さらに、後編にエロが来るとか言ったけど、まだです。
次回になってしまうことを……お許しください。
というわけで、こちらをどうぞ。
その部屋は暗かった。
照明器具に光は灯らず、外から差し込む光もない。ただただ暗い部屋だった。
唯一その部屋を照らすモニターから広がる光も、モニター前に居座る人影によって遮られ、部屋を照らしているとは言えないほどに微弱である。
そんな淡い光が照らす部屋に、人影が四つあった。
モニター前に座るのは、白く汚れのない綺麗な髪を腰まで伸ばしている少女だった。否、少女の見た目をした人形だった。その名をHK416という、何が楽しいのか、時折モニターに映る赤点が点滅している様を「ふふっ」と笑みを浮かべ眺めていた。
そして、部屋に四つ設けられた簡易的なベッドの一つにもそりと布団に
そんな彼女と同じくしてベッドに横になっている人形が一人、明るめの茶髪に右目に傷跡と特徴的な姿をしており、普段はツインテールにされているその髪を下ろし布団に包まっていた。名はUMP9。気付けば笑顔を携えチームの明るさ担当を担っているムードメーカー的立ち位置にいる。もっとも、現状は穏やかな笑みを浮かべたまま寝息を垂れ流していた。
最後に、携帯端末に映し出された指揮官の
時は遡って少し前、指揮官がペルシカとの会話をしている時のことだった。
「416は、いつまでモニターを眺めているつもり?」
「貴女こそ、いつまで写真を眺めているつもりよ」
「モニターの赤点を眺めて笑みを零すよりは健全なことをしてるつもりだけど?」
お互いに見るものから視線を外さず、軽い会話を繰り返していた。
そんな折、416が零した笑みにUMP45が疑問を口にした。
「それで、どうしたの笑みを零して」
「指揮官が、ペルシカさんの所へ行ったのよ」
「へぇ、そっか……」
「何よ、喜ばないの?」
「質問を返すようで悪いけれど、そんな、喜ばしいこと?」
「えぇ、だって、あそこに行ったってことは……、指揮官が解毒薬を貰いに行ったってことでしょう?
いい気味ね。と、息を吐き捨てる416に、彼女は何も答えない。
「ところで、45……」
「…………」
「45?」
返事が返ってこないことに違和感を覚えた416がモニターから視線を外し、UMP45へと視線を向けた。それに気づいたように遅れてUMP45が反応を返した。
「ん? あぁ、ごめん。少し考え事してて、それで何か言った?」
「別に、特に何もないわよ。45こそ何を考えてたの?」
「あぁ、そうね。指揮官は本当に解毒薬を貰いに行ったのかなぁって、思って」
「貰いに行ったことは確実でしょう。もし軽い要件であるなら通信機越しでいいじゃないの」
「解毒薬だって、通信機越しにお願いして送ってもらえば済む話だと思うのだけど?」
「直接対面したほうが確実だと思っただけじゃない? それとも、45は別に要件があるとでも言うの?」
どこか、達観したような。それでいて、少し寂しさを残した表情をしたUMP45が、そこにある思いを汲み取るようにゆっくりと言葉で表していく。
「多分、解毒薬を貰いに行ったのは間違いないと思うけれど、ペルシカさんは簡単にはいどうぞって渡さないと思うよ。でもね、指揮官はきっと、解毒薬を貰っても貰わなくても、AR小隊を拒むつもりはないと思う。あの人、温もりに飢えているからねぇ」
「面白くない解答をどうもありがとう。それで、どうするのよ」
「どうするって?」
「このままAR小隊を放ったらかしにするのかって聞いてるのよ。さっきからわざと聞き返してるのあなた?」
「ごめんごめん。ん~、別にどうもするつもりはないよ。指揮官は指揮官が思うように行動すればいいと思ってるし」
「貴女、この前はAR小隊から分捕るだの、AR小隊の子と交わってるのは許せないだの言ってたのは忘れてないわよね」
「いやいや、私だって他の子と仲良くしてるのを見るのは、ちゃんと
「愛を伝えに行くね。なんて言ってたのは誰だったかしら……」
「ハハハ、正直あれは他のみんなの想いを代弁しただけのつもりだったからなぁ」
「あんな顔で代弁しないでちょうだい」
「それに、私はまだ
「盗撮写真で誇らしげにしないで頂戴……。それと、やっぱり納得できないわ。貴女たちの誰かなら、まだ納得出来る。でも他の子の、それもAR小隊の隣にいる指揮官なんて想像したくもないわ。今すぐに指揮官を監禁してでも――」
