目を覚ますと、身体が鉛のように重かった。頭はズキズキと痛むし、なんだか熱っぽい。この感覚は間違いない。
「風邪ひいたな……」
カルデアに来てからはずっと元気にやっていたので、こうして体調を崩すのは久しぶりだ。
とりあえずブリーフィングに顔だけでも出しておこう。そう考えて、オレは重い身体を引きずって制服に袖を通した。
「ゴホッ、ゴホッ……」
案の定、マシュやダヴィンチちゃんに『無理はするな』と言ってベッドに押し込められた。急を要する案件が発生してなかったのは幸いだ。
結局オレはこうして大人しくベッドに入っている。しかし、ベッドに入ったはいいものの。
「寝れない……」
さっきまで寝ていたというのもあるし、寝ようとしても苦しいというのもある。
「つらいなぁ……」
すると、扉をノックする音が聞こえて来た。
「入るわよ」
そう言って部屋に入ってくると彼女、ジャンヌ・オルタは、オレの眠るベッドの縁に腰掛けた。
「風邪をひくなんて、体調管理が甘いんじゃない? 私のマスターなら、そういうところもしっかりなさい」
「返す言葉もごさいません……」
彼女が少し不安げにこちらを見た。
「……大丈夫なの?」
「そんなに大したことないよ。……心配かけてごめんね」
「し、心配なんかしてないわよ! ただマスターが万全じゃないと私も万全の状態で戦えないから気にしてるだけで!」
彼女がそっぽを向きながら答える。理由は何であれ、オレのことを気にしてくれているようで嬉しい。
「……薬は飲んだ? ちゃんとなんか食べた?」
「一応飲んだよ。ご飯はまだ食べてないけど……」
「食欲無いの?」
「起きた時はお腹減ってなくて。今はちょっと減ってきたけど」
それを聞いて、彼女がベッドから立ち上がった。
「じゃあ何かしら食べられそうなもの作ってきてあげるから、ちょっと待ってなさい」
そのまま彼女は部屋から出て行った。
しかし意外だ。彼女がオレの為に料理を作ってくれるなんて。
オレは彼女が戻ってくるのを楽しみに待った。
「ほら、作ってきてあげたわよ」
しばらくして、彼女が配膳トレイに載せた土鍋を持って戻ってきた。彼女が土鍋の蓋を開けると、美味しそうなお粥が入っていた。
「お粥なら食べられるでしょ?」
「うん、大丈夫。ありがとう、ジャンヌ」
オレがスプーンに手を伸ばそうとすると、彼女が先にスプーンを奪って、お粥を掬った。
「ほら、あーんなさい」
「えぇ?! 自分で食べるくらいできるよ!」
「いいからいいから! 病人は病人らしくしなさい! ほら!」
ずいっとスプーンが差し出される。どうやら彼女はどうしてもオレに手ずから食べさせたいらしい。
「わ、わかったよ……あー……」
「ふー、ふー。はい、あーん。……よろしい。味はどう?」
「……あんまりよくわかんない……」
「まぁ、風邪をひいているんだからそうですよね。 はい、あーん」
「あー……」
味がわからないのは、風邪だからじゃなくこうして食べさせてもらってるからなんだけどなぁ。
それを言い出す訳にもいかず、オレは緊張感に包まれながらお粥を食べ続けた。
「ごちそうさまでした……」
「はい、お粗末さま」
どうにかこうにか、オレは彼女が作ってくれたお粥を食べきった。謎の疲労感がある。
「お腹も満たしたから、あとはよく寝ておきなさい」
「うん、そうするよ。おかげでよく眠れそうだ」
お腹がいっぱいになったので、さっきまでよりも楽に眠りに落ちれそうだ。オレは眠りに入ろうと目を閉じた。
すると、オレの手を握る柔らかな感触がした。
「……今日は特別サービスよ。……なにその顔は!」
「いや、ジャンヌは優しいなって」
「うるさい! さっさと寝なさいよバカ!」
「……でも、ありがとう。安心して眠れそうだ」
「……ばか」
オレは右手を包む柔らかな感触を確かめるように握り返した。その手は冷たかったけれど、確かに彼女の温もりを感じた。
言い知れぬ安心感を感じながら、オレの意識は緩やかに遠ざかっていった。
「……寝たわよね」
「全く、こんな無防備な顔晒しちゃって」
「……どうせ、私以外にもほいほい見せるんでしょうけど」
「マスターはそういう人ですからね、えぇ、わかってますとも」
「……こんな間抜け面してんのに、いくつも死線を潜ってきたんだから面白いわよね」
「いつもヘラヘラして」
「……知ってるわよ、本当は苦しんでるの」
「みんなの前では明るくしてるけど、結構無理してるでしょ、アンタ」
「だからこうやって無理が祟って体調崩した訳だし」
