※この作品はR-18です。

九頭龍は桜の代紋を背負っている   作:怪傑忍者猫

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龍の国、竜の守り人

 爆処の二人が、庁内でドタバタしている頃、諸伏景光こと染井吉野は先に戻っていた大島こと伊達航と共に監査部と通信を行っていた。

 例の事件記録に、変動が見られたからだ。

 出陣待機中の陸奥守吉行、歌仙兼定、山姥切国広、鳴狐が控える中、重々しく伊達が問い掛ける。

 

「記録が変わったそうだが」

【はい、『はくちょう』の落下地点が変わりました。警視庁から、東京湾埋め立て地のカジノタワーにです】

 

 同時に展開された画像が、衛星の軌道が途中でずれて、埋め立て地で一際 高い建造物にぶつかる様を示している。

 変わり切れなかった軌道に、従属神(とうけんだんし)達の口から溜息が漏れる。

 

「これは、もしかして東錦様と元キーマンが動いた結果か?」

 

 国広の問いに、画面の『百舌鳥』が頭を掻く。

 向こうでは、もう既に数日経過しているようで、眼の下に隈が浮いているのが見て取れた。

 

【おそらく。でも、これでもタワーに避難している三万人が犠牲になっています。

 もう一つ、何らかの手を打たねば】

「平安刀達が言い出した時にはどうかと思ったのだが、一応変化は出たか」

 

 『百舌鳥』の返答に、唸ったのは歌仙だ。

 

**

 

 先日、通信後の御前会議で、鶴丸国永、小烏丸を中心とした平安刀勢からこう言い出されたのだ。

 

「あの小童を活用してはどうか」

「そうさな、あの世の中白と黒しかない小僧っ子なら、ほおっておいても事件に噛みこもうとするだろうしな」

 

 パチンっと扇を閉じた小烏丸と、見た目の儚さから程遠い豪快な仕草で頭を掻く鶴丸に、周囲はえーっと声を上げる。

 控えめに口を開いたのは、一期一振――以前弟達そっちのけで九頭龍大神の神婿の座を狙っていて刀解されたものとは別個体で、此方は弟達を折られまくった結果堕ちかけ、つい最近まで眠り続けていた(事に成っている)存在だ。

 ……弟を蔑ろにする『自分』に逆上し、何度も様子を見に来る『叔父』に宥められ続けていた彼は、例の面子が刀解された事で再顕現されたと同時に同位体の無礼を染井吉野に土下座で詫び、弟達を抱き締めて己の不甲斐無さを詫びていた。

 そう言う事もあり、今回の一期一振はレベルカンストを目指して非常に勤勉に働いており、それ故に新参枠ながら周囲にも一目置かれている。

 

「一応これまでの工藤少年の行動は読みましたが、この暴れ馬のような少年を現場に噛みこませて大丈夫でしょうか。

 彼なりの正義感はともかく、視野が狭すぎて事件の真相を見誤りそうなのが不安なのですが。何より、先の大捕物で大局に関われなかった事から、婿様を逆恨みしている節も見られるとか」

 

 兄の言葉に、粟田口の面子は全員が頷く。先の大一番、こちら側に良い様に持っていかれた『名探偵(笑)』に揃って渋い顔になった彼らが居る。

 それに対して、口を開いたのは明石国行だ。

 

「確かにな。せやけど、今回はあのボンボンを制御出来る種がある。被災者の名簿の中に、毛利一家の名前があるんや。父親と合流する予定で移動中に被災しとる。

 聞けば、毛利小五郎が事件容疑者として捕まったとか。この状況を、ボンボンの尻を叩く種に出来るん違うか?」

「そうですね。恐らく、毛利殿の娘御も彼に救いを求める筈。このような言い方はどうかと思いますが、恋人の為と言う絶対的な目標があれば、脇道にある別事に気を取られる事も無いのでは?」

「まあ、心細いからなんでしょうけど、刑事事件に高校生探偵を突っ込ませる事に疑念を持てない程度には、毛利殿の娘御も身勝手な事で。普段は推理馬鹿と、当てこする事もあると言うのに」

「それだけ、高校生に頼りきりだった目暮班が悪いよ、兄さま」

 

 頷いた江雪左文字の横で、極衣装も絢爛の宗三左文字が嘆息し、末弟の小夜左文字・極が付け加える。

 従属神《ぶか》達の言葉に耳を傾けていた染井吉野は、何かを決めた顔で上座の前に控える大島にこう告げた。

 

「大島、衣笠を呼び出して欲しい。彼から工藤新一に情報を渡し、事件捜査に噛み込ませる」

「おいおい、良いのか?」

「ちょっとちょっと、彼、それで三月に減俸食らってんだよ? 本丸の任務消化があるからそれなりに収入はあるけど、結構大変らしいのに」

 

