※この作品はR-18です。

魔女の弾丸 2014年8月改稿前 保存版   作:hidenyan

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作品内容後部

------------------------- 第4部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

四話から九話まで

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):23490字

文字数(空白・改行含まない):22516字

行数:827

400字詰め原稿用紙:約57枚

 

【本文】

第四話 物知りな後輩 変わりすぎた意味を名乗りし一団

 

 

俺と残念なことに腐ってる事が先程判明した後輩の千代子は今、応援先の前衛班車両に乗車している。

 

明確には、その車両も無人輸送用のトレーラーに乗って現場こと戦場に移動中である。車両は現在低速モードで移動中だからだろうか、振動も少なくそこそこ乗り心地は快適である。

 

「義明先輩、暇過ぎます~」

あまりに退屈すぎたのだろうか、千代子が声を漏らす。

 

「まず、小銃を暴発させる前にラックに置きなさい。それと今のうちにリラックスして心を落ち着けろ。現場に着いたら暇なんて言えねーからさ」

 

千代子が小銃を目の前のガンラックに、置こうとする仕草をついチラ見してしまう。いいケツしてるぜ!反対のマ☆オは残念そうにしてる。ガンラックが視界を塞いでるのだ。

 

 

「でも義明先輩~この気力じゃ現場着いたら戦えませんよ~」

 

小銃をガンラックに置いた千代子は、シートに腰掛けながら

話しかけてくる。おやっ?先程より俺の隣に近くないか?

などとやり取りをしてると、マ☆オから嫉妬に満ちた不意な横槍が入る。

 

「お前らもう付き合えよ!」

 

おそらく冗談7割3割嫉妬だろか、マ☆オの心の叫びが車内に鳴り響く。

 

「マ☆オ、壁パンはしないんだな(笑)」

 

俺はすかさず言葉を返す、過去のマ☆オの黒歴史をさりげなく織り交ぜながら。

 

「すいません義明様、つい調子にのってました」

 

引っ込んだな(笑)まぁ話の流れ次第では、貴様の黒歴史も会話のネタに

使わしてもらうがな!

 

「さて、千代子ちゃん」

 

だが俺はすかさず話の方向が、マ☆オの黒歴史に向かないように千代子ちゃんに言葉を投げかける。この借りはでかいぜマ☆オ

 

「はいっ!先輩」

 

すかさず返事を返す千代子ちゃん、さてどんな話題を振るか俺は考えた結果

 

「どうせ暇だろうし、君が仕事上必要な情報をどの位知ってるか、確認してもいいかな?」

 

少しばかり真剣な声色で千代子ちゃんに話しかけて、話の方向性を徐々にだがシリアスにして、彼女の精神面をいわゆる士気を高めてやらねばなと考える。

 

「義明先輩、よろしくお願いします」

 

千代子ちゃんから真剣な返事が返ってくる。俺にも彼女の初陣への意気込みが伝わったのだろうか。彼女がほぼ真隣にいることによる、自身の身体的な興奮だろうか、微かに鳥肌が立つ感じを覚え、鼓動も脈も高まるのを感じながら俺は会話を続ける。

 

「では、第一問目だ。今我々が直接乗車してるこの車両について述べたまえ」

 

実のところ俺も詳しく知らない(汗)確か米軍の開発中止になった水陸両用車の放出品を我が社の兵器好きでコスプレ好きの社長が購入し改造したくらいしか知らないのだ。

 

「本車両はEFV(遠征戦闘車)として米軍で開発されてました。全長10.57m全幅3.63.m全高3.315m重量28.7トンです」

 

俺は驚いた、だがマ☆オも驚いてるようだが千代子の説明は続く。

 

「武装は30ミリ Mk44キャノン砲、M240機関銃を回転式ターレットに搭載、本車両の画期的な点は、車体前部のボウ・フラップを展開し、ウォーター・ジェット推進で最大時速46・3キロで水上を航行し水上での行動距離は約120キロ、また水上航行モードではキャタピラを車体内に引き込み、収納部分を車内に引き込み収納部分をフラップで覆い水中抵抗の軽減を実現しています。また地上モードでの整地における最大時速は72・4キロ行動距離は約500キロと画期的な性能を誇っていましたが、2011年の米国の軍事予算削減で開発が中止され一昨年まで、米国の倉庫で眠っていました」

 

俺もマ☆オも見事に話に聞き入る。

 

「しかし昨年、米国政府の財政赤字削減対策オークションで放出していた本車両を、我が社が落札しエンジンや電子装置一式を更新し、、、って義明先輩とマ☆オ先輩もどうしたんですか?ポカンとして?」

 

俺とマ☆オは思わず偶然にも言葉が重なる。

 

「「恐ろしい子っ!」」

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 08月25日 04時48分

最終更新日

2013年 12月08日 04時02分

 

第五話 謎の壊滅劇は繰り返す

 

「「恐ろしい子っ!」」

 

俺とマ☆オの見事に重なり合った叫びが車内に鳴り響く。

 

「二人揃って月☆先生ですか!?」

 

千代子の返事を聞き((この子ほんとにアニメ好きなんだな))

義明とマ☆オが心の中で同じく思っていると、車内スピーカーから

中年男性っぽい父性を感じさせる声が流れ出す。

 

「お嬢ちゃんよくご存知でいらっしゃる、実に好感が持てるんだな。面白いから義明くん質問続といて。それと申し遅れましたが私当分隊の分隊長こと妖精猫と申します。以後よろしくなんだな千代子さん」

 

千代子はシートに腰掛けたまま天井のスピーカー件カメラに向かい軽く会釈をする。

 

「よろしくお願いします。妖精猫分隊長」

 

元気よく挨拶をしビシッと敬礼をする千代子、そして俺は次の質問を千代子にぶつけてみる。

 

「では、千代子ちゃん質問を続けるよ、君の装備してる自動小銃について述べてみて」

 

「はい!私の装備してる自動小銃は義明先輩と同じ、バレットM468(REC7)です。口径は6・8ミリ×43SPC弾を使用、なお5・56ミリ弾と全長がほぼ同じなのでM16用のマガジンが利用できます。この銃の利点はストッピングパワーが高いことと、5.56ミリ弾と同様に正確な

射撃ができる点にあります。開発は米国特殊作戦軍が中心になって開発しました」

 

俺の知る限りほぼ完璧な解説だ。俺も自分の装備してる武器については念入りに調べたからな、千代子ちゃんは説明を続ける。

 

「本銃については、旧自衛隊が国防軍に改変されるのと、ほぼ同時期に正式装備として採用されてます。その後、旧都道府県を地域ごとに統合し設立された、各州の組織した自衛軍も同様に採用しており非常時の弾薬共有の必要性などから、国内の多くのPMCも本弾薬を利用する各銃を採用しています。」

 

千代子ちゃんが説明を終え、何やら口元がニヤニヤしてるマリオが俺に話しかけてくる。

 

「なぁ義明、一応同業者である、あ・い・つ・らの装備についても聞いてみるか(笑)」

 

マ☆オが一応同業者と前置きしたあ・い・つ・ら、この認識は国内で企業活動をする多くのPMCがあ・い・つ・らに抱いてる共通認識である、先程廊下で大量にすれ違った殺気に満ちた団体さんのことだ。俺は奴らが装備してた最新式の大量装弾型自動小銃について、千代子ちゃんに質問を投げかけてみる事に決めたが、その前に一応ヒントついでに話しかける。

 

「千代子ちゃんは新人だから・あ・い・つ・ら・と言われてもピンと来ないだろうが、先程廊下で大量にすれ違った殺気に満ちた一団のことを指すと覚えとくように」

 

「えっ?そうなんですか?でもなんであいつらとか言われてるんですか」

 

事情に敏感でない新人なら当然の答えだろう。だが嫌でも現場に着けば解ることだから俺は質問を続ける。

 

「あいつらの詳細は、現場に着いたら嫌でも解るから、千代子ちゃん、あいつらの装備してた少し変わった形の自動小銃について知ってることを述べてみて」

 

「はい!分隊支援火器と自動小銃との中間的な火器として開発されたフィクションな火力を放つアサルトライフル、ワンミション・ノーマグチェンジガンなどの俗称を持つ無薬莢弾を利用する銃で正式名称は、、、」

 

俺とマ☆オは笑いをこらえながら次の一言を聞こうとしてるのだが、千代子ちゃんの肩から上が少しウズウズしてるように見える。おそらく笑いをこらえているのだろう。どうやら彼女も腐り気味なだけあってその手の知識に思い当たり意味を理解したようだ。

 

「NEETMk01です!」

 

車内は爆笑の渦で満ち同じく車内スピーカーからも複数の笑い声が漏れ出してくる。

 

体感時間にして三分程だろうか、車内は爆笑の渦に飲まれていた。

 

「働いてんのに持たされた銃の名前がNEETって!あんまりじゃねーか(笑)」

 

俺はマ☆オのこの発言に同意しつつ話を続ける。

 

「元はベンチャー企業が作った銃らしいが、あいつらの会社が開発元のベンチャー企業ごと買収してあんなネーミングになったとか、確か経緯が軍事雑誌に載ってたな」

 

俺は続けて千代子ちゃんに発言を促す一言を続ける。

 

「さて、千代子ちゃんあいつらことNEET Mk01を採用してる会社名も正式名称を大きな声で言ってみようか」

 

千代子ちゃんは笑いすぎたのだろか、あっあっと何やらエロいボイスを発しながら身悶えする仕草をしきりに繰り返し頬をピンクに染めている。

反対側のシートでは、必死にガンラックの隙間から千代子のエロい仕草を観察しようと一人、腕を組んだまま、上半身を左右にメトロノームの如く動かして、マ☆オが奮戦してる。千代子ちゃんが、笑い過ぎて発言できそうにないので、俺が会話を続ける。

 

「しかしNEETの本来の意味をリアルタイムで知ってる俺達からしたら、この意味の変わりようは、、、」

 

突如、俺の会話を遮るかのように車内の照明が、戦闘時の真っ赤な非常灯に切り替わり、直後にアナウンスがスピーカーから流れてきた。

 

「みんな、笑ってる場合じゃないんだな。国防軍の通信を覗いてたら州軍の戦車中隊等が壊滅なんだな。久しぶりに難易度の高い仕事になりそうなんだな」

 

マリオの上半身が、メトロノームな動きを見事にピタリと止める。

俺の隣の可愛い後輩は、まだ少し頬をピンクに染めて身悶えしている。

話し方は、某大物画伯のような、のんびりした口調の妖精ネコ分隊長だが、微妙に緊張した声色の言葉が、スピーカーから続けて流れ出す。

 

「現在確実に、部隊の壊滅確認が取れたのが、州軍の戦車中隊だけで、他にも生存不明の州軍の地上部隊が多数いるみたいなんだな。州軍の歩兵は国防軍や我々PMCみたいに生体センサーまで、リアルタイムで、まだ情報共有してないから確認が取れないからね。当然ながら戦車中隊はかなり派手に潰されたみたいなんだな。」

 

計画的な組織攻撃だ。仮にも戦車中隊を確実に壊滅させ、その他随伴の諸兵科の部隊も生存不明に追い込むとはそれ以外にありえない。俺はそう感じると、自分の頭の中で情報を整理して気づいた疑問を分隊長に問いかける。

 

「分隊長、国防軍が停戦ラインを突破してきた武装勢力に空爆を加えないことから見ても、武装勢力側の展開してる装甲車両の中には、対空戦闘用の車両も含まれ今回はUAV(無人機)や味方航空戦力の対地攻撃支援は最悪期待できないと考えていいんですかね?」

 

しばしの沈黙が車内に流れる。やはり隣はまだ微かに、身悶えしてる。

頬は先ほどよりピンクでないが、少し涙目で少し呼吸が荒いエロスっ!

 

「だろうね。但し別の支援が期待できるかもしれないんだな。現在、国防軍の艦隊が呉を出港、豊後水道に移動中なんだな。うちの千代子ちゃん同様、初陣の沿岸戦闘支援艦を引き連れてね。」

 

遠いピンクなところに飛んでた俺の意識が一瞬で引き戻される。初陣の沿岸戦闘支援艦は二番艦まで就役してたな。確か艦名がネットで騒ぎになってたな。車両が速度を上げ加速してくる感じを受け俺は艦名を思い出すのを遮られ、シートの背もたれに深く腰掛ける。目をつむり少しの間だけ視覚を閉じて意識を発射前のミサイルの赤外線シーカーを冷やすように休まし戦闘に備えることにする。

 

         加速に身を委ねながら。

 

 

         げこげこ、、、げこげこ、、、

 

戦闘時の非常灯が灯った真っ赤な車内には、外部マイクで拾ったスピーカーから、蛙の合唱が鳴り響く、季節は夏である。俺はそれをBGM変わりに意識を沈め、まぶたを閉じ、視覚も休ましている。

 

「あー義明くん以下、後部の諸君、今からスピーカー下にモニターを展開するからね~下車する前に外部の映像も見ときましょうなんだな」

 

相変わらずな妖精猫分隊長の言葉で、俺は目を開けると、スピーカー下から白い一反木綿のようなスクリーン状のシートが降り、先端部が床に着くとカチッとした固定音が車内に鳴り響く。そして、スクリーン状のモニターが真っ青な色に変わる、プロジェクターの類で外部から、色を変えたのでなく、スクリーン状のそれ自体が発光しているのだ。有機ELディスプレイの類だ。白いイカ状の何かがグルグル動いてるのを、視界に捉え、それがPCのカーソルと認識した直後にカーソルは消え、一瞬画面がブラックアウトし外部映像が映し出され、白黒の赤外線画像が俺の視界に飛び込んでくる。

 

「これは当車両から前方約2km先の水田地帯の状況なんだな。時折、なんか弾けてるのは機銃弾なんだな」

 

妖精猫分隊長の解説通り、白く小刻みに、発光しながら何かが、細かく弾け飛んでいる。画像で確認できる砲身の数から、軽く10両は超える戦車が大破し炎上している。

随伴の歩兵戦闘車両はその3倍くらいだろうかやはり同様に大破炎上している。見る限り人影は見当たらない。まさか先制攻撃で同時に全車両を潰したのだろうか?第三次世界大戦終結直後は元隣国の正規軍崩れの奴らが、度々部隊単位で大量の対戦車ハンドミサイルを含む重火器も使い日本の沿岸地域を荒らしていたから、その手の壊滅劇があった事は俺も記憶している。なにせ当時の民放やネットで、何度も当時の自衛隊が苦戦しているのを生放送していたからな。

 

「しかし、敵の歩兵やAPCが(装甲車両)見当たらないですね?分隊長、別のセンサーで何かわかりませんか?」

 

千代子ちゃんが疑問をスピーカーに向かい問いかける。

 

「ここでみんなにいいお知らせなんだな。無線傍受してたら、国防軍艦隊の艦砲射撃で武装勢力を無力化完了でつまり、みんなお疲れさんなんだな。でも移動しながら艦砲射撃で敵壊滅とかカッコイイんだな」

 

俺達の乗る車両は、即座に進路を反転し基地へとで帰還しだすのだった。

明日から俺は、有給休暇10日分をどのように消化しようか、考えようとしたが、基地に着くまで考えないことにして、目を閉じ車両の揺れに身を任せ意識を静かに沈めるのだった。

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 08月25日 12時50分

最終更新日

2014年 02月19日 20時36分

 

第六話 NEETを名乗りし者達

 

          蛙の声鳴り響く夏の夜

 

九州北部国境地域から離脱中の装軌式IFV(歩兵戦闘車)が一両、IFVの砲塔には25ミリ機関砲が備え付けられているが、今回その砲口が火を噴くことはなかった。

 

IFVの前後を複数の迷彩塗装を施し、コンバットタイヤに換装したたテクニカル仕様の軽トラが一定の間隔を空け、高速で田園地帯と休耕田が混在した地域の農道を無灯火で移動している。

 

テクニカル軽トラの荷台には三脚が固定され重機関銃が備え付けられている。

その重機関銃のガングリップを握る者たちは皆、頭部は黒いフリッツ型ヘルメットを被り、目元は暗視ゴーグルを着用し真っ黒い戦闘服に身を包み、足は同じく黒いコンバットブーツを履いている。

 

 

IFVの歩兵収容スペースの中にも似た格好をした者たちが5名乗車し、会話をしている。

 

 

 

 

 

IFV車内の歩兵収容スペースのスピーカーからはエンジン音で途切れ途切れながら無線が流れてる。

 

「、、繰り返す!、、のは、、売!繰り返す!、、のは完売!」

 

(クソッ!なんなんだよ!海軍の艦砲射撃で敵が全滅って完全に無駄足じゃねーか!新型小銃の実戦での初撃ちお預けかよ!ネーミングがNEETMk01とかちょっと残念だとか、お年寄りは批判してるが自分はコイツの活躍期待してたんだぞ!)

 

イラつきながらも今日を無事生き残れたことに内心安堵してる二十前後の彼は抱えるようにして

NEETMk01と呼称される新型小銃を持ってシートに腰掛けている。

 

「おい!新人ども!覚えとけ!、、、のは完売!と聞いたら全力で撤退しろ!これは我がNEETの伝統である!逃げ足の速いことは決して恥ではなぁああいい!!我々は軍人でも!警官でもない!なんだ!?」

 

中央のシートに座る三十代前半くらいの男性が周りの新人どもと呼称した二十前後の彼らに問いかける。

彼の腰には大型の自動式拳銃が装備されている。

 

(エンジン音五月蝿くてよく聞こえねーよ。

そんなの決まってんだろPMC(民間軍事会社)だろ、、、)

先程からMk01を撃てなかったことに一人イラついてる彼がそう考えてると、周りは一斉に上司こと隊長に向かい、、、、

 

「「NEETであります!」」

彼以外の新人は全員、会社直営の訓練校から直に会社に就職しており、彼は微かに疎外感を感じながらも自分の上司と同僚たちのやり取りを見守るのだった。

 

「その通り!我々は!NEETである!今はPMCの形をやもを得ずとっているが!第三次世界大戦終結後の混乱期!我が日本は!周辺国から溢れ出た武装難民達に蹂躙され!かつてのローマ帝国末期のような状態に陥っていたあああ!!!あの国難を救ったのは!国防軍や州軍の前身たる自衛隊でも!警察でもない!誰だ!?」

 

(まだ演説すんのかよ!?)彼がそう考えてると、周がまた同じく。

 

「「NEETであります!」」

 

 

(しばらくこのやりとりが続くんだろうな、、、一応ここはIFVの中だし、全速で基地に撤退してる最中だから一応大丈夫か)

と彼が考えてるとやはり演説はやはり続くようである。

 

「諸君!NEETは何の略であるか!答えよ!」

 

「National Enemies Eliminate Team であります!」

 

 

(国家の敵抹殺班になるのか?なんか強引な感じがするな。本来の意味はNotinEducationEmploymentorTrainingで就学、就労、職業訓練のいずれも行ってない状態だよな。スゲー変わりようだよ全く、本来の意味知ってる世代的にはこの新型小銃の名称を叩きたくはなるかな。)

彼が英単語を日本語に脳内で訳してるとノリノリの上司は演説を続ける。

 

「諸君!我々は絶望と混乱に満ちたあの!大戦後の日本を守るために!自ら銃を持ち!立ち上がった

英雄達の流れを組む者たちであると自覚せよ!」

 

(英雄たちか)

 

彼は自然と大戦終結から三ヶ月目が過ぎた終戦後初の夏を思い出していた。

 

 

セミの鳴き声より銃声や爆音、悲鳴の方が多かったかもしれなかった夏の日々、先の大戦で直接の被害を何故か免れた日本は、その後発生した武装難民の国内流入や、米国の核攻撃で国土ごと地図の上から消滅した某国工作員残党の手引きで、全国の刑務所から武装し脱獄した凶悪犯を中心とした数万人の脱獄者達に国内を蹂躙され、その他暴徒の脅威に絶え間なく晒され続けた。日本は多くの企業や大半の行政機関が機能を停止してしまい、組織として機能してたのは自衛隊や一部の武器弾薬、人員豊富な都市部の警察くらいだった。

 

内戦状態寸前どころか無政府状態寸前だった日本 

 

大戦前は東京五輪開催前という状況も重なり、周辺の反日国家から政治的、軍事的な様々な嫌がらせを受けていたこともあり、かつての永世中立国のスイス程ではないが、民間防衛活動がそれなりに全国的に実施されていた事から、多くの国民は幸いな事に半年分くらいの食料等を各世帯や避難所ごとに保管し管理していた。生き残った国民は避難所や各々の住居に、かつて世間から馬鹿にされてた引きこもり同様に引きこもらざるを得ず、混乱の過ぎ去るのをただ、怯え耐えていた。

 

まだ、ライフラインはなんとか全国的に機能しており、彼が当時住んでた地域は幸い武装難民もあまりおらず、まだ少年だった彼はPCをほぼ毎日起動させ、まだ機能してた某動画投稿サイトばかり見て自室に引きこもっていた。

 

(投稿される多くの動画は、ここはほんとに日本かと疑いたくなるようなものばかりだったな。燃える町並みに立ち込める黒煙、燃え盛る車両、死体の画像に、生きてる人間が殺され死体ができる動画、幼女から育ち盛りの十代の少女や果ては人妻まで容赦なく拉致られ犯され、家族や恋人の前で犯され殺される動画などモザイクなしで野放しの世紀末状態だった。FPSや暴力性満載の洋ゲー、鬼畜凌辱モノエロゲが実写化されたのかと思う動画や画像が毎日、世に恨みある煩悩解放全開の暴徒達の手によって、あるいは、某国工作員残党の対日心理戦工作の一貫によって大量に投稿されていたな。

 

運営仕事しろよ!通報しました!と状況が状況なだけに、徐々に誰も書き込まなくなってたそんな絶望的な夏の日に、彼らは颯爽と現れたのだ。俺の憧れている[魔法少女のコスプレで有名な彼女]もその時、初めてお目にしたのだ。当時の彼女の服装は魔法少女というより、RPGの魔法使い的な感じだった。初めは誰しもが、現実に絶望し発狂した奴らがついに電動ガンやエアガンを持って集団自殺開始かと思ったことだろう。

サバゲー風の格好した集団が各々の服にNEETとプリントされたステッカーを貼り、電動ガンやエアガンを持ち、かつて薄い本を大量に売買する場所や、コスプレをする場として盛大に使われてた某会場に思いを馳せながら、そこに陣取る屈強でヒャッハーな武装難民だか武装した暴徒だかを相手に

突撃して、派手に集団自殺を生放送でもするのかと思い、多くのユーザーと同じく自分も絶望的な気持ちで放送を見ていたが、予想外だった本当に、、、彼らが手にしていたのは実弾の装填された紛れもない実銃であり、陣取ってる屈強な武装難民を見事な連携で射殺し、某会場に陣取る武装難民一同を駆逐し瞬く間に某会場を制圧したのだ。

 

画面には多くの賞賛のコメが溢れ、サーバーダウンしないかヒヤヒヤしながらも久しぶりの爽快感に浸りながら自分も放送を見ていた。

 

 

その後、色々あって勢いを取り戻した自衛隊は国防軍や各州の自衛軍に再編された。また武装し立ち上がったNEETを名乗る者たちや、それに続いた一部国民の加勢もあり、なんとか武装難民等を九州北部の旧移民優遇特区に追い込むことに成功し徐々に九州北部で小競り合いが起きるくらいに押さえ込むのに無事成功したのだが、その後なし崩し的に、当時の政府に対して

NEETやそれに続き立ち上がった国民達は、自分たちの立場をPMCとして武力を背景に少々強引に認めさせ、不逮捕特権や税の免除や租税権の移譲を含む地位協定を結び日本の国防から治安維持を担うようになり今に至ると)

 

彼が脳内で歴史というほどまだ期間の経過してない社会の変化について思い出し整理してると隊長の大音量の演説が彼の頭と思考に鳴り響く。

 

「諸君!如何に大陸や半島の奴隷王朝!軍事政権の類から!奴らが物資を補充しようとも!奴らの殲滅はもはや時間の問題である!」

彼は隊長の話を聞き思い出す。

(今じゃ大戦前みたいに国民国家として残ってんのなんて日本を含めてかなり少ないよな。残ったといっても他の国も日本同様、武装難民問題や経済不振で溢れた失業者が暴徒になって内政が大変なんだが、他の地域とりわけ日本の周りはというと、無政府状態で重武装の犯罪組織だか、カルト宗教を母体とした奴隷王朝だかが幅を利かせてんだよな)

 

 

「たっ!隊長!入社間もない我々の失業も時間の問題なんでしょうか?!」

 

彼の隣の新人が若干テンパりながら隊長に問いかける。

 

「大丈夫だ!問題なぁぁああい!もはや我らなくして!この日本の国防も治安維持も成り立たないのだ!それに考えてみろ、武器を持ち扱いに慣れた100万人弱の民間人が一斉に失業したら世の中どうなる?」

 

彼は考える。

 

そりゃまた混乱期に戻るだけだろ隊長、そんな決断する時代遅れで、お花畑な政治家なんて今後現れはしないだろう。それ以前にこの国の政治家や官僚は、武力を持ち行使をためらわない国内外の勢力に基本、今も昔も逆らわないからな。そんなんだから大戦後この国では、判明してるだけで3000万人弱もの自国民が死んだのだ文革並の死者数だ。死んだ多くは、老い先短い老人達だったが、老人たちは大半が飢えや病、老衰、自殺で死んだんだから。まだマシかもしれない。死んだ若者の大半は武装難民や暴徒によって、望まずに殺され、犯され、踏みにじられ命を散らしていったのだから、先人たちが平和を貪らずしっかり備えをしていればこんなに自国民が死ぬこともなかったんだろうが、俺の同級生や先輩、後輩も結構死んだからな。

 

彼は少々イラつきながらもMk01の銃身付近のハンドガードを微かに強く握り締め心を落ち着かせ力強く、己が心酔し己の基本として考えてる教えを再度、自身にインストールするかの如く強くイメージする。

 

 

一殺多生の活人剣!それが自分の生き方だ!

 

 

彼は自身が、心の拠り所とする教えの一つである某剣術流派のその教えを思い出していた。その教えを初めて知ったのは、大戦中に部屋に積みゲーの一つとして放置されてた、サイボーグが刀でサイボーグを斬りまくるアクションゲームだ。彼が某剣術流派の教えを心に強く響かせるとほぼ同時に、IFVの外部から激しい衝撃が伝わりIFVの車体が容赦なく外部の衝撃で揺らされ、外部から凄まじい数の銃声が鳴り響く。

 

「敵襲だ!総員射撃準備!下車するぞ!」

 

隊長がそう叫ぶと皆、Mk01のコッキングレバーを引き、車内に複数の乾いた金属音を響かす。

 

後部ハッチが開かれると同時に外に飛び出し射撃姿勢を取りつつ周囲に散開する。

 

既に後方と前方のテクニカル軽トラの数台は炎上し

 

燃え盛る人型が水田に倒れこみ、火が静かに消えていくのが先程からイラついてる彼の視界に見えた。

 

(クソッ!海軍の奴ら!何が敵は全滅だ!思いっきり残してんじゃねーか!)

 

彼はイラつきながらもMk01小銃を構え周囲を見渡す。

 

生き残ったテクニカル軽トラは、機動性を生かし周囲の水田や休耕田に水しぶきを巻上げ蛙の鳴き声をかき消す勢いで、エンジン音を周に響かせながら散開しはじめるのが彼の視界に映る。だが、その動きを逃さないかの如く散開を始めたテクニカル軽トラの一台に向けて、緑の光線状の矢が大量に飛んでいき接触すると爆発し、乗員もろとも周りに爆散する。

 

(なんだあれは、曳光弾か?爆発するような曳光弾なんて有り得ない、あれじゃまるでビーム兵器じゃないか?!)

 

彼がMk01小銃を構えながら内心驚いてると、残りの散開してるテクニカル軽トラは対赤外線用も兼ねた煙幕弾を緑色の光線の飛んできた方向に向け撃ちまくる。

 

残ったテクニカル軽トラは、激しく水田で水しぶきを上げながら機動を開始する。

 

各車、煙幕弾を撃ちこんだ方向に向けて射撃を開始し、同時に彼が先程まで乗車していたIFVの砲塔も旋回し煙幕弾を撃ちこんだ方向に向け25ミリ機関砲が射撃を開始する。

 

凄まじい数の銃弾、機関砲弾が夏の夜の湿った大気を激しく切り裂き銃声を鳴り響かせながら撃ち込まれる。

 

 

(何故反撃してこない?なんか嫌な感じだ。)

 

彼がそう考えていると隣にいる隊長の命令でテクニカル軽トラもIFVも射撃を中止する。

周りは異様に静かだ。射撃中ですらかすかに聞こえてた蛙の鳴き声すらしないのだ。隊長が彼に姿勢を低くして近寄り小声で話しかける。

 

「鬼頭(きとう)今から残業になるがいいか?」

 

隊長に声をかけられた彼こと鬼頭と呼ばれた青年は同じく小声で返事を返し

しばしふたりの小声での会話が続く。

 

「大丈夫です隊長」

 

「 よし ! さっさと敵を始末して朝一で飲みに行くぞ!」

 

「いいですね。そうだ!魔女の弾丸便の義明さんも誘いませんか?」

 

「あいつ生きてのたか? あいつに全部奢らすか」

 

「しかも義明さん、可愛い女の子の後輩と一緒に出動してましたよ ! 基地のブリーフィングルーム前の廊下ですれ違いましたが、向うは自分に気づいてなかったみたいでしたが」

 

智也は腰から大型自動拳銃を引き抜くとスライドを引き金属音を鳴り響かすと大声で叫ぶ。

 

「実にけしからん!なぜアイツばかり周りにいい女が集まるのだ?!壁パンマ☆オはナニをもたもたしてんだあいつをさっさとアッーしちまえよ!」

 

「智也さん、それは義明さんがあんまりじゃないですか。一応マ☆オさんはあんな仕草をしてますがホモじゃないですよ」

 

この話題を振った鬼頭は一応、義明とマ☆オへのささやかなフォローをしておく。

 

「ナニを言ってる鬼頭くん!?義明は大戦前から魔弾[魔女の弾丸便の略]とこのロリ気味で巨乳の女社長とプライベートでも知り合いなのに未だに関係が進展してないのだよ!それは、義明がノンケでないことを示唆してるとは思わないのかね?」

 

鬼頭には初耳の情報であった。鬼頭は魔弾の女社長に微かな憧れを抱いていたのだ。彼は義明との人間関係を利用すれば憧れの人近づけるかもしれないと、微かな希望と欲望を心に抱きながら義明への嫉妬も抱きながら口を開く。

 

「うわっそれ初耳ですよ!マジ怪しいですね?!」

 

鬼頭はMk01のガングリップを力強く握り締め構え直すと、銃に備え付けられたホロサイトに視線を合わせる。彼の瞳には欲と力強さが宿る。彼は義明への対抗心と己の欲を燃やしつつ、自身の恋愛成就に向けた情報戦と未知なる敵との戦闘とを同時に開始するのだった。

 

 

 

 

      ホロサイト越しに鋭い殺意を放ちながら

 

 

 

 

 

  

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掲載日

2013年 10月15日 01時11分

最終更新日

2014年 07月31日 08時39分

 

第七話 逃げる者と強欲の遺物

 

「こっちだ!走れ!」

 

焦りのこもった言葉を放つ若い男の声が

暗く半円状の細長い空間に、複数の走る足音と共に鋭く反響する。

 

(何なんだよ!アレは!?せいぜいが装甲車両に乗った寄せ集めの武装勢力相手の楽な戦闘任務だと思ってたのに、あいつら、、、)

先ほど焦りのこもった言葉を放った彼は、自分たちの戦った敵への評価を、恐怖よりはるかに勝る己の闘争心と殺意を頼りに、己のこれまでの戦闘経験と照らし改めてる最中である。

 

彼と彼のあとに続けて走る者、彼のすぐ後方に3人が並列で

その後ろを2人が並列で前後の間隔を約2m弱開けながら必死で走っている。

 

皆、頭には国防軍の前身たる自衛隊が採用していた88式鉄帽を被り

目元には暗視ゴーグルを装着している。

 

体も上下同じく自衛隊が採用していた迷彩服3型をまとい、足は市街戦用のタクティカルブーツを履き、上半身は戦闘防弾チョッキを着用し、手には国防軍から各州の自衛軍、また国内の多くのPMCが採用しているバレットM468自動小銃が握られている。

 

腹部の周りを守るかの如く設置された弾倉入れには今は何も入っていない。

 

「隊長、なんなんですか!あのキモい連中!半島辺りのカルト王朝の信者でしょうか!?」

 

真ん中右側を走る若者が先頭を走る若者に話しかける。

 

「そんなこと俺が知るか。それより、残りの弾の心配でもしてろ!

もうすぐ下水道を出るぞ!斎藤!ボトルの準備急げ!他の奴らは俺の後に続け!」

 

隊長と呼ばれた先頭を走る彼は、斎藤にボトルと呼称された物の準備を指示する。

 

「了解!」

 

斎藤と呼ばれた彼は隊長に返事を返し、一人脇にずれ足止まり、膝をつき背中のバックパックをおろし

2リットルペットボトル位のサイズの円筒状の物を取り出す。

斎藤は先端のキャップ状の部分をひねるように回す。

ボトルの側面には小さな円柱状の盛り上がりがあり、見るものによっては固体燃料ブースターを付けた打ち上げロケットの模型に見えるかもしれないだろう。側面の円柱状の部分からは、ボウガンの矢のような部分が静かに6本ほど出てくる。

キャップ状のものがチカチカ白く光りだし、飲料水のボトルならラベルが貼られてるであろう箇所も白く光りだす電子ペーパーの一種だ。因みにボトルから発せられる光は微量の赤外線であり、仮にこの場に暗視装置を装備していない者がいても何も見えはしないだろう。

 

白のスクリーンに黒文字で操作メニューが表示される。

 

彼は円筒状の物体から出てきた矢のような部分を長年放置されて、泥が堆積し地面と化した下水道の床に差し込むと、スクリーンの操作を手慣れた手つきで素早く終えバックパックを背負い全力で走り出す。

 

斎藤が約50mほど走ると正面に灰色のコンクリの壁が立ちふさがるが、その左側に小銃を構え警戒する仲間の一人を、彼は視界に捉え微かに安堵し、全速で左側に加速し警戒している仲間を追い越す。

 

その先は直線で約100m程だ。

残りの仲間は皆、下水道の出口付近の壁際で小銃を構え警戒している。

 

斎藤の後ろから警戒に当たっていた仲間が叫びながら全速で走ってくる。

 

「斎藤、小銃忘れんな死ぬぞ!」

 

「サンキューな!小林!」

 

斎藤は小林から自分の小銃を受け取ると、小林は斎藤の小銃を受け渡すと

二人共全速で並列で走り出す。出口付近に到達すると左右の壁際にブレイクし息を切らせながらも小銃を構え警戒に当たりだす。

 

「小林、お前の散弾はあと何発だ?報告しろ」

 

左側の壁際最前列で小林は片膝をつき銃を構え警戒してる。その真後ろにいる隊長が小声で報告を求める。

小林の小銃のハンドガード部分には銃身とストックが切り詰められたレミントンM870

が装着されている。

 

「バックショットが弾倉に5発とダート弾が20発です」

 

小林は先ほどの全力疾走の影響だろうか、若干息を切らしながら報告する。

報告を受けた隊長は、自身のすぐ後ろに控え、通信端末を操作する部下に声をかける。

 

「安田、通信状態はどうだ?」

 

「はい、地下を抜けたので通信は、、、!隊長、海軍が艦砲射撃を開始するみたいです!着弾範囲は、、、大丈夫です。我々の現在位置は着弾範囲からも誤差範囲からも約1km弱離れています」

 

突然の受信内容に驚きながらも安堵し安田は報告を終える。

安田の報告を受けた隊長は若干の疑念を感じ、一瞬考える。

(艦砲射撃か、、、ってことは呉に配備された新型艦の電磁投射砲を使う気か、、、準備のいいことで上の連中は何を考えてやがる、、、)

 

「安田、お前は引き続き通信の傍受を続けろ。我々を回収できそうな友軍の通信を見つけ次第速やかに報告しろ」

 

「了解」

 

隊長は反対側の壁の最前列で小林同様、警戒に当たる斎藤に距離が離れてるため隊内用のインカムで指示を出す。

 

「斎藤、お前はグレネードランチャーに持ち替えろ」

 

「了解」

 

インカムで指示を受けた斎藤は、小銃を地面に置きバックパックから、小銃の半分以下の全長の黒い物体を取り出し、右手でガングリップ付近と思われる部分を握り、左手でバックパックから取り出した四角い弾倉を叩き込みコッキングレバーを引き、乾いた金属音を一つ鳴り響かす。黒い物体はブルパップ型の連発式グレネードランチャーとしての存在を周囲に顕す。斎藤はグレネードランチャーを構え警戒に当たる。

 

 

「隊長、後5分ほどで艦砲射撃が始まります。それと我々の近くを通過中のPMC(民間軍事会社)のIFV(歩兵戦闘車)を中心とした複数のテクニカル軽トラの通信を傍受、撤退してるみたいです。撤退用に痛々しい符号を用いてる事からNEETの連中と思われますが、通信しますか?」

安田が隊長に傍受した通信内容を報告し指示を仰ぐ。

 

「、、、NEETの連中か、他のPMCはいないのか?」

安田から報告を受けた隊長は少しばかり落胆したような口調で安田に確認する。

 

「いません。どうしますか?連中は我々に一番近い唯一の友軍ですが?」

安田は暗に、隊長が回収の指示を出すように返事を返す。

 

 

しばしの沈黙が場を包み、皆が隊長に対し思うことはただ一つ

((回収の通信を命じろ!))

皆がそう思った刹那、下水道の奥から破裂音が連続して鳴り響き、同じく閃光が連続して光る。

 

「ボトルが起動したぞ!全員射撃準備!」

 

隊長の一声で、場を支配していた沈黙は一瞬でかき消され、場を闘争心と殺意に包まれた微かな不安が包み込む。隊長以下、皆が起動したボトルと呼ばれる武器の由来を知ってるからだろうか皆が心の中で考え叫んでることは、ほぼ同じく。

 

 

 

((頼むぜ!今は無きPMCグリード(強欲)の遺物よ!))

 

かつて良くも悪くもその名を世に轟かせ消えていった、PMCのひとつの作りし武器の発揮するであろう戦果への期待であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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掲載日

2013年 11月03日 04時35分

最終更新日

2014年 07月15日 10時48分

 

第八話 生じる必然と異様な者たちの宴

 

第三次世界大戦後、九州北部に設置されていた移民優遇特区は崩壊した周辺国からのゲリラや凶悪犯、難民が大量かつ無秩序になだれ込み、急激に治安を悪化させ同地は秩序崩壊の兆しを見せていた。

 

また、移民優遇特区のみならず周辺の市町村県レベルでの行政機能すら連鎖的に麻痺崩壊させ、全く間に移民優遇特区を中心とした地帯は、日本政府の統治の及ばない地域と化しその規模と範囲を日増しに広げつつあった。

 

行政機能崩壊の主な原因たる難民等のこれ以上の全国への拡散を恐れた当時の政府は、移民優遇特区周辺に地雷原や分離壁をかつて中東域内に存在した某国のように幾重にも設置した。

 

また自衛隊を国防軍や、崩壊寸前だった各都道府県を再編し設立した各州に新たに創設した自衛軍に再編し対処を開始した。

 

しかし、もはやそれだけでは質的量的に対処できない事態に悪化していたので、武装し立ち上がった一部の国民達を当時の政府はPMC(民間軍事会社)等として必然的に認めざるを得ず、彼らと不逮捕特権等を含むかなり不平等な地位協定を結び、かつての思いやり予算をはるかに凌駕する規模の税金を彼等に湯水のごとく投じ、なんとか国内の治安維持から国防を維持し、少しずつだが確実に復興を進めているのがこの時代の日本である。

 

 

繁栄を謳歌してるPMCの主たる業務の一つに九州北部の国境警備業務がある。

 

 

 

この時代の日本の国防の最前線たる同地の国境警備は、危険(リスク)もあるがそれをはるかに上回る旨みがあるため、多くのPMCが日々、銃を手に取り同地の戦闘地域で戦っている。

 

そんなごくありふれた戦場の一つで大量の銃弾が飛び交い銃声が途切れなく轟いている。

 

時間は、周囲が闇に包まれてる事から夜であるが、放棄された住宅街が大規模に燃え盛ることで、黒煙を伴い、炎や火柱が発生し火の粉を巻き上げ、時折大小様々な破裂音を鳴り響かせながら周囲を明るく照らしだしている。

 

だが、炎の明るさに負けないほど夜空は満天の星空だ。

天の川が見えることから季節は夏である。九州北部国境地域は、今や国内最大規模の危険地域であるが同時に無人地帯でもある。

 

星の光を妨げる光源が広範囲にわたってないことも、この周辺の夜空がひときわ美しいことの一因だろう。他にも大戦前ほど、内燃機関で駆動する車両も地球上を走らなくなり、地球上で休みなく大戦前まで行われていた大規模でグローバルな経済活動、産業活動が縮小し、星の光を妨げる光源の減少と大気汚染の著しい改善が進んで、大気が澄んでいることも一因なのだろう。

 

第三次世界大戦で人命は億単位で失われたが、同時に核兵器により維持されていた、常に滅亡と隣り合わせのハイリスクな平和な日々も人類は、失うことになった。

 

生き残った者たちは、核兵器で封じられていた際限なき人対人の戦いの日々を必然的に再び生じさせることになり、先進国や工業化の進んだ国の存在していた地域の多くでは、失われて久しかった美しき青空と星空を人々は、積極的な地球環境悪化防止の取り組みで自ら掴み取るのではなく皮肉にも戦争の対価として取り戻していた。

 

 

最も、その星空の下で銃を手に取り戦う者たちにそのような感慨に浸る余裕は微塵もない。

 

「撃ち続けろ!やめたら死ぬぞ!」

 

隊内通信用のインカムに向け焦りのこもった激を飛ばす中年男性の声が周囲に銃声と共に鳴り響く。

 

彼の頭部には放出品だろうか、米国海兵隊が採用していたLHWヘルメットをかぶっている。

 

ヘルメットには、単眼式の暗視装置を装着し今現在使用している。

 

上半身には市街戦用のデジタルパターンの迷彩柄のタクティカルベストを装備し、その下は上下同じくデジタルパターンの戦闘服を身に付け、肘(ひじ)や膝(ひざ)脚部(きゃくぶ)に灰色のプロテクターを装備し市街戦用のタクティカルブーツを履き、ドラムマガジンを装着した、銃で武装しセミオート射撃の最中だ。

 

彼の手にはMPSーAA12 フルオート射撃が可能な戦闘用に作られた散弾銃が握られ、路上に放棄された某大手メーカー製のHV(ハイブリッド)車の残骸で一番分厚く防御効果の見込める、エンジンルーム付近を盾にして銃撃の最中である。

 

彼の周りの路面には、大量の真っ赤な使用済みショットシェルや使用済みのドラムマガジンやボックスマガジンが散らばっている。

 

因みに銃撃戦ではない。一方的に銃撃をしているのだ、それでも彼らは追い詰められているようだ。この地球上で大量の銃撃で仕留められないのは装甲を施した戦闘車両くらいだろうが。

 

散弾銃を構える彼は、自分の装着したインカムに隊内用の通信が入るが、散弾銃を時折現れる敵に向けて、セミオートで射撃を加え続けながら通信に耳を傾ける。

 

「隊長、軍の戦車部隊と通信途絶、最後の通信内容から敵に撃破されたとものと思われます!衛星通信は何度も試みてます!通信衛星の反応はありますが応答がありません!軍が回線を意図的に遮断してるものと思われます!」

 

この地域は、両陣営が常時大規模なECM[電子戦]を展開しており、艦艇や航空機と違いECCM[対電子妨害対抗手段]用の機材を運用できない少数の歩兵部隊が外部とまともに使える通信手段は、必然的に衛星通信等に制限される。

 

道路を塞ぐように放置されたHV(ハイブリッド)車の残骸のすぐ横には、かつてガレージとして利用されていたであろう空間が歩道を挟んで広がっている。ちなみにガレージに隣接していたであろう人家は、かなり前に焼け落ち、燃え尽きた残骸が無残にも残るだけである。ガレージには、路上で銃を構える彼と似た格好をした者が三名、そのうちの一人は、マンパック型無線機を背負い床にあぐらをかいて座り小型ノートPCを抱えキーボードを操作している。彼が通信を入れたのだ。

 

残り二人のうち一人は、小銃を構え周囲を警戒しもう一人は、道路側に近いガレージの切れ目から地面に伏せSAW(分隊支援火器)を構え、路上に現れる敵に向けて射撃を続けている。

 

ガレージや歩道付近には、大量の空薬莢とメタルリンクが散らばっている。

交換したであろう銃身も数本、ボックスマガジンも数個ほど無造作に放置されている。

 

「ふざけやがって!クソ役人どもが!生きて帰ったらただで済むと思うなよ!」

 

ドラムマガジンを装着し直し、散弾銃をセミオートでぶっぱなしながら、彼は不満をインカム越しにぶちまける。

不満をぶちまけた彼の事などお構いなしに再び通信が入る。

 

「こちら偵察班、松沢、敵は隊長達の陣取る丘陵地帯の住宅街の坂道下の、北側約1km先の私鉄駅前のロータリーに大量に陣取っています。陣形の中央に人間らしき人影を複数確認、敵の指揮官とおぼしき者は、

神輿のようなものに担がれ、備え付けられた玉座のようなものに座っています。全身をローブの様な物で纏い、性別等の判別は不能、神輿のようなものを担いでるのは、大量にいる例の灰色のカエル野郎です!数は多すぎて計測不能、駅前を埋め尽くしています!」

 

偵察班の松沢から報告を受けた彼は速やかに通信を返す。

「了解した、こちら小隊長の兵頭引き続き状況報告を続けよ」

 

「こちら偵察班、松沢了解しました状況報告を続けます。神輿の周りにいる人間らしき者は、全部で6人です。全員が西洋風の鎧兜の様な物で全身を覆い性別等は、判別不能、身長は全員、約2m弱の巨体です。三人が斧と槍が一体化したような武器で武装、残りの三人は腰に鞘付きの剣を携え武装してます。銃火器の類の装備は、確認できません、、、!待ってください!連中捕虜をとってます!迷彩服の柄から国防軍か州軍の連中です!捕虜の人数は、確認できるだけで10人!ロータリー前の公衆トイレに閉じ込めていたようです!トイレから引きずり出してます!」

 

松沢は捕虜の存在に驚きながら報告を続ける。

 

「捕虜にされている全員が、両手と両足を白い餅の様な物で固めらて身動きが取れないようにされてます!カエル野郎が足首の辺りを掴んで乱暴に引きずるようにして神輿の前に運んでます!全員頭が血まみれです!神輿に乗ってるローブを纏ってる対象に動きがあります!神輿を飛び降りて捕虜の前に移動してます、、、マジかよ」

 

「松沢!どうした!?状況報告を続けろ!」

兵頭は驚きの声をあげる松沢に状況報告を求める。

 

 

「対象がローブを脱ぎ捨てました。女です!ロングのツインテールヘアーの女です!顔立ちから幼い感じが残ってますが、体つきから歳は十代後半から二十代周囲の鎧兜を身につけた巨体との身長差から身長は約1,5m弱、上半身には布面積の少ないビキニの様なモノを身につけ下半身には、模様の描かれた布の様なものを巻いてます。顔にはペイントのような化粧を施し、腹部にも何やらペイントのようなモノを施しています。カエル野郎が捕虜の一人の戦闘服を脱がしてます!、、、、、、」

再び途切れる報告に兵頭は、微かだがひと呼吸おいてから、松沢に報告を求める。

 

「松沢!構わん!状況報告を続けろ」

 

「はい、女が全裸になって捕虜にまたがり、脱ぎ捨てた布から何か取り出してます!小さい瓶のようです。瓶を捕虜のへそに差し込みました!っひどい!捕虜が悶えてます!っクソッ!なんなんだよ!あいつらは?!ええええええええ!捕虜の局部がビンビンです!?捕虜が、、、逆レイプされてます。女が騎乗位で胸を揺らして、腰を振りまくってます、、、なんだアレは!?」

 

「松沢!状況を報告しろ!」

兵頭もこんな事態は想定していなかったので、少々興奮気味の口調で状況報告を求めてしまう。

 

「女の体が、ペイントを施した部分が激しく光りだしました!捕虜は目から流血し口からは泡を出してます。瀕死の状態と思われます!先ほどの小瓶に何らかの薬物が含まれていたものと思われます。女のイカれた表情からも女自身も何らかの薬物をキメてる感じがします」

 

 

「松沢しばらく偵察をそのまま続けろ。状況に変化があり次第落ち着いて、報告してくれ。」

 

「、、、松沢了解、偵察を続行します」

 

 

報告を一旦止めさせ兵頭は、自身の知識、戦闘経験と照らし合わせて考える。

 

(連中は、、、なんなんだ!?ブッ飛び具合から半島や大陸の奴隷王朝の信者の可能性もあり得るが、あのカエル野郎の骨格は、人間みたいな感じだが頭部がまさにカエルそのものだ。仕留めた死体、、、死骸を確認したら生臭い事この上ないし、指と指の間に水かきが生えてたし、

チOコも人間のモノにそっくりな小物がついてたなありゃ雄だな。しかし、あのカエル男はキメラなのか?

