魔女の弾丸 2014年8月改稿前 保存版 作:hidenyan
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【サブタイトル】
第一章 二話まで
【前書き】
文字数(空白・改行含む):28745字
文字数(空白・改行含まない):27278字
行数:1264
400字詰め原稿用紙:約69枚
【本文】
第一章 魔女の覚悟と魔女に選ばれた無職の行方
プロローグ 【黄昏に見送られる若き魔女と異邦人達と】
夕焼けに染まる海岸の砂浜で、多くの人影がざわめき、怒号を飛ばし叫び
手に握る何かを振りかざし、勢いよく突き出し、火花を飛び散らせ、金属音や断末魔の叫び声を幾重にも鳴り響かせている。
仮にその行為を見る者が、21世紀の現代を生きる日本人だとしたら
真っ先に、次の言葉を思い浮かべただろう。
【合戦】
まさに戦国時代の合戦というにふさわしい行いが、この夕焼けに染まる
海岸の砂浜で行われているのだが、まんま日本の戦国時代と同じというわけではない。
片方の勢力は、全身を銀色の西洋風の甲冑で身を固め、その片手には
剣や短槍が握られ、もう片手には丸い金属製の盾が握られている。
盾の表面には雪の結晶のような模様が刻まれ、うっすらと赤く光り輝いている。
皆、ほぼ同じ装備をしていることから兵士だろう。
人数は150人近い編成だ。陸軍でいうところの歩兵一個中隊に匹敵する編成といったところだろうか。
一方、完全武装の一団と戦う者たちは、様々な剣や斧、槍、弓矢などで武装した軽装な姿ながらも手だれた冒険者を思わせる姿をしている。
数は100名弱ほどで、少し戦況的にこちら側が劣勢な感じである。
その中には、兵士達と距離を取り、両掌を兵士達に向けて、必死に何かを叫びながら一定の間隔で主に火球や電撃、氷の塊を連続して生じさせ、撃ち込む魔法使いの様な攻撃をする繰り出す、若い顔立ちの少女達もいる。
彼女たちは色とりどりの三角帽を被り、帽子と同色のローブを羽織っている。ローブには様々な、雪の結晶のような模様が刺繍されており、彼女たちが魔法のような攻撃を放つたび、その刺繍は輝きを放ち出す。
火球や電撃、氷の塊、者によっては青色に光り輝くビーム状のエネルギー兵器を思わせる攻撃を放つ者もいるが、彼女たちの攻撃は、敵の盾に当たると瞬時に霧に変わり、霧散してしまう。
必死になって放つ魔法が霧散する度に、彼女たちの表情は焦りの色を強めていく。
極まれにだが、敵の防御動作より早く、敵の顔面に攻撃を撃ちこむ事態が起きると、撃ち込まれた兵士は頭を派手に炎上または感電したり、首から上が弾け、氷の塊を勢いよく当てられ首をへし折られ絶命し、砂浜へと崩れ落ちていく。
今からでも全ての兵士の顔面に、確実に攻撃を撃ち込むだけの余力が、彼女たちにあるのなら彼女たちの顔の焦りの色はここまで強くないはずだ。
何やら自分達の余力への心配以上に何かを強く、焦っている感じが伺える。
一方、完全武装の兵士のとある一団は、数名の人影をジリジリと慎重に包囲している最中のようだ。
人影の背後には夕焼けに染まる、波の穏やかな海が広がっている。
だが、砂浜の波打ち際には、何やら青く、光り輝き、回転を続ける大きな円状の魔法陣の様なものが展開されている。
包囲されている何人かは、魔法陣へと走り、飛び込み消え失せていく。
包囲され残った人影の中の一人は、兵士達に向けて黒い物体を構えている。その物体は規則正しい小さな乾いた金属音と一緒に、大音量の何かが激しく弾け空気を切り裂く音も周囲に鳴り響かす。
それらの激しい音を連続して放つ、黒い物体の上部はやたら激しく前後に動き、右側面からは煙を微かにあげる黄金色をした金属製の小さな円柱状の筒や、黒い金属製の更に小さな爪上の金具を大量に吐き出し続けている。
兵士達に向けられた先端部からは、小さな炎が点火と消滅を繰り返している。その先端を向けられている兵士達は姿勢を引くし、砂浜に伏せ、その先端から飛んでくる何かに極度に怯え、盾を構え防御体制を強いられているようだ。
そんな人影を包囲している一団の最前列には、防御に徹し砂浜に伏せてる兵士とは対照的にやけに目立つ大柄なひとつの人影が何かを振り回している。
それは...全体が青い大剣を握り締め、構えている人影だ。
腰には茶色い皮製の腰巻を巻いただけの、軽装でスタイルのいい長身の女である。
ただし、その女の見た目は肌からして、人間とは明らかに違う。
鱗がビッシリ全体を覆い、真っ青な肌をしているのだ。
頭部には頭髪が生えているが、その色も人間とは違いすぎる。
紫で肩にかかるくらいのショートカットだ。瞳は猫を思わせるような、瞳をしており口元では舌なめずりをし、不気味な笑みを浮かべている。
そんな不気味な爬虫類を連想させる女は大剣で敵に何度も斬りかかる。
しかし、女の敵は難なくと、足場の悪い砂の上でステップを踏み、砂を巻き上げ、踊るように避けていく。
しかし、女の敵の姿はどこからどう見ても、この異世界な場では明らかに【場違いな格好】をしている。
その姿は…どう見てもデジタルパターンの迷彩柄の戦闘服を着込み腕や脚の関節部に黒い樹脂製プロテクターを装着した、地球人類の若き青年で東洋人のようである。
彼は左手に剥き出しの一本の刀を握り、右太ももには大型自動拳銃をホルスターに入れ装着しているようだ。
彼は目の前の敵が振り回す大剣の斬撃を難なくと避けているが、その表情は何かを覚悟した、重い表情で視線は鋭い。
髪は黒髪短髪で整った顔立ちをしており無精髭が目立つがなかなかいい男である。
彼は斬撃を避けながら、左手で握り締めた刀の刃の向きを素早く真上に変え、もう一方の手で素早く、右太もも側面から大型自動拳銃を素早く抜き出し、連続して引き金を絞る。
乾いた銃声が砂浜に鳴り響く。
彼の撃ちだした銃弾は女の胸元を貫き、女の体に風穴を開ける。
彼は顔芸のような表情をしながら、よろける爬虫類な女にめがけて素早く間合いを詰め、追い打ちをかけるように左手の刀を思い切り、力任せに銃創めがけて突き刺す。
刀を突き刺した彼は、刀をグリグリねじり回しながら、【日本語】を大声で叫ぶ。
「このクソアマがぁああ! さっさと逝きやがれぇええ! 【マギサ】の邪魔はさせるかぁああ!」
彼は、女の顔芸のような断末魔の表情を見ても、口や両目から吹き出す真っ赤な血を浴びても、刀を握る握力をさらに強め突き刺し、血まみれな刀身をねじ回しながら、必死に大声で叫び続ける。
「マギサぁあああ! 日本へ行―!?」
彼は最後まで叫ぶ前に、駆けつけた彼女の仲間の兵士達の短槍で串刺しにされていく。
だが、彼は右手で握り締めた大型自動拳銃の銃口を瀕死の女の眉間に押しつけ、引き金を数回絞る。
彼は爬虫類な女の頭部を粉々に吹き飛ばし、絶命しながら共に砂浜に崩れ落ちていく。
その光景を見て彼の背後、数十メートル先で涙を流し、絶叫をあげる一人の少女がいる。
「いやぁあああああああ!」
彼女は思い切り泣きじゃくり、錯乱状態で串刺し状態の彼へと、手を伸ばし駆けだそうとするが、背後から誰かに羽交い締めにされ、引きずられ確実に彼との距離は遠ざかる。
そんな彼女に必死な声色の大声で、話しかける声が周囲に鳴り響く。
「マギサ! 彼の思いを無駄にするんじゃないんだな!」
マギサと呼ばれた少女を羽交い締めにしている青年の声だ。
彼の格好も先程、死闘を繰り広げ戦死した彼とお揃いのデジタルパターンの迷彩柄の戦闘服である。
彼は少し小柄でポッチャリしたメガネをかけた青年だ。
しかし、頭部には黒い猫耳が生えている。
その猫耳は、彼の感情に合わせるかのようにピクピク動いたりしている。
彼はタクティカルベストを身につけ、腹部付近には大量の散弾が装填された黒い金属製のボックスマガジンが入れられている。
その傍らには大きな衝撃を受け、銃身が大きく曲げられたコンバットショットガンが転がっている。
マギサを羽交い締めにして、波打ち際へと引きずる彼は、悔しそうな眼差しで徐々に遠ざかる自分の銃を見ながらも自分に出来ることを考え、必死に行動している。
続けて別の青年の声が、連続射撃音の後に続く。
「クソッ! 弾切れか...あの盾、小銃弾くらいじゃ歯が立たないな」
彼は先ほどの青年たちと同様に、デジタルパターンの迷彩服を着用し、同じくタクティカルベストを装着している。
目元には黒いサングラスタイプの防レーザー対策を施したシューティンググラスを装着し、腹部の大容量ポケットには、珍しい事にサイドアーム用のロングタイプの黒い樹脂製スペアマガジンが大量に入れられている。
彼は険しい表情をしながら何かを考えているようだ。
サイドアームだけで凌ぎきれるか。
あの兵士達を見ているとまるで…
「なんか! 機動隊みたいでムカつくんだよぉおおお!」
軽機関銃による制圧射撃を終え弾を撃ち尽くした彼は、何やら反社会的なイラつきを口にすると、軽機関銃を投げ捨てる。
彼はマギサと彼女を羽交い締めにしていると思われる青年に激を飛ばす。
「おい猫ぉお! マギサを連れてさっさとゲートに飛び込め! 急げぇええ!」
彼は右太腿のピストルベルトに装着したホルスターから自動拳銃を素早く抜き射撃を開始する。
彼が手にしているその自動拳銃は改造を施し、ダットサイトを装着、マガジンもロングマガジンに変更したFN5,7ピストルであった。
「うぉおおおおお!」
彼は叫びながら一人、サイドアームで決死の制圧射撃を開始する。
弾を撃ち尽くすと彼は即座にマグチェンジ、再び射撃を再開、そのサイクルを繰り返す。
彼の足元には、サイクルが繰り返されるたびに、空のロングマガジンが砂上に次々と突き刺さっていく。その横では先程、猫と呼ばれた彼が暴れるマギサを引きずり続ける。
マギサと呼ばれた少女の服装は日曜の朝、八時半から放送される幼女から、特におっきいお兄ちゃん達がヨダレを垂らしハイテンションで喜びそうな美少女戦士のような姿をしている。
彼女の身につけている衣服は白とピンクを基調とした、フリフリのミニスカート仕様の服装であるがどことなく、民族衣裳的な雰囲気も醸し出している服装である。
胸元が元々大きく開いていた服なのだろうが、今は羽交い締めにされた影響と、彼女が暴れた影響で形の綺麗な胸がピンクの乳頭まで露出し揺れまくりである。
そんな彼女の顔立ちは、その整った目鼻立ちからも美少女と言っても差し支えがない。髪は少し天然パー気味な綺麗なブラウンのショートカットで、眉毛もブラウンであることから自毛であることが伺える。瞳は両目とも真っ赤な真紅の瞳で、その瞳からは涙が溢れ続けている。
暴れるマギサを引きずる猫と呼ばれた青年は独特の語尾を持った口調で、射撃を続ける彼に大声で叫ぶ。
「矢島くんも急いでなんだな!」
サイドアームで射撃を続ける彼の名前は矢島というようだ。
「お前らがゲートに飛び込まないと急げないだろうが! おりゃあああ!」
彼は敵と壮絶な相打ちをした、仲間の亡骸を視界に捉えると悔しさを抱く。
あの変態司祭め、私兵を送り込んでくるとかクソッ!
帝都で殺しとくんだったぜ。
そんな彼は敵に向けて射撃を続けながら、引きずられるマギサを片目で見て思う。
仲間が何人も戦死して、マギサが錯乱状態じゃなきゃポロリは最高だが…
(! そうだ)
彼は何かを思い出したのだろうか、射撃を中止して急いで自分の背負うバックパックを下ろすと中から、灰色のブルパップ型をしたグレネードランチャーを取り出す。
マガジンを装着し構えると、盾でガードしながら迫り来る兵士に向けて狙いを定め
弾が残り少ないから忘れていたが…
喰らいやがれ!
彼は引き金を躊躇なく絞る。
発射されたグレネード弾はジャイロ効果を伴いながら、時速数百キロで飛翔していく。
グレネード弾は、最前列の兵士の構える盾に着弾し、背後に潜む兵士ごと高温のメタルジェットを浴びせ、致命傷を与える。
HEAT弾(成型炸薬弾)のメタルジェットの直撃を受けた兵士は腕と顔面、肺を燃やされ叫びながら崩れ落ちていく。
「ざまぁあ見やがれ! クソ兵士どもがぁああ!」
それを見た、周囲の兵士達は驚き、矢島に対し胴を晒してしまう。
兵士達は体に直接グレネード弾を次々と撃ち込まれ、瀕死の重傷を負って砂浜に崩れ落ちていく。
一分もしないうちに敵の陣形は崩れ落ち、そこに少女達の魔法が殺到し兵士たちの頭部を次々に吹き飛ばしていく。
様々な炸裂音や何かが潰される音が周囲に鳴り響く。
異世界の砂浜でひとり、射撃を一人続ける矢島はその光景を見て、彼女たちに心の中で感謝する。
ナイスフォローだ魔法使いの嬢ちゃん達、二人は飛び込んだな。
後は俺だけか…
矢島は、マギサと猫がゲートに飛び込むのを確認すると、撃ち尽くし煙を上げるグレネードランチャーを投げ捨てる。
彼はFN5,7を拾い上げ握り締めると全力で波打ち際で回転を続けている魔法陣の様なモノにダッシュする。
彼も魔法陣の様なモノに飛び込み消え失せる。彼が飛び込んだ直後回転を続ける魔法陣の様なモノは回転を加速させる。
魔法陣の様なモノはひときわ強く光り輝き、天を貫く青く光り輝く光の柱を一瞬、生じさせ綺麗に消滅する。
それを見た兵士と戦う冒険者のような一団は歓喜の雄叫びを上げ始める。
彼らや彼女たちは、士気を兵士達以上に高め、仲間の旅路を見送りながら戦闘を続けるのだった。
一方、敵の兵士は士気を著しく落とし、敗走を始める。戦況は逆転したようだ。
先程まで、焦りに満ちた表情をしていた、魔法使いの様な格好をした少女達からも、次々と歓声があがりはじめる。
その中の一人の少女は、涙を流しながら、光の柱の消えた夕陽に染まる空を見つめながら最早、この世界では彼女しか話す者がいなくなった―
【日本語】で叫ぶ。
「マギサ…私もこの世界で戦うから諦めないで―!」
海から強く吹く潮風が、喜び歓喜する彼女達の被る三角帽子と纏うローブを空へと飛ばしていく。先程、日本語で叫んだ彼女の姿も顕にして夕陽を浴びせかける。
彼女は両手に傷だらけの真紅の金属製の手甲を装着している。
其の身には茶色い革製の冒険者用の衣服を纏い、ハーフアップの髪型をしている。
彼女はこの異世界で戦い続けることを誓った―
「天下布武を!」
日本人で、魔法使いになる事を選んだひとりの少女だった。
話別小説情報
掲載日
2014年 06月22日 22時45分
最終更新日
2014年 08月02日 23時13分
第一話 颯爽スカウト!ニート完全終了のお知らせ
---2010年代後半---- 冬
----時刻は夕方-----
-----愛知県----- 名古屋市内 ----某駅前----
駅前の外資系カフェ店内の大型テレビを視聴可能なカウンター席に座り
ここ数年で普及した、タッチパネル型のパッド端末を操作しながら
クリームたっぷりのキャラメルラテを飲む一人の失業中、無職、来月で
失業保険終了の完全なるニートと化しつつある、ひとりの青年がいた。
彼は働いている時に奮発して、購入したブラックカラーのパッド端末を
指一本で操作し商業誌にデビューした、とある作家さんのウェブ小説を読んでいる。
内容はというと、引きこもりで無職のおっさんが盛大に事故死して、異世界に記憶を持ち越して転生してしまい、前世の知識を駆使し努力を重ね、魔法を効率的に使い、活躍しまくり美少女を何人も妻にしてしまうという...何やら、男の夢や欲望が満載の小説を読んでいた。
(...無料だし暇つぶしにはちょうどいいな。でも作者さん最近調子が良くないみたいだからM☆編集部から人道的に扱われてるか少し心配、売れなきゃ続きが読めんから誰か買ってやれ...俺は全巻買ったぞ。あ~俺、死ぬのは嫌だが、高待遇で異世界行きたいよ。そんな話こねーかな...)
