エクラ君とギム子がマーク作りする話。

※感想、一言、気軽におねがいします。

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ぎむれえっち

 ……どれだけの間、こうしているのだろう。

 

 日中であればいざ知らず――夜、そして時刻を知るものが手元にない今、経過した時間は無論、自分が感じている時間の流れが遅いのか早いのかもわからない。

 

 

 「……ふーーっ…………ふーっ………」

 

 「…………、……………」

 

 吐息と吐息が絡み合い、熱と熱が重なって、暖められた空気にぼんやりと少しずつ理性を奪われていく。

 目と鼻の先にはこの男の顔があり、唇がある。互いに互いの体に触れながら、ずっ――とこうして顔を合わせ続けて、どれだけ経ったのか。私は、延々と与えられ続ける乳房への愛撫の快楽に浸りながら、この男の肉竿を擦るでもなく扱くでもなく、衣服の上からただ撫で続けていた。……行為に及ぶ前から膨らんでいたことには気づいていたが、今日に限っては今までよりもずっと硬い。そしてこいつはこいつで、私の乳房を揉む感触は正しく至上の悦びであるらしく、その両の手で私の両の乳房を思うがままに愛撫し続け、触れ始めてから一度たりともその手を離しはしなかった。

 

 「…………ぇ……ぉ」

 

 この状態のまま、一切進展の無い顔合わせに根負けしたのは私の方。

 口寂しさに我慢がならず、常人よりも少しばかり長い舌を突き出して、吸えと態度で示した。その意を汲み、ゆっくりと口が近づいて来て――私の舌に、その唇で吸い付かれる。

 

 「ん……っ……!……ぇ、うっ……は、ふっ……んふっ…………ぅ」

 

 外気に触れて、わずかに冷えた舌が他人の口内で暖められる。口吸い……と言うよりも舌吸い、か。肌よりも余程感度の高い、神経の塊である舌を舐めしゃぶられ、舌先で舌全体をくすぐるように愛撫される。その間にも乳房は揉みくちゃにされ続けていて、だからだろうか……どうしても、想像してしまう。

 舌を吸われるだけで、こうも蕩けるような快楽に包まれてしまうなら……揉まれ続けて敏感になったこの胸を吸われてしまったら、どうなるのだろうか、と。

 想像、してしまう。この男の口内で乳頭全体が暖められて、舌先で飴でも転がすようにくすぐられながら愛撫される。私の舌をこの舌でなぶられる度、同じように乳頭を、乳首を吸われてなぶられる快楽を想像してしまう。

 たった今撫でさすっているこいつの股間と同じように、硬く勃起してしまった自分の乳首を思うまま弄り回したいという強い欲求が発露するが、今、私の胸はこの男のものになっている。触れたい場所は大きな手のひらに包まれていて、触れて欲しいと懇願しようにも舌も吸われている。あまりにも嬉しそうに舌を吸い胸を揉むこの男の様子を見るに、暫くは……また、このまま、だろう。

 

 「ふぅうっ…………ぅ……っ!……ぁう……ぇっ……ん…………」

 

 舌を動かせず、気の抜けた声ばかりを漏らしながら、何ゆえ私はこんなことをしているのだろう……と考え始める。

 舌全体を唇で犯される快感にぼんやりと浸りながら、私は……こう、なるきっかけであった、夜の入りのことを思い浮かべた。

 

 

 *

 

 

 我が名はギムレー。破滅と絶望の竜である。

 常世にひとたび顕現すれば、神々のそれをも凌駕する力によって歴史も文明も残らず蹂躙し尽くし、世界を恐怖と絶望で染め上げる。それが私。

 その私は――今。

 

 「……………………………」

 

 生まれてこの方、直面したことのない危機に陥っていた。

 いや……危機というのは誇張だろう。けれども、間違いなく追い詰められてはいた。目の前に座す、この男を前に――私が指揮を執る駒の軍は万策尽き、最早王の首が獲られるのをただ待つばかりであった。

 

 「…………ひとつ……お聞きしても?」

 

 こくり、と敵軍の総司令――男が頷く。

 

 「手加減。していたのですか、あなたは……先程まで……?」

 

 いや、そういうわけでは――と少しばかり慌てた様子で彼は首を振った。私の機嫌を損ねたとでも思ったのだろうか、まとまらぬ言葉をたどたどしく繋げながら弁明とも説明ともつかぬ話をし始める。事実機嫌は損ねているので、その態度は間違いでもない。

