指揮官は、私たちに与えてくださったことに気づいていないのかもしれません。
指揮官は、きっと多くを望まないのかもしれません。
指揮官は、今そこにある何気ない幸福に満足しているのかもしれません。
指揮官は、怒るでしょうか?
指揮官は、私たちがそれ以上の幸福を求めてしまったことを……怒るでしょうか?
「指揮官! 今日は何して遊びますか?」
どこか間延びしたような愛くるしい声が、どさりと背中に覆いかぶさる重みとともに、耳朶を打った。
背中に感じる男を惑わす柔らかみを、何故作ってしまったのか、何故製造してしまったのか、ペルシカさん改め……IOP製造会社の面々に僅かながらの呪詛と、そして多大なる感謝を届けよう。一体どこに機械の要素があるのか、その体の柔らかさも去ることながら、度々行われる彼女達のスキンシップも、彼女たちから香る淡く甘い匂いも、間違いなく男を揺さぶっていますとも。あぁ、だから止めてくれSOPMODよ。『うりうり~!』なんて言いながら頭を押し付けてくれるな。仕事を放棄して一緒に遊びたくなっちゃうから!!
「SOPMOD……、後で遊ぶと先ほど約束しただろう?」
「えぇ~、だって暇なんだもん!」
もん! ってなんだ。もん! って、畜生カワイイやつめ。お前さんが
結局のところ、あの日以降、表立って何か良からぬことが起きることもなく。こうして毎日を過ごしているわけなのだが、一つばかり変化があった。
その一つが、副官システムなんてものが出来上がっていたことだ。いつのまにそんな話が出来上がっていたのか、日毎に切り替わるようにしてAR小隊の面々が俺の仕事を手伝うシステムだとか言ってはいたが、きっとそれだけじゃないはずだ。そもそもの話をするのであれば、今まではカリーナが俺の仕事を補助するようにアシスタントとしてそばにいたのだから、そんなものを構築する必要もないのだ。SOPMODに限っては……、まぁ見てわかるとおり可愛さを振りまくる仕事をしていた。
この静けさは果たして嵐の前の静けさなのか、ただ単に元鞘に戻っただけなのか。出来れば後者であって欲しいものの、それが淡い希望だということは理解している。ナニカが起こらないようにと祈りを捧げる毎日も、それはそれで応えるというもの、クルクルと手のひらの上で手持ち無沙汰にペンを回しながら、はぁ、とまた一つ溜息を吐いて、隣に所在なさげに佇むSOPMODに問うのであった。
「あのなぁ……、それに遊ぶったって、なにして遊ぶつもりだ」
「さぁ……?」
何も考えてなかったのかと、額を小突いて見せればうしし~とだらしない笑顔を見せていた。かわいい。
ともあれ、実際遊ぶにしても何するぞと頭を悩ましているのは事実だった。
ここは自室でも娯楽室でも、ましてや訓練場でもない。執務室なのだ。仕事をする場所である。ここ最近はなんとも刺激的な空間を行っていた場所ではあるが、ここは間違いなく執務室であり仕事場なのだ。遊べるようなものなんて何一つないこの部屋で、彼女の足止めができそうなものはと考えるまでもなく。結論は何もないと出ていた。時刻は半ば夕方に差し掛かろうという頃合か。仕事も差し当たって今終えても困るようなものもないわけで。
さて、どうすると彼女の方に向き直れば、コテンと首を傾げるさまも可愛い。というかさっきから可愛いとしか思ってないね俺。
「はぁ……今日はここまでにするか」
「やったぁ!!」
なんとも元気な奴である。心無しか彼女の背後に大きなしっぽが揺れているように見えるのは疲れからの錯覚だろうと、頭を振るって席を立った。
+ +
「遊ぶんじゃないの~?」
「すまないが少しばかり休ませてくれ……、ちょっとばかし疲れててな」
「む~……」
抗議の目を尻目に、自室のソファへと横になって数分。あぁ、なんと心地の良い反発具合か。デスクワークに疲れた腰が痛みから解放されたことに喜びの産声を上げている感覚が口から漏れ出ていた。