などと、失業中の彼は現実逃避を微かに脳内で思い描く。
最新話を読み終えた彼はパッドの電源を落とす。
目の前の大型テレビでニュースが流れ出したので彼も視聴する。
彼だけでなく店内の多くの人間が何やら
携帯電話やノートPC、タブレット端末、スマートホンの操作や
会話をやめてテレビに注目し、周囲は一瞬静かになる。
真っ先に報じられるニュースを見て、多くの人間が
(やっぱりか)といった表情でテレビへと視線を向ける。
(やっぱり、今日も失踪事件のニュースからかよ...もう専門の番組作ってもいいだろう)
などと彼が考えていると、画面に映る民放の女性アナウンサーは
昨年から発生している、【とある行方不明事件】の続報を冷静な口調で読み上げていく。
『---本日新たに31人の行方不明が確認され警察は---』
【連続振り込み失踪事件】
当初は主に現役の自衛隊員が口座に多額の入金を何者から
されると、行方不明になるという前代未聞の事件であった。
それだけでも前代未聞の事件であるが、振り込まれる金額も、前代未聞の金額である。
入金される金額は、複数回に分けられており、一人あたり千万単位から
多いもので億単位という、凄まじい金額が振り込まれている。
なお、演習中に部隊単位や艦船単位で行方不明になっていない点から
戦国時代や先の大戦中のミッドウェー海域に転移している
可能性は早期に排除され、今現在ネット上では異星人による
アブダクション説や秘密結社や某国工作員による拉致など、多くの真偽の疑わしい様々な説が飛び交っており、最近ではその手の議論の加熱具合に合わせるかのように、大手掲示板や大手SNSのサーバーはダウンを繰り返していたりするので彼も多くのネット民と同様に--------------
(いい加減サーバー増強したほうがいいだろう常考)
------------などと思うのだった。
当初は規模こそ数十人程度だったが、今では既に自衛隊経験者も
行方不明となり総数10万人弱が極めて短期間で行方不明になるという
世界的に見ても全く前例がない事件なので、世界中のマスメディアや
諜報機関は当然ながら多くの人々から注目されている事件だ。
アナウンサーが読み上げる最新の情報によると、どうも
行方不明になる人間が警戒レベルが上がった自衛隊関係者から
民間人、それも-----
サバイバルゲームが趣味の人間やFPSゲームが趣味の
所謂、軍事オタクなどに変わり既に先程の自衛隊関係者を上回る
勢いで行方不明になっており、振り込まれる金額も既に総額が
兆に近づきつつあると伝えている。
それに伴い警察庁に設置された統合特別捜査本部の名称も
【自衛隊関係者振り込み連続失踪事件対策本部】から
【自衛隊関係者及び軍事オタク等振り込み連続失踪事件対策本部】
に変更されたようだ。
(名称長すぎだろう...)
しかし、明らかに尋常でない規模の金が
急激に動いており、国会でもこの事が度々問題視はされていた。
そして本日遂に与党と野党がこの事件の議論から、殴り合いの
乱闘をしてしまうほどの異常事態になってしまったそうだ。
その国会中継の映像を素材にした動画が、既に大量にアップされ既に
ランキングの上位を占める緊急事態であり、某動画サイトのサーバーも
非常に深刻な危機的状態である事も伝えている。
他にも数年前から対立が激化していた新興保守系団体や
従来型の左翼系市民団体がこの事件に対する双方の集会や
デモを遂に双方が銃火器で武装し襲撃したようだ。
それも-----3Dプリンターで作った粗雑な使い捨ての銃モドキや
猟銃、ロシアの裏庭で大活躍中のロシア製軍用銃火器、サイドパーティ製の
M4カービン銃などであり、当然ながら銃撃を含む激しい市街戦となり
東京では機動隊が催涙弾やゴム弾等を大量に発砲、場合によっては
実弾も使い制圧中とも伝えている。
画面には、パトカーや一般車両、店舗もかなりの数が焼かれ
血まみれの機動隊員が担架で運ばれている映像や、デモ隊との乱闘や
銃撃戦が繰り返し映される。
路面には血まみれの人間が、ごく普通に
倒れていたりする映像がモザイクなしで垂れ流されている。
ニュース速報で自衛隊の治安出動を都知事が外遊先から
泣きながら要請と表示もされている。
『---続いて、財務警察隊、通称武装マルサ発足式に、新たに財務大臣に就任した○✖大臣が出席し、脱税は明確なテロ行為、これまで長年に渡り放置してきた薄い本を対面販売で大規模に売り捌く【腐った思想】の連中からも容赦なく徴収していく。相手が誰であろうとも場合によっては【射殺してでも徴収してこい】など、人権問題になるような発言を繰り返し、野党は---』
これじゃまるで戦国時代の合戦だな...しかし、
一体犯人はどこの誰なんだよ金バラマキすぎだろ。
(俺にもばら撒いてくれよ犯人さん)
彼が思考を切り替え、キャラメルラテの残りを飲み出そうとすると
一人の女性が隣に近づいてきて、声をかけてくる。
「すみません、お隣よろしいでしょうか?」
「...どうぞ」
丁度混みだした店内で、彼の隣の席に一人の若い女性が
ひと声かけてから座ってくる。
他人に無関心な都市部では珍しい事である。
声や見た目からするに黒髪を腰まで伸ばした女子高生のようだ。
しかし、このあたりでは見たことない
制服であるが、コスプレのような感じはしない。
なんか普段着のように気慣れた感じを彼女から感じるからだろうし----------
何より彼女は小顔で目鼻立ちの整った顔立ちやスタイルもいい。
つまり似合っているからだろう。
おそらく悪質なキャッチセールスや
宗教の勧誘はしてこないだろうと彼は考え
(だってここは店内でカウンター席だからな。いざとなれば、店を出て行けばいいだけだ)
などと微かに思うのだった。
「あなたはどう思いますか?この事件」
「え?...どこから金を用意したのかなぁ~とか、自分もサバゲーが本格的に趣味だったら行方不明になっていたのかな~なんて考えながらこのニュースを見ていたよ」
「そうですか…この事件に興味が、お有りなんですね」
「そうだね。毎週テレビで特集組んでいるし、ここ一年くらいこの話題で某掲示板のサーバーダウンも毎月恒例の現象だから、どうしても気になるかな」
「ところで、あなたは幾らなら、もしくはどのような願いを叶えてくれるなら、別の世界で戦う決意をしますか?」
「別の世界で戦う?ああ...行方不明で音沙汰ないってことは、そういう状況かもしれないね。そうだね~」
俺は引き続き例の行方不明事件の特集をしているテレビ画面を見ながら考える。
(ああ…このお嬢さんはアレだ。少し中二病気味だな。失業中の俺は暇だし合わせてやるか...)
「最高の装備と互いに信頼できる仲間と上司、金は、手に入るなら億単位で欲しいし、健康で若く長生きできて、毎日うまい食事に酒が飲めて、いい女が手に入れば最高だね」
最後の部分は女性相手には失礼だったか。
...でもないようだ。
何やら真剣に考えている顔つきになっている。
これが本物の中二病なのだろうか?
しかし、目の前のお嬢ちゃんは可愛いから
まだ許せるのだろうなと、ふと俺は思う。
「他にも何かありますか、願い事は?」
どうも彼女の中二病は深刻なようだ。
だが、優しい俺は合わせてあげる事にする。
「そうだね、戦うって前提なら死んでもゾンビや吸血鬼とかじゃなく、人間として若く元気に無制限で何回も復活できる特典付きとかあればいいかな~」
俺がそう言うと、彼女の目は何故かパッと見開き俺を見つめている。
彼女の中二病を刺激しすぎたのだろうか?
俺は何か彼女にとって意外なことを言ってしまったのだろうか?
なんかのってきたので今度は逆に俺が質問してみよう。
「君が仮に、願いを叶える側の立場だとしよう。君は他者の願いを叶える事で何を望む?」
「天下布武それ以外望まないわ」
即答ですか。
しかも天下布武とは、女子高生が真顔で言うとは予想外ですよ。
俺がリアクションに困っていると、彼女は少し口元に微笑を浮かべながら口を開く。
「気に入りました採用です」
「へ?」
「貴方のその願い事叶えましょう」
彼女がそう言うと耳鳴りが始まり、目の前が真っ白に輝き、俺の視界は光で塞がれる。
「! うっ...」
俺は周囲を見渡す、場所は同じ店内のようだ。
俺は席に座ったままだが、様子が変だ。
さっきまで大勢いた客がいないのだ。
当然ながら店員もいない。
俺一人だ。
なんとなくだが、椅子やソファーの配置も違っている感じ-------!?
俺は外を見て思わず窓際に詰め寄ってしまう。
外では夏服を着た多くの人々が行き来し、外は昼のようだ。
俺は驚き叫んでしまう。
「なんで…昼になっている…夕方のはずだぞ!」
それにしてもなんか暑い。
外が夏っぽいからだろうか
俺はジャケットを脱ぎ、トレーナーも脱いでそのへんに放り投げると、Tシャツ一枚になり
座っていたカウンター席に戻るとイスに座り考え込む。
心臓の鼓動が早くなっている感じが自分でもわかるくらいに伝わってくる。
(落ち着け…コレはどういう状況だ…さっきの女子高生が『気に入りました採用です』『願い事を叶えましょう』とか言ったら、耳鳴りがして光に包まれて----------!)
「うっ、痛ってええ!」
また耳鳴りがする。
しかも今度は涙が出るくらいの激しい頭痛が伴う。
俺は思わず頭を抱え床に転げてしまう。
カウンター席の切れ目付近で周囲の空間が、グニャリと数回曲がるのが
俺の視界に飛び込んでくる。
(なんだ、アレは-------)
俺が耳鳴りに苦しめられているとその空間からは、先程まで俺と話していた彼女が現れ、慌てて俺の方向に駆け寄ってくるのが薄れゆく意識の中で視界に映り-------俺の意識は、一旦そこで途切れる。
「------おい! -------し------!」
俺は何かに腹部付近を刺激されたのを感じる。
強制的に意識と体を目覚めさせられ両眼を見開く。
窓が見える…外は街明かりが見えることから夜のようだ。
(なんだ、アレは…よく見えないな、でもこの感じは)
俺は腹部で受ける感触から昔、実家で飼っていた猫がよく布団の上で寝に来た時に前足で
何度も布団を踏む動作をしていたのを思い出していた。
どうやら状況からして、俺は布団の中で横になっているようだが…ようやくはっきり見えだした俺の視界には….俺の腹部付近で飛び跳ねる、黒髪でロングヘアー、背中に透明の四枚の羽を生やした何やら、巨乳な美少女フィギュアの様なサイズをした存在が目に映り、互いの視線が-----------
「.......」
「~♫」
-------合ってしまう。
服装は踊り子さんが着るような露出の激しい
赤と茶色などを組み合わせた民族衣装っぽい感じである。
「...」
「おっ! 起きたか♫ マギサ~! 新入り起きたよ」
どうしよう話しかけられてしまった。
どうやらただのフィギュアではないようだ。
俺は少し上半身を起こして周囲を見渡す。
それに合わせて小さな喋る少女も軽く布団の端にピョンと跳ね移動する。
俺が周囲を見渡すと、一面の白い壁にベッド脇にはサイドテーブル
サイドテーブルの上には見慣れた俺の茶色い革製の財布と、ブラックカラーのスマートホンが
置かれている。どうやら、ここは何処かの病室のようだ。
入り口付近の壁際には、パイプ椅子に足を組み、見事な太ももを晒して座り仮眠をしていると
思われる...俺がカフェで話していた女子高生がいる。
明確には女子高生のような格好をした少女だが、彼女は目を覚ましたようで俺に話しかけてくる。
「起きられましたね...体調の方は大丈夫でしょうか?まさか私より先に強制転移されるなんて考えていませんでしたので...」
彼女は目覚めると、少々申し訳ない感じの口調ではあるが、笑顔で俺に話しかけてくる。
さて、転移とはどういう事かと俺が訪ねようとすると彼女は立ち上がり、俺の寝ている
ベッドの横に近づくと、丁寧に一礼し口を開く。
「申し遅れました。私はマギサ、PMC【魔女の弾丸便】の代表を務めている者です」
そう言うと彼女は、制服のポケットから
名刺入れを取り出し名刺を一枚渡してくる。
失業していたから、名刺をもらうのは随分久しぶりだ。
彼女に渡された名刺を見ながら、普段聞きなれない
PMCの意味を確認すると民間軍事会社と記されている。
そのことに俺は驚き、思わず口を開く。
「はぁっ!? 民間軍事会社なんの冗談ですか...てわけでもないか」
俺は布団の端でピョンピョン飛び跳ねる、小さな少女のような存在や
カフェで起きた出来事や昨年から起きていた行方不明事件などを思い浮かべ、自分がかなり異様な状態に置かれていると感じ…いや確信してしまう。
マギサと名乗った少女が口を開く。
「どうやら、ご自身の置かれている状況が薄々お分かりのようですね...」
「ああ...信じがたいがなんとなくね。正直、こんな状況で発狂しない自分が逆に------
俺は少し間を置くと心をそして、呼吸を落ち着かせようとするが---------
-------------正常なのか疑わしいよ」
声を震えさせながら自分の正直な心情を吐露する。
マギサは少し微笑みながら話しかけてくる。
「そうですか...でも、ご安心ください。他の方はかなり取り乱したりしていましたが...あなたのような落ち着いた方も勿論いますよ。そういう落ち着いた方は、こちらの世界で願いを叶え人生を満喫しています」
(...言い切りやがった。)
こちらの世界と、しかも願い事を叶えているとか、どうやら俺はマジで別の世界に来たようだ。
俺は鳥肌を立てながら驚いてしまう。
「一応、私が連れて来るのはあなたで最後です...明日からあなたの疑問に色々お答えしますね」
彼女はそう言うと財布を取り出し、紙幣を一枚俺に渡す。
「これで1階のコンビニで夕食でも買いに行くといいわ。私は明日の朝またここにきますね」
彼女はそう言うと部屋から立ち去ろうとするが、振り返り----------
「そうそうツバメ、あなたは相棒にこの世界の事を買い物ついでに簡単でいいから教えておきなさい」
(ツバメ誰のことだろうか?)
「了解ですボス!」
俺の布団の端で跳ねていた存在がツバメ反応する。彼女の名前のようだ。
彼女、ツバメは退室するマギサに向けて笑顔で敬礼する。
(この小さいのが俺の相棒...ロボットかな? それにしてはなんか--------)
俺が次々と湧いてくる疑問を脳内で整理しているとツバメと呼ばれた彼女が笑顔で話しかけてくる。
「おい! 新入りその札よく見てみな♫」
俺はツバメと呼ばれた小さな少女に促され、マギサに手渡された紙幣をよく見てみる。
「...誰?」
「ん? あんたの世界でも昔は、そのおっさんが、札だったってマギサに聞いたぞ。知らないの?」
俺はそう言われて紙幣の人物を思い出す、聖徳太子だ。
しかもキラキラなホログラムが付いているからこんな紙幣は存在するはずがない。
だが、それも俺の世界での話だが------おや?
「おい!? これ額面が100円って」
「ああ、それな。デノミって聞いた事あるか?」
【デノミ】通貨単位及び通貨、紙幣を全面的に切り替える
大規模な作業と昔ニュースで見た記憶がある。
俺は素早くベッドから立ち上がると、自分の財布が置いてある
ベッド脇のサイドテーブルに駆け寄り、中身を見て
全身を震えさせながらも、聞きたくないことを一応尋ねてみる。
「あっあのさ...」
「危ないな~急に飛び起きるなよ! なんだ、新入り?」
俺は財布の中に自分の全財産の半分である1個小隊分綺麗に向きを
揃え、入れられた一万円を見ながら震えた声でツバメに話しかける。
「こっ、この中身って使えますか?」
「はぁ? ここは異世界だよ? 無理です」
俺の震えは激しさを増し、両目からは涙が溢れだし唇はガタガタ震えながら---------
「ふざけるなぁぁああああああああああああああああ!」
-------------本気で絶叫し泣きながらその場に崩れ落ちていく。
「うるせーぞ新入り! さっさとコンビニ行くぞ!」
本気で泣き叫ぶ俺にツバメはコンビニに行くことを強い口調で言い放つ。
俺は泣きながら渋々、床から立ち上がり、コンビニに行こうとすると------
「え!? ちょっと! ------」
...ツバメが音も立てず宙に浮き
スイスイと移動しているのでつい言葉を漏らす。
「私は妖精だよ。飛べるに決まっているだろうがぁ!」
確かに妖精は飛ぶものだ。
その点に関して彼女の意見は正しいと思う。
彼女は自身のことを堂々と妖精と言い張る。
可能性の一つとしてはロボットではないのかもしれない。
今はこの異常な状況を受け入れるしかないようだ。
いや、目の前の現実を--------
「あ...」
俺はその時、自分の腹が思い切り唸るのを感じる。
そう言えば、この世界に来てから何も食べてない。
仕方ない。この相棒とコンビニに行くしかない。ハラが減っては戦はできないとも言う。
俺はズボンのポケットにスマートホンと財布をいれると----------
「新入り~おもいっきり腹が減っているじゃないか~♫」
...腹の音を聞かれていたようだ。
------------数分後、俺達はエレベーターで1階のコンビニ手前にたどり着く。
俺はコンビニにたどり着くまでの数分間、色々とこの世界のことについて考えていた。
初めに俺がこの世界に転移させられた場所は、俺がたまに足を運ぶ名古屋市内某駅前の
外資系カフェと殆ど大差がなかった。
それに駅前の方も見たが、通行人もごく普通にいた。
(通行人は夏服だったが...)
流石に高校中退の俺でもここは所謂、俺のいた世界の科学で言うところのパラレルワールドという
場所だというのは薄々理解できるというか、それ以外思いつかない。
正直、映画やゲームでSFに親しんでいたから、なんとか
こんな異常事態でも、取り乱していないのかもしれないと薄々思う。
それでもやはりまだ、信じられないと言う気持ちは、俺の中で微かに疼き続けている。
(...信じられない...!? そうだ----)
俺は自分の置かれてる現実を確認するため、今更ながらだが自分のポケットからスマートホンを取り出し確認するが----------------やはり信じがたいが、圏外である。
俺は彼女、マギサに手渡された名刺をポケットから取り出し確認する。
魔女の弾丸便...どっかで見たことがある名称だ。
因みにコンビニに来るまで、誰ともすれ違わなかった。
他には誰もいないのをだろうか?
などと考えながらコンビニの店内を見ると店内は人が多いので少し安心...しかけてしまうが
(もう、なんなのこれ...)
俺はコンビニの客を見て驚きというより何やら諦めに近い気持ちを抱いてしまう。
客は皆サバゲーでもするようなミリタリースタイルや、特殊部隊SWATを連想させる姿で...
当然ながら皆さん-------------ゴツイ銃火器の類を携行していらっしゃる。
(...これじゃ強盗も来ないだろうなWあ~近所のす☆家、年に何回か強盗来てたから店員にミリタリーな格好させたらいいかもなWWW...おれ帰れるのかな...)
