宿の都合で一人離れに移され、フテ寝をしようとしていた楽の部屋に千棘がやってきて・・・・・・
ニセコイ17巻、第152話のアナザーストーリーです。
(や・・・・・・やばい、やばいやばい!!)
楽は自分の置かれている状況に、これまでにないほど焦っていた。
高校生活における一大イベントとも言える修学旅行。しかし、楽の修学旅行は、その始まりからしておかしかった。
班分けでは、いつものメンツから一人だけ外れてしまい、当日には出発に遅刻。もっともそのおかげで小咲と二人旅になれたまでは良かったが、京都に着くまではまるで規定事項のようにトラブルの連続。着いたら着いたで、旅館の事情により一人だけ離れへと移ることになってしまった。
そして今はなぜか千棘と一緒の布団の中で身体を密着させている。
(本当にオレの修学旅行はどうなっちまってんだ・・・・・・)
楽は仲居に案内された離れの部屋で、呆然と佇んでいた。ここまでいろいろと重なると、己の不運を呪うしかなかった。
修学旅行といえば日中の観光もさることながら、夜の自由時間も外せないイベントの一つである。にもかかわらず離れの個室で、孤独な夜を過ごすことになろうとは夢にも考えていなかった。
ふと、窓の外に目をやると、本館の煌々とした窓の明かりとともに同級生たちの楽しそうな喧噪が風に乗って聞こえてくる。
「まぶしい・・・・・・」
そこには物理的な明るさ以上の、世界が違うと言ってもいい格差があった。心なしか視界が滲んでいるように見えるのは、気のせいだと楽は自分に言い聞かせた。
(くそっ・・・・・・!もう寝る!!疲れたし、別にオレは一人だって・・・・・・)
ヤケクソ気味に頭の中で無理矢理納得させて布団を被る。しかし、布団を被ることで、余計にこの部屋の静けさと窓の外の喧噪が耳についてしまうのだった。
・・・・・・コン・・・・・・コン
布団の中で丸くなっていた楽の耳に、ふとノックをするような音が聞こえてきた。
(ん・・・・・・?)
しかしここは離れで、おそらくは皆からも忘れ去られている。それに、クラスの連中だったら、間違いなくノックなどせずに押し入って来るはずだ。
・・・・・・コン、コン
そんなことを考えていると、再び音が聞こえてきた。しかも今度は、さっきよりもはっきりとである。
(・・・・・・なんだ?)
どうやらその音の主は窓をノックしているようだった。しかしこの部屋は二階であるということを考えると、こんなことをしそうな人物は一人しか思い浮かばない。
(まさか・・・・・・な)
いくら恋人のフリをしているとはいっても、男子の一人部屋である。いくらなんでも夜這いじみたことをするわけはないだろうと思いつつ、楽は窓に歩み寄るとカーテンを引き開けた。
しかして、目の前にある窓枠の下からは、見慣れたリボンがウサギの耳のようにぴょこんと飛び出していた。
「何やってんだよ、お前・・・・・・」
千棘が窓枠から半分顔を覗かせて、楽の方をじっと見上げてくる。
「・・・・・・別に。あんたが寂しくて泣いてんじゃないかと思ってね」
「なっ・・・・・・、誰が泣くか・・・・・・!」
楽が窓を開けながら反論するが、その声には力がない。
「今日は色々大変だったみたいね。その上こんな所に移されちゃって・・・・・・どんだけツイてないのよ」
千棘が窓枠を乗り越えて部屋の中へと入ってくる。そうすることが当然というような千棘の行動に、楽は苦笑を漏らす。
「それで?何か用なのか?」
「え?」
意外なことを訊かれたというような表情を浮かべたあと、慌てた顔になって「ああ」とか「まあ」とか言いながら顔を背けてしまう。
千棘としてはせっかくの修学旅行にも関わらず別々の班になってしまい、しかも今日は楽が遅刻してしまったために、ろくに話もできていない。
新幹線の車中や今日の日程をこなしている間、クラスの仲間と楽しくやってはいたが、楽がいないことがずっと気になっていた。つまりは寂しかったのだ。
自分が寂しかったから会いに来た。その事実にあらためて気付き、千棘は顔を赤くする。しかし・・・・・・
(そんなこと、死んでも言えない・・・・・・)
「?、なんだよ」
怪訝な顔で楽が千棘を見る。だから、千棘はボディーガードでもあるクロードのせいにすることにした。普段から二人の仲を疑って、ことあるごとに二人の行動を監視しているクロードであれば、修学旅行まで監視に来ていたと言っても、楽は信じてしまうだろう。
「はあ~!?マジかよ、勘弁してくれよ~」
案の定、千棘から話を聞いた楽が頭を抱えた。クロードを悪者にしてしまったことは心苦しかったが、これで一緒に行動するための口実ができたことに千棘は内心、小躍りする。
「じゃあじゃあ♪明日どこ回るか決めない!?パンフ出して、パンフ!」
「はいはい」
楽からパンフレットを受け取ると、千棘は早速あれこれとめくり始めた。いろいろと見比べながらパンフレットをめくる千棘の姿は本当に楽しそうで、その姿を見ている楽もついつい頬が緩んでしまう。
(そういえば、こいつがこうやって隣にいるのが当たり前に感じるようになったのって、いつからだっけ・・・・・・)
出会いは最悪、始まりは親同士の都合だったが、いつの間にか二人でいることが当たり前になっていた。楽は千棘といると自然体になれるということを、今でははっきりと自覚している。
そして、今もこうやって落ち込んでいるときに、淋しさを埋めるようにやって来てくれた。
(こいつは、どう思ってんだろな・・・・・・)
楽しそうに計画を立てている千棘の横顔をじっと見つめた。
「どうしたの?」
楽の視線に気付いた千棘が首を傾げる。千棘の柔らかな細い髪がさらりと流れた。
まっすぐに見つめる二つの瞳、そのあどけない表情にどきりと胸が高鳴る。
「い・・・・・・いや、気がついたら俺たち、いつも一緒にいるよなって」
「・・・・・・?、何よ今さら」
千棘は一瞬だけ怪訝な表情を浮かべ、くすりと笑う。
「なんか・・・・・・さ、俺たち、このままこうやってずっと一緒にいるんじゃないかって気がしてさ」
「・・・・・・え?」
千棘が戸惑いの表情を浮かべた。その表情を見て、楽は初めて自分が何を口にしてしまったのかに気付く。
(な・・・・・・何で?何であんなこと言っちまった!?)