 『衣笠』とは、審神者としての高木渉の諱である。

 前回の作戦の際は、警視庁捜査一課の目暮班は事実上の謹慎状態だった事もあり、風邪と称して休みを取った彼は、本丸で後方支援として自身の刀剣男士達と炊き出しに勤しんでいた。いや、一応本丸警護が任務だったのだが、蓋を開ければこちらが圧倒的に優勢で、やる事が無かった彼らが居る。

 大島と小松乙女こと萩原研二が声を上げると、眉間に皺を寄せたまま染井吉野はこう答えた。

 

「今回は、内調側の情報操作として処理する。彼に何か警視庁側から言われる事があれば、俺に話を持って来させるようにする。

 そう言う工作の為にあるのが、俺が課長になった『特殊案件捜査課』だ。木場さんにも、そういう申し送りは済ませてある。

 この、『エッジ・オブ・オーシャン』爆破と『はくちょう』落下による大災害が歴史修正主義者による破壊工作の可能性がある以上、そして『爆破事件』を阻止する事が出来なかった以上、『はくちょう』による災害は断固阻止する」

「やれやれ、元とは言え公安警察は思い切りが良いねえ」

 

 同期で上司の言葉に、小松は大きく肩を竦める。

 その横で、大島も半ば呆れ、半ば諦めたように息を吐いた。

 

「判った。では、こちらのゲートを使って、少し早い時間、毛利探偵が拘束されるより前に接触させよう」

「大島、衣笠には公安と風見さんの事を、話しに織り込むように言ってくれ」

「どう言う事だ?」

「彼は、東錦が公安である事を知っている。にも拘わらず、警察官としてより【組織のバーボン】として扱い続けていた。

 彼の中では、あくまでも東錦は【暫定的な味方】で今も尚、なんだ」

 

 苦々しいと声に籠った思いに、補佐役も従属神達も居住まいを正す。

 

「ならば、その認識を利用するまで。彼には、公安と事を構えている気になって貰おう」

 

 そう言って笑った顔を、きっと東錦こと降谷零が見たら「懐かしい」と笑ったかもしれない。或いは、「そんな顔をするな」と眉を顰めたかもしれない。

 その顔は、かつて『黒の組織』において、【スコッチ】のコードネームを手にした狙撃手の顔だった。

 

**

 

 事件から三日、結果としては満足には程遠い状況に、染井吉野(もろふしひろみつ)は大きく眉を顰めていた。

 今、染井吉野は己の近衛隊を率いて、主犯を唆しただろう歴史修正主義者の協力者を、当人の仕事場兼住居であるワンルームマンションの一室で追い詰めていた。

 男は、自称革命家の、所謂ネトウヨと言う代物で、尚且つ某政治団体からお金を貰って特定団体への中傷を書き込んだり、反論する人間へある事無い事喚き立てて炎上させる事に意義を感じている人間である。

 この男に金を渡していた政治団体に、歴史修正主義者、もしくはその賛同者が混じり込んでいるらしい。

 今回は屋内戦と言う事で、短刀二、脇差一、打刀三と言う編成であり、へし切長谷部・極と博多藤四郎・極と言う代紋本丸の電脳担当二振(ふたり)によって、男のパソコンは丸裸にされ、男のやらかした事からプライベートに至る迄丸っと引っこ抜かれている。

 尚、外見上は皆スーツ姿であり、その状態で薬研藤四郎・極と骨喰藤四郎・極、大倶利伽羅・極が刀を突き付け、壁際に追い込んでいる。

 二振の仕事を後ろから見ていた陸奥守吉行・極が、その特徴的な眉を顰める。

 

「判っちょったがが、自己主張の欠片も無い、つまらん文章じゃ。こがなお粗末な、子供の駄々のような事を書き連ねて革命家こうべりとは、何ともはや」

「子供の駄々も何も、全てテンプレート文章だな、これは。こんなのが革命家とか、片腹痛いのを通り越して笑いも出んな」

 

 ブルーライトカットグラスを掛けた長谷部が吐き捨てれば、中肉中背、俗にうらなりに分類されるだろう男が喚き立てる。

 当人は、革命家らしい知性溢れる語彙力でこちらを罵倒しているつもりらしいが、用語の誤用が多くて意味が判らないと言うのが彼らの総意である。尚、この一室には染井吉野専任管狐【竜胆】によって防音と人除けの結界が展開されており、外からこの室内で何が起きているかは全く判らない状態である。

 見た目美しい、日本刀を携えた男達に向かって唾を飛ばしつつ更に喚こうとした男は、ガンっと更に壁に叩き付けられた。

 ぎょっとする部下達を後目に、普段なら物静かな印象の染井吉野の全身から噴き出す殺気に、俗にいう『ネット弁慶』である男は息すら止めんばかりに竦み上がった。

当然だろう、身内である親兄弟ともまともに話した事もない引きこもりに、中途退場したとはいえ潜入捜査官として生死の狭間を綱渡りし、その後は半狂乱で襲い掛かり此方を殺そうとする妖を相手取ってきた――例え半人前と言えど――現人神の気迫に耐えられる筈もなかった。