などと考え不安にかられながらも、俺はその光景を見て満喫で読んだことのある
戦場で営業しているコンビニを舞台にしたギャグマンガを思い出していた。
店内の客層には、意外なことに先程思い出したギャグマンガと違い
むさくるしい男だけでなく女性もいるようだ。
当然ながら彼女たちも銃火器を携行している。
俺は相棒の後に続いてコンビニに入店する。
客は妖精な俺の相棒を見ても一切驚かない。
客に来ている皆様には見慣れた存在なのかもしれない。
店の看板を入店前に見たが、見たこともない名前のコンビニだった。
よくよく考えると自分の世界と似たパラレルワールドだからといって
通い慣れたロー☆ンやファ☆マ、セブン☆レブンがあるとも限らない。
(...ファ☆チキ食いたいよ)
(でも...このコンビニ名もどこかで見たことのある名称なのは気のせいだろうか? 店名は【コンビニNEET】ニートそうだ。俺は確か無職でニートだったな。しかしこの世界でのNEETの意味は違うのだろうか?)
「新入り! カゴ持ってくれ~」
相棒で先輩のツバメさんは、俺に買い物かごを持つようにとカゴ置き場の上でグルグル飛びまわり
旋回しながら声を張り上げている。その舞い方はツバメの名に恥じない見事な舞い方である。
それにしても、小柄なのに普通の人間と話しているような音量に音質だ。
一体、どんな声帯をしているのだろうか?と不思議に感じる。
「ハイハイ、持ちますよ。ツバメさん」
「あたしの事はツバメでいいよ~♫ 新入り! さっさと買い物済ますぞ♫」
それにしても彼女は楽しそうだ。
いや、ツバメを見ている俺も楽しくなってきている。
彼女は店内を飛び回り、目当ての品を探している。途中ツバメは知り合いらしい武装した女性と軽く挨拶をして、ゼリー飲料を一つ両手で抱え込み俺の買い物かごに放り込み、またチョコやら駄菓子のたぐいを次々とまるで爆弾を投下する攻撃機のように優雅に放り込んでいく。
俺はその光景を眺めながら、からあげ弁当とペットボトルのお茶を買い物かごに放り込み
栄養ドリンクの置かれているコーナーの前で見慣れた品に出会う。
(おお! こちらにもあるのか!? レッ☆ブルよぉおお!)
俺がまだ働いている時、朝晩お世話になった栄養ドリンクである。
この世界でもお世話になるのだろうか...マギサは採用とか言っていたと記憶している。
わざわざ、別の世界に連れてきたのだ。俺になにかさせるのが目的だろう。
(何処ぞのブラックと評判な外食店の従業員のように酷使させるのだろうか...)
などと、先の事を少し考え不安になりながらも、とりあえず1本手に取ってみる。
(....少し俺の世界の品よりサイズが大きいように思う)
客層がそういうものを必要としているようなミリタリーな方々だからだろうか?
しかし、あの銃は本物なのか? まさか、コスプレじゃないだろうかと、チラ見するがなんか
...銃火器や身につけている装備も使い込まれた感じがする......なんか見れば見るほど
皆様から『銃で飯食っていますよっ!』て感じがビシビシ伝わってくる。
(これがプロの風格というものだろうか...そういえば)
俺は昨年、グアムを旅行した時の出来事を自然と思い出し、グアムの射撃場で
俺の横で射撃をしていた休暇中の海兵隊の皆様がこんな雰囲気だったのをなんとなく思い出していた。
そして、ひとつの確信に今更ながら至る。
(そういえば...実弾射撃してたんだよな。これじゃ余裕で行方不明候補じゃねーかよ!)
自分が今、置かれた状況の原因ともなった身に覚えにあることを思い出し納得するが
今は買い物に集中しようと考え直し、ドリンク剤の値札を見ると、やはり1円55銭とあった。
(さっきデノミしたとか言っていたからな)
俺の世界の日本の通貨単位で言えば、こちらの世界の一円は100円硬貨一枚ってとこだろう。
1銭が俺の世界での1円硬貨1枚に相当する筈だ。
つまり、単純に考えて俺はマギサから1万円を渡されたみたいなものか。
銭はアメリカの補助通貨セントに由来していると聞いたことがあるから、この世界にも米国が存在している可能性は高いのかもしれないと考え、栄養ドリンクを買い物かごに放り込むと、俺は入り口付近に戻り、新聞がない事に気づく。雑誌コーナーもよく見るとなんか狭い感じだ。代わりに何やら透明の板のようなモノが何十枚か置かれている。
(...なんだこれは?)
とりあえず、週刊誌と思われる雑誌を二冊ほど買い物かごに放り込み、レジに行き精算する。
ほかの客は何やらNEETとロゴが入ったシンプルな黒いカードで精算していた。
電子マネーかクレジットカードのようなものだろうか?
しかし、そのような大規模な精算システムを導入できるということは、NEETなる企業はこちらでは
かなりの大企業なのかもしれない。世界が変わると意味まで変わるのだろうか?
そう言えばミリタリーな客の何人かは、NEETってロゴの入った装備をしていた。
確かマギサは魔女の弾丸便なるPMC民間軍事会社の代表だと名乗っていた。
ということはNEETなるPMCか装備メーカーがあるのかも知れないな。
こちらの世界でのNEETの意味がどういうものかはまだ、俺には分からないが。
----------数時間後
俺は目覚めた病室のような部屋で食事を済ませ、ツバメは菓子を食い尽くしベッドの上で
俺と話している。信じがたいがツバメはチョコや菓子を軽く50円分(5千円)は食いやがった。
浮いたりするからエネルギー消費が激しいのだろうか。
よく見ると、ベッドの向かいの壁には何やら薄いアクリル板のようなモノが設置されているのに気づいた俺が近づき手でソレを触れると、様々なアプリケーション状の表示が現れ『うぉ!』と体を仰け反らし驚くとツバメは、丁寧にタッチパネルも兼ねた大型TVモニターだと教えてくれた。
コンビニの雑誌コーナーの薄い透明の板切れも同じ代物だそうだ。
俺は再びベッドで横になり、続けてツバメと雑談をして少しだけこの世界の状況が分かった。
この世界は俺の世界より、20数年先の未来に位置する平行世界だということ。
ツバメは自分達とマギサを含む数名の仲間は、もっと遠くの異世界から来たと言っていた。
そして、この世界の地球は第三次世界大戦を経て今に至るという事を教えてくれた。
詳しい事は明日、マギサに聞いてくれだそうだ。
ツバメも俺も眠いので電気を消し眠る。
ツバメは宙に浮きながら寝るそうだ。
理屈は分からないが、そちらのほうが自分たちの種族の健康維持には、ちょうどいいのだと言っていた。
--------------翌朝
俺は自然と目を覚ましベッドから起き上がる。
宙に浮く相棒は髪を垂らし、寝息を立てその辺を漂っている。
(とりあえずトイレに行くか)
俺は部屋を出て同じ階のフロアでトイレを探し、用を済まし軽く顔を洗い。
手洗い場に何故か大量に置かれた使い捨て用のタオルで顔を拭き部屋に戻る。
(あ~シャワー浴びたいよ...)
「おはよう~新入り~♫」
「おはようツバメ...ニュースか」
「そだよ~♫」
部屋に戻るとツバメは壁のテレビを起動させニュースを見ている。
画面には若い清楚な感じのする女性のアナウンサーが映っている。
俺の好みのタイプだ。
「なぁツバメ、天気予報の九州の北側なんか変じゃ...!? なんじゃこりゃぁあああ」
俺は大画面で表示される、天気予報の地図を見て驚き叫ぶ。
そこには九州北部でお馴染みの自治体名の表示は一切なく
【九州共和国】と表示されている。
その範囲はどうやら、対馬や日本の隣の半島全域から
大陸の沿岸部の一部まで含むのが、続けて表示された
広域の天気予報図の地図で確認できた。
よく見ると大陸に連なる、日本のお隣の
半島地帯は...地形が変わり果て島になっていた。
(この世界の地球は随分と頑丈だなおい ! 地軸とか大丈夫か !?)
「ツ、ツバメさん! 第三次世界大戦前の日本周辺の地図って表示できます?」
「ちょっと待て~リモコン起動 世界地図表示 範囲日本周辺 年代202X年 第三次世界大戦前の地図」
ツバメがそう言うと、画面が何回か切り替わり世界地図が表示される。
音声入力対応のようだ。
リモコンはないのだろうか?
そして、画面には俺の見慣れた日本周辺の地図が表示される。
こうして変化を確認すると改めて、強く認識させられる。
ほんとに別の世界に来たのだと。
その時、扉をコンコンとノックする音が鳴り響く。
「どうぞ~」
とツバメが応じると扉が開きマギサが入ってくる。
今日は女子高生のような服装ではなく、巫女さん衣装だ。
コレは彼女の趣味だろうか?
「おはよう。ふたりとも朝食まだでしょ?食べに行くわよ。付いてきなさい」
俺とツバメはマギサについていき、朝食を食べることにする。
昨日と違い、1階に降りると、やたら背広を着た目つきの鋭い人や、昨日のミリタリーな人が
通路を行き交っている。
昨日、目覚めた時には既に日が落ちていたので気づかなかったが、よく見てみると---------
---------どうやらここは、病院ではなくオフィスビルの中だったようだ。
昨日、買い物をしたコンビニNEETの先はロビーのようなガラス張りの開けた空間になっており
太陽が眩しい。反対側にはカフェやイタリアンなどが入っている。
俺達はマギサに続きカフェに入っていく。
窓際の席にマギサと向かい合って座ると、若い女性店員が熱いおしぼりを渡してくれる。
カフェの若い女性店員もツバメには驚かない。
一体、ツバメたちのような存在はこの世界でどのような位置づけで、いつ頃から存在しているのか、昨日から多くの疑問が沸き、恐怖や不安を凌駕し好奇心が疼きまくる一方だ。
今はそのほうが、精神衛生上いいのかもしれない。
俺とマギサはホットのコーヒーをモーニングで頼み、ツバメは何故か腕を組んで凛々しく
「キャラメルラテを頼む!」と言い放つ。
----数分後
テーブルの上には3人分のサラダや、厚めに切られたベーコンを使用したベーコンエッグに----------どうやら この世界の名古屋でも、お馴染みの小豆が大量にのった小倉トーストに、ツバメが凛々しく頼んだ生クリームたっぷりのキャラメルラテが並ぶ。
挽きたてのコーヒーの香りやベーコンの香りが食欲をそそられる。
30分ほどかけて完食すると俺とマギサは、コーヒーを追加で注文し、ゆっくりと飲みながらくつろぐ。
ツバメは俺が分けたと言うか、半ば強引に奪った小倉トーストも全部平らげ、満腹な感じで宙に浮き
眠り気味でその辺を漂っている。
一体食べたものはどこに消えているのだろうか?まるでブラックホールの様な胃袋である。
「ツバメのことは驚いた?」
マギサが俺に話しかけてくる。
俺はコーヒーを飲むのをやめてカップをソーサーに置くと口を開く。
「ええ、彼女のような存在はこちらでは普通ですか?」
「そうでもないわ。表向きは糖分で動く最新の軍事用自律小型無人機って事にしているのよ。一応それで、世論やメディアは必要以上に騒がないように操作しているわ」
「って事は…本物の妖精なのか」
「そうよ。あんな糖分ばかりバカ食いする燃費の悪いロボットなんて作るような開発者も技術も地球に無いわよ」
彼女は微かに微笑みながらそう応え、コーヒーを口にする。
俺もコーヒーの残りを飲み終える。
マギサはコーヒーを飲み終えたのだろうか席から立ち上がる。
「さて、行きましょうか。昨日言ったように今日は色々説明するわね」
「よろしくお願いします。ええとマギサ社---」
「私の事はマギサでいいわ」
今はまだ、呼び捨てでいいようだ。
俺はマギサに続き、ガラス張りのロビーのような空間から
外に出て停めている黒いハイヤーに乗車する。
しかも、スキンヘッドのグラサンを身につけた
筋肉マッチョの黒服の運転手付きだ。
ハイヤーの前後は軽装甲機動車によく似た
無人砲塔を備えた車両に護衛させている。
乗車前にチラッとハイヤーや護衛車両のナンバープレートを見たら、PMCと刻まれその次にアルファベットが二つに四桁の数字が続いて表示されていた。
乗車して街並みを車窓から眺めていると、やたらと高層ビルが多い。
こちらの世界の名古屋...否、よく考えたら別の都市部かも知れないと考えながらも、異様に摩天楼が多いその光景に少し驚いて見入ってしまう。
暫くすると高速に乗り郊外に向かうようだ。
道路の案内表示を見たら、名古屋とあった。
摩天楼の異様に多いこの都市は、この世界の名古屋のようだ。
高速に乗ると暫くは、トンネルのような風景が3分ほど続き
郊外の景色が見え出す。
何やら廃墟がやたらと多いように見える。
時折見える市街地の周りは、高いコンクリートの壁で囲まれている。
まるで俺のもといた世界のイスラエルの入植地や、アメリカの富裕層が住んでいる高級住宅地を連想させる光景である。
確かこの世界では第三次世界大戦が起きたと聞いていたから
やはり、日本もそれなりに被害を受けたのだろう。
通貨単位が円や銭を採用していることから
戦後も国家としては独立しているのが伺える。
デノミもしたみたいだから、車窓から見た摩天楼や郊外の廃墟から
察するに今は復興の途上といったところだろう。
高速を降りる寸前、案内表示には俺の記憶にある
自治体名 ○✖市が表示されていた。
俺のいた世界では、市名をモチーフにした
キモいと評判の【ゆるいキャラ】を採用したあの自治体だ。
しかし、やはりここも高層ビルの類いが多いようだ。
それに、高速から降りる寸前に見えたが
何やら市街地の周りは、やはりコンクリの壁で覆っているようだ。
壁にロープを垂らして作業をしている人影も見える。
よく見ると軍隊か警察の特殊部隊の様な格好だ。
おそらく訓練の類いだろうか。
その光景を見て、満喫で読みかけていた人類を殺戮しまくる巨人に
立体的な機動を駆使して人類が戦う漫画のことを思い出していた。
最新刊まで読み終える前に、この世界に来たのを少しだけ残念に思う。
そう思うと、俺もあの漫画の登場人物みたいに死闘を繰り広げて大変な目に遭うのではないかと
今後への、一抹の不安を抱きながらも俺を乗せた車両は、厳重に護衛されながら市内へと進入していく。
話別小説情報
掲載日
2014年 06月22日 22時47分
最終更新日
2014年 07月31日 09時22分
第二話 妖精さんと二人で纏う黒鉄
----------------約三十分後
俺達を乗せたハイヤーは、同市郊外の山沿いの山頂にある元は、何かの施設だったと思われる場所に
到着し、ハイヤーを降りその施設を見ると、直ぐに見覚えが有る事に気づく。
そこは元の世界で用事があり、何回か来たことのある施設だった。
「マギサここって」
彼女は呼び捨てでいいと言っていたので、遠慮なく呼び捨てでマギサに俺は問いかける。
「あなたが今日から勤務する基地よ。あなたも向こうでここに来たことあるでしょ」
「ああ...資格の認定試験で何回か...なんで知ってる?!」
俺がここに来たことをマギサは知っているようだ。来たのは2年以上前なのだが...
ここは、俺の世界では公立の大学だった筈だ...俺の記憶ではそうだった...
白い色だった校舎は、グレー色の遮熱塗料が塗られ、まるで護衛艦を見上げているような錯覚を覚える。
要所には武装した全身黒ずくめの兵士が歩哨で立ち、巡回し土嚢が積まれ重機関銃や対戦車榴弾発射筒や
携帯式地対空ミサイルを配備している完全な要塞と化しているようだ。
駐車場には様々な装輪装甲車両や、トレーラーに積まれた装軌車両、よく見ると---------
---------民生用のオフロード車両を改造し、荷台に機関銃を積んだテクニカル車両も駐車してある。
林の方には髑髏マークを描かれた【地雷原立ち入り禁止】の赤い立札が立てられ
有刺鉄線が張り巡らされていて、これでは-----------------
(ダンボールの中に隠れたくなるシチュエーションだな)
俺が某潜入ミッションのゲームを思い出しながら、周囲を見渡しているとマギサが話しかけてくる。
「貴方の事は数年前から気にかけていたのよ。私としても失業中のあなたを他にスカウトされる前に手に入れたくて、強硬な手段を使ってしまったのよ...理由は中で説明するわね」
...どうやら俺の事は調べ尽くしているようだ。
しかしその上で俺をかなり強引に連れてきたのだから
失業中の俺にとって悪い条件は提示されないだろうと、考えるに至り
少しだけ、心の中で燻る不安が消えていくのを感じる。
「よろしくお願いします」
俺は自分の素直な気持ちと、彼女を必要以上に疑っていた謝罪の意味も込めマギサに言葉にして伝える。
「ええ、こちらこそよろしく」
マギサはニコリと微笑みながら返事を返してくる。
彼女はやはり笑うと可愛いと思う。
仕事用の顔、外面なのだろうが、それでも可愛いというのは大切だと感じてしまう。
俺とマギサが移動を開始すると、車内で寝ていたツバメも気づきピュンと飛んでくる。
俺達は中央の棟に向かって歩いて行く。
スニーカー越しだが青い芝生の感触が気持ちいい。
入り口には、白衣を着用しメガネをかけたショートカットの若い女性が片手をヒラヒラと
こちらに振りながら待っているようだ。
おそらくマギサの知り合いなのだろうと感じるとマギサも片手を軽く振って笑顔で応じる。
どうやら知り合いであることが伺える。
突如、ツバメが瞳を輝かせながら猛スピードで何やら、叫びながら飛行を開始する。
ツバメは白衣の女性の近くに到達すると、大声で叫びながら白衣の女性の周りを飛び回る。
「真希(まき)ぃぃいいい! 久しぶりぃぃぃいいい!」
ツバメが叫びながら白衣の女性の周囲をハイテンションで飛び回る。
その飛び方、いや舞い方は、やはりツバメの名に恥じない見事なものだと俺は感じてしまう。
なんとなくだが、鳥類で同名の燕と飛行の仕方が似てる感じもするからだろうか、確か燕の
飛行の仕方は飛行機などに近いと聞いたことがあるからだろうか、彼女の飛行は魅力的である。
よくよく考えると、飛行機の方が鳥類の後に登場したんだから飛行機の方が似てるのか。
なら逆だなと思いながらも、俺とマギサは中央棟の入り口に到達する。
ツバメは白衣の女性の周りを激しく飛行しながら、彼女の名前を叫んでいる。
同時に俺は彼女の白衣についたネームプレートの名前を見て、ツバメが叫んでいるのが
この女性の名前だと確認する。女性の名前は【本田 真希】と言うようだ。
ツバメが何やら千鳥足ならぬ、墜落寸前のフラフラな状態でこちらに息切れしながら戻って来て
俺の左肩に持たれるように止まる。Tシャツ越しにだが肩に彼女の胸の感触が温もりと一緒に伝わるが
性的な興奮というよりは、何故か昔、実家で飼っていた猫が子猫の頃よく肩に乗っかって来た
記憶と気持ちを思い出し、俺の中でしつこく燻っていた不安が消え失せマギサやツバメに親近感が微かに芽生える感覚を抱く。
「はぁ!はぁ! 疲れた休ませて」
「ああ...いいけどツバメのお友達?」
「はぁ! はぁ! まぁ、そだよ」
俺はツバメのハイテンションな、はしゃぎぶりから伺える彼女の明るさに心を和ませながら思う。
(はしゃぎすぎだろう。ツバメさんよ)
ツバメの飛行による包囲が解除され、真希と呼ばれた白衣の女性がマギサに話しかけてくる。
「マギちゃん~久しぶりだね。彼がツバメの相棒かい?」
この白衣のねーちゃん事、本田真希さんは俺を何やら、ディーフェンスな動きで『おっ』などと声を漏らしながら----------------じっとりと舐め回すような感じで見てくる。
なんか寒気を覚えるのだが、明るいツバメが懐いているのだから、嫌な人間ではないのだろうと信じたい。
(いや、そうであってください頼む!)