千棘が戸惑いの表情を浮かべるのももっともだ、あの言い方ではほとんど告白、下手をしたらプロポーズとも取られかねない。
「そ、それって、どういう・・・・・・」
顔を赤くした千棘が俯いて視線をずらす。腿の上に置かれた手が、ぎゅうっと浴衣を掴んでいた。
「そ・・・・・・それ、は・・・・・・」
楽も自分の顔が熱を帯びてくるのを感じていた。何か言わなければと口を開きかけた時だった。
「お~い、ちゃんと寝てるか~?」
どすどすという賑やかな足音とともに、見回りの教師が階段を上がってくる気配がした。
「マズイ、マズイっ!!この状況、もし見つかったら・・・・・・」
「どどど、どうしよう、どうしよう!?」
「とにかく、どっかに隠れて・・・・・・」
「隠れる場所なんてないわよ!!」
潜めた声で言い合いをしつつ、二人して部屋の中を右往左往するが、焦りが募るばかりで何も思い浮かばない。そうしている間にも、階段を上ってくる足音はどんどん近づいてくる。
(くそっ!どうした・・・・・・ら・・・・・・)
ふと楽の視線が部屋の真ん中に敷かれた布団へと落ちた。釣られて千棘の視線も布団へと落ちる。
「「・・・・・・」」
揃って二人が顔を上げ、視線が絡み合う。
「うそ・・・・・・でしょ?」
頬を引き攣らせた千棘が楽を見る。しかし、襖の向こうから聞こえる足音は階段を上り切り、もうすぐそこまで迫っていた。
「だあ~っ!もう言ってる場合じゃねえ!」
楽は素早く部屋の電気を切ると布団をめくる。
「で、でも・・・・・・」
「諦めろ!!」
楽は、この期に及んでもぐずる千棘の手を引くと、半ば強引に布団の中へと引きずり込んだ。
「ちょ・・・・・・っ!」
千棘を背中から抱き抱えるように身体を密着させ、頭からすっぽりと布団を被る。
トントン
襖をノックする音に続いて、見回りの教師が「開けるぞ~」と声をかけながら勢いよく襖を開けた。
「おっ!ちゃんと寝てるな。感心、感心♪」
満足そうな教師の声を聞きながら、二人は布団の中で息を潜める。
「ね・・・・・・ねえ、あんまり・・・・・・くっつかないでよ・・・・・・」
「・・・・・・しょうがねえだろ。くっつかないと一人に見えねぇんだよ」
声を潜めて文句を言うが、すぐそこに教師がいるため動くわけにもいかなかった。
「もぉ~!なんでこんな事に・・・・・・」
自分の行動が招いたこととはいえ、まさかここにきてまでトラブルに会うとは思ってもいなかった。しかも、仕方がないとはいえ楽と同衾する事になろうとは・・・・・・
そのことを意識すると、余計に背中の楽の存在がはっきりと感じられてしまう。
肩を抱いている楽の手の熱さ、首筋に感じる抑えた息づかい、密着した身体から伝わる体温、そのすべてが初めての感覚で、千棘の心を揺さぶってくる。
「はい、もしもし・・・・・・ああ、岡崎先生・・・・・・」
布団の外では、襖を開け放ったまま電話を始めてしまったようだった。
(早くどっか行ってぇぇぇ!)
(くそ・・・・・・なんだよ、この状況・・・・・・!)
楽もまた、今の状況に焦っていた。
密着していることで、身体の前面から千棘の体温が直に伝わってくる。しかも布団を被っているせいで、風呂上がりの香りと女の子特有のものだろうか、甘い香りが充満して楽の本能を刺激する。
(平常心、平常心・・・・・・)
心の中で念仏のように唱えるが、そうすることによって益々千棘の体温や香りを意識してしまう。感覚がさらに研ぎ澄まされ、千棘の吐息や身体の動き、温もりや柔らかさをはっきりと知覚できるようになってくると、理性を飛び越えて本能が直接身体を動かし始める。
(や、やばい!)
楽は、じわじわと下半身に血流が集まってくるのを感じた。なんとか抑えようとしても意志の力を離れたペニスはゆっくりと大きくなっていく。
「ちょっ・・・・・・、あんまり動かないでよ!!」
腰に触れたペニスの感触を、それとは気付いていない千棘が腰を震わせる。その拍子に脹らみ始めたペニスが、浴衣越しのわずかに浮き上がった千棘のお尻の谷間へと嵌まり込む。
(やばい、やばい!ヤバイっ!!)
焦る気持ちとは裏腹に、柔らかな肉の感触を敏感に感じ取ったペニスがさらに体積を増していった。
「やだっ・・・・・・ちょっと!ヘンなとこ触らない・・・・・・で・・・・・・よ?」
一瞬、お尻を撫でられたような感触がして、声を上げかけた千棘だったが、すぐにその違和感に気付き首を傾げる。
楽の両手は千棘の肩を掴んでいる。しかし、撫でられたような感触があって、今も何かが触れたままだ。というか、挟まっていた。
そこまで考えたところで、二人の今の体勢から千棘はある結論にたどり着く。
(う・・・・・・うそっ!?まさか・・・・・・これって、えっ!?・・・・・・えぇ~~~っ!!)
さすがにこの歳になれば「そういう話」は、経験がないなりにも多方面から入ってくる。すでに経験済みの同級生から生々しい話を聞かされたこともあった。
―――えぇ~、どんな形してるかって?ネットとかで見たことないの?ん~・・・・・・、あっ!あれだ!マツタケ!まんまマツタケ!小振りの安いやつ(笑)!!
そのときの会話が頭の中に蘇る。小振りのマツタケをどのくらいのサイズ感で言っていたのかは分からないが、今お尻に当たっているモノはバナナくらいはありそうだった。
(って!バカバカバカっ!!わたしってば、なに考えてんのよぉっ!!)
