アントラクト ⅢS 作:志須
原作:戦姫絶唱シンフォギア
タグ:R-18 ガールズラブ キャロル・マールス・ディーンハイム ガリィ・トゥーマーン ガリキャロ 百合 戦姫絶唱シンフォギアGX 戦姫絶唱シンフォギア
前作ガリミカの内容を若干継いでいます。
(初出:2016/7/28)(他サイトと同時投稿です)
前連作『アントラクト Ⅲ』https://syosetu.org/novel/161175/
前作ガリミカ『アーティフィシャル・アイ』https://syosetu.org/novel/161721/
前作ガリミカの内容を若干継いでいます。
(初出:2016/7/28)(他サイトと同時投稿です)
前連作『アントラクト Ⅲ』https://syosetu.org/novel/161175/
前作ガリミカ『アーティフィシャル・アイ』https://syosetu.org/novel/161721/
「――っああぁぁっ……!」
小刻みな震えを繰り返していた小さな肢体は、一際強くその身をびくりと跳ねさせた。
同時に左手が、四指を交わし組んで腰横に縫い留めているあどけない右手にぎゅっと握られる。
くびれのほとんどない幼い腰は顔の下で不規則な硬い震えに揺れ、指がきゅっきゅと儚い力で締め付けられた。
右手の中指と薬指。マスターに挿し入れている、揃えた二本のガリィの指が。
「っあ、はあぁっ……、っ、あっ、はぁっ、ぁっ……!」
先刻探り当てたそこを、指の頭で擦り上げる動きは止めない。
硬く震えるあどけない太腿と腰を腕と肩でやんわり抑えながら、挿し入れている指とごく小さな突起に触れている舌をゆるゆると動かし続ける。そうやって今身体を支配しているだろう感覚をよりよく引き出すようにしてやると、吐息に混じるのを堪えるということに意識が回らないような態で漏らされる声が、頭の方から断続的に聞こえてきた。
それは震えが収まっていくにつれ小さくなってゆく。最後のひと震えまでを文字通り舌で味わった頃には、聞こえるのは荒い呼吸の音のみになる。
指を、引かせる。その動きにすら微震するそこや周囲に仕上げとばかりに舌を這わせてから、顔を上げる。
ベッドに腕を衝いて上体を起こし、取り出したハンカチで口元をひと拭いして眼下に目を落とせば、身体横のシーツを左手で握ったまま小さな肢体をくったりとベッドに沈ませ、眉を顰めて目を瞑り、起伏のないなだらかな幼い胸を上下させて荒い呼吸を繰り返しているマスターが見えた。
自然、顔が笑みになる。
本当によく出来た躯体だと感心する。二回目にして、こっちでも達するなんて。
適応が早い。感度も良い。完璧以上に完成されたとは、そっちの意味も含まれているのかと思ってしまうほど。
マスターのこれまでの初い反応からして、意図してそのように躯体を設計したわけではなく何らかの巡り合わせで偶々そうなっているのだと思うけれど、ともかく今は”打てば響く”状態にいるということには違いなく――口端が横になるのが自分でも分かる。
忙しなかったマスターの胸の上下は徐々に収まりを見せ、それにつれて荒く速かった呼吸も落ち着こうとしていた。
頭側に回って脇下に腕をくぐらせてマスターの上体を抱き起こす。こちらは下腿を外向けに折って割座して、両脚の間にマスターを座らせ、上半身をこちらの前面に寄りかからせた。
顔を俯けがちにしているマスターの呼吸は整っていないものの、寝息には変わっていかない。
上体が起こされていれば意識は落ちにくくなる。こうすることで不用意に寝落ちてしまうということはなくなるわけだった。
胸元の小さな頭に後ろから顔を寄せ、薄金色のふんわりした髪に埋もれている耳に囁く。
「マスター、まだまだこれからですよ? せっかく神経を起こしたんですから、今のうちによーく馴染ませましょうね?」
