興味がないと目にも止まらない、年齢制限のある一角。
そこにいる二人の男女。
手をつないだまま、一角の中にいる男女は何を見て、何を考え、何をするのか。
そんな掌編
全国展開をしているディスカウントストアの一角、条例で年齢制限がされている場所。
その場所があるのは、知っている人は多いが、入る人は少ない、そんな場所。
知っているのであれば、誰であろうと、心の奥底では興味がある場所。
「こんなの、なんだ…」
小さな声で、驚きの声を上げるのは小柄で可愛らいい女性。
知識はある。画像として実物も、動画として使い方も知っている。
大きさの意味も、形状の意味も、動きの意味も、全て知っている。
それでも、実物を目の前で、手に触れることができる距離で認識するのは、初めてだった。
「こっちのも、知ってるよね」
女性の手を取って、別の棚に視線を誘導させる男性。
いたずらをしているような、いじわるをしているような目で女性を見ながら、他の商品に興味を惹かせる。
これを使うとどうなるか、効果的に使うにはどうしたらいいか、どんな使い方が、女性に喜ばれるのか。
そんな事を考えながら、女性の横顔を見る。
「これ…」
繋いでいる手が汗ばんできていることに気が付かないほど、眼前にある実物に興味を走らせる。
自分の知識と同じものなのか、同じ快楽を与えてくれるものなのか。
知らないで済ませることができない、知識欲だけではない別の欲から、
「うん、これ、だよね」
女性の興味を誘導させたのは、男性の意図があってのこと。
秘密を共有して知り得た、共通の秘密を、好奇心を満たす器具。
普通の生活では見ることがない、本来は専門職の器具。
本来の目的以外では、恥ずかしさだけの器具
「いや、いや、これ、無理、いや」
何に使う器具なのかも、男性が誰に使う気なのかも、女性には全てわかる。
自身に使われたらどうなるのかをすぐに考えてしまう。
どんな姿にされるのか、どんな顔をしてしまうのか、どんな声を出してしまうのか。
どれだけ恥ずかしいのか、どれだけ喜んでしまうのか、すべて考えてしまう。
「うん、買おう」
男性が言った言葉に驚いてか、強い好奇心を見透かされた恥ずかしさなのか、女性が繋いでいる手に力を込めるのがわかる。
店頭にあれば買うつもりだったことは伝えていない。
今、この場で反応を見て、驚かせ、期待以上に楽しめそうだと考えてしまった。
期待には応えねば。
女性は下を向き、黙ってしまう。繋ぐ手は更に強くなり、少しだけ震えている。
耳まで赤くなり、好奇心の対象に囲まれているにもかかわらず、今は目に入らないようだ。
頭の中を占めているのは、これからのこと。
男性が買うと言ったものは、自分に使われる為であることに。
女性自身が期待したことは、確実に行われてしまうことに
「恥ずかしいことは、気持ちいいこと、だよ」
赤くなったままの女性の耳元に、囁く。秘密を打ち明けるように、悪戯をするように。
それ以上に、愛しさを込めて囁く。
店の一角から二人揃って、足早に立ち去る。
店を出て、ようやく女性は独り言のように小さくつぶやく。
「ばか」
男性はそれを聞いて、少し笑い、満足してから答えた。
「うん、ばかだよ」
ばかだから、ばかと言われるほど愛してるから、期待には応えたい。
それは、自然で当たり前だから。