「そうよ。真希、後でそちらにふたりを連れて行くけど例の装備は用意できている?」
「ばっちりだよ。ツバメの出力に耐えられるようにしといたから~♪」
二人は仕事っぽい話をしながら施設内に入り、俺とツバメも後に続く。
俺とマギサ、ツバメの3名は最上階の元は教室と思われる部屋に入る。
ここに来る途中で真希は『準備しとくわ』と言いながら同じフロアの別の部屋に入っていった。
マギサは教壇に立ち、その隣にはツバメが宙に浮く配置で並ぶ。
俺は最前列の席に着座し、少しマギサ達を見上げるような感じになる。
--------部屋には3人だけしかいないようだ。確か俺が一応彼女が引き抜く最後の一人みたいな
ことを口にしていたから、俺だけなのかも知れない。
「では、説明を始めさせていただきます」
マギサは俺に一礼してくるので俺も釣られて座ったまま一礼をしてしまうが-------------
------------見えてしまった巫女装束の隙間からマギサはノーブラのようだ。
しかも綺麗な、おわん型である。まだ、乳頭は確認できないが-----------
-------------(なっ!)
...俺は自分の体の異常に気づく。
息子が先ほどのツバメのスクランブルな発進並みにエレクトして元気になっているのだ。
(コレはやばい! --------)
そのように危機を察した俺の脳内では即座に
息子への緊急要請がくだされる。
(頼む息子よ...沈まれぇええ! 平行世界デビュー早々、変なあだ名が付いてしまうのは避けたいのだ!)
などと俺が脳内で力強く指令を下しているのを知ってか知らずか、マギサは話しを再開する。
(流石に息子までは監視...今は考えないでおこう。それがいい!)
余計なことを考えて色々と手遅れになるまいと
俺は、必死にマギサの話を聞く決意をする。
「まず、はじめに私もツバメも貴方同様にこの世界の人間ではない事を明かしておきます」
俺は黙って頷く。
元気な息子もかすかに頷く。
(..........よし! ....鎮まった...多分)
息子の反乱に近い行動を押さえ込んだ
紳士な俺は目の前の巫女さん事、マギサの話に集中する。
「私達はあなたが移動したのより遥かに、違いが明確な世界、あなた達から見て異世界とも言うべき世界から、こちらの世界にある目的を持って来ました。それは-------------」
(ああ...やはり異世界ですか...そう言えば駅前のカフェで俺が聞いたな...確か天下---------)
「---------私の世界において、貴方の世界の日本でも一度は聞いた事があるとは思いますが、天下布武、要は天下統一を成し遂げる為の準備をするため...及びそれを妨害する敵勢力の排除です」
(準備ね...それに-------やはり敵がいるのか)
いくつか疑問が浮かんだので挙手して遠慮せずに聞いてみる事にする。
「どうぞ」
マギサに発言を認められ疑問を口にする。
「君は何者なのか?何故自分を選んだのか? 名古屋のカフェで俺の願いを叶えましょうと君は言ったが、全部実現可能なのか?後は雇用条件------------------」
マギサは真剣な眼差しで俺の質問を聞いている。
-------------その後、俺は途中、休憩を挟みながら夕方には...マギサから聞けるだけの事は聞き終え
渡されたノートにメモを取りながら頭になんとか叩き込んだ...彼女、マギサの説明が上手だからそれなりに理解できたのだろう。彼女は数年前から俺の事を『気にかけていた』と言っていた...
-----要は監視して俺の事を調べ尽くし-----説得して自陣営に引き込む予定だったのだろう。
だから説明も俺に合わせてくれていたようで恐れ入る。
実際、彼女に聞いてみると当初の予定はそのようだったようだ。
だが、敵の動きがここ一年で異様に活発化したのだそうだ。
例の連続行方不明事件のことだ。
そのことに危機感を覚え、マークしていた俺を彼女自ら半ば強引に連れてきたとの事だそうだ。
行方不明事件の大半はマギサの陣営によるものではなく、彼女の対抗勢力によるものとのことだった。
マギサの見解だと敵の目的は、マギサが俺をスカウトしたように自陣営に引き込むことと言うよりは、自分達に対抗できる素養を 持った者を事前に排除することではないかとの事だ。
事前排除の根拠としては、まだ俺の世界から来た人間と
交戦した事がない事から、現状では拉致して
排除したと見ているのだそうだ。
正直、それが事実なら彼女は命の恩人であり
俺は彼女に借りが出来たことになる。
(その素養とやらが、俺にもあるみたいだが...その素養とやらの話の筋は一通り通っているから...今は信じてみるかそれに...)
だが、それでは俺の世界での異様な金のバラマキはどう説明するのかと、
聞くと、マギサのような自陣営に引き込む行為を行う者への妨害活動ではないかとのことだった。
要は警察やマスメディアを動かして注目が行くようにして、スカウト行為ができないようにするってことだろうか?このことから複数の勢力が複数のパラレルワールド----------
---------------俺のいた2010年代の地球と-------------
俺から見て2030年代の未来に位置する、このパラレルワールドの地球と----------------
マギサとツバメ、彼女達に敵対する勢力が来た異世界を股にかけて
対立を繰り広げている構図が浮かぶ。
他にも何故、パラレルワールドの地球を拠点にするのかと聞くと、もの凄く納得してしまった。
要は金の問題だ。
マギサやその敵は、天下布武を目指すのだから
軍資金が必要になる。
この世界の日本ではデノミ、通貨単位を切り替える
大規模な作業が大戦後の復興を進めるために行われたのだ。
その際に当然ながら預金封鎖とセットで多くの国民から
一円でも多くの現金を金融機関に集めるために新紙幣との
交換に期限を設けたそうだ。
その際に当然ながら大量の旧紙幣は紙屑となったのだが---------
------------それはあくまでも、この世界での話だ。
そう、俺のいた2010年代の日本には全く関係ない話である。
仮に大量の紙屑と化した旧紙幣を持ち込めば、お菓子から戦車、ミサイルまで買い物し放題のチート状態の出来上がりである。
一応、こちらの世界の旧紙幣の最高額紙幣をマギサが持っているというので見せてもらったが、俺の財布の中に入っている諭吉と寸分違わない同じものだった。
だが、それだけだと人の目をごまかせてもATMや紙幣判別の機械などはごまかせるのかと聞いたら、『元が同じ時間軸由来の物だから全く問題がない』と言われ納得してしまった。
確かに大前提として、紙幣の互換性がないとこんなチートは成立しないのだから当然だ。
マギサも彼女の敵もそこに目を付け現在は、必要な物資や人材を漁りまくっているとのことだった。
どうせ、紙屑同然に金を集めれるのなら先程の連続行方不明事件の件に対するマギサの見解は、現状ではあながち的外れでもないように思える。
彼女の説明によると、マギサの陣営は主に人材をほんの10人弱程を2010年代の世界から引き抜いただけで、向こうでは主に物資をメインに調達しているそうだ。なんでもこのパラレルワールドの地球は
第三次世界大戦でグローバル経済が事実上の破綻をし、こちらで物資を現地調達する方が長期的にはコストがかかるそうだ。
(紙屑と化した旧紙幣持ち込めば、いくらでも向こうで買い物し放題だからそりゃそうだWWW)
人材に関しては、彼女の望む条件を満たす者は極端に少ないとのことで、説明の最中、何度も
『あなたの活躍には期待してる!』と言われてしまった。
(...今は彼女の見立てが正しいことを信じよう)
他の人材はこちらで確保しているとのことだ。
因みに【魔女の弾丸便】の社員の総数は、戦闘部門と
非戦闘部門を合わせて2万人弱で一応、日本のPMC【民間軍事会社】の中でも-------------
------------トップ5には入る規模だそうだ。
(陸軍の師団弱いや...後方要員も入れて2万だから実質旅団規模で業界内トップ5かそれに------)
(------大手だと少しは安心できるな。しかし、マギサはどう見ても10代の少女にしか見えないが...)
大半のPMCは個人や小規模のグループで行動し、全国を流浪しゲリラ討伐や治安維持全般から警察が未確認の犯罪の私設捜査に、民間人の警護などの依頼をこなすのが主流のスタイルらしい。
なんかRPGの冒険者みたいだな。
業界トップは俺が昨日、買い物をしたあのコンビニも傘下に収める、特別軍事法人NEETという
組織だそうだ。規模は戦闘部門と非戦闘部門を合わせて30万人弱で正規軍に準じた規模とのことだ。
なんでも、自衛隊は国防軍と各州の自衛軍に再編成されているようで双方を合わせて、こちらでは正規軍というみたいだ。さて...業界トップのNEETだがどうも、西日本全域を再建の名のもとに、市町村レベルでモザイク状に事実上の支配下に置いているとのことだ。
今朝、俺が天気予報を見て驚いた九州共和国と陸続きの国境地帯を抱える九州は、数多くのNEETの運営する計画都市が点在しているようだ。
(なんか...この世界のNEETは凄いな。略称の意味もNational Eenemy Eliminate Teamとか中二病全開じゃねーかWしかも----------)
この施設もそのNEETの軍事施設らしい...
マギサたちがNEETと共同で兵器の開発や試験で利用してるとのことだ。
彼女の説明を聞いてると、どうも社長同士が知り合いのようであることが伺える。
(もしかして...向うの社長さんもマギサと同類の異世界人かな?--------どれ)
説明が終わる時、マギサからA4サイズの紙の束を渡され、今はそれに目を通している。
俺にも分かりやすく理解できる様にこの世界や、マギサの世界の情報がまとめられている。資料の束だ。タ☆ンワークより少し厚いくらいだ。
(どれ...読んでいくか)
「お~い新入りぃい!移動するぞ♫」
俺が資料に目を通そうとするとツバメが近づいてきて声をかけてくる。
「おう、でどこに行くんだ?」
「真希の研究室だよついてこい~♫」
俺はツバメに誘導されながら、同じ階のやけに分厚い金属製の扉の前に到達する。
よく見るとカードリーダーが付いてるから、この先はセキュリティレベルの高いエリアなんだと感じる。
(あ~会社勤めしてた頃は、研究エリアにお届け物を持って入る時、守衛にゲストID発行してもらってから日替わりのパスワード入力して面倒だったな...懐かしいな)
俺はかつての職場を思い出していた...あのまま会社に残っていたらマギサの言うところの敵に拉致られ
死んでいたのだろうか?もしかしたら何も知らずに日常生活を送りながら死んだほうが、この先、幸せだった思うような事があるかもしれない--------------
「な~に真剣な顔してんだぁ~新♥入り♥くん♥」
ツバメが俺の左肩に甘い声で囁きながらそっと止まる。
今度は彼女のやわらかい尻の感触と甘い香りが伝わって来るが...
流石にお人形さんみたいなサイズの女性には興奮しない。
むしろ猫や子犬と戯れる感じに近いが...
(...それを言うとトラブルになりそうだし、黙っておこ)
「さっき、マギサが説明したモノがこの先にあるんだろう?少しは緊張するよ」
「楽しみかい新入り?」
「話を聞いた限りじゃ、非常に男心を擽るから楽しみだね...それに...命を預ける代物だからな」
「そっか...あたしは、やっと戦えるから嬉しいよ♫ --------おっ!」
(そう...俺とツバメはこれから相棒なんだ。よろしくな---------?!)
次の瞬間、扉が開きマギサと真希が並んで待っている。
「二人共、中に入って」
「ツバメちょっと--------」
「なぁ~に真希♫」
真希が手招きをしてツバメを呼んでいる。
ツバメは俺の肩から飛び立ち真希に何やらゴニョゴニョと
耳打ちをされているが、俺はマギサに呼ばれ先に彼女の後に続き、部屋の奥に入っていく。
因みにこの部屋だけで、このフロアの半分以上を占めている、かなり広い部屋である。
部屋の中に設置されたおそらく、侵入者対策のために作られたであろう
L字型通路を3回程曲がると、そこは-------------開けた空間になっており、真ん中には----------
-----------先程マギサに説明された俺の素質を見込んでわざわざNEETと共同で開発した
胸元から板が開き、漆黒の人型をした物体が西洋の甲冑の様に鎮座していた。
パッと見た感じは黒いフルフェイス型のヘルメットと、ライダースーツをマネキンに着せ立たせてる
感じであるが、マギサと共に近づいてよく見ると胸元の開いた板の中には、彼女の説明通り-------
-----------相棒のコクピットが設置された-----------
「マギサこれが...」
「あなたがツバメと共に動かすパワードスーツ黒鉄(くろがね)よ」
一機のパワードスーツだった。
話別小説情報
掲載日
2014年 06月22日 22時47分
最終更新日
2014年 07月27日 23時40分
------------------------- 第2部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
三話から五話
【前書き】
文字数(空白・改行含む):23528字
文字数(空白・改行含まない):22221字
行数:1121
400字詰め原稿用紙:約56枚
【本文】
第三話 追加項目
「...よしっ装着完了! こんな感じで毎回着ればいいから」
パワードスーツの装着を真希にレクチャーされながら終えると、真希の隣に滞空してるツバメが
ヒューンと俺の胸元に滑り込み------------
------------「入るぞ~新入り♫」
ツバメがパワードスーツの胸部に設置されたコクピットに入り込んでハッチを兼ねた胸部装甲を閉じ
通信用のインカムで俺に呼びかけてくる。
『あ~新入り君聞こえますか~』
『聞こえますよどうぞ』
『後はマギサの準備が完了すれば、契約の儀式開始できるな♫』
『そうだな』
---------数時間前
「マギサって魔女なの?」
「あらっ じゃあ、なんだと思っていたのかしら?」
「未来人で時間犯罪者かと」
「その根拠は...紙屑になった紙幣をあなたの世界に持ち込んでいるあたりかしら...」
彼女は一応、犯罪者扱いされても驚きもせず、冷静に俺の質問に答える。かなり肝が据わっているのだろう。そこは流石2万人弱の組織のトップだと感じる一幕である。
「そうだね」
マギサは俺に自身の正体を明かしてきた。彼女いわく、自分は魔女であると...
(未来人でないのなら魔女とか言われた方が、まだ俺の中では一応納得はできるかな------?ん)
何やらマギサの表情が少し悲しげな表情をしながら、ため息をつき-----------
「----------残念だわ...危険も顧みずあなたを助けに行ったのに-----------!」
「あわわわ! マギサさん泣かないで疑ってすみません---------------!」
------------そして現在
「魔法陣の設置が完了したわ。屋上に移動しましょう」
巫女服姿をしているマギサが部屋の更に奥にある階段から降りてきて俺と-----------
-----------胸部装甲のコクピットにいる相棒のツバメさんによびかけるのだが-----------ツバメは
日曜日の朝八時半から活躍する某美少女戦士のテーマソングを鼻歌交じりでノリノリで聞いている。
先程、彼女にインカムで何故それがこちらにあるのかと聞いたら、マギサが俺の世界から帰ってきた時のお土産だそうだ。(名駅前のなんとかの穴にでも行ってきたのか?)
ツバメに確認すると、こちらの世界にも似たようなアニメはないのかと聞いたら、深夜枠で【プリティキュンキュン】なる、おっきいお兄ちゃん向けのアニメが第三次世界大戦前から放映されてるとのことだ。
(...今度見てみよう)
『ツバメさん動くけど大丈夫?』
『ん? いいよ~♫ 新入り発進~♫』
(発進ておい...俺は巨大ロボですかい...彼女から見たらそうなるかな)
俺が屋上に着くまでの間、相棒は終始ズシ~ンズシ~ン
などの効果音を口ずさんでいた。
流石に短時間とは言えウザイので、インカムをオフにすると
何やら胸元で振動が生じインカムに着信が度々入り...応じると
『寂しいじゃねーか! オフにすんなよ!』...と大変厳しいお然りを受けた。
(だってうざいんだもん! しょうがないじゃん!)
...で俺は今、屋上に設置された魔法陣の真ん中で、マギサと向かい合って立っている。
ちなみに息子は大人しいものです。
マギサの首には何やら銀色のチェーンがかけられている。
儀式とやらに使用する物でも身につけているのだろう。
真希は他に用事があり、先に帰宅した。
といってもマギサと彼女の会話からしたら、彼女はこの基地に
住んでいるようだ。
(それにしても------------)
「綺麗な夕陽ね...」
「ああ...そうだな」
マギサと俺は市街地を一望できる屋上からの夕陽に見入る。
俺は素直にこの光景を綺麗だと思う。
しかし彼女、マギサからは悲しそうな感じを受ける。
「では、契約の儀式を始めるわ--------」
彼女はそう言うと胸元に片手を突っ込み、(おお!)