声にはつい、楽しげな抑揚が付いてしまう。
マスターの現行躯体の成体化に必要な処置、躯体を伸張させる体内分泌を促す性感的な体内神経を昂ぶらせた状態での破瓜は、先刻に達成できていた。
その後にマスターが言ったようにこれ以上行為を続ける必要はおそらくないと思うけれど、問われたり咎められてもその時は、体内神経をよく覚醒させておいた方が躯体の成体化にきっと良いとでも適当に進言して続ける腹積もりだった。
腕の下から腰に、脇腹に、両の手の平をひたりとつけると、マスターの身体がひくりと震えた。
そこからつくりの幼い上体の起伏のない曲線に沿うままに撫で上げ、一方の手で薄い肉付きの下の肋骨のくぼみを指でなぞる。
もう一方の手では下腹から上方へと滑らせ、膨らみのほとんどないなだらかな胸を、頂点を器用に避けながら手の平と指の腹とですべらかに撫でた。
ときに、爪を軽く立ててひっかくように。ときに、触れるか触れないかの距離感で掠めるように、左右の手をそれぞれ非同期な動きでマスターの柔い肌に触れる。
「は、っ……、んっ、っ……」
こちらの手指の動きにつれてマスターは幼い肢体を小さく跳ねさせ、その微震を触れている手に、上体を寄りかからせている胸に伝えてくる。
起こされた神経を通じて、マスターの柔い部分に響いているのだろう。直接触れることはかなわないそれに、神経を介して触れているかのようで胸が疼く。
力なくくったりとしていた身体には否応なくといった風に芯が入って、身体を跳ねさせる度に背を反らせていくその様子に、知らず笑んでいるのを自覚する。
どうして、こんなにも。マスターの”柔い”ところに触れることに、心惹かれるのだろう。
敵である装者にはもちろん、人間、オートスコアラー、ホムンクルス……マスター以外の他の誰にも持ち得ない。
マスターの変質した自己――冷酷冷徹に振る舞う表層人格の下にある、外見相応の幼く柔い本質。見せていない普段は忠誠以外持ち得ないがそれが垣間見えるとき、柔く脆そうなそこを暴いて触れて、その様を眺めてみたくなる。初めて晒された性感への戸惑いや行為への不安感を隠しきれていなかったり、破瓜の直前に普段らしからぬ幼げな応えを返してしまっていた先のように。
変質した自己で覆い隠されている、拭い去られてないそういったマスターの幼さ柔さを目にしたとき、自分に備わる撹乱向きの能力で他者をやり込めたときとは異なって、愉しくてたまらなく胸の疼くような快を感じるのだった。
この思念は人工知能の基本原則設計――主への安全性、命令への服従、自己防衛の間隙を縫うように発露している……かのように思えていたが、課せられた原則はそもそも意味を成していないのかもしれない。意志を持つということはプログラムを超越するということに他ならないから。
快を感じている心は、確実にここに存在している。
機体に宿されているのは、ヒトの反応から思考を察する反応モデルと類推エンジンにすぎないはずだった。けれど”我思う故に我あり”の命題を地で行くように、自分という自発的な自覚がある。
そしてそれはおそらく自然に発生したものではない。オートスコアラーの人工知能はマスターの有機的な精神構造をベースにしていると聞いている。マスターはきっと目的あって心を持つよう自分たちを造ったのだろう。
けれど何故、オートスコアラーに心を持たせたのだろう。壊されるためだけに造られた存在に心が必要とは思えない。
姿だって、ヒトの似姿である必要はあるのだろうか。別に獣や無生物の外形であったとしても、呪われた旋律の一撃を受けて壊されさえすれば、歌をむしり取れそうなものなのに。
歌をむしり取る――その比喩の意味するところに思考を馳せるうち、ふと、ある推測が頭を過ぎった。