無意識に頭の中で「それ」を思い描こうとしていたことに気付いて、さらに顔が熱くなる。必死で頭の中から追いやろうとするが、余計にお尻の感触に神経が集中してしまう。
お尻に当たる楽のペニスは浴衣越しにもはっきり分かるほどの熱を持ち、時折そこだけ意志を持っているかのようにぴくり、ぴくりと震えていた。
一方の楽も、今の状況に冷や汗を流していた。
(これは・・・・・・間違いなく気付かれてるよな・・・・・・)
不自然に言葉を途切れさせて固まってしまった千棘を見て、楽は確信する。
両手を添えた千棘の肩が小さく震えていた。
手のひらがじっとりと汗ばみ、千棘の体温がよりはっきりと感じられた。心なしか布団の中の温度が上がり、甘い香りが濃密になったような気がする。
楽のペニスを感じ取って、羞恥に身を固める千棘の、普段とは違う女の子らしい反応に、思わず喉がごくりと鳴った。
「・・・・・・はい、それではまた後で」
電話を終えたらしい教師の声が聞こえなくなり、襖がとんと静かに音を立てて閉じられた。足音が遠ざかる気配がして、離れが再び静寂に包まれる。
「・・・・・・い、行った?」
「・・・・・・たぶん」
消え入りそうな声で訪ねた千棘に、かすれた声で楽が答える。楽は千棘の肩から手を離すと、ゆっくりと気配を伺いながら布団をめくり身体を起こす。
「ふう・・・・・・」
どちらからともなく張りつめていたものを吐き出すように息をついた。
「・・・・・・」
千棘もゆっくりと体を起こすが、すぐに楽に背中を向けてしまう。
二人の間を沈黙が流れる。千棘は楽に背中を向けて正座をしたまま身じろぎもしない。
「その・・・・・・悪かった・・・・・・」
ばつが悪そうに楽が口を開いた。不可抗力とはいえ、欲望の固まりともいえるものを千棘に押し当ててしまったことに、楽は罪悪感を覚えた。
「・・・・・・いい」
しかし、千棘の口から出た言葉は意外なものだった。
「べつに、わざとじゃないんでしょ?だったら・・・・・・いい」
「そ・・・・・・そうか」
「それに・・・・・・あんただったら・・・・・・別に・・・・・・その・・・・・・」
「え・・・・・・?」
もごもごと小さな声で言う千棘の言葉が聞き取れず、思わず楽は聞き返す。
「なんでもないっ!」
叫ぶように声を上げた千棘のうなじが赤く染まっていた。
「そっ、それよりも」
真っ赤な顔をした千棘が振り向いて楽を見つめる。
「・・・・・・さっきの答え、まだ聞いてない」
「うっ・・・・・・」
千棘の突然の問い掛けに言葉が詰まる。千棘の顔は真っ赤に染まっているが、その瞳は真剣な光を宿し、まっすぐ楽に向けられていた。
(なんで、あんなこと言っちまったんだ?)
楽の頭の中で自問が蘇る。さっきの千棘への言葉は、ほとんど無意識に口をついて出てきたものだった。無意識に出てきてしまったという事は、それが自分の本心なのではないかと考えてしまう。
(俺の、本心・・・・・・)
目の前の千棘は、きゅっと唇を引き結んだまま、緊張と不安を混ぜこぜにしたような表情でじっと楽の答えを待っている。
(俺が本当に一緒に居たいのは、こいつ・・・・・・なのか?)
楽の胸がどくんと高鳴る。同時に胸が締め付けられるような感覚、その感情が何なのかを楽は知っていた。
(俺は、こいつのことが・・・・・・)
千棘の瞳が不安に揺らめく。楽は一度ゆっくりと瞬きをすると、意を決して唇を開いた。
その瞬間、カッと雷光が閃き、窓の外が白く染まる。
「キャアッ!!」
悲鳴を上げた千棘が楽の胸へと飛び込んできて、楽も咄嗟に千棘の肩を抱くように手を添えた。
「「・・・・・・っ!?」」
不意に抱き合う形となってしまった二人は、息を飲んで身体を強ばらせた。がらがらと遅れて響いた雷鳴が、びりびりと窓を震わせる。
「ごっ・・・・・・ごめ・・・・・・」
慌てて離れようとする千棘を、楽が手に力を入れて引き留めた。
「・・・・・・えっ!?」
予想外の出来事に千棘がはっとなって顔を上げると、至近距離に楽の顔があった。瞳の中には互いの姿が写り、それは同じ光を宿している。
「千棘」
かすれる声で、しかし心の底からその名を呼んだ。千棘の瞳に湛えた光がゆらりと揺れた。言葉にしなくとも、互いの気持ちが重なっているのがはっきりと分かる。
二人の顔が吸い寄せられるように近付いていき、ゆっくりと唇が重なった。触れ合った唇から二人の体温が混じり合い、二人の気持ちが一気に昂ぶっていく。窓の外では再び雷鳴が響いていたが、もう二人の耳には届いていない。直接触れあい、感じている柔らかな温もり、今の二人にとってはそれが世界の全てだった。
長い口づけが終わり、二人の唇が離れるとどちらからともなく再び視線が絡み合う。
「ねえ・・・・・・楽」
目の下を朱に染めた千棘が、潤んだ瞳で見上げながら楽の浴衣の前合わせをくんと引いた。
―――もういちど・・・・・・
千棘の瞳がそう訴えかけている。そして、その気持ちは楽も同じだった。
「ん・・・・・・」
感情が抑えられない。千棘は情熱的に唇を重ねながら、楽の背中へと手を回して抱き寄せる。楽もまた千棘の背中を掻き抱くと、その華奢な身体をきつく抱きしめた。
二人は不器用に唇を重ねながらも、その交わりは徐々に熱を帯びてくる。たとえ、知識や経験といったものが少なくとも、沸き上がる衝動が二人の身体を突き動かし、そうすることが当たり前のように舌を絡めていった。
「んっ、んっ・・・・・・ん」
重なった唇の間から、荒い息とともにくぐもった声が漏れる。はじめは探るようだった舌の動きが次第に大胆になり、感情のまま、貪るように互いの舌を求め合った。
(楽・・・・・・、楽っ・・・・・・!)