銀色のペンダントのようなものを取り出し手のひらに乗せ差し出してくる。
真ん中には青い宝石のようなものが埋め込まれ、その周囲には放射状に矢状の模様が中心の宝石から広がるように刻まれている。
「これに手を乗せて」
「はい」
俺は促されるまま手を乗せる。
彼女は更に俺の手に片方の手を重ねてくる。
『お~い新入り、今から少し派手に光るけど驚くなよ。それとマギサの手首をしっかり握れ、いいな』
『了解』
ツバメから真剣な声で催促され、その通りにする。次の瞬間魔法陣が青く光り輝きだし-----------
『#%=(%#!!$%’()=~~~|~=)(’&%%』
何やらマギサが詠唱のようなものを唱え出す。内容は.......全く理解できない未知の言語だ。
(さて...マギサが唱え終わったら-----------)
『新入り~もうすぐお前の番だぞ』
ツバメがインカムで俺に呼びかけた直後、マギサの詠唱のような作業が終わり------------
------------この世界での自分の名前を決める瞬間が訪れる。
-----------数時間前
「------で、このように平行世界を移動してきた者、それも魔術による防御措置を施されてない知的生命体は移動先の平行世界において、その量子状態は大変不安定な存在であり、其れ故に超人的な能力を発揮できる理由ですが------------」
俺はマギサから、俺を引き抜いた理由の中の一つ、俺の持つ素質について薄く透明な下敷き状の端末を渡され、そこに表示されるデータを見ながら説明を受けている。
「------------その超人的な能力も制御する術がないと死に至る、つまり平行世界を移動してきた者は
航空機で例えるなら、戦闘機のような高機動を行える存在であり、逆にその世界で生まれた者は輸送機のように安定した飛行を行う存在であると、例えることができ------------」
要約すると俺の持つ素質とやらは、俺が平行世界の人間であることであり同時に------------
「--------ただし魔術的防御措置を施されず、人間としての形状、意識を保ち平行世界を移動できるのは主に男性、それも武器の類い等を扱い、緊張感をその骨身に叩き込んでる者に多い傾向がありますが、2010年代の世界の日本や先進国においては他国と違い---------」
「------------いわゆる、軍事オタクなどと呼ばれる人や、不安定な雇用環境に置かれ潜在的に強いストレスを強いられる環境下にある者などにも同様の傾向があり-----------」
マギサの挙げた条件をほぼ満たしていたのだ。
「-------------通常の生活を送るだけなら平行世界においても人並みに暮らせる可能性はありますが、急激に極度に緊張した状態に陥ると、特に生命の危機に際しては-----------」
「----------その形状や最悪、自我を失い日本でも古来より伝えられる-----------」
「-----------に変化してしまい一年以内に死亡してしまいます。そのような状態に陥らず、尚且つ安定して平行世界で戦闘を含む各種活動をできるように貴方には、特殊な魔術的措置である魔女との契約を行い、その際に新たに名前を---------------」
-------------そして現在
「我は魔女! マギサ デルフォイ サクラと契約を結ぶ者OOOO! 我はこの名を捨て去り!
新たに神宮義明(じんぐうよしあき)を名乗り我が主! マギサ デルフォイ サクラと以下の契約を結ぶ者なり! -----------」
俺はヘルメットのバイザーに表示される文章を大声で読み上げている最中だ。
(なんでだろう...ヘルメットとかで顔隠すと大声出しても恥ずくない。むしろ謎の爽快感がWWW)
某私鉄の駅名から苗字を、そして名前はマギサに拉致られる
前日に電話で話していた元同僚から拝借させて頂く事にした。
契約の内容は主に以下の通りである。
第一 契約者はマギサと共に、マギサの故郷である世界での天下布武達成を目指し行動を共にすること
第二 マギサは自らの権限が及ぶ範囲で契約者の戦闘行為を含む労働環境及び、福利厚生に最大限の配慮をする事
第三 マギサは契約者に対して、こちらの世界の現行通貨で年二回のボーナスと合わせ賃金を毎月払う事
第四 マギサは契約者が天寿を全うするまで、無制限で若く元気で健康な状態で尚且つ記憶を持ち越し、自我を保った状態で20代の成人男性ないし10代後半の状態で迅速かつ速やかに蘇生させる義務を負う。
第五 契約者は第一の項目が達成されるまで本契約を破棄できないものとする。
そして...最後にマギサに頼み込んで追加させた項目が...
(--------------キタ━━!)
第六 マギサは契約者に対し日本国旧紙幣で500兆円を速やかに譲渡し、また契約者が第一の項目達成時に、譲渡した旧紙幣を契約者の世界に現物ないし、現地の金融機関を経由し契約者の口座等もしくは契約者が安全に利用可能な口座等を用意し、資金洗浄した上で送金しなくてはいけない。尚、これらの送金行為前後、行為中ないし行為後に現地の政府機関等及び、それ以外の個人や団体との紛争行為が契約者に発生ないし予見された場合、マギサは速やかに契約者の救援要請の有無に関わらず契約者、もしくは元契約者を平行世界に避難させ、保護する義務を負うものとする。
(流石にこれだけは譲れないのでねじ込ませて頂いた! だって万札が紙屑扱いされてんだぜ! 使えるところが有るなら使わなきゃ、もったいないではないかぁあああ! フハハハハ ! でも余裕で色んな勢力と揉める金額だから保険と退路は必要-----------------ん?)
第六の項目を読み終えたところで第七の項目が出現するのを確認する。
(おかしいな...打ち合わせでは第六までのはずなのに...................え?)
第七 契約者は第六までの項目を宣誓した時点で第七の項目も受領したものとする。内容は以下の通り契約者はマギサ デルフォイ サクラを正妻として迎え永遠の愛を誓い、彼女を愛し子作りに励まなくてはいけない。離婚はできないものとする尚、この項目は他の項目より優先され、第五項目は適用できないものとする。尚、この項目の宣誓は不要である。
「.......................」
「なんじゃぁああああこりゃあああああ!」
『マジかよぉおおおおおお結婚キタ━! みんなに連絡しなくちゃキャー♫』
「え?」
俺が叫ぶと魔法陣が発光をやめる。
マギサはその瞬間、俺の手を振り払い突如、魔法陣の端でスタイリッシュに
土下座をして------------
「ごめんなさい!」-----------と1分ほど謝罪されそして......
「-----------もう貴方...いえ! 義明さんしかいないんです!義明さん私は--------!」
俺のインカムには、内部のツバメさんが何やらカタカタとタッチパネルを叩く音が彼女のはしゃいだ声と共に鳴り響く。恐らく友人にメールでも送りまくっているのだろうか...まぁそんなことを考えていたりしてもマギサの話は続くわけで-------------
「貴方のことを監視してるうちに! 好きになりましたぁあああ!」
(なに、この展開............告られたの?)
「勿論! 義明さんの気持ちを完全に無視した急な話だと思いますので! 私だけを愛せとは言いません! 他にも好きなだけ女性を囲っていただいて結構です! その為の資金もお出ししますから........」
(ええ! いいの------ん?)
何やら後半は泣き声になっていた...彼女は肩をガクガク震えさせながら顔を上げ泣きながら------------
「--------! もう...誰も...戦乱で失いたくないんです! うぇぇえええええんん!」
「あああ! 泣かないでマギサ! 落ち着いて...まずは話し合おうね?」
その後、俺がマギサに駆け寄り話しかけてると、階段からツバメの連絡を受けたであろう、白衣姿の真希さんが何やら盛大に笑い声をゲラゲラ上げながらダッシュで駆けつけ、マギサの事を介抱しながら俺達は夕焼けに染まる屋上を後にした。
(ああ...俺どうなるんだろう夕陽が眩しいよ......)
-------------NEET基地内 本田真希の自室
「みんなソファーに適当に座って。ええと...義明くんはコーヒーでいい?」
「ええ、コーヒーでいいですよ真希さん」
「マギサはいつものでいい?」
「...うん...」
「真希! 私は砂糖とクリームたっぷりで! 頼む!」
「はいはい、ついでにガムシロ入れといてやる」
「きゃあああ! ガムシロップキタ━!」
ツバメはガムシロップの一言に興奮し、そこらじゅうを燕のごとくビュンビュン飛び回る。
(元気だなツバメさんよ...少しはその元気、俺に分けてくれよ)
...などと、たわいない会話をしながら俺達は、基地内にある元は大学時代のお偉いさんの部屋だったと思われる部屋で黒いソファーに腰掛けコーヒーを出されるのを待っている。
パワードスーツは窮屈なので脱いで部屋の隅に置かせてもらった。
マギサはと言うと...泣きつかれたのだろうか大人しくなっている。
(もうどうなるんだろう)
今の俺は灰色のパイロットスーツ、要はウエットスーツみたいな感じのものを着てるのだが、これを着用
しないと最大出力では機動ができない事と、このパイロットスーツは戦闘時に俺を人間として維持するのに必要な重要な装備であることもレクチャーの際に真希さんから教わった。それに-------
(あ~自分でもわかるくらい汗くさいよ...風呂入りてぇ...)
さっき真希さんにシャワーを浴びたいと伝えたら、この基地の男子寮の空き部屋の利用許可証と、替えの新品の下着を部下に用意させて先程、持ってきてくれた。
完全武装で黒ずくめのSWAT風の兵士が。
(マジで驚いたよ...突入されるかと思ったじゃん! 心臓に悪すぎだよホント!)
「.....」
マギサは切なそうな眼差しで俺の方をチラチラ見ている。
(ああ! なんかそんな顔されたら俺が悪いことしたみたいな気持ちになるじゃん!......いかん落ち着かねば...俺まで感情的になったら話しがつけられんではないか!...でも彼女と夫婦か...)
目の前の巫女さん事、マギサはソファーの上で膝を抱えてしょんぼりしている。
(やべ可愛いかも知れない...でも話によると、契約を魔女と結ぶと-----------)
「ハイお待たせ~義明くんとマギサのは熱いから気をつけな」
「頂きまぁああす♫」
ツバメのはアイスコーヒーだ。
アイスならストローで飲みやすいからだろうか。
其の辺の気使いからも彼女たちの付き合いの長さを感じさせる。
俺は軽く会釈をしてコーヒーを飲む。
無糖でブラックのホットは俺の気持ちを落ち着かせる...
(ってか落ち着きたいです! マジで!)
マギサも真希さんに出された紅茶の入った白いマグカップに口を付け飲みだす。微かにレモンの香りがしたのでレモンティーだろう。
「さて...三人とも今はそいつを飲んで心を落ち着けな。話はそれからさ」
-------------数分後
みんな真希の用意したコーヒーや紅茶は飲み終え、俺の相棒ことツバメさんは、また宙を浮きながら寝息を立て、その辺を漂っている。
(ああ...こんな時はお宅のような存在が必要なんだが---------?)
「さて...ツバメも寝たし真面目な会話を始めるかい---------お二人さん」
真希は俺とマギサを交互に見て言葉を締めくくる。
「はい...」
「.........うん真希」
俺とマギサは互いに反対側のソファーに座り向かい合っている。一方、真希さんはかつてお偉いさんが座ったであろう、黒い革張りの高そうな椅子に座り、両手を机の上で組み指の上に顎を載せ、机の隅に置いた残りのコーヒーポットから立ち登る湯気でメガネを微妙に曇らせている。
(どこの特務機関の司令だよおい...ってかあんたが仕切るのか....まぁこの際構わないや)
「さて~マギサさん、あんた遂にやっちゃたね...まぁいつかやるだろうとは思っていたが♫」
「はい...お騒がせしました......」
「で、義明くん」
「はい、なんでしょうか真希さん」
「結婚おめでとう!」
「あ...どうも恐縮です......真希さんやっぱり契約を結ぶと-----------」
「君も一応事前にマギサから契約の説明は受けただろう...しかしプッ! アハハハハ!」
真希さんは席から立ち上がり、暫く腹を抱えながら爆笑すると話を再開する。
「しかし、義明くんも欲に目がくらみすぎでしょうWWW! 旧紙幣で500兆円だっけ!? 君が契約作成の主導権握っておいてソレを無効化される条文をねじ込まれるなんてあんたが! 初めてだよ-------------!」
彼女が大笑いしながら指摘する通り、このような事態を招いたのは俺の判断力が欲に暗んだからだろう。
--------------もう半日前
「あのさぁ...マギサさんちょっと」
「あら、何かしら」
「契約の項目をもう一つ追加していただきたいのですが.......」
彼女は俺の隣の席に着席し、俺と彼女が魔女と従者として契約する魔術に基づく、契約内容をペラペラの板切れ上の端末を使い作成してる最中である。内容は主に労働契約書のようなものであるが------------願い事の部分は正直チート過ぎる項目満載でこれ以上、思いつかなかったのだが...ふと契約が終われば元の世界に帰還が可能かと彼女に聞いたら----------『可能だと』返答されたので大急ぎでこの契約を追加させることにした。
(そう! 紙屑同然の万札の大規模な譲渡を! 当然ながら額が数百兆単位なので資金洗浄作業と安全な口座の提供もセットでだが...万が一向うの世界で政府やその他個人団体と揉めるようならマギサによる平行世界へのレスキュー作業も込でな! だって命を救われたとは言え平行世界に拉致られたんだからこのぐらいはいいよね-----------? ん)
「いいわよ...こちらは第六項目として追加しとくわね。【あなたからは】他に追加する項目はないかしら?」
「おお! いいのマジで! ? お願いします!」--------------------
---------------そして現在
(ああ...確かに第六項目を追加するときにマギサは【あなたからは】他に追加する項目がないか聞いてきたな...その時マギサに聞けば良かったじゃねーか! じゃあマギサは何か追加するのと...完全に彼女のほうが上手だった)
「-------------で義明くんはしっかりと項目の総数を確認しなかったんだよね?」
「ええ...恥ずかしながら欲に目がくらみまして」
(ああ! なんで...こんな単純なミスを犯してしまったのだろうか...)
「しかし、言っちゃなんだけど、相手がまだマギサで良かったね」
「へ?」
「...そうか君は、ほかの魔女、要は敵対勢力について具体的にまだ詳細を聞かされていないね」
「はい、大まかにしか聞いてませんが」
「今のところマギサの世界で、天下布武を目指す勢力はマギサを含め、各種族ごとに最低でも一勢力はいるね。私が話す情報は古いかも知れないけど一応聞いときな-----------」
真希さんの話によると天下布武を目指す勢力は大きく分けて5つ
亜魔族のクローシャ女王 中央大陸南エルフ王国のアルネーラ姫 人間最大の勢力 ドルア大陸西部ドルア帝国のドルーシャ皇女 おなじく人間側で中央海域の島国マウラール王国 アザーレ姫
そして魔女のマギサとのことだ...他にも小規模な勢力がいくつかいるようだが、どうせその内、全ての勢力と嫌でも会う事になるから、今はこの位覚えとけばいいとのことだ。
「------------こんなところかな。因みにマギサを含め、各勢力の代表はみんな、女でワガママな権力者だから...性格はかなり悪いみたいだよ。まぁその中でも比較的一番マシな性格してるのは、うちらの大将なんだけどね~大将聞いてますか~」
「......はい」
なんとなくだが、真希の言いたいことは分かる。
(仮にもマギサは社長さんだからフォローですね。分かります!)
しかしマギサは、泣きながら土下座してたくらいだから...
それだけ天下布武を目指すのも本気であり、俺への気持ちも
本気なんだろう。
もちろん、ストーカーされていたのは若干引くがね。
「それに午前中、マギサからは君が、元の世界に対しては特に執着がない様に聞いていたんだけど...違うのかな?しかし、500兆円だっけ向こうで革命でも起こす気?」
-------------もう戻ることのない午前中(セーブしとくんだった)
「------------さて、以上が魔女としての私と契約する事で生じるメリット、デメリットになります。
私としては是非とも、君と契約を結びたいのだけど...君がどうしても元の世界に、何かしらの未練があるのなら、君が最悪敵に拉致殺害された場合を想定し、自爆魔法を施した上でなら、自宅のアパートに送り返してもいいのだけど...今なら拉致した謝罪と残り少ない人生を謳歌する意味を込めて、1000万円くらいポンと渡して、私との関係はそれきりでもいいのよ...どうする?」
マギサは何やら俺に対して気を使ってくれているようだが...なんだよ残り少ない人生って酷くね?
(しかし、自爆魔法ってメ☆ンテかよ! 何もせずに1000万円...でも------!? そうだ!)
「あのさマギサ...向こうの世界のネットや電話回線にここから繋げる事って、できるかな?」
一応ダメ元で尋ねて見たのだが----------
「分かったわ。ちょっと待って、すぐ繋げるわね」
なんと、あっさりと繋げてくれた。
そして彼女がいいというと、自分のスマホを即起動させて見るとアンテナは3本立ち、やはり大量の新着メールが飛び込んできた。
(どれどれ~友人にSNSからの新着に-----------!? な!)
