※この作品はR-18です。

創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius   作:JNEXEL

9 / 71
[これまでの創造戦士ガンプラダイバーズ Side:Genius]
ガンプラダイバー リョウマ・アルキメデスは、スワンが受けた情報を確かめるべく現地へ向かう。そこで対峙する謎のイフリート。イフリートが使う能力はあろう事か、ビルドレイザーに搭載されているビルドシステムその物だった。完全にイレギュラーな事象に、諒馬はアーネストの目論見に気づく。そしてある人物との再会という数奇な運命まで引き寄せた。

さぁ、第8話はどうなる?


File.8 断片のRETURNER

時刻は午前3時を回る。奏と弘が帰宅してからも、諒馬はイフリートコラプスとの戦闘データの解析を続けていた。徹夜は慣れており、肉体的な体力には苦労は無いが、ビルドシステムに準ずる物をどう入手するかを考え続けた為、上手く頭が回転しない。ヒートサーベルの再生シーンを何度も繰り返してリピートしては、ビルドレイザーのビルドアップと照合する。

(.....やっぱり全く同じだ.....)

生成速度には数ミリ秒の差はあるものの、形成時のエフェクトや攻撃判定は全く同じ。つまりイフリートコラプスもまた、ビルドシステムを搭載していると証明できた。

(ビルドシステムのセキュリティの権限は俺しか持っていないはず。なのにアーネストとは言え、外部の人間がそれを搭載した機体を持っていた.....クラッキング....?)

思い立つと、すぐに作業に取り掛かった。ダイバーズの各サーバにアクセスし、不審な記録が残っていないかを隅々まで調べる。しかしそれらしきものは全く見当たらず、諒馬は唸った。栄養ドリンクの蓋を開けながら、戦いの事を思い出した。妙な引っ掛かりが気になり、冷蔵庫を閉めた途端にその疑問が晴れた。

「あのシューインってダイバー.....やはりそう言う事か!」

諒馬は倒れ込むようにソファーに座り、膝を殴りつけた。ビルドアップを宣言した時のシューインの声は、諒馬がよく知る人間の物だった。

「東郷さん.......!」

 

翌日、奏は諒馬から指定された時間よりも早めに、ラボにやって来た。しかし一番最初に目に飛び込んで来たのは、机に伏して気を失っている諒馬の姿だった。奏は慌てて諒馬の肩を叩きながら呼びかけるが、一切の反応が無かった。

「水崎さん?......水崎さん?.....あれ?これって....」

諒馬の机に置かれたモニターは3台に増えていた。ビルドシステム調整用の物、前回の戦闘リプレイを再生している物、そして夥しい数のコマンドプロンプトウィンドウを表示する物だ。机の前や真横に備え付けられているホワイトボードは、付箋やアルゴリズム図式、擬似言語によるソースコードの雛形がびっしりと書き込まれていた。奏や弘が寝ていたり、日常生活を過ごしていたりする中で、諒馬はただ一人で途轍もない量の作業を熟していたのは、想像に難くない。

「うぅ.....あ?ぁあっ!!!?」

突然諒馬が飛び跳ねるように立ち上がり、奏は思わず奇妙な叫びを上げてしまった。

「何ですか!?急に....」

「.....あれ、何で白鳥さんがここに?まだ1時間も早いよ?」

諒馬は奏が来た事に驚き、腕時計を見ながらコーヒーを飲み、「うっわ不味くなってら...」と顔を顰めシンクに捨てた。

「今日は早めに上がれたので。水崎さんこそ、こんな時間まで....」

「俺はこれが仕事だから。昨日の奴の事、気になって夜も眠れなかったもんだし」

「あのイフリートも、ビルドレイザーと同じだって事ですか?」

「認めたくは無ぇ....けど事実に間違いない。アーネスト側に、ビルドシステムが渡った経路も探らなくちゃ行けないし。奪ったビルドシステムで何をしようとするのか....その真意も知る必要はある」

未だ疲れが抜けきっていないのか、諒馬は力なく椅子に座り、ビルドレイザーを手に取り眺めた。諒馬と言えど、ビルドシステムを奪取されるのは予想外だったのだと、彼の表情から見て取れた。

「その、ビルドシステムが奪われるとどうなるんですか?」

奏は自分の着ていたコートをハンガーに掛け、専用の机にトートバッグを置いた。

「あれの本来の使い道は話したろ?」

「確かコロニービルダーのダイバーズ版、でしたっけ」

「ああ。もしそれを悪用すれば、仮想世界そのものを破壊する事だって出来る....造れる物なんだから、壊すのも当然....と言う奴だ。それに、ビルドシステムはどんな物もビルドしてしまうから、俺自身の物にもそれなりのリミッターをつけている。ビルドシステムで禁忌の兵器.....ガンダム世界における大量破壊兵器を作らせない為に」