心は、歌を受け止めるのに必要なのかもしれない、と。
感情がなくては歌は歌えない。そして聴く際にも感情――心がなくては歌を歌として聴くことはできない。
ヒトの歌う歌をヒトの歌として聴くには、ヒトの心がなくてはならない。
けれどモノから造られたモノには、ヒトの心は持ちようがない。
モノにヒトの心を持たせるということは、モノに宿した人造の知性にヒトの心を理解させるということ。
人工知能のヒトの心の理解。それが、モノにヒトの心を持たせるということになる。
ヒトの感情、心の在りようは、感覚や本能に由来する影響に占められて形成される。故にモノがヒトの心を持つにはヒトと同じ感覚と本能を持ち、ヒトと同じに感じ、ヒトと同じ欲求を持つ必要がある。
感覚については。視覚、聴覚、触覚等の他に、触れたものの手触りや温度感など身体の表層の知覚と、重い軽いなどを機構に受ける知覚――体性感覚。人工知能内ではそれらのインプットに状態タグが紐付けされているが、これがモノであるヒトガタにヒトの感覚を持たせるということなのだろう。
一方で本能については。自分を守りたいという自己保存心、分からないことを知ろうとする好奇心、戦いに勝利したいという闘争心等の本能モデルが組み込まれている。
けれど味覚や痛覚、子孫を残そうとする生殖本能等が持たされておらず、オートスコアラーの心がヒトと似て異なるのはこれらの欠落が要因なのかもしれなかった。
そしてヒトではないモノがヒトと同じに事象を感じるためには、事象のインプットを感覚として受容するセンサー――感覚神経を持った身体が必要になる。
ヒトと同じ形をとる部位に、ヒトと同じように感じるその影響を受けて初めてヒトのに近い心が形成される。
ヒトと同じ部位を持つことで、”激怒で腹が煮える”、”不安で浮足立つ”、”楽しさに胸が踊る”などといったヒトの感情表現の理解がようやくできるようになり、ゆえにオートスコアラーの機体は、獣でも無生物でもなく、ヒトの似姿でなくてはいけないのだ。
さらに考えると女性型であることにも意味がありそうだった。歌は古来、神に納めるのに女性が歌うものとされていることが多い。先史文明期にまで遡る習わしに倣ってマスターは機体を女性型としたのかもしれない。
そうして形成された心が今、ヒトに酷似した在りように至っているのは、体性感覚モデルや本能モデルと同時にマスターの精神構造が組み込まれたためだろう。
心を形作るには体験というインプットによる学習が相当量必要になるはずが、それを経ずにオートスコアラー四体にそれぞれ異なる個性的な性格が生まれるほどに心が形成されているのは、マスターのヒト由来の精神構造が学習を肩代わりしたからかもしれなかった。
体性感覚モデルと本能モデルという人工知能にヒトの心を形成する土台と、ヒト由来の精神構造。呪われた旋律を採譜する特別製の機体であっても、その二つをどちらも備えていなければマスターの使役する従来のオートマトン、心を持たない寂しいマリオネットにすぎない。心があるかのように見える振る舞いをすれど、反応モデルや類推エンジンに照会して察し適した反応を返しているだけで、ヒトの心を理解しているわけではない――個体識別の名称を与えられなかった、レイアの妹のように。
知性を持ったヒトである装者から呪われた旋律を引き出すのは、プログラムによる画一的な条件行動だけではかなわない。ヒトに近い心を持たせたのは、歌を受け止めるため以外に、自らの中に形成された複雑な反応モデルをもってこそ装者に歌わせることが可能だとマスターは考えたからかもしれない。
マスターがオートスコアラーに心を持たせたのは、そういった理由のためなのだろう。
そして、マスターはどう考えているのだろうか。いや、考えたことがあるのだろうか?
