第四次忍界大戦の英雄。
そして、現在は七代目火影を務める忍の名をうずまきナルトという。
ナルトは身体の中に九尾の尾獣を宿す人柱力だ。
幼少期にそのことが理由で里の大人たちから迫害に近い行為を受けたこともあるが、挫けることなく己の忍道を貫き、皆から認められる立派な忍になった。
大戦後は木ノ葉隠れ最強の一族とも言われる、日向一族のヒナタを娶り、子宝に恵まれて一男一女をもうける。夫婦仲は良好であり、息子が反抗期を迎えているものの温かい家庭を築いていた。
そんなナルトが火影として行う仕事は、重責を伴うだけでなく激務を極める。
火影室の机の上には、常にと言ってもいいほど大量の書類が積まれていた。
処理しても、処理しても、山のように築かれた書類は一向に減らない。それどころか新たに増えていく書類の方が多く、処理速度が追い付いていないのは明らかだった。
そのためナルトが自宅に帰る機会は少ない。それなのに夫婦仲が良好なのは、ひとえに理解ある妻のお陰だろう。
しかし、自宅に帰ることができない――いや帰ろうとしないのには、実は激務という理由以外にも存在した。
深夜の火影室。
扉には鍵がかけられ、部屋に灯りはない。一筋の月の光すら差し込まないほど、隙間なくカーテンが閉じられている。
そんな暗闇に覆われた空間で蠢く二つの影。一つは男、もう一つは女のものだ。
女は机に手をつき、尻を突き出すような体勢ををしている。そこへ男の腰が打ち付けられるかのように前後に動いていた。
火影室で静かに響く、水気を帯びた擦れ合う音。
女は漏れる声を抑えようと歯を食いしばりながらも、男の動きに合わせて絶妙な具合に尻を動かす。
「くっ!」
男から呻き声のようなものが上がる。
すると、腰の動きが徐々に激しくなり、擦れ合う音から叩きつける音に変化した。さらに、机の軋む音が混ざる。
耐え切れなくなった女の口から艶めかしい声が漏れ始めた。
「っ……! あっ、ぁ……んんっ!」
男は女の嬌声に強い興奮を覚え、その動きを一層激しくさせる。時には、女の尻を叩いて赤く染め上げながら、何度も、何度も――突き刺す。
女は全てを受け入れていた。されるがままに男へ快楽を生み出し、自らも男から生み出される快楽に酔いしれている。
男の限界が近かった。
溜まった全ての感情を吐き出すかのように、女の身体の奥深くへ――腰を大きく打ち付けた。
「ハァ……ハァ……」
数秒、深く交わった状態で硬直していた二人。
やがてゆっくりと身体を離すと、女が地面に膝をつく。後ろを振り向き、立ったままの男の下半身へ顔を寄せた。
男と女の淫汁が混じり合った濃厚な匂いが漂っている。発生源は男の股間にぶら下がっている物体だ。女は汁で汚れているそれをを躊躇することなく咥えた。
「んっ、んっ……」
全体を綺麗にするように優しくしゃぶり、吸い上げていく。
そして、口から出すと愛しそうに舌を這わせて舐める。満足した女は最後、先端にキスをして男から離れた。
「スッキリしたってばよ……少し休んだら再開しようと思う」
乱れた服を整え終えた男が、先ほどとは打って変わって落ち着いた表情で女に言う。
「じゃあ、窓を開けておきますね」
部屋には独特の匂いがこもっていた。
このままだと誰かが訪れたとき、その匂いを知っている者なら何が行われていたのか丸分かりだ。
カーテンへ手を伸ばそうとした女が、背後から男に抱き締められる。
「愛してるってばよ」
「……わたしもです。また、したくなったら言ってくださいね」
女が優しい声音で答える。
男は甘えるように強く抱き締めると、しばしの間そうして過ごす。
満足したのだろう。女から手を離した男は、窓から距離を置いた。
女が喚起のために窓を開ける。風とともに新鮮な空気が入り、部屋の淀んだ空気を入れ替え始めていく。
同時に、男と女の間に先ほどまで存在していたはずの甘い雰囲気が消え去る。まるで何事もなかったかのように。
「飲み物と……あと、何か軽く食べるものを用意しましょうか?」
月明りに照らされた火影のみが座ることを許される椅子。
男――七代目火影のうずまきナルトは、そこへ座ってから返事をした。
「ああ、そうだな……それとシカマルを呼んでくれってばよ。相談したいことがある」
「分かりました。では、一度失礼しますね」
ナルトは頷き、女が火影室から出て行くのを見送る。
扉が閉まって椅子にもたれかかると、心地よい気怠さに包まれながら目を瞑った。
奈良シカマルは七代目火影の仕事を手伝う補佐役の一人だ。
内外からは火影の信頼が厚い側近中の側近、右腕と目されている。
火影の仕事がそうであるように、補佐役であるシカマルの仕事も多い。ナルトほどではないものの自宅に帰る機会は限られ、泊まり込む日が少なくない。
今日も溜まった急ぎの仕事を片付けるために前日から泊まり込んでいて、現在は仮眠室で休息を取っていたところだった。
「んー……」
誰かが近付いてくる気配に、シカマルは浅い眠りから目を覚ます。
断定はできないが誰であるか見当はついていた。同じ補佐役のシズネだろう。
五代目火影だった綱手の元付き人で、医療忍術のエキスパート。
綱手と同じ術を使っているのか、ただ老けづらい体質なのか。それは不明だが、二十代後半の頃からほとんど容姿が変わっていない。未だ若さを保ったままである。