諒馬はマウスをダブルクリックした。中央のモニターに複数の画像が映し出された。コロニー落とし、ガンダム試作2号機のアトミックバズーカ、ソーラ・レイ、コロニーレーザー、小惑星アクシズ、バルジ砲、ガンダムXとGビットによるサテライトキャノン同時発射、∀ガンダムの核弾頭、本来の性能によって引き出された月光蝶、サイクロプス、ジェネシス、メメント・モリ、プラズマダイバーミサイルなどと、ガンダム世界における大量破壊兵器は枚挙に暇がない。

「これだけの物を作ったら....ゲームどころの話じゃ無くなりますよね.....」

奏はこれらの画像を目の当たりにし、血の気が引く様な感覚に襲われた。

「奴らならこれを利用してでも俺や、かつてZeuSが関った物を抹消しようとするだろうな.....特に"ZeuSの亡霊"扱いされてる俺を消すのに躍起になってるはずだ。ビルドシステムを奪って、当人の前で使うくらいなんだから」

 

数時間後、弘もラボにやって来た。

「奏ちゃんもう来てんのかよ....つーか、アイツ、何かあった?」

諒馬が何も言わず頭を抱えているのを見て、弘は給湯室でコーヒーを淹れる奏に問うた。

「死んだはずの人からメールが来たんだって....言ってました」

「はあ?何だそりゃ、死人からメールって」

現実味の無い話に弘は肩を落とし、リュックサックからシリアルバーを数本取り出した。

「て言うか諒馬もそう言うの信じんだな。幽霊がどうとか死人がどうとか」

リンゴ味と書かれた袋を開け、シリアルバーを頬張る。奏は二人にカップを配りコーヒーを注いだ。暫くして諒馬は横目で弘を見て、再びモニターに視線を戻した。

「信じるも何も、事実だ。お前の後輩とかとは、事情が違い過ぎる」

「望とかとはってどういう意味だ!」

弘はむんずと諒馬の襟首を掴み、睨みつけた。だが諒馬の顔は悲痛さと罪悪感、そして困惑で塗れていた。これには弘も追及できなくなり、手を離してモニターに目を遣った。

 

"件目:調査依頼

本文: 交流広場、バトルエリアそれぞれにて未修復エリア"クラックゾーン"が観測されました。至急調査協力を要請します。交流広場第三区画で合流を。

比良坂 舞夜 "

 

「クラックゾーン?何だそれ?」

メールの内容を理解出来なかった弘。諒馬はウィンドウを閉じ、スキャナを起動した。

「ZeuS事件についてそれなりに勉強してから聞いてくれ。要するに事件によって仮想世界を保護するセキュリティ.....壁みたいな物の一部が壊れたまま放置されてるって事....さて、行こうか!」

諒馬は手を叩きテンションを強引に普段の調子に戻し、スキャナの上にビルドレイザーを置いた。弘も奏もやや困惑気味に準備し、3人はダイバーズへ意識を飛び込ませた。

 

交流広場第三区画。ここを比良坂 舞夜なる人物が合流ポイントに指定していた。リョウマが到着してから頻りに辺りを見返しては、足早に先へと歩き出すのでスワンは、軽く溜息をつきながらコートの袖を引いた。

「そんなに焦ってたら見つかる物も見つからなくなります」

「あぁ、そりゃそうだね....済まない」

特に異変もなく、普段通りの景色が広がる街並みを歩いていると、再びリョウマが走り出した。スワンも弘も急いで後を追いかける。やって来たのは、マルシェのような催しが行われている公園だった。基本的には個人制作のアバター用のウェアや、限定品の飲食物が売られている。リョウマは人の波を掻き分けて奥へ奥へと進んでいく。

「あぁもう!水崎さん!全然見えない....見えなくなった!」

元より人混みが苦手なスワンは、その背の低さも相まってリョウマを完全に見失ってしまった。

「こりゃ見つけるのも大変だぞ....!」

弘がスワンの手を引き人混みの中へ突入した。

「お兄さん達カップルかい?これなんてどうよ!今なら安くしとくよ!」

絵に描いた様なインド人に声をかけられ、弘とスワンが目を向けると、そこには金の刺繍を至る所に施された豪華な服が。しかもペアルックと来ている。弘もスワンもこれには引いてしまった。