 

([キメラ]遺伝子操作で人の遺伝子に動物ないし植物の遺伝子を加え生み出された生物の略称)

 

遺伝子操作だけである程度統制が可能で、集団戦闘を行え頭部以外の部位は、小銃弾を余裕で防ぐ強靭な生物を作れるのか?しかし、散弾の類に著しく弱いとか間抜けすぎじゃねーか?それとも開発時から散弾の類からの攻撃は想定してないのだろうか?あるいは防御システム上無理だったのだろう。

 

一体どこの国があんな生体タイプの生物兵器を開発してたんだ。西洋風の鎧兜を身につけた巨体連中に、発光する謎のツインテールの痴女か、まるで異世界に迷い込んだみたいな気分だ。)

 

兵頭は、散弾銃を構えながら先程からチラホラこちらに向かっていたカエル野郎の敵影が確認できないのを暗視装置越しに確認する。

 

彼が暗視装置越しに自身が散弾銃を撃ちまくってたHV(ハイブリッド)車残骸の反対側に伸びている所々、荒れ果て雑草の生えたアスファルトの坂道を眺めると、、、灰色のカエル男の死骸が皮肉にもかつてこの住宅街の住民が使用していたゴミ捨て場付近にゴミ袋のように、山積みになっているのだった。

 

大漁だなと自嘲気味に兵頭は感じつつもインカムで呼びかける。

 

「安田、装備を散弾銃に持ち代え俺と警戒を交代してくれ」

 

ガレージの中から姿勢を低くし小走りで走ってくる人影が一人、彼が安田だ。手には サイガ12K カラシニコフをベースとしたロシア製の散弾銃が握られている。

 

「兵頭隊長、交代です。」

 

「ああ、頼むぜ。」

 

兵頭は安田と軽く会話を済ますと、姿勢を低くし小走りで、ガレージの中に移動し一番奥の壁にもたれかかる。彼はタクティカルベストのポーチからゼリー系飲料が入ったシルバー色のパックを取り出し、キャップを素早くひねり、マスカット味の中身を飲み干し一言つぶやく。

 

「一体俺達は、何と戦っているんだ」

 

飲みつくしたゼリー系飲料のパックとキャップをガレージの床に投げ捨てると、彼は撃ち尽くした空のドラムマガジンを散弾銃から取り外し、彼の隣には6個ほど、自動車のバッテリー程の大きさの箱が置かれている。彼はその内の一つを手にすると蓋を開く。

 

中には先程まで、彼が大量に路面にばら撒いていたのと同じ真っ赤な未使用のショットシェルがビッシリ綺麗に入れられている。

 

未使用の弾薬を入れているケースの一つのようだ。

 

彼は一つショットシェルを右手でつまむと、空のドラムマガジンを左手で支えマガジンに一発ずつ装填していく。

 

ガレージには装填音が規則正しく静かに鳴り響く。

 

          虫の鳴き声のように

 

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 11月04日 08時00分

最終更新日

2014年 02月22日 19時46分

 

第九話 超信地旋回そして業務連絡

 

(まだ基地につかねーかな基地に戻ったら、、、部屋の冷蔵庫にろくな買い置きしてねーからな帰りに基地のコンビニで、つまみでも買ってん?)

 

体に妙な加速を感じた俺は、けたたましい警報と可愛い叫び声で意識を無理やり現実に引き戻され眼(まなこ)を開く。

 

「あわわわ!なぁな!義明先輩起きましたか?いきなり警報なりだして車体が変な感じに揺れたんですけど」

 

 

後輩の千代子は腰付近をシートベルトで固定してシートに座り、揺れと警報に驚き手足をばたつかせて混乱してるようだ。

その姿はとても滑稽で、ちなみに胸の谷間が揺れてるのが俺の角度からモロ見えで、つい揺れに感謝してしまう。

 

「この揺れ方だと超信地旋回して現場に引き返してんじゃないか?」

 

 

俺と千代子の向かい側のシートに腰掛けてる同僚の通称 マ☆オがさりげなくつぶやく。

今更現場に引き返すなんて(あっ!)

 

「アッー!俺の有給休暇どうなるんだあああ!」

 

 

俺は反射的に心の中で急速に湧き出した不安と疑問が入り混じった言葉を吹き出してしまう。

俺のすぐ隣の千代子はピタリと手足のバタツキを止め、マ☆オは残念そうにこちらを見て一言

 

「ヨ☆シー、やらないか?(残業をしていきませんか的な意味で)」

 

直後に隣の千代子が

 

「キャー!キタ━!」と謎の雄叫びを上げる。

 

車内スピーカーに妖精猫隊長のアナウンスが流れる。

 

「先ほど直々に我が社の社長から、通信がきたんだな。ボカロ様で読み上げるんだな」

 

車内に大戦前から存在してる某ネギ系ボカロのよく調教された美しい音声が流れ出す。

 

「背景、義明ちゃん~九州での勤務には、もう慣れましたか~?最近は中部州もすっかりゲリラが狩りつくされた感があり、寂しくありましたがなんと、元グリードの対人戦幹部の刈谷(かりや)くんが頑張って探してくれました。現在、西三河地域、矢作川沿いの某スラム街に追い込んで派手に市街戦の最中です。

なお、今回の騒動で投入された州警察の機動隊や特殊部隊の6割弱が、ゲリラさんに殺されたり捕虜にされたみたいで、忙しくなりそうなので~義明ちゃんを引き戻そうかと考えたのですが、

なんと刈谷くんが州警察に誤解されて射殺されかける事案が多発したり、及び返り討ちにする事案もほぼ同数あり、ほとぼりが冷めるまで刈谷くんを、そちらに近日中に転属させる事にしました。

 

ホント不逮捕特権ないとやってらんないね。

 

でも現行犯で射殺はセーフらしいし気をつけてね。刈谷くんみたいに返り討ちもオッケー!みたいだからガンバレ。しかしうちの社員を射殺しようとする暴挙は許せない。そこで今からNEETの社長さんと合同で部隊引き連れて日本政府に猛抗議してきます。義明ちゃんの有給休暇なんですが、今回の任務が終了しだい発生という事でお♡ね♡が♡い♡あなたの可愛い妹的な社長より」

 

 

ボカロの読み上げが終わり、隊長がドン引きしつつ締めの一言

 

「、、、異常な、、、以上なんだな」

 

「おい、妖精猫隊長以上を言い直さなかったか?」

 

俺はさりげなく聞いてみる。

 

「気のせいなんだな!」

 

だが妖精猫隊長は全力で否定する。よほど社長が怖いらしいとみた。

 

「先輩もしかして、いつも魔法少女のコスプレしてるアノ社長とプライベートで知り合いなんですか?」

 

事実、我が社の社長は、ほぼ毎日魔法少女のコスプレをしている事で業界内だけじゃなくネットでも有名だ。宣伝活動の一環だと本人は豪語しているが。ちなみに現在は地上波放送が廃止された関係でネットが主要なメディアだ。かつて地上波放送に使用されてた周波数はPMCが独占して業務用に利用している。

しかし普段から魔法少女な格好なんだから、もうコスプレではないかもしれない。逆にあの社長がスーツや着物を着た方がコスプレかもしれないとさえ俺は感じた。さて後輩の千代子が社長と俺の関係について恐る恐る俺に聞いてきたので俺は隠さずに答えることにする。

 

「第三次大戦の直前に知り合ってね」

 

「マジですか」

 

「話してみるとそんなに悪い奴じゃないから安心していいよ」

 

「私は入社式の時に見ただけでしたけど、美人さんですよね」

 

「顔立ちは綺麗だしね。あいつは」

 

「どこまでいってるんですか?」

 

俺は一瞬だが後輩の千代子の語気が強くなったような感じを受けた。

女性の前で別の女性の美しさを褒めるのは良くないのか。

 

「今も昔もプライベートでは友人であり、会社では信頼できる上司だよ。じゃなきゃ長い付き合いも続かないよ」

 

俺がそう締めくくると千代子が

 

「そうですか、ならマ☆オさんとやはり」

 

「それは断じてない!俺は普通だ!」

 

俺は素早く否定させていただく。全くここまで後輩が腐ってるとは、と半ば呆れてると反対側のシートに座るマ☆オが右手の人差し指を咥えながら一言

 

「そんなに否定しなくてもいいだろ~ヨ☆シー~」

 

「マ☆オてめぇ!火に油注いんでじゃねー!」

 

「今はノンケってことでとりあえず納得しときます」

 

もはや後輩の脳内のベクトルは、完全に腐の方面に向いてるようだ。

よほどの奇跡でも起きないと変わることはないだろうと俺は感じつつ

少々、語気を荒げつつ否定する。

 

「今はってどういうことかな?千代子ちゃん!」

 

口喧嘩にならないようにタイミングよく妖精猫隊長のアナウンスが流れる。

 

「みんな、よく聞くんだな。NEETの智也くんのことは千代子ちゃん以外は知ってるよね?」

 

俺とマリオは頷く。

 

「NEETの智也?」

 

一人だけ彼のことを知らない千代子がキョトンとした表情でつぶやき、妖精猫隊長のアナウンスが続く。

 

「今現在、彼らのいるポイントに急行中なんだな。NEETの皆さん以外に州軍の残存兵とPMC[壁外調査隊]の残存兵が合流して、カルト王朝の信者と思しき一団と交戦中で支援要請が入ったから仕方ないんだな」

 

「隊長、カルト王朝の信者と思しき一団ですか、根拠は?」

 

俺は曖昧な敵の情報について補足説明を求める。

 

「どうも、見た目が変態さんみたいなんだな。異常な防弾性能をした灰色のカエルみたいな被りものした全身灰色で、男性器丸出しの一団を神輿に担がれた、ツインテールの痴女と西洋の鎧兜風のかっこした巨体の輩が剣やハルバートで武装し、率いてるとの報告なんだな。因みに銃火器の武装は確認されてないけど、緑色に発光する。矢状の投射タイプの爆発物を多数所持とのことでピンチみたいなんだな。後10分位で現場に着くから戦闘準備よろしくなんだな」

 

 

「キャー男性器丸出し軍団キタ━!」

 

俺とマ☆オがあまりの斜め上な報告に唖然としてる車内には、腐り具合の加速した後輩の雄叫びが響くのだった。

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 11月09日 22時52分

最終更新日

2014年 07月15日 11時19分

 

 

 

------------------------- 第5部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第十話 激突 異形の力と人の英知(まとめ)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):20538字

文字数(空白・改行含まない):19592字

行数:836

400字詰め原稿用紙:約49枚

 

【本文】

第十話 激突 異形の力と人の英知 [前編]

 

 

第三次世界大戦後の日本では、国防から治安維持の多くをPMC[民間軍事会社]に委託し国家の独立を維持し復興を進めている。

 

PMCにも様々な特徴がある。

 

軍やPMC相手の補給、兵器の整備、販売等を専門とする一般の企業とあまり変わらない会社や、軍や警察の代わりに戦闘等を専門に行う会社

 

中でも後者は、一定の訓練を受けた者ならライセンスが与えられ、個人でも開業できるので

大中小の会社から、個人単位まで形態は様々である。

 

そんな数ある戦闘等を主に生業にしてるPMCの一つに[壁外調査隊]がある。

 

規模は約150人ほどの小規模な会社であり、一個中隊程の規模に相当するだろう。彼らは九州北部国境地域分離壁外側の対武装勢力向けの偵察/威力偵察活動を主に得意としており、これまで多くの武装勢力壊滅に貢献してきた精鋭の集まりであり、軍からの信頼も厚いはずだった。

 

そんな軍からの信頼の厚い彼らは、今回の戦闘警報を聞いた際に一番に現場入りしたPMCでもある。

 

彼らはPMCとしては小規模な方であるが、軍から信頼も期待もされており、珍しいことに輸送ヘリ数機を軍から直々に供与され、有人航空機を所有し運用する数少ない機動性の高いPMCの一つだ。

 

 

 

 

そんな彼らは今まさに信じていた軍に裏切られたと感じている。

 

「連中一体なんなんですかね兵長、報告だとAPC(装甲車両)引き連れた重武装の武装勢力のはずですよね?」

 

ここは九州北部国境地域に点在する放棄された市街地の一つだ。

 

私鉄線路沿いマンション郡のとあるマンションの屋上である。そこで会話をするものが2人

 

「知るか、それよりも衛星通信が意図的に閉じられているのが腹立たしいんだが」

 

2人とも屋上の床に伏せ、頭からつま先まで毛布を被り一台の小型ノートPCの画面を2人で覗き込んでいる。

 

画面には白黒の赤外線画像で、駅前のロータリーのような場所で蠢く異様に頭部の大きな大量の人影のような者とその人影が取り囲むように、ぽっかりできている中心部の空間では、ロングのツインテールをした、まだ顔に幼さの残る全裸の女性が床に仰向けに倒れ、手足を白い餅のようなもので固定され、全裸にされた成人男性の上に、女が馬乗りになり胸を全身を激しく揺らし、腰を振りながら奇妙な笑みを浮かべ喘ぎ。顔や腹部に施されたペイントが、発光してるのが映し出されてる最中である。

 

因みに仰向けに倒れてる男性は目から流血し口からは泡を吹き瀕死の状態に見えるだろう。

 

「松沢のやつにはショックすぎたか、入隊時の映像座学で吐いてたくらいだもんな奴は、捕虜の拷問なんて昔はよく見かけたものなんだが、こんなのは俺も初めてで正直驚いてる」

 

「今日はよくしゃべりますね兵長」

 

「元々俺はよく喋る方だ。ところで、松沢は休ましてるのか?」

 

「はい、すぐ下の階の階段前の制圧済みの部屋で休ましてます」

 

「少し松沢の様子を見てくる。藤沢暫く貴様が敵の偵察を続けろ、変化があればすぐインカムを使え。兵頭小隊長への状況報告も忘れるなよ」

 

「了解しました。兵長」

 

兵長である彼は藤沢との会話をやめ、彼が一人毛布から静かに、抜け出し立ち上がる。夜空に身を晒した彼の体を冷たい風が吹き抜け微かに彼は身を震わせる。

 

「やはり屋上は冷えるな」

 

兵長である彼もやはり兵頭達と同じ市街戦迷彩の戦闘服に身を包み、上半身にはタクティカルベストを着用し肘膝にはプロテクターを付け足は市街戦用のタクティカルブーツを履いている。

 

腹部を守るように設置された弾倉入れには大量の小銃用30連マガジンが入っている。兵長は毛布のすぐ横に置いていた自分の自動小銃を手に取る。

 

軍やPMCで多く使用されている自動小銃M468だ。兵長は小銃のスリングを自身のベストに固定しカチッと装着音を屋上に一つ鳴り響かせる。彼は屋上入口の扉へと歩き、階段を下り目的の部屋へと移動する。

 

目的の部屋は階段のすぐ目の前だ。扉は無残にも乱暴に外され、脇に放置されている。彼は部屋に土足で踏み入る、どうせ今は無人の廃墟なのだからとお構いなしである。

 

見渡す限り部屋は3LDKくらいの広さだろうか、床のフローリングにはかつての持ち主の様々な生活用品が散らかり、朽ち果てるのを待ってるだけだ。そんな朽ち果てつつある生活用品の残骸の中に一際大きな存在感を放つものが、三つある。

 

壁には50型位の液晶テレビが壁掛けされ、白いリビングテーブルと白いソファーが綺麗に間隔を並べて鎮座している。

 

ソファーには一人肩を落とし、座っている青年がいる。彼も兵長たちと同じ市街戦迷彩の戦闘服に身を包み、ほぼ同様の装備を身につけている。ソファーの脇には彼の銃が置かれている。

 

リビングテーブルの上には彼のヘルメットが置かれている。

 

青年はソファーに身を任せ背をもたれかける。

朽ちかけたカーテンの隙間から、青白い月明かりと星明りが差込彼の顔を映し出す。

 

泣いていたのだろうか、瞳は涙で潤み、目元がほんのり赤く染まり、頬を涙が伝った跡が残っている。

髪は少々癖毛気味だがツヤのある綺麗な漆黒でショートカットの女の子みたいな感じだ。

顔立ちも見るとヒゲは綺麗に切り揃えられており、小顔で目鼻立ちもよくまだ幼さの残った

美しい顔が顕になる。

 

兵長である彼は一瞬青年の美貌に見とれそうになったが声をかける。

 

「松沢、落ち着いたか?」

 

松沢は兵長に声をかけられると、少し慌てた感じだったが返事を返す。

 

 

「兵長すいません。現場で取り乱したりして」

 

「お前は実戦を経験して一年も経過してない新人だ。自分の置かれている状況をまず把握しろ。お前は今どこにいる?」

 

しばし沈黙が流れ、松沢は己の内から振り渋るように言葉を放つ。

「戦場です。兵長」

 

「そうだ、戦場だ。お前はなぜ泣いた?答えろ」

 

兵長である彼はあえて厳しく問い詰めるように松沢に問いかける。

松沢は瞳を潤ませながら先ほどより、しばし長い沈黙を置き涙を流しながら答える。

 

「自分は捕虜が拷問を受けてるのに、モニター越しに見て無線で報告するしかできませんでした!それが悔しくて取り乱しました!」

 

「それだけか、松沢、答えろ」

 

先ほどより長い沈黙が松沢の泣きじゃくる鼻声と共に過ぎ、松沢は再び泣きながら答える。

 

「自分は怖くなりました!自分も捕虜のように拷問されて殺されるんじゃないかと、うっっうああああああああああああ!」

 

兵長はマズイなと感じる。

 

 

(こいつ、PTSD[心的外傷後ストレス障害]の兆候が出始めてやがる。)

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 11月11日 15時45分

最終更新日

2013年 12月15日 06時00分

 

第十一話 激突 異形の力と人の英知 [中編]

本文編集

青白い月明かりと星明りが差し込む廃墟の一室で佇む男が一人

 

佇む男の視線の先にはリビングが広がる。

 

リビングにはかつての居住者の生活用品が水面に漂う漂流物のように散乱し、時の流れに任せ朽ち果てるのをただ待つだけだ。

 

そんな朽ち果てつつある物の中で島のような存在感を放つ物がある。

 

白いソファーである。

 

白いソファーには市街戦迷彩の戦闘服に身を包み、上半身にはタクティカルベストを着ている青年が腰をかけている。先程まで彼は泣き叫んでいた、、、佇む男もほぼ同様の格好をしている。男は青年が泣き止むまでバレットM468自動小銃を握りその様子を見守っていた。

 

青年を護衛するかの如く。

 

「松沢、お前は生き残りたいか?答えろ」

 

佇む男はそう白いソファーに腰掛ける青年に向け鋭く問いかける。鋭いのは男の言葉だけではない。

彼の目元も視線も気配も鋭いのだ、まるで獲物を捉えた猛禽類の如く。

 

「生き残りたいです兵長、、、!?なにをっうおっ!」

 

兵長と呼ばれた彼は、突如松沢に向かい銃口を向け駆け出す。

その行為に驚いた松沢は反射的にソファーの右脇に置いている自分の銃を取ろうとするが間に合わない。

 

「かはっ!」

 

松沢はタクティカルベストの上から兵長に思いっきり右足で押さえつけるように踏まれ

一瞬、息苦しく身悶える。リビングには兵長が駆け、松沢を蹴り抑えた衝撃で埃が舞い青白い月明かりと星明りが、埃の乱舞を照らし男達の鋭い殺気と殺気に抗うやり取りも照らし出す。

 

松沢の眉間に冷たい銃口が静かに触れる。

 

「松沢、お前は何を手に取ろうとした?答えろ!」

 

兵長は銃口を微かに力強く松沢の眉間に押さえつけながら、語気を荒げて松沢に問いかける。松沢は静かにゆっくり呼吸を整え答える。

 

「銃です、、、兵長と同じバレットM468小銃を」

 

「何故武器を取ろうとした?答えろ!松沢!」

 

「兵長に殺されると思ったからです、、、」

 

「俺にあって、お前にないものが何かわかるか?松沢?」

 

松沢は数秒の間を置いて静かに口を開く。

 

「経験ですか、、、」

 

兵長は松沢を右足でソファーに押さえつけ銃口を眉間に更に強く押さえつけ、鋭い視線で松沢を睨みつけながら口を開く。

 

「それだけじゃない」

 

 

兵長は一瞬脚を松沢の胸から外しソファーから落ない程度に、再び胸を蹴り、足を踏み込み再び彼の眉間に銃口を押し付ける。松沢は兵長を怒りの表情で睨みつける。

 

「松沢、、、その気持ちを忘れるな、、、敵を殺すは怒なり、今のお前に足りないのは怒りだ。」

 

兵長は古代中国の兵法家孫子の兵法の一節を交え松沢に静かに語りかけ、松沢を押さえつけてた右足を離し眉間に押し付けてた銃口も静かに離す。

 

「怒り、、、」

 

松沢は何に気づいたのか一言そう呟く。

松沢の顔からは怒りが消え、徐々に冷静さを取り戻しつつあるようだ。

 

松沢は徐々に瞳を潤ませ涙を流しながら兵長に感謝の言葉を述べる。

 

「兵長、、、ありがとうございます」

 

 

「部下のメンタル管理も上司の勤めだ。礼を言われることではない」

 

迷いと不安の消えた松沢は感極まり泣き続けてる。

 

同時に兵長である彼も、部下が少々粗めのショック療法で立ち直しつつあることに安堵し、部下をみて暖かい笑みを微かに浮かべる。そんな彼にインカムで通信が入る。

 

「兵長、敵の状況を報告します」

 

屋上で警戒している藤沢からの通信だ。

 

「了解した。兵頭小隊長には報告済みか?」

 

「はい、その通りです。状況報告を続けます。敵の指揮官と思しき発光する痴女は、現在3人目の捕虜を1人目と同様の手順で逆レイプしてる最中です。2人目も1人目同様に、目から流血し口からは泡を出してます。ひとりあたり今のところ、約15分弱かけて逆レイプしてます。もう間もなく3人目が終了する頃合です」

 

兵長である彼は状況報告を聞き考える。

(一人あたり約15分だと10人で150分弱かかる計算か、連中は何がしたいんだ?)

 

「他に目立った変化はないか?」

 

「兵長たった今変化がありました。3人目が終了し、駅舎の入口付近のカエル男達が神輿に向けて道を作るように幅を開けてます。駅舎から何かが出てきます、、、どうやらブタの頭部の様な被り物を被ってます。カエル男同様仕留めないと人間が変装してるのか否かの判断は無理です。一応以後同対象をブタ男と呼称します」

 

新手の登場かと兵長は感じると同時に、何かが自分の思考で引っかかる感じがするのを覚える。

だが兵長への報告は続く。

 

「ブタ男は上半身に鎧の様な物を装備してます。武装は確認できません。数は10体です。身長は周囲の西洋風の鎧兜を装備した巨体より頭一つ分低い位ですので約170cm弱くらい、2列に分かれ綺麗に隊列組んで痴女の前に移動してます。痴女はカエル男の一体に背中を支えられ左手で自慰をしてます。こいつら頭の中ブッ飛びすぎですよWWW」

 

「藤沢、報告を続けろ」

 

兵長である彼はもはや痴女の奇行に驚くこともなく、藤沢の報告を聞くが、更に自身の思考に強い引っ掛かりを感じ考える。

 

(自分は何か見落としていないか、、、カエル男、鎧を着たブタ男、綺麗に隊列した動き、痴女)

 

「了解、報告を続けます。先頭のブタ男が痴女の前に2体進み、、、授乳中のようです」

 

兵長は一応聞きなおす。

 

「授乳中とはつまり、痴女が乳房を吸わせているのか?」

 

「はい、その通りです。えー変顔で痴女は喘ぎまくってます。よほど嬉しいんでしょうかね(笑)今気づきましたが、痴女の乳房が逆レイプ開始以前より大きくなってるのが確認できます。あー俺もしゃぶりつきてーWWW」

 

「藤沢引き続きお前は監視を続けつつ、連中の授乳タイムとブタ男の数を記録し報告しろ。俺は残りのメンバーを集め、隣の部屋で我が班の作戦ブリーフィングを開始する。お前もインカム越しに内容は聞いておけいいな」

 

「作戦ですか?藤沢了解しました」

 

兵長である彼は気づいたのだ。自身の思考に引っかかってた何かの正体に彼は気づいたのだ。

 

「松沢、準備はできたか?隣の部屋で作戦のブリーフィングをはじめるぞ」

 

松沢は既に完全武装の状態で白いソファーの脇に小銃を持ち立っている。

覚悟を決めた凛々しい彼の顔つきを見た兵長は、彼がもう取り乱すことはないだろうと素直に感じる。

 

「作戦とは一体何をするんですか?兵長」

 

兵長は数秒の間を空け口を開く。

 

「俺たちの力を必要としている人間が恐らく、駅舎内に約30人程捉えられている可能性がある」

 

「それは捕虜のことでしょうか?」

 

 

兵長は先ほどより間を置いて口を開く。

 

 

 

 

 

 

「違う、非武装の一般人だ。彼らの救出作戦の為のブリーフィングだ。松沢お前は戦えるか?」

 

「もう大丈夫です。早くブリーフィングを始めましょう」

 

「ああ、そうだな」

 

 

 

全身を戦闘のために工夫された人類の英知で身を包んだ二人は、手に同じく人類の英知の証の一つである自動小銃を握りしめ、戦闘意欲を取り戻した松沢と共に兵長は埃を部屋に巻き上げ、隣の部屋へと歩き出した。 

 

 

 

 

 

 

己の意思に兵法という名の人類の英知を忍ばせて。

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 11月17日 03時05分

最終更新日

2013年 12月08日 04時41分

 

第十二話 激突 異形の力と人の英知 [後編Ⅰ]

本文編集

「それではブリーフィングをはじめる」

 

「「「了解!」」」

 

兵長の言葉に返事を返す複数の男たちの声が、ダイニングキッチンに鳴り響く。先程まで、兵長と松沢がいたすぐ隣の部屋でブリーフィングは、始まった。ダイニングキッチンとリビングの間には、外部に対して遮光するためにカーテンが強引に付けられている。床の中央にはランタン型のLED照明が足元を照らすように光っている。彼らはダイニングキッチン側でブリーフィングを開始するようだ。

 

「全員レーションでも食いながら、俺の話を聞け作戦開始の時間は、今から遅くとも1時間後とする」

 

話しているのは兵長だ。この場にいる他のメンバーは兵長と松沢以外に2人いる。彼らもまた兵長達と同様の装備のようだが、装備してる銃は微妙に違うことが照明で顕になる影から微かにうかがい知れる。その脇に立ち尽くす二人の男がいる。兵長と松沢より明らかに大柄でしっかりした体つきである。筋肉マッチョの仁王像の様な男が二人ほど並んで、カロリーバーをぱくつきながら廊下付近の壁にもたれかかっている。

 

食事中であるにも関わらず、彼らからは鋭く鍛え上げらた殺気が感じられる。その感じはまるで、日本刀などの武具を見たときに人が直感的に感じる処に近いものであろう。洗練された武具が放つ独特の雰囲気を放つ2人の仁王像の様な男達

 

その二人以上に鋭い殺気を先程まで、隣の部屋で混乱した部下に放っていた男は、キッチン奥の壁の前に立っている。彼は自身の左手首に装着されたタッチパネル式の端末を操作し、その動きに合わせるかの如く床の中央に置かれたランタンから映像が、彼のすぐ横の壁に映し出される。ランタンは投影型プロジェクターの機能も備えてるようだ。どうやら新聞の事件記事のような文面が表示される。

 

「貴様らは、一週間前に起きた[戦災孤児児童福祉施設]襲撃事件を知っているか?」

 

先の大戦で直接の軍事的攻撃を免れた日本は、武装難民等の国内流入を防げずに、親を殺された子供や強姦被害による混血児等を大量に誕生させていた。自国民の約四分の一が死亡したりしたのだから当然の結果なのだろうが。戦災孤児とはそういった児童の総称である。

 

仁王像の様な二人は、今ゼリー系飲料を飲み始めたところだ。彼らは軽く頷き食事を続ける。彼の反対側のシンクには先程まで泣いていた松沢がパックに入ったスポーツ飲料を飲みながらもたれかかっている。彼も軽く頷き食事を続ける。

 

「事件の詳細は、諸君が知っての通り、北から越境してきた奴隷王朝の信者と思しき、ボロ布を纏い刃物で武装した不審者約数十名が、山沿いに存在する同施設を白昼堂々襲撃し同施設で保護されてる児童約百名と施設職員全員が殺害されるといった、年中通してよくある低レベルゲリラ戦の類だ」

 

この時代の日本では、この手のゲリラ戦はごく普通に発生しており、基本的に文民警察はゲリラ戦などの通報を受けたあとは、捜査等をPMC[民間軍事会社]に委託するのがごく一般的な流れである。

 

「本来なら警察は、ゲリラ戦等の通報を受けた後直ぐに我々PMCに捜査を委託するのが流れなんだが、何故か州警察本部の連中が現場を封鎖して捜査を始めやがった。我々PMCにこの事件自体は、直接関係ない。関係があるのは、こちらだ画面を見ろ」

 

プロジェクターの投影してる画面が切り替わり学校のような建物と高校生くらいの女子生徒の映像が映し出される。どこかの学校の資料のようだ。

 

「児童達が殺害される直前まで同施設には、近隣の全寮制のお嬢様学校の一行が水泳授業のボランティアで滞在しており、施設の襲撃とほぼ同時刻に、この女生徒一行が同施設の住宅街付近を徒歩で学校に戻るところを周辺住民が目撃し街頭の防犯カメラも捉えていた。問題はこの一行が未だに学校に戻っていないことだ。彼女たちの捜索依頼が非公式に各PMCに依頼された。我社もその内の一つだ。この情報を貴様らに話すのは初めてだ。何故かわかるか?」

 

仁王像の様な二人は左手の親指と人差し指を合わせて丸を作り手首を前後に軽く振る。[お金でしょ]という仕草を兵長に見せる。兵長は軽く頷き会話を続ける。

 

「その通りだ。鬼沢(おにざわ)と龍澤(たつざわ)、守秘義務上末端の隊員には作戦決行の寸前まで話せない、依頼が依頼内容だしな。かなりの金額が動いてるのも理由だ」

 

仁王像の様な二人の名は鬼沢と龍澤らしい。そこで松沢が軽く挙手し口を開く。

 

「兵長、何故、自分たちに話すのですか?それと駅舎に彼女たちが捉えられてる根拠は何なんでしょうか?」

 

「それを今から説明してやる。なぜ話したかについてだが、依頼達成を我々が今、実現できるだけの状況下に有り、能力を有してること、それと一番重要な根拠だが、施設襲撃事件の時一人だけ生存しており、病院に緊急搬送された施設職員がいた。また職員が死ぬ間際に口にした証言を医療関係者から我が社の捜査部門が先日入手しており、その証言の内容によると、ボロ布の下に鎧を着たブタの被り物した連中にメッタ斬りにされ、襲撃者が子供や職員を殺しながらしきりに、カタコトの日本語で、オンナドコと叫んでいたそうだ。もう分かるよな?今駅前で授乳中のブタ男共がまさにそれじゃないか」

 

兵長は少しニヤッと笑う。まさかこんなところで、馬鹿でかい金額が動く仕事に進展があるとは考えてなかったからだろう。鬼沢と龍澤も口笛を吹き驚く。

 

「情報を整理すると、施設を襲撃した連中の本来の目的は、女子生徒の拉致だった事は明らかだ。子供や職員を殺したのは姿を見られたことを封じる為の口封じ、もしくは威嚇の一環と考えられる。因みに女子生徒一行が拉致されたと思われるカメラの死角付近の現場には血痕等もなく、職員の最後の証言等からも女子生徒達が生存してる可能性がある」

 

松沢がシンク台に拳を思い切り叩きつけ、轟音がダイニグキッチンに鳴り響く。

 

「この国で好き勝手にやりやがって皆殺しにしてやる!」

 

「松沢落ち着け。我々の本来のミッションはなんだ?答えろ」

 

「敵兵力にたいする威力偵察を含む偵察活動であり、情報を持ち帰ることです」

 

「それだけか?」

 

松沢は暫し沈黙し口を開く。

 

「いえ、誘拐されたと思われる女子生徒一行の搜索と救出が先程追加されました」

 

「戦場では常に状況がめまぐるしく変化し、作戦目標を追加されることもありえる。周囲の状況確認を常にすることを忘れるな。今のお前は殺意を剥き出しにした危ないだけの、鞘のない刀と同じだ。周りの仲間にも危険だ。松沢、己の理性を鞘にしろ!敵を殺す時だけ理性から怒りという名の刃を抜け!」

 

乾いた砂が水を吸うかのごとく、兵長の言葉を理解した松沢は素早く返事を返す。

 

「兵長!ご教示ありがとうございます!」

 

兵長は松沢を見て思う。

こいつ一皮むけ向けたなと、同時にこれからが伸び盛りで今後が楽しみだなと。

兵長は左手を開いて軽く突き出し口を開く。

 

「貴様らは食事を続けろ。それとインカムを起動し会話を聞いておけ。藤沢、連中の動きはどうだ?」

 

「こちら藤沢、現在発光する痴女は、逆レイプを再開、捕虜はお決まりの症状で瀕死です。ってか乳が明らかに出すぎですよあの痴女(笑)なお、連中の授乳タイムは一回あたり同時に二人で約5分です。このパターンが繰り返されますと、捕虜が一人余りますがワンサイクル70分ほどです」

 

「藤沢、駅舎内の索敵はどうなってる?報告しろ」

 

藤沢は少し沈黙し静かに報告を再開する。

 

「、、、先に兵藤さんには報告したんですが、マジギレしてましたよ。音声だけセンサーでかろうじて、拾えたので聴きますか?」

 

「構わん音声を流せ」

 

兵長の指示で録音した音声が少々雑音混ざりだが、ノイズを可能な限りカットした音声がインカムに流れ出す。女性の叫び声や泣き声、喘ぎ声が絶え間なく聞こえる。

 

豚の様な鳴き声と、日本語以外の言語やゲスな笑い声も時折聞こえる。片言の日本語で悲鳴と喘ぎ声等を出してるであろう、女性たちを罵る図太く低い声、この音声を聞いた鬼沢、龍澤、松沢の三名は、ほぼ同時に同じ感情に満ちた言葉を叫ぶ。

 

 

 

「「「殺す!」」」

 

 

 

薄暗いダイニングキッチンは一瞬にして戦闘のために鍛え上げられた、男3人分の凄まじい殺気で満ちる。

 

だが兵長は、いつも以上に冷静な口調で藤沢に引き続き連中の監視を命ずると、静かに口を開く。

 

「お前ら、飯は済ませたか」

 

3人とも静かに頷く。だが兵長の言葉は、先ほどより凄みと鋭さを増している。ただ、食事の有無を確認しただけなのにだ。

 

「全員、装備のチェックを速やかにやれ、連中がなんであろうと奴らから、女子生徒一行と捕虜を救出するぞ。ブタ男共がレイプに夢中な今が好機だ、、、おい藤沢、兵藤小隊長に伝えろ、LZ(ランディグゾーン)の死守を頼むと」

 

「兵長、もうすでに兵藤さんは、LZのある公園のグラウンドに後退してます。それと持ち込んだ、例の兵装の全弾を使用していいとのことです。連中を可能な限り念入りに駆逐しろとの命令です。自分は対物ライフルで援護狙撃可能なビルに移動します!」

 

藤沢の言葉はインカム越しだが、その言葉を聴く者には、彼の士気の高さがうかがい知れる事だろう。

 

「了解した。移動したら合図まで待機しろ、決して先走るなよ」

 

「藤沢、了解しました!」

 

兵長は、自身のタクティカルベストのポーチから、パイナップル味のゼリー系飲料のパックを取り出し、キャップをひねり、中身を絞り尽くす勢いで飲み干し、手にしてるキャプとパックを床に投げ捨てる。

 

自分の部下の装備のチェックが終わり、戦闘態勢に移行可能な状態を確認すると口を開く。

 

「貴様ら予定より早いが、作戦開始だ」

 

兵長は、そう一言鋭く言葉を発すると、ランタンの照明を消し自身のポーチに収納する。彼らは完全武装で駅舎に向け移動を開始する。

だが、彼ら4人の殺気は消えることなく、理性という名の鞘の中で鋭さを増しつつ、解き放たれのを待つだけだ。

 

            抜刀前の刀の如く

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 11月23日 22時27分

最終更新日

2013年 12月23日 04時09分

 

第十三話 激突 異形の力と人の英知 [後編Ⅱ]

本文編集

兵長と松沢、鬼沢、龍澤の四名は、暗視ゴーグルを目元に装着し、銃を構えながら、線路沿いの道路を小走りで進んでいる。時折、廃車や、ビルの影に身を隠しながら、確実に四人は敵へと近づいていく。

 

先頭を進む兵長と、その後ろの松沢の手には、バレットM468自動小銃が握られている。彼らはホロサイト越しの視線と銃口の先を一致させ、銃を構えながら、慎重に進行先の安全を確認しながら移動している。

 

「松沢、お前にひとつだけ言っておく、全員救えると思うなよ」

 

インカムで兵長に話しかけられた松沢は、銃を構え進みながらインカムで返事を返す。

 

「捕虜を全員助けれないのは、軍が衛星通信を閉ざしてるのが、一因だと自分は理解してますが、、、女子生徒達は、拉致された非武装の民間人ですから、できれば全員助けたいです」

 

兵長は自身の予想より、冷静な松沢の言葉に微かに安堵し口を開く。

 

「願わくば、全員助けたいな。だが、何を見ても現場では、動じるな殺されるぞ」

 

兵長は、語気を強めて言葉を返すが、松沢は返事を返さないようだ。直後、三人に左手を上げて止まるよう合図を出す。

その仕草に合わせるように、三人はビルの壁際に寄り腰を落とし、兵長も姿勢を低くして指示を出す。

 

「前方約50m先に例のブタ男を3体確認、鬼沢3体とも狙撃しろ」

兵長は歩哨と思しきブタ男の射殺を命じる。

「了解、射殺します」

 

低い男らしい声がインカム越しに鳴り響くと直後、おもちゃのガスガンより微かに大きい程度の音が三回静かに発せられるが、ビルの谷間に鳴り響くことがないほど静かで、小さな銃声だ。

 

「敵の射殺完了です」

 

彼は兵長への報告を終える。

彼の手に握られてる銃の銃身は、全身がマグライトのように太い。

その特徴的なシルエットをした銃は、一見するとコンパクトカービンにも見えることだろう。

 

鬼沢の手にはVSS 静音仕様のスナイパーライフルが握られている。

専用の大口径亜音速弾を使用するこの銃は、旧ソ連がまさにこのような短距離で、静かに敵兵を殺すために開発した特殊火器である。

 

「全員前進するぞ」

 

兵長は前進の指示を出し、銃を構えながら全員前進を続け、先ほど仕留めた歩哨と思しきブタ男の傍らに到達する。3体ともヘッドショットで頭部を撃ち抜かれ、路上に倒れてる。ブタ男たちは銀色の鎧を身に付け足は素足だ。腰には、鞘付きの剣が携えられている。死骸を松沢と龍澤が調べる。

 

「松沢、剣を抜いてみろ、俺が撮影しておく」

 

低いどっしりした男の声が松沢に指示を出し、自身の暗視装置の録画機能を起動させる。

 

「了解、龍澤さん、んっ結構重いですよコレ、10kg以上はありそうですね」

 

シャーン

 

鞘から剣が抜かれ、鞘と刃の間で生じる微かな金属質の摩擦音が鳴り響く。夜空の下に銀色の刃が顕になる。刃の側面には、何やら文字のようなものが回路状に刻まれている。

 

「この模様、、、あの痴女のペイントに似てるな」

口を開いたのは兵長だ。

 

「確かに似てますね。兵長このブタ男達は人間が変装してる可能性はないと思います。変装ならどこかに継ぎ目があるはずですが、継ぎ目が見当たりません」

 

ブタ男を調べてた松沢が報告をする。

 

「やはり、カエル男と同じく、キメラってことか?松沢、サンプルを取っておくぞ、銃創付近の体組織を採取しておけ」

 

龍澤に指示され松沢が、死亡兵の身元確認に使用する採取キットを使い、3体分のブタ男の体組織を採取し終える。3体分の死骸を付近の物陰に簡単に隠すと、前進を続け、駅近くのコンビニ跡地に到達する。かつて多くの客に利用されたであろう店内には、トラックが突っ込み、何年も前に炎上したのだろうか、燃え跡を隠すかのように雑草のツタが店の跡を覆っている。

 

「全員、前方のコンビニの影で一旦休むぞ、藤沢、応答しろ」

 

兵長他3人は、コンビ二の店舗の焼け残った白いタイルの壁際に移動し腰を落とす。

 

「兵長、こちら藤沢です。鬼沢さんは、相変わらず手際がいい事で、惚れちゃいそうですよ」

 

「だそうだ、鬼沢どうする?」

 

「藤沢のケツ掘っても、楽しくなさそうだから遠慮しとくぜ」

 

「えっ兵長!?インカムに無線繋いでるんですか!っとおい、松沢気をつけろよ」

 

不安そうな松沢の視線が、兵長と鬼沢に向けられる。

 

「大丈夫だ。藤沢のバカの冗談に鬼沢が合わせただけだ」

 

兵長は少し微笑を浮かべながら話しかける。松沢は安堵の表情を浮かべる。

 

「藤沢は、相変わらず冗談好きで、エロいところが入隊の頃から変わらんな」

 

鬼沢も同じく微笑を浮かべて言葉を漏らす。周囲を警戒し、その一連のやり取りを見守っていた龍澤が口を開く。

 

「兵長、駅舎内に無人機を放ちますか?」

 

「そうだな。龍澤、偵察を開始しろ」

兵長は龍澤に指示を出し、龍澤は自身のベストのポーチから小型の円柱状のケースを取り出し頭上に掲げ、軽くひねるような仕草をする。直後にケースから何かが勢いよく飛び出していく。

 

超小型の飛翔型無人機だ。飛行音もほとんどせず無音に近い。

 

「全員、駅舎に向けて移動するぞ。藤沢、俺が指示をしたらロータリーにいる痴女一行をお前が例の兵装でひきつけろ」

 

兵長は先ほどと違い鋭い声で指示を出す。

 