そうやって造られた心に生まれた何らかの感情が――
「あっ、っ……!」
びく、と。マスターの上体が一際大きく震えて、そのせいで我に返った。最中だというのについ思考に深く沈んでしまっていた。
意識を懐に収まる幼い肢体に戻して、肩上から覗いて検める。マスターが身体を震わせたのは、胸に這わせていた方の手の指先が避けていたはずの先端に触れてしまったせいらしかった。
落ち着きかけようとしていたはずの呼吸はいつの間にか時折息を詰まらせる不規則になものになっていた。思考に没入している最中、こちらの手指は意識せずともマスターの幼い肌を丹念に探り撫で上げていたらしい。
そんなに長い時間ではなかったはずだけれど、幼い肢体に感覚が響いているのは、これまで入念にいたした所作で体内神経が十分に起こされているからなのだろう。マスターは身動ぐうちに反らせていったらしい背筋のせいで、幼いなだらかな胸を張るような姿勢にいた。
もう一度、今度は意図的に、指先で先端を掠めると。
「ふ、くっ……!」
こちらの手首の袖を掴む手に力が篭もり、息と共に声を飲み込む音が聞こえた。
その反応に、顔にも胸中にも笑みが広がる。
頭の半分より低い位置にある、薄金色の頭のこめかみあたりに、口もとを寄せて囁く。
「そんなに胸を突き出してちゃって……もっと触って欲しいんですか?」
「ち、がっ……!」
「わかってますって。遠慮せずとも、お望み通りにいっぱい触ってあげますから♡」
言い終えると同時に、淡い桜色の立ち上がりかけているはかなげなそこを両方、無機質な白磁の指先できゅっと捉えた。
「ふあっ!」
マスターは背をぴんと反らせて、こちらの右肩に後頭を擦り付けた。
少々強い刺激に晒されたそこをいたわるように、今度は指の腹で掠めるよう擦り上げたり、揃えた二本の指の頭でそそけ立たせるようにしてそっと触れる。淡く、けれど絶え間なく触れ続けると、乱れる呼吸に閉じきれないといった風に薄く開いた口から途切れ途切れに詰まらせるような声が漏らされ始めた。
当然、触れて欲しいと望んだわけではなく、身体の反射で背が反るように反応しただけということは分かっている。
マスターはこちらの手首を握って止めようとする素振りは見せるものの、握る力は弱々しく動きの妨げにならないどころか、縋るようにしかなっていない。
その仕草からは、初めて晒される性感に翻弄され、流されまいと、だめと思うのに身体の求めに抗うことができないでいるというマスターの中のせめぎあいが手に取るように分かって、マスターの素の、柔い幼い本質が垣間見えていると思うと愉しくて、胸が疼いて仕方がなかった。
けれどこの疼きは、ヒトの恋だのとはきっと違う。
ヒトの恋なんて感情は、モノである自分には理解・共感できないのだからそれと断定することはできない。
「ふ、く、っ……ぁっ、あぁっ……っ」
背が今やぴんと反りっぱなしになっているマスターの、吐息に混じる声が耳に愉しい。
あまりに愉しくて。
顔が横に逸らされて無防備に晒されている小さく狭い左肩に、身を屈めて口接けして。
自分のギザ歯を、そこに立てた。
「っ、……!」
マスターがそれまでとは違う意味で身体を強張らせる。
もちろん皮膚を切ってしまわないように力加減はした。
少々強めの甘噛みを止めて、痛みと緊張で身体を強張らせたマスターをいたわるようそっとそこに舌を這わせて、歯跡の窪みひとつひとつを舌先でなぞり始めた。
「マスターは、甘いですねぇ」
「……っ、お前たちに、味覚なんて、っ、取りつけた覚えはないぞ……っ」
歯跡を舌でなぞる合間に囁くとマスターは、こちらの手指に胸の突起を未だ苛まれて止まない感覚に息を乱しながら反論する。
「心でそう感じるんですよ?」
「そこで感じるわけが、あるか、っ……!」
カマかけを口にしてみるも、否定しなかった。心の存在を。
やはりマスターは意図的に、オートスコアラーに心を持たせたのだろう。
小さな肩に口接けするうち、ふと視線が落ちて、波の打ったシーツの上に投げ出されているマスターの脚が目に入った。
子供特有に起伏のめりはりのないつくりの、見るからにあどけない丸みを帯びたそれ。