夢中で唇を重ねながら、千棘は全身で幸せを感じていた。これまでの定期デートで手を繋いでいたのとは違う、全身が好きな相手に包まれる喜び、デートで手を繋いでいた時も十分幸せだと千棘は思っていたが、この温もりを知ってしまったら、もう離れられないのではないかと考えてしまう。そして、その温もりは千棘の身体にも変化をもたらし始めていた。
一瞬、千棘は生理が始まってしまったのかと思った。しかし、すぐにそれは先週終わったばかりだということに気付く。
その感覚は、生理が近付くと現れる「疼き」によく似ていた。おなかの奥がもどかしくなるような感覚、じんわりと温かく、そして甘い渇望感にも似た感覚に、千棘は無意識に内腿をすり合わせてしまう。
「・・・・・・んっ」
重ね合わせた唇の間から甘い吐息が漏れる。もっと楽の温もりを感じたい、楽に触れて欲しいという想いが胸の中で膨らんでくる。
そして、その想いは楽も一緒だった。腕の中にある温もりや柔らかさ、甘い香り、なによりも絡まり合う舌の感触が楽の本能を刺激して、血流を下半身に集中させる。再び硬さを取り戻したペニスがトランクスを突き上げていた。
(千棘・・・・・・)
理性では抑えられない感情が楽の身体を支配する。千棘の舌を貪りながら、背中に回していた右手を二人の体の間に潜り込ませると、ふっくらと浴衣を膨らませている千棘の乳房にそっと触れた。
(・・・・・・っ!?)
不意の乳房への感触に千棘がぴくんと身体を震わせる。初め、それが何なのか千棘には理解できなかった。楽と抱きしめ合っているから身体が触れた感触だと思っていた。しかし、それが乳房を包み込むような感触だと理解して、やっと楽の手が乳房に触れてきたのだということに気付く。
(えっ?うそっ、どういうこと?・・・・・・って、えっ?えぇ~~~っ!?)
突然の展開に千棘の頭が混乱する。
夜這い同然で楽の部屋に押し掛けたとはいえ、動機は単純に自分が寂しかったからだ。今こうして唇を重ねていること自体が想定外なのに、楽はさらに「その先」へと進もうとしている。
(待って待って!楽のことは好きだけど、まだ心の準備が・・・・・・)
混乱して固まってしまった千棘の胸を躊躇いがちに楽の手がやわりと揉んできた。
「・・・・・・んっ」
初めて自分以外の手で乳房に触れられる感触に、千棘の唇から小さく声が漏れる。
(う、お・・・・・・)
楽もまた、初めて触れた千棘の乳房の柔らかさに驚きを隠せないでいた。掌との間に浴衣と下着があるにも関わらず、伝わってくる温もりと柔らかさに自然と手が動いてしまう。
「ね・・・・・・ねえ、楽、ちょっと待っ・・・・・・」
予想外の展開の早さに、千棘は楽と離れようとするが思ったように力が入らない。
「イヤ・・・・・・か?」
千棘が目線を上げると間近に楽の顔があった。まっすぐに千棘の瞳を見つめる楽の真剣な眼差しに胸が締め付けられる。
「うっ・・・・・・、イヤ・・・・・・じゃないけど、その・・・・・・心の準備ってものが・・・・・・」
真っ赤な顔をして視線を逸らせた千棘に楽が顔を寄せる。
「悪りぃ、俺は我慢できそうもない」
耳元で告げられた千棘がくすぐったそうに身をよじる。
「んっ!・・・・・・って、だったらなんで聞いたのよっ!?」
つい、いつものノリでツッコミを入れた千棘を無視して、楽はその手を浴衣の前合わせから潜り込ませていった。
「ちょっ!?ま、待って!」
慌てて楽の手を掴むが、すでに楽の掌は千棘の乳房を下着越しに包み込んでいた。
「・・・・・・無理」
ブラジャーの生地にあしらわれた刺繍を掌に感じながら、柔らかく乳房を揉み上げる。
「はぁっ・・・・・・」
乳首と下着の裏地が擦れ、千棘の唇から艶を帯びた吐息がこぼれ出た。
(うそ!?なに、今の?)
乳首が生理前のように敏感になっているのが分かる。しかし、それは生理の時のようなむず痒くぴりりとしたものではない。楽の手が乳房を揉んだ瞬間、乳房の先端から甘い電流が流れ、その感覚に思わず声が漏れてしまった。
「んんっ!」
今度ははっきりと快感を感じた。乳房をゆったりと揉みしだかれると、快感が身体の中心を通ってお腹の奥を疼かせる。
楽の手の動きに合わせて、乳房から快感が生み出される。千棘は恥ずかしい声を出すまいと必死に口をつむぐが、「んっ、んっ」と抑えきれないうめきにも似た喘ぎを喉の奥で鳴らしてしまう。
そして、楽の手の動きも千棘の喘ぎに後押しされるように大胆になり、ブラジャーと乳房の隙間へと右手を滑り込ませていく。
「あぁっ!」
カップの下で勃起していた乳首を楽の指先が捉えると、千棘がびくんっと身体を震わせて悲鳴のような喘ぎを上げた。同時に身体の奥からじわりと温かいものが性器に溢れてくるのを感じた。
(や、やだっ・・・・・・、漏らし・・・・・・)
初めて「濡れる」という感触を味わった千棘は、失禁をしてしまったと思い内腿をぎゅっとすり合わせた。
ぬる・・・・・・と股間の合わい目が滑る感触に千棘がうろたえる。小水とは明らかに異なるぬめりは、生理の時に感じるものと似ていたが、おりものや経血と違ってひどくいやらしい感覚だった。
「やっ、あっ・・・・・・あっ・・・・・・」
乳首はすでに硬く勃起していて、楽の指先がくにくにと転がすたびに甘い電流が身体を震わせる。
千棘は次々に与えられる快感に翻弄され、もはや喘ぎ声を抑えられなくなっていた。
「千棘」
楽の声に、千棘が朱がさして上気した顔を上げる。額にはうっすらと汗の玉が浮かび、乱れた前髪が張り付いている。
「楽」
とろんと潤んだ瞳が楽を見つめ返す。艶を帯びた瞳がゆらゆらと常夜灯の明かりを反射して揺らめいて、ぷるんとした唇が誘うように薄く開いていた。
「ん・・・・・・」
再びふたりの唇が重なり、貪るように舌を絡め合った。ふたりの唾液が混じり合い、時折漏れる千棘の甘い吐息に湿った水音が混ざる。
情熱的に唇を重ねながら、楽が千棘の腰へと手を回す。指先に触れた帯を辿って結び目にたどり着くと、端を摘んで蝶々結びにされた結び目をほどいてしまう。
「んんっ!?」