娯楽室の道中にあるからと、自室に来たのは間違いだったと体の節々から感じる心地良さに徐々に抜け落ちていく力を感じながら、ポツリと言葉を零していた。
「あぁやばい……、ソファーになら抱かれてもいいかも……」
何を馬鹿なと仰ることなかれ、実際問題疲れた体を包むクッションの感触のあの破壊力たるや……。一度味合えば、寝具無しで寝ることは難しくなること間違いない。この包容力の塊に体を預けたが最後、最早立ち上がることは不可能に近い。というか無理だ。SOPMODには悪いが、最早体が動くことを拒否している。眠りの国まで秒カウントと言っても過言じゃないかもしれない。
「なぁ、SOPMOD……」
と、言葉を続けようとして、そういえば静かだなとSOPMODへと顔を向けてみれば、こちらをジーっと見つめている紅い双眸と目があった。瞬くこともなく、ただひたすらと無言でこちらを見つめている。
「ねぇ……指揮官」
「どうした……?」
「指揮官は、誘っているんですか?」
誘っている? 一体なにに? って、あぁ……そうか。そうかそうかと、ピタリと頬に彼女の人差し指の感触にヒヤリと背筋を覆う冷たさを感じながら、諦めにも似た思いで持って言葉を口にするのであった。
「疲れているのだが……」
「抵抗も出来ないよね指揮官」
「また後日ということには……」
「空腹を感じているライオンが、動かない獲物を前に我慢すると思いますか?」
胸を押さえつけるように添えられる彼女の右手の感触。ソファー横に膝立ちになる彼女は、こちらを見下ろすように覗き込んでいる。桜色を伴う綺麗な髪がカーテンのように周りの景色を遮っていた。必然的に見る場所など限られていて、左を向けばソファの背もたれが、右を向けば彼女の服の隙間から見える胸元から色々と危ういところまで見えていた。胸を覆うモノがないのは何故なのか……ともかく、道理で柔らかかったはずだと背中に感じた感触を思い出して逃げるように反対側へと視線を移した。
「指揮官……」
小さく囁くように呟く声音が、耳へと落ちてくる。
「私はさ……、指揮官が好きなんだ……」
ポツリポツリと、思いの丈を大切にするように、一つ一つ彼女は言葉を落としていく。
「お姉ちゃん達も、みんな……
心臓の音が、抜き取られたかのように胸の内で鼓動している感覚を覚えて、彼女へと視線を向ければ、こちらを覗き込む紅い目が俺を映し出していた。
今にして思えば、随分と不思議なものだと……鼻を擽る彼女の吐息を感じて思う。その体は確かに機械で出来ているのだと、その事実を忘れそうになるほどに、彼女達を一人の人間として意識してしまう自分がいるのは……隠し様もないことだった。
AR-15然り、M16A1然り、俺は彼女たちに確かに劣情を抱いていた。それが例え、相手の熱に浮かされた物だとしても、彼女たちを人形として識別しているのであれば、熱を覚えることも彼女たちの手を振りほどくことだって出来たはずなのだ。たとえ、人の身で叶わない相手だったとしても……。
「だからさ。だから……私たちは感覚を共有しようって決めたんだ。自分の器だけでは抑えられないこの感情が……壊れてしまわないようにさ……」
悲しそうに、苦しそうに……それでいてどこか愛おしそうに、コツンと額を合わせて。でもね、と言葉を続けた。
「苦しいよ指揮官。どうして、どうして私たちは感情なんてもの持って生まれちゃったの?」
分からない。分からないよと、彼女は言う。
そんなもの、俺にだって分かるわけないがない。彼女達の中身がどうなっているかなんて、俺にはさっぱりだ。なんで彼女達が人間と同じような作りなのか、それこそ金銭と物資さえあれば製造可能な
「指揮官が好き」
短く、簡潔に述べられる二文字の言葉。そのたった二文字にどれだけの想いが込められているのか。その中身を見ることが怖くて、俺は何も出来ないでいた。ただ、分からないだけなのだ。この与えられている感情にどう答えたらいいのか。答えてしまったその先がただただ怖いだけなのだ。