 曰くこの男は、対局の相手によって執る戦法を変えるのだと言う。真正面から堅実に攻める相手には奇をてらった戦法を、奇をてらう戦法を執る相手には虚を突く戦法を、虚を突こうとこちらの動きを待つ相手には――という様に、彼は一貫したスタイルというものを持たず、相手の心理を読み、打つ手を変えることで確実に勝利へと向かう手を執る。

 この卓上遊戯の腕前には、私が人智を超える存在であるということは抜きにして――ひとりの軍師として覚えがあった。遥かな昔、こうして誰かと打ち合い、腕を競ったような記憶がおぼろげにあるが……大方、今の私にとってはどうでもいい記憶だろう。しかしだからこそ、この結果がなんとも不満だった。

 

 「……この私を前にして加減、とは……何とも……余裕に満ち足りているよう、で……」

 

 その手法は私も執る。というより、執れる。一貫した戦法を持たず確実に相手をねじ伏せる……それは私が得ている戦法のひとつだ。だからこそ、つい先程までは彼の読みを読む、二手三手先を読みさえすれば勝てていたのだが……

 問題は今だ。この男……どういうわけか…………

 

 『万一私に勝てたのなら……そうですね。……この体を、好きにしても良い……なんて条件はどうでしょう?』

 

 慢心……いや…………戯れに私が口にしたそれを本気にして、本当に本気になったらしい。

 読み合いの域を超え、私が敗北する運命へと操作されているかのような錯覚すら覚える、そんな打ち方でもって私は詰みへと誘われていった。

 

 ……卓をひっくり返して、この男の喉笛を喰い千切ってしまえば勝利か? そんなものは敗北ですらない、逃走と同義だ。同じ卓を囲い同じルールのもとで勝利を収める、それでこそ私の名は保たれるのではないのか。

 激昂して暴れまわるつもりなど毛頭ないが、この男はそうは思っていないようで、取返しのつかないことをしてしまったというような様子でかたかた震えて冷や汗を流し、隠れでもしているつもりなのか、普段被っているローブをより深く被って私と極力目を合わせないようにしている。この男に敗北を喫することよりも、そんな知性の欠片も無い竜だと思われていることの方が屈辱的だった。

 

 「はぁ。……ほら。早くなさって頂けますか?」

 

 怖気づく彼に、私は最後の一手を済ませ――順を譲る。

 この盤面ではどう動こうと私の敗北は確実。あとは、彼の駒が私の王にチェックメイトをかければそれで終わる。その瞬間を、私は急かした。

 

 おずおずと彼は駒を手に取り、口にする。……チェックメイト。

 この場で、それほどまでの緊張に襲われながら、それでも試合を放棄せず確りと勝ちを収める姿勢は――まあ、嫌いではない。私の敗北。その証である盤面を見下ろすと、不思議と気持ちは安らいだ。

 

 

 だがまぁそれはそれ、自分自身の思いがけぬ弱さに苛立ちを覚えていることに違いは無い。

 私は机ごと盤を壁に向かって蹴り飛ばし、向こうと自分の間にある境を消した。男は座ったままの体勢で蛙のように飛び跳ねて驚いていたが、気にせず私は背後のベッドに背をもたれかけて、自身の体を無防備に晒す。

 

 「ほら」

 

 未だ竜がこちらを睨んでいると勘違い、硬直している蛙に対し、私は自分に出来る最大級の脱力をした声でもって誘(いざな)った。

 

 「どうぞ、ご自由に」

 

 

 ……これは、この虫ケラを相手にくだらない慢心をしてみっともない敗北を喫した、私自身への罰だ、と。

 そう思うことで、これからされるであろう行いのすべてを受け入れるつもりでいた。

 少なくとも……この時は。

 

 

 *

 

 

 「んっ……ふ……ちゅ、く……っ……」

 

 ……弄ぶことが常であった私が、弄ばれている。

 そして、この男は……犯したいという本能すら凌駕して、私の体を愛でている。

 これだけ肉竿を強く膨張させておきながら、そこに手をかけようとすらしない。私の体を、胸を……愛でて、愛でて、愛でて……昂るだけ昂らせておいて、その昂りに浸っている。吐き出そうとする素振りすら見せない程に、私の体を弄び続けることはこの男にとって至上の快楽であるらしかった。

 頭に靄がかかったように思考が定まらない。何かを考えようとするより先に、胸を揉まれる感触で、舌を弄ばれる触感で、唾液の味で頭の中が埋まっていく。自分が今、何を考えているかすらわからない。

 

 「ふ……っ…………ぅ……ん……ぅっ……く…………♡」

 

 もどかしい。

 

 

 ………………もどかしい?