「マギサ! 俺の転移って事件になってるじゃん!」
「急な転移の仕方だっから正直、かなり焦ったわよ。アレじゃ隠蔽工作は不可能よ」
(ああ...そう言えばそんな事言っていたな--------どれどれメールっと)
俺は老舗SNSのニュース欄を見て驚いた。まさかとは思ったがやはり-----------
【名古屋市○✖駅前○✖✖カフェ✖✖✖店で自爆テロ? 客の男性が消滅! ? 負傷者多数】
......といった記事や、スポーツ新聞系のニュース記事は見出しからして意外なことに---------
【名古屋で男性客が白昼堂々ワープ!? 連続行方不明事件の真相はこれか!?】
.......ほぼ真実に近いことが書かれていたりした。
(あ...なになに、警察は店内や周囲の防犯カメラの映像を解析し、消えた男性の身元を捜査中-------)
「マギサ...」
「何かしら?」
「......凄い帰りづらいんですけど」
「でしょうね。それでも帰りたいなら----------?」
「ああ...兄貴から着信だ。電話出ていいかな?」
「ええ、いいわよ。外しましょうか?」
「いや、そのままでいいよ」
彼女には失礼かも知れないが、状況が状況なので兄貴からの電話にその場で応じさせて頂く。
「もしもし」
「おい○✖! やっと繋がったよ!あのな失業中に悪い知らせなんだけどな...婆ちゃん亡くなったわ」
「...マジで」
「心停止でな...第一発見者は母さんだよ。死後半日くらいたってたから、警察の取り調べやらで大変だったんだぞ。それに名古屋の方でなんか、自爆テロだかワープ事件だかがあって、連絡取れないからお前じゃないかって、みんな心配してたんだぞ。まぁ連絡取れたから大丈夫そうだな」
(おいおい、こっちも警察のお世話かよ...婆ちゃん成仏しろよ...グス)
俺が祖母の冥福を祈っていると兄貴から意外な言葉が出てきた。
「急な話だから地元にすぐには帰れないだろうから、写メ送っとくな。------プチ----ツーツー」
「へ?」
そう言って何やら忙しそうな兄貴は電話を切った。
(なんだ------どれどれ------------!?)
兄からの写メは...柩に入れられた安らかな死に顔の祖母を撮影し
GO! tohevunn!
とキラキラなデコレーションを添えられた逸品であったりするのだが-----------
「故人を写メで撮影して送るか! ふざけんな! 」
こうして俺は、怒りに任せてマギサと契約する決断をした。
ある意味、俺の背中を異世界へと押してくれたのは、兄からのこのメールと祖母の死だったのかもしれない。
これが独身終了の日に身内と交わした最後の連絡だった。
話別小説情報
掲載日
2014年 06月22日 22時48分
最終更新日
2014年 07月27日 23時52分
第四話 新生活の準備
若き魔女マギサの手によって、拉致同然に2010年代の日本から
平行世界である、2030年代末の日本に転移させられた無職でニート街道まっしぐらだった、ひとりの青年は昨日......
それまでの名を捨て去り、急遽こしらえた名前
神宮(じんぐう)義明(よしあき)を名乗り
マギサと共に、彼女の故郷の異世界で天下布武を目指し戦うことを誓い、天下布武達成時の対価としてこの平行世界では旧紙幣で紙屑だが...
義明のもといた世界では、使用可能な紙幣500兆円を資金洗浄したうえで送金してもらう、契約をはじめ様々な契約を若き魔女マギサと結んでいた。
義明は、自身の欲望に満ちた中二病全開の願望を成就させたり、元の世界では無職でニートだが、平行世界での再就職を果たすと同時に...何にやら彼の人生初となる結婚すらもマギサの策略というよりは、義明の不注意により、契約にねじ込まれてしまっていた。
--------------そんな彼は二日ぶりにシャワーを浴びている最中である。
(......生き返る...さっさとシャワー浴びて寝るか.......)
温めのシャワーを浴びながら彼は考える。
(...平行世界への転移や再就職だけでなく、結婚までさせられるとか...俺の人生どうなるんだ...)
彼はシャワーを止めると、浴室を出て白いタオルで体を拭き----------新品の白いシャツと黒いトランクスに着替え終えると
早足でワンドアの冷蔵庫の前にいきドアを開け、一本の銀色の缶を取り出し握りプルトップを開け---------
「-----------------っうめー!」
一気に冷えたビールを飲み終える。
「こっちでも酒は旨いね~」
(...じゃなきゃ困るんだが)
義明は冷蔵庫の中に入れられている残りのビールと、ナッツ類の入った袋を手に取り、ベッドへと直行する。
サイドテーブルにビールとつまみを置くと、ベッドに座り、サイドテーブルに置いてある細長い透明な板切れを左手に取る。
彼は真希に先程教えられた通りに、表面を右人差し指でトントン叩き----------
「これがこっちのリモコンか...どれどれ電源と-----」
彼は板切れに浮き出てきた電源のアイコンを押し、目の前の壁に設置された畳くらいの大きさの、同じく透明な板のテレビの電源を入れる。
画面には、今朝見たのと別のアナウンサーの若い女性が映る。
(...う~ん茶髪で、ショートカットの巨乳か...わるくないな)
などと考えながら、つまみの袋を開けると、ナッツを適当に口の中に放り込んでいく。
(しかし...この世界って平行世界なんだよな...まぁ実際------)
彼は、もう一本ビールのプルトップを開けると一口飲む。
(--------いきなり慣れない異世界の類いに転移されなかったのは、幸いだったのかもしれないな)
彼は自分の置かれた状況をマシなものだと考えるようにしているようだ。
時折、つまみを食べながらビールを飲み、ほろ酔い気分でニュースを見る。
『----本日正午に起きました都内○✖駅での集団銃乱射事件の犯人達は、現場に居合わせたPMC要員により、全員射殺されました。幸い死者は今のところ出ておりませんが、流れ弾等による負傷者は125名
にのぼり、なお犯人からは現在国内で蔓延している新型麻薬、通称【SAURA】の陽性反応が出ており、麻薬取締局は-------------------』
『-----続きまして、先の九州共和国での政権交代に伴う、大規模な騒乱で博多エリアでは本日も、大規模な暴動が起き大陸系住民と半島系住民、双方が銃撃戦を繰り広げました。
この騒動に乗じて同国でテロ組織認定されている、極右政治結社オレオレ団は、同国政府関連施設への爆破テロを実行し-----------』
(こちらの日本は、薬中が銃乱射事件とか物騒だな)
『オレオレ団総裁の自称 内山孝一代表は声明をネット上で公開し-------------【今後も腐れチ☆ンや国賊を日本から駆逐し、領土を奪還するまで断固戦う!】と宣言し、このテロの影響で、九州共和国側は、同国が国交のある台湾を介し、日本政府に対して対日戦の休戦を一方的に宣言、和平案を提示してきましたが、日本政府はこれを拒否、先程、特別軍事法人NEETに対してレベル3の防衛出動を外部委託し、現在NEETの主力部隊が-----------」
「明日は買い物らしいし、もう寝るか...」
彼はテレビの電源を落とすと照明も消し、ベッドで横になり眠りに就く。
-----その頃関東方面の某所-----
かつて在日米軍が駐留していた関東近郊の某基地は、この時代
日本国内最大の民間軍事会社
特別軍事法人NEETの基地として接収されていた。
同基地では今現在、空中給油用のプローブを備えた黒塗りの大型輸送ヘリの
タンデムローターが激しく回転を始め、滑走路脇から飛び立とうとしていた。
その数は全部で6機、既に上空には数機の同型機が目的地に向けて飛行を開始している。
離陸待機中のとある一機の機内では、黒い戦闘服姿のGIカットの髪型をした男が二人、シートに腰掛け、ヘッドセット経由で会話をしている。
「隊長、特別調査室戦闘要員150名、輸送ヘリに搭乗完了です」
「離陸しろ」
「了解! 全機離陸せよ」
大型輸送ヘリは、彼らの会話に合わせるかのように離陸を始め、目的地への飛行を開始する。
「隊長、既にPMC壁外調査隊に潜入してる調査員は、国境地帯に現地入りしてるとの事です」
「報告ご苦労、国境地帯の現在の状況は?」
「今現在は...共和国側も日本側も睨み合ってるだけで、特に動きはありません」
「そうか...変化があり次第、報告せよ」
「はっ!」
二人は会話を終えると、隊長と呼ばれた男の方は、腕を組み目を閉じ、暫しの休息に入るようだ。
報告を終えたもうひとりは、コクピットの方へと移動していく。
そのやり取りを初めから、終わりまで見ていた者が三名...向かいの壁際のシートに横並びで座っている。
三人とも昨日、義明が着ていたのと同系統と思われるパワードスーツを装着しているようだ。
義明のパワードスーツ通称【黒鉄】と同じ黒色ではあるが、デザイン的には三人が装着している
モノの方が全体が軽量化され、さながら日曜の朝8時頃にテレビに登場する
某ライダー戦士のような印象である。
三人は何やらインカムで会話をしているようだ...
「班長...最近、修羅の境界線行きの任務、多くないですか」
「そうだな。やはり例のunknownの件だろうな、中部州のスラム街でもunknownが、不幸なことにPMCグリードの演習エリアに出現して始末されたみたいだ」
「------!? 流石グリードですね」
「ちなみにグリードの連中は今現在、機動隊とゲリラを同時に相手にしてるようだ。連中は政府や犯罪組織からも恨みを買ってるからな。一個小隊に満たない規模なのに毎回派手によくやるよ...無人機の映像をバイザーに映すぞ------」
班長と呼ばれた男が、無人機の映像を横並びの二人にも送信する。
その映像は白黒だが、かなり鮮明な暗視画像だ。
ビルの壁際や、廃車の影には、シルエットから自動小銃を構えたと思しき人影が大勢映っているが、次々と何かに体を貫かれ倒れていく。
倒れる数が増えるたびに、人影の放つ銃撃は乱射状態に陥り、敵に居場所を教えるだけの愚行とかしていく。
骸へと早変わりしていくサイクルが、延々と繰り返されていくのが地面に転がっている多くの死体から伺える。
「......見渡す限り死体だらけじゃないですか」
「機動隊とゲリラ合わせて約300人が...劣勢とか、連中の前世はプ☆デターですかね」
「三時間前までは、機動隊とゲリラ合わせて約1000人規模が相手していたんだが...このざまだ」
「!?」
「!?」
「各自後で、データベースの映像を初めから見るといい......」
班長と呼ばれた男はそこで、会話をやめ腕を組み考える...
(一体、どんな武器を使えば1000人相手に余裕で戦えるんだ...)
-------------翌朝-----------------
「あー! うるせーな! なんの騒ぎだ!?」
俺が騒音でベッドから起き上がり、テレビのある壁に視線を向けると
時間が青いデジタル表示で浮き出ている。
時刻は05:45で本日は金曜日だ。
俺がベランダに近寄りカーテンを開けると朝日が差込み------------
(確かここは...山の上で兵舎の最上階の5階だったか......)
彼の...義明の視界にはタンデムローターを備えた、数機の黒い輸送ヘリが編隊を組み飛行してるのが
映る...機体には日の丸とNEETの文字が記されている。
(NEET...そう言えば昨日のニュースで-------ん?)
部屋のドアを叩く音がするので玄関に行き鍵を開けると----------------
「ぷぎゃあ!?ななな」
俺の顔面に何か、柔らかい何かが勢い良く飛び込んできた。手で払いのけるとそれは-------
「ツバメさん! 大丈夫?」
「てて...よっ! 新入り君改め! 桜 義明くんおはよう♫ あとマギサ...てか奥さんは急用で出かけたよ~夜には帰ってくるって♫ 旦那さん♫」
俺の相棒のツバメだった。
(旦那さんね...もう婚姻届も出しちまったんだよな-----------)
---------昨日-------深夜-------真希の自室
俺と巫女さん姿のマギサは、ソファーに横並びで座り、目の前には一台のA4サイズのタブレット型端末が置かれている。
画面には、なにかの書類のようなものが表示されているが-------------
一番真上に【婚姻届】と記されているようだ。
(ああ、今はネットで婚姻届が出せるのねセキュリティ大丈夫か)
「貴方の戸籍や経歴は、こちらで用意しておいたわ」
「...早いですね」
「元々、あなたをこちらに連れてくる前提でいくつか用意しておいたのよ。その内の一つを...ええと神宮義明に名称を変更して...婿養子で...完了よ。年齢は16歳にしといたわ」
「!? えっちょそれじゃ----------」
「こちらじゃ大戦後に少子化対策や、若年労働力確保の為に民法が改正されて、16歳から男女ともに親権の消滅を親に通告出来るの、結婚も問題ないわ。二十歳になるまでは、【準成人】として扱われ、その期間中は公営住宅等にも無料で入居できるし給付型奨学金も出るけど--------------」
-----------今日のツバメは、昨日の民族衣裳的な服装でない。
白いワンピース姿で、ツインテールに髪をまとめている。
その後ろには、手にNEETとプリントされた紙袋を持った白衣姿の真希がいる。
「あ~義明くん、コレ服と君用の携帯端末ね。端末の操作は2010年代のスマホと大差はないよ。ただ、処理速度に記憶容量や通信速度、バッテリーの容量はケタ違いだから♫」
そう言われ、紙袋を渡され、『着替えたらまた声をかけてくれ』と言われ......自分がパンツ一丁で玄関に出たのに気づき、直ぐにドアを閉め着替えに取り掛かる。
-----------数分後
「着替えたようだね...まぁ君らの世代だとNEETって言葉は無職って意味合いなんだろうが-------」
俺は背中に大きく、白色でNEETとプリントされた
黒い夏用のジャケットを羽織り、下は灰色のズボンを履いている。
靴は俺がもといた世界から履いていたスニーカーだ。
ポケットが多い事や、肘、膝付近の生地が厚めな点から、どことなくミリタリーな服だと感じる。
「---------こっちじゃ、大手の民間軍事会社の名称で通ってるから恥ずかしがらなくてもいいよ」
「世代ってことは...こちらでも元は無職とかの意味合いだったんですか?」
「そうだよ。マギサから聞いたでしょ? 元は同じ時間軸云々って話は...先に移動しようか」
「真希~早く移動しようぜ♫ 早く朝食♫」
俺達三人は駐車場に移動し、真希の自家用車と思しき......否この基地のNEETなる組織の車両
それも、荷台に機関銃を備え付けたテクニカル車両の迷彩柄の四駆に乗り、基地を後にする。
真希が運転するテクニカルな車両で山道を下っていると途中、訓練中の一団がジョギングをしていたり、斜面を完全武装で登らされていたり、溜池に向けて飛び込んだりしていたのだが---------
(あれ? 俺が昨日装着したパワードスーツに似てるな...色は灰色や迷彩柄か、しかもツノ付いてカッコイイな...モノアイのもあるな...まるでザ☆やガ☆ダムのコスプレしてるみたいだが...)
---------そのいずれの訓練にも竹刀を手にした、筋肉ムキムキマッチョの
グラサンかけたスキンヘッドの鬼教官が同行し、拡声器で色々と罵っていた。
『きさまら! そんな事で立派なNEETになれると思うな!』
『きさまら! 奥☆河のゲリラ多発地帯にエアボーンさせるぞ! 帰りは徒歩な!』
『そんなんじゃ最前線行ったら即死だ! ボケ !』
『きさまらの代わりはいくらでもいるんだよ !』
『きさまらぁああ営倉で夢作文書きたいのかぁあ !?』
『パワードスーツなんざキサマらに不要だ! 爆薬抱えて敵に突っ込め!そして氏ね!』
『日本を守ってるのは俺達NEETだ! その自覚を持て!』
『NEETは軍みたいに甘くないぞ!』
『お前らはくたばってもカウントされないんだよ! ってかしねーよ!』
『プリティキュンキュン見せねーぞ!』
『俺はキュンキュンピンクが好きだああああ!』
『誰だぁああ! ピンクを乳だけとか言う奴は! 後で弾薬庫の裏に来ぉおおい!』
義明は彼らの訓練風景を見て思う。
(.......うちの会社はどうなんだろう)
「お~NEETの訓練は過激だね♫」
「...うちの会社は軍より訓練が過酷らしいからね~」
「逃げる前に修羅の境界線で死体になるとかならないとか言うもんね~真希♫」
「........」
俺が少し不安な表情で訓練風景を眺めてると、ツバメが左肩にちょこんと乗っかり
笑顔で話しかけてくる。
「義明、うちの訓練はこんなにハードじゃないよ安心しな♫ それ以前にあんたは逆玉なんだから♫」
「へ?...あっ!そうか」
「え?義明くん...君はもしかして、今気付いたのかい? 自分が逆玉状態って事に」
「...ええ、あれだけ刺激的な事が色々あると霞んで気付きませんよ...」
「それもそうか...2010年代の常識じゃ平行世界とかは、まだSFの範疇だったから刺激的過ぎるか......」
「こっちじゃ違うんですか?」
真希は少し間を置き、会話を再開する。
「まだ一般社会には隠してるけど、軍事関係者を中心に平行世界の存在は当たり前さ」
真希の話からは、平行世界や異世界の存在を一般社会には隠してるのが分かる。
確かツバメも世間的には、小型の無人機扱いで押し通してるから
安全保障上隠さざるを得ないのだろうか。
などと考えてるうちに俺達は、目的地である、市内中心部にあるショッピングモールへと到達する。
俺がもといた世界にも同じ場所に同様の施設があったが、少し作りが微妙に違う感じだ。
(それもそうか...ここは未来で平行世界だもんな...それにしても------)
やたら目に付くのは、やはりというか、各要所に積まれた土嚢やコンクリートのバリケードに備え付けられた重機関銃やグレネードランチャーに、それらを構える黒ずくめの兵士達だ。
駐車場に並ぶ車両の大半も、何やらテクニカルな車両が多いように思う。
(確か看板見たらイ☆ンってあったから、こちらのイ☆ンは、某国の反日暴動で店舗壊されたのが余程悔しかったと見える。いや、この世界は第三次世界大戦後の世界だから別の事情か?)