 

「お前の御託は、後で取調室でゆっくり聞いてやる。だからこちらの質問に答えろ、誰の命令で日下部誠を唆した」

「な、あ、え」

「答えろ、誰の指示で日下部にIoTテロを指示した!」

 

 男の応えは無かった。

 ぐりっと白目を剥いたと思えば、びくびくっと筋肉のない腹が大きく波打ち、結構な大きさのものが男の胃から喉に這い上がり、そしてごきんっと言う音と共に大きく開いた口から、穢刀剣の苦無が這い出してきた。

 

「しまった!」

「大将下がりな!」

 

 そのまま吉野へと飛び掛かろうとした苦無は、薬研によって弾かれ、骨喰と大倶利伽羅の二刀開眼で叩き斬られた。

 見る間に塵と化して崩れ去る苦無と、穢刀剣の顕現に生命力を食い尽くされ、そのまま息絶えてしまった男に吉野は俯いた。

 

「迂闊だった。こう言う事を平然とやらかす連中だって、判っていた筈なのに」

「口封じと、こちらへの罠を兼ねていたか。主、おそらく最初から、向こうはこの男を生かして置く予定は無かったようだ」

 

 無理やり外された顎を一応戻してやりつつ、淡々と骨喰藤四郎が言えば、同じく男を医者として簡単に検死した薬研藤四郎が、眼鏡を外しつつ苦々しげにこう言った。

 

「俺っちも、バミ兄ぃに賛成だ。寧ろ、一般の警官に囲まれたところで苦無が出て来ていたらと思うと、ぞっとするぜ、大将」

「最悪、警官達どころかこの建物の住民全員、か」

 

 大倶利伽羅まで唸るに至り、吉野は両手で顔を覆ってしまう。

 そう、忘れていたのだ。遡行軍を操る『歴史修正主義者』と言う連中が、どれだけ身勝手な方法論で事件を起こしているのか。自分達さえ良ければ、歪んだ歴史の陰でどれだけの血が流れるか――本来の事態よりより酷い事態になり最悪文明基準を衰退させかねないようなテロを奴らは好んでいる――判っていてやらかしている事を。

 事件の手掛かりはともかく、関係者を死なせてしまった事に肩を落とす吉野に向かって、初期刀である陸奥守がこう進言する。

 

「主、取り敢えずこの男の繋がっちょったが政治団体とやらがきな臭い事は判った。この時代の政治家がいらわっちゅうなら、儂らが直接動くより、内調の木場殿に話を通した方が早いろう」

「俺も陸奥守に賛成です。それから、一つご報告があります」

 

 続いて口を開いた長谷部は、思ってもみなかった事を告げた。

 

「どうやら、日下部誠を唆したのではなく、煽ったと言うのが事実の様なのです」

「……何だと」

「どうもこん兄しゃん、犯罪教唆ん常習犯やったんじゃなかろうか。日下部誠んSNSに定期的にアクセスして、恨みつらみに煽り入れとったようったい。ここ二か月ほどは、公安警察へ公安検察ん正義ば示しぇって文言繰り返しとったっぽうて」

「! 見せてくれ!」

 

 引き寄せたノートPCに映し出されたSNSの画面には、明確な組織や個人名こそは出ていないものの、そこには確かに血を吐くような後悔と悲嘆の言葉が綴られていた。

 そして、ネトウヨの男が書き込むようになった頃に、自身が検事職に就いている事をぽろっと書き込んでから、男の偏執的なくらいの粘着を経て『エッジ・オブ・オーシャン』爆破前日の四月二七日。

 

『二三一の無念を晴らす為にも、公安警察を地獄に突き落とす』

 

 横から覗いていた陸奥守が、小さく息を吐いた。

 日下部誠の協力者が、昨年のNAZU不正アクセス事件の関連で窃盗事件を起こし、その後自殺していた事は内調側からの情報提供で、『代紋本丸』でも把握していた。

 尤も、内容を読んだ染井吉野は、「この協力者は自殺した事にして恐らく生きている」と言った。

 公安検事に協力者なんて聞いた事が無い、恐らく他の検事への牽制も兼ねて東錦は彼を死んだ事にした筈だと。

 

「なるほど。公安検事の立場なら、犯罪記録はより取り見取り、か。これと言う記録を見付け、なぞれば大事に出来る、と」

 

 渋い顔を隠さない大倶利伽羅に、薬研も頷いた。

 

「何とも身勝手な。協力者を守る為の手段も何も用意していなかった癖に、事が起きてから逆恨みなど」

「ゆうたち始まらんな。主、一旦本丸にもんて」

 