ふっと緩んだ帯の感覚に、千棘が塞がれた唇の奥で慌てたようなうめきを上げる。結びを解かれた帯がはらりと落ちて、浴衣の前合わせがはだけ、ボディーソープと女の子特有の甘い香りが立ち昇る。
楽が浴衣の下に手を差し込み背中へと回す。初めてのことで手探りの状態だったため少しだけ苦労したが、なんとかブラジャーのホックを外すことができた。
ふわりとカップの圧迫が消え、息苦しさから解放されたことに一息つく暇もなく、楽の掌が下から乳房を包み込んだ。
「やっ」
はだけた胸元を見られるのが恥ずかしくて、千棘は楽の首筋へと抱きついた。
「はあっ・・・・・・」
吐息混じりの甘い声が楽の耳朶をくすぐる。しっとりと汗ばんだ乳房は楽の掌に吸いつくようで、柔らかな乳房はわずかに力を入れるだけで、楽の指の動きに合わせて自在に形を変える。
乳房の頂では、充血して赤みを帯びた乳首がツンと尖っている。楽は乳房を揉み上げながら、中指で尖った乳首を転がした。
「アウッ!」
抱きついた千棘の手に力が入る。小指の先ほどに勃起した乳首をくるくると指先で転がし、ぐにっと軽く押しつぶす。手の動きの一つ一つに千棘は敏感に反応し、甘い声を上げながら身体を小刻みに震わせた。
(は、恥ずかしい・・・・・・。でも、でも・・・・・・)
羞恥と快感に震えながら千棘は内腿をすり合わせる。身体の奥がきゅんきゅんと疼き、そこから溢れ出たものは下着まで濡らしているに違いなかった。
そして、そんな千棘の姿を見ていたかのように、楽の手が千棘の下半身へと滑り降りていく。
「ダメぇ・・・・・・」
太腿の間へと挿し入れようとする楽の手を感じて、千棘は反射的に力を入れて侵入を拒もうとする。いま楽に股間を触られたら、下着の上からでもわかってしまうに違いない。そう思っていても楽の手が内腿を撫で、力を入れられると、意志とは裏腹にじわじわと足を開いてしまっていた。
手が入れられるほどの隙間ができると、楽の手はそろそろと内腿を這い上がり、下着の上から性器を覆うように手を添えた。
「んんっ!?だ、ダメぇぇぇ・・・・・・」
千棘のそこはもうすっかり濡れそぼち、下着の上までじっとりと湿っていた。
シルクだろうか、薄く滑らかな生地を通して千棘の熱が伝わってくる。楽が指先をくんと曲げると、クロッチの下で息づく割れ目がはっきりと分かり、じわりと濡れがしみ出してきた。
「あっ!いや・・・・・・っ」
千棘がぎゅっと両腿を閉じたが、逆に楽の手を股間に押しつける形になる。中指が割れ目に沿って潜り込み、柔らかな肉の谷間が指先を挟み込む。
「く・・・・・・うん・・・・・・」
下着越しに染み出してくる千棘の熱いぬめりが、じわじわと楽の指先を濡らす。両腿に締め付けられたまま、わずかに自由になる指先で千棘の割れ目をこすり上げながら、千棘を布団の上へと押し倒していった。
楽の目の前には、二の腕で口元を隠し、息を荒くした千棘が横たわっている。着崩れた浴衣の間からは、うっすらとピンク色に染まった肌と真っ白な下着がのぞいていた。
かろうじてまとわりついていた帯を抜き取ると、はらりと花開くように浴衣がはだけて千棘の身体が露わになる。
「楽・・・・・・、恥ずかしいよ」
消え入りそうな声で千棘が訴えるが、楽は構わずブラジャーをたくし上げ乳房を露わにした。
千棘の乳房は、お世辞にも巨乳と言えるようなものではなかったが、だからといって小さいわけでもない。すそ野のなだらかな双丘がふっくらと美しく盛り上がり、その頂点では赤みを帯びた乳首が挑発的にツンと尖っていた。
「・・・・・・きれいだ」
楽の口から零れ出た言葉は、心の底からの本心だった。
「そんなこと・・・・・・」
羞恥で咄嗟に胸元を隠そうとした千棘の手を掴むと、楽は乳房に顔を寄せていき、勃起して小さく震えている乳首を口に含んだ。
「ああっ!!」
突然の刺激に千棘の身体がびくんっと跳ねる。楽はぱくりと乳房の先を口に含んだまま、小さな乳輪に沿って円を描くように舌先で愛撫する。心なしかぷくりと膨らんだ乳暈を舐めながら、円を小さくしていき、乳首を舌先で絡め取った。
「やっ、あっ、ああっ!」
舌の上で、乳首がさらに硬さを増していくのがわかる。楽は両の乳房を交互に愛撫しながら、右足を絡ませるように千棘の太腿の間へと割り込ませると、ほっそりとしたウェストラインをなぞりながら、右手を下半身へと伸ばしていった。
「やっ、やだっ・・・・・・」
再び楽の手が下半身を狙っていることに気付いて脚に力を入れるが、今度は楽の脚が挟まっているため、完全には閉じられない。
楽の手はショーツの縁に到達すると、止まることなくゴムの下へと指先を潜らせ、じわじわと前の方へと滑り降りてくる。
「ダメ・・・・・・、だめぇぇぇぇ」
楽の指先に陰毛が触れた。緩やかなカーブを描いて盛り上がった恥丘の上に、絹糸のように細く柔らかな陰毛がふわりと生い茂っていた。
陰毛の茂みを抜けると急角度で谷底へと落ちていき、指先がぬるりと滑る。
「はあっ!」
下着の外にまで溢れるほどのぬめりで、楽の指があっという間に愛液にまみれる。ぬかるんだ割れ目に沿わせた指先からは、驚くほどの熱が伝わってくる。
「んっ・・・・・・、あっ・・・・・・あっ・・・・・・」
割れ目をなぞり上げる楽の指の動きに呼応して、千棘が喘ぎを漏らす。初めて味わう性器からの快感は、直接脳をとろけさせて千棘の理性を剥ぎ取ろうとする。
楽の指が往復するたびに千棘の性器はほころんでいき、大陰唇が楽の指を挟み込む。肉のあわい目の奥にある、ピラリとした小陰唇が中指にまとわりつくのを感じながら、楽は夢中で指を上下させた。
千棘の膣は尽きることのない泉のように愛液を溢れさせ、性器から零れ出たぬめりは会淫を通って尻の谷間まで濡らしていた。千棘は羞恥に身体を震わせながらも、次々に与えられる快感で腰がうごめくのを止めることができなかった。
楽もまた自分の愛撫で甘い声を上げ、明らかに快感で身体を震わせている千棘の姿に理性の限界を迎えつつあった。ペニスは痛いくらいに勃起して、トランクスを破れんばかりに突き上げている。
(欲しい・・・・・・千棘の全てが、欲しい!)
