喫煙所で小休止を挟んでいた提督と千歳の下に、はしゃぐ1人の艦娘の姿が在った。
彼女は明石。前線に表立つことこそまずないが、裏方に置いてその能力を発揮する彼女。
だが彼女には、一種の悪癖があった。
一言で言ってしまえば、それは興味の暴走である。
今まさに目を輝かせる彼女を前に提督と千歳は、
今回がその暴走でなければいいな....
と、吐き出した煙を目で追うのだった。
【工廠艦娘と提督用兵装】
‐ 『提督と巡る鎮守府』ロケ前日 ‐
明石「出来ましたよ提督! 提督用兵装です!」バァン!
提督「........提督用兵装?」
千歳「あらぁ......」
所は喫煙所。提督と秘書艦の千歳は執務の合間の一服を入れていた。
実りの秋の終わりが見えそうな少し肌寒さを感じる風が吹く外とは違い、
穏やかな陽光が差し込む喫煙所の中で二人並んで呆けていると、
その静寂を破る様にけたたましく扉が開けられた。
明石「はい! 提督も軍人の端くれ。
自分の身は自分で守れた方が何かと都合がいいでしょう?」
提督「端くれ言うな。まあ、お前の言い分にも一理あるのは認める」
千歳「あら、提督意外と乗り気ですか?」
提督「まあ、四六時中お前たちに身を守ってもらう訳にもいくまいさ。それに.......」
千歳「それに?」
明石「何ですか?」
提督「......いや、何でもない」
千歳「そうですか」
明石「なら早速実験の方始めちゃいましょう! 一度提督のデータを取っておきたいので」
提督「それは別に構わないが.....今日じゃなきゃダメか?」
明石「早い方がいろいろ良いと思いますよ?」
千歳「(そう言えばよく天龍さんたちに稽古をつけて上げてましたね.....
やっぱりお強いんでしょうか?)」
提督「.......」スゥ、フゥ
提督「.....まあ、構わないが」
明石「やたっ! じゃあ先に訓練場に行ってますね!」
千歳「提督.....」
提督「そういう訳だ。俺は少し外す。その間は頼んだぞ」
千歳「あ、はい」
‐ 訓練場 兵装実験室 ‐
夕張「あ、提督が来られましたよ」
提督「ん。お前らも居たのか」
五月雨「私は夕張さんに誘われて.....////」
明石「あ、提督。準備の方は出来てますよ。さっそく始めちゃいます?」
提督「ああ。で、件の武器は?」
五月雨「これですよ提督!」日本刀のような何か
提督「......なるほど? これなら式典で襲われても問題ないという訳ね」
明石「はい! 提督を襲うなら、
大規模作戦や式典の様な警備が少しバタつくときかと思いまして!」
提督「ふぅ~ん......」刀身を抜き状態を確認
五月雨「あ、提督....」
提督「なんだ?」
五月雨「気のせいだったらその、申し訳ないんですけど....」
提督「?」
五月雨「その....少し、痩せました?」
提督「_____」
夕張「明石さん、訓練用の雛型準備出来ました」
明石「了解っ! ささ、提督はこちらへ」
提督「あ、あぁ....」
提督がトレーニングルームに入り、システムが起動する。
提督「実戦なんていつ以来だろうな.....」構え
明石『提督聞こえますか?』
提督「良好だ」
明石『なら良かったです。
ではこれより運用試験を行います。出現する目標に向かって攻撃してみてください』
提督「了解」
空間が歪み、現れたのは駆逐イ級。向かい合った提督と大きさがほぼ同等な程度である。
提督「まずは一撃___」バチィッ 右目に赤い稲妻が閃く
五月雨「え?」
と提督は刀を横に軽く薙いだ。
その瞬間、周囲を劈くほどの金切り音が響き渡った。
五月雨「ッ!!?」耳押さえ
夕張「きゃっ!?」
明石「!?」
轟音が止み窓から様子を伺うと、
目標のイ級はというと健在で、提督の握っていた軍刀は粉々に砕け散っていた。
提督「...........」ボロボロの刀を見やり
‐ コントロールルーム ‐
夕張「あ、明石さん....」
五月雨「.....失敗、ですか?」
明石「..........」