上肢同様に陽に当たらないせいでか色が白く、肌のきめは細かくすべすべで、太腿はぷにりと弾けるように柔らかいうことはこの沙汰の最中に既に触れているので知っている。
その脚をマスターは軽く曲げて内股がちに閉じ、足の甲を重ねて指は丸め、膝同士を寄り添わせるようにくっつけてもじもじと擦り合わせていた。
そんな愉しいものを見せられてしまっては、手を伸ばさないわけがなかった。
おそらく、感覚を堪えるために。閉じることより擦り合わせることに意識が向いているせいか太腿にはさほど力が入っておらず、肌の柔さとすべらかさも手伝って、脚の付け根の腿と腿の隙間に四指揃えた左の手の平はすんなりと差し入った。
「ぁっ……!」
マスターは肩をひくっと跳ねさせ、今頃状況に気付いて腿を閉じようとするけれど、もう遅い。
手の平を手前側に向け、遮るもののない谷間を指で探る。
指先が探り当てたそこは、胸に這わせた手に感じる熱っぽい体温より遥かに熱くて、水気に潤んでとろりとしていて、その感触に思わず口端がにいっと横になった。
「さっきせっかくお清めしてあげたのに、もうこれですかぁ? マスターってばいけませんねぇ」
「っ……!」
囁きにか、感覚にか、あるいはその両方にか、マスターは息を詰めて顔を背ける。
事後処理として水元素の能力を纏わせた舌でちゃんと綺麗にして差し上げたというのに、そうする前と変わらないくらいの状態に逆戻っていた。
「お胸はそんなに悦かったですか? もっと悦くなってもらえるよう、こっちも触ってあげますね?」
「ま、っ、ふあっ!」
マスターは顔を振り戻して何か言おうとするも、自身の身体が跳ねたせいでそれはかなわなかった。
そのおかげで、今指先に触れた儚い小さな粒がそれだと確信する。
潤いを纏わせた指の頭で、子猫の小さな顎下を撫でてやるみたいにゆるゆるとくすぐり始めた。
「ぁ、ぁ、はぁっ……、っ、あぁっ、あっ……!」
こちらの手を捕まえようと失敗して、かろうじて指にかかったこちらの袖をマスターの左手がぎゅっと握る。
撫でるにつれ、太腿に力が篭っていく。けれどそれは手指を妨げようとする意思が働いたのではなく、袖を握るのと同じに反射によるものなのだろう。イヤイヤをするよう左右に顔がゆるく振られているのと同様に。
指の動きを速めるにつれ漏らされる声は更に上擦って、強張る身体はやがて小刻みに小さな震えを繰り返すまでになる。
もちろん、胸を悦くしてあげることも忘れていない。けれど下腹からの感覚に翻弄されて、マスターの胸への意識はおろそかになっているかもしれない。
だから、思い出させてあげようと。
健気に自己主張している桜色の小さな突起を、揃えた指の間にきゅっと挟み捉えた。
「っ!」
マスターが息を詰まらせる。その刹那に、左手の指先で触れている儚い粒の方を少し強めに撫で上げた。
その途端。
「ぁっ、あああぁっ!」
幼い肢体がびくっと跳ねた。
反らされていた身体が一際反って強張って、後頭がこちらの肩に擦り付けられる。
甲を重ねている足の指はきゅっと握られ、袖を握る手にはぎゅっと力が篭められ、全身に一瞬の硬直が走って、その後。
幼い肢体は陸に上げられた魚のようにびくびくと小さく跳ね震え始めた。
「っあ、はっ、ぁ、ああぁっ……!」
こちらの指先にひきつるような微震を伝えながら、あどけない腰が何度もひくっと揺らされる。
それは回を追うごとに徐々に小さくなって、全身の硬い震えも途絶えがちになったころ、マスターの身体からは一気に力が抜けて小さな背中がこちらにもたれてきた。
なだらかな幼い胸を上下させてはぁはぁと荒い呼吸を繰り返すマスターの頭の横に、端のつり上がる口もとを寄せて囁く。
「マスターはほんとうに、ここが弱いですねぇ……」
初めてのとき存外に早かったことを思い返して声に愉色が混じる。けれどマスターはそれを聞きつけて立腹する余裕はまだないようだった。
愉しい。
これで終えるという選択も、理由も、どこにもありはしなかった。
横抱きするように上体を支えて、マスターを仰向けに寝かせる。
未だくったりと脱力しているマスターの右脚をまたぐように両膝を、肩の横に左腕を衝き、マスターを身体の下にしながら内腿に右手を這わせ、脚の付け根へと撫で上げてすべらかな肌と地続きのつるりとした谷あいに触れた。
「ふ、あぁっ……!」