 骨喰が吐き捨てる横で、そう言いかけた陸奥守を押さえ、染井吉野はこう命じた。

 

「いや、皆は一度本丸に戻り、夜戦装備に切り替え待機、太刀や大物連中の成人男性に見える者は平成装備で、避難誘導の協力を。俺は結界中心に向かう!」

 

驚いて目をぱちくりさせる部下達に、きっと顔を引締め吉野は言葉を続ける。

 

「東錦は、必ず『はくちょう』による惨事を阻止しようと動く。俺は、それのサポートに回る」

「主しゃん!?」

「落ち着け、博多。大将、木場殿への連絡は俺達でやっておく、それでいいな?」

「ああ、頼む」

 

 弟を押さえ確認する薬研に頷くと、染井吉野はゲートを開いた。

 一つは、本丸大門へ。もう一つは、喫茶店『ポアロ』地下の特殊空間へ。

 

**

 

 アクセスコードを聞き出し、阿笠博士のドローンでの軌道修正も入り、後はそのまま落ちるに任せれば良いだけの筈だった。

 だが、大気圏外から突入する大重量の物質の軌道を逸らすのには、ドローンで運べる爆薬は僅かに足りなかったらしい。

 江戸川コナンの要望で、その足になる事に成った安室透は、だから愛車の後部座席にいる吉野景光の姿に目を丸くした。

 

「よ、吉野君!?」

「安室さん、早く! 時間がありません」

「よ、吉野さん、どうして」

「話は後だよ、『はくちょう』の軌道を逸らせるんだろう?」

 

 コナンを促す吉野の姿に、安室はシートベルトを付けつつ精神感応で呼び掛ける。

 

『ヒロ、どうしてここに』

『ここにいる俺は、雫に中継して貰って存在する現身、実体じゃないよ。俺自身は、今結界中心から都内全体を俯瞰で見ている状態だよ』

 

 そう言われれば、幼馴染兼配偶者が何を意図してここにいるのか理解する。

 

「吉野君、ナビを頼む!」

「了解です!」

 

 飛び出すように走り出した白いRX-7は、一路カジノタワーへと突き進んだ。

 だが、情報の錯そうによって、カプセルが落ちる可能性がある埋め立て地へ人々が集まろうとしており、一旦避難したものの改めて移動しようとしている埋め立て地の人々とで埋め立て地への道路は大渋滞になっていた。

 

「安室さん、この先渋滞だって!」

 

 スマホを見ていたコナンが叫べば、同じくタブレットを見ていたらしい吉野の冷静な声が続く。

 

「カーブまで行けば、モノレールがある!」

「! よし!」

「……え?」

 

 渋滞で動けない車の列に、ねじり込むように突っ込んだRX-7は丁度荷物を積んでいない車両運搬車をジャンプ台替わりにして、並行しているモノレールへと飛んだ。

 そのまま路線上を突き進むRX-7の前にヘッドライトが現れ、思わずベルトに縋るコナンを横目に、吉野の冷静な声が飛ぶ。

 

「定時便、車両数六!」

「コナン君、捕まってて!」

「うひゃあ!?」

 

 速度を上げ、モノレールのごく細い防音壁上に乗り上がり、RX-7はモノレールとの事故を回避した。寸前、接触したドアミラーが吹っ飛んだが、構わず速度を上げてRX-7は走り続ける。

 安室の無茶下限に、大きく溜息を吐いたコナンは、だが吉野の声に思わず無理やり後ろを見ようとベルトを外しそうになった。

 

「後方から接近、……バイク?」

「え!?」

「コナン君、危ないから」

 

 後方から近付いてきた光が、あっという間に並走する。

 防音壁の細い天井部を疾走しているのは、どう見ても一千㏄クラスオーバーの大型バイクだった。

 思わず目を剥いているコナンを後目に、安室はライダーへと声を張り上げる。

 

「滝さん!」

「おう、お前らも動いてたか! 『エッジ・オブ・オーシャン』横の、建設中断中のビルに向かえ! あそこの天辺が、あの当たりじゃ一番高い筈だ、強に話し通して、ビルの資材用エレベーターを動かせれるようにしてある!」

「滝さん、動く予定だったんですか!?」

 

 バイク後方に、見覚えのないカーゴボックスが括り付けられているのを見て取った吉野が問えば、ジェットヘル故に見える口元がくっと上がる。

 

「そりゃあ、こんな事態だし、だがちょっと知り合いを動かすのもどうかと思ってたから、俺が動くかと思ったんだが、お前さん達が動いてるなら俺は別口の手伝いしてくるわ」

 