「……確かにアンタは世界唯一のマスターで、人理修復を成し遂げた英雄だけども」
「結局は普通の人間だもの」
「かなりの無茶を通してここに居るのよね」
「……アンタだけよ、わかってないと思ってるの」
「他のサーヴァントもみんな、アンタが無茶をしてることは薄々気づいてる」
「だから」
「もっと弱音を吐きなさい。痛かったら痛いって言いなさい。辛かったら辛いって言いなさい。泣きたかったら泣きなさい」
「ここには、だれもそれを嗤う存在はないのだから」
「誰でもいい。誰かにはちゃんとそれを伝えなさい。それがマスターの責務よ」
「……まぁ、願わくば、それを私にだけ見せて欲しいところだけど」
「……知ってる?私が寝顔なんて見せるのはアンタだけだってこと」
「だから本当は、この顔も私以外の誰かに見せたくなんかない」
「でもきっとまた別の人がアンタの看病をしに来るでしょう」
「だからこれは、当然の報酬ってことで」
「……ちゅっ……」
「……ぷは。……感謝しなさい、ファーストキスよ」
「……好きよ」
「私がどれだけ拒もうが歩み寄ってくれたこととか、私に知らない景色を見せてくれた事とか」
「私に、恋なんて知らない感情を植えつけたり」
「そういうの全部、アンタのせい」
「……アンタのことなんか好きになんかならなければよかった。そうすればこんな面倒な事を抱えることにはならなかったはずなのに」
「……なのに」
「気がつくとアンタの事を考えてる。無意識に目で動きを追っちゃう。アンタの声は雑踏の中でも拾える」
「自分でも笑っちゃうわよ、こんな乙女なこと……」
「でもやっぱりね」
「ちゅ……んっ……私、アンタの事が好きよ、藤丸立香」
「それじゃ、おやすみ……」
「さて……」
オレはゆっくりと目を開けた。体調はほぼ万全に近い。身体のだるさとかもほとんど感じられない。体調に関しては百点満点と言っていいだろう。
ただ、1つ問題がある。それも大きな問題が。
『……ぷは。……感謝しなさい、ファーストキスよ』『……好きよ』『ちゅ……んっ……私、アンタの事が好きよ、藤丸立香』
「オレ、起きてたんだよなぁ……」
本当はすぐに寝ようとしていた。けれど手を握ったままの状態では緊張もありすぐには眠れなかった。その結果、夢現で彼女の言葉を聞いてしまった。
聞いてしまったが、これは本来はオレが知るはずのない言葉であり、想いだ。
どうしたものかと、オレは頭を悩ませた。
一晩眠ると、体調は万全の状態に戻った。きっと誰かの手厚い看病のおかげだろう。
ただ、戻っていないものもある。
彼女との関係性だ。
関係性というか、オレが一方的に悩んでるだけなんだけど。
彼女の言葉を聞かなかったことにすることもできるだろう。
少なくとも彼女はオレに伝えるのが本意ではなかった。であれば、本意に従うのも1つの形だろう。
けれど、オレは知ってしまった。知ってしまったからには、完全に元通り、という訳にはいかない。
聞かなかった、知らないフリをして取り繕った平静は、きっと何かの拍子に脆く崩れる。
だからオレは、そうなる前に彼女の想いに向き合うことを決意した。
「もう体調は戻ったワケ? 折角ならもう2,3日休んでも怒られないでしょうに」
「おかげさまで、もう体調はバッチリだよ。ありがとね」
「別に、私は大したことしてませんから。……それで? わざわざ私を部屋に呼び出すなんて何の用?」
オレは彼女の気持ちに応えるべく、彼女をオレの部屋に呼び出していた。
「……ひとつ、ジャンヌに謝らないといけないことがあるんだ」
オレは重い口を開く。
「何よ、そんな改まって」
「……昨日、さ。……起きてたんだ、オレ」
「ハァ? 起きてたって、なん、の……」
事態を理解して、彼女の表情が固まった。
「お、起きてたって、それまさか……」
「本当にごめん。きっと、あれはオレに伝えるつもりじゃなかったよね。……ごめん」
「……なによ、それ……」
彼女が泣きそうな顔になる。
「……あのさ、オレ……」
「いいわよ、言わなくて」
オレの言葉を彼女が遮る。
「わかってるわよ、言われなくても。……迷惑よね、こんな女なんかに好かれても。あぁ大丈夫よ? 別にこれまで通りの関係で居るから。なんなら今までみたいに目で追ったりもしないようにするし、」
「ジャンヌ!」
今度は彼女の言葉をオレが遮る。
「……なによ」
「そんなことないよ。ジャンヌの気持ちは、すごく嬉しい。……だって」
「オレも、ジャンヌのことが、好きだから」