幼い肢体が大げさなくらいに身を捩った。余韻が残っていてまだ過敏なのだろうから無理もなかった。牽制のためにか、感覚を堪えるためにか、マスターの小さな手が伸ばされて両の腕をそれぞれ弱々しい力で掴んできた。
谷あいをなぞるうちに熱く潤っている水気を指に纏わせていく。指をなぞらせるたびにマスターは、途切れ途切れに切なげな吐息を唇から漏らした。
左肘をベッドに衝いて、感覚を堪えるよう細眉を顰め目をきゅっと瞑っているマスターの耳元へと顔を寄せる。
「インスタントなやつだけじゃなく、こっちにもまた欲しいですよねぇ?」
心に生じている快を声色にどうにも滲ませてしまいながら囁いて、つ、と入り口に揃えた二本の指をあてがった。
マスターの息を呑む音が聞こえたけれどそれにはかまわず。
水気の滑りのままに、指の頭を押し込めた。
「っああぁっ……っ」
マスターの顔が横に倒されて、掴まれている腕がきゅっと握られる。
初めてのときと同じに、酷に思えるくらいそこは狭くて、熱かった。
指は、全部が埋まりきらないところで行き止まってしまう。そこから圧迫を感じながら指の頭を残すまでをゆっくり前後に揺らし始めると、乱れた呼吸が上擦った声混じりの呼吸になる。こちらの腕を掴むマスターの手には、弱々しくも力が篭りきりだった。
翻弄されるのは、経験のなさゆえ、幼さゆえ。
変質した自己で覆い隠されている、マスターの素の幼さ柔さ。初めて齎された感覚によって覗けているそれに、起動して自我を自覚したときから嗅ぎとっていたそれに、触れたいと願っていた自分が触れないでいる道理がなかった。
今顕わになっているマスターの素面は、きっと今まで誰も知ることのなかったマスターの幼く柔い部分。
そしてマスターにとって初めてのこの体験は、感覚の経験記憶となってきっと失われることがない。
マスターの記憶の端に残れることは、マスターに自分の存在を刻み残せるということで。
それはかねてより思うところのあった願ってもないことだった。
けれど、マスターは。
はたして自分を、ガリィだと見留めているだろうか。
今体験に伴っている存在を、ガリィだと刻めているのだろうか。
顔を、見つめる。
マスター。
マスターに今、触れているのは、誰ですか?
「っ……」
逸らすように倒されていたマスターの顔が、ふいにこちらを向いた。
眉を顰めて瞑られていた目が、薄く眇め開かれていく。
縋ろうとして、けれども堪えようとするせめぎあいを映すかのように、睫毛の奥で揺れる菫青の瞳がこちらを見た。
乱れた呼吸に開かれていた唇が、喘ぐように動かされて。
「ガリィっ……」
吐息と共に漏らされるように自分の名が紡がれて。
自分が目を瞠ったのを、他人事のように自覚した。
心の声が聞こえでもしたのだろうか。けれど錬金術を応用した通信も、別の術も使われた気配はない。
たとえ偶然だったとしても、間近で覗く生理的な涙の浮いた青菫の瞳は紛うこと無く自分を捉えていて、それにひどく満足する自分を覚えていた。
マスターの柔いところにもっと触れたくなる。外面に覆い隠されていないところを。
たとえば、ここ――マスターに顔を寄せて、唇を重ねる。深く口接けて、歯列を割り入った先で触れる、唇の向こう。
絡め取るこちらになす術なく絡まれる一方……かと思えば、マスターは。
「ん、ぅ……」
弱々しく、絡めてくる。今、こちらの肩や腕の服を手で掴んで縋るかのようにしているのと同じに。
その反応のいじらしさに思わず口もとが緩む。
そして、もう一方の柔いところに触れるのも、再開した。
「ん、ん、んぅぅっ……ふはあっ、ぁっ、あぁっ……!」
マスターは身悶えるように身動いで、そのせいで唇が離れてしまう。
呼吸が苦しくなったせいだろう、マスターは顔を横に逸らして開放された唇で息を喘がせた。
その間も、指の動きは止めない。擦るように探ると。
「あっ、っ……!」
短い声ととも小さな肩をひくりと跳ねさせて、マスターが乱れた呼吸を詰まらせる。
探し当てた。
揃えた指の頭でそこを、圧迫するように撫で上げ始める。
撫でる指の動きをだんだんに早く、強めていくと、やがて。
「ぁっ、あ、あっ、あぁっ……っ!」