シカマルは知っていた。
シズネがただの補佐役ではなく、ナルトと一線を越えた男女の関係になっていることを。
気付いたのは偶然だった。
ナルトの火影就任からしばらく経った頃。
その日、シカマルは自宅に帰っていたが、疲れから渡しておくべき書類を忘れていて、急いで火影室へ向かった。
ここで、翌朝にすればいいだろうと思って行かなければ、今も知らなかったかもしれない。
夜遅い時間であるというのに、火影室から出てきたシズネと廊下で会った。何かあったのかと問えば、仕事について報告していただけという。
シカマルは、シズネの様子にいつもとは違う何かを感じながらも納得する。
しかし、火影室へ赴くとナルトの様子までも変だった。僅かにではあったが、驚いた様子を見せたのだ。
そこでシズネへの違和感に繋がる。あれは自分がいたことに驚き、動揺を悟られないよう取り繕っていたからの態度ではないのかと。
部屋を見れば窓が開いている。普段ならば何も不自然なことではないが、この状況では疑わざるを得ない。
さらに、シズネが火影室を出てから間もないことから、まだその匂いは微かに残っていた。
「…………」
全てを理解するシカマルとそれを察したナルト。
重たい空気が流れ、シカマルが書類を無言で渡すと、ナルトも無言で受け取り、そのまま何も言わずに帰った。
シカマルは、あの日から今日に至るまでシズネとの関係について一言も触れていない。
ナルトから何かを言ってくることもなかった。
お互いに相手が知っていることを知りながら、変わらない態度で接している。
そして、一度気付いてしまえば、ナルトとシズネが密会する機会を予想することは容易だった。
シカマルは補佐役としてナルトの予定を完全に把握している。不自然な行動があれば気付いてしまう。だけど日中に仕事を放り出し、人目を盗んで何かを行っている様子は一切なかった。
つまり、深夜の火影室こそが密会場所。
それ以外で二人が真実の関係を晒すことはないということだ。
しかしどれだけ巧妙に隠そうとも、運が悪ければシカマルの場合のように露見する。もしも噂などができ、ヒナタや子どもたちの耳まで届いたら悲しませることになる。
シカマルは友人としてナルトのことを考えるなら、一刻も早くやめさせるべき行動を取るのが正しいことは分かっていた。
なのに一言も触れすらしないのは、火影の補佐役という立場から口を噤むことを選んだからだ。
二人に苦言を呈せば、おそらくは短い時間で関係は解消される。他の者たちに知られない内に終わらせることが可能に違いない。
だが、その前にシカマルは思ったのだ。どうしてそのような関係にになってしまったのか。
補佐役として支える相手、補佐役の同僚。
二人と間近で接していたシカマルだからこそ理解できた。
火影という重責の伴う大変な仕事。
近代化が進み、かつてよりも輪をかけて激務に追われる状況であり、ナルトは身体と精神どちらも酷く疲弊していた。
そこで一番近くにいた母性的な女性に惹かれたのだろう。一時の安らぎを求めて手を出してしまったのだ。
シズネも補佐役としてナルトの状態が酷いことは知っていた。
元々、愛情やそれに近い感情を持っていたかは不明だが、親しい間柄だったことは聞いている。求められて受け入れたのには、シズネなりの優しさがあったのかもしれない。
そこまで考えが至り、シカマルは補佐役として口を噤む方を選んだ。
火影であるナルトを支えることが自分すべき役目であると。
「……起きていますか?」
近付いてきていた気配はやはりシズネだった。
仮眠室の扉の前から聞こえてくる声に、シカマルはベッドから身体を起こして返事をした。
「ええ。どうかしました?」
「火影様が相談があるようで呼んでいました。あとで火影室の方へ顔をみせてください」
「わかりました…………あの、シズネさん。ちょっと待ってください」
去ろうとしていたシズネの背中に、部屋を出て声をかける。
振り向いたシズネの姿に怪しいところはない。けれど、ナルトと会っていたのなら火影室でしていたということだろう。
シカマルは頭を掻きながら話す。
「えっと、火影……ナルトとのことなんですが」
「……」
一瞬、シズネの目が鋭くシカマルを捉える。
「あー、火影の役割が大変なのは重々承知です。その上でなんですけど、あんまり無茶しないようあいつに言ってやってください。それと、シズネさんももう少し休んだ方がいいですよ……実務なら俺が手助けできますんで」
ナルトを心配する気持ちと、ナルトを支えようとするシズネを心配する気持ち。今のシカマルの口から話せる言葉はこのくらいだった。
言葉の意味を理解したシズネが微笑む。
「ありがとうございます。しっかり伝えておきますね」
そう言って、シズネは去って行った。
シカマルはというと欠伸をしながら外を見る。まだ暗く、闇に包まれていたが日の出は近いように思えた。
火影室へ行く前に寝起きの顔を水で洗ってさっぱりとさせる。今日も大変な一日が始まることだろう。
火影をしっかりと支えるため、気合を入れて朝を迎える準備をするのだった。
NARUTOには以前から魅力的なお姉さんキャラが多いことが気になっていたので書いてみました。
独自設定タグはシズネの容姿に関する部分です。年月による容姿の変化をなくすために入れさせてもらいました。