楽が千棘の愛液で濡れた指をショーツの縁へと掛け、ゆっくりと引き下ろし始めた。
「くぅ・・・・・・」
千棘が羞恥を堪えるような声を漏らし、身体を強ばらせたが抗おうとはしなかった。
腰骨から恥丘にかけての艶めかしい曲線が露わになる。扇情的な恥骨の盛り上がりの上には、千棘の髪と同じ絹糸のように繊細な金色の陰毛がふわりと茂っているが、薄暗い明かりの下では無毛のようにも見える。
太腿を抜けたショーツが裏返りながら引き下ろされ、べったりとクロッチを濡らした愛液が、千棘の性器まで透明な糸を引いていた。
「だ、ダメ、やっぱり・・・・・・恥ずかしい」
ショーツを完全に脱がされてしまった千棘が、内腿を擦り合わせながら両手で股間を隠す。
「俺は、お前の全部を知りたい」
まっすぐに千棘の目を見つめながら、楽が内腿へと右手を滑り込ませていった。
「~~~~っ」
きゅっと下唇を噛みながら千棘は太腿の力を抜いていく。
脚が肩幅まで開くと、楽は両足の間へ身体を割り入れて、千棘の太腿に手を掛けた。
「恥ずかしいから、あんまり見ないで・・・・・・楽」
大きく両足を開かされてしまった千棘が羞恥に顔を両手で覆う。しかし、楽は目の前の光景から目を逸らすことができなかった。
暗さに慣れた楽の目線の先には、うっすらと綻んだ割れ目があった。谷間を透明な愛液で満たした性器が、千棘の強ばりに合わせて呼吸をするようにひくひくと震えながら、淫靡な匂いを立ち昇らせていた。
ごくりと楽の喉が鳴る。
「・・・・・・きれいだ。それに、その・・・・・・すごく、エロい」
「なっ・・・・・・!言わないでよ、バカぁ!」
楽の正直すぎる言葉に千棘が声を上げる。その声を聞きながら、楽はほとんど無意識に顔を内腿の間へと潜り込ませ、舌先を伸ばすと濡れた性器に押し当てた。
「ひあっ!だめぇぇぇっ!」
まさか口で性器に触れられるとは予想もしていなかった千棘は、慌てて太腿に力を入れるが、男の力にかなうはずもなく、力を込めた楽の手にさらに足を開かされてしまう。
「やっ、やだっ、やだぁ!」
必死に脚を閉じようとする千棘の太股を押さえながら、割れ目からぬめりをすくい取るように舐め上げる。
「はあっ!」
とろりと粘ついた愛液が舌先にまとわりつき、きゅっとした酸味が広がる。荒い息が鼻腔に吸い込まれると、千棘の性器から漂う性臭がツンと鼻腔を刺激する。
処女の千棘にとってそこは排泄器官でしかなく、性器を開いてまで中を洗うという発想すら持っていなかった。
腐敗臭にも似た独特の生臭さに楽は一瞬眉間に皺を寄せるが、その匂いも千棘の生々しい現実の匂いだと思うとさらに興奮が昂まるのだった。
「楽・・・・・・汚い、汚いってば・・・・・・」
両手で顔を覆った千棘がいやいやと頭を振る。
尖らせた舌を割れ目に潜らせるとさらに酸味と苦みが強くなる。くつろげられた襞の奥から恥垢がこそげ落ち、ざらついた感触が舌先に伝わってくる。
「やっ、あっ、あっ」
羞恥で気が遠くなりながらも、次々と与えられる快感が千棘の口から喘ぎをこぼれさせる。一方で千棘自身も気付かないうちに、投げ出していた両足を折り曲げ、立て膝となってより楽の舌先を受け入れやすい体勢となっていた。
「ああっ・・・・・・、あっ、はあぁぁ・・・・・・」
舌先で膣口をほじり、割れ目を舐め上げ、小陰唇を甘噛みする。そのたびに千棘は、強く、弱く喘ぎ声を上げる。千棘の脚は押さえていなくても、M字に開いたまま閉じようとはしなくなっていた。
楽は内腿を押さえていた右手を恥丘へと這わせ、陰毛を撫でながら親指で割れ目の上端にある肉の鞘を剥き上げた。
「やあっ!」
度重なる刺激で先端をのぞかせ始めていたクリトリスがつるりと剥き出しにされる。米粒ほどに勃起したピンク色のクリトリスを、舌先でちょんとつつく。
「ヒッ!」
最も敏感な場所への初めての刺激に、千棘が小さく悲鳴を上げてびくんっと身体を震わせた。
尖らせた舌先でクリトリスをほじるようにしながら転がした。
「あうっ!あっ・・・・・・ああっ!」
千棘の白い下腹部に力が入り、うっすらと腹筋のラインが浮き上がる。右手を口元に当て、左手はシーツを掴んで必死に快感に耐えている。
千棘の性器の中は、止めどなく溢れる愛液と舌による丹念な愛撫で、いつしか酸味と苦みは薄れていき純粋な愛液の味へと置き換わっていった。わずかに綻んでいただけの割れ目は、充血して開き、サーモンピンクの中身を露わにし、溢れ出た愛液は透明な川となって会淫へと流れ落ちている。
(だめだ、もう我慢できねえ・・・・・・)
トランクスの下で、これまでにないくらいペニスが勃起している。自分の愛撫で身体をくねらせ、喘ぎを漏らす千棘の姿もっと見ていたいという気持ちもあったが、それ以上に下半身から沸き上がってくる欲情に耐えられなくなっていた。
「・・・・・・?」
唐突に収まった下半身からの刺激に、千棘は荒い息を整えながらうっすらと目を開けると、ぼんやりとした視界の中で楽がもぞもぞと動いている。
開いた足の間に、膝立ちとなった楽の姿があった。これまで何度か見たことのある、意外と筋肉質の裸の上半身。そしてその下、下半身にある「異物」を認識して千棘が息を呑む。
(えっ!?、あれって・・・・・・やっぱり、アレ・・・・・・だよ、ね?)