その言葉が最後まで告げられることはなかった。そこまで話してHK416自身がしまったと思えるほどに、その場の空気が一転したのを彼女は肌身に感じ取ったことだろう。目の前の少女から発される恐ろしいまでの殺気に、慌てて彼女が謝罪の言葉を発していた。
「ごめんなさい。今のは、その、
「そう……?」
短く、淡白に告げられるたった二文字の言葉に、HK416は喉を鳴らした。その目に宿るはずの光をどこかに置き去りにしたかのような黒く澱んだ二つの瞳が、こちらを見つめているというだけで、彼女の体は震えを思い出していた。
「私も、別に貴女たちの行動を制限するようなことはしたくないんだよ? でも、ほら416ってば、指揮官に小型のGPSを埋め込んだじゃない? 首を絞めるついでにさ……。本当なら許せないところを、貴方のその怒りの感情を汲み取って情状酌量の余地ありってことで許してるだけで、本当なら今すぐにでもGPSを取り除きたいんだけどさ。まぁ、それが416の
のそりと、416の額に人差し指を当てて、ニッコリと45は微笑んでみせた。
「でも、二度目はないからね? 私にチームメイト失わせるような判断をさせないでね……?」
私は、ここにいる皆が好きなの。と小さく付け足して、額を小突くのであった。
+ +
「ん、あぁ、お前たちか……、すまない。こんな見苦しいところを」
そう言って、彼は自分の出で立ちを恥ずかしがるように、頬を掻いてみせた。
「少しばかり、酒に酔ったみたいでな。暑く感じて着替えをしようと思ってたんだが――」
彼の傍らを覗けば、酒瓶が数個ほど空の状態で転がっていた。見覚えのある銘柄にそう言えばと、酒飲みにジャックダニエル片手に出かけることが多いM16姉さんの姿を思い出して、あぁ、と一人納得してしまった。
だけれども、それでも、この突如として沸き立つ浮ついた熱にどう説明をしようかと、首を捻るまでもなく、その発生源が隣なのをどう突っ込めばいいのやらと、口の端がピクピクと動き出したAR15の脇腹を小突いていた。
「いつっ!?」
「先程までの、指揮官絶対許すまじオーラはどこに行ったんですか!?」
「あっ、いや……その……」
指揮官に聞こえないように耳打ちして、半ばだらしなく緩和しかけた面持ちを正すように、もう一度彼女の脇腹に指を食い込ませる。
「んぐっ!」
「何を変な熱感じてるんですか!」
「いや、だって、その、あの姿は……色々とまずい……」
「はぁッ!?」
いやいやと、そんなバカみたいな理由で、どうでもよくなったって? 半強制的に、私に同じ怒りや悲しみの感覚を送り込んできておいて、今度は
確かに、AR15の言葉の通り、今の指揮官は色々とまずい。主に服装というか雰囲気というか、諸々がやばい。端的に言ってしまえば、なんだこの大人の色気とも言えるモノは、正直私も私でこうムワッというかムラッというか、ナニカが鎌首をもたげる感覚を覚えてまずいと思った所だったのだけど、お隣さんの私よりも色欲に富んだ感覚を送られてしまえば、なんだお前はと冷静になってしまうのも致し方ない。
先程まで一歩歩くごとに溜まっていく疑念や悲しみをどうしようかと、指揮官にぶつけるべく怒りに似た感情を持ち歩いてた数刻前、いざ指揮官の部屋について問答無用で扉を開け放とうとするAR15を抑えたのはいい。流石に挨拶もなしに勝手に入るのは私の性格がよしとしなかった。だからこそ、数回に渡るノックをしたものの、返って来ない返事に疑問を覚え、しびれを切らしたAR15がガチャりと扉を開けていた。そこで目撃したのは、ちょうど着替えをしようと思ったのだろう。いつもの凛とした軍服の姿はなく、私服にでも着替えようとしたのだと、傍らに乱雑に放られている見慣れない服が物語っていた。そこで私達が入ってきたのに気づいて、なんだお前たちか……、と恥ずかしそうに頬を掻いているのが先ほどのことだ。
そんな一面を見て、ソワソワしだしたのはどちらが先だったか、さらに言えば、指揮官の姿も姿だった。着替え途中のためか、まだ下は軍服の片割れではあったものの、上着はすでに脱がれており、中に隠れていたであろう白色のワイシャツの前面が開かれており、健康的な肉体が余すことなく視界へと否応なく映し出されていた。