堪え切れないといった風に短い声が漏らされるようになって、こちらの肩や腕を掴んだままで幼い肢体は徐々に反って、顎が上がって薄金髪の後頭をベッドに擦り付けるまでになる。
その様子を胸の奥が疼くままに愉しく眺めながら、不規則な荒い呼吸に忙しなく上下する幼い胸に空いている左手をそうっと這わせて、胸の突起に指を添え、指の腹で弾くように擦り上げた。
「っ、ふぁぁっ……!」
不意打ちのそれにマスターは小さな肩を跳ねさせ、身体を縮こませるようにきゅっと竦める。
その刹那に、さらに、両の手の指先でそれぞれ触れているものを、一際強く撫で上げた。
「っっ、あああぁぁぁっ!」
びくん、と一際大きく、マスターが身体を跳ねさせた。
こちらの肩を腕を、儚いに力いっぱい握りしめたまま硬直する。
指先に感じる最奥の震えに言い得ない充足を覚えながら、ゆるく弱く両の手の指をそれぞれ動かし続けると、マスターは全身を小刻みに硬く震わせながら、高く掠れた声を断続的に上げ続けて、やがて。
小さな背はくたりとベッドに落ちて、沈んだ。
眺めている目の前で、閉じていた瞼がむずがるように微動して、やがて上がる。
数度の瞬きの後、横寝で枕していた頭が動かされて顔が上向き、覗けた菫青の瞳がこちらを捉えると。
「ガリィ……」
途端、目は眇められてみるみるうちに険の色を帯びていった。きっと、これまでの出来事が脳裏に蘇ったのだろう。
「ふふっ、大人になった感想はいかがですか?」
マスター同様に横寝で、マスターの目の前で頬杖してその様子を眺めつつ笑いを滲ませながらそう言うと、マスターは眉間を寄せ、下唇を噛んで殊更にむっつりとした表情になった。
掛けられている上掛けをかき集め寄せて、背を丸めてそこに顔を埋める。
「……最悪の気分だ」
くぐもった声でそう言うのが聞こえて、口端がますます横になった。
何度目かに果てた後、ベッドに沈んだマスターの乱れた呼吸が落ち着くのを待っていたら、マスターの意識はついに落ちてしまった。
完璧以上に完成された躯体といえども、性感を初めて知ったばかりの幼い身体には、何度も果てるのは堪えるものだったようだった。
乱れた呼吸が落ち着いていくにつれ寝息に変わってしまったものだから、続きは諦めてくったりと素裸で横たわるばかりのマスターに上掛けを掛けてやり、こちらもその隣に横寝になって頬杖を衝き、初めて見る見かけ年齢相応のあどけない寝顔を眺め堪能していたというわけだった。
マスターはますます上掛けを引き寄せる。さなかの出来事が順次思い起こされていっているのだろう。その様子のおかしみに胸にこみ上げるものがあって、含み笑いを禁じ得ない。
右腕を伸ばして、マスターの柔らかい薄金色の髪の後頭に触れて、その頭を抱き寄せてみる。
マスターの小さな額が、こちらの無機質な胸に服越しにこつん当たった。
「ガリィの身体がこんなじゃなければ、マスターを柔らかく抱きしめてあげられたんですけどねぇ。マスターがそうに造ってくれませんでしたから」
ヒトは機嫌を損ねた子供にこうすることがある。マスターの様子はまるでそういうときの子供そのもので、奪った想い出の中に覗き見たそういったヒトの記憶に思い当たったのでやってみた。
ますます機嫌を悪くするだろうか。子供扱いするなと腹を立てるなら、その様子もまた一興。
けれども、マスターは抗わず。
ごし、とむしろ額を擦り付けてきた。
「いいや……オレには、これでいい」
なにやらお気に召したようだ。どういう思いによるものかは、わからないけれど。
母のように、姉のように、恋人のように振る舞ってみたところで、それっぽい何がしかの感情は特別に生まれない。
「もう少し、お休みください」
身体が限界を迎えていることには変わりないので、休むように促す。
胸元のマスターは元よりそのつもりだと言わんばかりに、規則的となった呼吸をだんだんに寝息へと変えていった。
こういうときぬくもりと柔らかさを求めるのが子供だというのに。
「お子様なのに無理しちゃって……そういう柔いところがどうしようもなく――」
口もとが、緩む。
「……胸が疼くのよね」
完全に寝息となった呼吸を安らかに繰り返すマスターを眺めるうち、先刻、さなかに思考半ばで途切れた疑問が思い起こされた。
マスターは考えたことがあるのだろうか。
