわ、何だ一体....!?刃が再生した.....?」
「お前でも気づかなかったか.....まぁ、その方が好都合だが」
猛烈な勢いで迫りくるイフリートコラプスに対し、ビルドレイザーはビルドライフルを連射、左腕のウィンチユニットを消去して新たな武装を形成する。
「来る前に何とかしなきゃマズイな.....ダブルビルドアップ!」
ビルドレイザーを囲う形でファクトリーのエフェクトが現れ、イフリートコラプスの斬撃を跳ね返した。そして左腕にはアレックスの腕部ガトリング砲にも似た武器を、背中にはビルドブースターを装備した。しかしビルドブースターは、従来のビーム砲とは異なり大型のビームガトリングガンとなっていた。ビームガトリングガンを乱射しながらイフリートコラプスを拘束、ビルドライフルでヒートサーベルを撃ち抜いた。
「武器を簡単に再生出来るような機能は、原作世界には存在しない物のはずだ....DG細胞だって利用法はダイバーズだと確立されていない.....そして相手はアーネストの人間.....」
リョウマは「まさか!?」と声を上げた。イフリートコラプスにも、ビルドシステムに準ずる機能を備えているかも知れない、と言う恐ろしい想像をした。
「何かに気づいたらしいな....そうでなくては困る...が」
撃ち抜かれたヒートサーベルを見て、シューインはボイスチェンジャーを解除し、宣言する。
「ウェポンビルドアップ」
リョウマの恐ろしい想像は、見事に的中してしまった。そしてイフリートコラプスから聞こえる声に、妙な覚えがあった。ヒートサーベルの刀身がみるみるうちに再生したが、イフリートコラプスは何もせずに虚空へと飛び去った。
「諒馬!お前今までどうしてたんだよ!」
ドラグハートがビルドレイザーの肩を掴んだ。
「そりゃあ、今の奴と戦う為にジャミングとステルスを同時に.....いやそんな事より、奴との戦闘リプレイ、後で見せてくれ!確かなきゃなんない事が出てきたんだよ」
3人は現実世界に戻り、ドラグハートとF91-Mの戦闘リプレイをコンピューターにコピーして再生した。
「あの、気になる事って何ですか?」
奏は諒馬の隣に座り、画面を眺めながら首を傾げる。弘も背もたれに手をかけて同じくリプレイを見る。
「あのイフリート....ヒートサーベルを再生させてたんだ。普通ならどうやっても出来ないくらいに、難度の高いやり方でようやく、実装に漕ぎ着ける位の代物だ.....しかもあのパイロット、"ビルドアップ"と言ってたしな......まさか俺以外にビルドシステムのデータを持ってる奴がいるなんて.....最っ悪だ」
しかしどの視点から見ても、ヒートサーベルの再生現象を確認出来たのは、ビルドレイザー側のリプレイだけだった。F91-Mの方でも何度か再生して、それらしき場面を見つけたが写りが悪く、明確に分析出来るような物とはならなかった。
「あのイフリートも、ビルドレイザーと同じって事ですか?」
「そう見て間違いない......何て事だ....!」
諒馬は悔しげに呟き、リプレイを停止した。
「なぁ諒馬。そのビルドなんたらってのパクったんなら、そいつももしかしたらよ....」
「そうに決まってるだろ!そうじゃ無かったら説明がつかない!」
反射的に声を荒らげ、諒馬はすぐに我に返った。そのままラボを出て、外へ向かった。
「......ここか」
ダイバーズのとあるバトルエリア。夜の摩天楼を舞台とした戦場、その中でも一番高い塔の上に1機のMSが降り立った。スカーフにも似た布を靡かせる青紫の影は、まるで忍者のようであった。両腕に装着した武装を回転し、ブレードを前面に向けると身を屈め一気に跳躍、目標めがけ一直線に降下した。その目標は、ガイアインパルスとサイコ・ドーガだった。
「何だぁ!?ヨシ、避けろ!!」
そう叫んだのも束の間、ガイアインパルスのシルエットが半分に斬り裂かれ、腰から引き抜いた鉈のような剣で頭を刎ね飛ばされた。サイコ・ドーガはシールドのシュツルムファウストを放ち、逃走を図るが"ナイトシーカー"の目はそれを見逃さなかった。素早く前へ飛び出し、地面を蹴って大きくジャンプすると、腰部右側に装着していた巨大な手裏剣を投擲した。凄まじい速度で回転しながら接近する手裏剣に、サイコ・ドーガのダイバーは恐怖した。ビームアサルトライフルで破壊を試みるも、尽くビームは無効化されその勢いを殺せなかった。手裏剣がサイコ・ドーガのビームアサルトライフルを、真っ二つにするのと同時にナイトシーカーはバーニアを全開にして、両脛からナイフを引き抜いた。そして投擲し、サイコ・ドーガの両肩を貫いた。そのまま勢いを殺さず、両腕のブレードを再展開して、今度はコクピットを引き裂いた。
「な、何なんだこいつぁ!?」
全身をズタズタにされたサイコ・ドーガが消失し、ナイトシーカーは武器をマウントし直して着地した。ナイトシーカーの目と鼻の先には、現在も修復の最中にある場所があり、サイコ・ドーガ達はここの封鎖を突破して妨害をしようとしたのだろう。
「"あの人"の妨げになるものは、全て排除する.....それだけが私の存在意義....」
ナイトシーカーのダイバー、比良坂 舞夜は静かに呟きその場を後にした。その様子を遥か遠くから観察しているMSが1機。真っ黒な外装に身を包んだガンダムフレーム機、ガンダムウヴァルだ。
「やっぱ、獣を鎖から解き放つと、ああなっちまうんだよなぁ...んま、どう動こうが知ったこっちゃないが」
[次 回 予 告]
諒馬の元に届いたメール。存在しないはずの"彼女"からもたらされた情報により、現在も尚未修復となっているエリアが存在することを知る。それを受け、リョウマ達は"クラックゾーン"の調査に乗り出した。
次回、創造戦士ガンプラダイバーSide:Genius
File.8 断片のRETURNER
爪痕がこんなに残ってるなんて、あの事件は本当に....