夕方。一人の男がバベルの中層を歩いていた。
その足取りはどこか落ち着かず、表情も緊張しているのが見て取れる。
数分の間歩き続け、男が足を止めたのはこれといって特徴のない普通の家だった。
男はゴクリと唾を飲み込むと、呼び鈴を二回鳴らす。
「はーい!」
すると扉の奥から少女の声が響き、続いてトタトタと足を鳴らす音が聞こえて来た。
ガラガラと横開きの扉が開き、男と少女の目が合う。
「み、ミシェルさん……、その……」
「ふふっ。言わなくても良いですよ、時は金なり、ですから……っ」
男が口を開き会話が始まるものの、すぐに顔を赤くして言い淀んだ。しかし少女──ミシェルは男が何を言おうとしているのかを察し、含みのある笑みを浮かべて部屋の奥へ招き入れた。
廊下を進むミシェルの三歩程後ろを、以前緊張した足取りで付いて行く男。すると目的地に到着したのか、一つの部屋の前で足を止めて振り返った。
「あ、お客さんっ、今回で二回目ですよね?」
「えっと、は、はい……そうです」
「だったら説明はいらないですね、約束の物を確認させてもらっても?」
その言葉を聞いて、男が覚束ない手つきで背負っていた鞄から財布を取り出す。そして中の一万円札を二枚、ミシェルに差し出すように取り出した。
「……ふふっ、確かにいただきました」
「──み、ミシェルさんっ、俺、もう限界でッ、今日のために溜めてきたんです!」
ミシェルは男から二万円を受け取ると、慣れた様子で確認しながら唇の端を舌で舐めた。そして二万円を服のポケットにしまうと、男に部屋で待っているように伝えて廊下の奥へ消えていった。
男は指示通り部屋に入り、一度全体を見渡した。
そこは十畳程の広さがあり、フローリングの床に簡素な布団が敷いてあるだけの少し寂しさの漂う部屋だった。しかしそんな寂しさを微かに紛らわせるように、太いパイプが部屋の天井を伝っていた。
「お待たせしました~」
しばらく待っていると、部屋の扉を開けて姿を現したミシェル。けれど服装が先ほどまでとは違い、旧文明の学生が着ていた。ブレザーを着用していた。
帽子は脱ぎ去っていたものの、サイドテールのような髪型は変わらずだった。
ブレザーと表現したが、厳密にはブレザーは脱ぎ去っており、真っ白なシャツに紺色のカーディガン、短めのスカートに薄いデニールのタイツを着用していた。
「お、おぉ……」
そんなミシェルの様子を見た男が、感嘆の声を上げる。
「満足いただけました? でもこの服、高かったんですよ? ……意味、解りますよねっ」
「くっ、わ、わかってる! これでいいッ⁉」
「ふふふふっ! ……じゃ、早速始めましょうか」
ミシェルの言葉の意味をすぐさま理解した男は、一瞬財布へ伸ばすのを躊躇ったが、すぐにお金を取り出し、今度は三万円をミシェルに手渡す。
満足げに微笑んだミシェルは、そのお金を大事に胸ポケットにしまうと、布団の上に寝転んだ男に近づく。
「たしかお客さんはぁ……、お口、好きでしたよね?」
「は、はい……!」
「でしたらぁ、初めはお口でっ」
先ほどとは違う笑顔を男に向けたミシェルは、するすると男のズボンを脱がしていく。最後に下着に手をかけ、ゆっくりと脱がすと、十分に勃起していた肉棒がミシェルの顔を叩いた。
「あぅっ……そ、そういえばお客さんの、大きかったんでした……っ」
反省するように呟いたミシェルは、露わになった男の肉棒へそっと唇を近づける。そして既に透明な液体が漏れ出ていた鈴口を、優しく口付けをして舐めとった。
「はぁむッ、へろッ……れろれろッ……」
それを皮切りに、亀頭、肉棒へと、ミシェルの柔らかい舌が這うように動き始める。男は小さいながらも確かな快楽に、思わず声を漏らし始めた。
「ぺれぺるッ……ぷはっ、……お客さん、声、漏れちゃってますよ?」
「っく……そ、それは……」
「少し激しくいきますね。んじゅッ、くぽッ、じゅれろッ、へれれッ♡」
形だけの行為だとしても、それが性的なものであることに変わりはない。自然と二人の感情が高まっていくのは当たり前だった。
男の太い肉棒を精一杯口に咥え、勢いよく前後させて刺激を加えていく。口の中では舌を動かし、カリ裏を責めることも忘れず、ただ驚異的なテクニックで男に快楽を与えていった。
「んじゅぞぞぞッ!!! ぐっぽぐっぽッ、んぢゅッ♡ んくっ……ほあうはんっ、ひもひいへふはっ?」
「もう、出ちゃいそうだ……ッ!」
「ほえはぁ、ひはへへはへはふっ! んじゅっじゅっじゅッ!!! じゅぼッ! ぺりょッ!! じゅぞッ! じゅぞぞぞぞぞッッッ!!!!」
男の肉棒が強く脈動したのを見逃さなかったミシェルは、それがラストだと最後に強く肉棒を吸った。
それによって卑猥な水音や空気の入る音が部屋に響き渡り、視覚的にも、聴覚的にも男を興奮させる材料となった。
「んっぐ、イッ……クッ!!!!」
──どぴゅっ、どぷぷっ!! びゅるるっ!! とぷとぷんっ!!
ミシェルの口の中に、大量の精液が放たれる。ミシェルはそれを嫌な顔せずに全て受け止めきると、ちゅぷっという音をたてつつ鈴口から口を離した。
「み、ミシェルさん!」
突如、焦ったような男の声をあげる。しかしミシェルは全て分かっているとコクコクと頷くと、口の精液が漏れないよう軽く口に手を当てる。
「ん……ぁぁ……っ♡」
そして男に良く見えるよう、口を大きく開いた。口いっぱいに溜まっている男の濃厚な精液の中を、泳ぐように掻き混ぜる赤い舌が性欲を刺激する。
「にちゅ……れちゅっ……♡」
そして一度口を閉じ、ゆっくりと味わうように粗食し始める。ミシェルの口を汚す背徳的な心地よさに、男はさらに魅力に憑りつかれる。何度も咀嚼する様子に、精子一匹一匹が潰される感覚を覚え、その度にプチプチという幻聴が男の頭に響いた。
「コクンッ……んくっ、んくッ♡」
最後に、何度も喉を動かし男の精液を飲み込んだミシェル。その顔はほんのりと火照り、さらに男の情欲を刺激した。
「あぁ~、お客さん、また大きくしてますねぇ~……♡」
「し、仕方ないよ……こんなの見せられたら……」
それから再び男は財布から万札を取り出し、ミシェルに貢ぐ。
始まった男とミシェルの夜は、とても長くなりそうだ──