普段も普段で、物腰が柔らかい人ではあるが、事今に至っては別のベクトルへと柔らかさを変異させていたその姿に、視線が釘付けになっていた。酔っているというのも、一目見れば分かるほどだった。その顔を見ればどこか仄かに朱く上気していて、表に晒される上半身も熱を帯びているように感じられる。そして、どこまでも自然体で、言葉を換えれば無防備な姿には思わず喉を鳴らしてしまうほどだ。というか隣の輩は喉を鳴らしていた。
端的に言えば、今の指揮官の状態にエロい物を感じていると、このソワソワしだした感覚が情欲を抱いている証明なのだと、認めざるを得ない。
それでも、この抱えてきた疑問をほっぽり出すことは出来ない。
それだけはちゃんと、聞きたかったから。
「どうした。用があって来たのだろう? ほら適当に掛けるといい」
そう言って、彼は開け放たれていたボタンを締め直すと、ソファへと腰を下ろしていた。あぁ、とどこか名残惜しさを感じながらも、私は促されたように席に座ろうとして、AR15が当然のように指揮官の隣へと歩を進めているのを、いや待てとその腕を引っ張っていた。
「な、なに?」
「いや、なに? じゃなくて、というかそれは私のセリフですよ。何をさも当然のように指揮官の隣に座ろうとしてるんですか!?」
「あ、あぁ……ごめんなさい。つい……」
何がつい、だ。AR15の腕を引っ張り、指揮官の対面へとテーブルを挟んだ椅子に座り込んだ。
未だ浮き足立ったAR15に指揮官には聞こえないよう小さく小突いてみせる。
「まさか、ここに来た用事を忘れた訳ではないですよね?」
「忘れてはいない。けど……」
目が吸い寄せられるように、指揮官の方へと向くAR15の姿に、はぁと小さくため息を零した。
いやまぁ、確かに視界に収めておきたいほどに貴重な姿ではあるのだけれども、目的を忘れては話にならない。
それに、先程から無意識にしろなんにしろ、未だに自分の体にAR15の感覚を送られ続けている状態が続いているのだ。例え私が気をつけていても、内側から灯る火は防ぎようがない。
「あと、いい加減私に感覚を送るのやめてもらっていいですか……。むず痒くて仕方ないので……」
「え? あ、あぁ……」
無意識のうちだったらしいソレが、ピタリと消えていく感覚に胸を撫で下ろした。
頭のなかで聞きたいことを考えながら、手元に抱えていたペルシカさんに渡されたお土産を、指揮官へと手渡した。
「はぁ、えっと、あの……指揮官。ペルシカさんがこれを……」
「これは……コーヒーパックか、ありがたい。正直あのコーヒーの味を気に入ってな」
嬉しそうに、はにかむような笑顔に心が揺らぐ。本当に指揮官は、私たちを拒んでいるのか……。隣で使い物にならなくなった
「指揮官、先ほどはどうしてあちらに?」
「まぁ、その質問が真っ先に来るよな」
対して、分かっていたようにもの哀しい面持ちへと表情を変えた。
「ペルシカさんに言われているかもだが、俺は解毒薬を貰いに行ったよ。何のとは言わなくても分かるだろ?」
やっぱり、なんて思わない。それは無論ペルシカさんが言っていたように『解毒薬は作ってはいないから――』という言葉から推測するまでもなく分かりきっていたことだ。思い出したかのように、薄く冷たい感覚が体を揺すっていく。
「それにしても、まさかAR15が一緒にいるとは思わなかった」
私に向けられていた視線が隣へと移る。そこには、先ほどまでの熱に浮かされた表情はなく。指揮官が発した言葉にやっぱりと、諦めにも似た表情があった。
「M4と一緒にいるってことは……」
「そうね。聞いたわ。私の前から姿をくらまして、あそこに行ったということを」
「勝手に消えたことは悪く思ってるよ。でも、言っても行かせてはくれなかったろう。だから、勝手ながらに動かせてもらったよ」
我ながら、かのAR小隊の目を掻い潜れたのは誇っていいのやら……と、苦笑を零して、彼は言う。
「先に謝っておくよ。勝手に消えて悪かった。ただ、俺にとってのこれは必要なことだったんだよ」
そう言って、テーブルに置かれていたお酒の入っていたコップを手に取り、一口分を喉に通していた。
必要なこと? それはなんだろうか。解毒薬を得るのが必要なことなのだとしたら、それはもう逃れようもない事実で――。
いや、まだ結論に導くのは早い。早とちりは何も生まない。だから冷静になるのよ私。