「了解、自分は、駅舎も兵長たちも見える別のマンション屋上にて待機してます。兵長たちの進行方向約百メートル先の角で、道路がロータリーと繋がるので角から先には、まだ進まないでくださいね。兵長例の兵装を起動させていいですか?」

 

藤沢は例の兵装とやらを使用したくてたまらないようだ。

 

「構わん、無人軽戦車を起動させろ」

 

「おっしゃー!キタ━」

 

藤沢がそう叫ぶと、ロータリーの手前を通る幹線道路沿いのビル街に赤いパトライトが輝きサイレンが鳴り響く。黒い塗装の無人軽戦車が、痴女やカエル男、ブタ男達が大量に屯してる、ロータリーに向けて高速で地鳴りを響かせ、アスファルトを砕きながら接近し無人軽戦車のスピーカーを起動させる。

 

「「えー駅前に全裸でお集まりでジュネーブ条約やハーグ陸戦条約を無視

してる頭のおかしい公然猥褻な状態の人外な方々に告ぐ。降伏しろWWW」」

 

「撃て」

 

兵長がインカム越しにそう呟くと

 

「「えーたった今上司から皆様に悲しいお知らせをするように指示されましたので、お伝えします」」

 

「「死ねや!化物どもが!」」

 

藤沢の挑発に満ちたアナウンスが終わると直後に轟音が鳴り響き、ロータリー前のカエル男たちの群れに着弾し閃光と爆発を生じさせる。

カエル男達は吹きとび、その肉片がバラバラに宙を舞い、臓物や血の雨をロータリーに降らす。どうやらHEAT弾(成形炸薬弾)を撃ち込んだ様だ。

 

生き残ったカエル男達とブタ男達が、無人軽戦車に向け全力疾走を開始する。無人軽戦車は、パトライトを真っ赤に輝かせサイレンをビルの谷間に反響させながら全速で後退し、戦車砲やRWS(リモートウェポンステーション)のグレネードランチャーや機銃を撃ちまくり、砲声と銃声、爆音、時折藤沢の挑発に満ちた言葉をビルの谷間に鳴り響かせながら、次々にカエル男達やブタ男達を駆逐していく。

 

突如の奇襲に怒り狂った発光する痴女は逆レイプを中止し、無人軽戦車に向けて未知の言語で絶叫している。日本語を理解してるのだろうか?痴女は早足で歩き胸を揺らしながら片手で、鎧を纏った巨体やブタ男に指示を出す様な仕草をする。どうやら追撃を開始するようだ。敵の注意を駅舎から、遠ざけるのにほぼ成功したのを4人は、先ほど放った無人機から送信される映像で確認する。龍澤が開いた小型ノートPCを4人は、固唾を呑んで見ている。

 

 

「藤沢、貴様は引き続き敵の注意を無人軽戦車にひきつけろ」

 

「了解、オラオラ死ねや!豚どもが!」

 

藤沢は、ノリノリで機銃弾を撃ちまくり、ブタ男の一団を瞬殺する。

ブタ男の胴体にはライフル弾が通用するようだ。凄まじい量の機銃弾の直撃を受け、臓物を派手に路上にぶちまけている。

 

 

 

「龍澤、駅舎内に無人機を侵入させろ」

 

兵長は先程から小型ノートPCで無人機のモニターをしている龍澤に偵察状況の確認をする。

 

「まもなく駅舎内に自律飛行で侵入します。画像出ました」

 

「見せろ」

 

兵長は駅舎内の画像を確認する。意外なことに照明が機能してるのだろうか、奥が明るいようだ。白黒の赤外線画像からフルHDに切り替わり、音声も出力される。兵長はこの駅が半地下状だから光が地上に漏れなかったのだろうかと考えてると、自身の思考回路が怒りでブチ切れる映像を目の当たりにする。

 

約20体弱のピンク色の肌をした、裸のブタ男共が醜い笑みを浮かべ、笑い、腰を振ったり何かに吸い付いたり、覆いかぶさったり、床に寝そべり上下に激しく揺れる何かを抱えている。床に寝てるブタ男自身も腰を振りブヒブヒヨダレを垂らしながら、笑っている。

 

ブタ男がそれらの行為をしてる対象は、黒髪の日本人と思しき全裸の少女約10人だ。

 

おそらく兵長の予想通り、下校途中に拉致された生徒の一部だろう。

 

少女たちは、全裸で泣き叫び喘がされ、目には涙を浮かべ所々、擦り傷だらけで乱暴されている。少女によっては、数体がかりで乱暴されている。

中には、泣きながら騎乗位で必死に腰を振り、胸を揺らし、殺されないように喘ぎ泣きながら、ブタ男に懇願してるショートカットの少女もいる。

ブタ男に後背位で激しく、責められながら口には、不気味な笑みを浮かべた別のブタ男のモノを無理やり口に咥えさせられてる長い黒髪のモデル体型の少女もいる。

 

その少女達の近くには、少女達を助けようとここまで来たのだろうか、無残にも戦死した兵士の、手足をもがれた死体が山積みになり、血だまりができている。

 

そんなまさに、酒池肉林の地獄絵図の状況を見て松沢の脳内に急激な負荷が発生し、松沢の感情と欲求は、理性という名の鞘を割ってしまう。

 

「うぉぉおおおおおおおおお!姉さんん!は俺が助けるからああああ!」

 

理性という名の鞘が、見事に割れた松沢は、感情と欲求の入り混じった言葉を絶叫し泣きながら、全速で駅舎に向けて走り出す。

 

「おい、松沢、先走るな!止まれ!兵長、止めないんですか!?あいつ死にますよ!?」

 

龍澤は止めようとしない兵長に松沢を止めるよう進言する。

 

「落ち着け龍澤、あの豚どもはカエル男たち程、異常な防御力はない。ついさっき無人軽戦車の機銃掃射で倒せるのを確認できただろ」

確かに藤沢は機銃掃射でブタ男を倒していた。

 

「カエル男や痴女は、藤沢が全部引き寄せてるとすれば、俺たちのするべきことは一つでしょ?兵長」

 

鬼沢が口を開き兵長に発言を求める。

兵長は微かに微笑を浮かべながら口を開く。

 

「敵を殺すは怒なりと教えたばかりだが、やれば出来るじゃないか。貴様ら松沢の援護に向かうぞ」

 

 

兵長が叫ぶと、二人も頷き駅舎に突撃した松沢を全速で追いかけるのだった。3人は、松沢に続き怒りという名の刃を理性と名のついた鞘の中で高ぶらせ、後は敵に向けて抜刀するだけだ。

 

           居合いの一撃の如く

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 11月25日 05時00分

最終更新日

2013年 12月29日 19時00分

 

第十四話 激突 異形の力と人の英知 [後編Ⅲ]

本文編集

「おおお!」

 

松沢は、銃を構え咆哮を上げ、全力で駅舎に向けて駆けている。

彼は、目元に暗視ゴーグルを装着している。その隙間からは、涙が頬を伝い流れている。

だが、彼の装着している暗視ゴーグルが涙の水分で、ゴーグル内のモニターを曇らし、彼の歩みを止めることはない。

極寒の極域だろうが、砂嵐吹き荒れる砂漠だろうが、密林に覆われたジャングルだろうが、コンクリートに覆われた大都市だろうが、、、たとえ装着者が号泣していようとも、およそ戦場として考えられうる、過酷な環境下での使用を前提に開発、改良された人類の英知にそのような隙は無い。

 

 

駅舎に駆ける松沢の視界には、駅前のロータリーから、自身に向けて駆けてくる人影が3体映る。

 

松沢は、己が構えるバレットM468自動小銃の引き金を絞るように引き、3バーストモードで

人影に向けて射撃を開始する。

 

彼が射撃を加えた先には、斧の様な武器を構え、鎧を着たブタ男が三体、真ん中の一体は、松沢の3バースト射撃を胸部に撃ち込まれその場で、仰向けに倒れこむ。

 

続けて、左の一体の顔面にストッピングパワーに優れた6,8ミリ弾の3バースト射撃を直撃させ、頭部の一部を吹き飛ばし前のめりに倒れさせる。

 

右の一体は、松沢が射撃を加える寸前で、派手に頭部が吹き飛び、走り出した勢いを残したまま

前に倒れこみながら滑り、2~3mで止まり運動エネルギーをゼロにした肉塊となる。

直後に大きい銃声が遠くから、鳴り響く。

 

着弾後に銃声がしたのでライフル弾による遠距離射撃だ。

 

「松沢、俺が援護する。そのままロータリーを突っ切れ!」

付近のビル屋上に潜む藤沢による対物ライフルの援護射撃だったようだ。藤沢からインカムで通信が松沢に入る。

 

松沢は返事も返さずに、そのまま駅前のロータリーを藤沢のナビ通りに突っ切ろうとする。

松沢の視界には一瞬、枯れ果てた植え込みに無造作に投げ捨てられた、発行する痴女に逆レイプされ、両目から流血し、口からは血混じりの大量の泡を吐いて、息絶えたと思われる全裸の捕虜が横たわっている様が映る。だがそれを見ても今の彼は動じずに駆け続ける。

 

今の彼は、理性という名の鞘を叩き折り、怒りという名の刃を敵に斬りつけてる最中なのだから。

 

松沢は、痴女が捕虜を逆レイプしていたロータリーの中央に到達する。ロータリーのほぼど真ん中には、玉座のついた神輿のような物が置かれたままだ。

近づいてよく見ると所々、痴女の全身に発光し浮き出ていたペイントとそっくりな模様が刻まれていることに気づいた事だろう。

神輿のような物のすぐ脇には、まだ逆レイプされてない戦闘服姿の捕虜が、両手足を餅のようなもので拘束されたまま、横たわっている。

 

(助けてくれ)

松沢の視界にそんな表情を浮かべた、捕虜たちが映り、彼が歩みを止めようとした刹那

 

「松沢、貴様はそのまま駅舎に突入しろ。鬼沢と龍澤に援護させる」

鋭い声で兵長からインカムで通信が入る。

「捕虜は俺に任せとけ」

 

「了解」

微かに冷静さを取り戻した松沢は、静かに返事を返し大きく息を吸い込み、己の体を最大限振るわす雄叫びを上げ走りを加速させる。

その雄叫びを聞いた横たわる捕虜は皆、その凄まじい雄叫びに一瞬身をビクッと身震いさせる。

 

その光景を早足で駆けながら視界に捉えてるものが3人

兵長と鬼沢、龍澤の3人だ。

 

「鬼沢、貴様も全力でロータリーを突っ切れ」

 

「了解」

鬼沢はVSS 静音狙撃銃を構えながら、全力で松沢の駆け抜けた後を走り出す。

鬼沢が射殺された3体のブタ男の前に到達する寸前、真ん中の胸部に銃弾を受けたブタ男が胸部から血を滝のように垂らしながら、起き上がり鬼沢に襲いかかろうとするが、直後に頭部が弾け飛び、着弾の後に銃声が遠くから鳴り響く。

 

「雑魚の相手は任せてください。鬼沢さん」

 

引き続き藤沢の対物ライフルによる支援狙撃のようだ。

 

「藤沢GJだ。後で可愛がってやるからケツきれいにしとけ」

 

「いえ、それだけは遠慮しときます」

 

こんな状況下でも戦闘経験豊富な彼らは、冗談を言いながら作戦を続行できるだけの士気を維持している。

 

「龍澤、マイクロ VLS(垂直発射管)の発射準備を急げ」

鬼沢のすぐ後ろを大きな箱状のモノを背負い走っている龍澤に命令が下る。

 

 

「了解、無人機とのデータリンク完了、諸元入力オートで完了、女子生徒への誤爆を防ぐため

ブタ男23体中、12体にマイクロミサイルを照準済みです」

 

「殺れ」

 

「了解」

 

龍澤の背中から大量の煙がポンポンと音を響かせながら、連続して立ち昇り煙の軌跡は、駅舎に一番乗りしようとする松沢を追い抜いて、駅舎に幾重にも殺到する。

 

立沢の背中には、小さな本棚位の大きさの四隅をカットされた、八角系状の箱が背負われている。

表面は、市街戦仕様のグレーを基調としたデジタルパターンの迷彩塗装をしている。

 

小型ミサイルのコンテナだ。

 

小型といっても重量は50キロはゆうに超えるだろう。故に龍澤の装備は若干他のメンバーと異なる。

彼の手には HK MP7 ドイツ製のPDW(パーソナルデイフェンスウェポン)が握られ、タクティカルベストの胸部の弾倉入れにはMP7の予備弾倉と、予備の小型飛翔無人機の筒が入れられている。

 

先程大量に発射されたマイクロミサイルは、先ほどから使用されてる小型飛翔無人機の飛翔ユニットに、小型固形燃料ブースターと、誘導装置を搭載し、弾頭に指向性炸薬を詰めた[対人用誘導グレネード]の一種だ。

 

腹部には小型ノートPCを装着されるよう工夫されている。ウェアラブル仕様的な使い方だ。

肩から腕全体と腰、脚部全体をゴツめの灰色をした、プロテクターのような物で覆っている。

コンテナを背負いながら行動するためのパワードスーツの一種だろう。

 

「もうまもなく着弾3、2、1、命中!」

 

龍澤がカウントダウンを終えると、駅舎から炸裂音と人間では無い者たちの、不気味な断末魔を思わせる絶叫に混じり、若い女性の甲高い叫び声が駅舎の外に漏れ鳴り響く。

 

松沢は、戦いのために生み出されし英知の塊が、派手に撃ち込まれた酒池肉林の地獄と化した駅舎に近づくに連れて徐々に走りを減速させる。己が構えるバレットM468自動小銃の弾倉を素早く左手で交換し、チャージングハンドルを引き、弾を薬室に送り込む。

ガングリップを再度力強くしっかり握り締め、殺意を全開にして駅舎内に静かに突入していく。

 

松沢の視界には、マイクロミサイルの軌跡の残滓が微かに薄く映る。

 

壁や床、天井には大量の着弾痕が刻まれ、床には大量の空薬莢と銃身をへし折られたり、切断された大量の自動小銃が映る。

 

この場で凄まじい死闘が繰り広げられたことが伺われる。

 

 

床に落ちているのは国防軍と各州の自衛軍の元になった組織、[自衛隊]が採用していた89式自動小銃だ。

 

おそらく捕虜の装備だったものだろう。松沢はその小銃を見て疑問を抱く。

あのブタ男達が89式小銃を破壊したのだろうか?

それに旧式の89式小銃ということは、州軍の予備役に射撃練習用に配布されてる装備のはずだ。

 

何故、予備役の連中がこんな敵地の最深部に潜入してるのだろうか?

それに予備役に呼集は出てないはずだ、、、

松沢は疑問と不安を抱くが、銃を構えながら前進し地下に降りる階段の前にたどり着く。

 

彼は自分一人では、捌ききれない量の敵が現れる事態も考慮し階段よりは、撤退しやすい壁際の身障者用の歩行帯になってる坂道状のスロープから地下に降りていく。

 

「松沢、止まれ」

 

松沢のインカムに龍澤から通信が入り松沢は歩みを停止する。

 

「今から残りの敵をマイクロミサイルで一部撃破する。鬼沢がお前のバックアップ位置に着き次第、前進を再開しろ」

 

「了解」

 

返事を返すと、松沢は駅舎内に数本の煙が高速で軌跡を描きながら突入するのを視界に捉える。

 

煙の軌跡は階段の上を縫うように高速で地下に進み、階段下、手前に広がるホール状のエリアにいるターゲットのブタ男の脳天に向けて直撃するコースをたどる。

 

ブタ男達の一部は、女子生徒への陵辱を中止し、全裸で剣や斧状の武器を持ち、急いで追撃に移ろと立ち上がっていたところを再度、仲間を瞬殺した謎の煙が脳天を直撃し、頭部を吹き飛ばされその場に倒れこむ。

 

頭部を吹き飛ばされ、仰向けに倒れたブタ男の一体は、女子生徒を陵辱して女子生徒の体液で濡れさせた雄の生殖器を屹立させたまま、女子生徒の中で出すはずだった白い体液をドピュッと宙に大量に飛ばし、己の腹部に着弾させ、文字どうり昇天する。

 

ホール内は再び、女子生徒たちの甲高い絶叫で満たされる。

 

この攻撃で残り6体になった。残りのブタ男中2体は何故か笑いながらホールの奥で、一人の女子生徒を四つん這いにさせ前後から、激しく陵辱している。

 

黒いロングの髪をしたスレンダーなモデル体型の女子生徒だ。

 

所々、傷だらけだが綺麗な色白のきめ細やかな肌をしている。

 

瞳からは涙が溢れてるが泣き叫ぶことができない、、、

 

ブタ男のモノを無理やり咥えさせられ、後部を激しく攻めるブタ男に体を前後に揺らされ続け、無理やりフェラチオを強制されているからだ。

 

そんな彼女がブタ男のモノに歯を立て抵抗しないのには、理由がある。

 

彼女の前に立ちふさがる下衆な笑みを浮かべたブタ男の背後には、彼女たちを助けに来た州軍予備役兵の四肢を切断された死体が山積みになっているのだ、、、皆40代から50代位の男たちの亡骸だ。

 

彼女の年齢からしたら、自分の父親に相当する者達だ。しかも旧式の装備ながら完全武装で彼女達を助けに来た者たちが、目の前で一方的に虐殺されたのだからその絶望感は、彼女たちを屈服させ従えるのに十分すぎるだろう。

 

その光景の一部始終は、龍澤の放った小型飛翔無人機が静かに捉え続けていた。

 

「こちら鬼沢、松沢のバックアップ位置についた」

 

「こちら龍澤了解、松沢は前進を再開しろ」

 

「了解」

 

松沢は前進を再開する。そのすぐ後ろ約5mの間隔を維持しながら鬼沢がバックアップにつく。

地下のホールに近づくに連れて光量が増してくる。

暗視ゴーグルは、光量増幅管を自動的にオフにして装着者の瞳を守るように機能する。

同時にサブ機能である暗視レンズを自動で額の位置にスライドさせる機能が作動し、対レーザー仕様の半透明のモニター件サブゴーグルが顕になる。モニターには無人機から送られてきたデータを基にして、敵味方の識別がARで表示される。

 

残敵6体の位置と女子生徒の位置も表示され、剣を装備した全裸の敵4体が鞘から剣を抜くような姿勢で走りながら階段に向かってくるのが表示される。

 

松沢は階段側に向けて片膝をつく姿勢に変え、敵との間に射線を生じさせ敵をホロサイト越しに視界に捉えると光点を合わせ引き金を絞る。

 

松沢はブタ男4体全部の胸部に3バーストで着弾させ、ブタ男の胸部は赤く染まる。

 

4体とも女子生徒を陵辱して女子生徒の体液で濡れた雄の生殖器を屹立させたまま、撃たれた順に仰向けに綺麗に倒れていき、女生徒の中でぶちまけるはずだった白い体液を宙に打ち上げ放物線を描き周囲に白い体液が着弾し昇天する。

 

最後の一体は倒れる寸前に剣をかろうじて抜く。剣を抜いた刹那、刃の側面に刻まれた回路上の紋章が緑色に光り輝き、無人の階段に向けて光る一撃を放つ。鋭い衝撃音を周囲に響かせながら階段の一部に綺麗な裂け目を生じさせる。そして他の3体同様、最後の1体も似たような昇天の仕方を迎える。剣はブタ男の手から離れると輝きを失い、床に落とし金属音を女子生徒たちの叫び声と共にホールに鳴り響かす。

 

松沢も鬼沢も唖然として一瞬驚くが、不気味なブタ男の絶叫と女子生徒の叫び声を聞き我に返る。

 

「松沢、走れ!援護する!」

 

「うぉおおおおお!」

 

松沢は雄叫びを上げながら全力で駆け出しホール内に突入する。その後を鬼沢がVSS 静音狙撃銃を構えながら追いかける。

 

彼らはブタ男の屍や全裸で泣き叫ぶ女子生徒たちの間を走り抜ける。

判断力のかろうじて残ってる女子生徒達が、松沢たちの降りてきたスロープの方に駆け出す。

 

一人、ブタ男の屍と騎乗位で接合したままで小刻みに腰を動かして[殺さないで下さい」と頭部を吹き飛ばされたブタ男の屍に対して喘ぎ泣きながら懇願してるブタ男の血を浴びた、、、血まみれのショートカットの少女を残して、、、陵辱され続けたことによる恐怖やめまぐるしく変わる周囲の状況についていけず、錯乱状態のようだ。

 

松沢たちは敵の排除を優先し血まみれの少女を残してホールの奥へと駆けていく。

 

一番奥は小さなステージになっており、壊れたベンチなどが周囲に散乱している。

そのステージの上で最後の2体のブタ男が、ヤケクソな感じで絶叫しながら激しさを増した腰使いで黒髪の乙女を陵辱してる最中である。

 

ステージの隅には殺され手足を切断された州軍予備役兵の死体が、山積みになり血がステージから床に垂れ続け大きく血だまりを広げている。

 

「おい豚野郎!こっち向け!」

 

松沢が大声でブタ男達を怒鳴りつけ、銃口を向け引き金を絞る。ブタ男達は一瞬ブヒっとびくつくが、ホール中に鳴り響く激しい連続射撃音と共に、ブタ男達の頭部が、脳漿や真っ赤な血と混じり粉々に砕け、飛散する。ブタ男達の死骸は、黒髪の乙女を挟むように崩れ落ちる。

 

宙に高く舞った最後の空薬莢が小さな着地音を鳴り響かせて、駅舎内の掃討戦は終了した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 12月07日 17時14分

最終更新日

2014年 02月24日 23時11分

 

 

 

------------------------- 第6部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第十五話から二十話

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):24439字

文字数(空白・改行含まない):23400字

行数:914

400字詰め原稿用紙:約59枚

 

【本文】

第十五話 魔女への報告

本文編集

九州北部国境地域への艦砲射撃 一時間前 

 

 

中部州 旧愛知県 西三河地域内 とある市街地のショッピングモール跡地 

 

元は大手外資系のカフェが入っていたガラス張りで薄暗いテナント内のカウンター席のちょうど真ん中付近で、一組の男女が横並びで会話をしている。

 

出入り口付近は、ロシア製サイガMkー107自動小銃で武装した黒いスーツ姿のグラサンをかけたスキンヘッドの屈強な体躯の男たちが、店内の二人を護衛するかのように固めている。

 

 

一方店内の男女二人、男はスーツを着ているがビジネスマン風というよりは、どこかラフな雰囲気を醸し出している。

女は腰まで綺麗に黒髪を伸ばしており、華奢なスタイルだが見る男に劣情を抱かせる絶対領域を灰色のミニスカと黒いニーソの間から生じさせている。

 

 

「表向きはAPC(装甲車両)引き連れた武装勢力殲滅のための艦砲射撃ね~少々強引過ぎないかしら?」

 

女の口からは少女のような声だが、聴く者に育ちの良さと冷静さを感じさせ、透き通る様な印象を与える声が発せられる。

 

「仕方ないさ、まだ公表できるだけの下準備も済んでないからな。イレギュラーも若干生じたが、こちらの銃火器で仕留められる事が分かって幸いだ」

 

 

 

男は声からすると若い男だ。会話の内容はとてもこの時代の平均的な若年の日本男性のするような会話ではないが、それがさも当たり前のようかのように話している。

 

 

 

「確かに想定外だったわ。初めは国防軍の連中かと思ったけど...まさか州軍の予備役だなんて一体どういうことかしら?」

 

男は少々重苦しい雰囲気を漂わせ、微かな間を開けながら口を開く。

 

 

「その件に関しては、別口であの場所にたどり着いたとしか判断せざるを得ないな。調査隊に潜り込ませてる部下からの映像なんだが、正直、女性に見せるのは少々気が引ける」

 

 

 

「構わないわ見せなさい」

 

男は女に促され、自身の目の前に置いているA4サイズノートサイズぐらいのタッチパネル式の情報端末を手慣れた手つきで操作し、動画プレーヤーのアプリを起動させると双方の間にそっと端末のスタンドを立て端末を置く。

 

白黒の赤外線画像で日本の典型的な駅前のロータリーの映像が飛び込んでくる。

それだけだとごく普通の防犯カメラの映像と大差がないが、そこに映し出されているのは行き交う通行人でも、乗用車でもない。

 

カエルのような頭部をした全裸の男達と、神輿のようなモノに担がれた

ローブを纏った者の姿である。

仮に事情を知らない人に、九州北部の旧高度移民優遇特区とその周辺を乗っとった勢力の一つ、通称【カルト王朝】系勢力の祭りの映像とだけ説明をして、見せると納得するかもしれない映像だ。

 

「少し早送りにするぞ」

 

男はそう一言いうと、画面をタッチして少し早送りにする。画面に映るローブを纏った人物がその姿をあらわにしたところで一時停止ボタンを押す。ローブを纏っていたのはツインテールの女性のようだ。

顔にはまだ幼さが残り、上半身にはビキニの様なモノを身に付け下半身には模様の描かれた布のようなものを纏っている。体には布に描かれているのと同様の模様がペイントか刺青のように施している。

 

「捕虜にされてた10人全員は、我社の取り調べで陸自から転属した30代の九州自衛軍の予備役であることが判明している。殺害されてた兵士は退役間近の同じく、陸自から転属した州軍の予備役だ。生存してる数名は例の女子生徒と同様、我社の基地にてバイオハザード対策等を名目に身柄を拘束中だ」

 

「あら、壁外調査隊は納得したの?」

 

「話せる範囲で説得するまでもなく、連中も納得してくれたよ。敵があれだけ常軌を逸した連中だと、自分たちだけでどうしようとか考えないだろう?強行な措置も重要だが仲間同士の[ほうれんそう]は大切だろ」

 

【ほうれんそう】報告、連絡、相談の頭文字をとった言葉である。

 

「そうね。納得してくれて幸いだわ」

 

女は安堵したような声色で口を開いた。

まるで強硬な手段をとることをしなくて済んだことに対する

自身の気持ちを表すかのように。

 

「因みに連中と接触、交戦し帰還した調査隊の連中もバイオハザード対策の名目で同じく基地で拘束中だ。連中、まとまった休みがもらえて喜んでたみたいだぞ。」

 

「まとまった休みね...義明ちゃんに休暇まとめてあげないといけないけど、先延ばしになるかもしれないわ」

 

女は義明に対して申し訳ない気持ちをつい口にしてしまう。

義明とは知り合いのようだ。

 

「義明さんも現場に復帰して二年になるのか、義明さんとは仲良くしてるのか?」

 

彼もまた義明とは知り合いのようだ。

 

「なっ! なに言ってるのよ!」

 

女は突如慌てた声色で言葉を紡ごうとするが、どうやら

感情的になって言葉にならないようである。

女は何やらブツブツ一人、愚痴を小声でこぼし出す。

 

「いい加減あのペンダントの意味を教えてやれよ。丁度連中も現れたんだから君のことを中二病とか思わないと思うが」

 

「そんなこと言ったって...渡してもう5年近いのに今更...言いづらいわ」

 

「少々話が脱線したが、本題に戻ろう。このあとの映像なんだが----」

 

男はタッチパネルを触り動画を再生させながら語りだす。

 

「映像は赤外線画像で、色が表示されないが部下の報告では、この痴女の発光している色は緑色とのことだ。一体この痴女は何がしたいんだ?単に捕虜に対する性的虐待と殺害が目的ではないだろう」

 

男は女に説明を求める。女はしばらく考え間を置くと口を開き語りだす。

 

 

「緑の輝きで波紋式の紋章...カエル系の使い魔...複数の性行為はかなり雑で強引だけど、動力源の補給作業というべきか、あるいは銃で言えば装弾作業みたいなものよ。こちらに来れるということは、亜魔族が技術協力してる可能性が濃厚だわ」

 

使い魔と亜魔族、通常の会話それも、PMCの関係者が仕事上する会話に出てくるフレーズとは考えられないものである。

だが、この二人の会話からは冗談めいた感じは皆無である。

 

「君はこの筋の専門家だろう? 正直、地球上で【アノ現象】をコントロールするのはかなり困難と判断していいのかな?」

 

「ええ...そうよ。広域増幅器の補助下にない地球で術を使うのは、水中で銃や火炎放射機を使うようなものよ。それにオークや使い魔を従え異種姦を先導とか教会からの破門じゃ済まないわ。討伐対象指定される重罪よ。そんなリスクを孕んでまでこちらに来るなんて、、向こう側では教会の睨みが効いてないみたいね」

 

会話に登場する【教会】は、どう考えても地球上に古くから存在する

某大手宗教団体のことではないだろう。

 

 

「連中のこちら側への運搬能力の限界値はわかるか?」

 

「報告から推定される連中側の人間と思しき者とオークが約100人でしょ、その3倍は最低でもこちらに来てないと、こちらで術の発動も使い魔の量産も向こうに帰ることもできないわ」

 

説明を聞いた男が驚きの声をあげる。

 

「この一団が無傷で最低でも二組残っているのか...今、量産とか不吉なことを言わなかったか?」

 

「あのカエルみたいな輩は使い魔よ。こちらで言えばキメラとでも言えばいいのかしら。術者は女でしょ、なら魔力があればいくらでも産めるわよ...しかも数日で成体に成長し軽く一年くらいは休みなしで水だけで動き回るわよ」

 

「アレを生むのかよ...あのカエル、使い魔は異常な程のライフル弾に対する防弾性能を有してるみたいだが、何故か散弾で簡単に撃ち殺せると報告が上がっている...ところで亜魔族とはなんだ? RPGでよく出てくる魔族のような者か?」

 

「そうよ。亜魔族と魔族の関係性は、こちらの人間の関係性でいえば、クロマニョン人とネアンデルタール人の関係に近いかしら。向こう側では、地球と違い複数の知的生命体が混在してるから、最も一番多いのは人間系みたいだけどね...散弾で簡単に仕留められる件だけど、向こうでは魔力弾を攻撃対象に直接照準して撃つ時にこちらの小銃と同じく、ジャイロ効果を利用してるのよ。魔力を使いジャイロ効果を生じさせているから、魔力弾防御の応用で防御してると考えられるわ。魔力を帯びずに散弾みたいなものを撃ち込む攻撃は向こう側の通常の戦術では、想定外な代物よ。ただ、おそらく術者自身は散弾なんか効かない位、強力で汎用性に富んだ対物理熱障壁が展開可能なはずよ」

 

「そうか、部下の報告ではブタ男、つまり君が言うオークは片言ながら日本語を話したようだが...」

 

「私と猫ちゃんが、大戦前に向こう側にいたのは知ってるわよね」

 

「ああ、なるほどその時、日本語が向こう側に伝わっていたのか。だが猫さんは元々はこちらの人間だろう。どうやって向こうでコミニケーションをとっていたんだ?」

 

「こちらじゃ使えないけど、大昔の魔族が開発した各種族間の言葉を翻訳する小型の術具が広く普及してるから造作もない事よ。こちらで言えばスマホ並に普及してるから、限定的ながら遠距離で文字のやり取りや映像、音声通信もできる便利ツールよ。その際に日本語もシステム上に登録されたからそこから拾って学習したんじゃないかしら」

 

「ほう、それは便利だな」

 

「でも機種変も機能拡張も何千年も行われてないから、正直こちらの携帯やスマホ、PCの多様さを見たときは驚いたものよ」

 

「何千年も前からあるのか !?」

 

「大昔の魔族は発明好きで色々生み出していたらしいから、術やそれらのシステム全般に各種使い魔、オークやゴブリン、妖精も彼らの発明よ。今は昔の日本みたいに鎖国中、それも千年ほどの長きにわたってね。亜魔族以外どの勢力も近寄れないし、相手にしないから魔族は」

 

「魔族は技術力の差を持って鎖国をしてる点が、かつての日本の鎖国とは大きく違うわけだな」

 

「ええ、象と蟻くらいの差があると、こちらでは表現すればいいのかしら?」

 

「ああ、それで十分意味は伝わるが、向こうではなんと表現するんだ?」

 

「竜とトカゲよ。他にも翼人と妖精とかオーガとゴブリンなんても表現もあるのよ。地域によって微妙に違うけど」

 

男は少し微笑を浮かべながら

「まさに異世界だな」

 

女も微笑を浮かべながら

「それはお互い様よ」

 

共に言葉を交わす。

 

「そういえば、お宅が拾った元【グリード】の刈谷の回収した物に、瓶詰めにされた全裸の妖精が20体程あったらしいじゃないか。アレは一体何に使用するんだ?」

 

女は口を開き落ち着いた口調で語りだす。

 

「たまたま、運搬担当のオークが中部州のスラム街に向こうから大きく外れて、飛ばされて回収できたものだから、棚ぼたみたいなものよ。拉致された女子生徒の数から後10体は敵の手にあると見ていいわ。アレは状況からして女子生徒に寄生させるものよ。そのためには地球人にも存在する魔力を活性化させておく必要があるのよ。一番てっとり早いのは恥辱と性欲の喚起よ。本来の術の学習の仕方はストレートに性欲や恥辱を喚起させるのではなく、少しずつ魔力を体内になじませて身体の動かし方を覚える感じで習得するものよ。でも効果のほどはさておき、こちらでも魔術系の儀式とかで性行為を多用してたりしてたのは確認済みよ。日本だと断絶した密教の立川流とかが割と有名じゃないかしら?強引に魔力を活性化させる為にもオークを使い異種姦までさせたんでしょう。」

 

「因みに寄生された場合その人間はどうなる?」

 

「まず、人間ないし亜人の女にしか寄生しないわ。男には子宮がないもの、寄生されたら徐々に自我を乗っ取られ、、、」

 

彼女は端末の画面を指さし怒りを込めた声色で口を開く。

 

「この痴女のように誰かさんの言いなりの兵器になるだけよ!」

 

 

「指揮官が他にいるということか?」

 

「ええ、そいつを潰せば痴女は術を使えなくなるし。使い魔も異常な防弾性能を失うわ。そいつも含め残りの推定される最低200体規模の敵はこちらで確認した痴女一行から、そんなに離れてないはず。おそらく旧移民特区こと[九州共和国]内か、国境内、あるいは日本側のどちらかに潜んでいるはずよ」

 

男は暫し沈黙し静かに考え立ち上がり口を開く。

 

「これから色々と下準備が大変だな。抗議ついでに政府に圧力かけとくか」

 

「そうね。その端末借りてもいいかしら?」

 

「いいが何に使う?」

 

「義明ちゃんにメッセージをおくるのよ♡」

 

女はそう言うと画面をタップし大戦前から存在してる某ネギ系ボカロのアプリを起動させメッセージを入力し送信する。彼女は彼が某ネギ系ボカロのファンだと知っているようだ。

 

「なあ、、一度でいいからさ髪を緑に染めてツインテールにしてみないか」

 

男は微妙に懇願するかのように口を開く。

 

「お断りよ。それじゃ、、、」

 

女は画面を先ほどの痴女の動画に切り替え一言

 

 

「この[魔女]と間違えて射殺されたくないわ」

 

 

「ああ、それは失礼した魔女の弾丸便CEO[最高経営責任者]の[マギサ]さん」

 

男は少し笑いながら返事を返しマギサも笑いながら返事を返す。

 

「いえいえ、お気になさらずとも宜しくてよ。[特別軍事法人NEET]代表で[日本民間軍事会社総連盟]総帥の矢島さん」

 

マギサは矢島に端末を渡すと席から立ち上がり、テナントをあとにする。

 

テナントの外は照明がついており明るい。矢島とマギサの姿が照明の下にさらされる。

 

矢島は茶髪で短髪の少々目元の鋭い、黒いスーツで黒い革靴を身につけた青年だ。身長は180cmくらいだろう。

 

マギサは多くの人間が見れば大戦前の女子高生の様な制服姿をしてるように見えるだろう。

少女のようなあどけなさを残しながらも整った顔立ちと黒髪を腰元まで伸ばし、身長は160cmくらいだろう。因みに前髪を横切るかのようにさりげなく赤いリボンが結ばれている。

バストはおそらく並みくらいだ。

だが、一部の趣味に没頭した人間が見れば皆、各種銃火器や兵器、タンクローリーを駆使して魔女と戦う某魔法少女の名を口にしたであろう。実際彼女はそれも計算に入れてこの格好をしているのだ。

二人は護衛を引き連れショッピングモールの跡地を後にする。

 

 

 

 

一方、二人のいなくなったテナント内で、小さな人影が震えながらうごめいているのをこの時は、誰も知る者はいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 12月15日 21時39分

最終更新日

2014年 07月15日 11時17分

 

第十六話 [短編]猫さん外伝[前編]

本文編集

第三次世界大戦前

 

西暦201X年 冬 正午

 

                  

 

 

東京都内某所のコンビニの駐車場に一台のスモークシールドの貼られた、怪しさ全開のハイエースがとめられている。車中では男たちのすすり泣く声が鳴り響いてる。

 

「うっうっ、、、みんな装備の最終点検は終了したかなんだな」

 

一番最後尾のシートに座る少し太りぎみで黒髪短髪でメガネをかけた、いかにもオタクな青年が泣きながら確認を促す。

 

青年のつぶらな瞳とぽっちゃりした顔を見た者が、某国民的RPGをプレイしたことがあるなら

次のような印象を抱いたことだろう。

 

(キ☆グスライムに似すぎでしょ)

 

 

実際本人もそのことを自覚しており、少々トラウマにはなっているが歳をとるに従い気にしなくなっていた。

 

彼を含めて車内には六人の男たちがいる。皆、同じくすすり泣きながらシートに座ったままコクりと頷く。

彼らは頭からつま先まで真っ黒な警察機関の特殊部隊風の服装をしており、手や傍らには銃がある。

 

内3人はレイルシステムを組み込みダットサイトを装着したカスタムAK47を装備し、残り二人はレミントンM870散弾銃とウインチェスターM70ライフルを装備してるようだ。平和なこの時代の日本ならおそらく電動ガンの類だ。

 

 

 

「みんな、、もうこの世界に未練は、、」

 

最後尾のシートに座る青年が何やら、物騒な言葉を紡ごうとすると運転手席の方からすすり泣きが混ざった声が割り込む。

 

「もう、それ以上言わないでくれ。うううっ、、もう時間だ。みんな!嫁の名を叫べ!」

 

会話の内容からすると、どうやら、これからサバゲーに興じるためのブリーフィングだったのだろうか。

それにしては、少々車内の空気は重すぎる。だが、皆が各々の嫁と信じてやまない非実在青少年な存在の名を叫びだすと決めた刹那、空気が一瞬にして痛々しく変わる。おそらく士気を高めるための彼ら特有の儀式と思われる。

 

ある者は、某学園都市で超能力者のトップ3にまで上り詰めた電撃姫の名前とその友人たちの名前を延々と叫び。ある者は営業のプロ的な地球外生命体にそそのかされ、魔法少女にされ戦う某魔法少女達の名前をこれまた延々と叫び。またある者は歌って戦う戦姫の名をこれまた叫び、各キャラのキャラソンを歌いだし、皆釣られて延々と身振り手振りも交え合唱をしだすという、カオスな状態がハイエース内を満たし、その車体を盛大に揺らし約30分が経過した頃、運転席付近をノックしながら外部から大声で声をかける者が現れる。

 

「警察です!近隣の住民から通報を受けてきました!大丈夫ですか!」

 

 

なんという心優しい、近隣住民がいたことだろうか。わざわざこの痛々しい若者たちのために通報するなんて

きっと、この若者たちの前途を危惧しての善意からの通報なのだろう。

 

 

一転して車内は、キャラソンで満ちた痛い雰囲気から胃が締め付けられるような、静けさが支配する。

 

だが、即座に先ほどの痛々しいキャラソン合唱の雰囲気をかき消すかの如く、乾いた金属音が車内に鳴り響く。それに合わせて運転席に座る者は座席を少し後部にリクライニングさせ傾ける。運転席の者は頭部にはフリッツ型戦闘ヘルメットと防護ゴーグルとバラクラバを装着している。すぐ後ろの席の者は何故か、透明のゴミ袋と思しきビニール袋を広げ、それ以外の者は手に各々の所持品と思われる電動ガンと思しき銃を握り、助手席に座る者がその手にするカスタムAKの銃口を、警官の声がする運転席付近の窓に向け、躊躇なく引き金を絞る。

なんということでしょう。若者たちは、せっかくの善意の通報をふいにするようです。そんな事したら、お巡りさんが怒り狂いますよ。

 

このままでは、公務執行妨害と傷害も追加されそうです。

 

 

しかし、電動ガンのような銃からは樹脂製の球体が電動モーターの駆動音と共に大量に飛び出ることもなく。狭い車内には凄まじい大音量が銃口付近の激しいマズルフラッシュに合わせて鳴り響く。銃刀法が世界一厳しい日本だから、どうやら銃は映画撮影用のブロップガンなのだろう。そしてここは、撮影現場でドラマか映画の撮影中なのかもしれない。

 

そして、窓ガラスは盛大に粉々に砕け、大量の空薬莢は車内の天井にぶつかり、大半がビニール袋の中に見事に落ちる。空薬莢が飛び出ることからも撮影用のブロップガンであることが伺われる。ビニール袋で回収するスタッフがいることからもその可能性が濃厚だ。車両の窓ガラスまで砕く仕掛けまであるなんて、本格的で予算もふんだんにあるのだろう。

 

何やら大作の予感がしますね。

 

引き金を絞ってから時間にして十秒もないだろう。

 

先ほど声をかけたと思われる警官と思しき存在は、頭部を粉々にされその場に倒れこみ、周囲に

撒き散らした大量の肉片や血の上に倒れこみ、肉と砕けかけた骨の砕けるなんとも形容し難い音を

周囲に鳴り響かせる。

 

 

、、、、、なんということでしょう。

 

どうやら映画やドラマの撮影ではなかったようです。

 

直後にコンビニ客と思しき女性の悲鳴が周囲にこだまする。

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 12月20日 04時57分

最終更新日

2013年 12月31日 20時53分

 

第十七話 [短編] 姉弟と占い師の雑談 [前編]

本文編集

第三次世界大戦前 

 

201X年 12月末 夕方

 

関東某県 駅前近くの大型商業施設

 

多くの買い物客で混雑してる食品売り場から、姉弟と思しき二人が

買い物を終え、仲良く笑顔で会話をしながら店の外に出てくる。

姉と思しき10後半位の少女の手にはエコバック握られ、中には野菜や[半額」のラベルの貼られたタッパ詰めの牛肉が程よく綺麗に入れられている。

 

弟と思しき10歳前後の少年は冬着姿で首元には姉とお揃いの灰色のマフラーが巻かれている。

 

「おねーちゃん!早くぅぅ~」

まだ変声期を迎えてない少年の可愛らしい声が駅前に鳴り響く。

「走らないのOO、電車には間に合うから焦らない」

 

姉は落ち着きのある綺麗な声で、弟に暖かく笑みを浮かべながら話しかける。姉は制服姿でミニスカートで黒いニーソという最高の組み合わせである。

道行く男が彼女の事をチラ見している。

視線の先は、ミニスカと黒いニーソの絶対領域だけではなく、顔もスタイルも含め彼女が黒髪でロングのいかにも[大和撫子]な魅力を周囲に振りまいているからだろう。

 

因みに視線の先は当然ながら、見事にはちきれんばかりに育った制服の胸元に大半が注がれている。

彼女が歩行するたびに微かに揺れている事からその胸元の豊穣さを窺い知れることだろう。

 

「早く家に帰ってゲームしようよ~おねーちゃん」

弟は笑みを浮かべながら姉に話しかける。弟も姉に似た顔つきをしており、将来は美男子ないし、綺麗な[男の娘]になることだろう。後者に関しては一部腐り気味の思考の方々以外からも、賛同を得られかもしれないくらい弟は姉に似ているのだ。

 

二人は駅の方に向け帰宅中の人の流れに沿って進んでいく。駅前に再開発で作られた大型商業施設には

年末ということもあって、多くの人が来店している。

 

「今日は私がマ☆オカート勝つからね。OO、私が勝ったらOOが風呂掃除一週間だからねっ」

 

「えーじゃー僕が勝ったら、一週間おっぱい揉ませてねっ!」

 

道行く人、特に男性陣を中心とした視線が姉と弟に注がれる。

おそらく[おっぱい揉ませて]この言葉に反応することから、熟練のおっぱい戦士達の視線であろう。

 

「晩飯、OOは抜きね」

姉は弟から視線をそらし冷たく言い放つ。だがその口元は少し笑っている。

 

「ごめんなさい。おねーちゃん、肩もみで許して」

弟は少し申し訳なさそうな声色で姉に話しかける。弟に多くの通行人、それもやはり固唾を呑んだようなおっぱい戦士と思われる者たちから、若きおっぱい戦士を応援するようなエールの様な視線が注がれる。

 

「いいわ、肩もみで許してあげる」

姉はクルッと振り向き、可愛い笑顔で弟に許しの一言を言い放つ。

 

周囲の一部、男性陣おそらく、熟練のおっぱい戦士と思われる男性達はウンウンと頷く者や、また微かに微笑を浮かべながら、この姉と弟の仲良きやり取りを見守りつつ過ぎ去っていく。

姉と弟は駅舎の入口付近に到達し、駅の入り口付近でいかにも占い師っぽい紫のローブに身を包んだ女性を見かける。駅舎の入口付近の壁の近くにはギターケースを広げ自作の曲を弾く者や歌う者がおり、人だかりができている。

だが、占い師っぽい色白の女性のところには、なぜか人がほぼ皆無である。

まるで、その場にいないかのようである。因みに[占い一回500円]とダンボールの裏に黒いマジックで書かれたボードを首から下げている。

 

「おねーちゃん占いしていこうよ」

弟が笑顔を浮かべながら姉におねだりをする。

姉は上着のポケットから、りんごのロゴマークの描かれたスマートフォンを取り出し時間を確認する。

 

「、、まだ電車まで時間あるし、占ってもらおうか」

 

 