 そう言うなり、防音壁上を走っていたホンダ・ワルキューレは更に速度を上げてそのままちょうど車両が途切れていた場所に飛び降り、そのまま走って行った。

 バイクのデータを見たコナンが、「うっそだろ……」と顔を引きつらせる。

 尤も、あのバイクが更なるチューンナップによって総重量七〇〇キロオーバーのモンスターマシンと化している事、そして滝がそんな暴れ馬を乗りこなすだけの能力を持つ事は安室と吉野は知っているが、コナンの方は全く知らないのである。――滝が、かつてオートレースで勇名を馳せた事も、未だに合衆国でレース賭博潰しの為に、アマチュアレースに出ている事も。

 

**

 

 四輪車両には難しい筈の、アクロバットの末に一般道に戻ったRX-7が目的のビルに辿り着いた時、カプセルは点ではあったが目視出来るところまで落ちて来ていた。

 滝の言葉通り、警官達が目的の建設休止中のビルにおり、資材用エレベータに直ぐ乗り込む事が出来た。

 最終加速の為にアイドリングさせている途中で、ぽつりとコナンはこう言った。

 

「安室さんと吉野さんって、彼女いるの?」

「居るよ、この世が終わっても、一緒に居たいって思ってる」

 

 柔らかく微笑んで吉野はそう答え、バックミラー越しに吉野と目を合わせた安室はこう笑った。曰く、

 

「僕の番《こいびと》は、九頭龍《このくに》さ」

 

 飛び出したRX-7は、フロアーを周回して速度を上げ、限界を迎えたエンジンは火を噴き、そして中空へと飛び出した。

 コナンがボールを蹴り出したタイミングで、吉野と安室(スドリスティ)も声を振り絞った。

 

「っ、『雷精豪放(ジオダイン)』!!」

「『衝撃突貫(ザンダイン)』!!」

 

 野外にいた人間は、カプセルに花火と同時に大きく稲妻が当たったのを目撃していた。そして、何やら質量のあるものが燃えながら落ちていくのも。

 花火入りボールと二つの呪文によって、カプセルの軌道はそれた。カジノタワーの外壁にそれなりの傷が入り、重量を支えるワイヤーが一本切れたものの、カプセルは東京湾へと無事着水した。

 だが、それを見届ける余裕は二人には無かった。

 そのまま気を失ったコナンを掴み、吉野と安室は迫るビルのガラスへと銃を向け、弾倉を撃ち尽くす勢いでトリガーを引いた。蜂の巣になった強化ガラスに、吉野が二人のクッションになるように態勢を捻って飛び込む。

 ガラスを突き破り、粉々になった破片が散らばる床を転がって衝撃を減らす。

 小柄で軽いコナンは、二人から離れ更に転がり壁に当たって止まった。

 転がって打ち付けた箇所の痛みに唸りつつ、眼を開いたコナンは仰向けの安室の上にうつ伏せる吉野の姿を捕らえた。二人の身体が身じろいでいるのを見出し、一瞬コナンの意識は落ちた。

 だから、二人のやり取りをコナンは聞きそびれていた。

 

「ゼロ、怪我は?」

「俺は大丈夫、お前こそ、さっき破片が」

「言っただろ、この体は現身、俺自身は結界中心に居るって。ただ、雫には無理をさせたから、後で労わってやらなきゃ」

「そうか」

「俺は、一旦戻るよ。この事件の犯人を煽ったネトウヨが関わってた政治団体の中に、歴史修正主義者が紛れ込んでいるらしいんだ、その調査があるから」

「……そうか、この事件、そちらとも関わりがあったのか」

「うん。詳しい話は戻ってからでいいかな?」

「ああ、俺も警察庁(さっちょう)に帰って書類書かなきゃだ」

 

 そう話しつつ、二人はそっと唇を重ねた。

 

「本丸(うち)で、待ってるよ」

「ああ、明日の晩には必ず帰るから」

 

 眼を閉じた吉野景光の身体が淡く光ると、桜の花弁と化して崩れ、割れた窓から吸い出され、そのまま淡いピンクの光に変わって消えてゆく。

 だから、もう一度江戸川コナンが目を開いた時には吉野の姿は無かった。

 消えた人間に首を捻る彼は、それ故に手の中に残った花びらに唇を落とす安室に気が付かなかったのである。

 

**

 

 翌日。

 安室透が、毛利探偵事務所へ付け届けを持って行っているその頃、諸伏景光は同期三人に抱えられてとある病院に連れ込まれていた。

 ぱっと見は、個人の小さな病院だが、実際は『葛の葉』御用達の特殊な存在も対応出来る病院である。

 そこの院長でもある医者は、景光を見るなり椅子から転げ落ち、そして同期三人と共に来ていた内調国内部部長である木場恭介に詰め寄った。

 

「な、何連れて来とんねん、お前!!!」

「何って」

「幾ら人間体だからって、卵抱えた戸隠山の主を連れ歩くんやないわ! ファントムソサエティに眼ェ付けられたらどないすんのや!!」

「「「うぇ!?」」」

 