楽の股間で威嚇するようにペニスが反り返っていた。想像していたよりもずっと大きなペニスに千棘の目が釘付けになる。
(あ、あんなのが本当に入るの・・・・・・?)
楽の下腹に付かんばかりにそそり立ったペニスが、びくっ、びくっとまるでそこだけ別の生き物のように蠢いている。
千棘は、風呂で洗うときに触れた自分の性器の感触を思い出す。指一本分の長さもないような自分の性器の中に、目の前で反り返っているものが入るとは到底思えなかった。
(でも、楽となら・・・・・・)
そう考えたときには、楽に向けて両手を伸ばしていた。
「千棘」
広げた両手の間に潜り込むように、楽が千棘の身体に覆い被さってくる。
「楽・・・・・・」
千棘が楽の背中に手を回す。楽の身体も熱を帯びて、じっとりと汗ばんでいた。
「ん・・・・・・」
ペニスの先端が、ぴとりと千棘の割れ目に触れる。千棘の身体が緊張で強ばり、背中に回した手に力が入る。ぱんぱんに張りつめた亀頭が、濡れそぼった千棘の割れ目を押し拡げる。
「アウッ・・・・・・」
膣口を捉えた亀頭の先がぬるりと潜り込む。
楽が乱暴にならないようにと慎重に腰を進める。カリまでは比較的スムーズに挿入できたが、その先がとたんに窮屈になる。
「くっ・・・・・・うぅ・・・・・・」
楽の背中に回した千棘の手に力が入る。いくら濡れていても処女である千棘の膣はまだ固く、緊張もあって楽のペニスの侵入を妨げる。それでも腰を押し進めると、緊張した膣壁を押し広げながらじわじわとペニスがめり込んでいく。
「いッ・・・・・・!」
亀頭が完全に埋没したところで千棘が苦痛に顔を歪め、ペニスが行く手を遮られた。肉の狭まりが異物の侵入を拒んでいる。
無意識に腰を引いて逃げようとする千棘を抱きしめながら、楽はさらにペニスを押し進めていく。
「あ、うっあぁっ!いっ・・・・・・た、痛いィィ!」
千棘も楽の身体を強く抱きしめて、身体を引き裂かれるような痛みを必死で堪える。ぶちぶちと処女膜を引き裂く音が千棘の頭に直接響く。
「ごめん、あと・・・・・・少しだから」
あまり余裕のない楽の声に、しがみついた千棘がこくこくと無言で頷く。
「アッ・・・・・・グゥゥ、・・・・・・っっ!!」
ぶつんっという感触とともに、亀頭への圧迫感が消え、ずるりとペニスが根本まで呑み込まれた。声にならない悲鳴を上げ、ぎりっと千棘の爪が背中に食い込んだ。
「全部・・・・・・入ったぞ」
「・・・・・・う、うん」
赤熱した鉄の棒が身体を貫いているようだったが、その熱は不思議と千棘の心にじわりと喜びを与えてくる。
楽もまた、千棘と一つになれた喜びと、挿入の快感に打ち震えていた。破瓜を終えたばかりの千棘の中は予想以上に強ばり、ぎゅうっと楽のペニスを押さえつけていたが、同時にぬめった膣壁がうねうねとペニスを包み込み、ぞくぞくとした快感が背筋を震わせる。
「ち、千棘・・・・・・」
至近距離で何かを堪えるような表情の楽が千棘を見つめる。
「な・・・・・・に?」
「お前のなか、熱くて柔らかくて、すげぇ気持ちいい」
千棘の中で、根本まで埋め込まれたままのペニスがぴくんと震えた。
「んっ。バカ・・・・・・こっちは苦しいんだから・・・・・・ね」
大粒の汗を額に浮かべた千棘がうっすらと微笑みを浮かべて、ぺちりと楽の頬に触れた。破瓜を終えたばかりの膣はまだずきずきとした痛みを訴えている。しかし、それ以上に楽と一つになれたこと、そして楽が自分の中で悦びを感じていることが嬉しかった。
「ねえ、楽」
瞳を潤ませた千棘が楽を見上げる。その瞳に吸い寄せられるように楽の顔が近付き、そっと唇を重ねた。
「んっ、んっ・・・・・・ん」
今度は千棘の方から積極的に舌を絡めていった。自分の方から求めていくのは恥ずかしかったが、千棘もまた楽と繋がれたことに喜びを感じているということを伝えたかった。
「動いて、いいか?」
千棘の中の熱と、ねっとりとペニスを締め上げる膣壁の感触に楽の射精欲求が昂まりつつあった。
「優しく、しなさいよ」
一方で痛みも収まってきた千棘には、少しだけ余裕が生まれてきている。
「できるだけ・・・・・・、でも、無理かもしれない」
素直すぎる楽の返事に、千棘は思わず吹き出してしまう。
「もう、こんな時は嘘でもいいから「わかった」って言いなさいよ」
「うっ・・・・・・、しょうがないだろ」
そう言いながら楽が腰を引き、ずるりと千棘の愛液と破瓜の血をまとわりつかせたペニスを半ばまで抜いた。
「んあっ!い、いきなり動かないでよっ!」
「わ、わりい。でも、もう・・・・・・」
そして、再びペニスを根本まで突き刺した。狭い膣が楽のペニスを握るように包み込む。
「アウッ!」
膣壁をこすり上げられる感触に、千棘が楽の首にしがみつく。膣の入り口付近は生傷をこすられているため、ぴりりとした痛みがあるが、奥の方では痺れるような快感が生まれつつあった。
「このぐらいなら、大丈夫か?」
楽の問いかけに、千棘はぎゅっと目を瞑ったまま何度も首を縦に振った。
千棘の身体を気遣ったゆっくりとした抽送に、痛みと快感の大きさが徐々に逆転していく。
「あっ・・・・・・あっ・・・・・・あっ・・・・・・」
千棘の声が、明らかに悦びを帯びたものに変化している。緊張で強ばっていた膣は、窮屈ながらも柔らかく締め付けるようなものに変わりつつあった。