ショピングモールの敷地内には、ごく普通に自動小銃や散弾銃を携えた
ミリタリーないでだちの若い男女の姿も目に付く。
平行世界と割り切ってしまえばそれまでだが、ここはホントに日本なのか...と疑いたくなる光景である。
今日はここで、俺の新生活に必要な物を買い揃え、市内の新居ことマギサの自宅へと運ぶとのことだ。
最も彼女は、複数の邸宅を所有してるようで、その内の一つに運び込むらしい。
地下の駐車場にテクニカルな車両を止めると、俺達は会話をしながらモール内へと足を進める。
「さて、先に朝食にしようか」
「そうですね。でも俺はどこに何があるか、さっぱりなんで」
「じゃあ、朝マ☆クにしようか」
「ストロベリーシェイクもたまにはいいかな♫」
(こちらにもあるのね...マ☆ク)
-----------数分後
俺達はフードエリアにある、ファストフードでお馴染みの大手外資系
ハンバーガーチェーン店に入店したのだが--------------
「イラッシャイマセ! ゴ注文ヲイイヤガレデス! 」
「......」
「私と彼にはエッグマフィンをセットでドリンクはホットのコーヒー」
「私は! ストロベリーシェイクとアップルパイ!」
「......」
「マム! オモチカエリデショウカ?」
「店内で」
「オーダーハイリマシター! ----------ワキ二ズレテマチヤガレデス!」
ここでは、全ての店員を筋肉ムキムキマッチョで、スキンヘッドの
腕に髑髏マークのタトゥーを入れた外人さんで固めているようだ。
皆さん、目元にはサングラスタイプのシューティンググラスを装着し、防弾チョッキを身に付け、
脇や腰には大型自動拳銃やリボルバーをホルスターに入れ吊り下げている。
レジの脇には自動小銃や、コンバットショットガンが立てかけられており
まず、何処ぞの警備の手薄な牛丼屋と違い、強盗は来ないものと思われる。
俺達がレジの脇にずれた直後、若い十代のカップルと思われるごく普通の身なりの男女が入店してくる。
「イラッシャイマセ! ゴチュウモンヲイイヤガレデス!」
「ええと...ホットドッグをセットで、ドリンクはコーラでテイクアウトね。俺と一緒でいい?」
女の方は彼氏の腕を組み笑顔で頷く。
「さっきの二つで」
「カシコマリマシタ! オーダーハイリマシタ----------」
「ってかまーくん~! 早くフィールドワークのレポート提出しないと単位貰えないよぉ~」
「あ~そうだな来週までに提出しないと留年確定だからな俺ら~」
「もう~そんなんじゃ♡他に♡オ♡ト♡コ作っちゃうぞ♡」
(なんだ、ただの大学生リア充のようだ-------ん?)
何やらカップルの女の子が財布からランランルーな教祖様の写真がプリントされた
ポイントカードのようなものを取り出し、店員に渡し------------
「オキャク様! ポイントハ、ナニニ交換シマスカ?」
(あ~粗品の交換か...平和だな...)
店員のマッチョは粗品用のメニュー表一覧をカップルに手渡し------------
「ホローポイント弾3箱と、サプレッサーひとつ、どちらも45口径用でお願いしま~す♡」
「イエス! メム! ポイント交換ハイリマシター!」
(!?)
バックヤードから別の店員が、粗品と思われるホローポイント弾の箱3箱と
このカップルの注文したテイクアウトの品と合わせて、ランランルーな教祖様のシルエットが白く刻印された黒光りするサプレッサーを持ってきて、カップルに手渡し-------
「やったねまーくん♡コレでフィールドワークで、ゲリラを静かに殺れるね♡」
男は女の両肩をしっかり両手で握り彼女を見つめ---------
「.......愛してるぜ麻美子、お前と一緒なら、どんな戦場も天国に早がわりさ♡」
「キャー! まーくん♡」
カップルは互いにいちゃつきながら店を後にする。
彼らの腰には、やはり...大型自動拳銃が、吊り下げられている。それもペアルック仕様なのだろうか...
実用性は疑わしいが、グリップはキ☆ィちゃん仕様のキラキラな仕様に改造されていた。
(.........学生カップルが単位取得のためにゲリラ狩りってどんな大学だよ!?)
「オキャク様!オマタセシマシタ!」
「お~い義明くん席に行くよ」
「ストロベリーシェイク~♫」
「はいっ! 」
俺は先ほどのカップルのやり取りにカルチャーショックを受けながらも、プレートに乗せられた、朝食を手にして日当たりのいい、緑の見える窓際の席に移動し、朝食を食べる事にする。
----------二十分もしないうちに完食し終えると、俺達は当初の予定通り
買い物をするためにショッピングエリアへと移動する。
「まずは、義明くんの服とか、そのへんを揃えて行こうか」
「おー♫」
その後-----------------
小一時間ほどで俺の買い物を一通り終えると、昼過ぎくらいまでは...何故か同行者の真希や
ツバメの買い物の荷物持ちを手伝わされるハメになってしまった。
流石にランジェリーショップとかは、同行しづらいので同伴を断ろうとしたが、
二人特にツバメによって、吊り下げられる様な格好で店内へと強引に引きずられ、どれが一番興奮するかなどを、根掘り葉掘り女性店員も交えて聞かれ、公開処刑状態になったりした。
(てかツバメさん...あんた俺を吊り下げるくらいの腕力あるとか凄すぎだよタ☆コプターかよ)
さて、やはりというべきか、相棒のツバメさんの服や下着は、フィギュア専門店
それも、おっきい如何にもな、お兄ちゃん達のわんさかいる店で購入する事になった。
「おお! ツバメ様だ!」
「ハァ! ハァ! いつになったら同型機発売するんですか!?」
「ツバメさん踏んでください!」
「罵ってください!」
.......などと言われ続けていたが、終始ツバメは笑顔で手を振りながら、何やら注文していた特注の品と思しきものを店員から受け取ると速やかに退散
そして今--------------
俺達は、とあるショップの入口に来ている。
因みに荷物はサービスカウンターでマギサの家に送らせる手続きを済ませてきた。
話別小説情報
掲載日
2014年 06月22日 22時49分
最終更新日
2014年 07月06日 10時40分
第五話 買い物と共同作業そして
「義明くん」
「...なんでしょうか真希さん」
「ここが、どんなお店かわかるかな?」
「...並んでる客層からしたら---」
「義明~ここのタイムセールはかなりお得だぞ~♫」
俺達は今、モール内のとある店の前に出来た列に並んでいる。
列に並んでいる客層は、明らかに武装した方々だ。
『お並びのお客様、もうまもなくタイムセールでございます。今しばらく商品の陳列まで---』
列の整理をしている店員の、メガネをかけた10代半ばと思われる女の子が、拡声器で客に呼びかけている。
気のせいだろうか...店員の女の子の、その格好はコ☆ンドー並みの火力と、未来からダメ少年を助けに来たチートな某猫型ロボットの四次元なポケットな能力を併せ持った某魔法少女のような格好である。
因みに片手には、人間工学に基づきデザインされたPDW(パーソナルディフェンスウェポン) FNP90が握られている。
(コスプレしてんのか...まぁ店の看板見たら---ホ☆ンドーだしな)
『本日は3階の銃火器コーナーにおいて、ロシア製銃器の特売セールを行っており---』
列からは、歓喜の雄叫びが次々と上がる。
『---1階弾薬コーナーの各種40ミリグレネード弾は、おひとり様、3パックまでとなっております』
その雄叫びは、ヒャッハー! などの世紀末な叫びも混ざり、更に激しく上がり出す。
それにしても、おひとり様3パックまでとか、まるでグレネード弾が卵みたいな扱いである。
俺達が並ぶ、列の前後のミリタリーな客達は、店員の案内を耳にすると何やら次々と---
「野郎どもぉおお! 週末はゲリラを狩りにスラム街に遠征だぁあああ!」
「おおおお! クソガキどもまだ死ぬんじゃねーぞ!俺が狩ってやるからな!」
「ヒャッハー! AKの買い溜めじゃぁあああ!」
「やっぱりグレネードないとキツいわ」
「全員! 40ミリダート弾の確保を最優先せよ!」
どうやら列に並んでる皆様にとっては、この店の品は生活必需品のようである。
『お客様にお伝えします。只今、商品の陳列が終わりました。お手持ちの銃火器の安全装置は必ずオンにしてください---』
その指示は、客層からしたら、適切だと俺も思ったが次の瞬間---
『---なお、特売商品の取り合い等で乱闘が起きた場合、ゴム弾で制圧射撃を行いますが、予めご了承ください。店内での発砲や、戦闘行為は非常時以外はご遠慮下さい』
...ああ、もうなんか帰りたいよ。
「さて、義明くん」
「はい真希さん---?」
真希は何故か、笑顔で手を振りながら列から離れる。
何故だろう。嫌な予感しかしないのだが---!?
次の瞬間、俺の首筋付近をツバメがしっかりと掴む。
先程、ランジェリーショップに強制的に連れて行かれた時と同じ体制だ。
もしかして---
「義明~♫」
「うん、ちゃんと着陸してねツバメさん」
「任せとけ! お前に何かあったらマギサに殺されるからな~♫」
じゃあこんな事やめましょうよと、言おうと思ったが---
『お客様! 長らくお待たせしました! 今週最後のタイムセール開始です!』
某魔法少女っぽい店員さんが、拡声器で叫ぶと同時に店の自動ドアが開き---
客が雄叫びをあげながら続々と店内になだれ込む。
そして俺は---
「!?なんだアイツ飛んでやがるぞ」
「ふざけんな!」
「撃ち落とすぞこらぁああ!」
『飛行してるお客様! 次からは飛行せずにご入店ください! 撃ち落としますよ!』
.....などと厳しい言葉を投げかけられ、飛行しながら入店した。
皆さん、悪いのは俺の首筋にいる、ちっさい妖精さんですから。
そんな飛行入店をする義明とツバメを見てる客の中には---
「おい、アレ魔弾のところのツバメだろ」
「あっホントだ。【また】あそこの社長が新人を見つけたな」
「今年で【何人目】だ?」
「もう沢山でいいんじゃね?あそこの新人よく---」
---などと会話をしながら入店していた。
「ぉおおおお! ちょっとツバメぇええええ!」
俺は絶叫しながら、吹き抜けになっている入口付近から3階の銃火器コーナーに急上昇する。
昔、絶叫マシンに乗った時の感覚以上に、恐怖とともに加速度を体に感じながらも、無事着地に成功する。
「どうだ♫ 義明あたしの飛行は楽しかっただろう~♫」
「...死ぬかと思ったよ」
正直、漏らしそうになりました。
「---ん?」
着陸した俺達に人影が近づいてくる。
「ツバメちゃん久しぶり」
「猫ちゃん弟~! 久しぶり~♫」
ツバメは真希の時と同様に近づいてきた人影の周りを飛びまくる。
開店前から店内にいるということは、店員だろう。
それも、メガネをかけたちょっと男にしとくのが勿体無い様な、そんな若い男だ。
「初めましてツバメちゃんとこの新人さん、自分は陽田 涼といいます」
「初めまして、自分は○✖...じゃなく桜 義明です」
「義明...ああマギサさんと結婚された方ですね昨日、ツバメちゃんからメールきましたよ」
涼は笑顔で---
「結婚おめでとうございます」
祝いの言葉を述べてくれる。
「さて、二人共こっちに来てくれるかな」
俺とツバメは涼に手招きされ、レジの裏にあるスタッフルームへと入っていく。
涼は更に奥にある扉の前でカードリーダーにカードを通して更に、扉横のタッチパネルに暗証番号を入力して扉のロックを解除しているようである。
扉が開き涼が手招きをしているので俺とツバメは部屋の中へと入っていく。
部屋の中は一面、綺麗にラックに立てかけられた自動小銃や散弾銃、壁には様々な拳銃や
アンチマテリアルライフル(対物狙撃銃)などがかけられているようだ。
中には俺の見たことのない銃火器もある。
この平行世界のオリジナルの銃火器なのかもしれない。
どうやらここは、武器庫のようだ。
「おお♫ いい品揃えしてる~♫」
「...凄いな」
「お代はマギサさんから頂いているから、好きな銃火器を持っていくといいよ」
「!? マジで」
---数十分後
「...二人共何買い込んでるの」
「だってタダなんだもん真希♫」
「真希さん、ツバメが選んだのが大半ですよ。俺なんて自分で選べたの拳銃だけですよ」
「義明くん~先輩のあたしのセレクトを信じなさい♫」
俺とツバメは銃火器や弾薬、各種アクセサリーをカートに詰め込めるだけ詰め込めると
エレベーターに乗り込み、店の外で待っている真希のところに到達したところだ。
「さて、市内のマギサの邸宅に行こうか」
「おう♫」
「ああ...!?」
--------数時間後
市内のとある高層マンション上層階のとあるフロア
そのフロアの部屋は全て、民間軍事会社【魔女の弾丸便】の名義である。
その一室では今現在、ひとりのほろ酔い気味で、少し放心気味の青年がリビングでソファーに腰掛けている。
彼の片手には白ワインのボトルが一本と、もう片手には数時間前に購入したばかりの
拳銃---FN5,7が握り締められている。
「...」
彼は少し、甘口の白ワインをラッパ飲みする。
「...ホントに俺は魔女と契約したんだな」
彼は上半身裸である。
デルタゾーン、所謂対人射撃時に真っ先に狙われる部位には無数の傷跡それも---
大小様々な銃創の跡が刻まれている。
時間が経つたびに、その銃創の後は消えていき、彼が白ワインを飲み干し、ボトルを空にする頃には
ほぼ全ての傷跡は消え失せていた。
「お待たせ義明...」
「ああ...マギサ」
義明の佇むリビングに白いタオルで身を包んだ、シャワーを浴びたばかりのマギサが入ってくる。
彼女は義明の隣に座り---
「...大丈夫よ。あなたは死なせないから、それに私達は----」
マギサは義明の膝に跨り抱きつく。
義明は空のボトルを床に落とし、もう片手のFN5,7の銃口をソファーの端に向けながらソファーに置くと空いた両腕で---
マギサを引き寄せる様に抱きしめ---
「---魔女と契約者にして夫婦だったな。よろしくなマギサ」
「ええ、こちらこそ-----!?んんん」
この後、朝まで二人は何かを、めちゃくちゃして、初めての夫婦としての共同作業を終え-----
----数年後、義明は日本で唯一、陸続きの国境が出来た九州北部国境地帯別名、修羅の境界線へと配属されることになる。
話別小説情報
掲載日
2014年 06月22日 22時49分
最終更新日
-- 更新していません --
------------------------- 第3部分開始 -------------------------
【サブタイトル】
第二章 一話から三話
【前書き】
文字数(空白・改行含む):8784字
文字数(空白・改行含まない):8379字
行数:353
400字詰め原稿用紙:約21枚
【本文】
第二章 国境線に集いし者達
第一話 抑止力の死んだ世界での謎の決戦
【戦わずに勝利する】【戦わなくてもいい程の強さを得る】
古今東西の為政者にとって【ソレ】は求めてやまない、まさに理想であったことだろう。
二度目の世界大戦の後、その理想に近い状態を人類の一部は束の間だが、体験することになる。
だが、その状態を作り出したのは平和主義者による平和活動などではなかった。
皮肉にもその状態を作り出したのは、二度目の世界大戦で二回しか使われなかった兵器
【核兵器】の存在によってもたらされたのだから
初めは人類を二分し睨み合い、絶妙なバランスを保ち大国間の直接の武力衝突を防ぐ【冷戦】と呼ばれる期間を数十年もたらした.....だが人類を二分していた片方が内部崩壊を起こしてからは発展途上国等で小規模な紛争の発生やテロリズムが世界で散発したが.....大国間の直接の武力衝突に至るほどバランスが揺れ動くことはなかった。
残された片方の大国が【世界の警察官】として睨みを効かせ、自国の国益を守る範囲内でだが、積極的に武力介入を続けていたからだ。
.....最もそんな状態もいつまでも続くわけがない。
世界の警察官を自認する大国が力を徐々にすり減らしてる隙に世界の一角では......
富国強兵を進める野心的な一党独裁国家の躍進や
それに伴う同国による異常な隣国への敵愾心を煽る自国民への洗脳じみた教育の実施
隣国領土や領海への度重なる侵犯や恫喝、発展途上国のゲリラ等への武装援助
更に、その独裁国家の衛星国家であるマフィア的な王朝国家による
麻薬密輸、隣国や世界の基軸通貨の偽紙幣の製造、隣国民の拉致や核兵器開発の推進に他国への拡散、弾道ミサイルの開発に密輸、発射
による隣国への恫喝などである。
極めつけは、それらの平和への暴挙という名の業火に油どころか積極的にガソリンを注ぐかのごとく平和第一の事勿れ主義で備えを怠った平和ボケ国家の怠慢であろうか。
不吉な兆候は確実にだが増加していたのだ。
冷戦と呼ばれた時代の終結から約30数年後......
遂に国家間のバランスは激しく揺れ動き、核兵器を担保にした抑止力という名の均衡は破綻し冷戦時代に多くの人が恐れていた核の業火が人類へ向けられ数億人の人命を焼き尽くす事態へと至る。
後の世に【第三次世界大戦】と呼ばれる戦争の始まりであった。
だが、その当時存在した国家間の軍事衝突は極めて短期間で終決し一応、第三次世界大戦事態はその時点で終決したと、その当時は多くの人が捉えていた。だが、大戦後の世界は相変わらず、いや大戦前以上にテロリズムや小規模紛争が同時多発、無政府地帯は増加し、遂には世界の警察官を自認していたかつての大国は孤立主義を宣言した。
世界のバランスから大国の抑止力は消え失せ、10年近い年月が流れ北半球が夏
の季節....
かつて日本国の一部であった九州北部と、日本国との国境地帯で国境警備に従事する日本側のとあるPMC【民間軍事会社】に勤務する者達はその年
異様な敵との交戦を開始する.....