二人は占い師のところへと向かう。

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掲載日

2013年 12月23日 03時52分

最終更新日

2013年 12月31日 04時49分

 

第十八話 跨乗歩兵

本文編集

跨乗歩兵(こじょうほへい) 戦車に直接乗せる歩兵の呼称 

 

それも内部でなく外部に直接乗せた歩兵のことである。

 

歩兵戦術の一種でタンクデサントと呼ばれることもある戦術だ。

 

第二次大戦中 歩兵の機械化に遅れたソ連軍が多用した戦術でもある。因みに第二次大戦中のソ連軍の跨乗歩兵の平均寿命は1ヶ月もなかったと言われている。

 

 

かつて共産主義者が、人命を派手に散らせた戦術を【一人で】実行中のなんとも不幸な青年が一人、満天の夏の星空の下を疾走中である。

 

頭部には市街戦迷彩色のヘルメットを被り、目元には暗視ゴーグルを装着し服も市街戦迷彩の見るからに歩兵、それもかつての米国海兵隊風の装備をした青年が疾走中の場所は、九州北部国境地域、最深部に位置する放棄された市街地の要所を繋ぐかつてのバイパスの高架道路だ。更に少し高い場所から北側を見れば日本側で悪名高き、旧高度移民優遇特区こと自称[九州共和国]の活気と欲望に満ちた街明かりが見えることだろう。

だが、今の彼にはそのようなことに思考を傾ける余裕は皆無である。

 

「何なんだよこいつら! 無茶苦茶足速いじゃねーか」

 

一人愚痴をこぼしてる彼の右肩には、スリングのついた黒いブルパップタイプの対物ライフルが肩掛けられている。銃身は太い円柱上をしており、屋内戦闘での発砲による鼓膜へのダメージを防ぐサプレッサーの様な役割を果たすように設計された代物だ。彼は両手でしっかりと戦車外部の取っ手を握り締めている。そうしないと戦車から振り落とされ敵に殺されるからだ。

 

因みに彼を追いかけている敵は先程彼が口にした通り、文字通り[足が早い]のだ。

それも時速最大100キロで走行可能な無人軽戦車を追跡可能なほどに

 

「あーあ、なんで俺だけ無人軽戦車で帰還しなきゃいけないんだよ。無人軽戦車なんだから自律モードで囮に使えばいいのによ...ファイア!」

 

彼が一人愚痴をこぼし終える最後に何やら、RPGの炎系呪文の様な言葉を口にした刹那

彼のしがみついてる砲塔上部に付けられたRWS(リモートウェポンステーション)が駆動音を微かに鳴り響かせ動き、追跡してくる敵に向けて射撃を開始する。

 

激しいマズルフラッシュが生じ、機銃の銃声が戦車の履帯がアスファルトを踏み砕く音と共に鳴り響く。

同時に大量の空薬莢が勢いよく夜空へと継続して吐き出され、履帯に踏み砕かれたアスファルトにまるで、種まきのように撒かれていく。

 

「やっぱ機銃弾は頭部に命中しないとカエル男は殺せないか、、ってかおかしいな。グレネードやHEAT弾(成形炸薬弾)でかなりの数を潰したはずなのに、、逆に増えてるんじゃね」

 

彼は自分の装着してる暗視ゴーグルに表示される敵の数が増えてることに寒気を覚える。

彼を追跡している敵はカエルのような男、、カエルのような頭部をした男のような体格をした存在である。それも時速数十キロで疾走中の車両を軽々追い掛ける異常な脚力と機銃弾の直撃をものともせず走り続ける驚異的な防弾性能を備えた生物である。

 

「どうしよう。俺今日死ぬかもしんないな。可愛い部下を囮に使う鬼上司のせいで、、」

 

死が目前に迫っているのに彼の口調からは、死への絶望を伺わせる声色は感じられない。

せいぜい、残業を押し付けられた下っ端社員の不満を感じさせる程度の口調だ。

 

そんな不満を感じてる彼は何かに気づいたようで少しにやけながら口を開く。

 

「そういや、だし惜しみはしなくていいんだよな、、スモーク!」

 

彼が呪文のように言葉を発すると、砲塔のRWSに備え付けられた筒から敵に向けて、連続して煙が尾を引きながら発射され敵の真上付近に到達すると派手に炸裂し煙が敵を覆い尽くす。

 

「ドローン!」

 

また彼が言葉を発すると戦車の後部ハッチが開き小型のラジコンの様な物が数機自走しながら戦車の後部に解き放たれ無人軽戦車の後方につき、自律走行を開始する。まるで小鴨が親鴨についていく情景を連想させる光景だ。

 

彼はこれまで以上に身をかがめ、しっかり取っ手を握り締めると何かに備える様な雰囲気を醸し出す。

彼の進行先には大量の廃車が路上に大量に放棄されている。

 

まるでバリケードのようだ。

無人軽戦車は廃車をできるだけ避けながら走行し減速しないように走行を続ける。

跨乗している彼は無人軽戦車が蛇行したり時折、廃車を踏み潰し上下するたびに、振り落とされそうになるが、それでも必死に取っ手にしがみつき、まるでカヌーで激流の川下りをしてる様な状態に陥る。

なんとか廃車の群れを抜け出した彼は、若干吐き気を覚えながらも言葉を口にする。

 

 

「ドローン!スモーク発射!射撃モード!」

 

彼が言葉を発するとドローンは廃車の影に潜み一斉に敵のいる方角に向けて煙幕弾を打ち上げ、各センサーの捉えた敵に対して射撃を開始する。

 

「、、なんとか足止めできたな」

 

遠ざかる煙幕に包まれた廃車の群れを眺め、息切れしながらも彼は安堵の一言を漏らす。

廃車の群れからは、連続した射撃音や炸裂音に混じり人ならざる者たちのうめき声が鳴り響いている。

 

無人軽戦車はバイパスを抜け商業エリアのオフィスビル群の廃墟も無事抜けて、大規模な公園エリアへと問答無用で柵を踏み潰し突入する。そこを抜ければ放棄された田園地帯へと抜け基地まで50kmもないエリアに到達する。

 

公園エリアも抜けて、田園地帯エリアを貫くように設置された、幅百メートル弱の大型水路に沿うように舗装されたアスファルトの路面を踏み砕きながら無人軽戦車は走行を続ける。少し余裕の出てきた彼は暗視ゴーグルに表示される情報から既にECM(電波妨害)のエリアから抜けたのを確認し通信を試みる。

 

「こちらPMC[壁外調査隊]藤沢、付近に展開している友軍応答せよ」

 

藤沢への応答は直ぐにあった。

 

「、、のは完売!繰り返す!、、は完売!こちら[NEET機動歩兵第67小隊]高野だ。我々は現在作戦が終了し撤退中だ」

 

藤沢は正直、このNEET特有の痛々しい撤退符号を聞いても少々安堵する。それほどあの異形の敵との戦いは堪えているようだ。

 

「こちら藤沢、作戦終了とはどういうことだ説明を求む」

 

「先程、海軍の艦砲射撃で敵のAPC(装甲車両)郡を殲滅したので作戦終了だ」

 

「こちら藤沢、了解した」

 

藤沢は通信を終了し疑問を抱く。他のPMCには例の異常な敵の存在が知られていないのだろうかと

だが、その疑問は直ぐにどうでも良くなるような事態が発生する。

 

水路に大量に満ちている水が急にエメラルドグリーン状に輝きだし波紋状の白い模様の輝きが、まるで水の流れに沿って幾重にもテロップの様に流れ出す。

 

 

夏の満天の星空と水路でのエメラルドグリーンの発光イリュージョンは見るものを圧倒させ、感動させることだろう。ここが戦場でなければの話だが。

 

この輝きと模様に藤沢は見覚えがある。彼の脳内を一瞬嫌な予感が横切るが、その予感は見事に的中する事となる。

 

 

波紋状の輝きは暫く水の流れを進むと、グルグルある一点で魚の群れの様に回りだし、真っ白に輝き

人型のシルエットをした灰色の何かを藤沢の対岸の陸へと大量に打ち上げ出す。人型のシルエットをしたそれは、先程まで藤沢が相対していたカエル男達だ。

 

一分もしないうちにその数は、凄まじい数に及ぶ。まるでクラスター爆弾をばら撒いたかのような勢いで野外ライブの観客が登場した感じだ。

 

 

 

そのくらい現実離れした登場の仕方をカエル男達はしているのだ。

 

 

藤沢は無人軽戦車の速度を落とし、暗視レンズを跳ね上げ対目潰しレーザー対策も兼ねた半透明のモニター件、ゴーグル越しにその情景を見ている。

 

「こんなの、、ありかよ」

 

藤沢が唖然としてぼやいてると、一際大きな物体が光の渦から打ち上げられる。

 

玉座のついた神輿の様な物体とそれを担ぐ、カエル男達だ。

それに続いて全身西洋風の鎧兜を身につけ剣を携えたり、斧状の刃の付いた槍を装備した巨体も打ち上げられる。

 

そして白い光の渦が一際激しく回りだし派手に水柱が上がると中から緑色の光に包まれた全裸のツインテールの女が勢いよく飛び出し、玉座に見事に着地する。

 

どう見ても先程まで駅前のロータリーで州軍の予備役兵を逆レイプしていた痴女だろう。

 

彼女が玉座に着地すると水面の光は綺麗に消え失せる。

発光イリュージョンは終了のようだ。だが直ぐに第二部が始まるかのような雰囲気を痴女が全身から醸し出す。

 

「いい胸してたが、、ケツもい感じじゃねーか」

 

藤沢はついニヤけながら、先程まで殺し合ってた相手に欲情し言葉を漏らしてしまう。痴女を藤沢の方向から見ると背後を拝む位置関係になるようだ。

 

 

 

痴女の全身には先ほど水面を流れていた、白く輝く波紋状の模様と似た模様が濃い緑で力強く輝いている。

 

痴女は両手を前方に向けて突き出す仕草をし、彼女は何かを大声で叫び続ける。まだ少女のような声色だがなかなかの美声である。

 

まるで呪文を詠唱してるようにも見えるだろう。

 

彼女が呪文の様な言葉を唱え始めて数秒で突き出した両腕の周りには、少し浮き出るように、まるでホログラムのように緑色に光り輝く光線が斜め状に数本発生しまとわりつく。まるでライフル銃の銃身内に刻まれたライフリングのように。

 

彼女の腕に光線がまとわりついた刹那、彼女の両手のひらが激しく緑色にマズルフラッシュのごとく輝くと、緑色の矢状の光線が大量に発射される。その光景はまるで、夜間演習で曳光弾を大量に撃ち込んでいる光景にそっくりだ。

 

緑色の光線は何かに当たったのだろうか派手に爆発と火柱を遠方で生じさせる。

その直後、反撃だろうか大量の機銃弾と煙幕弾が大量に痴女の方向に向け撃ち込まれる。

 

だがその機銃弾の大半は、痴女の前方に展開するカエル男達に着弾するが、不幸にも頭部に被弾し絶命したわずか、数体以外は驚異的な防弾性能によって無傷だ。

見事にマッシュルーミングした銃弾が、大量にカエル男達の足元にボトボトと落ちる。

 

「、、ワープした上にすごい索敵能力だな、、しかもあんな火力ある武器も隠してたのかよ」

 

藤沢が半ば放心気味に一連の光景を見ていると、その放心状態の意識を現実へと引き戻す彼にも聞き慣れた空気を切り裂く激しい音が鳴り響く。

 

機関砲の射撃音だ。

 

機関砲の射撃音に合わせるかのようにほかの銃声も激しさを増し痴女一行に火線が向けられる。

 

機関砲がカエル男達をなぎ払いながら着弾を修正し、痴女の方に徐々に正確に火線を向け出す。

 

藤沢は自分が囮に専念するあまり、仕留め損ねた痴女が今この瞬間仕留められるのだろうと考えていた。

流石にカエル男も機関砲弾の直撃には耐えられず、派手に臓物をぶちまけ大量に将棋倒しな状態で絶命していく。

当然ながら全裸の痴女もここで終了するのだろうと確信していたのだが、その確信は見事に外れるのだった。

 

何やら痴女の前方1m程の空間で大量の元は、焼夷徹甲弾タイプの機関砲弾なのだろうか、それが大量の渦を巻いた火柱状になり、先程まで痴女が大量に撃ちこんだ光の矢のようになって痴女の前で幾重にも生じている。

 

まるで、地震発生時に発生が懸念されてる火災旋風のミニチュアのようだ。

 

幾重にも生じた回転する火柱は徐々に燃え尽き、最後の一つが燃え尽きると痴女は絶叫をあげ、残ったカエル男達や巨体を率いて進軍を開始する。自分達に反撃してきた者たちのもとへ向けて。機関砲の射撃でその数は減らされたとはいえ、軽く千は下らない。

 

どうやらこの痴女には機関砲弾も効かないようだと藤沢が青ざめながら、感じていると水路脇にある下水道の出入り口付近に自動小銃を手にした数名の人影を見かける。

 

藤沢のゴーグルにはAR表示で敵味方の表示がされ、彼らが[九州自衛軍]通称、州軍の将校と兵士と表示される。藤沢は彼等に対し無人軽戦車の指向性スピーカーで話しかける。先ほどの通信に応じないところから、何らかのトラブルで通信に応じられないのだろうという藤沢の判断によるものだ。

 

「聞こえるか、そこの州軍の連中、斜め上の対岸を見ろ戦車が見えるだろう」

 

藤沢は指向性マイクで音を拾うようセンサーを操作しよとするがインカムで通信が入る。

 

「こちらは州軍偵察第407中隊の荒木中尉だ。そちらは壁外調査隊の藤沢だな」

 

「そうだ荒木中尉、こちらの戦車に跨乗するか? 徒歩はもう嫌だろう」

 

「よろしく頼む」

 

藤沢は無人軽戦車を百メートル程前進させ、水路に乗り入れる坂道状の船着場のような場所に無人軽戦車を静かに進ませ水路へと侵入する。履帯は全部沈んでしまったが砲塔までは届かない水深のようだ。

軽く犬かき状態で対岸の似たような船着場に着くとそこには、州軍の荒木とその部下数名が周囲を警戒していた。

 

「州軍の皆さん、話は跨乗してからだ」

 

「了解した。全員、戦車に跨乗しろ!」

 

荒木の部下は全員素早く無人軽戦車に跨乗し、藤沢は無人軽戦車が坂道を登りきると速度を徐々に上げて痴女一行を今度は追撃するのだった。

 

新たに跨乗した仲間と共に

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2013年 12月30日 10時59分

最終更新日

2014年 07月15日 11時24分

 

第十九話 弾丸の園に集まりし者達

本文編集

「みんな、下車する準備はいいかなんだな」

 

真っ赤な非常灯の灯った車内には、妖精猫隊長こと[猫さん]の相変わらずな口調がスピーカーから鳴り響く。その声色からは緊張と微かな不安を孕んでる感じを俺はこの時、感じていた。

 

「こっちは大丈夫だ猫さん」

 

俺の向かい側のシートに座るマ☆オは流石ベテランのPMC[民間軍事会社]勤務の人間といった感じだ。落ち着いた口調で返事を返している。

 

彼の手にはサイガ12 ロシア製の散弾銃が握られている。

黒い伸縮式ストックを備えた全体が黒色の後期モデルだ。

敵の灰色のカエルのような連中には散弾が効果的との追加情報で急遽装備を変更することにしたからだ。

 

「千代子、マ☆オ、燃料電池の残量、IFF(敵味方識別装置)と各センサー、生体センサーとのリンクは機能してるか」

 

俺は二人にIFFの機能が正常に機能してるか確認する。

今回のミッションで俺は、班長で最終チェックの確認役だからだ。

PMCは軍と違い明確な階級が存在しない。

我が社の現場レベルでは、その都度ほぼノリで班長を決めている。

だが、[NEET]位の正規軍に準じた規模のPMCになると階級的なものもほとんど正規軍と変わらないようだ。

 

各センサーとIFF(敵味方識別装置)をリンクさせ、その上で情報を記録するのはPMCにとって、とても重要なことだ。ただ単に敵味方の識別や戦死の確認だけでなく報酬を受け取る際にこの[いつ][どこで][誰が][どのように][交戦し][どうなったのか]といった情報の記録を提出しなくては最悪、只働きになることもあるからだ。いわばタイムカードのようなものだ。

 

日本最大の民間軍事会社[NEET]の影響が強い国防軍の各、陸海空軍も現場の将兵の評価システムとして同様のシステムを採用している。

 

尚、各州の自衛軍ではNEETへの反発もあり、同様のシステムの採用は今のところ見送られているのが現状だ。

 

「残量満タン、リンク正常だ」

 

「残量満タン、リンク正常です」

 

二人が俺に返事を返してくる。俺の隣に座ってる後輩の千代子も急遽装備をサイガ12に変更している。

 

「義明先輩は[各]残量とリンクは正常ですか」

 

俺は後輩に促され自分の装着してるゴーグル件モニターの表示を確認する。

モニターには緑の人型のシルエットが映し出され各センサー共、異常がない事を確認する。

燃料電池の残量もFULLで表示される。だがその表示の横には[液体窒素残量]の表示がある。

 

俺の装備だけが二人と異なるからだ。

 

俺の足元には一見するとメタルリンク用弾薬のボックスマガジンを装着したLMG(軽機関銃)の様な黒い物体が置かれている。

 

コイツが[液体窒素]を必要とするからだ。

 

「各残量、リンク共に正常だ」

 

俺は確認を終えると後輩に返事を返す。

 

「義明くん、その[NEET兵器工廠]開発の[試作携行型電磁加速銃]は重量が30キロ近いのに弾倉に60発しか入らない上に発射管も60発撃つ度に交換しないといけないから、予備の発射管がないこの現場では事実上使い捨てのLAW(対戦車榴弾発射筒)みたいな代物なんだな。先程、海軍の艦砲射撃で使用された電磁投射砲は現在発射管の交換作業中で発射できないから敵を仕留めることができるのは、この現場でそいつだけなんだな」

 

「猫さん、このレールガンで自分が発光する糞ビッチを撃ち抜けばいいんですよね」

 

敵ながら散々な言われようである。

 

俺は一応作戦の概要をもう一度確認してしまう。こんな異常な敵を相手にするのは初めてで驚いてるのもあるが、実戦での評価が未知数の携行型のレールガンを使用しての実戦だからだ。

 

最も先程、コイツの何倍もでかい艦載搭載型の電磁投射砲は威力を証明済みとの事だが....

 

「そうなんだな。ただ敵は[君たち]には信じられないかもしれないけど、[バリアの様な]防御手段を用いてるんだな。でもその防御も[絶対的な防御]じゃないんだな。近距離からマッハ10近い弾丸をお見舞いさせたら[殺せる]んだな」

 

何やら言葉の端々から色々事情を知ってそうな口ぶりの妖精猫隊長だ。このレールガンが準備よく用意されてたのも偶然ではないのだ。

 

......俺が2年前、マギサの命令で現場に戻されたのもおそらく決して偶然ではないのだろう。

 

「みんな、後3分程で下車ポイントにつくからパワードスーツの人工筋肉の準備体操なんだな」

 

俺達[魔女の弾丸便]の社員や[NEET]の連中には、もはや当たり前過ぎて意識してないが俺達は戦闘服の下に薄手のパワードスーツを着込んでいる。

 

この装備はNEETの連中の関連会社が開発した代物で、国防軍や他のPMCの提供要請も技術流失防止を理由に一切応じていない最新装備だ。最も社長同士が大戦前から、知り合いの我が社には提供されてる。[NEET]の社長の矢島が、マギサに頭が上がらないのも理由ではあるが...何かレールガンの件といい他にも色々理由はありそうだ。

 

俺もマ☆オも千代子も足を前後に動かしたり、銃の握ってない片腕を伸ばしたりして人工筋肉をほぐしてやる。こうしてやることで、人体同様動きが滑らかになり、故障しにくくなるからだ。それほどまでにこのパワードスーツの人工筋肉は、本物の筋肉に近い動きをするほど優秀なのだ。だがそれは、同時に人体並みにしっかり手入れ等、整備を必要とすることも意味している。最も面倒な事だけが増えるならいくら最新技術でできた装備だろうと、採用に至らないのはどの軍隊でも、ましてや企業として軍事活動を行うPMC[民間軍事会社]なら当然だ。

 

負担以上に利点が上回るからこその採用というわけだ。

 

このパワードスーツの利点は、重い装備を軽々と長時間にわたって運用できるだけでなく。

少ない電力消費で長期間連続稼動が可能なことや、改良された液体防弾機能により、近距離で通常の小銃弾程度なら[連続して]撃ち込まれても[ごく当たり前に]防げることだろう。

 

それも装着者への衝撃等の負担は、ほぼ皆無である。

俺が現場に復帰した初日にコイツを着て、一個小隊分位の少年兵にAK47の弾丸でタコ殴りにされたが、返り討ちに出来た時は感動したものである。

 

他にも各生体センサーとリンクし、常人以上の速さで走ったり飛び跳ねたりといった従来の歩兵を超えた高機動が可能である。

 

最もそのような急激な運動は装着者への負担が大きくなり、最悪なケースでは死に至る可能性もある。このパワードスーツを着たからといって装着者自身の肉体が直接強化される理由ではないからだ。以上の理由からこのパワードスーツはリミッターをかけた上で制御ソフトと合わせて運用しなくてはいけない。其のくらいこのパワードスーツはデリケートで危険な代物でもあるのだ。

 

俺が一通り、両手、両腕、両足を動かし終えると猫さんの声がスピーカーから流れる。

 

「みんな、下車ポイントなんだな。義明くんは社員証ことペンダントはちゃんと携帯してるかなんだな。コレ一応社長の命令で確認してるから提示お願いなんだな」

 

俺は左手で胸元から銀色のチェーンで結ばれた丸い五百円硬貨より一回りほど、大きく厚みのある銀色のメダルの様な物体ををチラッとスピーカーの方にあるカメラに提示する。

 

このメダル的な社員証ことペンダントは、俺がマギサに第三次世界大戦の前に直接彼女から渡されたものだ。

 

あの頃のマギサは、今の魔法少女といった出てだちというよりは、RPGに出てくる魔法使い的な感じの出てだちだった。最もその頃から男としては嬉しい事にミニスカートとニーソではあった。

 

 

社員証ことペンダントの真ん中には、真っ青で丸い石が埋め込まれており、その石からは放射状に幾重にも光というか矢の様な模様が幾重にも刻まれ、ペンダントの淵にはグルリと見たこともない文字が刻まれている。仮に地球上でこの文字に似てる文字を挙げるとすれば密教などで用いられる梵字に似ているだろう。

 

俺はペンダントを胸元にしまい、両手や両腕、両足をシートに座りながら簡単に動かし終えシートベルトを外すと猫さんの声が再びスピーカーから流れ出す。

 

「三人はこの先で無人軽戦車に跨乗してる皆さんと一緒に敵の後方に回り込んで、義明くんが近距離で魔女にレールガンを撃ち込めるように行動してほしいんだな。指揮は州軍の荒木中尉が取るからよろしくなんだな。僕は[NEET]の智也くん達と一緒にカエル共の数を減らしながら囮になるんだな」

 

「魔女?」

後輩の千代子はキョトンとしてる。

 

「魔女って全裸の糞ビッチのことですかい猫さん(笑)糞ビッチよりは殺る気が湧いてくるからその呼び方でいきましょう」

 

マ☆オは魔女が、俺が先ほど糞ビッチと呼称した存在であると理解し猫さんの発言に賛同するようだ。

だが、俺は猫さんが[ごく当たり前のように]つい糞ビッチを[魔女]と呼称したような感じを彼の声色から受けた。

 

「.....そうだね以後対象を[魔女]と呼称、灰色のカエルは[使い魔]と呼称....鎧を着た連中は[騎士]と呼称するんだんな」

 

猫さんの口調はどこか懐かしげで、そして悲しげな感じだ。

 

「「「了解!」」」

 

俺達三人は元気よく返事を返し、後部ハッチが開かれると暗視レンズを目元におろし起動させ、各々の得物である銃を手に現場こと戦場に降り立った。遠くからは激しい銃声と炸裂音が鳴り響き火線の筋や着弾の際の火花もチラホラ暗視画像で見受けられる。スピーカーではNEETの連中が異形な敵に降伏するよう命令口調で叫び続けている。一応、NEETと猫さんは囮役だからその一環なのだろう。

 

マ☆オと千代子は俺より先行して片膝をついてサイガ12を構えて周囲を警戒している。

俺が姿勢を低くしながらレールガンを構え二人の真ん中に到達すると、俺たちの乗ってきたEFV(遠征戦闘車)の後部ハッチが閉じられ、エンジン音を響かせながらこの場を後にする。

 

俺達は姿勢を低くしながら前進を続ける。暫くすると後方から機関砲の凄まじい射撃音が鳴り響きだす。

猫さんが戦闘を始めたようだ。猫さんもスピーカーを使い何か叫んでるようだ。だが射撃音でよく聞こえないが[....嫁のかたきだ!.....科学なめんな....こんな世界に...]などやはり、よく聞こえないが嫁の部分は大量の美少女フィギュアを所有する猫さんのことだ、二次元的なものに関することだと思われる。

 

さらに少し進むと、俺たちの前に立派な砲身を備えた1両の戦車が現れる。どうやら戦車の外部に自動小銃やグレネードランチャーで武装したいかにも歩兵的な数人の人間を跨乗させていることから、先程聞いた無人軽戦車とその一行だろう。

 

戦車に乗ってる人間が手招きをしている。どうやら向こうも暗視ゴーグルを装備してるようだ。

俺達は戦車に近づく。今回は俺が班長なので俺が声をかける。

 

「そちらは[壁外調査隊]の藤沢に州軍の荒木中尉一行だな」

 

「そうだよ。俺が藤沢で隣のが荒木中尉さん、おたくらは[魔弾]の方だよね」

 

「そうだ。自分が班長の義明で右がマ☆オ、左が千代子の計3名だ。作戦の概要は内の隊長から通信で聞いてるとは思うが....かなり急ごしらえな作戦だ」

 

今度は荒木中尉が口を開く。

 

「他に案もない以上、こちらの戦力が増した今の勢いに乗って奇襲をかけるしかないさ。おい藤沢さ..」

 

「藤沢でいいですよ中尉、俺らPMCは階級がないですからね。それに俺は鬼上司に散々な扱い受けてるから、そんなに優しくされたら...」

 

「ああ!もういいから藤沢、残りの砲弾は後何発か[魔弾]の皆さんにも説明しろ!」

 

どうやら荒木中尉は藤沢になつかれてるようだ。

よっぽど藤沢の言うところの鬼上司はひどい人物なのだろう。

 

魔弾とは[魔女の弾丸便]の略称でよく軍や外部の人間から言われる略称であることは義明を始め三人ともよく知っている。

 

「魔弾の皆さん、残りの砲弾は3発のHEAT弾(成形炸薬弾)とキャニスター砲弾が10発です」

 

キャニスター弾、要は戦車砲から撃ち出す榴散弾の類である。藤沢に続いて荒木中尉が話を続ける。

 

「砲弾は残り13発だ。こいつで突破口を開く。それで、そちらのゴツい散弾銃持った2人がレールガン持った一人を護衛しつつ、神輿の上の敵に接近させてレールガンをズドンさせりゃいいみたいなことをおたくらの上司が言ってたんだが、君たち三人は連中と一戦交えるのは今回が初めてかもしれないが...おたくらの上司はどうも、連中について知ってるような口調だった。正直、あの全裸..じゃない今は[魔女]って呼称の敵は機関砲弾をバリアみたいな防御手段で防ぐのを目の当たりにした我々からしたらもう、そのレールガンにすがるしかないのが現状だ」

 

どうやら、魔女という言葉が出てくるということは、車内での会話も彼に指揮を託す関係上妖精猫隊長が聞かせていたのだろう。

だが、中尉は微かに悔しさを言葉に滲ませる。同時にそれは、彼が軍人として責任感もプライドも強いことの表れでもあるのだろう。

 

「荒木中尉、自分も正直このレールガンで敵を倒せるかはわかりません...今は彼の、うちの隊長の情報を信じて自分たちに出来ることを全力でする以外に自分達は生き残れないでしょう?違いますか」

 

今更ながら義明は中尉に対し出過ぎた発言をしたと思う。後悔は決して先には立たないものである。だが、それは義明の気にしすぎだったようだ。

 

「...そうだな自分たちが[今]行動しないと戦死した部下や先輩達の行動をここで無駄にしてしまうな。おい!全員下車しろ。藤沢、HEAT弾を全弾撃ちこむぞ!自分が合図したら射撃開始だ。魔弾の三人はHEAT弾を全弾撃ち込んだら即、戦車に跨乗し魔女にめがけて突撃しろ!」

 

このような理解しがたい難敵が相手であっても、己の士気を自ら鼓舞し、戦意を高め、知識を敵を仕留める知恵に変えて行動できる彼からは、根っからの職業軍人いった印象を義明は受ける。

 

「了解っす荒木中尉!」

 

荒木中尉に続いて藤沢は戦車から降り立つと元気よく返事をする。

藤沢も含め他の数名も戦車から降り立ち後方へと移動を開始する。

 

義明達、三人は無人軽戦車の後方に移動する。

荒木中尉達はさらにその後方で、地面に片膝をつき銃を構え周囲を警戒している。耳元にはインカムで荒木中尉の作戦開始のカウントダウンが聞こえている。

 

「作戦開始まで3..2..1..開始!撃て!」

 

無人軽戦車の戦車砲から轟音が連続して鳴り響きHEAT弾の着弾した場所にいたであろうカエル男こと使い魔の集団をバラバラの肉片に変える。

水田の泥や水と一緒に混ぜながら、派手に辺りに3回度、吹き飛ばす。使い魔の数が手薄だった後方に瞬く間に全裸の痴女こと[魔女]のいる神輿への一本道が生じる。

 

「魔弾の連中は跨乗しろ!」

 

荒木中尉の命令がインカムで義明たち3人に跨乗の命令が下される。

 

 

 

三人は「「「了解!」」」

 

と力強く返事を返すと素早く、戦車こと無人軽戦車に猫のように軽やかに飛び乗る。左側を千代子が右側をマ☆オが共に、サイガ12散弾銃を構え警戒する。

 

義明は真ん中の砲塔に乗っかり、左腕でRWS(リモートウェポンステーション)のひときわ太いグレネードランチャーの銃身付近を構え込むようにして左脇に固定する。次にレールガン備え付けのFCS(火器管制装置)を音声入力で起動させ、自身の各センサーとリンクさせるとレールガンの銃床を右肩にしっかりつけて右腕一本で構えながら狙いを[魔女]に定める。

 

三人が跨乗したのを確認した藤沢は無人軽戦車に音声で指示を出す。

 

「エンジン始動!前進加速!」

 

無人軽戦車の砲撃と前進に合わせるかのようにNEETの銃撃と猫さんのEFVの機関砲射撃も凄まじさをます。同時にスピーカー越しの[魔女]一行への呼びかけも降伏を呼びかける内容から挑発に満ちた内容に変わりだし、魔女は日本語を理解してるのだろうか...怒り狂った感じだが、美しい声色で未知の言語で絶叫しているのだった。

 

無数の弾丸の飛び交う戦場と化した夏の深夜の国境で....

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 01月03日 00時00分

最終更新日

2014年 03月04日 10時07分

 

第二十話 未熟な魔女の覚悟

本文編集

私は歩いてる......

 

茶色のローブを纏い、濃い緑色をした大陸南部特産の緑竜皮のサンダルを履いた男の後に続いて...

 

夏の日差しが差し込む、白く太い円柱の柱が規則正しく並んだ白い石畳の廊下を...

 

ここは本来、私の身分では入ることが許されない場所だ。

 

大陸南部地域の【救済】を管轄する【教会】本部内の司祭様の部屋に続く廊下なのだから。

私の前を進む男が歩みを止め、振り返り私に声をかける。

 

「貴族のそなたでも緊張するかOOよ」

 

...どうやら顔に感情が現れていたようだ。

それにしても、目つきのいやらしい男だ。

まるで、舐めるように私の全身を視ている。

 

それも仕方のないことだろう。

 

今の私は男の劣情を起こさせる様な服装なのだから。

 

いや服というよりは白い下着姿に近いだろう。人目につかない教会の裏口に馬車で乗り付け降りるとき、

私はこの姿を隠すように身に纏っていた黒いローブを脱ぐよう指示されたのだ...

それが【司祭様のお望みである】と促され、私は仕方なく私の後ろに控える教会の【従者オーク】に我が家の【家紋】を銀糸で刺繍を施したローブを渡し、この廊下を歩いている。

 

 

「恐れ多くも【救済教会】の司祭様にお会いになるのですから緊張もします」

 

私は出来うる限り感情を悟られないように表情を気にしながら返事を返す。

男が再び前を向き歩みを再開する。

前に振り返る瞬間、男の表情は微かにニヤついていたように私には見えた。

 

私は背筋に寒気を覚えた。

それでも私はこの場から逃げるわけにはいけないのだ.....

 

十年近く前に黒髪で黄色みがかった肌をした【異邦人達】がもたらした、凶悪な武器を手にした領民の一揆で昨年、領地の大半と当主の父、次期当主の弟を失った没落貴族の私達には最早手段を選んでる猶予はないのだから。

 

.....それにしても先程から、私をイヤらしい目つきで眺めながら武装したオークが慌ただしくヨダレをまき散らし、私の横を走り去っていく。

オーク特有の白濁じみた色の数滴のヨダレが私の肌にも飛び散り、生暖かさが私にも伝わる。オーク達は教会工廠製、対魔力弾仕様の銀色の鎧兜を装備している。手には太く全体がドス黒く黒光りをし、先の少し丸まった棍棒で武装している。

 

.......正直、これから司祭相手に私のする行為を考えると

オークの持つ棍棒も私にはイヤらしく見え、己の意識とは関係なく体が火照る感じに嫌悪感と同時に淫らな期待を求める体からの欲求を感じる。

 

ここに来るまでに何度か、街中で暴徒が騎士団や魔法兵団を相手に【アノ憎き武器】を手にしっかり持ち、嫌な音を響かせながら交戦していた。

 

おそらく暴動の鎮圧で教会の武装オークも駆り出されるのだろう。

 

大陸南部は亜魔族の支配域に隣接するから出稼ぎのオークも多いと聞く。

同時に都市部の治安の悪さも大陸随一と聞く。

 

特にスラム街は多種多様な種族の【ならず者達】の巣窟と化し国家権力や教会も下手に手を出せない危険地帯だ。

 

そのならず者達の中でも一番多いのがオーク達だ。

オークは元々魔族が作り出した対人制圧用の生物だ。

 

主に武装していない戦場の遥か後方の民衆、特に女子供をその【腕力】と【精力】を持って制圧する【心理戦】の側面が強い戦術的運用をしたと女学校の戦史授業で習った。

 

戦史の授業中に気の弱い子は瞳を潤ませたり、泣き出したりしていたものだ。

ませた子などは、想像を膨らませ頬を赤く染めて股間のあたりをモジモジさせていた。

 

.....私は不覚にもその授業中に、自分の股間が疼き熱を帯び下着を湿らせてしまったのを今、思い出していた。

 

私がまだ女学校に通っていた2年前までは、こんなことになるとは考えることもなかった。まだ父も生きており、母も元気で弟も生きていた。毎日が平凡ながら静かに過ぎていたのだから....

 

異邦人達の持ち込んだアノ五月蝿い(うるさい)武器で領民が一揆を起こすまでは...

 

 

母と私は、当主である父と次期当主の弟をあの憎き武器で無残にも殺され、途方にくれていた。

 

そんな時に【帝都】から、小太りで脂ぎった頭部の禿げた中年の男が私達の領地にやってきた。

 

男は役人だった。

 

領地の損失と被害の確認、爵位の剥奪の査定に来たのだ。

 

爵位を奪われた貴族ほど無力な存在も無い。

そうなれば死に直結する。

 

男は【今は】公には失われたことになっているが、それなりの地位にいる貴族なら【失われてないことを】知らされている教会の救済をまだ、頭部のかろうじて残ってる弟の亡骸に施すことを【ある条件と引き換え】に提示してきた。因みに当主であった父は一揆に捉えられると、一揆勢の雇った魔術師の爆裂系の上級魔法で死体も残らぬように公開処刑されたそうだ。

 

 

母は愛する家族の一人を取り戻せるならと、その条件を飲んだ。

 

 

役人はそれから毎日屋敷に入り浸り、母の寝室で夜を過ごした。

寝室からは、かつて私が盗み聞きしていた、父と母の男女の営みの声に変わり母の喘ぎ声と役人の荒い息遣いが、盗み聞きくまでもなく盛大に漏れていた。

 

母は私や使用人の前では気丈に振舞っていた。

 

だが、ひとりの時は......泣いていた。

 

私は日増しに心が病み壊れていく母を見ていられなかった。

 

私は覚悟を決めた。

 

私は母に悟られぬように男の出先の屋敷へ出向き、交渉を持ちかけた。

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 02月08日 23時18分

最終更新日

2014年 02月10日 23時39分

 

 

 

------------------------- 第7部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第二十一話から 第二十八話(主に特別軍事法人NEETの活躍)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):41323字

文字数(空白・改行含まない):39152字

行数:2000

400字詰め原稿用紙:約98枚

 

【本文】

第二十一話 駅前を調査している一団

本文編集

【九州北部国境地帯】

 

先程まで、数名のPMC要員【民間軍事会社】対 オーク、使い魔による激しい戦闘が行われていた放棄された私鉄駅周辺を封鎖し慌ただしく動き回る一団がいる。

 

皆、一様に頭部からつま先まで黒一色のヘルメットと戦闘服、タクティカルブーツを装着した統率の採れた一団のようだ。大半の者はビデオカメラをはじめとした調査機材を使いそこらじゅうを調べまわっている。中にはオークや使い魔の死骸をボディバック(死体袋)に入れて車両に運んでいる者もいる。

 

痴女が放置していった神輿のような物はワイヤーで固定されつつある。

ヘリで輸送する準備をしているようだ。

 

そんな慌ただしい現場を警備する武装要員と思しき者達の手には

かつて米軍に採用がキャンセルされたXM8自動小銃が握られている。

その人間工学に基づいた独特のデザインと全体を覆うポリマー素材によって一見すると玩具銃にも見えることだろう。

 

一団の内、周辺の警戒に当たっていた3名編成の小銃班の歩みが突如、早さを増す走りへと変わる。

駅周辺の道路は、粉々に砕けまるで耕されたかのような有様だ。

装軌車両の類が派手に動き回ったのだろう。

3名はアスファルトの破片で満ちた走るには条件の悪い足場をものともせず、かなり早い走りで息切れもせずに常人以上の素早さで駅近くの雑居ビル入口付近へ到達する。

 

シャッターが完全に閉じられているが、3名は目元に装着した複合ゴーグルのサーモグラフィで

シャッターの向こう側に蠢く何かを捉えたようだ。

 

3名は直ぐにコッキングレバーを引き、射撃姿勢に移り躊躇なく引き金を絞る。

 

激しい銃声と共に大量の銃弾がシャッター目掛けて殺到し、シャッターを突き破り

その背後に蠢く何かに着弾する。

 

3名が射撃を加えてる最中、絶命する獣の絶叫に似た叫びが銃声と共に鳴り響いていた。

射撃は1分もせずに終わり、3名は即座にマグチェンジをし銃口を周囲に向けながら警戒を続ける。

 

『HQ(司令部)こちら警戒班α(アルファ)残敵のオーク一匹を射殺』

 

三名のうち一人がインカム越しに通信を入れる。

 

『こちらHQ了解した。αは駅周辺の警戒から駅舎の応援に行け。特別調査員【鬼沢】の指揮下に入れ以上』

『α了解』

 

3名は再び走り出し、駅舎の入口に到達すると走りをやめ立ち止まる。

目標の人物に遭遇したようだ。

 

目標の人物は彼らと違い頭部には米国海兵隊が採用していたLHWヘルメットを装着し市街戦仕様のデジタルパターンの迷彩服を着用し手にはVSS静音狙撃銃を手にしている。

その傍らにはもうひとりの男がいる。

服装は同じく市街戦仕様のデジタルパターンの迷彩服だ。

しかし、頭部は灰色のニット帽、口元は黒と赤を基調としたドクロ柄のバラクラバを装着している。

まるでギャングのようだ。

 

手にはサブマシンガンの様な形状をしたPDW(パーソナルディフェンスウエポン)MP7を手にしている。

 

VSSを手にした男が口を開く。

 

「自分はNEET社長特別調査室所属の鬼沢だα班は自分と同じく------」

 

鬼沢は左手で握り拳を作り、親指を拳から突き出しMP7を持つ男をクイッと指差し

 

「特別調査室所属の龍澤の指揮の下、これから30分後に地下街の捜索を行う。それまで休んでおけ以上」

 

α班の三名は鬼沢と龍澤に敬礼をすると即座にその場を後にしロータリー脇に設置された

野戦用テントの中へと入っていく。

 

鬼沢が口を開く。

 

「矢島社長と魔弾のマギサ社長の話、お前はどう思う?」

「どう思うって....異世界からの侵略者なんて、俺もさっき聞いたばかりだからな....驚いてるよ」

「だよな...なぁ龍澤」

「なんだ鬼沢?」

「...連中との戦いに終わりはあると思うか?」

「......どうだろうな....敵の拠点を潰さなきゃ終わらないのは確かだが」

 

龍澤は少し間を置いて力を込めるように口を開く。

 

「モンスターだけなら気兼ねなくぶっ殺せるんだが....向こうにも人間がいるみたいだからこれまでと殺す感じは変わらんな...ただ、敵はこちらに攻め込めるが、こちらから攻め込む手段がないのが」

 

龍澤は右足で床のタイルを強く踏みつけ

 

「悔しい限りだ!」

「そのへんは、自分たちの仕事じゃないが矢島社長も色々考えてるみたいだ...龍澤、魔弾のところがEFV(遠征戦闘車)購入したの知ってるか?」

「.....EFVああ、米軍が大戦前に開発キャンセルしたAAVの後継車両だったな」

 

鬼沢は腰のポーチからカロリーバーを二つ取り片方を龍澤に渡す。

鬼沢はカロリーバーを半分ほど食べると口を開く。

龍澤もバラクラバを口元から下げてカロリーバーをかじり出す。

 

「あのEFVな...内の会社も買ってるんだよ.....」

 

龍澤はカロリーバーを食べるのを中断する。

 

「鬼沢、それはおかしいだろう?あの車両は量産されてないから------」

 

「公にされてないが買ったのはパテント、要は権利の方だ。矢島社長は、あの車両を量産する気だ。なあ龍澤、今の世界情勢で大規模な強襲揚陸用の装備の必要性があるか?それ以前にPMCに必要か?」

 

第三次世界大戦後、米国は孤立主義を宣言し世界の警察官を引退した。

よって大規模な強襲揚陸用の装備など、どの国にも需要は存在しない。

 

それ以前に米国は、大戦前から大規模な海外派兵戦力は維持せず解体の方向に向かっていた。

その方向は大戦後も変わらず、むしろ加速し遂には海兵隊の解散へといたる。

現在はその装備のバーゲンセール中である。鬼沢の装備するLHWヘルメットやEFVもそんな装備の中の一つだったりする。

 

「パテントって、一体何考えてるんだ社長は」

「他にも中古のドック型揚陸艦やLCAC、輸送ヘリ、戦闘ヘリの購入、元海兵隊の連中とかの囲い込みとかも進めているみたいだ」

 

龍澤はカロリーバーの残りを食べ尽くし包みを投げ捨て、バラクラバを装着し直す。

 

「鬼沢、その話は、ここ以外じゃ話せないな」

「ああ、戦場の最前線なら盗聴の心配もないしな。さて駅舎内に行くぞ」

「おう」

 

鬼沢と龍澤は駅舎に入る。

改札口付近の床や天井は大量の弾痕で蜂の巣状態だ。

先程まで散らばっていた空薬莢や89式自動小銃は撤去されたようである。

二人は階段を下りていき数名の隊員が、カメラや調査機材で階段にできた綺麗な裂け目の調査をしてるのを横目に見ながら地下のホールに降りていく。

 

ホールに降りた二人の鼻腔を生臭い独特の臭いが刺激する。

男と女が性行為をした時の精液や膣液の混ざった臭いだ。

 

最も先程までここで行われていたのは、オークによる一方的な少女へのレイプであるが。

 

二人はホールの奥へと歩みを進める。

 

 

床に落ちた体液などもサンプルを採取しているのだろうか、数名の隊員達が採取キットを使い集めている。他にも少女達の制服や下着類を透明の密閉袋に入れて回収してる隊員もいる。密閉袋に入れられている制服や下着は、大半が破れ所々、白濁じみたモノがこびりつき固まった跡や血が付いたりしている。

 

龍澤が口を開く。

 

「あのブタ男まさか人間じゃなかったとか、この現場見ても未だになんかB級映画でも見てた気分になっちまう」

「自分も市街地で撃ち殺したブタ男の死体を確認したときは頭が混乱しそうだったぜ...なんじゃこりゃっ!ってな」

「混乱って言ったら松沢がやばかったな.....」

「...しかし、やばいって言ったら兵頭さんと兵長に自分たちの正体

明かしたときだな」

 

鬼沢の一言で龍澤の顔から血の気が引いていく。

 

「すまん。お前は思いっきり二人から銃口を向けられていたな」

「すまんと思うならもう一本カロリーバーをよこせ!」

 

鬼沢はベストの胸のポーチからカロリーバーを取り出すと龍澤に投げ渡す。

龍澤は包を開くと即でかじり出す。

 

鬼沢と龍澤はホールの奥へとたどり着く。

ステージ上にあった予備役兵のバラバラ遺体を数名の若い隊員達が死体袋に

入れているが何人かは、その惨状に耐えられず壁際に走り吐いているようだ。

 