「悪いけど、俺ら人探してんだよ。ほら、行こうぜ」

「あんなの誰が着るんでしょう....?」

「お前強心臓過ぎんだろ。聞かれたらどうなんのか分かんねぇぞ....」

もはや悪趣味としか言えない物を前に、スワンですら直球的な感想しか出なかった。

「今見えたのが本人なら.....畜生....どこだ....」

リョウマは既にマルシェの広場を抜け出しており、舞夜と思しき影を見つけられなかったので再度突入を考えていた。

「リョウマ」

建物の陰から呼ぶ声が聞こえ、リョウマはぎょっとして振り返った。紫の髪と白い肌。間違いなく、諒馬が最後に見た彼女の姿その物だった。リョウマは急いで向かい、真相を確かめようとした。

「君なのか....!?無事だったなんて....!」

リョウマに両肩を掴まれ、舞夜は半ば驚いた顔をした。

「この身体だけは....と言ったところです。ですが.....記憶の殆どは保持していない...」

「でも何で俺のことは知ってたんだ?」

「私とあなたの間に、何かしらの繋がりがあった....それしか分かりません」

舞夜がそう告げると、リョウマは手を離して後退り壁にもたれかかった。彼女の記憶が残ってい無いというのは想定外だった。寧ろ彼女が今も尚ダイバーズの世界で生きている事自体、あり得るはずの無い話である。何しろ彼女は既にこの世を去っているのだ。そう思っていた。

「申し訳ありません....」

「いや、いいんだ。生きててくれるだけで充分だ。....さて、例の話の続きを」

「おい、諒馬!いきなり走り出して何のつもりだよ!」

居場所を突き止めた弘が声を上げてこちらへ走ってきた。その後に続く形でスワンも現れた。

「てか、この女があれ?クラクラゾーンか何かの?」

「クラックゾーンだバカ。この人は比良坂 舞夜....かつての俺の同僚だった人だ」

「バカ言うな」

リョウマの紹介を受け舞夜は軽く一礼したものの、無表情かつ生気を感じさせない眼差しをしていた。弘は一瞬だけ身震いして「マジかよ」と呟いた。

(この人....本当に人間なの....?)

スワンは耳がいい方だった。故に舞夜から聞こえる、駆動音めいた音に首を傾げた。

「この方達は開発チームには居なかったような....現行の運営ですか?」

舞夜は当然二人に見覚えがない。

「いや、何だろう....単に協力者だと思ってくれ。それぞれの目的はあるんだけどな....そろそろ行こう」

4人はバトルエリアへと転移した。

 

ビルドレイザー、ドラグハート、F91-M、ナイトシーカーが降り立ったのはエゥーゴが保有するドック艦"ラビアンローズ"だ。放射状の形をした本体から伸びるドックアームは、さながら巨大な花のようである。

「ここなのか.....舞夜、案内頼む」

「了解」

ナイトシーカーに追随してラビアンローズを離れる。

「おい、これどうやって動かしゃあいいんだ?体がごちゃごちゃしてんだよ」

ドラグハートが宇宙で"溺れている"ように見え、スワンは思わずくすりと笑いそうになった。

「モビルファイターを使ったことはないから正しいかは分かりませんが、水の中を泳ぐ感覚でいいと思います」

スワンの言う様に、弘は水中を泳ぐイメージを描き機体を動かす。しかしその思考が完全に表に出てしまい、宇宙でクロールすると言う奇妙な光景を生み出した。ビルドレイザーが近寄りドラグハートの頭を叩いた。リョウマが呆れているのは見て取れる。

「あのね....スラスター使いな?皆と同じようにすりゃあいいんだよ」

「んな事最初から出来てたら苦労しねぇよ!」

噛み付こうとする弘にリョウマは面倒に感じ、ビルドシステムを起動した。

「わぁったわぁった....だったらこれ使って感覚に慣れなさいよ。ユニットビルドアップ!」

ドラグハートの背中にフォースシルエットが形成、装着された。シルエット本体の上部からは、レーザーを発するセンサーユニットが搭載されており、常時ビルドレイザーの移動経路をトレースするようになっている。ビルドレイザーが踵を返し、ナイトシーカーに合流する。

「少し距離があるようです。悪用される前に急いだ方がよろしいのでは」

ビルドレイザーのモニター、ミニウィンドウ越しに舞夜が映る。相変わらず表情は無いが、口調から大体の感情は分かる。

「ああ、分かってるよ。あのバカを教育してやんなきゃ行けないからなぁ....さて急ぐぞ!」

リョウマから何度も小馬鹿にされ、憤る弘を宥めつつ、スワンもペダルを踏みF91-Mの速度を上げた。しかしリョウマも内心複雑だった。努めて明るく振る舞うにしても、生きているはずの無い人間が目の前にいる。この現象は一体何なのか推察しようにも、前例が存在しない。

(今は考えても仕方ないか........)