「指揮官」
「なんだ?」
どこまでも優しい声音が返ってくる。まるで私が何を聞くかを分かってるかのように。
「私達がお嫌いですか?」
口にして初めて、自分の体が震えているのが分かった。
そうであって欲しくないと思うものの、どうしても浮き出た事実が否定材料を消し去っていく。
指揮官がペルシカさんの所へ行ったこと。そして解毒薬を欲したこと。引いては、AR15の目を掻い潜ってでも行動に移したこと。そして、半ば強制的に飲ませてしまった負い目が、様々な感情と合わさり、最悪な結果へと結論が導き出される。
どうなるのだろうか。否定をされた時、私たちはどうなるのだろうか。分からない。
「嫌いではないさ。お前たちを嫌えるだけの理由が俺にはない」
では、どうして――。
「確かに、具体的な効能も分からんモノを飲ませられたときは、どんな小言を言ってやろうかと思ったよ。そして気付けばAR15にその中身について教えられて、なんて物を飲ませられたもんだと」
まぁ、ヘリアンさんがいたとは言え、自分の意思で飲んだに違いないのだから――。と、彼は憂いを帯びた顔でそう言った。
チクリと、ないはずの心に痛みが走ったような気がした。後ろめたさから、ヘリアンさんにづてに飲ませたのだって、誰でもない私たちAR小隊が、指揮官に想いを拒まれるのが怖かったからにほかならない。相手がどう考えているのかなんて、考えるのが怖くて、それでも指揮官の体温を、存在をその身に感じていたくて飲ませたのだから、責められるべきは私たちなのだろう。
「そう……、指揮官は私たちのことが嫌いではない。でも、私たちの想いは受け取れない。そういうこと?」
冷たい声が隣から小さく響いた。冷めた表情をしたAR15の言葉に、指揮官は動揺することもなく、曖昧な返答を口にした。
「そういう、訳ではないのだがな……。俺たちはこうして軍に所属しているだろう? そして、お前たち人形が部下で、俺が上官だ。お前たちに慕われているというのは素直に喜ばしい。だが……」
言葉は続かなかった。まるで言葉に詰まったように、否、実際言葉に詰まったのだと思う。何度も言葉を口にしようと口を開こうとして、その度に上手い言葉が出てこないのか、苦笑いを浮かべて。また、ペルシカさんのとこで出会った時のように、悲しそうな顔をして、小さく息を吐き出していくのが見えた。
「私は、指揮官のことが好きです。もちろん、貴方を一人の男性として、私は貴方のことが好きです」
そんな指揮官の姿に何を思ったのだろう。AR15が突然、指揮官に告白をしていた。
AR15の感覚はすでに私には残っていないから真意は分からない。けど、きっと必要なことなのだと思ったんだと、指揮官に向けられるまっすぐな瞳が、揺れることなくその姿を映し出している目を見てそう思った。
「我々人形如きが、と思われるかもしれません。それでも貴方に恋をした。貴方を求めてしまった。貴方が欲しくなった。それでも、貴方に怖がられるのが怖くて、私は、私たちは感覚共有ナノマシンをペルシカさんに作ってもらいました。貴方の体温を感じたくて……」
堰を切ったように紡がれるAR15が持つ想い。私たちAR小隊全員の代弁ではなく。個人の、自分だけが持ち得る感情で、彼女は想いを口にした。
「迷惑だというのであれば、そうきっぱり言ってくれて構いません。そして、どうか……私たちを罰してください。こんな感情を持った私たちを……」
ハハ、と小さく笑み零す声が聞こえた。その発生源は対面に座る指揮官だった。何が可笑しかったのだろう。まいったな。と口にする指揮官は優しい笑みでもって、そう口にしていた。
「ダメだなぁ。酒に飲まれりゃ、自ずと勝手に口から溢れると思ったんだが、そうはいかないらしい」
またぞろ、酒を一口呷って、彼は口にする。
「端的に言おう。俺は、お前たちの想いを受け取れない」
そうハッキリと告げられた言葉に、体の震えが増した気がした。隣を見れば、なんとなく分かっていたのだろう。悲痛な面持ちで、溢れ出す思いに手を膝の上で握っているのが見える。
「俺自身が、誰かを好きになる気持ちというのを理解し得てないからな。でもだ――」
私たちの名が呼ばれた気がして、前を向けばこちらの瞳を見据える指揮官の目と目があった。