その作業の指揮を取ってるのは、どうやら白衣を着た若い女の研究者みたいだ。

 

「そこー! なに吐いているの!サンプ...じゃね仏に失礼だろうが! さっさとボディバックに入れろ.......ったく最近の若い男はだらしない」

「元気そうだな変態科学者」

 

鬼沢に話しかけられ白衣を着た女は振り向く。女は黒髪ショートカットで小顔の

目鼻立ちの整った大人の女といった感じだ。胸元は夏場ということもあり

若干汗で白シャツの下のピンクの下着が透けて見える。本人は鬼沢や龍澤、周りに見られても気にしてないようだ。

白衣の女は二人に気づき近づいて

 

「あらっ鬼沢に龍澤お疲れ様~」

 

カロリーバーを食い終えた龍澤が女に話しかける。

 

「やけに元気じゃねーか真希(まき)姉さん、そんなに死体が好きかい」

 

龍澤が包を捨てようとすると真希は龍澤の手を掴む。

 

「現場にポイ捨て禁止な龍坊」

「なっ!」

「俺も同感だ。そんなんじゃ足跡残してるようなもんだぞ」

 

鬼沢は自分のベストのポーチから先程食べたカロリーバーの包をつまんで見せる。

 

「なっ龍坊~少しは鬼沢を見習いな。お前もプロだろ」

 

龍澤は真希の手を払いのけると包を自分のベストのポーチにしまう。

 

「しかし研究者自ら現場に足を運ぶとか、仕事熱心なことで」

 

鬼沢に話しかけられた真希は、両手を白衣のポケットに突っ込み、首を左右に振りコキコキ鳴らす。その動きに合わせて胸も上下に揺れる。

 

真希は目を輝かせて鬼沢に話しかける。

 

「だってさ鬼沢!異世界からの侵略者だよ!モンスターだよ興奮しないの!?」

「そのモンスターと戦う俺達は命懸けなんですがね....」

「まぁそうなんだろうが、あんたの報告データをさっき見たけど

階段にできた綺麗なあの裂け目、オークが剣を振ってつけたんだよね」

「一緒にいた松沢も一瞬、唖然としてやがったな。まぁ其のくらい常識はずれな攻撃をブタ男はしてきたんだがな....おーく?」

「オーク、あんたらがさっきまでぶち殺してたブタ男の名称、あんたロープレとかエロゲしないの?オークつったらモンスターの定番でしょうが。ねっ龍坊」

 

「なんでそこで俺に振るんだよ!」

 

龍澤が若干赤面しながら声を荒げる。

真希はニヤニヤしながら龍澤の肩に手を回し

 

「あんたさぁ~仕事で自室にほとんど帰れないからって通販で買ったエロゲやソフトを会社に配送さしてたら、そんな評判も立つでしょうが」

 

「.....ダウンロード版で我慢しとけ龍澤」

 

鬼沢は若干笑いながら龍澤に声をかける。

 

「俺は! パッケージや特典も欲しいんだよ! ダウンロード版も買ってるが....」

「真希、そのくらいにしといてやろう。これから地下街の捜索を行うんだ

松沢みたいに泣いてられたら足でまといだ」

 

真希は龍澤に回していた手を外し

 

「あんたらがこの先を調査するんだね。丁度いいやあたしも同行させな」

 

その発言を聞いた龍澤が抗議する。

 

「何言ってるんだ!あんたろくに銃も扱えないじゃないか!それにオーク

が、ここでなにしてたか真希姉さんも知ってるだろう!?」

 

真希は白衣を脱ぎ、右太ももに装着した【モノ】を二人にニヤついた顔をしながら

見せつける。

 

「FN5,7だな。しかもダットサイトを装着してるってレースガンっぽいな」

 

鬼沢は少々驚きを口にしながらも真希の太ももに装着されたFN5,7を見ている。 

 

【レースガン】競技射撃それも米国で盛んな拳銃を用いたスピードシューティングで使用されるカスタムガンを連想させる改造が施された銃を真希は見せつけている。

 

「あたしだって九州北部に出向く必要がその内あるだろうと思ってさ、射撃は結構練習したんだぜ」

「....一応、姉さんも自分の身くらいは守れそうだな」

 

龍澤はさっきと違い、落ち着いた口調で真希の同行を認めることを表明する。

 

「真希、α班が後20分でこちらに来る。それまでに準備しておけ」

 

鬼沢も真希の同行を認めるようだ。

 

「了解しました! 隊長」

 

真希は笑顔でそう言うと、クリアリング(安全確認完了済みの意味)の済んだ女子トイレへと駆け足で駆け込んでいく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 02月18日 22時04分

最終更新日

2014年 06月16日 16時13分

 

第二十二話 捜索前の出会い

本文編集

「.....」

 

「.....なぁ龍澤」

 

「なんだ....鬼沢」

 

「お前さ、その状態で楽しめてるの?」

 

今現在、龍澤と鬼沢は床に座り、真希を待ってる最中である。

 

鬼沢が先程から龍澤の状態を指摘してるが

 

それも当然である。

 

龍澤は床に座ると同時に即、タクティカルベストのポーチから

小型の携帯ゲームを2台取り出すと、即座に両方を起動させ

操作ボタンを延々と押し続けてるのである。

 

龍澤がプレイしてるゲーム、片方は鬼沢の遊んだことのないジャンルの戦略シミレーションゲームのようだ。もう一つは鬼沢も大戦前に何度かクリアしたことのある国民的RPGのシリーズだ。

 

「あっ....クソッ!教会行きかよ金が半分になっちまう」

 

どうやらRPGの方は全滅したようだ。

 

「全員生き返らすと...あー!また金貯め直しかよ~」

 

どうやら彼はゲーム内の通貨を貯めていたようだ。

欲しい装備でもあったのだろうか。

 

「龍澤、二兎追う者一翔も得ずって言葉知ってるか」

 

 

「なんだよ鬼沢....そりゃ知ってるけど....ん?」

 

龍澤は携帯ゲーム機の電源を両方落とし耳に装着したインカムを触る。

鬼沢もほぼ同時に同じ動作をする。

 

二人のインカムに通信が入ったようだ。

 

『鬼沢と龍澤~聞こえてるかぁ~応答しろ~....あっ!違う!...こうやって耳につけるの!』

 

どうやら真希からの通信のようだ。どうやら他にも女子トイレに誰かいるようだが

鬼沢と龍澤は確認していない。つまり真希がトイレに入るより前からそこで待機していたのだろうか。

 

鬼沢がインカム越しに真希に話しかける。

 

『こちら鬼沢、聞こえてるぞ。誰か他にも研究者の同行者がいるのか?』

 

『よかった!聞こえてる....こちら真希、ああ、そうだよ。鬼沢、龍澤にも聞こえてるよね?』

 

安堵した真希の返信が返ってくる。鬼沢は龍澤を見て龍澤は首肯をする。

 

『ああ、龍澤にも聞こえてるぞ。ところでもうひとりの同行者も地下街の探索に同行するのか?』

 

『矢島社長の指示でもあるから、もうすぐで準備が終わるから....そっ!ソレ!

取って!....おっしゃあああ!!!準備完了』

 

真希は何やら準備を同行者に手伝ってもらっていたようだ。

 

龍澤は携帯ゲーム機を素早く慣れた手つきでタクティカルベストのポーチにしまい

 

「鬼沢、真希姉さんどんな装備してると思う?」

 

「...そうだなFN5,7のカスタムガンを装備してるとしたら...練度の浅さも考えるとしたらメインウェポンでショットガンあたりでも使いそうだな」

 

「だよな...姉さん射撃練習したといっても、自分達からしたら初心者もいいとこだろうから誤射されたらたまんないぜ」

 

鬼沢は左手人差し指で龍澤の後方をちょんちょんと指し示すジェスチャーをする。

その先には真希の入って行った女子トイレがある。

 

「?.....鬼沢どうした」

 

「龍澤、後ろ.....」

 

龍澤は座ったまま後方に振り向く。

そこには灰色の顔をし額から真上へ、黒い二本の円柱状の複合ゴーグルのレンズを跳ね上げ、右耳に黒色のインカムを装着した真希が笑顔で立ち尽くし龍澤を見下ろしていた。

顔にドーランを塗りやる気満々な感じをみなぎらせながら----まるで角の生えた鬼のような迫力だと龍澤は感じる。

 

「誰が初心者だって~聞こえてるぞ龍坊~」

 

「.......姉さん張り切りすぎだろう」

 

真希は両手でFN MAG機関銃を抱えている。

服は他の隊員と同じく黒色の戦闘服に着替え靴も先程まではスニーカーだったものが、タクティカルブーツに履き替えられている。

 

他の隊員と違う点といえば戦闘ヘルメットを被らずに複合ゴーグルを装着しレンズ部を額に跳ね上げている。背中に背負われたバックパックとバックパック左上部から

真希の左肩に垂れ下がる様に伸びる黒い帯状の物体だろうか、その先端からは黒いメタルリンクで装着された黄金色の7,62ミリ弾が機関銃に装着されている。

 

「アイアンマンシステムかよ....」

 

鬼沢は自分の記憶の片隅にある装備を思い出していた。

 

【アイアンマンシステム】

大戦前の米国陸軍下士官達がバックパックなどを改造し作った弾薬携行、給弾システムである。

通常の戦術では2人以上必要な機関銃の運用を一人で行えるシステムである。

因みに真希の背負ってるバックパックの中には、約500発近い7.62ミリ弾が収納されている。

 

真希はニヤッと笑いながら鬼沢に話しかける。

 

「驚いたか~鬼沢、これだけ火力があれば安心だろ?」

 

鬼沢は真希の装備を見る。

やはり右太ももには改造されたFN5,7(ファイブセブン)が装着されている。更に左腰にはまるで、刀でも携えるかのごとく黒色のケースに入れられたストックを切り詰めピストルグリップに変更した、レミントンM870と思しき、散弾銃が装備されている。胸元のベストのポーチには5,7の予備マガジンが大量にしまわれ、他にも赤や青いショットシェルが入れられている。他にもサバイバルナイフが二本長いのと短いのが一本ずつ装備されている。

 

腹部には何やら大きめのポーチが装着されている。

彼女の本職が研究職であることから、鬼沢はそこに調査用の小型の機器でもしまってるのだろうと鬼沢は考えるに至り---

 

「そういえば真希、もうひとりの同行者はまだ準備中か?」

 

「そうだよ、姉さんもうひとり同行者がいるんだろ?鬼沢、他にも応援かけるか?」

 

真希は空いてる左手を振るジェスチャーを二人に向けてする。

 

「大丈夫、彼女も戦えるわよ~ってかあんたらといい勝負じゃないかしら『.....いいわよ出てきて....こいつらそんなに怖くないから~安心して♫』

 

どうやら真希はもうひとりの同行者を説得してるようだ。

研究職として有能なら恥ずかしがり屋でも採用されたのだろうか?だがそれなりに現代戦で戦えると言うことはどういう人物だと、鬼沢が考えてると

手にXM8自動小銃を手にしたα班の三名が近づいていきて立ち止まり敬礼をする。

 

真ん中の隊員が鬼沢に近づいてくる。鬼沢も立ち上がり敬礼を返す。

 

「鬼沢調査員、α班三名到着しました....何かトラブルでしょうか?」

 

「ああ、ごくろう。ちょっとな...このコマ☆ドーみたいな姉ちゃんの同行者が準備中でな」

 

α班の隊員は少しだけ真希をチラっと見るがその表情はフルフェイス型の戦闘ヘルメット越しで鬼沢には伺えない。

 

「.....なるほど了解しました。準備が整い次第、自分達にご命令を」

 

鬼沢に話しかけてきたα班の隊員は敬礼をし、残りの隊員の元に戻り待機の指示を出したのだろうか

彼らは壁際に寄り添い姿勢を楽にする。

 

「誰がコマ☆ドーだって~」

 

「あんた以外にいないだろうが...ってか真希、お前さパワードスーツ着込んでるだろう」

 

「あっ!やっぱし分かるか~大丈夫だよ矢島社長の許可出てるからさ♫」

 

「そりゃそうだろう。華奢な女が軽々と装備できるような量の装備じゃねーからな。ところで誰に教育されたんだよ?」

 

「ん?あれマギちゃんから聞いてないの?義明に一年前くらいから色々レクチャーされてさ...そうか、あいつも色々あったからマギちゃんは気を使ってんだな....」

 

マギちゃんとは魔女の弾丸便の社長のマギサのことである。

真希とマギサはそれなりに交流があるようだ。

真希の表情が少しだけ何かを哀れむような感じになる。

会話から察するに義明にあった色々なことに関する事だろうか。

 

「なるほどな...少しずつ義明のリハビリも兼ねてたんだろうな」

 

鬼沢は少し気にかけるような口調で口を開く、彼も義明の知り合いのようだ。

 

「でさ...真希姉さん、同行者の方はどうなんだ」

 

龍澤が真希に話しかける。真希は表情を切り替えインカムで同行者に呼びかける。

その真希の表情はどことなく優しさを感じさせる。

 

『大丈夫だよ....こいつらもマギサの知り合いだし....』

 

「おっ....」

 

「ん?」

 

鬼沢と龍澤はつい驚きの声を漏らす。視界には女子トイレから出てくる小柄で色白な人影が映る。髪は腰元まで伸ばしている。コツコツと足音を鳴り響かせながら

こちらに近づいてくるようだ。

 

だが、その髪の色は綺麗なピンク色をしている。

シルエットからすると女のようだ。

 

ピンク色の髪を腰まで伸ばした人影が、足音を鳴り響かせながら、徐々に鬼沢と真希、龍澤の三名に近づいてくる。足にはヒール上の底をした黒い靴を履いている

ようだ。服装は豊満な胸元の見えるきわどい感じで太ももが見えるようなスリットの入った、チャイナドレス的な感じの黒を基調とした服装だ。

腰周りには同じく、黒色で何やら銀糸で波紋状の模様が回路上に施された

薄い布の様なモノをつけている。

 

両手には何やらデカイ紫水晶の様なカッティングされた鉱物を埋め込んだ

銀色の手甲の様なものが装着されてる。

 

その手甲の表面には波紋状の紋章が回路上に刻まれている。

 

鬼沢と龍澤は、間近に近づいて真希の横で立ち止まったその女の顔を見ると、

瞬間的に腰を下げ、銃を構えながら距離を取ると身構え大声で叫ぶ。

 

「真希!そいつから離れろ!----『HQこちら鬼沢!敵と遭遇!応援をよこせ!』

 

「姉さん!離れろ!そいつはさっきまで駅前で逆レイプしてた------」

 

真希はあちゃーしまった。といった表情をしつつ左手で頭を掻きながら----

 

『お前ら!落ち着け!この子は敵じゃないの!銃を下ろせ!HQこちら真希だ!

予想通り二人がテンパっただけだ応援は不要だ』

 

興奮してる鬼沢と龍澤のインカムにもHQからの通信が入る。

 

『こちらHQ了解した。特別調査員鬼沢と龍澤、両名は速やかに戦闘態勢を解除し研究員真希の説明を受けろ。ピンク髪の少女は敵ではない仲間だ。以上』

 

鬼沢と龍澤はさっきまでと違い物凄い殺気を出している。

顔も驚きや警戒心に満ちた表情で呼吸も荒い。HQの通信を聞いて徐々に殺気を沈め呼吸を整え銃口を下げる。

 

ふたりの周りには事態に驚いたα班の三名が素早く展開しており、銃口を鬼沢と龍澤の両名に向けていたが速やかに銃口を下におろす。

どうやらかなりの重要人物のようだ。

 

ピンクの髪をした少女が一歩前に出て、鬼沢と龍澤の両名の顔を恥ずかしそうに交互に見る。

その顔は、先程まで駅前で捕虜に対する逆レイプを行っていた、痴女こと【魔女】と瓜二つの顔であり、顔にも魔女と同様の模様のペイントが真紅の色で施されている。違うところといえば右耳に真希と同じタイプのインカムを装着してる事と少しだけ顔つきが幼い感じな点だろうか。眉毛や睫毛もピンク色なのでピンクが自毛なんだろうと鬼沢と龍澤は考えを巡らせる。更に髪型も腰まで伸びたツインテールだ。

 

これでは彼女に関して何の説明も受けていない鬼沢と龍澤には、心臓に悪すぎる悪趣味なドッキリカメラ状態だ。

 

ピンクの髪をした少女が口を開く

 

「アノ...スミマセン!オドロカセテ」

 

少女は綺麗な透き通る様な声色だが、カタコトの日本語で二人に話しかけ謝辞を述べ頭を下げた。

 

その声色を聞いたとき二人は一人の女性の顔を瞬間的に思い出していた。

 

マギサの顔である。

 

とても声色が似ているのだ。

 

彼女が頭をたれた瞬間、腰を落としてる鬼沢と龍澤の視界には

彼女の揺れ動く豊満な胸元が視界に飛び込んでくる。

 

その瞬間二人の心から彼女に対する殺意は消え失せ、心は瞬間的に歓喜の渦に包まれ二人は同じことを考えるに至る。

 

    【この子とは仲良くなれそうだ否!是非ともなりたい!】

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 03月01日 22時16分

最終更新日

2014年 03月09日 18時55分

 

第二十三話 捜索開始

本文編集

「アノ...ワタシノニホンゴマダ、ミジュクデスノデ....」

 

ピンク色の髪をした少女は先ほどまで、鬼沢と龍澤に凄まじい殺気と銃口を向けられてたにも関わらず、慌てるどころか落ち着き二人に向けて謝辞を述べる位の冷静さを保っている。

 

ピンク髪の少女は自身の胸元に右手を入れ胸元を激しく揺らす。

何かを胸の谷間から一生懸命に取り出そうとしてるようだ。

 

「お!ま!え!ら!何ジロジロ見てんだあ~」

 

真希の笑いの含んだ声が周囲に鳴り響く。

鬼沢と龍澤は真希に指摘され、視線をピンク髪の少女の胸元から反射的にそらしてしまう。

 

「オニザワ...ト、タツザワ...コレ二テヲオイテクダサイ」

 

ピンク髪の少女は右手のひらに胸元から取り出した丸い形をしたルビー色のメダルの様なモノをおいている。よく見るとそれは【魔女の弾丸便】の社員に配られる社員証的な謎のペンダントに酷似したものだと

鬼沢と龍澤は感じる。

 

三人のやり取りを見ていた真希は、ピンク髪の少女の手の平を左手の人差し指で指し示しながら口を開く。

 

「鬼沢と龍澤いいから、その子の手の平においてるメダルに一人ずつ触れてみな♫」

 

真希の表情は何故かニヤついてる。

 

「それじゃ.....」

 

鬼沢はピンク髪の少女に近づき、左手で恐る恐る真希がメダルと指摘した物体に左手を触れさせる。

ピンク髪の少女が口を開く

 

「....アノ、オニザワサン、テブクロハズシテ、スデデオネガイシマス」

 

鬼沢と龍澤は手にタクティカルグローブを装着している。

鬼沢が左手のタクティカルグローブを外す。

龍澤も今のうちに左手のタクティカルグローブを外す。

 

何やら真希はインカムを操作し口元に手を当て小声で何かを呟いてる。

研究者だからだろうか、その眼差しは鋭い。

その直後ピンク髪の少女が笑顔で口を開き--------

 

「オニザワサン!ナマデオネガイシマス!オネガイシマス!」

 

鬼沢と龍澤は真希の方を素早く向き

 

「「何言わせてんだ!変態科学者!」」

 

真希への抗議は見事にハモる。

 

真希は口元を押さえたまま目が笑っている。彼女がピンク髪の少女に向けてインカム越しに今のセクハラじみた発言をさせた張本人のようだ。

真希はインカムを操作し鬼沢と龍澤に笑いながら話しかけてくる。

反省の色は一切伺えない。

 

『ごめん、ごめん、どうしてもミリサがこちらの世界の皆さんと仲良くしたいからサポートをお願いします!って頼んでくるからさ~あっミリサはその子の名前ね』

 

ピンク髪の少女の名前は【ミリサ】というらしい。

 

そして同時に真希の話から確実にミリサはこの世界の人間でないことが判明する。

決してコスプレの似合う美少女というわけではないようだ。

 

鬼沢は素手の左手をミリサの掌におかれているメダルに重ねる。

先程までミリサの胸元にしまわれていたからだろうか、微かにだが温かいと感じる。

 

鬼沢は思う...これが女の子の温もりか...目の前の異世界から来た少女の胸の中の温もりかと思いついミリサの胸元をチラ見してしまう。

 

それにしても、なんか段々メダルが熱くなってると鬼沢が思った刹那、メダルが真っ赤に輝きミリサが左手を素早く鬼沢の左手の上に重ねミリサは笑顔を鬼沢に向けながら口を開く。

 

「大丈夫ですよ。鬼沢さん怖がらないでくださいね」

 

「あっ....どうも....え?あれ言葉が」

 

ミリサは笑顔で会話を続ける。

 

「驚きましたか?急に私の言葉が流暢に聞こえたでしょう?」

 

「ええええええ!!!なにこれ!」

 

「はい。コレは私達、【魔族】が数千年前に生み出した言語翻訳補助術の一つで私達の世界ではごく一般的に使われています....ああ、でも人間や他の種族の場合は体内で魔力を私たち魔族のように大量に生成できませんし、他に術具を使わないといけないので広域増幅器の範囲内にいないと使用が基本的には不可能です」

 

鬼沢は驚いている。だが更に後ろの龍澤が驚いて-----

 

「鬼沢!お前何いきなりその子とおっおっ!!!話せてんのおお?!」

 

「いや、そりゃ彼女がミリサさんが日本語話せるからだろうが!」

 

ミリサは鬼沢に笑顔で

 

「鬼沢さん、私のことはミリサとお呼び下さい」

 

「あっ、どうもよろしくお願いします」

 

鬼沢は軽く首肯をし挨拶をする。

だが後ろの龍澤はまだ、驚いているようだ。

 

「鬼沢!なに言ってるんだよ!お前さいつの間にその子の国の言葉覚えたんだよ!

?俺にはお前とその子が日本語以外の言語で喋っていたみたいに聞こえたぞ!?」

 

どうやら龍澤にはそのように聞こえてるようだ。

真希の方を鬼沢はチラっと見る。相変わらず口元に手を当てて笑っているようだ。

どうやら色々事情を知っているから鬼沢達が驚いてるのが面白いのだろう。

そんな真希からインカムで鬼沢に通信が入る。

 

『鬼沢さんよ~驚いたろ【ソレ】マジスゲーだろ』

 

ミリサは笑顔で鬼沢に再び話しかける。

 

「鬼沢さん、後1分程で翻訳術の設定が終了します。以後あなたは私達の世界の各種族の言語を地球上や私達の世界でも理解できるようになりますのでご理解を」

 

そして約1分後、メダルの発光現象は止まりミリサに笑顔で『終了です次の方どうぞ』と言われ龍澤にも同じ術が施される。やはり龍澤も鬼沢同様に驚き終了する。

 

 

「さて....鬼沢、龍澤そしてミリサちゃん----」

 

何やら真希が話し出す。左手は口元から離され小型の端末を握りその画面を視ている。

 

「一応、今ので自己紹介も軽く済んだし、あんたらと地下街捜索の打ち合わせをしたいんだけど....どうもその前に、お客さんがこちらに近づいて来てるみたいよ」

 

真希がそう言い終えると、皆のインカムにHQから通信が入る。

声色からかなり必死な感じが伝わる。

 

『こちらHQ!各員に告げる!地下街に放った無人偵察ロボのセンサーに感有り!

少年兵32!オーク26の約二個小隊規模の戦力が地下のホールに接近中!

戦闘要員は追撃体制に移れ!非武装の隊員は地上に退避し銃を取り武装せよ!』

 

周囲で調査をしてる非武装の隊員は速やかに現場を後にし地上に向かうようだ。

入れ替わりにα班と同様の完全武装の一団、約二個小隊分が早足で鬼沢達の横をドカドカと足音を鳴り響かせながら駆けていく。

各々の手にはXM8自動小銃やミニミ軽機関銃、ブルパップ型の連発式グレネードランチャー、コンバットショットガンなどを携えている。

 

「α班と龍澤、真希、それにミリサ、自分達は今のうちに地下街に突入するぞ

!銃撃戦になったら搜索に支障が出る。真希その端末で敵を迂回出来るルートを検索しろ」

 

鬼沢の指示が下されると皆、静かに頷く。

鬼沢と龍澤は即座にタクティカルベストのポーチから小型の複合ゴーグルを目元に装着し起動させる。

 

真希も『ヒャッハー!』などと意味不明の雄叫びを叫びながら二本の角と見間違う複合ゴーグルのレンズを目元に下ろしゴーグルを起動させる。

 

 

3人がゴーグルを装着し終えると皆、速やかに地下街の入口へ向けて駆け出す。

 

鬼沢達は地下街の入口付近で追撃体制を整える、戦闘要員達の間を強引に駆け抜け

地下街へと突入する。目の前には瓦礫やゴミ、割れたショーウインドウのガラス片やテーブルに椅子、商品などが、壊され散乱している。

 

一応、人が通れるようには道が開けられ、足元には調査員が置いた小型の照明器具が足元に明かりを提供してくれている。

ここを先程まで根城にしていたオークや痴女こと魔女の一団が

道を開けた作業をしたと思しい事は、他の隊員からの調査報告が鬼沢達には事前に上がっていたので特に驚くこともない。

 

鬼沢達は、瓦礫の海を割くかのごとく出来た光に照らされた一本道を駆け足で駆けていく。二百メートルほど進むとその先には----------

 

既に動かなくなったエスカレーターがある。

足元の照明はそこで途切れている。

 

「鬼沢!エスカレーターを降りて右に曲がれ!それでどちらとも鉢合わせはしない!」

 

 

「了解だ!先に降りるぞ」

 

鬼沢は真希のナビに従いエスカレーターを駆け足で一番に降りていき

手馴れた動作で片膝をつき姿勢を低くし、VSS静音狙撃銃を構えると

複合ゴーグルに表示される日中並みに明るく増幅された画像と共に解析された情報で筒抜けにされた周囲を警戒しだす。

 

今のところ敵は潜んでいないようだ。真希のナビは正確なようである。

 

「行け!行け!」

 

 

鬼沢の視界には慣れた動作で銃を構えながら駆けていく龍澤とα班が映る。

プロに紛れて動く真希の動作は、やはり未熟に見えてしまうが、その身につけてる装備や顔に塗りたくったドーランの迫力がそれを補ってるようにも感じる。

 

最後尾のミリサが捉えられた時、鬼沢はミリサの動きに違和感を覚え思わず話しかけ、ミリサはその場に立ち止まる。

 

「...ミリサ」

 

「なんですか?鬼沢さん」

 

「....浮いてるよね...それも術..だよな」

 

そう、ミリサは若干地面より約30センチほど浮いて先程までの様に

足音を鳴り響かすこともなく、音もなくスイスイと移動しているのだ。

 

だが、鬼沢は自身のミリサに対する疑問と好奇心よりも、長年の戦闘経験で体に染み付いた危機意識が無意識に体を動かし銃を構えつつ移動を開始しする。

 

「すまん!先を急ぐぞミリサ」

 

ミリサは鬼沢に笑顔で返事を返す。

 

「すみません急な事態で説明も不足気味ですが、どうかよしなに」

 

鬼沢とミリサが先に進むと入れ替わる様にエスカレーター上部の後方

 

駅の地下ホールの方から大量の足音が小刻みに反響し伝わりだし、瞬く間に

激しい銃声と炸裂音が地下街に鳴り渡り、鬼沢達の耳にも届き出す。

 

『真希、聞こえるか-----『あ~聞こえてるよかなり派手だね------』

 

 

鬼沢は真希との通信を一旦中断し、目元に装着した複合ゴーグルで周囲の情報を取得しインカムで共に捜索に向かう仲間に指示を出す。

 

『こちら捜索隊指揮官鬼沢だ。全員に告ぐα班は前衛、中列を龍澤、真希、中列はα班の前進を援護せよ。後列を自分とミリサで布陣する。龍澤はナビを真希から引き継ぎ、進行ルート上で小休止できる場所を報告せよ』

 

鬼沢がインカムで指示を出すと-----

 

『こちら龍澤了解』

 

『α班了解しました』

 

『こっ、こちら真希!了解!、隊長っあたしはα班の援護でおっOK?』

 

『こちら鬼沢OKだ。真希は先行するα班を援護せよ』

 

各メンバーより返信が返ってくる。

 

やはり真希は戦闘訓練は受けてるが本職が研究職でましてや実戦は初めてだからだろうか、少し声色も緊張気味で指示の確認をしてきたりする。

そんな真希の緊張を解ぐす為の一言だろうか、鬼沢の笑を含んだ言葉が捜索メンバー全員のインカムに流れる。

 

『こちら鬼沢だα班に告ぐ。真後ろのコマ☆ドーには遠慮せず命令を下してこきつかえ』

 

直ぐにα班からの返信が他のメンバーのインカムに届く。

 

『こちらα班、コマンドーの流れ弾くらったら労災はでますか?』

 

『こちら鬼沢、当たり所次第だ』

 

鬼沢もα班もノリノリになりつつあるが-------

 

『こちら龍澤、100メートル直進したらコインロッカーの置いてある

一角がある。そこで小休止が可能だ。なお隣のコマ☆ドーの機嫌が悪化しかけて

いる。至急休息をとり体制を整えるのを進言する』

 

『こちら鬼沢、了解した進言を承諾するコインロッカーで一旦休憩と捜索の打ち合わせをする』

 

その後、瓦礫や第三次世界大戦中や戦後の混乱で起きた大規模な内乱の痕跡である崩れかけたバリケードの残骸をくぐり抜け皆、目的のコインロッカーの置かれてる一角にたどり着く。

 

要は地下街通路の分岐する少し開けた空間である。

ここから先は通路が二手に分かれてるようだ。

 

この一角が、かつて平和だった頃は多くの人が通勤や通学で行き交ったのだろうが、今は見るも無惨に弾痕や血の飛び散った跡や部分的には黒焦げた

り壁や床が砕けた場所もある。

 

床には、空き缶やペットボトル、栄養ドリンクの瓶などの年月を経ても残りやすい各種ゴミに混じり、当然の様に錆び付いた空薬莢などが落ちていたりする。

 

鬼沢や龍澤、α班の面々には見慣れた光景であるが、真希は少し瞳を潤ませ

気味に口を開く。その声は少し震えてるようだ。

 

「.....やっぱこの辺は激戦だったんだな...あたしの実家は田舎だったから

今でも無傷だけどさ、なんかこういう場所を実際に見ると------」

 

「真希、今はそれ以上気持ちを口にしないほうがいい。今は捜索を進めるのに意識を集中させろ。生き残りたいだろう」

 

「...ありがとう鬼沢」

 

どうやら真希には見慣れない光景でショックだったようだ。

 

「α班の班長、部下に周囲の警戒をさせろ。他は集まれ今から捜索の打ち合わせを

手短に行う」

 

鬼沢の近くに龍澤、真希、α班の班長、そして少し地面から浮いてるミリサが

集まる。α班の二名は自分達の歩いてきた通路側と二手に分かれてる通路側に向けて姿勢を低くし片膝をつき銃構え警戒態勢に入る。

 

鬼沢達は銃撃で蜂の巣状態になっているコインロッカーの前に集まり、足でゴミの類を払いのけると床に座り込み打ち合わせを開始する。

 

「各員これより手短に捜索の打ち合わせを行う。各員ゴーグルの表示にタイマーを表示させろ今からきっかり、3時間後に合わせろ」

 

鬼沢を含め打ち合わせに参加してるミリサ以外のメンバーは、手首につけた端末を操作したり音声入力でタイマーをセットする。

 

「各員3時間が捜索の終了時間だ。3時間たったら何があっても速やかに撤退開始だ....真希、お前とミリサは矢島社長から別口で捜索に関して命令が下されてるのか?可能な範囲で報告せよ」

 

「いや、矢島社長からはミリサと私をあんたらの捜索に同行させるようにって

だけ手短に伝えられて急遽こちらに来たんだが...鬼沢、あんたらの捜索の目標って何?」

 

「ああ、元々俺と龍澤は矢島社長と調査隊の梅木社長の指示で、身分を隠して国境周辺で自由に動き回れる壁外調査隊に属して、北から日本側に流れてくる新種の麻薬のルート搜索とそれに協力してると思われる軍や警察、PMC要員の洗い出しが任務だった。今回の出動ではこの地下街に潜入しあるモノの存在を確認し破壊するのが目標だったんだが...例の痴女やオークにカエル男やらの騒動でお流れになるかと思ったが、真希とミリサは捜索の補助要員でいいな」

 

真希は頷く。だがミリサは軽く挙手を胸元でし発言をする。

 

「鬼沢さん、恐らく私や鬼沢さんの探してるモノは一緒のはずです。矢島社長に通信を繋げますか?」

 

「ああ、ちょっと待てHQ経由で繋がせる」

 

鬼沢はそう言うとインカムでHQに通信を入れて矢島との通信を繋げさせる。

捜索メンバーのインカムに矢島からの通信が入る。

 

『こちら矢島だ鬼沢、ミリサには驚いたか?』

 

『驚いたよ....ったく危うく敵と間違えて射殺しそうになったんだからなホウレンソウくらいしっかりしとけよ』

 

『そうしたいのはやまやまだが、変化が急激すぎて現状では対応がなんとかギリギリだ。それと今回の君達の任務で探してるモノは、ミリサ達の世界から運び込まれたモノが原材料だ。ミリサもそれを追いかけてこの世界に急遽来たようだ』

 

『....マジかそれ』

 

『ああ...マジだ、我々としてもミリサが来たのは想定外でね。今は例の痴女、正式には魔女と呼ぶと隣のマギサが先ほど教えてくたよ。今はその件とミリサの来日の件で日本政府に圧力をかけに東京行きのヘリの中だ。彼女の身分に関しては直接自己紹介も兼ねて聞くといい』

 

『了解した。通信を終了する』

 

矢島との通信が終了し鬼沢が口を開く。

 

「ミリサ君は何者だ?」

 

ミリサは微笑みながら口を開き自らの素性を明かす。

 

「鬼沢さんと龍澤さんにはまだ私の身分を明かしておりませんでしたね。

私はもといた世界でマギサ様のお母様により、マギサ様を守るために生み出された個体の一つです...こちらの世界で言えば私はクローンに改良を加えたものになります。ここ十年は教会所属の警察活動や孤児への教育の支援などをしておりました」

 

鬼沢と龍澤はミリサをゴーグル越しの暗視画像で見ながらも思う。

 

    【なんて嬉しい格好のシスターさんなんだ!】

 

「つまり、ミリサはシスターさんなのか?」

 

「はい。そうです鬼沢さん」

ミリサは相変わらず笑顔で若干地面から浮いている。

鬼沢はVSS静音狙撃銃を手に床から立ち上がり

 

「全員捜索開始だ移動するぞ!」

 

皆もその場から立ち上がり、警戒していたα班の要員も加わると鬼沢の指示した陣形を組み、速やかにその場から移動を開始しする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 03月03日 01時35分

最終更新日

2014年 03月15日 20時03分

 

第二十四話 奇跡の大都市での交渉

本文編集

第三次世界大戦でも奇跡的に核攻撃を避けた数少ない大都市のひとつ、東京の夜の明るさは、大戦前とさほど変わらない。やはり都市部に人口が集中するのはいつの時代も同じようだ。

そんな都市の光の上、上空を飛行する1機のティルトローター機内の壁際の兵員シートに腰掛け、二人の男女がヘッドセットを使い会話をしている。日本最大のPMC【民間軍事会社】特別軍事法人【NEET】代表の矢島と【魔女の弾丸便】社長のマギサである。

 

『ふぅ…おっサンキュ』

 

鬼沢と通信を終えた矢島に右隣に座るマギサがミネラルウォーターの入った500ミリサイズのペットボトルを渡す。そのペットボトルにはラベルがひときわ大きく貼られている。

【NEET】と白黒で印字されたラベルだ、売れているかどうか不明だが矢島の会社の自社製品らしい。

 

矢島はマギサに渡されたペットボトルの中身を軽く一口飲むとキャップを締め、口を開く。

 

『マギサ、ありがとう。一緒に来てくれて』

 

『矢島だけで日本政府に圧力かけさしたら殆ど脅しと変わらないじゃないの。それじゃ仕事が色々としにくくなるのよ』

 

マギサはそう一言言い放つとニヤつきながら、向かいの壁際の兵員シートに座る、全身黒ずくめの戦闘服姿の一団を軽く指さす。全員フルフェイスタイプの戦闘ヘルメットと強化装甲を装着したパワードスーツを着込んだ突入部隊な感じである。彼らの手はHK416自動小銃やミニミ軽機関銃を抱えている。これでは脅しどころか殴り込みである。

 

『仕方ないだろう…あの老害どもは日本の将来なんてせいぜい、自分達が存命中の残りの少ない期間しか考えてないからな…』

 

『そうね…老害はどの世界でも迷惑なものね。私の世界にも数百年近く権力の椅子に座り続ける碌でもないのがいるわよ』

 

『数百年かよ。よく殺されないな…ああ例の【救済】とやらで、なんとかなるのか…しかしお前の世界の話を聞くとガキの時に必死になって遊んだRPGを思い出すよ。全滅するたびに金が半分になって教会に運び込まれて、仲間の復活のために更に金が減る。それが無理なら暫く棺桶引きずって雑魚相手に金かせぎ懐かしいな…』

 

矢島の表情は少しだけ何かを思い出し優しい感じだ。

彼も子供の頃は平和な時代で育ったゲーム小僧の一人だったようである。

 

そんな彼にはかつて平和だった頃の日本と、国土の一部を占領され九州共和国を建国され国内には、ゲリラや凶悪犯、麻薬が溢れかえる今の日本はどのように見えているのだろうか。その心情の一旦は先程のマギサとの会話からうかがい知れるが、その真意は彼が行動に移すまでは決してわからないだろう。

 

『矢島も子供の頃はゲーム小僧だったのね♫我が社の一部の社員も私のオフィスでマ☆オとマ☆オカートを夢中でプレイするから、マ☆オとヨッ☆ーってあだ名をつけたわよ♫』

 

 

マギサも矢島もその後暫く、笑いを交えながら会話を続け---------

 

『矢島社長、もう間もなく首相官邸に着陸します。総理と防衛大臣は既にご到着と、通信が今入りました』

 

矢島とマギサのヘッドセットに通信員からの通信が入る。

二人の向かいの黒ずくめの隊員達は銃のチャージングハンドルやボルトを引き初弾を薬室に送り込む。

 

機内には複数の乾いた金属音がローター音やエンジン音に紛れ鳴り響く。

 

矢島とマギサの表情からは笑いが消え仕事をする勤め人の顔に切り替わる。

矢島はヘッドセットのマイクを口に近づけ口を開く。

 

『通信員、警察庁長官も呼びつけたはずだが、官邸に確認し報告しろ』

 

『確認します』

 

一分もしないうちに官邸から返信は届いたようだ。通信員は驚きを含んだ声色で報告をする。

 

『報告します!警察庁長官は辞表を提出し受理されたとのことです!後ほど経緯を総理サイドから説明するとのことです以上!』

 

矢島とマギサの顔には微かにだがイラつきを通りすぎ怒りが宿る。

 

『矢島…逃げられたわね』

 

『マギサ、長官の辞職で水に流すほど俺は甘くないからな。何せ今月だけで内の会社の戦闘要員以外の部門の社員すらも、各地の州警察に難癖つけて射殺されそうな事案が多発する異常事態なのに------------責任者が逃げるか!?』

 

『我が社の刈谷くんも機動隊に殺されそうになったから返り討ちにしたけど…なんなのあいつら----!』

 

マギサは右手で隣のシートを殴りつけるが怒りを口から吐き出す。

 

『大戦中は客船を護衛艦に護衛させて島影で未成年のガキとSEX三昧だったの公表されたいのかしら!?』

 

矢島とマギサはかなり怒っているようだ。

それもそうだろう。自社の社員を殺されそうになっただけでなく、責任者の首切りで事を収めようとする政府の対応は二人の怒りを目覚めさせるのに十分だろう。

 

『マギサ、そのネタを使うのはまだ先だ。あいつら変態だが権力の使い方をそれなりに熟知した皆様だ。慎重に行こう』

 

矢島は少しだけ自らの精神を落ち着かせ、マギサにも冷静になるように暗に促す。

 

『…連中まで相手にしたら多正面作戦になるからダメね』

 

冷静さを取り戻しつつある二人の耳元に通信員からの通信が入る。

 

『只今より着陸態勢に入ります。揺れますのでご注意を』

 

ティルトローター機は翼の向きを変え普段は池として使用されている庭の緊急用のヘリポートに着陸する。今回の着陸に合わせて水を抜いていたようだ。

 

機体後部のランプドアが開き真っ先に地上に降り立ったのは、矢島とマギサの向かいに座っていた完全武装の戦闘要員、その数は10人近い団体である。

 

彼らは矢島とマギサを囲むように護衛し小銃と軽機関銃を構え、ジリジリと官邸へと近づいていく。

 

そんな彼らに小走りで両手を挙げ、左右に振りながら敵意がないことを示しながら近づく者が数名、格好から官邸を警備する警察官のようだ。その中のひとりは手に拡声器を持っている。ティルトローター機のローター音で声をかき消されないための策なのだろうか、拡声器を使い声を張り上げる。

 

 

『矢島社長とマギサ社長の御一行様!こちらにお越し下さい!総理と防衛大臣がお待ちです!』

 

 

 

 

 ------------------首相官邸内総理執務室

 

 

「来ちゃいましたな。矢島社長とマギサ社長...総理、本当に椀原(わんはら)長官の辞表を受理して良かったんですかね?」

 

総理に話しかける声の主は中年を通り越した老人のようだ。

ソファーに座る彼のその風格はまるで、禿げた頭部とブクブクに肥えた体格からスーツを着たジャバ様である。

 

「神楽君、生贄は必要だよ違うかね?」

 

神楽と呼ばれた老人に話しかける総理と呼ばれた男、彼はまだ若さを残す声色をした少し白髪まじりで短髪、体格のしっかりした長身の男だ。

彼は神楽の隣に立ち、共に壁際に設置された大型モニターを見ている。

モニターには1機のティルトローター機が官邸の庭に着陸しているのが映し出される。

 

「そうですな総理、それに彼はここまで事態を悪化させた責任もありますからなぁ~その辺はお二人の機嫌を損ねないように上手く立ち回りませんと...色々と後が面倒ですな」

 

「全くだ。あんなガキどもに頼らないと復興も進められんとは...神楽君、危機管理室に移動するぞ。あのふたりを必要以上に待たすと気が重い」

 

「そうですな」

 

神楽はソファーから肥えた巨体を難なく起こして執務室を後にする。

 

執務室には一人、総理と呼ばれた男が残りモニターを横目に見ながら

扉へと歩いていく。

 

「...一体何者なんだ連中は」

 

総理と呼ばれた男は自らの疑問を言葉にして執務室を後にする。

 

 

 

 

 ---------------首相官邸地下危機管理センター会議室

 

 

 

 

 

防弾は勿論対爆仕様の分厚く真っ黒な扉が開き、黒いスーツ姿の

数名のSPに護衛されながら二人の男が入室してくる。

先程まで総理執務室にいた総理とジャバ...でなく神楽だ。

 

 

彼らの視線の先には部屋の中央に置かれた黒い逆【U字型】テーブルの右側に横並びで若い男女が同じく黒色の革張りの椅子に座っている。その後ろには5人ほど全身黒ずくめの強化装甲を装着したパワードスーツ装備の戦闘要員が銃を持ち警戒している。男はスーツ姿だがノーネクタイのクールビズスタイル

女はまるで大戦前の女子高生のような格好をしている。いや見る者が見れば

何処ぞの魔法少女の名を叫んで--------

 

「おおお!ハァ!ハァ!(゜∀゜)ほ☆らちゃん!ではないです------」

 

「さっさと座れ!ジャバ☆ット撃ち殺すぞ!」

 

先に叫んだのは興奮した神楽だ。

それにしても息が荒いし、目つきもいやらしさ全開の危険人物にしか見えない。

ヨダレを床に滝のように垂らしている。ほんとに人間なんだろうか...