 

 私は今、もどかしいと、感じているのか?

 

 「…………っ………………っ♡」

 

 意識と感覚が乖離して、自分が何をしているのかも曖昧になってくる。浮かべた思考に疑問を抱いた瞬間、私は、自分の腕がこの男の背中にあることに気が付いた。

 受け入れていたのか、私は……無意識の内に? 

 この体を、この男を? ……彼の股間を撫でさすりながら、もう片方の腕で私は彼に抱き付いていた。自分のものでない体温を感じて、安堵する自分がそこに居た。

 

 違う。……違う。

 これは…………私じゃ、ない。

 私じゃ――――

 

 

 (…………もどかしい……)

 

 

 動く体に、理性が追いつかない。服の上から撫でていたはずの手は、いつの間にか服の内にあった。ドロドロに濡れそぼったその肉竿を、直接……じゅくじゅくと泡立てるように扱き立て、互いの呼吸が荒くなる。荒い吐息を吸い込んで、吐き出して――唾液のみならず、吐息すら互いのものを貪っていた。

 ……知らない。なんだ、この感覚は。知らない。弄び、喰らうことが私の快楽だ。私だけに許された唯一の快楽だ。

 それならば、私が今感じているこれは何だ? 私は、どうして……弄ばれることに、快楽を感じている?

 

 (……もっ、と)

 

 抱きしめていた手を動かして、彼の肩をそっと押す。離れてほしいと意図を示すために。

 その通りに彼は離れた。肉竿を扱いていた私の手も、衣服の中からするりと抜ける。口と口の間に、別れを惜しむような唾液の糸が引き……千切れて、唇に貼り付いた。冷たかった。

 

 目の前に、幾夜となく弄んだ男の顔がある。

 好い声で鳴いては好い反応を示して、私の欲求を満たす男の顔だ。無様に射精を繰り返し、潮すら噴き上げては泣きはらす男の顔が、今夜はいやに自信に満ちていた。

 真逆だった。

 それなら私は今、どれほど無様な顔をしているのだろう。どんなみっともない顔を、この男に見せているのだろう。

 

 感じたことのない快楽に踊らされっぱなしの私は、気付けば自分の下着ごと、下半身に纏った衣服を脱いでいた。何をしようとしているのか、何を求めているのか、自分でもわからないまま――私は秘所を露にする。

 衣擦れの音を聞き、私が何をしたのかを察したのか、私の胸を弄び続けていた手が腹部をなぞって降下していく。私は――――私は

 

 「…………『   』。」

 

 私から片時も離れようとしない、その顔に――頬に、手を添えながら。

 その時、はじめて。この男の名を、呼んだ。

 

 男の呼吸がさらに荒くなる。はじめから荒かった呼吸が小刻みになり、熱のこもった視線で私を見つめた。

 理性が融け落ちるのを感じながら。

 子宮が熱く煮えるのを感じながら。

 違う、違う――知らない、知らないと拒み続けたその本能を、認識する。

 

 「両の手では」

 

 「…………触れられない場所も、あるでしょう?」

 

 下腹部から聞こえた衣擦れの音の意味を理解した彼は、私が促すよりも速く、先走って溢れた情欲でどろどろのそれを取り出していた。

 ……今夜は――今夜だけは、その肉竿を、腫れ物に触れるように慎重に、丁寧に握り。先端を……私の秘所へとあてがう。

 

 「――ね?」

 

 口にする言葉の色は、どこまでも理性的なまま。

 だけどもう、私の五体は蕩けるような官能に染まっていた。

 弄ばれたいと叫んでいた。犯されたいと懇願していた。

 喰らわれてしまいたいと――望んでいた。

 

 「だから」

 

 その衝動は、もう、抑えられなくて。

 

 「……早く」

 

 それが何なのかなど、考えようともせず。

 

 「早、く…………っっ」

 

 屈したくて、墜ちてしまいたくて、たまらなくて

 私の秘所を何度も何度も擦り上げては狙いを定められないそれがもどかしくてもどかしくて、

 犯されたくて、犯されたくて犯されたくて犯されたくて――――――

 

 

 「――ひぎぅっっ!!?!?」

 

 

 瞬間。

 下腹部から脳髄までを、一直線に貫かれたような衝撃が走った。

 劣情に染まっていく思考を切り裂き、あまりにも暴力的な快感が私の頭蓋に響き渡る。見開いたままの瞼を閉じることができず、涙すら浮かび出した。

 

 「――ぁ―――っか――は――――………っっ」

 