「千、ちと・・・・・・げ、俺、めちゃくちゃ・・・・・・気持ちいい」
高まる射精感を必死で堪えつつ、楽は抽送のペースを徐々に上げていく。
「うん、うんっ、うんっ!」
恍惚とした楽の声を耳元で聞きながら、千棘もまた楽にしがみついて悦びの声を上げる。もはや快感の波は完全に破瓜の痛みを覆い隠していた。二人の結合部からは、溢れ出た千棘の愛液でぐちゅぐちゅと粘液質の音が上がり、千棘の脚は楽をより深くまで迎え入れられるよう、大きく開いていた。
「ごっ、ごめ・・・・・・、俺・・・・・・っ、もう、持ちそうに・・・・・・な・・・・・・っ」
楽のペニスが射精に向けてググッと膨らみはじめ、下腹部に力を入れていないと今にも射精しそうになる。
二人の身体から吹き出た汗でヌルヌルと身体が滑る。
「わ、わたし・・・・・・もぉっ!なんか、きてっ・・・・・・きてるぅっ!」
二人の腰が密着するたびに、完全に勃起して包皮からむき出しになったクリトリスがこすられる。
性器の中と外の両方から与えられる快感は、千棘の身体の奥に蓄積されて、今にも弾けそうになっていた。
「じゃあ・・・・・・、いっ・・・・・・しょ、に」
「っん、うんっ」
千棘が楽を抱きしめた腕にさらに力を入れると、それに呼応した楽の腰の動きが激しくなる。
「アグゥッ!だっ、ダメぇっ!はげし・・・・・・っ、ああっっ!!」
ゴツゴツと子宮を突き上げられる感触に、千棘が身体を弓なりに反らせ
、さらに深くまで楽のペニスを呑み込もうとするかのように腰を突き出す。
「ウッ・・・・・・ぐぅ、もう・・・・・・だ・・・・・・」
限界に達した楽が、千棘の身体を強く抱きしめて最後の一突きを千棘の最奥へと突き入れる。子宮口に触れたペニスがググッと膨らみ、ぱっくりと口を開いた鈴口からびゅうっと、これまでにない勢いで精液の噴出が始まった。
「あっ!だめぇっ!あっ、あああぁぁぁぁっっ!!」
子宮に浴びせられる熱いしぶきを感じた瞬間、千棘の中で膨らみきった快感が破裂した。びくびくびくっと全身が痙攣し、ペニスを包み込んでいた膣壁が、どくどくと噴出する精子を全て絞り取ろうとするかのようにギュッ、ギュッと何度も何度も楽のペニスを締め付けるのだった。
―――チュン、チュン、チチチ・・・・・・
窓の外でさえずる小鳥の声を聞きながら、千棘はうっすらと目を開けた。
(なんだろ、久しぶりにぐっすり寝た気がする・・・・・・)
窓の外は、もうすっかり明るくなっていて、まだ低い高さにある朝日がそんなに広くない部屋の中を照らし始めている。
(・・・・・・あれ?私たちの部屋って、こんなだったっけ?)
寝起きのぼんやりとした頭で思考を巡らせる。たしか、夕食と入浴が終わって部屋に帰ってきたときは、ほとんど部屋いっぱいに布団が敷かれていたはずだった。
(やけに、がらんとして・・・・・・)
輪郭がはっきりし始めた視界の中に、脱ぎ散らかされた浴衣と自分の下着を認めて、ようやく昨夜の記憶がよみがえる。
「・・・・・・っ!」
思わず上げかけた声を千棘は慌てて呑み込んだ。
同じ布団の中、すぐ隣に楽の温もりを感じる。ゆっくりと隣を向くと、至近距離で楽が規則正しい寝息を上げていた。どきりと胸が高鳴り、その近さに千棘の顔が瞬間的に熱を帯びる。
(夢じゃなかったんだ・・・・・・)
真っ赤に染まった頬を両手で押さえて、昨夜の出来事を思い出す。
(~~~~~っ!!)
恥ずかしさでのたうち回りたくなるのを必死で堪えながら、幸せそうに眠る楽の横顔を見つめた。
その顔を眺めていると、あらためて楽と結ばれたのだという実感が湧いてきて幸せな気持ちが膨らんでくる。
(「起きて」ってキスをしたら楽はどんな顔するかな♪)
くすりと微笑んでその場面を想像してみる。とたんに引き始めていた体温が再び上昇する。
(ムリムリムリ!そんなのわたしが耐えられない!)
それ以上に、今、楽に目を覚まされたらお互い裸で向き合うことになってしまう。こんなに明るいのに、自分の裸を見られるのも、ましてや楽の裸を見てしまうのも耐えられそうにはなかった。
結論として、千棘は楽が目を覚ます前に自分の部屋に戻ることを選択した。そそくさと、それでいて楽を起こさないように下着と浴衣を着ると、今度はちゃんと玄関から離れを後にする。
ひとこと、メモでも残しておこうかと思ったが、何となく恥ずかしくなってやめておいた。
雨上がりの、さわやかな朝の空気に包まれながら千棘は空を見上げる。からりと晴れ上がった青空は、どこまでも澄み切っていた。
「ふふっ」
昨日のこと、そしてこれからのことを考えると、自然と笑みがこぼれてくる。お腹の奥にじんわりと残った楽の温もりを感じながら、千棘は軽やかな足取りで歩き出した。
『イツカラ』を読んでいただきありがとうございました。
浅倉椎です。
前回、院生ちゃんで予告したとおり、ニセコイに戻って参りました。
で、なぜか千棘という・・・・・・
彼女は、報われているのだから、本当は書かないつもりでいたのですが、152話での同衾する話を読み直したら書かずにはいられなかった。
ただし、タイトルだけは変えさせていただきましたけど。
さて、次回は再び羽姉さんに戻ろうかと思っていたのですが、久々に「月たわ」で院生ちゃんが出てきてしまったので、悩んでいるところです。
また時間が掛かるかもしれませんが、気長にお待ちいただけると幸いです。
ではでは