「それを理由にお前たちの想いを断ったのではない。俺は……、お前たちをただの人形などと思っちゃいないさ。少なくとも俺にとってお前たちは大切な存在になっている。だから、自分のことを人形如きなどと口にしないでくれ」
「でしたら、なぜ……?」
震える声音が口をついて出ていた。
「俺は、俺は……お前たちに与えられる愛を受け入れるのが怖いだけなんだ……」
「怖い……?」
それは、いったい……どういう? 疑問が頭のなかに反芻する。
「生まれてこの方、愛されるなんてなかったからな……。親は幼い頃にはもう死んでいたし、与えられたものと言えば僅かながらの思い出と、生きていくために必要な術と、そして、銃だけだった」
そういえばと、今更ながらになって思う。私たちは、指揮官の過去を詳しくは知らなかった。あの404小隊と面識があるというのもついこの間まで知らなかったのだ。知っているつもりが、何も知らない。一時期、指揮官に対して想いを自覚しつつある時に感じたモノに似ているのだろうか。いままで自分が指揮官とどう接していたのか、そういったもろもろがまるで白紙に戻ったかのような感覚を、未だに私は覚えている。
「ペルシカさんの所へ行ったのも、自分の心境を確認するためのようなものだ。貰えるにしろ貰えないにしろ実際のところ、お前たちの行動を止めるつもりなんて元よりないのだからな」
「それは……」
「と言っても、お前たちの想いに答えられないことに変わりはないし、おいそれと体を食われるつもりもない。というか、もうちょっと節度をだな」
あぁ……、なんだ。良かった。私たちは拒まれている訳じゃなかった。心のどこかに引っかかっていたナニカが取れたような、スッキリしたような感覚が体を満たしいてく。そうかそうか、なんだ……指揮官も、同じなんだと、安堵のため息を漏らした。
不意に、すっくと誰かが立ち上がる気配を感じて、そちらへ向くと、AR15が熱を帯びた息を吐き出しているのが見えた。
「AR15……どうした?」
その異変にすら気づいていないのか、心配の色を見せる声音で、指揮官はAR15に声をかけていた。それが耳に届いているのかいないのか、一定の呼吸音が聞こえるばかり。
「指揮官、それはつまり、私たちは今までどおり指揮官を愛していいということですか?」
「あ、あぁ……、まぁ、その想いに答えられないのは歯痒いし、申し訳ないが……」
「ですが、否定はしないと。そう捉えていいのですよね?」
ゴクリと、唾を飲み下すAR15の姿を見て、これから何をするのか察してしまった私は、止めるべきかと背中を押すべきか、はたまた自分が行くべきか考えて、そこまで考えて今になって熱を覚えていた体が表に現れてきていることに気づいてしまった。
指揮官は言った。受け入れるのが怖いと。
指揮官は言った。お前たちの行動を止めるつもりもないと。
指揮官は言った。お前たちは大切な存在なのだと。
そこまで言われて、はてこの想いに何故ブレーキをかける必要があるのか。眼前に戸惑いの表情を見せる指揮官が全てのロックを解除してくれたというの、そこまでのお膳立てをしてくれた指揮官に何をしてくれようかと、燻る想いが徐々に灯っていく感覚に身を委ねるように、私は想いのままに行動しようと決めたのだった。
だが、まだだ。まだ引き金は引かれていない。
「指揮官は、怖いとそうおっしゃいましたよね?」
「そうだな。それに浸かってしまうのが怖いんだ……」
「でしたら、教えてあげます」
「な、何を……?」
「その沼が、決して怖いものではないということを、です」
スタスタと、AR15が指揮官の横へと歩いていく。それにつられて、反対側へと私は足を運んだ。
「貴方が許してしまった火を、どうか……その身で味わってください」
AR15が放ったその言葉が口火を切った。
弾丸は放たれれば止まらないことは常識ですよ? 指揮官。
あけましておめでとうございます。
猫です。
二話編成にしようとして、あれできねぇと苦渋の決断の末、次回に見送りました
色々と待たせた末に申し訳ない(´・ω・`)
今回の要点
☆UMP45ちゃんは怒らせると怖いってばっちゃが言ってた。
☆指揮官、リミッターを解除する。
☆AR15&M4A1
ステイッ、ステイッ、まだだッ、まだだッ……
今だいけっ! ゴーゴーゴー!!!
器が出来たなら満たすだけよ。