 思わず声が上がったのは、松田と伊達、そしてあれよあれよと連れて来られたと思ったら診察室に据えられた景光だ。

 ただ一人、「やっぱり」と言う顔になったのは萩原だ。

 

「あー、なあんとなく、親戚のお姉ちゃんが妊娠した時の眠り悪阻《つわり》に似てたからまさかと思ってたけど。やたら滅多にセロリ食べたがるし変だなーって思ってたんだよねー、吉野は好き嫌い余りないけど、だからってあんなに際限なくセロリ食べなかった筈なんだもん」

 

 ここ数日の食事内容を思い返す萩原を横目に、医者の方は頭を掻く。その顔は信じられないと、大書きされている。

 

「しかも、何ちゅうか元気な御子様と言えば良いのか、未だ卵やで、普通なら自我があるかどうかも微妙やろうに、何でこないに元気に現世闊歩してはるん? 何処の神格との御子ですのん!? つうか、祝言挙げたのほんの二か月前やん、どんだけ相性ええ相手やの!?」

「いや、俺の配偶者は人間です……あ」

 

 ふっと、膝に触れられる感触を覚えた景光は、自身の膝に三歳くらいの子供が縋りついている事に気付いた。

 子供は自分を景光が見ている事に気付くと、にこぱっと笑ってぺとっとその腹に懐き、そしてそのまま姿を消した。

 同じく子供を見た同期三人が、言葉を絞り出す。

 

「あーっと、昔見せて貰った写真に似てたな、あれより更に小さいけど」

「そだね」

「てか、眼の色まんまうちのゴリラのだったな。間違いなくあいつの種だな、他は吉野そっくりなのに」

 

 顔を見合わせた三人は、思わず揃って肩を竦めた。

 その向こう側で、おろおろする吉野の横で「人間だって!」「ンな訳あるかボケ!」と、喚き合う傍目若者の男達の姿があるが。

 

「東錦にどう言う?」

「あいつは大丈夫だろ? 仕事休んで吉野に掛かりきりになるかもだけど。それより『百舌鳥』殿だろ?」

「だよねえ。まさか四ケ月そこそこで懐妊、しかも卵な筈の赤ん坊が三歳児の姿でちょろちょろ歩いてますなんて知らせたら、今度こそ倒れるんじゃね、彼」

「取り敢えず、未来政府をどう黙らせるかだが……」

「そっちは、あー、お兄君に伝えたら、そのまま御先代に抜けるだろうから、大丈夫じゃない? 幾ら脳ミソお花畑でも、空須磨みたいになりたい奴はいないでしょうよ」

「「だな」」

 

 もちろん、本丸へ戻り部下《じゅうぞくしん》達に知らせれば、上を下への騒ぎになったのは言うまでもない。

 今からあるだけのモチ米と小豆でお赤飯を炊こうとする伊達家所縁の面子と長船派を抑え込み、大騒ぎの元にオムツを大量生産しようとする粟田口と短刀の面子を宥め、安産祈祷を行おうとする御神刀達を押し留める事に成る。

 

**

 

「と言う事があってな」

「……はあ、神様だと、男の人であっても妊娠しちゃうんですか」

「まあ、生物学的な事はともかく、何でもありなのが神様って事なんだろうな」

 

 事件から数日後、伊達航こと大島は後輩である高木渉こと衣笠と共に演練場へとやって来ていた。

 勿論、演練場の見回り業務である。

 一応、特命任務中も週一回行っていたが、任務完了が近いと言う事で、元の三日に一回の周期に戻す事となり、今回は同じく警察本丸として動く事に成る衣笠に、見回りのコツを教えるべく大島の見回りに同行させる事に成ったのだ。

 演練場は、ぱっと見は競技施設が四つ並んだ運動公園と言った光景だった。

 ただ、ジャージ姿の人間ではなく、華やかな戦衣装を纏った刀剣男士と、彼らを率いる神職衣装もしくはスーツ、セーラー服の男女が屯している様が、何となくTVで見たコミケ会場のようだなと思う衣笠が居るが。

 

「ここで注意して見ておかねばならないのは、審神者と刀剣男士の関係性だな。

 俺より、お前の方がそちらの適性が高いから判ると思うが、瑕本丸って奴は審神者と刀剣男士の間の結び付きって奴が、おかしくなっている事が多いんだ。

 変に繋がりが薄くなってたり、逆に異常に結びつきが固くなっているのを見付けたら、まずは監査部から向こうの担当を調べさせて、担当が真っ当なら本丸自体の捜査」

「担当が真っ当って、そうじゃない事あるんですか?」

「最近はましになったが、俺達がこっちに連れて来られた頃は、管理部の三分の二が真っ黒だったからな。そもそも吉野が戸隠山の主に成り代わっちまったのも、担当とそこの審神者が刀剣破壊と性的虐待、暴行の常習犯だった所為だしな」