 衝撃が漸く去り始め、未だ残るじんわりとした快感に慣れてきた辺りで、私は自身の秘所へと手を伸ばした。

 指先で触れて解る、腹部を満たすあまりにも熱く硬い、それでいて肉体特有の軟らかさを感じさせるもの。それが今、私を貫いていた。私の秘所はもう秘されてなどおらず、彼と私を繋ぐ結合部へと成り果てている。成る程、確かにこれは――侵されて、いる。

 

 「ふ――っく……ふぅっ……ふぅうっ……ぅ……?」

 

 ――不意に、ぬるりとした生暖かい液体の感触を指先が感じ取る。指を曲げてそれを掬い取り、自身の顔へ近づけて見つめると、濁った白色をした半個体の液体がそこに付着していた。

 

 「……く、すっ……ふ、ふふふっ」

 

 見慣れているものだった。今まで、幾度となく私がこの男から吐き出させたものだった。

 私と彼の結合部からそれが溢れ出ていることの意味を、考えるまでもなく理解して――私は彼を嘲笑する。

 

 「本っ、当に……堪え性の、ない……! ……挿れた、だけで吐き出したのですか……?くすっ、ふふ、情けないっ、ぁははは……っっ!」

 

 頭に浮かぶ言葉を辛うじて絞り出す、精一杯の罵倒。それは、嘲りというよりも強がりに近かった。漸く童貞を棄てられたというのに、ろくに動きもせず果てたこの男が情けない――けれど、それ以上に。

 ただの一度、膣内を掻き分けられて子宮口を叩かれただけで果てかけた、私自身が――情けない。崩れかける尊厳をどうにか保とうと口にした嘲笑は強がりであり、先に果ててくれた事実に対する安堵でもあった。

 

 「……んっ……♡」

 

 膣内を押し広げていた硬い肉竿が、ずるずると抜け出ていく。その感触がこそばゆく、ほんの少しだけ甘い声が漏れた。

 吐き出したのだから、もう満足だろう――子宮の疼きを感じつつ、彼の頬を撫で……その体を労ってやろうと、考えたその時。

 

 …………

 ぴたり

 

 と、亀頭を私の膣内に残したまま、彼が動きを止めた。

 ……硬い。まだ、硬……い?

 

 

 「……――――待」

 

 

 私が言葉を口にするが早いか――この男は

 

 「――――~~~~~~~~~っっ!!?♡♡」

 

 硬いままのその肉竿で、再び私の膣奥を突き上げた。

 電流のような快楽が脊髄から脳髄へ立ち昇り、突き刺さる。視界が明滅して気をやりかける私のことなど彼は意にも介さず、また膣内から肉竿をずるりと引き抜き――

 

 「待っ、待――!!~~~~~っっ♡♡待ちなっ、さっ♡♡ぁ――あ、あっ、ぁあぁあああっっ!!!♡♡♡」

 

 三度。四度。五度。つぶれた声をあげ続ける私をそれでも犯す。胸への愛撫だけで既に弱り切っていた私の膣は二度目に突き上げられた衝撃で呆気なく絶頂を迎えていて、収縮する膣壁の感触がそれほど心地良いのだろうか、絶頂の最中にある膣を、絶頂しながら彼が使う。肉竿全てで膣の何処をも擦り上げ、何度も何度も精液を吐き捨てながら何度も何度も突き上げる。

 

 「止まっ――あ、ひぅっ!!ぉ、おっっ!!!♡♡ぁぁああァアああぁあぁあっっ!!!♡♡♡」

 

 九……十?否(いや)、もっ、と?待てと懇願する私の声に耳を貸す素振りもなく、両手で確りと腰を掴まれて腰を使われる。あまりにも暴力的に過ぎるその快楽に、私の理性は真っ白く煮えて融け消えていく。突き上げられる度に声をあげて、声をあげる度に絶頂して、絶頂する度に突き上げられて――――

 何度目の絶頂かも数える余裕すら無くした頃。不意に彼の顔が近づいてきて、私はその唇に無我夢中でむしゃぶりついた。接吻の感触に身を委ねれば多少は気が紛れるかもしれないとうっすら思考を浮かべはしたが、そんなものは建前でしかなく、結局私は性行の快楽にも接吻の快楽にも溺れたかっただけだった。

 

 「はぁ――あ――…………♡ふ、ぅっ……♡……れ、る……え……ぅっ――ん、っ――ふっ、んぅっ……~~~~~っっ♡♡♡」

 