 

その欲にまみれた叫びにドスの効いた声色と言葉で【おすわり】を命じたのは女子高生のような格好をし中指を立てた---------

 

「神楽君!レディに失礼だよ。マギサ社長、神楽防衛大臣のご無礼どうかお許しください!彼ももう70歳の老体故、少々ボケが進行してるかもしれませんので

何とぞご容赦を!」

 

マギサに謝罪を述べるのは総理と呼ばれた男である。

しかも綺麗に深くお辞儀をして謝罪を述べている。

 

信じられないことに一国の行政の最高責任者がである。

正直、ボケが進行してると自分が思うような人間を組閣の際に指名数んじゃないよと矢島もマギサも思うが口にしない。

 

「いいわよお辞儀までしなくも高橋総理、お互い忙しい身なんですからさっさと座って頂けませんか?」

 

高橋総理と神楽はテーブルの左側の椅子に横並びになり座る。

二人が座った直後会議室の分厚い扉が開き、グレーやブラウンのスーツ姿の男達が3名入室してくる。所属は分からないが恐らく役人だろう。手には書類の束と銀色のアタッシュケースを持っている。

 

「君達その資料を矢島社長とマギサ社長にお渡ししなさい」

 

口を開いたのは高橋総理だ。3名は両サイドに会釈を静かにすると書類の束と一つのアタッシュケースを矢島とマギサのテーブルの上に置き退室する。

 

「高橋総理...何だこれは?」

 

矢島はテーブルに置かれた資料とアタッシュケースを睨みつけると向かいの

高橋総理と神楽防衛大臣を同じく睨みつける。

その後ろには数名のSPがいるが遠慮なしだ。

 

「矢島社長、そんなに怖い顔をなさらないで下さい...まずは資料に目を通して下さい」

 

---------数分後

 

「...これ防衛機密資料じゃないか」

 

「矢島ちょっとこっちの資料見て-----」

 

矢島は資料を見て驚くマギサの資料を覗き込む、そしてそこには-----

 

「-----!?総理まさかあんたらも-----」

 

「ええ、そうですよ。仮にも一国の中枢に何十年もいるんですから、我々が気づかないわけ無いでしょう。【異世界】や【魔法】が厳然と存在してることくらい何十年も前から政府は把握しております」

 

矢島とマギサは予想外の展開に絶句している。

 

先程からだんまりを決め込んでいる神楽防衛大臣が口を開く。

その表情はさきほどと違い何やら凛々しい。

 

賢者モードにでも突入したのだろう。

 

「総理、やっと彼らと腹を割って話し合えますね」

 

「ああ...私も大戦前に前任者からこの事実を知らされた時は、そこの二人みたいに絶句したものだが...矢島社長とマギサ社長なら情報を共有できそうだな神楽君」

 

「そうですな総理」

 

マギサと矢島は資料を夢中で見ている。

そして、一枚の資料を見てマギサの表情が青ざめていく。

その一枚の資料を持つマギサの手はガタガタと震えている。

それを察したのだろうか、高橋総理が口を開き話し出す。

 

「マギサ社長、私達はあなたの会社【魔女の弾丸便】の社員や

矢島社長の特別軍事法人【NEET】社員の大半の戸籍やDNAを詳細に調べさしていただきました。その結果ひとつ結論に至りまし-----」

 

その刹那、高橋総理の会話を遮るかのように矢島とマギサの後ろで二人の護衛についていた黒ずくめの戦闘要員が銃を構え銃口を総理たちに向ける-----

 

------それに応じるかのようにSPも懐から大型の自動拳銃を抜き必死な顔で構える。

 

------一色触発寸前-----だが

 

 

矢島は両手を掲げ叫ぶ---「撃つな!お前ら!」

 

-----高橋総理も「やめろ!」と大声で叫ぶ。

 

ほぼ同時に双方の護衛を制し辛うじて銃撃戦を回避する。

しばしの静寂が会議室に満ちる。双方の護衛は銃を収めたが会議は一時中断状態だ。

 

しかし、まるで総理の会話は矢島やマギサを通り越して後ろの【NEET】

所属の戦闘要員の殺意を直に刺激する内容だったようだ。

 

それも当然だろうか総理の会話の内容は【お宅の会社の社員の素性は云々】なのだから、実際にPMC所属の人間には昔ほどではないが素性の怪しい連中も紛れていたりする。しかし、特別軍事法人【NEET】や【魔女の弾丸便】位のしっかりした法人なら入社の段階でそういった連中は弾いていることで業界内では通っている。だが、不逮捕特権等を有する基本的には日本政府に身柄を拘束されないPMCの経営者であるマギサの青ざめ方といい、後ろの戦闘要員の対応は異常だ。痛いところを突かれたと言うより【何故それを知っているのか!?】というような秘密を知られた者の驚きといった感じに近いだろう。

 

一方、マギサと対極に矢島は落ち着いている。

おそらく彼はこうなるのも想定していたのだろうか。

 

「マギサ社長、我々はあなた方PMCの必要性を理解しております。あなた方がいないと日本の復興に支障をきたします」

 

静寂の後一番に口を開いたのは高橋総理だ。

先程中断した会話の続きを再開するようである。

 

 

「皆様の会社の社員の素性を調査した件ですが、約80パーセントの対象が当初、【背い乗り】の疑いで公安に調べさしておりました」

 

【背い乗り】大戦前スパイ天国と呼ばれた日本ではかつて存在した、隣国の工作員等による実在する人物の戸籍等を乗っ取りその人物に成り代わることが工作活動の一環で行われていたのは多くの国民が報道で知る事実である。

 

「ですが詳細に調べていくと住民基本台帳や国民総背番号など電子化されたデータや旧都道府県や市町村、州の書類などを精査しても異常がなかったのですが...流石にDNAと法務省に保管してる書類までは改竄できなかったみたいですね」

 

総理は少し含みを持たした笑を口元に生じさせる。

 

マギサはさきほどと違い少しだが、落ち着きを取り戻している。

だが、その顔色はやはりすぐれない。

 

「そこで、【あるデータベース】に照合させますと妙な結果が出ましたよ...背乗りを疑われた80パーセントの人間の大半が結論から申し上げますと親の組み合わせ上、日本国籍を有する男女の私生児と出ましてね。他にも片親のDNA情報がデータベース内に一切存在しないケースや叔父叔母は存在するが、親のいないケースなどもありまして--------」

 

マギサの額からは冷や汗が一筋の流れを作り、テーブルの上に数滴ランダムに雫を落とす。

 

 

「------個別に時間を掛けて背乗りを疑われた社員の両親としてはじき出された対象の履歴を詳細に調べましても...とても背乗りを疑われた人物を作るような行為まで至る男女の関係の痕跡どころか....出会った形跡すらないんですから---------!」

 

総理の話は続く

 

だが、一枚のA4サイズの書類を掴むマギサの両手は小刻みに震えている。

 

「他にも何らかの組織が違法に不特定多数の男女の生殖細胞を採取し、人工受精等で大規模に人間を出産させてる可能性も調査しましたが、これも当時の医療技術の水準やコスト、人の移動規模等を考えても大規模過ぎて現実的でなく、ありえないと出まして、最終的にある結論に達しましたよ...」

 

 

マギサの脳内は自身の日本政府や総理陣営への評価が甘すぎたことへの後悔の念で満たされようとしている。

 

「マギサさん...あなたは他の世界に自由に移動できるでしょう?そこから自社やNEETの人材を引き抜いてきたんじゃないですか?」

 

震えるマギサの手にした書類の最後にはこう書かれている。

 

【関係各省庁の機密情報等と照らし合わせて解析した結果 導き出された結論は以下の通りである。民間軍事会社 魔女の弾丸便 特別軍事法人NEETの背い乗りを疑われた社員は他の世界から来た日本人及びそれに準ずる者たちと結論づける】

 

マギサは手にしていた書類を手元に置き、顔を両手で覆い呼吸を落ち着かせ

静かに両手をテーブルに乗せ、眼を見開くと口を開く。

 

「...総理よく調べられましたね...この結論に至るまで何年かかりました?」

 

「大戦終結後に君達が派手に動画デビューしたろ、その頃から少しずつ調査してその結論については先月至ったよ。決定打は先月、領空侵犯をして硫黄島に強行着陸した君の家に使えてる------」

 

「総理!ミリサちゃんですぞ!ミリサちゃん!ハァ!ハァ!ハァ!ミリサちゃん~ああああ!!!愛しいですよおおお~~!!」

 

神楽防衛大臣は興奮した様子で総理の話を遮り、ミリサへの愛を叫ぶ。

老齢の割に賢者タイムは短いようだ。

 

「総理、そこのジャバは内のミリサになにかしました?」

 

マギサの顔色はまだ、少々悪いが睨みつけるように総理とジャバ...神楽防衛大臣を見据え話しかける。

 

「ん?神楽くんは丁度、ミリサさんが来た時、硫黄島の空軍基地視察に出かけていてね-------おい神楽君、ミリサさんに何か失礼なことはしてないよな-----?」

 

神楽防衛大臣はいつの間にか、ヨダレを垂らしながらミリサのことを考えているのだろうか?幸せそうな寝顔をテーブルの上に乗せている。

 

「あ~あ寝ちゃったね神楽君、おい彼を医務室へ運んでくれ」

 

総理は後ろのSPに神楽防衛大臣を運ぶように命ずる。

だが、とても人力では運ぶのが困難なので救急隊員をインカムでSPが呼び出し、ストレッチャーに乗せられ神楽防衛大臣は退出させられる。

話別小説情報

 

掲載日

2014年 03月16日 01時40分

最終更新日

2014年 03月29日 15時49分

 

第二十五話 地下街の深淵で

前書き編集

----------------【駅舎内 地下ホール】

 

「急いで死体をボディバックに詰めろ!」

 

駅舎地下のホールではNEET隊の現場指揮官が激を飛ばしながら大急ぎで数十名の隊員が作業をしている。

 

鬼沢達と入れ替わるように地下のホールに攻め込んできた二個小隊規模のオークと少年兵の大半は今や、大半が動かぬ血まみれで穴の空いた肉塊や肉片と化し、NEETの隊員達の手によって黒いボディバックに大急ぎで詰められている。

 

どうやら物の見事に重武装のNEETの返り討ちにされたようだ。

先程まで、丁度α班が待機していた壁際には数名の少年兵とオークが膝まつき、両手を頭頂部に置いている。

 

-------捕虜のようだ。

 

だが、数名とも武装解除は当然としても着衣まで脱がされ

 

--------全裸である。

 

少年兵は肌の色から褐色の肌で臀部に蒙古斑があることから、モンゴロイドであると確認できる。大戦後の日本国内や周辺でポピュラーな少年兵だ。

 

駆け出しのPMC【民間軍事会社】要員がまず、はじめに仕留めるのも大抵はこの手の少年兵である。

 

一方、人外であるオークはピンク色の肌に臀部付近には小さな尻尾がチョロっとある。

正直顔つきについては人間にもこんな奴いるなって感じの豚顔を更に豚っぽくした感じである。

 

因みに顔つきや全体的な肉付きにも個体差は感じられない。

 

-----------まるで量産されたクローンのようだ。

 

そのオークを含む捕虜をXM8自動小銃を向け監視してる隊員が約10名ほどいる。皆、鬼沢達に同行してるα班同様の黒いフルフェイスメットに黒い戦闘服で身を固めている。

 

そのうちのふたりは何やら会話をしているようだ。

 

「なぁ、この豚ども銃を使ってやがったな...」

 

片方の隊員は右手で小銃を構えながら左人差し指を動かし、自分達の少し手前に転がるマガジンを抜き薬室からも弾を抜かれたブルパップ型の自動小銃を指し示す。

 

床に落ちているのは【QBZ95自動小銃】かつて存在した国家の一つ、中国を支配していた独裁政党の私設武装組織【人民解放軍】の主力火器である。

 

床に転がる小銃を指し示す隊員の左隣の隊員が口を開く。

彼はしっかりとストックを右肩に当て捕虜に狙いを定めている。

 

「少年兵はまだしも、この豚ども銃を使うぐらいの知能はあるんだな...」

 

 

彼はガングリップを握る力を強めると口を開く。

 

 

「なんせ女学生を拉致してレイプするくらいだからな!」

 

-------連続射撃音がホールに鳴り響く

本文編集

 

 

 

鬼沢達一行は地下街の奥へと銃を構え陣形を組みながら進行していく。

 

先頭は全身黒ずくめでXM8自動小銃装備のα班の三名、その後ろをFN MAG機関銃をアイアンマン給弾システム仕様で装備の真希とMP7PDW(パーソナルディフェンスウエポン)装備でナビ役の龍澤、最後尾を指揮官の鬼沢と戦闘能力は真希曰く、【鬼沢達といい勝負らしい】

宙を浮きながら移動する異世界からの来訪者ミリサで布陣している。

 

途中、瓦礫やバリケードによって行軍スピードを落としているが、今のところ敵には遭遇していない。

 

捜索隊メンバーのインカムにHQから通信が入る。

 

『こちらHQ、捜索隊に告ぐ。先程交戦した少年兵とオークは制圧した。なお両者は共同で我々を襲撃してきたことから混成の部隊である事が判明、少年兵3名とオーク4体を捕虜にした以上-------』

 

『こちら捜索隊指揮官鬼沢、了解した。捜索を続行する』

 

鬼沢は宙を浮きながら移動する隣のミリサに話しかける。

 

「ミリサ、少年兵とオークの混成部隊に関して君は何か心当たりはないか?」

 

「いえ、私も初耳です。ただ…こちらの世界のならず者と既に徒党を組めるくらいに

私の追ってきた連中はこの世界に拠点を築きつつあるのが伺えますね」

 

「そうだな…君も俺たちと同じくアノ麻薬を追ってこちらの世界に来たのか。

教えてくれミリサ、あの麻薬はやはり君達の世界でも危険な代物なのか?」

 

ミリサは少しだけ考え込み重い表情になるが口を開き語りだす。

 

「鬼沢さん、あの麻薬は私達の世界では最近まで、それ程一般的な代物ではありませんから危険視すらされていませんでした。魔族や亜魔族、人間や亜人の支配階級が媚薬として使用し、娼館に売り飛ばされた娘を仕込むために使用されるそれなりに高価な薬です」

 

「だが…一般的になるような変化があったのかミリサ」

 

「はい、製法を独占し秘匿してきた薬物調合ギルドの本部が何者かに襲撃されてから、粗悪な品も含めて各国の都市部を中心に蔓延し一般に流通しだしたのが約3年前の出来事です」

 

やはりろくな薬でないと鬼沢は思うが少し考える。

(3年前と言えばこちらでも流行りだした時期と一致するな…)

考えのまとまった鬼沢はミリサにある質問をする。

 

「ミリサ」

 

「はい、なんでしょうか鬼沢さん」

 

「こちらの世界と君の世界を行き来する際、どのくらいの時間がかかる?それと時間差が生じる事はあるか?要はもといた世界に戻ると自分が過ごした時間より時間経過が長い短いとかだが」

 

「転移事態は一瞬で終わりますが、転移の準備にはそれなりの時間を要します。時間差については------」

 

ミリサは宙に浮いて移動しながら左人差し指を頭にトントン当て考え悩むような仕草をする。その表情は年頃の女の子といった感じで可愛らしい。

 

「私自身はこちらに来たのは初めてですが、マギサ様がこちらに来てから経過したのと同じだけの時間経過が私の世界でも経過しておりますので、結果として双方の世界を行き来するのは、他の大陸に移動したりする感覚と差が無いように考えますが」

 

「なるほど、ミリサありがとう」

 

「お力になれて光栄です」

 

ミリサは鬼沢の力になれた事に満足したのだろうか、先程より表情を明るくしている。

 

鬼沢は合点がいったようだ。

(タイムラグもないとなるとそりゃ海外行くのと変わらんから悪さしようと考える輩も現れるか…ん?)

 

『全員停止、150m先に数体の熱源反応-----画像解析終了-----オーク2体、少年兵5人、全員ブルパップ型の自動小銃を装備、信じられない...配置や仕草からオークが少年兵を指揮している』

 

先頭を行くα班からの通信がインカムに入る。

皆、姿勢を低くし付近の物陰に潜む。

 

『α班、サプレッサーを装着し射撃準備』

 

 

『α班了解--------』

 

だが、鬼沢の指示に龍澤が割り込む

 

『こちら龍澤、鬼沢、俺の小型偵察機を使い更に奥を偵察してからそいつらは排除しよう。敵を索敵し死角を潰すのが先だ』

 

『龍澤、偵察機はあと何機ある?』

 

『5機だ。何機使う?』

 

『2機飛ばせ1機は迂回させて飛ばせ』

 

『了解』

 

 

 

--------龍澤は胸のベストのポーチから円柱状の筒を2本取り出すと

軽くひねり小型飛翔無人機を宙に放つ1機は自分たちが来た道を逆行させる。

様に端末を操作し設定する。

 

 

 

 

 

--------数分後

 

『こちら龍澤、連中は歩哨だ。歩哨の背後は...ああ別の私鉄の駅舎地下に繋がってるようだ。構造的には俺たちがさっきまでいた駅舎地下ホールと大差がないな

索敵範囲内の敵総数は少年兵120、オーク46体の大所帯だ」

 

『龍澤、連中の配置図を全員に送信しろ』

 

『了解』

 

鬼沢は龍澤に送らせた敵の配置に関するデータを自身のゴーグルだけでなく

ベストのポーチに入れてるスマートホンタイプの小型端末にもデータを送信し取り出すと隣のミリサに見せる。

 

「ミリサ、これが敵の配置だ赤い丸が敵で青い三角が俺達だ--------」

 

鬼沢は一通り配置図の説明をミリサにする。

これから戦闘になるので戦闘準備をするようにミリサに指示を出すと-----

 

「鬼沢さん、この場は私が先陣を切らせていただいてもよろしいでしょうか

?皆様は私が仕留めそこねた敵を排除して下されば進軍も順調に進めれるかと思いますがいかがですか」

 

「ん...しかし君の戦い方を------」

 

鬼沢のインカムに真希から通信が入る。

 

『鬼沢、私はミリサの進言に賛成だよ。敵の配置データを見たら歩哨以外のオークは例の剣を装備している。ミリサなら連中相手の戦闘も手馴れてるから無難だろう』

 

鬼沢は考えそして直ぐに-----

 

『全員に作戦の変更を通達、ミリサを先頭に敵陣に突入 龍澤は残りの無人機全部を飛ばして死角を潰せ 無人機をオートに切り替えデータを全員に送信させ続けろ 龍澤は真希の側面援護に付け俺が合図を出したら戦闘開始だ以上 』

 

『α班了解』

 

『真希了解』

 

『龍澤了解』

 

「ミリサ了解です---鬼沢さん」

 

インカムで返事を飛ばした隣のミリサが鬼沢に話しかける。

 

「ん..なんだミリサ」

 

ミリサはニコッと微笑み口を開く。

 

「よろしければ私のそばで私の戦い方をご覧になりませんか、鬼沢さんに護衛していただけると私としても心強いですし、鬼沢さんの戦い方を私も見たいのですが....」

 

「そうだな...いい機会だ。見せてくれ君の世界の戦い方を」

 

「はい」

 

ミリサは笑顔で返事を返すと宙を浮きながら前方に移動する。

鬼沢もミリサに合わせて移動しα班の前方約2メートルの位置に着くと

 

「ミリサ、始めてくれ」

 

ミリサは静かにコクっと笑顔で頷き両手を前に突き出し何やらブツブツと

小声でささやき出す。

 

 

『全員戦闘準備構え』

 

鬼沢の指示がインカムに鳴り響き

 

全員がガングリップに込める握力を微かに強める。

 

 

 

 

--------ミリサの視点

 

 

(この世界では魔力を練るのも負荷が大きいわね...脅威度の高い順に魔力弾を叩き込んで残りは各個撃破で行くしかないか...)

 

私は両腕を前に突き出し魔力波を周囲に放ち敵を捕捉する。

やはり一番脅威度が高いのは、本来なら亜人やオークが持つことを禁じられた教会工廠製の魔斬撃を繰り出す剣を装備したオーク その次にこの世界が発祥の武器【銃】を装備したオークと少年兵だろうか

 

私は小声で自身の両腕に施してる安全術式解除の言葉を発し解除していく。

安全術式を一つ解除するたびに両腕の骨が軋む音が私に伝わってくる。

 

この感じは、私の故郷の国境付近に張り巡らされた対魔力結界内ほどでは無いが、結界内で強引に魔力を練る感じに限りなく近いもので少々きついものだ。

 

 

人間や亜人の場合は詠唱して術を発動させるが、それも【広域増幅器】の範囲内にいなければただ、言葉だけが虚しく辺りに響くだけの意味なき行動である。

 

だが、私達【魔族】はそんなモノなど必要とせずとも術を使える。

それゆえに私達はいつの頃からか【魔族】と呼ばれるようになったのだから

 

私は7つある安全術式の最後を解除し両腕の戦闘術式を起動させるため

両腕に火属性向けに濃度を高めた魔力を注ぎ込む。

濃度を高めた魔力を送り込んだ刹那、私の両腕は真っ赤に光り輝く霧に、うっすらと包まれる。

これで魔力弾を撃ちだすことが可能になったのを確認した私は、隣の人間の男性に話しかけ指示を仰ぐ。

 

「鬼沢さん、攻撃準備完了です。ご指示を」

 

私の隣には、この世界の一般的な武器である【銃】を構えている鬼沢さんがいる。

彼は私が初めてこの世界に来た場所の【硫黄島 空軍基地】なる場所に多くいた人間兵士が装備していたものと似たような形であるが、色違いの兜を装備している。彼の其の兜や衣服の柄も独特で濃い灰色や薄い灰色などを組み合わせた見たこともない柄である。

 

私のこの世界での初めての友人、真希さんの話によると彼の装束の柄は市街地での戦闘用に作り出されたものらしい。

 

敢えて私たちの世界でその柄に似たものを挙げるとしたら亜魔族領内の高山地帯に住む戦闘に長けた竜人族の肌の色に近いだろう。

 

「ミリサ攻撃開始!」

 

鬼沢さんの指示を聞いた私は頷き魔力弾を両腕から連続して撃ちだす。

真っ赤な球体状の魔力弾が瞬く間に私の両腕を駆け抜け両掌から飛び出していく。

 

魔力弾を撃つたびに、魔力の塊が私の両腕内で生成されながら蠢く感じが連続して私に伝わる。やはりというべきだろうか、魔力を練りにくい場所でのこの感触はまるで...首から下が泥沼の中に浸かり、動き回るような感じで不快だ。

 

 

魔力弾は私の両腕から発せられる魔力波に誘導されながら敵のもとへと殺到し着弾する。

着弾と同時に複数の轟音が地下街に鳴り響く。

 

私の放つ魔力波の反射波から敵の気配が8割程消滅する。

それと同時に私も耳元に装着してるこの世界の通信用の道具インカムに通信が鳴り響く

 

『こちら龍澤、今の攻撃で敵の約八割が消滅...俺が使ってたマイクロミサイルなんて目じゃねーなこりゃ!』

 

『こちら鬼沢、龍澤、驚くのは後だ...残敵を各個に撃破しながら前進開始以上!』

 

「ミリサ前進するぞ!」

 

「はい!私は近接用装備に切り替えます。鬼沢さんは銃で援護してください」

 

私はそう言うと、両腕を頭上に掲げ

 

両腕にまとわりつく、光り輝く赤い霧を手のひらに集めるように意識を集中させ

 

真紅で片刃の刃を2本作り出す。

 

私は2本の刃を握り締め手前につき出し構える。

 

 

私は魔力波を額からも放ち一番近くの敵のいる方向を確認する。

私は足元の宙に魔力の壁を瞬間的に形成しつつ、その壁を蹴りながら敵の方向へ

 

勢いをつけて駆けていく。

 

加速した私の横を、生身の人間にしてはやけに素早い動きで信じられない事に

 

難なくと鬼沢さんが銃を構えながら駆けてくる。

彼もNEETの皆さん同様にこの世界の鎧のパワードスーツなるものを身につけているのだろうか...

 

「ミリサ!前を見ろ!敵だ」

 

鬼沢さんがそう言うと私は視線を前に向ける。

その先には、額の魔力波で捕捉した敵が数体いる-----

 

突如、鬼沢さんのいる私の右隣の方向からボシュボシュと何かが弾けるような音が数回する。それに続いて微かにだが床に何かが落ちる音が

 

私の耳に鳴り響く----と感じた刹那

 

前方にいる敵の内4名の少年兵が銃を構えたまま、頭部を撃ち抜かれ倒れていく。

鬼沢さんが銃で撃ち抜いたようだ。

それにしても私の知ってる銃と違い発射音が殆ど無いに等しい。

それに気のせいだろうか、その銃の感じは私の世界にも近年溢れてるエーケイやカラシニコなどと呼ばれる銃となんとなく似てる感じを受ける。

そんなことを思いながらも私は視線を前方に向け敵を視覚と魔力波で同時に確認する。

 

先程の魔力弾の一斉攻撃で滅した歩哨と入れ替わるように来たのは、魔斬撃を放つ剣を装備したオークが3体にその前方に銃を構えた残りの少年兵が3名と私は瞬時に再確認する。

額から出す魔力波だと瞬時に敵の数から種類、武装の有無種類も解るが、探知距離は短く魔力を大量に消費し疲労感も激しくなるのが難点だ。

今度、真希さんに頼んで鬼沢さん達が使用してるゴーグルの使い方を覚えよう。

 

 

そう考えつつ私は宙をより一層、力強く蹴り敵の真ん前に飛び込み着地し----

 

------床のタイルを踏み砕き破片をまき散らしながら-----

 

------刃に魔力を注ぎ込み------真紅に光り輝く魔力を帯びた霧を刃を取り巻くように大量に発生させ-------敵に浴びせる様に剣を振りきる。

 

敵は言葉にならない叫びを一瞬あげ、吹き飛ばされながら血肉と骨、粉々に砕けた装備と混ざり合った塊に変わり周囲の壁や天井に張り付く。

床には飛ばないように事前に斬撃を設定してるので行軍に支障は無いはずだ。

パンパンと音を響かせながら弾け小さな煙と発火してる壁、天井の箇所が何箇所か見受けられる。恐らく銃の弾薬が引火したのだろう。

 

私の世界では近年、銃を装備した人間や亜人が領主や教会へ反旗を翻しており、私自身も銃を装備した暴漢を切り刻む機会がそれなりにあり最早、見慣れた光景だ。

 

私の周囲に鬼沢さんやα班の皆さんが駆け寄ってきて立ち止まる。

 

「........」

 

「........」

 

「........」

 

「....ミリサ」

 

鬼沢さんの呼びかけに私は笑顔で応じる。

 

「なんでしょうか鬼沢さん」

 

「....残りの敵もこの調子で始末できるか?」

 

「はい!承知致しました。鬼沢さんも引き続き援護をお願いします」

 

「お~い鬼沢さんよミリサちゃんの戦い方どうよ?マジ最強じゃね?」

 

私達のところに真希さんと龍澤さんが銃を構えたまま駆け寄ってくる。

龍澤さんは何やら周囲の壁や天井を交互に食い入るように視ているみたいだ。

 

「龍坊、ミリサちゃん怒らすとこうなるんだぜ」

 

そう言われた瞬間、龍澤さんの体がビクッΣ(・ω・;||| と震えるのを私は捉え即座に龍澤さんに誤解されないように真希さんに話しかける。

 

 

「ちょ!真希さん!----龍澤さん怯えてるじゃないですか!」

 

私は微笑みながら龍澤さんの顔を見ながら話しかける。

 

「龍澤さん、真希さんの言うことを本気になさらないでくださいね」

 

その言葉を発した直後、天井から数滴の血が私の頬に落ち一筋の流れを唇付近に作り出す。私は唇の淵に到達した血の雫をつい、いつもの癖で--------

 

--------舌でペロリと舐めてしまう。

 

気のせいだろうか、先程より龍澤さんがひときわ大きく一瞬、体を震わせたような気がしたのだが...

 

「よっ、よろちくお願いします!ミリサさん」

 

彼は言葉をかみながらも丁寧にお辞儀までしてくれる。

 

 

彼とは仲良くなれそうだと私は思う。

話別小説情報

 

掲載日

2014年 03月17日 14時56分

最終更新日

2014年 05月03日 23時20分

 

第二十六話 追跡者降臨

本文編集

【駅舎地下ホール】

 

 

捕虜を監視していた一人のNEET隊員が、

捕虜に向けて銃撃をしようとした-----刹那

------捕虜を囲んでいる隊員たち目掛けて、頭上から黒細い何かが降り注ぎ銃撃をしようとした隊員は何かに体を貫かれ、足元に全弾を撃ち尽くし----------周囲でサンプルの回収をしていた隊員の半数も------

----------降り注いだ何かに貫かれ----------次々に絶命していく。

 

それは黒い杭状の物体だった。

 

『全員散開しろ!HQこちら--------』

 

生き残ったNEET隊の指揮官は素早くインカムで指示を出すが------

 

------「ぐはっ!...」

 

彼はHQに報告を終える前に、謎の黒い杭に狙い撃ちにされ息絶える。

 

(なんだ...これは..クソッ!)

 

現場で自動的に指揮を引き継いだ事がゴーグルのモニターに表示された

隊員は、驚きながらも指示を出す。

 

『全員射撃開始!』

 

彼のインカムには生き残った隊員から一斉に(了解!)と

 

力強い返信が鳴り響く。

 

それと同時に無数の銃声も彼の耳に鳴り響き出す。

飛び交う銃弾は逃げようとする捕虜のオークや少年兵を次々と撃ち殺すが---------(なんなんだ...これは?! )

 

この現場で最高指揮官になった彼の戦闘ヘルメットのIRセンサーからは

信じられない情報が彼のバイザーに表示される...

ホールの天井に-------------------------------青空が出来ていたのだ。

 

まるで井戸の底から青空を見ている様な光景である。

 

彼は咄嗟に思い出す。

 

数時間前、ここに来たとき電気系統を調べていた隊員が

 

口にしていた言葉を......

 

電気系統は死んでるのに何故か、地下のホールだけは照明が点灯してると漏らしていたことを...彼は先程まで、調査ミスだと思っていた。

 

 

(------天井...いや空に!? 熱源反応が多数だと----)

 

呆然とする彼のバイザーには、ヘルメットのIRセンサーが捉えた多数の熱源反応が表示され------警告表示がされ、警報音が鳴り続ける。

 

『----応答しろ----! こちらHQ! 速やかにホールより撤退せよ繰り返す撤退せよ------』

 

彼はHQからの呼びかけで冷静さを取り戻し、インカムで

自分の指揮下にある隊員に指示を出す。

 

『全員地上に撤退せよ! 繰り返す! 撤退せよ! -----?!

うぉおおおお!』

 

インカムで指示を出した彼の眼前には、突如できた青空から大柄な人影が勢いよく着地してくる。彼は構えているXM8自動小銃で----------------

-------------目の前の敵に向けて片手でフルオート射撃を浴びせながら、地上へと退避する。

 

床には、逃げ遅れ串刺しになったNEET隊員の死体が転がり-----

ホールの奥では乱戦状態で既にホールに降り立った敵と遭遇した

 

NEET隊員が白兵戦を繰り広げているようだ。

 

ナイフで切りつけたり、刺そうと試みたり、サイドアームの

大型自動拳銃で射撃をする隊員もいる。

中には装着したパワードスーツの筋力増強システムを利用し

殴りかかる者もいるが...

 

どうやら白兵戦は敵の方が、かなり手練れているようだ。

敵はNEET隊員のこれまで交戦したゲリラや少年兵

異界から来たオークと違い、銃を主戦力として使わない未知の敵だった。

 

それに加え、殆ど素手に近い隊員とは相性が最悪だ。

 

敵の武器は大型の剣にハンマーなどである。

降り立った一団はパワードスーツで武装したNEET隊員を遥かに-------------上回る機動性を発揮し、NEET隊員を一人ずつ確実に数名で

取り囲み攻撃を加え-------頭部を中心に斬撃や打撃を連続して

与えていき、次々に仕留めていく。

 

「-------!こいつら弱すぎだぜオラオラ! お得意の飛び道具はどうしたぁあああ!」

 

赤い肌をした巨漢の男が笑いながら、力任せに大剣を振るい次々と

NEET隊員の頭に刃を振り下ろし頭を兜割りしていく。

彼の周りには頭部を破壊され血まみれな隊員の亡骸が次々と転がり出す。

 

彼が笑いながら大剣の刃を振るうたびにその数は増えていく。

 

彼は隣でハンマーを振るう青い肌をした

ボンキュッボンな女性に話しかける。

 

二人ともよく見るとその肌の表面には鱗ができている。

体毛のたぐいは頭部以外はないようだ。

男は黒髪で長髪、女は赤髪で短髪のようだ。

 

服装は腰に獣の皮を利用した腰巻きを巻いているだけの軽装

これで、角が生えて金棒を装備していたら、まんま赤鬼と青鬼である。

...青い肌をした女が口を開く。

 

「あんまり調子に乗るんじゃないよルガス...」

 

ハンマーを振るう青い肌をした女は、赤い肌をした男に話しかける。

男の名はルガスというようだ。

女は今現在、自身の肌と同じ色をした大型のハンマーを使い

パワードスーツ装備のNEET隊員を叩きつけ、壁にめり込ませている。

隊員はもがいて壁から逃げ出そうとしているが...無理なようだ。

 

(クソッ...なんて馬鹿力だ...くそぉおおおなんでこんなめに----!?)

 

必死にもがき続ける隊員に、二人の何やら嫌な響きのする-----------

------------------------会話がセンサー越しに聞こえ出す。

彼は鬼沢達と違い、ミリサの翻訳術を施されていないので理解はできないが...ニュアンスから自身の末路を想像し、恐怖に駆られさらにもがき出す。

 

「姉さん、そいつ生きてますぜ♫」

 

「へ~え流石、銃を生み出した連中の本拠地だけはあるな...しぶといな」

 

女はルガスに姉さんと呼ばれる。彼女のほうが彼よりは立場が上のようだ。

彼女は、ハンマーを壁にめり込ませた隊員から、静かに離すと...息を吸い込み、眼に力を込め隊員を睨みつけると、まるでバットをフルスイング

するかの如くハンマーを構え---------------------

 

「キサマらの武器で! 何人の仲間が殺されたぁあああああああああああ!」

 

 

-------などと叫びながら、一通り隊員を滅多打ちにし終えると、再び構え直し-----ハンマーを握る握力を高めそれに合わせるかのように-----

----ハンマーは青い光をゆらゆらと発し帯び始め、彼女は----

 

--------隊員の腹部付近に向けてフルスイングする。

 

青い光を帯びたハンマーを叩きつけられた隊員は、もがくのをやめ...

ヘルメットのバイザーに自身の内蔵や血の混ざりものをぶちまけ絶命する。

その光景を見てルガスは笑いながら姉さんと呼んだ女に話しかける。

 

「うわっ~俺みたいに一撃でやらないなんて姉さんひどすぎWWW」

 

そう言いながらも彼も次々と襲ってくるNEET隊員の頭部を大剣で兜割りしていくが-------

 

「?! ------やばい姉さん! 連中大筒で仲間ごと吹き飛ばす気だ!」

 

ルガスの視界には、NEET隊の指揮を任された先程の彼が

数名の部下を引き連れ、ホールに戻って来るのが映る。

110ミリ携帯対戦車榴弾発射筒(パンツァーファウスト)を構えさせ

発射姿勢なのが映るが--------

 

「どきな! ルガス」

 

姉さんと呼ばれた女はルガスを払いのけると、

ハンマーを抱え発射筒を構えた隊員達と向き合い------

 

『全員撃て!』

 

『了解』

 

NEET隊指揮官の指揮によって、110ミリ対戦車榴弾は

 

一斉に容赦なく発射される。

 

続けて軽機関銃を装備した数名の隊員が指揮官の殺意のこもった

 

『撃ち続けろ!』

 

との命令に従い機銃掃射で弾幕を張り続け----------

--------最後に地上から応援に来た隊員が、大急ぎで

連発式のグレネードランチャーを撃ちまくる。

 

(仲間ごと...攻撃したんだ...死んでくれよ)

 

指揮を取る彼は、即座に非常時の戦闘マニュアルに従い...

 

仲間ごと攻撃している。

 

今の彼には、巻き添えで殺す仲間への懺悔の気持ちより、敵を排除し

生き残り、事態を本社に報告する事の方が上回っていたりするのだが、

 

その必要性も火混じりの煙の向こうから大量に飛翔してきた-----

-----大量の黒い杭によって貫かれ------全否定される。

 

駅舎地下ホールに展開していた日本最大の民間軍事会社

特別軍事法人NEETの隊員は、異世界の敵との戦闘に敗れ全滅する...

徐々に煙が晴れていくとそこには---------

 

数十名の赤や青い肌をした、大剣やハンマーで武装し革製の腰巻を巻いた

異形の集団が無傷で笑を浮かべながら立ち尽くしていた。

彼らの足元にはオークや少年兵の死体に混ざり..

.全身黒ずくめのパワードスーツで武装した

血まみれのNEET隊員の亡骸が横たわっている。

 

「...日に二回も串刺しにしちまってらぁ~姉さん...そうとう切れてるな」

 

ルガスは姉さんと呼ばれた女の後方でボソリとつぶやくと、彼の脇を一人の青い肌とロングヘアーをした、大剣を装備した別の女が、早足で駆けていき姉さんと呼ばれた彼女の近くに跪くと彼女に話しかける...

 

「ベルーシャお嬢様、ウルデリック司祭様と通信が取れました...速やかにニホン側の国境を抜け本隊に合流せよとの命令です。座標は-------」

 

先程までルガスに姉さんと呼ばれていた彼女は、べルーシャと呼ばれる。

それが彼女の名前のようだ。

 

べルーシャは床にハンマーを振り下ろした姿勢で-------

 

-------『#$&’()&$#)!$&’()=(’’(!!!~♫』

 

未知の言語を鼻歌交じりで口にしている。

 

まるで、彼女の言葉に合わせるかのように彼女の眼前には青い光を帯びた

見たこともない文字や記号のようなもので彩られ、地球上の知識で表現するなら魔法陣と言われる代物が、展開され不気味に青く光り輝き回転を続けている。

 

べルーシャが言葉を唱えるのをやめると、魔法陣は瞬間的に消え失せる。

彼女が振り下ろしたハンマーの先の床には、NEET隊員が一斉に発射した110ミリ対戦車榴弾や、グレネード弾が着弾したのだろうか...

 

赤く燃え続けるクレーターが無数にできている。

彼女は姿勢を正し、ハンマーを肩に抱えると口を開く。

 

「なんだいオルーシャ、あの変態司祭からの命令かい...仕方ないもう少し骨のある敵を探して肩慣らしがしたかったが、当初の予定通りニホン国内に展開する本隊に合流するか...」

 

彼女は報告をしに来た女をオルーシャと呼ぶ。

べルーシャとオルーシャの会話からは上下関係であることが伺えるが

その口調からは、緊張感が必要以上に生じない、親しい友人との

やり取りのようにも聞こえる。

 

べルーシャは床に横たわるオークの死体を睨みつける様に見ると

静かに口を開く。

 

「しかし、あの変態司祭は...東部ドルアでオークを使ってエルフや妖精族相手に遊んだのが癖になったみたいだな!」

 

-------思い切り憎悪と侮蔑に満ちた言葉を吐き出す。

余程、ウルデリック司祭なる人物は嫌われているのだろう...

 

「お嬢様、一応あの様な下賎な趣味の持ち主でも、今や救済教会で数少ない救済を行える司祭の生き残りでございます...どうか何卒、司祭様の前でご無礼な---------」

 

「大丈夫だ。オルーシャ、私も公私はわきまえているよ...ただ」

 

べルーシャは歯ぎしりをしながら、顔芸いや...その顔を凄まじい---------

--------------憤怒に満ちた表情に変えると

 

「あの女...マギサだけは絶対に-----!」

 

べルーシャは叫びながら肩に抱えたハンマーを両手で握り締め------

----床に全力で振りおろし----床のタイルを豪快に叩き割り-----

彼女の前の燃え盛るクレーターから、盛大に火の粉を巻き上げさせ------

 

--------べルーシャは怒りと恨みに満ちた叫びをホール中に絶叫する。

 

「この手で殺してやるからなぁあああマギサぁぁああ! 殺しに来たぞ!」

 

その光景は、近くに横たわる亡骸とかしたNEET隊員の装着する戦闘ヘルメットのカメラが一部始終を捉え続け、NEET本社のサーバーに送信され、数分後にマギサの目に触れることになるのだった。

 

 

 

 

 

 

後書き編集

暫くは本作を大幅に改稿した【魔女とニートは天下布武を目指す】

: http://ncode.syosetu.com/n9826cb/の執筆に

取り組み、本作の26話及び、それ以降の話に繋げていく方向性で、

話を書き貯めていきます。

 

現時点で本作魔女の弾丸の改稿した話や26話以降の続きを

 

小説家になろうで発表するかどうかは未定です。

 

ご了承ください。

 

 

尚、【魔女とニートは天下布武を目指す】に対して厳しいながらも大変貴重なアドバイスを先月末にしてくれた小説好きのリアルな友人の鬼頭くんに、この場を借り謝辞を述べたいと思います。

 

ありがとうm(_ _)m

 

今度は、もっと部屋掃除しときます\(//∇//)\

 

今後とも...否、自分の現状の執筆力では【今後になる】でしょうか(汗)

読者の皆様が一時的にでも現実逃避できる様な作品を書いていきたいと思います。

 

(書いてる私も偶どころか、しょっちゅうしたいかもW)

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 05月03日 21時37分

最終更新日

2014年 05月24日 16時44分

 

第二十七話 撤退そして

本文編集

【駅前野戦テント内】

 

野戦テント内は、ホールに展開中の部隊が突如襲撃を受けた事により

多くの隊員が慌ただしく動き回り、通信機器を操作したりして対応に追われていた。

 

そんな中、通信機器を操作していた隊員が口を開く。

 

「隊長! HQの連中とサンプルを回収した輸送ヘリ2機は、共に予定通り、離陸完了! 我々はどうしますか!?」

「.......」

 

彼らの耳元には、戦闘ヘルメットのセンサーが捉えたヘリのローター音が、鳴り響き、そして...遠ざかっていく......

 

「...緊急事態だ! 敵がホール中に溢れ現在、白兵戦中だ! この場にいる全員に告ぐ!」

(畜生っ! なんでこんな事に--------)

 

「速やかに装備を! パンツァーファウストと軽機関銃------------」

(あと二ヶ月で!-----------)

 

「--------グレネードランチャーに持ち換え! ホールでぶちかませ!」

(-------元の世界に!)

 

「了解しました!」

 

 

(201✖年に帰れたはずなのに!)

 

 

 

「隊長! 準備完了です! 」

「ああ! 行くぞぉおお!」

 

彼は数名の部下に対戦車榴弾発射筒(パンツァーファウスト)と軽機関銃を

装備させ、一目散に駅舎地下ホールへと駆けて行く。

その後方をブルパップ型のグレネードランチャーを装備した数名の隊員が続いていく。

 

皆、その身に最新鋭のパワードスーツを装着し、銃火器の扱いに慣れ

数多くの戦闘に勝利し、生き抜き戦い慣れた戦闘集団の精鋭にして

日本最大の民間軍事会社 特別軍事法人NEET 

 

社長特別調査室所属の精鋭達である。

 

この地球上で彼らを倒せる兵士など、いないハズだった...

彼らがこの数分後に盛大に全滅するまでは......

 

 

 

 

------------その頃、鬼沢達は----------

 

 

 

「ミリサ、この剣ってまだ使えるの?一応サンプルの回収も任務だからさ」

 

鬼沢達はオークや、少年兵の一団をミリサの攻撃で駆逐し、サンプルの回収中である。

鬼沢は、肉片が張り付いた壁から、全体が血まみれになったが、なんとか原型をとどめ、鞘に収めれたままの、オークが装備していた剣を指差し、使用可能かミリサに聞いている。

 

「そうですね~」

 

ミリサはヒューンと音も立てずに地面スレスレを飛行しながら鬼沢の横に並び、指摘された剣を凝視する。

 

「曲がってないので、使えるとは思いますが...血まみれですよコレ? 私は水流系の術を使えないので血糊を拭えません」

 

ミリサはペコリと鬼沢に向けてお辞儀をする。

 

「ああ...気にしないでいいよ。ボディバッグに入れとくからさ、ミリサ」

「はい鬼沢さん」

「ありがとう」

「はい! お力になれて光栄です!---------? はい、今からそちらに向かいます---」

 

ミリサは笑顔で鬼沢に返事を返し、インカムで呼ばれたのだろう、その場を離れていく。

 

「うぇ~べちょべちょだな...ビニテ持ち込んどいて良かったぜ------」

 

鬼沢はサンプルとしてオークの装備していた剣をボディバッグに数本入れて背負い

インカムで真希に呼びかける。

 

『こちら鬼沢、真希そちらはどうだ?』

『こちら真希...鬼沢、ちょっとやばい......』

『どうした真希?』

 

『放棄された、地下鉄線路上の電車内部をアルファ班と捜索してたんんだけど...とにかく来てくれ』

『...了解した』

 

鬼沢は真希の声が震え、泣くのを堪えてるのを感じ取り、足早に真希たちの元へと駆けていく。

鬼沢が駅のホームを飛び降り、ナビに従い線路上を進んで行くと、線路上で蹲る人影が見える。

 

「!? 龍澤どうした」

「うぇええええ! げっホッ...ハッ!ハッ!」

 

アルファ班の一人に介抱されてる龍澤が、口元のバラクラバを外し、電車内への入口付近の線路上で

-----------盛大に吐いていた...

(あの能天気な龍澤が吐くとか...なんなんだ)

 

「アルファ班、状況を報告しろ...」

「...拉致されていた残りの女子生徒達を発見したのですが...酷すぎます」

「...わかった、二人共そこで休んでいろ」

「了解...」

 

鬼沢は、介抱してるアルファ班の隊員も泣き声に近いのを感じ取り、電車内に侵入する。

 

----------3両ほど進むと照明が点灯している。車両に到達する。

「....ん?」

 

(燃料電池ユニットこいつが電源か...メーカーは米国製だな...日本側からの流失品か------しかし)

 

「ホントにエロゲのオークと変わんねーな!」

 

鬼沢の視界には、照明に電気を供給しいてる燃料電池ユニットだけでなく...

その照明によって照らされる...座席に放置された、数多くの

無残に引き裂かれた女子生徒達の制服や下着類が散乱しているのが映る。

 

(クソッ! おもいっきりイカくせーじゃねーか!)

 

正直、鬼沢の経験上これだけでは

先ほどの様に吐きまくる状態に、龍澤が至るとは考えづらい。

 

鬼沢は更に奥の車両へと足を進め----------

残りのアルファ班2名が奥の車両への連結部の入口付近で歩哨についてるのを確認し--------

 

「真希とミリサはこの中か?」

「...はい」

「鬼沢指揮官...」

「----どうした?」

 

アルファ班のリーダーは鬼沢に近づきバイザーを跳ね上げ----------

 

「この先は余りにも酷すぎます! 自分はこんな現場初めてです!」

 

彼が泣きながら報告を終えたその時、------------複数の銃声が

周囲に鳴り響く。

 

「!?」

「!?」

「2人共突入態勢に移れ!」

 

アルファ班のふたりは頷き、バイザーを上げていたリーダーもバイザーを目元に下げる。

拳銃の発砲音であることから、真希がFN5,7(ファイブセブン)自動拳銃を発砲したのだろう。

鬼沢はVSS静音狙撃銃を構え、急いで奥の車両へと突入------

アルファ班もXM8自動小銃を構え、鬼沢の後に続いて突入していく。

 

「くそがぁああ!」

「真希さん! もう死んでますからそのオークは! 弾の無駄です!」

 

真希が幼児ぐらいの体型をした小型のオーク、それもなかなか立派なイチモツを備えた

不気味なピンク色の個体を次々と-----------車両の隅に追いやり

 

FN5,7で撃ち殺していた......