「大丈夫。指揮官は何も気にしなくていいの。これは私たちの
そう言って、彼女は胸を押していた手を退けて、上着のボタンを一つ一つ取るように手を動かしていた。
「ちょ、SOPMOD!?」
「なに? 襲わないなんて一言も言ってないよ?」
何を変なことを言っているのと言わんばかりの目がこちらを見下ろしていた。
いやいやと、その右手を遮るように手を掛けるも、
顕になる薄手の
次の瞬間には、ビッシィ!! と最終防衛ラインが儚くも破け散る音が木霊する。
「SOPMOD……?」
突然の奇行とも取れるその行動に呆気にとられていると、ニッコリと嗤うSOPMODと目があった。
「いい体付きしてるね。指揮官」
「伊達に前線暮らししてたわけじゃないからな……」
服を破り去ったことについてはノーコメントなんですね。わかります。
そんな爛々と目を輝かせるでないよ。頼むから手をわきわきとさせないで。
「ねぇ、指揮官。お姉ちゃん達としたとき……気持ちよかった?」
「ノーコメントで頼め、待って、やめて! ズボンに手を掛けないで! 破こうとしないで!!!」
最終防衛ラインの向こうに備える本拠地にまで手を伸ばしに掛かった時には、ヒヤリとしたが……それでも、未だにズボンに手を掛けたままなのは、俺が言葉を濁すことを想定してのことですかね。えぇ、カチャカチャしないで、お願い! いうから!
「しきか~ん?」
「気持ちよかったよ……」
「そっか……、気持ちいいってどんな感覚なのかなぁ~」
「M16いわく、感覚を送られたって聞い――やめて答えるから! 俺の感想を答えるからァ!!」
どうしても俺の口から言わせたいそのスタンスはなんなの。恥ずかしさで死にそうなのご理解いただけてるかい? 恥ずかしいのよ? あ、聞いてないですね。左手ワキワキさせてニヤニヤしないで、俺のズボンを破こうとしないで!
「で、どうだったの指揮官?」
「俺にだって分かんないよ。ただ……」
「ただ……?」
「愛されるって……こんな、感覚なの……かなって……」
「そっか……そっかぁ……」
やばい、恥ずかしい。死ぬほど恥ずかしい。なんなんだこの空気は、穴があったら入りたい。いっそのこと閉じこもりたいぐらいだ。両手で顔を覆い隠して、小さく息を吐いていく。なんで、こいつはそんなニヤニヤしてるんだよ。襲うならいっそのことガバって襲ってくれた方が気が楽だってのに、なんで小悪魔だよ……こいつは……。
「お姉ちゃん達も気持ちよかったって、言ってたよ。あの繋がる感覚が堪んねぇんだってM16姉ちゃんが言ってた。指揮官の動揺している顔が可愛かったってAR-15お姉ちゃんが言ってた。羨ましかったなぁ……」
ピトッ、と素肌に触れるぬめり気を覚えるその感覚に、思わず声が漏れ出そうになりながら、何事かとSOPMODの方へ向いてみれば、胸板を舐めている彼女の姿が目に映っていた。
「少し、しょっぱい……かな?」
「なにして……」
「うん? 襲いたくなったから、襲うの。だから、じっとしててくださいね指揮官」
――抵抗されちゃうと、変なスイッチ入っちゃうかもしれないから……。
チロリ、チロリと胸板をすべるぬめり気から感じるくすぐったさに身をよじって逃げ出そうとするも、彼女は頑なに舐めるのを辞めなかった。それどころか、体を拘束するように俺の下腹部へと腰を下ろして、こちらを見下ろして動きの一切を封じてきていた。
「忠告したよね。指揮官?」
「だからって、抵抗しないとでも思っていたのか」
「つまり、誘ってる……ってこと?」
「んなわけ無いだろう。頼むから退けてくれ」
「やぁだ……」
どこか蕩け切った声音でそういった彼女は、倒れこむように首元へと顔を埋めて、またチロリ、チロリと舌を転がし始めるのであった。
「ちょ、SOPMOD……やめ……」