「そんな事が……、だ、いや大島さんも皆さんも苦労なさったんですね」

 

 そんな事を話しつつ歩いていた、その時だった。

 

「いい加減にしてください、私が何をしたと言うんですか!」

「乗っ取り狙いの見習いの癖に生意気よ! 何やっても私の皆はお前に騙されないんだから!」

 

 ちょっとした人だかりが出来ていて、そこから二人の女性の声がしている。聞こえる限りでは、言い争いが起きているようだ。

 慌てて野次馬を掻き分けて前に出てみれば、一応巫女衣装らしいが改造しまくりの身に透かし用の衣装を着た二十歳ぐらいの女性が、標準的な巫女衣装を着込んだ金髪碧眼のやはり二十歳そこそこの女性に向かって喚いている。

 その、喚いている側の女性から伸びる何かが、嫌に不吉に感じて衣笠は眉を顰めた。

 

「大島さん、彼女……大島さん?」

 

 大島は、詰られている金髪女性の方を両眼をかっぴろげて見つめていた。

 視線に気付いた金髪女性がこちらに顔を向け、そして彼女もはっとしたように目を見開いた。

 

「……ワタル?」

「ナタリー、か?」

 

 感極まったように走り出し、飛び付いて来た女性を大島はしかと抱き留めた。

 

「ワタル、ワタル‼ 会いたかった、会いたかったの!」

「すまない、一人にしてすまなかった!」

 

 まるでドラマのワンシーンのような光景に、思わず野次馬達も感動してしまう。

 その事に、今まで金髪女性を詰っていた女は大きく舌打ちする。

 何しろ、今この場で彼女は『悪辣な乗っ取り見習い』と闘う『美しく気高い審神者』として振舞っていたのだから。――周囲から胡乱な目を向けられていた事を、彼女は気付いていなかったが。

 

「~~っ、歌仙!」

「ああ、」

 

 己の主に命じられ、前に出ようとした歌仙兼定の前に、大島の護衛である歌仙兼定・極が立ち塞がる。

 

「今、僕の上役は手が塞がっているんだ、用があるなら後にして貰えるかな? それから、こちらの審神者(きぬがさ)殿から、そちらの審神者殿の纏っている空気がおかしいと指摘を受けた。

 稀に見習いに乗っ取り容疑を言い立て暴行を振るい、尚且つ慰謝料迄むしり取ろうと言ういじましい者がいるそうだが、まさかまだ極前とは言え、『歌仙兼定(ぼく)』が初期刀を務める本丸の責任者ともあろうものが、そんな犯罪に手を染めてはいないだろうねえ?」

 

 演練参加者曰く、その時の『代紋本丸』の歌仙兼定・極の凄み方は、それこそ嫁にちょっかい出された細川忠興の如くであり、九頭龍大神の従属神になって格が上がった事を差し引いても、あの時前に立たされた女審神者の初期刀は気の毒だったそうだ。

 無論、審神者側が専用掲示板にあった乗っ取り見習いの事件を鵜呑みにし、元々自己顕示欲の強かった彼女がたまたま来た見習い研修の女性を詰りいじめていた事が公になり、監査部から重いペナルティと共に創作と現実を混同しないよう徹底的に指導されたそうだ。

 

**

 

「はあ、ナタリーさん、二〇〇年未来に生まれてたんだ」

「何でも、審神者になれば大島様に会える気がされたとかで、幸い霊力が潤沢だったので志望通り審神者の専門学校に進む事が出来たそうですよ」

 

 執務室で書類を裁きつつそう言った小松乙女(はぎわらけんじ)に、答えるのは彼の管狐である薺だ。

 その横から、江戸彼岸(まつだじんぺい)専属の時雨も口を開く。

 二匹と二人は、一連の事件を引き起こした歴史修正主義者を摘発したので、それについての報告書を纏めている最中だ。

 

「そういう意味では、研修先は大当たりと言う事に成りますね。何事も無く研修が終わっていたら、演習場で巡回に当たるかどうかは難しかったかと」

「ばーか、それ大島には言うなよ、物凄い勢いであそこの指導要綱作り上げて監査部に投げ込んでたんだからな、あいつ」

 

 時雨をデコピンで転がし、江戸彼岸は大きく背伸びをする。

 

「それで、朝から大島の奴ナタリーさん、いや茜八重(あかねやえ)の本丸に行ってるのか」

「まあ、脳ミソお花畑なお嬢さんのお陰で、基礎の基礎すら指導を受けてなかったって事で、大島が訪問指導役を分捕って来たんだよねえ。まあ、担当は鈍臭いけどまともだったから良かったけどさ」