 溺れる、溺れる、溺れて、いく。意、識も思考、も薄れて、ちぐ、はぐになり、はじめて

 身を使われる、その快楽は、正気をも、持ち去って。腰を、掴んで、いた――彼の、手が、私の――むね、を

 触れた、瞬間

 

 「――――――ぁ♡」

 

 硬く、尖った、その先端を

 ぎぅ、と

 抓り、上げられて――――――私は

 

 

 「――――~~~~~~~~~~~~~ッッッ♡♡♡♡」

 

 

 その――意識、を

 

 白い、白い、海の、底へと――放り込まれて。

 沈んだ私のなにもかもが、快楽と多幸感の中にほどけて消えていった。

 

 

 *

 

 

 

 

 

 「…………………………」

 

 消えてなくなりたい。

 ベッドの上で朝を迎え、目を覚ました私が真っ先に思い浮かべたことはそれだった。

 

 (……目なんて覚めなければよかったのに……このまま千年ほど眠っていられたらよかったのに…………)

 

 昨夜の自分が見せた痴態の記憶に耐えられず、上体を起こしてずきずきと痛む頭を片手で抑えつつ、もう片方の手で腹を撫でさする。

 今だ残る子宮の熱と疼きが、昨夜のそれが夢や幻のものではないと嫌でも教えてくれる。叶うならここにファルシオンが二本か三本くらい突き刺さっていて、私をもうあと数千年ほど寝かしつけてくれていてほしかった。

 

 ……とはいえ、朝は朝。

 過ぎた事象にいつまでも囚われまいと、私はベッドから降りて立ち上がった。私よりも先に目を覚ましたのか、あの男はもう部屋には居なかった。

 

 (……ひとまず、湯浴みがしたい……その前に、少々髪と……衣服も整えて、それから――)

 

 未だぼんやりとする頭で朝の予定を立てながら、若干ふらつく足の調子を整えつつ、私は部屋の戸を開け――長い長い一夜を過ごしたこの場を後にした。

 

 

 *

 

 

 ――それから、幾日か過ぎて。

 

 ここで迎える朝は、いつも私に代わり映えのしない退屈な一日を寄越してくれる。

 戦禍の中でなにもかもを喰らい殺すばかりが日常だった私にとって、ここで過ごす日々は胃液が逆流しそうなぐらいの非日常だった。召喚されて間もない頃は、頃合いをみて一人か二人くらいは喰い殺してやろうかとも考えたが――

 わいのわいのと騒ぎ立てながら廊下を走っていくこの少女達でさえ、私を殺しうる力を持っていると知らされてからは、そんなことを考える余裕すら無くなった。喰い殺してきたものを吐き戻しそうになる非日常にも慣れ、日常として過ごす私がここには居た。

 

 

 

 「……おや」

 

 せわしない様子で駆けていくノノと**ファ***の背を追うミルラ、そして彼女らに追い付こうと早足で歩くイドゥンを見送った先――廊下の奥から、その男は歩いて来た。

 私と目を合わせた彼は、矢張り代わり映えのしない挨拶を私に投げ掛ける。私は、ええ、お早う――とこれまた代わり映えのしない挨拶で応えた。

 

 「変わりないようで、何より」

 

 邪竜として皮肉を込めた一言を向けると、彼は馬鹿正直にそれを額面通りの意に受け取って、他愛もない雑談を持ちかける。

 

 

 暫く、そうして何でもない話をしてから。

 

 「ところで。『   』?」

 

 何か、と聞き返す彼に、ほんの少しばかり距離を詰め

 

 「今夜、時間は取れるのですか?」

 

 そう、問いかけた。

 その言葉に驚いて、青臭く赤面し戸惑う彼に私は用件を説明する。

 

 「何を想像したのかは――聞かないでおくとして。……あの卓上遊戯ですよ。癪ですが、私に比肩する腕前の者はそうそう居ないもので」

 

 その相手をしろ、と言葉の裏で私は彼に命じる。そういうことか、と胸を撫で下ろしたような――多少、残念そうな――反応を見せ、慎んでお受けしようと彼は快諾した。

 

 ……偶には、戯れに付き合わせるのも悪くはない。

 長くこの場所で過ごし、非日常にも慣れ、退屈を感じるようになり――そんな思いも抱くようになった。

 

 「それは有り難い。……忘れて、どこぞへ遊び呆けでもしたら、与えられる限りの苦痛で以て喰い殺しますので、そのつもりで。――嗚呼……そう、そう」

 

 そう――偶には

 

 

 「条件は――以前と同じで。……ね?」

 

 

 戯れも。

 

 悪く、ない。

 

 


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