「やっぱりしょっぱいや……、それでいてどこか美味しい……」
首筋に感じる温かみに逃げようとするも、両方を彼女に抑えられてしまえば抵抗らしい抵抗も出来るわけもない。
「はむっ、ちゅぅ……むっ、しき、かん……」
耳を包むぬるま湯のような感覚に、頭に直接叩き込まれるような彼女の声音に、抵抗するべもなく快楽を覚え始める体に、吐息が漏れ出ていく。
「好き……すき……すきだよ……指揮官」
うわ言のように愛の囁きを受ける脳が震えていた。
震える声、首筋を過ぎる吐息、こちらを見下ろすとろんとした表情に、心臓が跳ね上がった。
「しきかん……」
重なる唇。ゆっくりと、その時間を慈しむように、柔らかなキスが落とされる。どこか名残惜しむように唇を放すと、再度……彼女はその唇を重ねていた。
今度は、貪るように、こちらの意など介さないとでも言うように乱暴に唇をこじ開けてくる彼女の舌が、口内を蹂躙していく。
「ん、ちゅぱ……れろ……」
次第に満足したように離れていく顔を見上げて、空気をその体に取り込んでいった。
「はぁ……はぁ……、指揮官……固くなってるよ?」
ハッと、気づいたときにはすでに彼女は肉棒をその手に握り締めていた。感触を楽しむように力を込めては緩めて、最後に小突くように人差し指で突っついて、ニッシッシと笑うのであった。
「指揮官も疲れてるって言ってたし、無理強いは良くないよね」
どの口がそれを言うか、答える気力もとうになくなっている俺をよそに、彼女は肉棒をその身に誘導するように腰を浮かせていた。
「よいしょ、っと……ここ、かな……はぁ、……今
徐々に彼女の肉癖に亀頭が食べられ、ゆっくりと、ゆっくりと肉棒がその姿を消していく。
その身に感じる蕩ける様な感覚を覚えならがら、背筋をせわしなく走る電流に声が漏れ出た。
「んぁ! くっ……は……」
「んんッ! あっ、指揮官が、指揮官のが、全部、入ってきてる……」
ビクンビクンと震えながら、力なく倒れ込んでくる彼女をその身に受け止めた。
未だに、彼女が震えるたびに膣内がきゅうきゅうと心地よく締め付けてくる感覚に身を震わしながら、油断するとイってしまいそうな感覚に抗っていた。
数秒後、彼女は倒れふしたそのままに、腰を動かし始める。
「あっ、んぅ、はっ、やぁ……気持ちいい。気持ちいいよ指揮官……」
幼い見た目に反した妖艶な魅力のアンバランスさに、思わずゴクリと喉を鳴らす。
彼女の肉壁は、休むことなく俺のモノを締めつけ、決して逃してならないとくわえ込んでいる。
「し、き……かん。好き、好き、好き、好き……」
最早、限界は目前へと迫っていた。
迫り来る射精の予感に、身体がぶるりと震えたとき、不意に彼女が唇を重ねてきた。そして、
「だい、すきだよ……しき、かんッ!!」
小さく、聞き逃してしまいそうなほどにか細い声で、彼女は囁いてきたのと同時、下半身を流れる感覚に彼女が一際大きく体を震わすと、やがて、彼女の身体から力が抜け落ちるように、カクンとスリープモードに陥ったかのように動かなくなっていった。
「はぁ……SOPMOD……?」
揺すってもピクリとも反応しない彼女に、これは完全にスリープモードに強制的に入ったな等と逃避気味に考えて、また一つ溜息を吐き出していく。
数分後、SOPMODをどかして部屋を一人掃除し始めるのであった。
警戒心ゆるゆるじゃないですかやだぁ……。
その感情に答えてしまったら、その先は地獄だぞ。
というわけで、徐々に……徐々に彼ら、彼女達の過去が明かされていきます。
ゆっくりと……じわじわと……。
受け入れるためのコップがない指揮官と
コップから溢れそうになる想いに苦悶の声を上げるAR小隊
そして、未だに謎に包まれる404小隊……
一体何が始まるんです?
第惨事世界大戦だ!
それと、この作品の投稿時間やら日時に関しては
活動報告に記してあるので、目を通していただくと助かります( ˘ω˘ )
ではでは、また次回