数十分ほど航行していると、舞夜からの通信が入った。どうやらこの周辺にクラックゾーンが存在するようだ。リョウマはじっと目を凝らし周囲を観察する。すると西の方角に奇妙な光を見つけた。細長い線のような赤い光が、漆黒の宇宙の中にぽつんと浮かんでいる。

「......あれか!」

その光は宇宙空間に走る"ヒビ"のようになっていた。一言で表せば空が割れていると言うところか。リョウマは更に機体をクラックゾーンに近づけさせる。大きなヒビとなっている場所から見えるのは、真っ赤な光を伴った空間だった。

「この中に放り込まれるとどうなるんだ?ウェポンビルドアップ!」

ビルドレイザーの左手にザクⅡのクラッカーが現れ、それをクラックゾーンに放り投げた。クラッカーは電子の揺らぎを発しながら、跡形も無く消失してしまった。

「ここに踏み込めばあらゆる物が消えてしまう、か.....確かにこれは放って置けないな」

本来仮想世界その物にも影響を与える規模の兵装を使用した場合、直ちに修復するようにプログラムされている。しかしこのクラックゾーンは、その修復を阻むかの様に、そして傷を拡大させるかの如く侵食していた。このまま放っておけばどうなるか。考えただけでも寒気がする。

「これが、クラックゾーン.....不気味、ですね....まるで抉り傷みたい...」

スワンの目には、クラックゾーンが人間の傷のような生々しい物に映った。

「ビルドシステムを使えば修復出来ますか」

ナイトシーカーがビルドレイザーの肩に手を置いた。

「それは間違いなく出来るはずだ.....常岡、スワンちゃん....舞夜も周辺の警戒を」

唐突にフォースシルエットとのリンクが切れ、またもや不安定な姿勢になった。弘はモニターに頭をぶつけ、額を擦りながら何とか体勢を立て直した。

「今から何すんだよ?」

「ビルドシステム本来の使い方をする。その間はビルドレイザーは無防備になっちまうんで、守ってくれよって事だ」

ナイトシーカーとF91-Mが散開していくのを見て、弘もドラグハートを移動させた。人生で初めての宇宙で戦う事になるとは誰が想像しただろうか。

「宇宙でやれんのかよ、俺.....いぃや、ビビってもしょうがねぇか!」

リョウマはドラグハートを横目で見送ると、コンソールを操作しビルドシステムを再起動した。コクピットインテリアの照明は一気に減り必要最低限まで落とされ、ビルドレイザーのツインアイも消灯した。機体の稼働エネルギーも限界寸前まで落ち込む。機体の周囲をホログラムのウィンドウが覆い、マニピュレータから立方体型のエフェクトが発せられ、クラックゾーンをゆっくりと埋めていく。このエフェクトには修復用プログラムを内包している為、このような芸当が出来るのだ。

「やはり、来るか....」

舞夜はレーダーに熱源反応が現れたのに気づき、ナイトシーカー両腕のブレードをアクティブに切り替えた。刃先が青く光ったのと同時にバーニアを全開、熱源反応の方へと全速力で向かった。

「諒馬の邪魔をする者は.....!」

緑色のスモーが視界に入り、舞夜の目つきはブレード以上に鋭くなった。スモーもそれに気づき、ハンドバズーカを放つ。ところがナイトシーカーの両足から白い霧を発すると、全く姿を見ることが出来なくなった。スモーがキョロキョロと索敵をするが既に遅く、四肢を分断され達磨と化した。そして、ナイトシーカーが背後に現れた刹那、真上に向かい斬り裂かれ火球に呑まれた。

「え!?何の光!?」

突然光が現れ、スワンは何事かとカメラアイの解像度を最大にした。そこに映っているのは、火球の光を見下ろすナイトシーカーの姿だった。




[次 回 予 告]
次々と見つけ出されるクラックゾーン。ZeuS事件の時に発生した物にしてはあまりにも数が多過ぎた。諒馬達は事件後にも何者かによって、故意にクラックゾーンを発生させているのでは無いかと考え始めていた。修復を進めるために動き出す矢先、再び"黒の薔薇"と対峙することとなる。

次回、創造戦士ガンプラダイバーズSide:Genius
File.9 CRACKの導き

あのバカがまた怯まなきゃいいけどなぁ....
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。