ヒトに酷似するよう仕向けられて造られた心に生まれる何らかの感情、想いが――自分に向けられるかもしれないという可能性について。
そして創造主という、オートスコアラーにとって特別な、至上の存在であるという認識が心に齎す影響について。
おそらく、考えなかったのだろうと思う。考えられなかったという方がより正しいかもしれない。マスターは親から子に向けられる情は知っていても、それ以外の情を親以外の他者に向ける前に、誰にも向くことがなくなった子供なのだから。
父親を理不尽に奪われたことによる人間不信が、様々な情の存在を知るに至ってもそれを信じることがなくなったのだろう。
ヒトは生き続けて年を経るにつれその内面や精神性は変質していく。
それは肉体の成長による神経発達や体内・脳内分泌の変化と体験――想い出の積み重ねによる学習、そして忘却によって起きる。
理不尽に対するマスターの怒り、生まれた不信が数百年を経て風化していないのは、ホムンクルス化による想い出の全ての保存を伴う擬似転生を、ヒトの特性に由来する理不尽を時代のせいと飲み下せるような精神が育まれる成体になる前に始めたせいかもしれない。
不信が理解を拒んで、分かろうと、信じようと頑なにしなく、ゆえに愛がわからない。
だから、おそらく。マスターはオートスコアラーの自分と同様、恋を知らない。
恋とはどういうものなのか、自分には分からない。
モノから造られたモノであるオートスコアラーには、心がないから分からない。
より正しくは、ヒトに備わるのと同じ心を宿していないから。
オートスコアラーにはオートスコアラーの心が存在している。
それはヒトと酷似しているが似て異なるものゆえに、ヒトの感情がどのようなものか把握はできても真の意味での理解――共感はできない。
オートスコアラーの心にも、機微や発露は違えど想いは芽生える。だがそれはヒトには理解できない。オートスコアラーがヒトの心を真に理解できないのと同様に。
相互不理解。
けれどそれは、ヒト同士の間にだって起こる。
互いの思考は言葉と表情によって間接的に伝達されるだけ。
脳内の質感を直接的に伝達できない限り、他者と100%分かり合うということなどあり得ない。
そこにヒト同士と、ヒトとオートスコアラーの間とで、何の違いがあるのだろう。
ふと、腑に落ちる。
あの言葉は。理解できない行動原理によって衝き動かされるヒトによって、たびたび口にされるあの言葉は。
複数の感情を包括する、如何とも形にし難く伝え難い想いを言い表す言葉。
伝えようのない想いを伝えようとしてどうにも術なく、足掻いた末にやるかたなく辿り着いた吐露の言葉なのかもしれない。
ならば、伝い得ない想いを心に抱いている、今このようなときに使うのだろう。
「愛してます、マスター……なんてね」
目の前で眠るマスターにはきっと届いていない。
届かなくていい。
言葉が届いたところでこの想いの質感はどうせ伝わらないのだから。
薄金色の髪を撫でてみる。
小さな頭に顔を寄せ、額に触れるだけの口接けを落とす。
ヒトの想い出の中の記憶にある所作を真似てみるものの、やっぱり胸の疼き以外の感情は特に生まれない。
再び顔を眺めゆく。
幸い、任務完了後は玉座の間に戻れという命令は受けていない。
マスターの無防備に露わにしているあどけない寝顔を、何時間でも眺めているつもりだった。
ⅢS = 3+1/2 = 3.5。
いたしてる最中に考え事を始めちゃうガリィとかゲスいと思いませんか私は思います。
前作『アーティフィシャル・アイ』でオートスコアラーに心はあるのか、それは何故なのかというガリィの疑問の答編が今作でした。
ハリウッド的な例の言葉は恋情の最上級として使われるにはあまりに包括的かつ漠然とし過ぎて掴みどころがない表現に思え、むしろ逆に様々な感情が折り重なるなどした名状しがたい想いを表すときにこそふさわしいのではないかなあと考えます。
ガリィのキャロルに向けている想いは種の異なる我々には理解・共感できない”アイ”。
把握しづらさに定評あるガリキャロCPの関係性ですが、作中でヒトを真似て例の言葉を冗談ごかしに口にするガリィが、私の考えるガリィ→キャロルのベクトル内容の端的な体現になったかなと思います。