体が重い、、、微かに目覚めだした意識は、己の宿る肉体の状態をそう認識する。
焦げ臭い目覚めた意識は己の宿る肉体の嗅覚が起動してるのを認識する。
五月蝿い(うるさい)何の音だ?目覚めた意識は、己の聴覚の起動を認識し己の思考の開始を認識する。
おぼろげながら思考を開始した意識は、己の宿る肉体の眼蓋を静かに開く。
周りは夜か、信号の青だろうか?人型をした緑のシルエットがチカチカ点滅してやがる、いや違う。
眼(まなこ)を起動させた意識は、その点滅が信号の青ではないことを判断しそれの意味を理解する。
己の宿る肉体が人型であることを思い出し体を動かすことに支障のないことを認識し仰向けになっている己の体を動かす。
頭部が動くと先程からチカチカ点滅してる人型のシルエットも合わせて一緒に動き出す。
視界には先程から、点滅してる人型のシルエットと、大破や炎上してる複数の軽トラックが眼に映し出され水田の水面を炎が照らす。
耳に蛙の合唱がうるさく鳴り響き、季節が夏であったことが思考に走り、この場が水田近くの休耕田であると認識する。
即座にその思考を打ち消すかの如く、ものすごい焦げ臭い匂いと、微かな泥臭い匂いが、湿った風に運ばれ、人と思しき存在の鼻腔を刺激する。
軽トラの荷台に何やら、黒い3本の脚が付いた機械と思しき物が取り付けられているのを視認する。
それが三脚の付いた重機関銃であり、軽トラがテクニカル車両であると認識し理解する。
思考と肉体を動かし出した人と思しき存在は己の声帯を振るわせ一言いい放つ。
「生体表示確認、索敵開始」
立ち上がった人と思しき存在は、己の発した声が自身の頭部に骨伝導で微かに伝わったのを感じそれが男の声であり、己が男である事を思い出し認識する。彼が一言発するとチカチカ点滅してる人型のシルエットは、彼の視界から消え代わりに複数の赤い三角の矢印と、緑の四角のマークが一つと青い丸のマークが三つ現れる。
彼は微かな不安と微かな安堵が己の中に
発生するのを認識する。
彼は腰を少し落とし、足腰に力を溜めるような姿勢に移る。
頭は口元が空いたフルフェイスヘルメットのような物をかぶり体はライダースーツのような物で身を包み、足はコンバットブーツのようなモノを履いている。
全身は漆黒で彩られている。
フルフェイスメット状の物から見える口元は、綺麗に口ひげを剃っており一見すると女性のようにも見えるだろう。
彼は次にするべき行動を開始する。
「ルート設定完了、戦闘行動開始!人工筋肉稼動開始!うぉおおおおおお!」
彼がそう叫ぶと彼を覆う黒いライダースーツ状のそれは、微かに彼のシルエットを盛り上がらせ人工筋肉としての機能を起動させる。
彼は燃え盛るテクニカル軽トラに向けて素早く走り出す。
軽トラまでの距離は約百二十m、人工筋肉を稼働させた彼の走りは五秒弱で百m付近に到達する。
彼は走り出した勢いを殺さずにむしろ加速し、休耕田と水田境のアスファルトの農道に到達すると、思い切り足を踏み込み、アスファルトの舗装を踏み砕き夏の夜空に蛙のごとく舞い上がる。
彼は狙い通り、約二十m先の荷台が比較的無事な軽トラに舞い降り荷台を思い切り凹まし周囲に金属質の轟音を鳴り響かせる。
水田の水面に大きな波紋を広げ、彼の着地点付近の水面の下にいた蛙は驚き飛び跳ね小さな波紋を幾重にも生み出していく。
彼の着地で軽トラは水田に若干沈み込む、荷台には滑り止めが貼られてるので足を滑らす事もないだろうと彼は経験から判断する。
速やかに周囲を見渡し射界の確保は大丈夫と判断した彼は、即座に荷台に取り付けられてる重機関銃に近寄りコッキングレバーを引き、ガングリップを力強く握る。彼は視界に表示されてる赤い三角の矢印の方向を確認しその方向に銃口を向けながら、己の声帯を最大限振り絞り叫びながら射撃を開始する。
「うぉおおおおおお!返しやがれぇえええ!」
派手にマズルフラッシュを放つフラッシュハイダー、銃身内でジャイロ効果を与えられ銃口から大量に高速で撃ち出される銃弾、宙に大量に舞い落下し火薬の燃焼熱を水田で冷ます大量の金色の薬莢、蛙の合唱を打ち消さんがごとく鳴り響く銃声
騒がしい夏の夜は更けていく
数時間前、九州某所のPMC[民間軍事会社]駐屯地内ブリーフィングルーム、そこで居眠りをしながら寝ぼけてる一人の青年がいる。
(、、、むにゃむにゃ、、、故郷を離れてどのくらい経つだろう。
高校を中退し家に居ずらくなり、18歳になると即、家を飛び出し派遣社員として働き出したが、、、むにゃ、一年もせず世界的な経済不振が起き、即失業したむにゃ、、、この時、見栄を張らず実家に帰れば今よりは平凡だが幸せな日々を過ごせたむにゃだろうか?むにゃもしかしたら、家に引きこもり自宅警備員として励んでいたかもしれない。否!兄貴達にボコられ家を追い出され、ホームレス化するか、犯罪に走り檻の中か野垂れ死に墓の中だったかも!
「ヒッイ!」
「おいっ!いきなりキモイ声出すんじゃねーよ!ちゃんと作業の段取り聞いてんのか?」
「はっ!失礼しました!班長!」
(またやってしまったな居眠り、最近雑念が多過ぎるな~まぁ仕事が始まれば何故か雑念も消え作業に集中できるから問題ないが、などと思考をしてると班長が俺を指差し一声、あっ嫌な予感)
「よしっ!OO!お前はブリーフィングが終わり次第!前衛班の車両に乗車しろ!あちらさんが先週一人欠員出したのは覚えてるよな?」
(うわっマジ最悪じゃねーかよ(泣)と思いながら自然と俺は口を開き
言葉を発っしようとするが、班長が俺を指差し、話し出す方が早いので
黙ることにする まっ嫌な流れしか感じませんがね。)
「OOは!明日の朝まで前衛班の下で作業を行い!その後!有給休暇を
10日分まとめて使うように!お前は入社して二年近くになるが一度も有給休暇使ってないだろう?」
(班長の一言で俺の不安は消え去り、まだ見ぬ有給消化の日々への期待に心を高ぶらせ力がみなぎるのを感じながら、残り僅かなブリーフィングの内容を聞き続けるのだった。)
話別小説情報
掲載日
2013年 09月15日 22時18分
最終更新日
2014年 03月09日 03時44分
第二話 可愛い後輩と鳴り響く戦闘警報
ブリーフィングが終わり俺は席を立つ。近くの同僚達や先輩達に軽くいじられたりして軽く挨拶をし終えると俺は左手首に装着した小型端末のモニターの時計を確認して部屋を出る。
(さて作業道具を受け取りに行くか、今日は前衛班の指揮下に入り作業
否、明確には危険作業なんだがもう慣れちっまたんだな、、、親にはまだ
今の仕事に転職したことを話せずにいるからな。)
「OO、、、!」
(おやっ?後ろから声を感じ、振り返ろうとした瞬間
俺は可愛い大音量を浴びた。)
「義明(よしあき)先輩!待ってください!」
(義明、俺の名前を馬鹿でかい声で叫ぶこいつは、、、)
「千代子(ちよこ)ちゃん、声がでかすぎるよ」
(千代子ちゃん、俺の属する班で唯一の新入で、俺の後輩の女の子だ。
女の子といっても胸の辺りとか大変目のやり場に困る体つきをしている立派な女性だ。童顔でショートカットだからだろうか先輩方からはよく子供扱いされてほっぺを膨らませてる可愛い子だしかし何故俺を呼び止めるのか?)
「義明先輩、ブリーフィングちゃんと聞いてましたか?
私も前衛班の応援に行くんですよ」
(んなこたぁ知ってますよ。君より長いこと、ここで働いてんですから。
まぁ、こんな感じでよく俺に絡んできます(笑)ちなみに俺達の身長はというと、自分は約175センチ、千代子ちゃんは約160センチくらいか?もう少しで作業着の胸元が、、、あっもう装備してるのか防弾ベストをちょっと残念。)
「千代子ちゃん、もう防弾ベスト着てるけど気合入ってるね。
今日、初陣だもんね」
「そうです!初陣なのデ~スッ!」
(あっ、、、俺がこの間貸した昔の歌って戦う美少女アニメキャラの口癖と仕草まで真似てやがる!両腰に手を当てて胸を張る仕草クゥー!たまらん!
などと考えてると、俺の煩悩打ち消さんが如く警報が大音量で鳴り響き非常灯が真っ赤に点灯しアナウンスが入る)
「戦闘警報!戦闘警報!戦闘警報!重武装した武装勢力が分離壁を破壊!停戦ラインを突破!現在!国境警備中の国防軍並びに九州自衛軍が武装勢力と交戦中!敵兵力は多数のAPC(装甲車両)等を引き連れてるとのこと!待機中の各PMC戦闘要員も速やかに武装し!戦闘車両に乗車せよ!」
俺は思わず声を漏らす。
「おいおい!マジかよ!クソッ!おいっ!千代子ちゃん!
速攻で装備受け取って乗車するぞ!」
「はいっ!先輩!」
(元気に返事を返す俺の可愛い後輩この子マジでマジ可愛い!)
俺たちは装備受けとり室まで走り出す。部屋までは、ブリーフィングルームから直線距離で百メートル弱くらいか、俺たちの反対側を最新型の大容量装弾式の自動小銃を携えた黒い戦闘服に身を包んだ完全武装の若い顔の奴らが走り去っていく。口々にかなり物騒な言葉を発している、侵略者どもめ!OO原理主義者どもめ!OO優越主義者どもめ!皆殺しにしてやる!
駆逐してやる!などである。
(駆逐してやるか、昔そんなセリフを流行らせたアニメがあったな、
まだ千代子ちゃんには貸してなかったな。そういや、あのアニメにどっぷりハマってる連中のPMCは毎回、ヘリで移動してるからうちの社長が[贅沢は敵よ!]とか言って頬を可愛く膨らませていたな)
「、、、先輩、、、」
俺のすぐ後ろから千代子ちゃんが俺に力なく話しかけてきた
俺もすぐさま言葉を返す。
「あのくらい殺気を帯びてないと返り討ちに合うからね。でも」
(俺は少し走る速度を落とし、可愛い後輩の背中を軽くビシッと叩き
言葉を発する)
「元気がないと話にならん!君は訓練所での成績が優秀だと班長から聞いてる!己の感情を自ら奮い立たせ、意志を強く持ち、感情を制し行動しないと現場じゃ生き残れないぞ」
(おやっ?なんか言い過ぎたか?なんかポカンと狐にでもつままれたような
表情をしてるかなと、思ったら目に力が漲る感じがし、みるみる表情が明るくなる俺の可愛い後輩、そして元気に口を開く)
「そうですね先輩!某特殊部隊の教えでも感情を制する者が勝利を手にする!って言いますもんっ!」
(おっ結構効いてるみたいだ。しかし某特殊部隊ってどこのだよ?しかしながらやっぱ千代子ちゃん可愛い可愛い可愛い大事なことなんで三回心の中でつぶやいたぞ!)
時間にしてどのくらいだろうか、ブリーフィングルームから装備受けとり室の前に、俺たちは着いた。俺たちの反対側を先ほどすれ違った完全武装の一団と同じ装備の奴らが思いっきり殺気だちながら駆けていく。左手首に装着してる小型端末のモニターの時計を俺は見る。
(二分弱くらいか、やはり戦闘警報がなると長く感じるのか)
俺と本日過激な初陣を迎えることになった、俺の可愛い後輩は装備受け取り室に共に足を踏み入れた。
話別小説情報
掲載日
2013年 08月18日 04時12分
最終更新日
2013年 12月08日 03時02分
第三話 腐れ縁と腐ってた後輩
俺と後輩の千代子が装備一式を受け取り装着し終えると、俺はすぐさまカウンターに戻り、その動作に疑問を感じた千代子が口を開く。
「先輩!忘れ物ですか?」
「ちょっと待って」
(俺は一言返すとカウンターに設置された20型モニター位のタッチパネルの操作を開始する。簡単な操作だ、自分の認識番号を入力しタッチパネル左横の静脈認証の生体センサーに左手の甲を当てる。直後に女性の声でアナウンスが起動する)
「しばらくお待ちください」
(アナウンスが流れると同時に、俺から見てカウンターの向こう側にあるコンベアが右側に緩やかに流れ出す、体感時間にして三十秒ほどすると四角く真っ黒なトレーが流れてきた、トレーの上にはショルダータイプでオリーブ柄のミリタリーバックが置かれてる。俺の私物だ中身は民生品のレトルト食品や私物の拳銃が入っている。トレーの大きさはノートPC位の大きさだ。
先程俺が入力してたモニターの右横にトレーが流れてくると、コンベアが停止した直後にまたアナウンスが起動する)
「装備受け取り後は、トレーをカウンター右端のボックスにお入れください」
(俺から向い見て、トレーの真後ろに設置されたトレーの長さと同じ位の押し出しバーが起動し、トレーをカウンター側に押し出す。俺はバックの取っ手を左手で素早く握ると右手でトレーを右側に勢いよく滑らせ見事にボックスにブチ込みガシャンと乾いた音を部屋に鳴り響かす)
「さぁ!行きますよ!千代子さんっ!」
俺はフリーO様っぽく話しかけながら部屋に入ってきたのとは、真逆の方向にある出口に向けて歩き出すと、すかさず俺の可愛い後輩が口を開く。
「フOーザ様ですね!ってか急がないとやばいです」
そう言うと出口付近で待機してた後輩はクルッと周り出口を出て走り出す。誰が見ても後輩は頭の上からつま先まで完全に黒鉄に身を包んだ立派なPMCの社員に見えるだ。しかし彼女は今回が初陣だ。しかも運悪く戦闘警報がなる日にだ。ちなみに戦闘警報が発令した日に初陣を迎えた新人の生存確率は配属部隊にもよるが良くて六割だそうだ。
「戦闘行動開始、センサー起動」
俺がつぶやくと対弾フェイスガードとモニターを兼ねたバイザーが俺の装着してる漆黒の色をした、フルフェイス型の戦闘メットから顔面にスっと降り、即座にAR表示と音声で情報が飛び込んでくる。意外な情報に俺は驚き微かに声を漏らす。
「前衛班の車両って班長の野郎隠してたな」
俺は少し笑うと走り出す。黒鉄に身を包んだ後輩を追いかけ駐車場の歩行帯
を走り抜け待機してる前衛班の車両にたどり着く。後部ハッチが降りており、俺と後輩は急いで乗り込むそして直後に懐かしい声を浴びる。
「アッー!ようこそ!前衛班こと妖精猫分隊へ!久しぶりだな。ヨ☆シー!驚いたか俺がいて?」
「おっ!マ☆オ!お前なんで九州にいんだよ!?愛知、いや今は中部州だったな。お前本社勤務のはずだろ?(笑)」
俺はつい驚きの声をあげ、冗談混じりに旧友で同僚の通称マ☆オに挨拶を返す。
「あっあの!」
後輩がハッチ付近で話してる俺たちに話しかけてくる。彼女は入って
左側の壁際のシートに腰掛けてる。銃床を床に付け銃身付近のハンドガードを握り締め座ってるのだが、後輩はバイザーを降ろしてないので顔が何やら真っ赤に紅潮して緊張してるみたいだ。
俺のモニターのAR表示からも彼女の体温変化が見え見えである。
「どうした?千代子ちゃん?こいつは、、、」
俺がマ☆オのことをどのように皮肉って紹介しようか考えて話しかけようとした瞬間に千代子ちゃんが可愛い大声で叫ぶ。
「おっ、お二人は!そういう仲なんですかキャー!」
(しかし何やら緊張しまくりのようだが、なんかもじもじしてるけど、やっぱ可愛いなこの子しかしそういう仲ってどう言う意味だ?)
「キャー初陣初日からキタ━!」
などと俺の可愛い後輩は頬を染め、叫びだし身悶えしている。
俺は思い返してみる。お二人はそういう関係なんですね。
後輩はそう言ったのだ。
俺はその前にマ☆オと互いにあだ名で呼び合い挨拶したはずだ。
因みにこのあだ名は、俺がまだ中部州の[魔女の弾丸便]本社勤務中に暇を見つけては、二人でよく前世紀末に世界的にヒットしたレトロなアクション
ゲームに興じていたのを我が社の社長に皮肉られ付けられたあだ名だ。
そこでまでたどり着いた俺の思考は驚愕の結論に気づき素早く返事を返す。
「違う!千代子ちゃん誤解だ!俺たちのあだ名がマ☆オとヨ☆シーでも乗ったり乗られたりする間柄では、断じてない!」
「さみしいことゆうなよヨ☆シー」
俺は間髪入れずマ☆オの頭を軽く叩き軽く言葉のツッコミを入れる。
因みにマ☆オも微妙にオタクである。
「あんま悪乗りすんな、まぁ俺の後輩の緊張を解そうとしてくれんのは、
嬉しいが、お前ホントに昔と変わんねーな(笑)千代子ちゃん、こいつこういう奴だから、、、わかってくれたかなぁ?!」
軽く笑顔を交えながら、最後のわかってくれたかなぁ?!の部分を強調して大戦前に某動画サイトで流行った某神拳の使い手の如く決めてみる。まだあのシリーズの原作は貸してない今度貸してあげねば。
「アハハハ!演出ご苦労!ヨ☆シー先輩ぃぃぃ!」
どうやら俺たちを脳内でカップリングして興奮しすぎたのだろうか?
後輩は混乱し「ッェーイ!」と何度か赤面しながら腐った叫びを上げていた。俺はこの後輩大丈夫かなぁと思いつつも、自分で探して昔のアニメ見てんだなと、少し腐り気味な部分に納得しつつも、でもこの子マジ可愛い!声もハスキーボイスでアッー!たまんないね!ッエーイ!と心の中で腐り気味の後輩と同様の叫びを心の中で上げてると、その欲にまみれた思考を打ち消すような音声が車内スピーカーから流れ出すのだった。
「おい!ハッチ閉じるから、早くシートに座れ!移動するぞ!」
俺とマ☆オは同時に返事を返す大声で!
「「了解!」」
俺は車内の中央にあるガンラックに自分の装備の自動小銃を
一丁立てかけ、千代子ちゃんの横に座リ、持ってきたバックを自分のシート下部の収納スペースに置いた。マ☆オの馬鹿は反対側のシートに腰掛けている。三人ともシートに座るとスピーカーから一言)
「シートベルト閉めとけ!飛ばすぞ!」
ハッチが自動で閉まり、直後に車内に鳴り響くエンジン音
車両が動き出すのを体で感じ、俺たちは現場、いや戦場に向けて移動を開始する。
話別小説情報
掲載日
2013年 08月18日 20時24分
最終更新日
2013年 12月08日 03時23分
色々と不慣れな点もございますが、よろしくお願いします。