「……嘘よ」
「嘘じゃない。本当に、好きなんだ」
彼女の目を真っ直ぐに見て言った。
「……竜の魔女よ、私」
「知ってるよ」
「……贋作のサーヴァントよ」
「知ってる」
「……めんどくさいわよ」
「それも知ってるよ」
オレはそう言って、彼女を抱き締めた。
「好きだよ、ジャンヌ」
「……後悔しても知らないから。地獄の底まで一緒に来てもらうから」
彼女もそう言って、オレを抱き返してくれた。
腕の中にある暖かさと、伝わってくる鼓動が、オレの心を満たしていった。
「あ、そういえばジャンヌ」
「なによ」
「今までみたいに目で追ったり、って言ってたけど、そんなことしてたの?」
「……それはアンタが悪いのよ!」
「オレ?」
「放っとくと一人で無理するからよ! アンタは隠せてるつもりでも、こっちはわかってるんだから!」
「……そっか。それは……ごめん」
「悪いと思ってるなら、誠意を行動で表しなさいよ。……ほら」
「え?」
「ん!」
彼女が目を閉じ、唇を指でとんとんとした。ここに誠意を示せ、ということらしい。
「仰せのままに」
オレは気持ちがちゃんと伝わるように、丁寧に彼女に口づけをした。触れ合わせることが目的の、優しいキス。
「どうかな? オレなりに誠意を示したつもりなんだけど」
「ま、まぁ悪くはないわね。……でもほら、アンタが私にかけさせた不安はこんなもんじゃないし?もっと誠意を見せてくれてもいいんじゃない?」
「……ふふっ」
「ちょっと! 何笑ってんのよ! 燃やすわよ!」
「いやいや、なんでもないよ。それじゃあお望み通り」
素直になれない彼女を可愛く思いながら、彼女の唇を塞いだ。
今度はさっきまでより深くキスしていく。舌をねじ込んでいくと、彼女も控えめに舌を絡めてきた。彼女の香りが鼻腔をくすぐる。
「んっ……ちゅ……ん……」
気付けば彼女の頰は上気して、目もトロンとしていた。
「……ごめんジャンヌ、もう止められそうにないや」
「……好きにしなさい、ばか」
それを合図に、オレは彼女をベッドに押し倒した━━━。
「やっ♡あっ♡んっ♡」
彼女のきめ細やかな肌に口づけると、その度に彼女の身体がビクンと跳ねる。オレはその様子を見ながら全身を丹念に愛撫していった。
「あっ♡ひゃん♡」
「はぁ、はぁ、入れるよ……」
可愛らしく反応する彼女を見て高まった肉棒を、彼女の秘部に当てがう。
「やっ♡キス♡キスして♡」
「んっ……」
やはり初めてなので怖がったのか、せがんできた彼女にキスをする。恐怖心が少しでも薄れるように、頭も撫でる。それで安心したのか、少し彼女の身体に入っていた力が抜けたようだ。
オレはそれを見て、腰を押し込んでいった。力を入れると、肉棒が一気に奥まで飲み込まれた。
「あぁっ♡奥まで♡きてる♡」
「動くよ……」
快楽を求めて、腰を前後に動かす。彼女の膣内はキツく、動く度に精液を搾り取るかのようにギュッと締め上げてくる。
「ジャンヌの中、気持ちいいよ……」
「あっ♡んっ♡わたしも♡」
オレは彼女を抱き上げるようにして、オレの上に座らせた。
「やっ♡これ♡勝手に奥まで♡きちゃう♡」
「でもこの方が、ジャンヌの顔がよく見えるからさ」
「うるさい♡ばか♡んぅっ♡」
快楽を感じる彼女の表情を真近で見ながら腰を動かしていると、今度は彼女の方から唇を求めに来た。もう彼女は自分から腰を振っている。
そうやって彼女に求められていることが嬉しくて、オレも動きを激しくする。
「やっ♡やっ♡ばか♡」
「ジャンヌ、もう出るよ……!」
すると彼女がこれまでよりもオレを強く抱き締め、より密着してきた。
「んっ♡りっか♡だして♡」
「くっ、出る……!」
限界に達したオレは、最後に彼女の腰を掴んで激しく肉棒を打ち付け、一番奥で精液を吐き出した。射精している間もなお、彼女の膣が搾り取るように締め付けてきていた。
「はぁ、はぁ、はぁ……」
「出し過ぎよ、ばか……♡」
その後もしばらくの間、オレは彼女と繋がったまま口づけを交わして、愛を伝え合っていた。
「……ねぇ」
「……起きてる?」
「……また寝たふりだったら今度こそ燃やすわよ」
「……ほんとに寝てるのね」
「……正直、この想いは報われないと思ってた」
「……だって、初恋は叶わないって言うじゃない」
「しかもアンタの周りにはいつも女の子がたくさん居るし」
「……でも、もう私のモノだから」
「地獄まで一緒に来てもらうんだから」
「……だから、ちゃんと私のこと見ててよ、立香」