 

真希の周囲には、大量の空薬莢や空のマガジンが数本転がっている。

その反対側には4人の女子生徒が、全裸でうずくまり、泣きながら怯えているようだ。

 

 

「真希どうした!? なっ!? そのオークは...子供か-------」

 

(それになんだアレは...)

 

「あの糞豚どもがぁあ! ぁああああ!」

 

真希は、泣き叫びながら死骸に変わった子オークに尚も銃弾を撃ち込み続ける。

彼女が引き金を絞る度に、乾いた金属音と小口径高速弾の発射音に酷似した銃声が鳴り響き

空薬莢が宙を舞い床に落ちていく。

 

「!?」

「真希! 落ち着け! その敵はもう死んでる! いいな...」

「うっ! ううう...」

 

鬼沢は真希がマグチェンジするタイミングを見計らい、真希の手首を掴み

無駄な射撃を中止させる。

 

「ミリサ...説明できるか、この座席に座っている彼女たちの状態を」

 

鬼沢の視界には、座席に両手足を鎖で括り付けられ、腹が膨れ、乳房がかなり巨大化し、母乳が垂れ続け、全裸の状態で先程まで-------------------

真希が撃ち殺していたであろうオークを出産し続けていたと

思われる、3人の女子生徒の頭部を撃ち抜かれた死体が目に映る。

 

彼女たちの股には頭部を露出し、生まれる寸前だった

子オークの頭部を吹き飛ばした死骸が残ったままだ...

真希が彼女たちも含めて、撃ち殺したのだろう。

 

周囲には独特の生臭さが漂う...

 

「鬼沢さん...ここはオーク達のコロニーにされていたようです...」

 

ミリサは悲しげな表情で話を続ける。

 

「オークは元々、私達の世界で人工的に作られた肉体労働用に使役させる人工生物が起源です...」

「説明を続けてくれ...」

「今から約1000年前、当時存在した人間の大国と魔族が全面戦争に突入した際に、オークは軍事用それも-----」

 

ミリサは体を震わせながら涙を流し-----------

 

「------主に後方攪乱と心理戦、占領地での非戦闘員制圧を目的に戦術運用出来る様に、様々な改良が施され-------特に腕力の弱い女子供を制圧する為に、このような事を出来る様にしたようです...」

 

 

周囲には真希のすすり泣く声と、車両の隅で泣きじゃくる

女子生徒の泣き声が鳴り響いている。

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 05月19日 13時38分

最終更新日

2014年 06月20日 13時23分

 

 

 

------------------------- 第8部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第二十八話 届けられたサンプルの解析と報告(まとめ)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):4613字

文字数(空白・改行含まない):4371字

行数:207

400字詰め原稿用紙:約11枚

 

 

【本文】

第二十八話 届けられたサンプルの解析と報告

前書き編集

現在、同作の改稿作業中につき少なめの文量です。

冒頭部分の改稿が終了しだい、20話以降の加筆等をしていきます。

本文編集

第三次大戦後、九州の北部に存在していた高度移民優遇特区は戦後の混乱時に

九州共和国を名乗り武装蜂起を実行、日本から分離独立していた。

 

以降、双方の陣営は年中無休で、陸や海、空で戦闘を繰り広げ、大戦終結から10年近く経ってもなお

...延々と戦いを続けていた。

 

 

そんな戦火の絶えない九州、同地の東側、旧宮崎県沖合いには、日本側陣営の中でも国防軍や州軍についで質、規模どちらも引けを取らない、いや質に関しては【彼ら】が開発し装備、運用する一部の最先端兵器やそれらの戦術ノウハウなら、正規軍以上と自他ともに認める、特別軍事法人NEETの海上基地が存在している。

 

深夜の時間にも関わらず、同基地からは九州共和国の上空に向けてスクランブル発進をする

汎用無人ステルス機や、従来型の有人型ステルス戦闘攻撃機もスクランブル発進や滑走路への離着陸を繰り返している。

 

それらの機体には、国防軍機や州軍機同様に日の丸が記されているが、もう一つ

アルファベットで【NEET】と記されている。

 

現在、同基地のヘリポートにはタンデムローターを備えた大型輸送ヘリが数機着陸し、荷下ろしの作業をしている。

 

「オークと使い魔のサンプルはAー3のラボに運べ! -------!?」

 

荷下ろし作業の指揮を執る隊員に近づいてくる男が三人

中央の一人は、黒いスーツ姿でメガネをかけた短髪で黒髪の青年だ。

その横のふたりも同じく黒いスーツ姿ではあるが、スキンヘッドで、サングラスタイプのシューティンググラスを目元に装着し、耳元にインカムを装着した、護衛のようだ。

ふたりの手には、銃身を短くしたカービンタイプのXM8自動小銃が握られている。

 

「特別調査室の皆様、サンプル回収お疲れ様」

 

中央の男が指揮を執る隊員に近づき、笑顔で話しかける。

話しかけられた隊員は、中央の青年に対し即座に敬礼をする。

敬礼をされた青年も敬礼をかえす。

 

「君たちの便で、国境で回収した最後のunknownサンプルになるのかな」

「はっ! 現状ではそうなります。ただ、今現在、鬼沢調査員のチームが現場の捜索中でありますので、新たなサンプル回収の可能性もありますが」

「...なるほど、報告ご苦労unknownのサンプルをラボに運びしだい君たちは、休憩を取り宿舎で待機せよ」

 

現場の指揮を執っていた隊員は敬礼をし、作業へと戻る。

三人組の右側の男が中央の青年に話しかける。

 

「小畑室長、矢島社長から秘匿通信が入りました。至急、秘匿通信が可能な通信室へ移動せよとの命令です」

「了解した、移動するぞ」

 

左右の二人は頷き、早歩きで移動する小畑の後に続いてヘリポート脇の施設内の入口へと入っていく。

彼らは数分後には、基地内の地下部分にある司令室のような場所に到達する。

制服を着たオペレーターと思しき若い女性が彼らを大型モニターの前に誘導し小畑は空いている席に座る。

 

「首相官邸との通信再開します」

「!?」

 

オペレーターの女性の声を聞いた小畑は、驚き目を見開く。

 

(矢島社長も意外な場所にいらっしゃる...)

 

大型モニター、それも壁一面を使用したサイズである。

その画面には彼らの上司である矢島の姿と---------

 

「!? マギサ社長」

 

魔女の弾丸便の社長であるマギサの姿が映し出される。

彼女は片手に書類を手にして、目を通している最中のようだ。

 

「小畑室長、unknownことオークや使い魔のサンプルは基地内に運び込んだか」

「はっ! 」

 

小畑は画面越しに矢島に対して敬礼をし着席すると報告を再開する。

 

「矢島社長、只今ラボに運び込む最終便が輸送ヘリからの荷下ろし作業の最中です」

「そうか...サンプルのDNA解析や回収した装備のデータも速やかにこちらに送信するよう指示を出せ」

「了解しました------?!どうした」

 

小畑の護衛が小畑に伝言を伝える。

 

「矢島社長報告します! 最初に運び込んだオークのDNA解析と解剖が終了したようです------君、解析データを社長に転送しろ」

「了解しました」

 

小畑はオペレーターの女性に指示を出す。

小畑の座る席の前に設置された小型モニターにも、解析データが表示される。

小型モニターに表示された解析データと合わせて添えられた報告書を読んで

小畑は再び表情を驚きへと変える。

 

「ほぅ...マギサ、やはり君達、魔族の伝承通りオークは------------」

「ええ、【ほぼ】全てがメスよ」

「小畑室長、君はこの解析データを見てオークの性能をどう評価する?」

 

「はっ! DNA解析と解剖の結果メスと判明した事実からも、オークの行っていたのは強姦ではなく、産卵行為であると判断します」

 

小畑の手前のモニターに表示された報告書の一文には次のように記されている。

 

unknown NEET社内識別名称【オーク】はDNA解析の結果、ヒトゲノムやその他哺乳動物、爬虫類、両生類、昆虫、魚類のゲノムを有するキメラと結論づける。

 

なお、回収したオークの全ての個体は、見た目上哺乳動物のオスに酷似した見た目をしているが、ヘソがない事や生殖器を解剖した結果、精巣等がない事、代わりに直径6ミリ弱の球体状の卵を精液に酷似した粘膜と共に外部に勢いよく発射する、コオロギ等の昆虫等に見られる卵管に酷似した器官であると推定する。

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 06月01日 00時46分

最終更新日

2014年 06月14日 12時01分

 

続 届けられたサンプル

本文編集

『---------以上のことからもオークを含む、各種unknownは対人戦闘、それも非戦闘員への虐殺等を前提とした民族浄化用の兵器と判断し、unknown及びそれを指揮する勢力の日本国内からの、速やかなる排除を進言します』

 

「小畑室長、君は引き続きオークを含む各種unknownの解析を急がせろ。特に使い魔の防弾性能の解析は念入りに行え。以上だ」

 

『はっ! 了解しました』

 

-----

 

「お疲れ様、矢島」

 

小畑室長との秘匿通信を終えた矢島にマギサはグラスに入れた水を差し出す。

矢島はグラスの中身を飲み干す。

 

「----ふぅ...ありがとうマギサ」

「どういたしまして」

「さて...マギサ、べルーシャだったか?さっきモニターに出ていたのは」

「ええ、そうよ。向こうでしつこく私達のことを追撃してきた亜魔族のお姫様よ」

「しかし--------」

 

矢島は氷水を入れた水差しからグラスに冷えた水を注ぐと飲み干し、一息つくと口を開く。

 

「...【兄から】聞いていた通りの絶叫ぶりと顔芸だな」

「確かにそうね...アイツは元気かしら?」

「今じゃ元気すぎて困るくらいだぜ。四六時中女連れ込んで五月蝿くて、おかげで俺は別に部屋買ったんだぜ」

「そうね...毎日、女連れ込んで遊び呆けてるなら元気になってきた証だし、話もできそうね」

「ああ...マギサや【異世界帰りの仲間】が会いに行くと少し気合いが入るようだし頼むよ...それにしても全滅かよ。うちの精鋭が...内数人はマギサと、限定的ながらも【魔女の契約】していた連中だぞ」

 

矢島とマギサの視線の先には壁にかけられた大型モニターが映る。

そのモニターには、燃え盛る炎と舞い上がる火の粉、そして-------

 

-----次々と床に着地してくる人影が映る。

その人影は皆、大剣や双剣を装備した青や赤の肌をした一団である。

その数は既に、300名を超え更にその数を増やしつつあるようだ。

 

 

「マギサ、これは連中が本格的に君を潰しに来たんじゃないのか...」

「でしょうね...さっきべルーシャが私の事を殺しに来たって叫んでいたみたいだし、それに---」

「なんだもったいぶって、情報共有は迅速に頼むぜ。俺はそちらの世界の言語理解できないんだからさ」

「いえね...これを言うとアイツが気合入りすぎると思うから、どうしようかなと...」

「マギサ、兄は我が社の会長だから情報は遅かれ早かれ、全部上がるからさ遠慮しなくていいよ」

「そうね...アイツには変態司祭が既に来日してると伝えたらいいわ」

「変態司祭...ウルデリックとかいう野郎の事は兄から散々聞かされたよ」

「でしょうね...」

「さて...高橋総理ちょっといいかな」

 

矢島に話しかけられた高橋総理は矢島の向かい側の席で、セイロに入れられた蕎麦を食べていたようだ。

口に入れていたそばを飲みこみ、箸を置くと高橋総理は口を開く。

 

「-----なんでしょうか矢島社長」

「国境地帯にかなり、やばい連中が現れたのは確認したよな」

「ええ、しかも本隊が既に日本国内に展開中なんですよね...マギサ社長」

「あら...総理は向こうの世界の言葉を理解しているようね」

「...片言なら理解は出来ますよ。それで矢島社長としては、私達に何をお望みでしょうか」

「今現在、国境地帯に我が社の調査員と、マギサの身内であるミリサが作戦行動中なのは知っているだろう」

「はい、存じております」

「同時に今現在、国境地帯上空では共和国側と日本側の戦闘機がドッグファイトの最中で地上からは携SAMが飛びまくる地獄状態。これでは救出用のヘリも飛ばせない。そこで大至急----------」

 

「硫黄島基地にいる【彼】を空軍の輸送機で国境地帯まで運んでほしい。我が社の輸送機を硫黄島にわざわざ飛ばすのも時間がかかりすぎるしな。それに運べないサイズじゃないだろ」

「なるほど...【彼なら】うってつけというわけですか。しかし...」

 

少しだけ高橋総理の表情は焦りと不安を生じさせる。

 

「大丈夫よ。私も彼の知り合いだから説得は任せなさい」

「助かりますマギサ社長、ミリサさんが本土にこられてから彼は一人ぼっちでしたので、その...少々」

 

何やら総理の歯切れは良くないようである。

 

「仕方ないわよ。彼を衆人の目に晒すのは論外だし、それにそもそも彼もそれを承知でこちらに来たのだから少しくらい我慢してもらわないと困るわよ」

 

----同時刻----

 

硫黄島近海の上空を旋回する全長10メートル弱の飛行生物の姿があった。

旋回をしながら【彼は】思う...

 

(暇だな~ミリサ乗せて飛んでた頃が懐かしいや...ミリサは元気かな-----お!?)

 

彼は海面目掛けて真っ直ぐに降下する。

彼は自慢の爪で獲物、それも彼の全長の半分はあろうかという海洋性哺乳類を捕らえる。

獲物を捕らえた彼は上空に舞い上がり、彼のこの世界での巣である硫黄島へと飛行を開始する。

 

(流石に毎日、海洋生物じゃ飽きるな...あ~たまには緑竜食べて~)

 

彼は知性と知恵を備え、異世界から来た一匹の竜だった。

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月01日 12時20分

最終更新日

2014年 07月13日 23時12分

 

 

 

 

 

 

 

 

 

------------------------- 第9部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第二十九話 異世界帰りの今(まとめ)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):4978字

文字数(空白・改行含まない):4639字

行数:290

400字詰め原稿用紙:約12枚

 

【本文】

第二十九話 異世界帰りの今

本文編集

----東京都内----某所

 

『---特別軍事法人NEETの航空部隊は、九州北部国境上空で九州共和国側との空戦を開始しており、これだけ大規模な空戦は、3年前の共和国政権交代時の騒乱以来であり日本政府とNEETは-----------』

 

「......」

 

夜景を見渡せる高層マンション上層階の一室で

一人の男がソファーで横になり、大型テレビから流れるニュースを

ぼんやりと視聴している。

 

男は無精ひげを生やし、髪はボサボサのくせ毛で...全裸である。

ついでに言うと、酒臭いしヤニ臭い。

 

そんな彼の周りには、同様に全裸の若い女、それも十代後半から

二十代位のスタイルも顔立ちもいい女が数名、大理石の床に

無数に転がる空の洋酒の瓶と同じく、床やソファーで横になっている。

 

『旦那様、ホットライン【N】に入電です』

 

男女の性交の残滓が充満する空間に、スピーカーで若い男の事務的な報告が鳴り響く。

ソファーで横になっている旦那様と呼ばれた男は静かに立ち上がり、部屋を静かに出る。

 

「旦那様、こちらをどうぞ」

 

旦那様と呼ばれた男は執事のような格好をした若い男から、白いバスローブを手渡される。

所々、刀傷や銃創の跡が残る筋肉質なプチマッチョな体に素早くバスローブを羽織ると、彼は歩き出す。

 

「...鈴木、私の装備とオスプレイの飛行準備をしておけ。出かけるぞ」

「承知しました」

 

-----数分後-----

 

バスローブを羽織った彼は、同じフロアにある彼専用の執務室の椅子に座り、モニターに映る旧友と会話をしている。

モニターには黒髪で頭部に猫耳が生えた、汗だくで息の荒い中年男性が映し出されている。

背景に無人のシートが映ることからして、何かしらの乗り物に乗っているのが伺える。

 

『ハァ! ハァ! 矢島くん久しぶりなんだな。もうそろそろ、義明くんの【仕上げ】が完了なんだな』

「油断するな猫...黒鉄で眠っている【お姫様】が自我を失っていたら仕上げにならないからな.....」

 

矢島は口元に微笑を生じさせ、口を開く。

 

「念の為、俺も現地入りするぜ。たまには運動しないとな」

『助かるんだな~今ならNEETの方が航空優勢を確保しているから、来るならお早くなんだな』

 

通信はそこで終了し、画面はブラックアウトする。

矢島が席を離れようとした刹那のタイミングで通信が入る。

 

「!?」

 

別のホットラインからだった。

発信先は【首相官邸】と表示されている。

 

彼はsound onlyに通信を設定して通信を開始するが----------

 

『あらっ私の顔を見たくないのかしら、あなたのお兄様は?』

「バスローブ姿のおっさんを見たいなら見せてやろうか...マギサ」

『久しぶりね矢島、今はあなたの弟と首相官邸でお仕事中よ』

「そりゃご苦労様、俺は今からお前の旦那様の【仕上げ】のサポートに向かうぜ」

『あら、猫ちゃんから応援要請が来たの?』

「いや、一応報告は上げるように猫に前もって伝えといたからな。現地入りは俺の判断だ」

『...矢島、【仕上げ】に関しては、彼の状態も踏まえて義明には伝えていないから』

「ああ...理解している。自分の武装なら【眠り姫】が暴走しても押さえ込めるさ」

 

静寂が執務室を包む......

しかし、その静寂はマギサの震える嗚咽の混じった声で、終りを告げる。

 

『お願い...義明を...彼を守って! 矢島!』

「...任せとけマギサ、今度は俺がお前を救う番だ」

『......ありがとう矢島』

「ああ」

 

画面は再びブラックアウトする。

 

『旦那様、オスプレイと装備の準備が整いました。一度シャワーを浴びてから武器庫にお越しください』

「ご苦労...鈴木、酒蔵から古酒を一本と盃を持って武器庫に来い」

『承知しました』

 

矢島はバスローブを脱ぎ、椅子に放り投げると席を立ち、室内のシャワー室へと歩き出す。

 

--------

 

矢島は執務室内のシャワー室で、シャワーを全身に浴びながら考える。

3年前の九州共和国の政権交代時の騒乱以降は、大規模な戦闘もなかった。

世代交代をスムーズに行うには、絶好の機会だと考え、社長の座を弟に譲って半年...

 

「少し...遊びすぎたか...」

 

矢島は少しだけハメを外しすぎたかもしれないと自戒する。

矢島はシャワーを止め部屋を出る。

 

 

-----数分後-----武器庫入口前---

 

 

「旦那様、古酒でございます。どうぞ」

 

先程まで、全裸で無精ひげを生やしていた矢島は、ヒゲも綺麗に剃り歯も磨きブレスケアもしたのだろうか、酒臭さや、ヤニ臭くない。

 

今はその身をパワードスーツを装備する際に着込む、黒いパイロットスーツで覆っている。

そんな彼は、片手に白い盃を持ち、鈴木に古酒を注がせている。

 

「......」

 

矢島の視線の先には、盃になみなみと注がれた...薄く綺麗な琥珀色の小さな水面ができあがり、微かに揺れている。

 

注がれた古酒は、日本酒である。

矢島は盃に注がれた古酒を飲み干すと、床に盃を叩きつけ粉々に砕き、叫び声を上げる。

 

「うぉおおおおおおお!」

 

己の戦意を鼓舞した矢島は、武器庫の中へと入っていく。

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月06日 17時51分

最終更新日

2014年 07月30日 11時15分

 

続 異世界帰りの今

本文編集

「...久しぶりにこいつを装着するな」

 

武器庫の中へ入った矢島の眼前には、真紅の色をしたパワードスーツが座敷に置かれた鎧兜のように鎮座している。

 

 

壁には様々な自動小銃や散弾銃、拳銃、PDW、グレネードランチャー、軽機関銃、重機関銃、スナイパーライフル、対物ライフルなどがかけられ、

部屋の隅に設置された棚には、弾倉や弾薬、銃火器用のサプレッサーをはじめとした、様々なアクセサリーが収められている。

 

「......」

 

鎮座している真紅のパワードスーツの横には、数本の太刀が立てかけられ

矢島はその内の一つを掴み、鞘から抜いて、刃を顕にする。

 

「魔族が相手ならコレか...」

 

その刃は一見すると、反りがあることから、ごく普通の刀か太刀に見えることだろう。

だが、近づいて鋒(きっさき)部分を見ると両刃であることが分かる。

 

【鋒両刃造太刀】

 

小烏丸造の太刀と呼ばれる形状の太刀である。

矢島は太刀を鞘に戻すと、両手を胸元で合わせ...目を閉じ口を開く。

 

「*#$%’(%$!」

 

彼の口から出た言葉は日本語、いや地球上のいかなる言語とも違う言語だった。

......その言語はマギサやミリサ、べルーシャ、そしてPMC(民間軍事会社)魔女の弾丸便の

義明達が今、この時も戦っている相手、痴女こと魔女が使用する世界の言語だった。

 

矢島がその言葉を発し終えた刹那の瞬間、彼と彼の前に鎮座している

真紅のパワードスーツは、共に赤く力強く、光輝く。

 

輝きは一瞬で消え、パワードスーツは鎮座している場所から消え失せ------

 

-------矢島の体に装着されている。

 

矢島は両手を動かし、装着具合を確認する。

問題なしと判断した彼は先程、手にした小烏丸造りの太刀を左腰の帯剣用

ストラップにカチッと音を鳴らすと太刀を装着し携える。

 

矢島は壁にかけられている銃火器に向けて歩きだす。

彼は残りの武器を選び終えると武器庫を後にする。

 

 

 

--------ヘリポート直通エレベーター前---------

 

真紅のパワードスーツを身に纏い、完全武装を終えた

矢島を執事の鈴木が見送るようだ。

 

 

「行ってくるぞ鈴木、留守を頼む」

「承知しました。朝食はいかが致しましょうか」

「女でいい」

「彼女たちを【俺が】抱ける様に準備をしておけ。以上だ」

「承知しました。直ぐに準備を開始します」

 

矢島にとって女を抱くのは食事と同義のようである。

そんな好色の男に平然と顔色一つ変えず、従う執事の鈴木も若いのに肝が据わっているようだ。

 

「旦那様、ご武運を」

 

執事の鈴木はエレベーターに乗る矢島を見送る。

扉が閉じられ矢島はヘリポートへと上昇していく。

 

 

-------ヘリポート--------

 

「総員! 矢島会長に敬礼!」

 

先刻、べルーシャ達、亜魔族の降下部隊に全滅させられた、特別調査室の戦闘要員と同じタイプの最新鋭のパワードスーツを装着し、銃火器で武装した数名のNEET隊員がローター音とエンジン音の鳴り響く

ヘリポートで敬礼をして矢島を出迎える。

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月06日 23時13分

最終更新日

2014年 07月13日 20時56分

 

続 異世界帰り 2

本文編集

『離陸します』

 

一機のMVー22オスプレイは、深夜にも関わらず遠慮なしに、都内の

とある高層マンションのヘリポートから爆音を鳴り響かせながら離陸していく。

 

そのオスプレイは日本最大の民間軍事会社 特別軍事法人NEETが所有する

機体であるが、今回は【ある人物】を搭乗させる

 

専用機のような役目を極秘に担っていた。

 

 

『矢島会長、今現在、西日本全域の航空管制は我々の管理下にあります』

『そうか...どのくらいで修羅の境界線に着く』

『妨害が無ければ、夜明けまでには到着します』

『全軍に伝達しろ。我々の飛行を妨げる存在は遠慮せず始末しろ。以上だ』

『了解しました。矢島会長』

 

----

 

矢島を搭乗させたオスプレイを護衛するのは-----

 

地上からはNEETの地対空部隊、それも対空ミサイルや機関砲を積んだ車両だけでない。

第三次大戦で疲弊した世界中の軍や、企業を出し抜き、NEETが独自に改良高性能化した上で実用化、実戦配備した------

 

超電磁砲(レールガン)や光学兵器(レーザー)を運用する部隊である。

海上には同様の兵装を装備したNEETのステルス艦が我が物顔で展開している。

そして、空にはステルス性を備えた無人/有人の戦闘機やそれらの戦術行動を支援する

AWACSなどが展開している。

 

付け加えるなら、その遥か上空...衛星軌道上からはNEETの運用する各種人工衛星が見下ろしている。

それらの兵器群は、真紅のパワードスーツを装着した一人の男を日本で唯一、陸上の国境が存在する、九州北部国境線こと修羅の境界線へと、ただ輸送するためだけに展開していた。

 

 

『矢島会長、豊後水道に展開していた海軍艦船が呉へと撤退を開始とNEET総司令部から入電』

『艦船の種類は?』

『我が社が国防軍に提供した大口径レールガン装備の沿岸戦闘支援艦です』

『...引き続き艦砲射撃は可能か確認しろ』

『了解しました』

 

矢島は直感的に部下に確認をさせる。

 

『報告します! 3発だけなら可能との事です』

『...直ぐに戦闘海域に戻るように軍に...』

 

彼は言葉を止め、自分の弟がいる場所を思い出していた。

 

『いや...首相官邸に繋げ』

『了解しました』

 

 

------数分後-----

 

『兄さんは本当に察しがいいね。これならいつでも安心して、俺も無職になれるよ』

『あんま舐めたこと言うんじゃねーよ愚弟が。死ぬ気で働け』

『承知しました。矢島会長~♪たまには俺の無駄遣い役に立つでしょ~♪』

『たまにはな。では矢島社長』

『ご武運を矢島会長』

 

二人の兄弟は笑いを交えながら、久しぶりの会話を終える。

 

弟との会話を終えた矢島は思う。

 

大は小を兼ねるか...いや

 

「...兼ねてもらわないとなフッ」

 

矢島はつい、笑いを含んだ己の気持ちを口にしてしまう。

 

『いかがしました...会長』

『ああ、すまん何でもない』

『了解しました』

 

矢島は真紅のパワードスーツの内側で、少しだけ顔を赤く染め、久しぶりに

人前での恥の感覚を人知れず味わっていた。

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月08日 22時32分

最終更新日

-- 更新していません --

 

 

 

------------------------- 第10部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第三十話 滑走路脇からの差し入れ(まとめ)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):4630字

文字数(空白・改行含まない):4281字

行数:274

400字詰め原稿用紙:約11枚

 

【本文】

続 滑走路脇からの差し入れ 2 (不審船)

本文編集

硫黄島近海-----某海域-----

 

太平洋の波間に現れては消える。

一隻の不審な船があった。

 

その船は普通の船ではなく、【半潜水艇】

と呼ばれる類の船舶であり、民間人が多用するような船舶ではなかった。

当然ながら乗せている人間も普通の人間ではない。

 

特に頭部のソフト的な部分と、それに基づく行動は明らかに

一般人とは違う人間たちである。

 

----不審船内部CIC(コンバットインフォメーションコントロール)室内----

 

 

 

「キャプテン! モウスグデ我々ノ愛スベキ海洋性哺乳類拉致ノ海域二突入シマス」

「ウム! 総員二ツグ! 浮上カイシ対空監視ヲ怠ルナ!」

「サーイエッサー!」

 

不審船内部に緊張が走る。

半潜水していた不審船は通常の航行へと切り替え、浮上を開始する。

海面に晒したその姿はまさに、不審であった。

 

船体は黒い特殊な塗料を塗られ、ステルス性を意識したデザインの如何にもな船影である。

 

キャプテンは思う...

 

第三次大戦前、日本の連中は科学調査名目で我々の愛すべき海洋性哺乳類を

拉致虐殺し食べやがった。

我々の愛すべき海洋性哺乳類を喰らうなどけしからん! 飢えて死ね!

 

キャプテンは怒りを引き金に記憶を蘇らせ、心を震えさせる。

そして体もガクガク揺らしだす。

瞳からは涙を流し、口からは泡を吹きだし白目になりながらその光景を思い出す。

 

タッパに詰めて鮮魚コーナーに並べられた海洋性哺乳類の肉類の山と、そこに貼られた半額のシールを------

 

 

「アアァァァァ! ママァアア!」

「!? キャプテン! ココハ! ジャパンノ鮮魚コーナーデハナイデス」

「!?ハッ!...スマナイミンナ...トラウマガチョットナ...」

 

キャプテンは来日した際に、精神面に深刻な傷を負っていたようだ。

 

最もそれ以前に人間としてソフト面に色々と深刻な問題を

抱えていそうな人物であるが。

その時、船内の警報が鳴り響き、真っ赤な非常灯が点灯し

船内に緊張が走る。

 

 

 

「キャプテン! レーダートIRセンサー二感有リ!相対速度600ノットデ本艦二向カッテ来マス!」

「ナンダト! ミサイルナノカ!?」

 

それはテロリストの乗る不審船を沈めるには高価すぎる対艦ミサイルなどではなかった。

 

それは-------------

 

「あっ!おかわりみっけ~♪突入~♪」

 

硫黄島空軍基地に滞在中のエロゲー特に陵辱系に目がない。

一匹のドスケベな竜だった。

 

 

「対空ミサイル! ファィア!」

「うわっ!なんか撃ってきた危ないなぁああ------------!」

 

ドスケベな竜は反射的に口から魔力を塊にして撃ちだす。

青く発光する高密度魔力の塊は青い軌跡を描き不審船に着弾する。

 

この瞬間、太平洋で一隻の不審船が高威力魔力弾攻撃を受け、爆散した。

その事実を知るのは一匹のドスケベな竜だけであった。

 

だが、ドスケベな竜が【つい】放った高威力魔力弾から

生じた魔力波は、瞬時に地球上を伝わり

その手のことに長けている、【特に下賎な趣味を持つ】同郷の者たち一行とその協力者達に己の存在を不用意にも明かしてしまったのだった。

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掲載日

2014年 07月10日 23時12分

最終更新日

2014年 07月12日 08時55分

 

第三十話 滑走路脇からの差し入れ

本文編集

----硫黄島空軍基地---地下某所

 

冷房の効いた一室で二人の軍人が横並びで黒い革張りのリクライニングチェアに座り、会話をしている。

先に口を開いたのは若い男のほうだ。

彼は少尉の階級章を制服に付けている。

 

「司令...【お客】が、また大型の海洋性哺乳類を狩ってますよ」

 

少尉の呼びかけに応えるのは...

 

「別にいいだろ。【お客】は人間じゃないんだからさぁ...文句言う奴いるの?」

 

准将の階級章を付け、全身から色香を漂わす妙齢の女だ。

 

 

「いないと思います...ところで司令、先程本省から近年復活した、その手の抗議に特化した【自称環境保護団体】所属と思われる【不審船】が硫黄島近海に向かって来てると通信がありましたが...何も対策をしなくてよろしいのですか?」

 

「少尉...わたしたちは堂々としていればいいさ」

「そうですか...しかし司令、このままだと整備班の連中が機体の整備より----!?」

 

部屋のドアを規則正しくノックする音が鳴り響き---

 

「入れ」

「失礼します」

 

司令と呼ばれた准将が入室を許可すると、扉が開き、部屋に作業用のツナギを着た筋肉質な男が手押しの小さな台車に何かを載せて、押しながら入室してくる。

 

「司令、【お客】からの差し入れです」

 

ツナギを着た男は、司令と少尉の前に自らが押してきた物体を覆う銀色で金属で出来た

半球状の所謂、蓋的な物体を取る。

 

辺りには...肉の焼けた何やら食欲をそそる...いい匂いが熱を帯びた油が跳ねる音と共に広がる。

ショウガベースのタレで焼いたようで、そのいい香りが臭みを上手く消し去り、食欲を更にそそる。

 

「うむ...ちょうど夜食にいいサイズだ」

 

黄色い電話帳並みの厚さをした海洋哺乳動物のステーキが今夜の夜食のようだ。

司令は今夜の夜食に、満足気な笑を口元に浮かべる。

彼女はチェアの横のサイドテーブルに置いてあるヘッドセットを装着し口を開く。

 

 

----同時刻-----硫黄島空軍基地-----滑走路脇----仮設調理所

 

「軍曹! 第三鉄板への肉のセット完了しました!」

「報告ご苦労------『肉置き班は速やかに第三鉄板より退避せよ! 繰り返す----!?』

 

滑走路脇のスピーカーからは、この基地の将兵が聴き慣れたであろう、この基地の支配者の声が鳴り響く。

 

 

『......現在、滑走路脇で【お客】と共に調理作業中の整備班一同に告ぐ...』

 

支配者の声に合わせ基地中...いや島中が静寂に包まれる。

スピーカーからは何かを咀嚼する音が鳴り響き...

その声を待つ者達の気持ちを凝縮させていく。

 

『大義であった!』

 

次の瞬間、特に滑走路脇から歓喜の雄叫びが力強く上がり、更に天に向けて火柱が上がる。

次々にそこらじゅうから「乾杯!」の掛け声が上がり出す。

 

 

-----

 

「...上等兵」

 

准将は夜食を配膳してきた整備班の兵士を呼び止める。

上等兵は敬礼をし、准将の言葉を待つ。

 

「...第七弾薬庫下の樽を【お客】に一つ差し入れろ。残りは整備班で処分しとけ以上だ」

「了解しました!」

「うむ、下がってよいぞ」

 

上等兵は咀嚼音の鳴り響く部屋を静かに退室し、扉を閉じる。

 

「ヒャッハー! 司令の許可がでたぞ!」

「第七弾薬庫に直行だ!」

「うぉおおお! 朝まで飲むぞぉお!」

「准将! 准将! 准将!」

 

複数の歓喜の雄叫びが扉の向こうから鳴り響く。

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月07日 23時27分

最終更新日

2014年 07月08日 20時29分

 

続 滑走路脇からの差し入れ

本文編集

----硫黄島空軍基地---

 

 

滑走路脇では、突如として天から落下し、動かなくなった海洋性哺乳類を

整備班を中心に、大急ぎで撤去している最中である。

滑走路脇に不要な障害物があると、航空機の離着陸に支障が生じるから当然の作業である。

 

ましてや、軍用機を運用する空軍基地にとっては緊急事態である。

 

 

「おーいそこの肉、焼けてるぞ」

「タレが切れたぞ! 誰か補充しろ」

「酒はまだかぁああ!」

「きさまらぁああ! 野菜を残すなぁああ!」

「おい! 米が切れたぞ! 誰か食堂から取ってこい」

「久しぶりの肉は最高じゃあああ!」

「しょうがないよな~空から降ってきたんだから」

「ありがたく頂戴しなくては」

「うむ。海の恵みと【お客】に感謝!」

 

...どうやら、動かなくなった海洋性哺乳類を解体して、屋外で食物連鎖の営みに興じているようである。

撤去作業は建前のようだ。

 

『あ~お客はもう食わないのかぁあああ~』

 

手持ちの拡声器で酒に酔ったひとりの隊員が、格納庫で丸くなっている【お客】に呼びかける。

ちなみに格納庫で丸くなっている【お客】は、全長が10メートル前後の小型飛行機位の大きさをしている。

首元からは青い水道ホースのようなものを伸ばし、何かを操作しているようだ。

 

彼は知性を兼ね備えた存在であると同時に--------

 

「あっ、自分はもう内臓食べたんで残りはみなさんでどうぞ」

 

----------彼はおっさんのような声と拡声器並みの音量に謙遜を兼ね備え----------

 

『ぉぉおきゃくぅうう~!プロジェクターで何見てるんすぁああ』

 

「よしっ! いいぞ! そこだぁああああ!うっし!----------キター! レア画像くぅううう!」

「あっ、すいません。ゲームに興じてしまって----!?ひゃっほぉおお!」

 

-------文化に対する理解力を備え、社交的で情熱的な--------

 

「へへへ! オラオラ! この【メス豚】がぁあああ! 俺のチ☆ポが効くんだろう! ああん!?」

 

------おや?-----------

 

『おいおい! それ【陵辱系のエロゲー】じゃねーか! しかもヒロインの子【お客】のご主人にソックリじゃん!』

 

滑走路脇で酒盛りに興じる一帯から爆笑と「バレても知らねーぞ」と少し心配な言葉が彼に対して投げかけられる。

 

 

「散々! 酷い飛び方しやがってオラオラ----!?ヒャッハー!攻略完了!」

 

どうやら、主人に対するこれまでの不満を発散し、心の羽根を伸ばしまくっている。

 

一匹のドスケベな竜のようだ。

 

「グルォオオォオオ~!」

 

突如として、格納庫内で歓喜に満ちた雄叫びをあげたドスケベな竜は、地響きを鳴らしながら滑走路へと歩き出す。

 

「皆さん、気分がいいのでもう一匹狩ってきますね~」

 

続けて先程から彼のことをイジリ続ける

酔っ払った隊員が流れ上、自然と拡声器で酒盛りに興じる一同の代表して

ドスケベな竜に声を掛ける。

 

『もう少し~おっきくて脂がのってるの頼みまっす!』

 

ドスケベな竜は翼をはためかせながら上機嫌で------

 

「あっ了解です。今なら! エンシェントドラゴンを殺れるかもしれない!そんなノリでおかわりとってきまぁああ~す♪」

『おう!行ってこ~い---!?うぇえええええ』

 

どうやら拡声器はマーライオンからの直撃を受け、逝ってしまったようだ。

 

ドスケベで青い鱗を備えた竜はVTOL機というよりは、エイリアンのUFOのように明らかに航空力学やその他、諸々の法則を完全無視してヒューンと硫黄島近海の空へと飛んでいく。

 

 

------その頃-----硫黄島近海-----

 

当局から【不審船】として認識されている

一隻の半潜水艇仕様の船が到着していることを

この時まだ、ドスケベな竜は......知らなかった。

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月09日 22時26分

最終更新日

2014年 07月10日 21時25分

 

 

 

------------------------- 第11部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第三十一話 汚職の現場(加筆前)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):1956字

文字数(空白・改行含まない):1835字

行数:102

400字詰め原稿用紙:約5枚

 

【本文】

第三十一話 汚職の現場

本文編集

------九州北部------日本側------某宗教団体施設内---

 

 

 

「ふぉっふぉっ~♪」

「如何なさいました? 司祭様」

「いやぁ~先程、こちらに来てから初めてのぉ~強力な魔力波を浴びましてな~」

 

 

間接照明の灯る、薄暗い一室で二人の男が会話に興じている。

部屋の床では何かが蠢き、水滴を飛ばし部屋の湿度を上げているが

エアコンの除湿機能により室内は、快適さを保っている。

 

因みに二人共全裸である。

 

司祭様と呼ばれた男は、ハゲで腹の出た白人男性のように見えるが

日本語を流暢に話している。

 

もうひとりの男は、長身で手足が細長く目の細い男だ。

 

 

「ん? ああ、君はこちらの人間だから分からないかの~」

「ええ…自分はただの公務員ですから、そちらの方は分かりませんよ-----!?」

 

部屋の扉を静かに開け、速やかに片膝をつく人影が口を開く。

その声は、若い女の声だが凛々しい声である。

 

 

「司祭様、べルーシャ様御一行が国境地帯を抜けられました」

「ほぉ!あの亜魔族の小娘がようやくきおったか」

「はい。既に迎えの車両に搭乗し、セーフハウスの方に向かっております」

「うむ~しかし…NEETやPMCの検問は大丈夫なのかの~」

「現在、NEETやPMCの主戦力は国境地帯に割かれていますので検問は----」

 

先程から司祭様と一緒に全裸で会話に興じている男が挙手すると、口を開く。

 

「司祭様、ご安心ください。NEETの支配エリア近郊の検問は今現在、我々【州警察】が行っておりますのでトラブルの可能性は低いでしょう」

 

この男はどうやら、州警察の関係者のようである。

 

第三次世界大戦後、日本では道州制が導入された。

その際に各自治体の警察は州警察に再編されたのだが…

同時に一つの深刻な問題を抱えていた。

 

 

【汚職】の蔓延である。

 

 

 

日本国内では第三次世界大戦の影響で、周辺諸国から流れ出た武装難民や、かつての高度移民優遇特区に配置され、現在の九州共和国軍の前進になった組織である、特区防衛部隊との戦闘で多くの警官が戦死したという事情や、戦後の混乱、過剰な人員不足も重なり、人心の腐敗を加速させ治安維持を担う警察組織であろうと容赦なく組織を蝕み、堕落させていった。

 

その反面、防衛や治安維持、災害派遣などへと容易に転用可能な

【軍事力】は民間軍事会社も含め増強されていった時代的な背景がある。

 

この時代、フロント企業や宗教団体を隠れ蓑にした、テロ組織や

犯罪組織との【非常に深刻な癒着】など日本の警察では珍しくもないのだ。

 

「おお! それは頼もしいですぞ。柴田長官」

「これくらいお安い御用です。ウルデリック司祭様」

「……」

 

室内に二人の下品な笑い声が鳴り響く。

その会話を見守る片膝を付いた女は、無言でその光景を見ている。

 

「トリーナよ~君は念の為この施設周辺の警備を強化しておきなさい」

「承知しました。司祭様…」

 

トリーナは立ち上がり一礼をすると、部屋の扉を閉じる。

 

「司祭様、あなたの世界の女もなかなかいいですな-----」

 

柴田は舌舐めずりをすると、下品な表情でトリーナのいた、扉の辺りを見つめる。

 

「柴田長官や~先週彼女を襲ったオークが30体ほど、細切れにぉ~」

「おお! それは怖い…やめときますわ」

「ハハハ! それが無難ですぞ~女なら我々は不自由しておりませんからな~」

「ええ、その通り。【肉便器】などいくらでも用意できますからな」

 

彼らのいる一室の床には、10人以上の全裸の少女が横になっている。

中には舌を噛んで自決しないように猿轡をされ、手足を縛られ涙している少女もいるが、中には放心状態で息切れしている少女も見受けられる。

 

そんな彼女達には小さな人影のような者がむしゃぶりついている最中である。

その人影は、立派なイチモツを備えた子オーク達だった。

 

 

「ホッ!ホッ!こうしてガキの内から程良く女の【味を】覚えさせないとオークは抑えがききませんからな~」

「我々が使用した後の肉便器を子オークに与え、【群れ】の中での順位を教え込ます。司祭様は優秀ですな」

「ホッ!ホッ!何せこうして手駒のオークを造り使い、向こうで【教会】の司祭の地位に上り詰めたんですぞ~♪」

「ははは! それは楽しそうだ」

「ホッ!ホッ!とても楽しかったですぞ~エルフや妖精族の里を襲撃したさいなどは四位六時中喘がしましたからな~♪」

 

その後、二人の下品な会話は日が昇るまで続いたのだった…

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月12日 12時03分

最終更新日

2014年 07月16日 10時08分

 

 

 

------------------------- 第12部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

第三十二話 空戦下でミリサが見た【モノ】と第三十三話 (まとめ)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):11798字

文字数(空白・改行含まない):10944字

行数:727

400字詰め原稿用紙:約28枚

 

【本文】

第三十二話 空戦下でミリサが見た【モノ】

本文編集

----国境地帯---地下鉄構内----

 

 

 

「鬼沢指揮官、報告します!共和国軍の通信を傍受、共和国が日本に宣戦布告しました!」

「なんだと!?状況は」

「空戦が開始されてます。共和国側の地上部隊の展開時間を考慮すると、ここも危険です!」

 

龍澤の介抱をしていたアルファ班員が、鬼沢達のいる車両内に駆け込んで報告を告げる。

それと同時に放棄された地下鉄構内や車両も断続的に微妙にズシンズシンと揺れだす。

空戦によって放たれた双方の対空ミサイルが、花火大会並みに盛大に炸裂しているのが容易に伺える状況である。

 

恐らく上空は地獄だ。

 

「仕方ない…ここのサンプル回収と彼女たちを救出して撤退だ!HQに通信を入れろ」

「それが鬼沢指揮官、先程からHQとの通信が途絶してます…原因は不明です」

「...直接基地と連絡を取るために地上に出るぞ。総員戦闘準備を急げ!10分で出発だ」

 

鬼沢は空のボディバッグに子オークの死骸を

2体、素早く突っ込みながら考える。

 

魔族が作った生物兵器か、これを兵器にした奴は…物凄く

 

人間を憎んでいるな。

 

彼は寒気を感じながら、ボディバッグのチャックを閉じる。

 

アルファ班は3人とも速やかに弾薬の残弾や装備の状態を確認する。

ミリサは女子生徒達に近づき、片手を向け何やら赤い光を当て始める。

 

女子生徒達は一瞬びくつくが------

 

「大丈夫…回復魔法よ」

 

ミリサは優しい声で彼女たちに話しかける。

 

女子生徒達の傷跡はミリサの術で消えていく。

だが、心に残った傷の痛みを乗り越えるのは、彼女たち自身が

時間を費やして乗り越えるしかない。

 

真希も残弾の確認を済ませると銃を機関銃に持ち替える。

 

「真希、ひとつ確認させろ。彼女たちを射殺した理由はなんだ」

「…殺してくれって!言ってきたんだぁあ!その時糞豚が----」

「鬼沢指揮官、自分が状況を説明します」

 

----3分後----

 

「真希、お前の行動は自衛行動と瀕死の者への…介錯ということで処理されるだろうから問題ない」

「ああ…分かったよ」

 

鬼沢はアルファ班の班長から、彼らの戦闘ヘルメットが捉えた突入時のカメラ映像を拝見しながら説明を受け、真希の行動は問題ないと判断した。

鬼沢はVSS静音狙撃銃に弾倉を装着し口を開く。

 