「だな。ところで、うちの上司とその婿はまだ散歩から戻らないのかよ」

「そっとしといてあげようよ、ジンぺーちゃん、お互い仕事が立て込んでて、やっと休みになったんだから」

 

 苦笑交じりにそう言う相棒をちらっと見つめ、江戸彼岸は首を鳴らしつつ書類に視線を戻した。

 

**

 

 散歩の予定で堤無津川沿いを歩いていた筈だったが、気が付いたら二人でランニングになっていた。

 途中で雨が降り出した為、二人は慌てて高架下へと走り込んでいた。

 尤も通り雨の様で、空の端の方が明るいので、暫く待てば止みそうだった。

 

「ヒロ、大丈夫か?」

「うん、そんなに濡れてないし、このジャージ耐水性でもあるから」

 

 肩で息をしつつ降谷零が問えば、同じく肩で息をしていた諸伏景光は笑って答える。

 

「梅雨の走りかな?」

「旧暦だと、まだ早い気もするけどね」

 

 静かに降る雨を眺めつつ、二人並んで立つ。

 

 ゴールデンウィークが終わって程なく、江戸川コナンは海外にいる家族の元に帰り、東の高校生探偵こと工藤新一が帰ってきた。

 只、ほぼ一年以上休んでいた為、当初は留年との話もあったが一学期中に出さなかった課題やさぼった試験を全てクリアする事、週末以外の放課後を補習に充てる事を条件に、お情けながら三年生に進級出来たそうだ。

 尤も、警視庁の目暮班は、『エッジ・オブ・オーシャン』の一連の事件の際にまた民間人を巻き込もうとしたと言う事で班を解体されてしまっており――他の警官が居るところで電話で大声でやり取りすれば、否応なしに上層部の耳に入ろうと言うものである――、目暮警部は降格こそなかったものの郊外の警察署に転属になってしまったので、もう工藤新一が捜査現場に呼ばれる事は無いのだが。

 そして、五月の半ばに、毛利探偵事務所も長期休業に入った。表向きの理由は、所長である毛利小五郎に脳血管の病気が見付かったのでその療養とされた。

 当初、休業を理由に師弟関係の解消を切り出そうとした小五郎に向かって、「アドバイザーとして」と、必死に関係継続を願い出た安室透が居る。

 新條強が間に入った事で、何とか関係維持となり、胸を撫で下ろした安室が居る。その代わりと言う訳では無いが、閉じた事務所をそのまま居ぬき状態で借りて、これからは店子と大家の関係になる事になった。

 

「そう言えば、特命任務の終了って、何時だ?」

「もう、ほぼ終わったようなものだけど、書類上は六月一日付けになるよ」

「六月か。ヒロ達が帰って来て、ほんの一年でこんなに色々進むとは思わなかったな」

「俺達も、こんなに早く進むとは思ってなかったよ、最大三年かかる心づもりでいたからね。尤も、結界維持の為にこれからも生活に変わりはないんだけどね」

「生活は、変わるんじゃないか?」

「え?」

 

 零が指差す方を見て、景光はあーっと額に手を当てた。

 そこでは、雑種らしいでももこもこの白い仔犬とじゃれて笑っている、三歳くらいの男の子がいた。

 

「また出て来ちゃったのか、『創(はじめ)』」

「あー、つくづく俺の子だと思うよ、顔立ちは間違いなくヒロ似なのに」

 

 零が仔犬を、景光が子供を抱き上げると、『創』と名付けられた子供の方は嫌々と藻掻いて、母親の手から飛び降りようとする。

 仔犬の方も子供を気に入った様子で、ぶんぶんと尻尾を振っているのを見て、一つ溜息を吐いた景光は己の専任管狐を呼んだ。呼ばれた管狐は、するっと景光の肩に乗った。

 

「竜胆、本丸って現世の動物を連れ込んでも大丈夫かな?」

「あまりお勧めはしませんよ、時間の流れが違いますから、どんな影響が出るか保障出来ませんから。でもまあ、御子様がそこまで気に入っているのを離すのは、私達としてもちょっと」

「何の、吾らが教え諭せば良いだけではありませんか。この仔犬、御子様に気付くとはなかなか見どころのある奴と私は思いますが」

 

 するるっと零の肩に上ってきた雫がそう言うと、二人はどちらともなく目を合わせ、笑い合う。

 

「判ったよ。ほら創、この子はこれから連れて帰るから、ちゃんと卵に戻って寝なさい」

「今日から宜しく、仔犬君」

 

 二人の言葉に、にこぱっと笑って子供は景光の胸に張り付き姿を消し、仔犬の方はぶんぶんと尻尾を振って「あん!」と返事してきた。

 

「さて、名前なんて付けようか?」

「ゆっくり考えようよ、可愛い名前を付けてやりたいし」

 

 そう言い合い、二人は歩き出した。

 雨が止んだ空に、大きく虹が掛かっていた。

 

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