「各員移動------龍澤!?」

「まてよ、鬼沢、彼女達にも着るものが必要だろう。間に合わせだが作っといたよ」

 

龍澤の手には即席の服が携えられている。

ボディバッグを切り刻みテーピング材で作ったものだろう。

色は黒く手術着のような簡素な作りだ。

 

他にも座席のシートを切り刻み作った靴も見受けられる。

 

「お嬢さんたち」

 

龍澤は車輌の隅でミリサの術による治療を受けている女子生徒達に近づき

話しかける。

 

「サイズはテーピングで調整しな…着心地は良くないが勘弁してくれ」

 

女子生徒達は無言で頷き龍澤から服と靴、テーピング材を受け取り

身に着け出す。

 

空戦の余波で地下鉄構内が揺れるたびに照明が点滅を繰り返す。

「時間を少し過ぎたが…全員地上に出るぞ。アルファ班は俺と前衛だ」

 

アルファ班は3人共に頷く。

 

「真希と龍澤は彼女たちを護衛しながら俺達の後に続け。ミリサには殿(しんがり)を頼む」

「了解しました。鬼沢さん」

「よろしく頼む。ミリサ」

 

鬼沢はVSS静音狙撃銃の撃鉄を引き、乾いた金属音を鳴り響かす。

 

「移動開始だ」

 

 

十数分後-----地上------

 

 

地下鉄構内から地上に抜けた鬼沢達一行は放棄された市街地を少々足早に進んでいく。

上空では航空機が爆音を轟かせ、対空ミサイルが幾重にも飛び交い炸裂している。

対空ミサイルが起爆する度、或いは航空機が撃墜される度に夜空は、オレンジ色に何度も光り輝き、火の粉や破片を撒き散らしている。

 

衝撃は地下以上に激しいが先を急がなくてはいけない。

鬼沢は地上に出てすぐ、NEETの基地に【コンバットレスキュー】

戦場からの救出作業を要請した。

彼らはNEETによるコンバットレスキューが可能なポイントに可能な限り急いで移動中である。

 

アルファ班はXM8自動小銃を構え先行する。

そのすぐ後方に鬼沢が張り付く感じでVSS静音狙撃銃を構えて【マークスマン】狙撃兵に準じた役目をこなしながら続く。

 

 

真ん中の龍澤はロングマガジンを装着したPDW(パーソナルディフェンスウェポン)

MP7を構え左翼側に張り付き周囲を警戒、真希は右翼側に張り付き機関銃を構え、援護射撃が取れる体制を維持しつつ前進する。

二人の真ん中には救出した女子生徒が位置する。

 

最後尾、殿(しんがり)を浮遊移動するミリサが

魔力で作った真紅の剣を片手に構え務める。

ミリサは魔力波で周囲を索敵し、敵の位置をインカムで各員に報告する偵察兵の役目と------

 

『こちらミリサ、鬼沢さん、ビルの陰に敵車輌が3です!』

『殺れ』

『了解!』

 

ミリサは空いている片手を敵車両の潜むビルに向けて開く。

手からは赤い輝きをした魔力弾が上空に素早く数発撃ちだされていく。

魔力弾は上昇し、放物線を描きながらビルの陰に落下し火柱があがる。

 

魔力弾は九州共和国軍の歩兵戦闘車に着弾し

搭乗員諸共、爆散させて葬っていく。

 

-----ミリサは火力と命中精度がチートな榴弾手担当でもあるようだ。

彼女一人の索敵能力と火力、及びその命中精度は一歩兵を遥かに

凌駕する戦力である。

 

『ミリサちゃんナイスショット!』

 

龍澤の陽気な声がインカムに鳴り響く。

 

『鬼沢さん!歩兵が6名反対側のビルから出てきます』

『了解』

 

反対側のビルから完全武装の歩兵が飛び出してくる。

 

彼らは手馴れた市街戦用のフォーメーションで迎撃を開始する。

最も、その訓練された動きも魔力波で索敵をする

ミリサの前では、全ての動きが筒抜けである。

 

『アルファ了解、迎撃に移る』

 

アルファ班は自らが装着した戦闘ヘルメットの

サーモグラフィで敵を補足する。

彼らアルファ班は、XM8自動小銃を反対側のビルから出てきた敵に向けて

3バーストで牽制射撃を開始する。

 

続いて鬼沢が出てきた歩兵の内2名を

VSS静音狙撃銃で捉えると引き金を絞り

眉間にダブルタップで撃ち殺す。

 

残りは迫撃砲弾並みの威力と誘導性能を備えた

ミリサの魔力弾で爆殺されていく。

 

『こちら鬼沢、ミリサ、魔力の残りは大丈夫か』

『まだ大丈夫です----!新手です歩兵戦闘車10両と-----そんな!?』

『こちら鬼沢どうしたミリサ!?』

 

ミリサは自身の魔力波で捉えた敵の組み合わせに戦慄を覚える。

それは、有り得ない組み合わせだったからだ。

 

 

それは本来なら、ミリサの故郷である魔族領内への

侵入者を自動排除する為に【彼女の故郷の】国境地帯に

実戦配備されているハズの兵器だったからだ。

 

その兵器はかつて、魔族が滅ぼした人間の大国から

製造方法と運用方法を奪い、それ以降魔族が独占してきた兵器

 

【竜核搭載ゴーレム】である。

 

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月13日 12時29分

最終更新日

2014年 07月29日 09時45分

 

続 空戦下でミリサが見た【モノ】

本文編集

『鬼沢さん ! 直ぐに後退してください ! ゴーレムが随伴していま------!?』

 

ミリサがインカムで報告を終える前に、竜核搭載ゴーレムの攻撃は始まる。

 

 

 

-----かつてミリサ達の世界には-----

 

 

 

 

世界の半分を統べた人間の大国が存在していた。

その大国は革新的な兵器を作り上げ、世界の半分を統べるに至る。

 

その革新的な兵器とは【竜核搭載ゴーレム】である。

 

竜の臓器それも魔力を発生増幅させる部位

【竜核】を取り出し、それまで魔力弾の前では泥人形程度に過ぎなかったゴーレムに搭載させることで攻守ともに強力な兵器に造り変え、世界の半分を統べるまでにその勢力を拡大させたのだが……

 

結局その版図拡大の代償として、その大国は魔術に長けた魔族の

怒りを全面的に買い滅びることになった。

 

以後、【竜核搭載ゴーレム】に関わる全ての技術、諸々のノウハウは

魔族が1000年以上独占管理してきた歴史がある…ハズだった。

 

「きゃあああ!」

「いやぁあああ!」

「嬢ちゃんたち! 姿勢を低くしろ」

 

女子生徒を護衛する龍澤が激を飛ばす。

 

鬼沢達一行の周囲のビルには、緑色に光り輝く光の筋が幾重にも

放物線を描きながら落下していく。

 

その光の筋はミリサが放ったものと力の系統は違うが、同じく魔力弾であった。

だが、誘導性能はないようである。

魔力弾は周囲のビルや道路に降り注ぎ、次々と着弾し魔力を解放し炸裂していく。

 

ビルの窓ガラスは、度重なる国境地帯での戦闘でさほど残っていなかったようで

それほどガラス片は降り注がないが、その衝撃は戦闘を経験したことのない

女子生徒達の恐怖を増幅させ、叫び声を幾重にも絞り出す。

 

「もうぃやああ ! お母さん助けてぇえ!」

「もう死にたい!」

「あ !? ふざけるなぁああ!」

 

真希の怒りに満ちた声が女子生徒達に向けられる。

 

 

-----約十分前-----地下鉄構内-----

 

 

「ちくしょう ! 溶接してやがるな。ミリサ、鎖を切断できるか」

「鬼沢さんお任せを」

 

ミリサは座席に拘束されていた少女達を拘束し続けていた

鎖を赤く光輝く霧を帯びた指で触れ切断していく。

 

少女達を拘束していた鎖が切断されると、少女達の両腕は糸の切れた、操り人形のようにだらんと滑り落ち、座席や各々の太ももに崩れ落ちる。

 

鬼沢と龍澤、ミリサの3人は、無理やりオークの子供を出産させられていた3人の少女達の亡骸の膣から、ハミ出ている子オークの死骸を引き抜き

車両の隅に向けて、滑らすように投げ捨てる。

 

特に龍澤は力強く滑らしたので車輌の壁に思いっきり当ててしまう。

骨の折れるグシャりとした音が鳴り響く。

 

鬼沢達は床に横並びに置いた、予備のボディバッグに

彼女達の亡骸を納めていく。

 

「…」

「うう…」

「&%##’#&’((%#$」

 

 

鬼沢と龍澤は目が開いたままの少女の亡骸の眼蓋を閉じる。

ミリサも同じく眼蓋を閉じると片手を胸に当て、彼女の母国語で

祈りの言葉を捧げている。

 

龍澤の作った、間に合せの服を着用した女子生徒達も膝をつき

両手を胸元で合わせ----

 

「恵梨香先輩...ううぅ」

「杏子ちゃん...」

「結衣先輩...」

「うっうっ...助けられなくてごめんなさい」

 

女子生徒達は涙を流しながら

犠牲になった少女達への祈りを捧げていた。

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月14日 02時09分

最終更新日

2014年 07月16日 10時48分

 

続 空戦下でミリサが見た【モノ】2

本文編集

----そして今----

 

上空でのミサイルの炸裂音や、竜核搭載ゴーレムが撃ち込んでくる魔力弾

による衝撃の渦中で真希が涙を流し、声を震わせながら女子生徒達に向けて

大声で語りかけている。

 

「死にたいなんて言うな!」

 

女子生徒達と真希は崩れたビルの大きな鉄骨むき出しの

瓦礫の影に潜みながら向き合っている。

龍澤はMP7を構えながら周囲を警戒中だ。

 

瓦礫の向こうでは鬼沢とアルファ班が歩兵戦闘車から

下車してきた歩兵と銃撃戦の最中である。

 

ミリサは真希たちの少し斜め後ろ付近で、移動と前進を繰り返しながら

魔力弾による遠距離攻撃を繰り返しているが-----

 

『こちら鬼沢、ミリサ ! 攻撃地点は数発撃つ度に移動を繰り返せ!』

『こちらミリサ ! 了解しました-----』

 

竜核搭載ゴーレムの魔力弾はミリサの砲撃地点へと殺到するが-----

 

「遅いのよ!」

 

ミリサは回避機動をしながら魔力弾を撃ち上げ、魔力波で敵に魔力弾を誘導していく。

歩兵戦闘車や、下車した歩兵は彼女の魔力弾の直撃を避けられず----

 

----次々と爆破、爆殺されていく。

 

また、ミリサの回避機動の方が上回る為、竜核搭載ゴーレムの魔力弾は彼女には当たらない。

ミリサの撃ち込む魔力弾は歩兵戦闘車の八割と、下車した歩兵の半数を殲滅したが…

未だ竜核搭載ゴーレムを殲滅できないでいる。

 

 

かなり魔力装甲が硬いわね。

この距離じゃ威力が足りないか。

 

ミリサは鬼沢にある提案をする。

 

『こちらミリサ ! 鬼沢さんゴーレムを視認できますか』

『こちら鬼沢、視認できる !』

 

鬼沢の視界には、数メートル弱の高さをした。

二足歩行する【人影が】燃え盛る歩兵戦闘車の炎に照らし出される。

 

 

『ゴーレムに対して私の遠距離攻撃では、威力が足りません……』

 

……ミリサは覚悟を決め、口を開く。

 

『ゴーレムに対して近距離攻撃を仕掛けますので援護をお願いします!』

『こちら鬼沢、了解した。アルファ班 ! 歩兵と歩兵戦闘車を排除するぞ ! アルファ班は【ニーモーター】を使え』

『アルファ班了解!』

 

アルファ班は、残りの歩兵と歩兵戦闘車を手持ちの銃と、アルファ班員こと特別調査室の戦闘要員は標準で装備しているライフル装着型グレネード

それも【誘導型ライフルグレネード】を使い殲滅していく。

 

このライフルの銃口に装着して使用する

グレネード弾には正式な製品名がある。

 

その名も【NEETモーター】であるが略して

【ニーモーター】ともよく呼ばれるのだが...

それには少し悲しい歴史がある。

 

第二次大戦中に米軍は日本軍から【ある兵器】を鹵獲してソレを

ニーモーターと呼ぶに至ってしまう。

 

その兵器とは【八九式重擲弾筒】(はちきゅうしきじゅうてきだんとう)

主に地面に台座を当て発射する小型迫撃砲の一種である。

 

因みにこの兵器の台座は湾曲しており、そのカーブは米兵の太腿に何故かフィットしてしまい、その姿勢で発射し骨折する事故が発生したそうだ。

 

その後、米軍のマニュアルでは【同兵器を大腿部に当てて使用しないこと】

と記されたという。

 

安全教育の大切さがよく分かるエピソードでもあり、この逸話はNEET隊員の教育過程では耳にタコができるほど教官から聞かされる話でもある。

 

米軍での略称とNEETのネーミングの響きが似ていることから

NEETモーターはNEET隊員や、軍からもニーモーターとも呼ばれるのである。

 

なお、NEETモーターは敵に向けて軌道を修正しながら落下する

賢い兵器でNEET隊員達の間では好評である。

 

 

 

アルファ班の手馴れた攻撃で、残りの敵は極わずかの歩兵だけとなった。

後は、こいつらがミリサによるゴーレムへの接近と攻撃の邪魔をしないように排除していくだけだ。

 

鬼沢とアルファ班は残りの歩兵を撃つ為に射撃位置の移動を開始する。

 

『こちら鬼沢、ミリサ、準備が整った』

 

ミリサは魔力で作った真紅の剣を消し去り、左手で右手首を軽く握り…

魔力を右腕全体に集中させる事、数秒-----

 

(いっ ! 痛い)

 

ミリサは急激に右手に魔力を集中させた事で痛みを感じるが----

ミリサは、通信の間もビルの谷間を高速で移動し、今現在は-----

ビルの谷間、数メートルに浮いている状態であったが----

 

『…こちらミリサ、ゴーレムへの攻撃を開始します』

『鬼沢了解、援護する』

『アルファ班了解、同じく援護する』

 

 

魔力を更に右手に集中させた影響で、彼女の高度は地上スレスレの

いつもの浮遊移動の高度に達した瞬間------

 

「ぁ…ぁ..あっ…あっ….ぅぅうあああああああ!」

 

ミリサの負荷範囲ギリギリの高密度魔力は、喘ぎ声にも似た声から始まる...絶叫を彼女から強引に絞り出す。

 

 

ミリサの右手は高密度の魔力を帯び、彼女の右手を中心とした

範囲に放電を伴う真紅の赤く光り輝く霧を発生させ、纏わせる。

 

ミリサは高密度魔力を帯びる負荷に絶叫を上げながら

ゴーレム目掛けて疾走を始める。

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月15日 14時03分

最終更新日

2014年 07月20日 22時21分

 

第三十三話 喰らいしものと狙いし者

本文編集

「うぁぁああああああああ!」

 

ミリサは言葉にならない絶叫を上げながら駆けている。

 

上空では対空ミサイルが幾重にも飛び交い炸裂を繰り返す。

オレンジ色の火球が何度も生じ、火球の生じた数だけ

夜空を光り輝かせ、同じく大気も激しく揺さぶる危険な戦場を

 

彼女は駆けていく。

 

前方に突き出した彼女の右腕は魔力で構成された真紅の霧で覆われ

その魔力密度の高さから、放電現象すら伴っている。

 

ミリサは地表スレスレをジグザグな軌道を描き--------

高速で機動しながら--------

--------攻撃目標である竜核搭載ゴーレムへと向かっていく。

 

その姿は速度こそ違うが、敵艦に向けて放たれ

シースキミング飛行をする対艦ミサイルのようである。

 

『こちらアルファ班 ! ゴーレムの後方600メートル先から新たな敵車両の接近を確認 ! 歩兵戦闘車15両、戦車5両の計20』

 

パワードスーツの瞬発力を使い、強引に近くの廃ビルの屋上によじ登った

アルファ班からの報告がインカムに流れる。

 

 

『こちら鬼沢、アルファ班そいつらを足止めしろ!』

『アルファ班了解』

 

アルファ班は残りのライフル装着型誘導グレネード

【NEETモーター】を敵戦闘車両に向けて撃ち込む。

その度に周囲のビルの屋上へと飛び跳ね、回避機動と

NEETモーターによる攻撃を繰り返す。

 

アルファ班の軌跡を追うかの如く-------

 

彼らがグレネードを撃ち込んだビルには、次々と

敵歩兵戦闘車の機関砲が豪雨の如く殺到する。

 

アルファ班の3人はその身に装着した、この時代のNEETの証とも言える

パワードスーツの運動性能、運動制御ソフトの見事な連携とそして

なにより、彼らの日頃の訓練の成果によって難なくこれを回避していく。

 

機関砲弾は宙を撃つ、無駄弾と化していく。

戦車からの砲撃も容赦なく撃ち込まれ

ビルの屋上付近を吹き飛ばしていくが、彼らはやはり難なく回避していく。

 

 

『こちら鬼沢、真希と龍澤は女子生徒達を連れて迂回してポイントに向かえ』

『こちら龍澤------おい ! 姉(あね)さん行くぞ ! 了解した。鬼沢…死ぬなよ』

『お前こそ…真希達を頼む』

『了解だ』

「…….」

 

鬼沢は通信を終えると呼吸を整える。

彼は銃を握る両手の握力は勿論、自然と全身の力と姿勢を微調整し

瓦礫の間に潜みながら器用に進み-----

 

VSS静音狙撃銃のスコープで敵兵を視認する。

 

スコープに映る敵の姿は、典型的な九州共和国軍の歩兵のようだ。

数は3人、内一人は軽機関銃を装備している。

残りのふたりは同国産のブルパップ型自動小銃装備の一般兵だ。

3人ともグレーを基調とした市街戦用の戦闘ヘルメットや迷彩服を装備している。

 

歳は20歳前後位だろうか、鬼沢は敵から

若い印象と同時に敵の【ある部分を見て】

珍しいと感じるが3人とも容赦なく-----------ダブルタップで射殺する。

 

『こちら鬼沢、敵の排除完了------!?』

 

インカムに状況を流した鬼沢は凄まじい轟音と--------

 

「嘘だろ…」

 

その光景を見てつい、言葉を漏らす。

 

『ハァハァ ! こちらミリサ ! 敵ゴーレムを撃破』

 

竜核搭載ゴーレムはミリサの攻撃を腹部付近に叩き込まれ-------

宙を舞いながら後方へと、放物線を描きながら-------

最前列に展開していた歩兵戦闘車へと落下していく軌道を辿る。

 

竜核搭載ゴーレムは、最前列の歩兵戦闘車へと

見事に着弾、歩兵戦闘車は押しつぶされ歪な形へと変わり

ひしゃげた装甲の隙間や割れ目から歪な形の火柱を吹き出していく。

その上に乗っかる竜核搭載ゴーレムは緑色に光り輝く派手な

火柱を轟音と共に発生させる。

 

 

「……」

『こちらアルファ班、敵ゴーレムと敵車両の最前列の破壊を確認、後続車両は撤退を開始』

『こちら鬼沢、了解。アルファ班とミリサ、我々も真希達に合流するぞ』

『アルファ班了解』

『ミリサ了解です…ハァハァ-----!? ちょっと待ってください!』

 

魔力波で何かを捉えたミリサは、自分が殴り飛ばした竜核搭載ゴーレムの残骸に

垂直降下しながら突っ込み何やら夢中で残骸を貪り出す【見慣れた】存在の巨大な影を視認すると、疲れを上回る【ある衝動】が彼女の中に生じる。

 

『皆さん…紹介しますアレは-------』

 

ミリサは宙を飛行し残骸を美味しそうに貪る巨大な影に近づき------

 

「あっ ! ミリサ~♪ 久しぶり迎えに来-----!? ちょっと! 痛いって!」

 

ミリサは両手を素早く握り締め、拳を作り真紅の霧で拳を覆うと

巨大な影に近づき無言で殴り始め、口を開く。

 

「遅いのよぉおお ! このエロ竜 ! さっさと来なさいよ」

「酷いなミリサ~イオー島から飛ばしてきたから緑竜核位、ゆっくり食わせておくれよ~帰りの魔力の足しにしないと俺が飛べないよ~」

 

ミリサはとりあえず、コイツに対する躾はこのくらいにして

インカムで報告を再開する。

 

『皆さん、コレは私の下僕で私が足替わりに使っているエロ竜です』

「そんな紹介すると載せてやんないぞ--------ぶげぇえええ!」

 

ミリサはエロ竜の腹部付近に素早く

真紅の霧に包まれた右ストレートをお見舞いする。

周囲には太鼓を鳴らしたようないい音が一瞬、鳴り響く。

 

エロ竜はおとなしくなったようだ。

 

『こちらアルファ班、NEET本部より通信、速やかに竜に搭乗し離脱せよ以上』

 

 

その後、エロ竜に搭乗した鬼沢たち一行は途中、何度も

敵味方の戦闘機に対空ミサイルや機関砲を撃ち込まれそうになったが

戦場をエロ竜のチートな飛行性能で難なく離脱し、比較的近距離に

位置するNEETの海上基地へと降り立った。

 

 

 

同時刻------東京上空を飛行するティルトローター機内-------

 

 

 

 

「矢島、今日は思わぬ収穫だったわね…少し肝を冷やしたけど」

「そうだな。マギサ、政府があそこまで念入りに調査しているのは意外だったか?」

「ええ、まさか此方の正体にあそこまで迫っているなんてね~」

 

 

 

 

-----数十分前----首相官邸ロビー---

 

 

 

 

高橋総理との会談を終えたマギサと矢島が官邸のロビーで

総理の見送りを受けている最中のようである。

 

「マギサ社長、其方のデータや物品は私達が持っていても宝の持ち腐れ見たいなものですからお譲りしますよ」

 

「感謝します。高橋総理」

 

「…マギサ社長、【故郷】に戻られる際、事前にご相談を頂ければ、それなりに政府としてもご協力致します」

 

「それは心強いです」

 

矢島達を護衛しているパワードスーツ装備の

NEET隊の一人が矢島に近づき、報告を告げる。

 

「矢島社長、飛行準備完了です。ご搭乗を」

「ああ…行くか。マギサ」

「そうね。では高橋総理、失礼します」

 

「ええ、またお会いしましょう。それと旦那さんが凄い事になっているみたいですが…大丈夫ですか」

 

「…総理のご配慮恐縮です。ですが、矢島社長のお兄様が現地入りしましたのでその件は問題ないでしょう」

 

マギサの一言で高橋総理の表情は驚きへと変わり------

 

「矢島会長が動き出すとは------」

 

高橋総理はマギサと矢島に一礼すると、そばにいた秘書官を呼びつけ

全閣僚を官邸に集めるよう指示を出す。

高橋総理は再び、忙しそうに危機管理室へと赴くのだった。

 

九州北部国境地帯こと、修羅の境界線での一連の騒動は徐々にだが

 

その影響範囲を広げつつあった。

 

 

 

------その頃------

 

 

 

九州北部のNEETが支配する都市へと続く山間部の

ハイウェイ上では、火の手が上がっていた。

 

道路上には州警察の4WDのパトカーをはじめとした車両や

同じく州警察所属の装輪装甲車、人員輸送用のトラックが

炎上大破横転しているようだ。

 

生き残った警官は散開し車両の影や路肩の排水用の溝に潜み、攻撃を仕掛けてきた方向に警戒しながら自動小銃や9ミリカービン銃、グレネードランチャーを構えつつ、無線で必死に応援要請をしている。

 

『こっ、こちら州警察警備部所属314輸送隊 ! 遠距離からロケット弾ないし迫撃砲による攻撃を受けている ! 死傷者多数 ! 護送対象は斜面に避難、至急応援を要請する ! 繰り返す--------』

 

 

 

警官達とは別に斜面を素早く駆け上る-------

大剣やハンマーを背負った------

全身を青や赤の鱗で覆った人影が数十体あった。

 

 

 

「オルーシャ ! 敵の数は!?」

「不明です ! 遠距離攻撃と思われます ! 」

「ちくしょう ! さっきの肩慣らしで潰した連中の仲間か!?」

「べルーシャお嬢様、この感じは明らかに-------!?」

 

 

大量の【白く光り輝く光の矢】が、べルーシャ達を狙って降り注ぐ。

【魔力矢】は斜面に突き刺さると魔力を解放し、次々に白く光り輝きながら炸裂していく。

 

魔力矢が魔力を解放する度に斜面の岩肌は、運動エネルギーを与えられ

殺傷力を帯びた破片と化し、周囲に高速で拡散していく。

 

破片は斜面に生える僅かな草木を炸裂音と共に薙ぎ払う。

斜面を素早く駆け上るべルーシャ亜魔族一行に破片の効果はないようだ。

破片がその身を覆う鱗に当たっても無傷であるが皆、手馴れた動きで

魔力矢を避けている。

 

今のところ、魔力矢の直撃を受けた亜魔族は皆無のようだ。

 

 

べルーシャ達は光の矢を避けながらも

更に速度を上げて斜面を駆け上っていく。

 

「べルーシャお嬢様間違いありません ! この攻撃は【エルフ】それも反王国派の魔力矢によるものです!」

「反王国派のエルフだと…念入りに里を潰して回ったハズだぞ!?」

 

 

 

 

------ハイウェイより遠方の山頂付近------

 

 

 

 

「角度修正完了----」

 

広葉樹の原生林に覆われた山の山頂付近で

岩に腰掛け、タブレット端末の画面を見ているひとりの男がいた。

耳元には通信用のインカムが装着されている。

 

タブレットの画面には、変化を細かく繰り返す数値と共に

どこかのハイウェイ上で炎上している警察車両や装輪装甲車

輸送トラックが白黒の赤外線画像で映っている。

 

 

 

男はこの時代の戦場では珍しい迷彩柄のブーニーハットを被り

顔にドーランを塗り野戦用の迷彩服を着ている。

その傍らにはサイドパーティー製のパーツで作られ、使い込まれた

感じのするM4カービン銃が置かれている。

 

彼の掛け声に合わせるように

腕の向きを変える少年少女のような存在が10人

肌と髪の色だけをみたら白人系の10代前半の美少年と美少女に

見えるかも知れない。

 

目元には何やら、メタリックなデザインの家庭用のHMD(ヘッドマウンテッドゴーグル)を装着している。

 

一方HMDゴーグルと正反対に、その身につけている衣服は

何らかの動物の革を使用した茶色の衣服と同じ素材と思しきブーツ

であるが、明らかにコスプレ的でファンタジーな感じである。

 

だが、この少年少女達からは違和感が感じられない。

 

そして、その耳も人間と異なり先端が細長く

その衣服に対して全く違和感がないのである。

 

そう、この少年少女達は-------

 

「撃ってええ!」

「了解デス ! %#%’」

 

男の指示に片言の日本語で少年少女は返事を返し、素早く何かを呟くと-----

空に向けて掲げた両手から白く光り輝く魔力矢が

連続して夜空に向けて撃ちだされる。

 

ファンタジーな格好をした少年少女達が両手を掲げる先の

空を遮るように伸びる、広葉樹の枝は魔力矢が高速で擦る度に

その数を減らし、枝と青々とした夏の葉っぱを少年少女達の足元へと

落下させていく。

 

枝に止まっていたであろう、クワガタやカブトムシなども

ワラワラと一緒に落下し、大漁状態だ。

 

 

「グッキル ! 後続の鱗野郎を8体撃破、次弾の用意を急げ ! 

【自称エルフ】の皆さん!」

「ハイ ! 先生」

 

 

 

------べルーシャ達に里を蹂躙され生き残った

【エルフ】の少年少女で結成された少年兵達の部隊だった。

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月20日 18時08分

最終更新日

2014年 07月25日 22時47分

 

 

 

------------------------- 第13部分開始 -------------------------

【サブタイトル】

姉弟と占い師の雑談 (総まとめ)

 

【前書き】

文字数(空白・改行含む):7178字

文字数(空白・改行含まない):6658字

行数:399

400字詰め原稿用紙:約17枚

 

【本文】

第三次世界大戦前 

 

201X年 12月末 夕方

 

関東某県 駅前近くの大型商業施設

 

多くの買い物客で混雑してる食品売り場から、姉弟と思しき二人が

買い物を終え、仲良く笑顔で会話をしながら店の外に出てくる。

姉と思しき10後半位の少女の手にはエコバック握られ、中には野菜や[半額」のラベルの貼られたタッパ詰めの牛肉が程よく綺麗に入れられている。

 

弟と思しき10歳前後の少年は冬着姿で首元には姉とお揃いの灰色のマフラーが巻かれている。

 

「おねーちゃん!早くぅぅ~」

まだ変声期を迎えてない少年の可愛らしい声が駅前に鳴り響く。

「走らないのOO、電車には間に合うから焦らない」

 

姉は落ち着きのある綺麗な声で、弟に暖かく笑みを浮かべながら話しかける。姉は制服姿でミニスカートで黒いニーソという最高の組み合わせである。

道行く男が彼女の事をチラ見している。

視線の先は、ミニスカと黒いニーソの絶対領域だけではなく、顔もスタイルも含め彼女が黒髪でロングのいかにも[大和撫子]な魅力を周囲に振りまいているからだろう。

 

因みに視線の先は当然ながら、見事にはちきれんばかりに育った制服の胸元に大半が注がれている。

彼女が歩行するたびに微かに揺れている事からその胸元の豊穣さを窺い知れることだろう。

 

「早く家に帰ってゲームしようよ~おねーちゃん」

弟は笑みを浮かべながら姉に話しかける。弟も姉に似た顔つきをしており、将来は美男子ないし、綺麗な[男の娘]になることだろう。後者に関しては一部腐り気味の思考の方々以外からも、賛同を得られかもしれないくらい弟は姉に似ているのだ。

 

二人は駅の方に向け帰宅中の人の流れに沿って進んでいく。駅前に再開発で作られた大型商業施設には

年末ということもあって、多くの人が来店している。

 

「今日は私がマ☆オカート勝つからね。OO、私が勝ったらOOが風呂掃除一週間だからねっ」

 

「えーじゃー僕が勝ったら、一週間おっぱい揉ませてねっ!」

 

道行く人、特に男性陣を中心とした視線が姉と弟に注がれる。

おそらく[おっぱい揉ませて]この言葉に反応することから、熟練のおっぱい戦士達の視線であろう。

 

「晩飯、OOは抜きね」

姉は弟から視線をそらし冷たく言い放つ。だがその口元は少し笑っている。

 

「ごめんなさい。おねーちゃん、肩もみで許して」

弟は少し申し訳なさそうな声色で姉に話しかける。弟に多くの通行人、それもやはり固唾を呑んだようなおっぱい戦士と思われる者たちから、若きおっぱい戦士を応援するようなエールの様な視線が注がれる。

 

「いいわ、肩もみで許してあげる」

姉はクルッと振り向き、可愛い笑顔で弟に許しの一言を言い放つ。

 

周囲の一部、男性陣おそらく、熟練のおっぱい戦士と思われる男性達はウンウンと頷く者や、また微かに微笑を浮かべながら、この姉と弟の仲良きやり取りを見守りつつ過ぎ去っていく。

姉と弟は駅舎の入口付近に到達し、駅の入り口付近でいかにも占い師っぽい紫のローブに身を包んだ女性を見かける。駅舎の入口付近の壁の近くにはギターケースを広げ自作の曲を弾く者や歌う者がおり、人だかりができている。

だが、占い師っぽい色白の女性のところには、なぜか人がほぼ皆無である。

まるで、その場にいないかのようである。因みに[占い一回500円]とダンボールの裏に黒いマジックで書かれたボードを首から下げている。

 

「おねーちゃん占いしていこうよ」

弟が笑顔を浮かべながら姉におねだりをする。

姉は上着のポケットから、りんごのロゴマークの描かれたスマートフォンを取り出し時間を確認する。

 

「、、まだ電車まで時間あるし、占ってもらおうか」

 

 

二人は占い師のところへと向かう。

 

続 姉弟と占い師の雑談

前書き編集

作者からのお知らせ

 

第十七話 姉弟と占い師の雑談 の続編です。

 

改稿作業と本編の続きに作業を集中させているので文章量は少ないです。

 

 

第二章の改稿部分と本編の続きの投稿は8月下旬頃を予定しています。

読者の皆様、今後共、魔女の弾丸をよろしくお願いします。

 

 

本文編集

「すみません占いを―」

「あらっ…かわいい弟さんですね…」

 

 少女の問いかけに答えるその声は、透き通る様な上品な

大人の女性の声色であるが…

 

 

 

 

「〇✖さん」

「!?」

 

 

 

 少女は驚く。

 

 何故、この占い師のような女性は私の名前を知っているのか。

少女は周囲の異変に気づき、白い吐息を吐きながら辺りを見渡す。

 

「なにこれ…」

 

 少女の瞳には自分と、占い師のような女性以外の

全ての動きが止まったように映る。

 

 道行く通行人も駅前のロータリーの車両も皆、動かない。

無風で無音の世界と化し、空中にはカラスが羽を広げたまま停止している。

 まるでその異常な状況を如実に象徴するかのように、絶妙なタイミングで

翼を広げ固まっている。

 

 

 それは彼女の隣にいる弟も同じだった。

 

「えっ〇✖ !? 大丈夫」

「大丈夫ですよ○✖さん…一時的にあなたと私を【時空の狭間】に肉体ごと移動させただけですから」

 

 少女は占い師のような女性を眼前に見据え、睨みつけるように瞳に捉えながら強い口調で尋ねる。

 

「…あなたは何者ですか」

「……」

 

 占い師のような女性は口元に微笑を浮かべながら口を開く。

 

「私は通りすがりの魔女よ…ただ、あなた宛の伝言を頼まれてね」

「誰に?」

「同業者よ」

「伝言の内容は?」

「今から五日後、あなたはこの世界に留まるか…別に世界に行く選択を迫られるわ」

「それは脅迫かしら?」

「フッ…」

 

 魔女は少し笑うと再び話を続ける。

 

「違うわよ。ただ、長生きしたいのなら、あなたはこの世界を離れるべき」

「どういう意味かしら」

「そのままよ。この世界は数年後に戦火に見舞われる」

「…なにそれ」

「世界大戦が起きるのよ【この世界線】ではね。そう言えばあなたに分かりやすいとマギサから聞いているわ」

 

「!?」

 

 世界線この一言で少女の心に衝撃が走る。

 

 そう、少女はシュタイ☆ズ・ゲートが大好きであった。

だが、その事は友人にも話していない極秘事項で乙女の秘密のはずであった。

 

 少女自身、中二病気味の傾向が

あるということは少なからず、自覚していた。

 

 故に彼女の心の中は少々…

 

 中二病なキーワードでパンク気味であったりするが必死に口を開く。

 

 

 

 

「…マギサって誰よ?」

「私の戦友でこの伝言の依頼主よ」

「……」

「これが現実よ…受け入れなさい」

 

 少女はその身を震わせながらも

己の震えを悟られないように全身に力を込めながら口を開く。

 

「マギサとかいう奴は、私に別の世界で何をさせたいの?」

「天下布武のお手伝い。要は一緒に戦えという事、もしあなたに―」

「…?」

 

 魔女はローブの内側から真紅の色をした金属で作られた

真新しい手甲を少女に差し出す。

 

「彼女と共に戦う気持ちがあるのなら、この【携行型魔力増幅器】を五日後、両腕に装着していたら、この世界から離れることへの了承とみなすとマギサは言っていたわ。他に聞きたい事があるなら答えるわよ」

 

「……」

 

 

 少女は魔女が差し出してきた真紅の手甲の表面に映る自分の顔を見て思う。

 この体の震えは目の前の魔女への怯えなんかじゃない。

 

 未知の世界と未知の存在に興奮して生じた武者震いだったのだと。

 

 その真紅の手甲の表面に映る少女の顔は笑っていた。

 

 この時、少女が心の中に秘めてきた中二病的な部分は、凄まじい歓喜の渦に包まれていた。

話別小説情報

 

掲載日

2014年 07月27日 22時37分

最終更新日

2014年 08月12日 03時18分

 

続 姉弟と占い師の雑談2

前書き編集

お待たせしました。

先週投稿した話の続きです。

 

次の番外編の【登場人物の過去編】投稿も日曜日の予定です。

 

この少女は【黄昏に見送られる若き魔女と異邦人達と】で最後に出てくる

少女です。この子の名前は...まだ未定

 

 

本文編集

 ---とあるマンションの一室---

 

 

「どうしよう…」

 

 少女は弟と夕食を終え、自室のベッドで制服のまま小一時間程、横になっている。

 因みにマリ✖カートは彼女が勝利したので、食器洗いは弟にやらせた。

少女は首を動かし、視線を勉強机の上へと向ける…

 彼女は薄いピンクをした小さな唇を自然と動かし、思いをつぶやく。

 

「……夢じゃないのか」

 

 彼女の視線の先にある机はシンプルな茶色いウッドデスク、数年前このマンションに引っ越す際、父と共にホームセンターで購入し組み立てた机だ。

 故に少女には少しばかり、思い出のある机でもある。

机の上は綺麗に整理され、隅にはシャーペンと消しゴム、ボールペンが置かれている。 

 そして、机の中央には綺麗に並べられ、数時間前に魔女を名乗る

女性から手渡された――

 

 真紅の金属で作られた手甲が置かれている。

 

 

 

 

---数時間前---時空の狭間---

 

 

 

 

「あなたの話では一度、この世界を離れると10年は戻れないのね」

「ええ、そうよ。あなたも死にたくはないでしょう?」

「死にたくはないわ。ところで…」

 

 少女は魔女と一時間ほど話を続けている。

時間が経つにつれ少女は冷静になり、中二病も収まってたきたようだ。

 そして、少し先の事を考える余裕が出来たので、ある質問をしてみる。

 

「私がこの世界を離れている間、弟の面倒をだれが見るのかしら?」

「…」

「マギサなる人物は私、個人のことをよく調べているようだけど、私を納得させて自らの陣営に引き込みたいのなら…其の辺の配慮は当然しているわよね?」

 

少女は少し強めの口調と視線を向け、魔女に疑問を投げかける。

 しかし、魔女は少女の視線や口調に動じることも無いようだ。

魔女にとっては予想取りの答えが聞けたのかもしれない。

 だからだろうか、魔女は微かに微笑むと唇を静かに開き少女へと語りかける。

 

「なるほど、だからマギサはこんな面倒な依頼をしてきたのね。ちょっと待って…」

「ええ、また何か出すのね」

 

 魔女は再び自身が纏うローブの中から人の形をした黒い物体を取り出す。

魔女はその物体の口元を開けるような動作をしてカチッとした音を鳴らす。

 口元からは何やら白い粘液のようなモノが垂れている。

 

「それは人形かしら?」

「【ゴーレムの素体】よ。コイツの口にどちらでもいいから人差し指を入れなさい」

 

 魔女は少女に近づきゴーレムの素体を手渡す。

少女はゴーレムの素体を握り締め、素体の口元から垂れる液体を見てなんとなく嫌悪感を抱く。そんな少女の気持ちを察したのだろうか、魔女が口を開く。

 

「○✖さん…それ結構な値段がする品なのよ」

「日本円で幾らくらいかしら」

「そうね…あなたの国の主力軍艦が一隻買えるくらいの金額だとマギサは言っていたわ。私達の世界だと…【第七次救済戦争】時代の竜核搭載用ゴーレムの素体が買えるくらいって、言っても分からないわよね」

「ええ、分からないわ。でもかなり貴重な物なのは理解したわ」

 

 少女は手にしたゴーレム素体の価格を聞きながら、マギサなる人物の自分に寄せる期待の大きさと同時に先程、魔女から聞かされたマギサなる人物の目指す目標である【天下布武】への本気の度合いを感じていた。

 次の瞬間、少女は右手の人差し指を白い粘液で満ちたゴーレム素体の口元に入れる。少女の指にはねっとりした感触と生暖かさが伝わる。

 

「何も起きないわよ…ん?」

 

 少女が魔女に対し疑問を全て口にする前にゴーレム素体は突如として青く発光する霧に包まれる。その霧は素体の口元から溢れ出し、少女の体も徐々に包みこんでいく。

 

「きゃっ!」

「ああ…大丈夫よ。そのままソレを握り締めていなさい。今、あなたの魔力分布を調べているのよ」

 

 少女の握り締めるゴーレム素体は青く発光する霧で少女を包み込むと全身を激しく振動させ、口元から白い粘液を周囲に大量にばら撒き、少女の制服や顔面に飛ばしていく。

 

「ちょっと! これ生臭いんだけどぉおお! なんなのこの白い液」

「【魔液】、魔力を液体化したものよ。原材料は…言わないでおくわ」

 

何故か魔女は言葉を濁す。微かにだが魔女は頬を朱色に染めモジモジしている。

 しかし、少女は感情的になっているので追求をやめないようだ。

 

「言いなさいよぉおお!」

 

 少女の叫びが周囲に鳴り響く。

 

 その間もゴーレム素体は輝きと振動をやめない。

むしろ、振動と飛び散る白い粘液の量は増していき素体からは何やら、ウィンウィンと

イヤらしい音が鳴り響き、素体の振動は少女の全身を揺らし胸も揺らす。

 おっぱい好きの少女の弟がこの光景を見ていたら、彼の人格形成に深刻な影響を及ぼしたことだろう。

 

「竜の…」

「竜のなによぉおお! あっ…ん…」

 

 少女の全身を何やら振動が継続的に駆け巡り少女はつい、甘い声を漏らしてしまう。

魔女は少し空気を吸うと口を開く。

 

「竜の精液よ…こんな事言わせないでよっ…たく」

「えっ…せいえき」

 

 少女は脳内で魔女の口から出された言葉を変換して、中学の時の保健体育の授業を思い出していた。そして少女の脳内を様々な精液にまつわる情報が駆け巡り――

 

「きゃあああああああ!」

 

少女は更に甲高い叫び声を時空の狭間で張り上げてしまう。

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 08月03日 20時11分

最終更新日

2014年 08月11日 23時57分

 

続 姉弟と占い師の雑談3

前書き編集

先週の続きです。

 

来週からは別の登場人物の過去編をしていきます。

週一で進めていきます。

 

読者の皆様

今後とも、魔女の弾丸をよろしくお願いします。

本文編集

---時空の狭間---某所---

 

「あらっ意外と早いのね」

「あのね…生臭いままなんて嫌に決まっているでしょ!」

「それもそうね…ドリンクやお菓子はお好きなのを好きなだけどうぞ~♪私の奢りよ」

「そりゃどうも」

 

 私は魔女に連れられ、駅前のネットカフェでシャワーを浴びていた。

流石に竜の精液まみれでは電車で帰宅できない。

 そんな状態でいたら通報されたり、つぶやき型ブログに即効で画像を

UPされ【ケ✖ィアまみれの女子高生キター!】と騒ぎになるだろう。

正直、そんな事でネット上で有名人になるのは不名誉極まりない。 

 そいうわけで急遽、私と魔女は駅近くのネカフェに避難している。

といっても、魔女も私もお金を払っていない。

 

 

 

---約三十分前---

 

 

 

「うぇえええええんんんん!」

「ちょっと! え! 何この子供ええええ!?」

 

 私が先程まで握り締め、人差し指を突っ込んでいた真っ黒いゴーレム素体は突如として私の手の中で激しく振動し、まるで何かに引っ張られるかのように私の手から離れ、私と魔女の間で浮いたまま、青く光り輝く霧にうっすらと包まれ、その内部で徐々にその形状を変えていく。

 

 その形状は初めのうちは、生物の教科書でも見たことのある人間の発生過程のソレにそっくりだった。サイズ的には明らかにデカすぎで不自然だったが。

 だが確実にゴーレム素体は、人間の赤子へと形状と色を変え、更に十歳位の黒髪の女の子に成長すると浮遊を停止して、静かに着地して産声というか泣き声を上げている。

 

「まだ、完成じゃないけど三日以内には貴方の代わりが出来る程度に成長させて調整しておくから」

「なによこれ……」

 

 魔女はサラっと目の前で起きた、生命の誕生的な現象と、先ほどの少女の疑問への回答をそれなりに形にして説明を交えて応えてみせる。

 少女は立ち尽くしたまま若干放心気味に魔女の話を聴いている。

 

「それと、○✖さん」

「え! 何かしら」

 

 魔女は笑を浮かべながら口を開く。

 

「とりあえず、裸になりなさい。洗濯しておくから」

「なっ!」

「白濁まみれの女子高生が駅前をうろついていたら通報されるでしょう」

「…そうね。でもシャワーとかはどうするのよ」

「ふふふ♪」

 

 魔女は少し楽しそうに笑う。

 

 魔女は近くにいたスーツ姿の中年男性から

手にしているホワイトカラーのスマートホンを取り上げる。

 当然ながら男性は微動だにして動かない。

少女はその光景を見て半ば、呆れながらも口を開く。

 

「泥棒じゃないソレ…最低え!?」

「驚いたでしょ♪」

 

 少女の目にはスマートホンが【二つ】映る。

一つは魔女が中年男性から取り上げたスマートホン、二つ目は男性の手に同じものがうっすらと白い霧が輝き同じスマートホンに変わり、何事もなかったかのように出来上がり握られていた。

 

「分裂したの…」

「そんなところかしら…でも、命の宿った存在にこの術は使えないわそれに―」

 

 魔女はもう一度男性のスマートホンを取り上げようとするが、彼女の手がスマートホンに触れるたびに白い霧に変わる。手を離すと霧は消え失せ

スマートホンに戻るサイクルを繰り返す。

 

「同じ物には暫く同じ事ができないのよ」

 

 魔液で白濁まみれの少女はその光景を見て素直にチートすぎると思うのだった。

 

 

 

 

 

話別小説情報

 

掲載日

2014年 08月10日 19時53分

最終更新日

2014年 08月12日 00時27分

 

 

 

 

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