明石「(おかしい。提督のあの様子だと普通に扱っただけ。
刀を扱う天龍さんや伊勢さんや日向さんにも
試してもらったにも拘らず壊れなかった刀が壊れるはずが....)」
提督『おい明石。これはどういうことだ?』ザザッ
明石「......こちらでもさっぱり.....ところで提督、どのくらいの力で振りました?」
提督『普通にだ』
夕張「ふ、普通に薙いでああなります.....?」
五月雨「........あ、そう言えば」
夕張「どうしたの?」
五月雨「いえ、先日提督の部屋にお邪魔した時に
武器が仕舞われているのを見たことがあった気がして...」
明石「それホント!?」ガシッ
五月雨「!? え、えぇ.....多分」
提督『おいどうした?』
明石「提督、正直に答えてください......あなた、何者ですか?」
提督『.......俺は、俺だが?』
明石「そ、そんなっ! .......いえ、質問を続けます。
貴方は提督になる前、何をされていましたか?」
提督『......悪いが、その質問には答えられないな』
明石「何故ですか?」
提督『守秘義務が課せられてるからだ』
明石「誰から?」
提督『.....大本営からだ』
明石「.......最後に、五月雨ちゃんが
提督の部屋で武器を見たことがあると言っていましたが....」
提督『.....』
明石「答えて、くれないんですね......」
提督『.......』
明石「お時間を頂戴し、誠にありがとうございました。
後日詳細をお話いたしますので、今日のところは執務に戻っていただいて結構です」
提督『そうか.....』ツカツカ、ガチャ、バタン
夕張「....明石さん?」
明石「...............」
五月雨「あ、あのぉ.....?」
明石「提督の部屋......」
夕張「?」
明石「提督の部屋に行ってみましょう。何かあるかもしれません」
五月雨「わ、私もです?」
明石「現状武器を見つけたのは五月雨ちゃんだけですからね。共犯になってもらいますよ」
五月雨「えぇ.....」
‐ 庁舎 ‐
提督「.........」スタスタ
提督は速足で執務室へ戻っていた。
提督 バタンッ
千歳「随分荒々しい帰還ですね?」
提督「.....ッ..」脂汗ダラダラ
千歳「.....提督?」
提督「なぁ......」
千歳「はい」
提督「......お前が着任したころと比べて、俺は痩せて見えるか....?」
千歳「え? う~ん.....どうですかねぇ.....
言われてみれば確かに、痩せたというか......
その.....老けましたか?」
提督「_____ッ!?」
千歳「て、提督.....?」
提督「......そうか...」
千歳「気にしていらしたんですか!?
ああ、そうとは知らずに.....す、すみませんでした提督!」
提督「い、いや.....いいんだ......」顔面蒼白
千歳「顔色が悪いですよ提督!?」
提督「え? あ、あぁ.....」額を拭う
千歳「今日は私が残りの仕事を請け負いますから、
提督はゆっくり休んでください!」提督を執務室から押し出す
提督「わ、分かったから押すな...」
<バタンッ
提督「.........」
提督「....取り敢えず、帰るか...」コツ....コツ.....
‐ 提督の部屋 ‐
<バタン
提督「..........」
横に薙いだ瞬間に発生した軍刀の変質について。
あちらでは把握されていないが、俺にはわかった。
アレは、俺本来の戦い方____AF兵の戦い方だ。
俺の体は、人間的には既に死んでいる。
艦娘が前線配備される少し前の戦いで全身がバラバラになっているからだ。
それなのに何故、今こうして行動していられるか。
それは俺の体に流れる深海棲艦の血が無理やり外装を形成しているからに他ならない。
毎日投与しているAF細胞抑制剤は、過剰な再生を止めるために打っていたものだが、
意図せぬところでAF化の第1段階が現れるようでは、何時暴走するかわかったものではない。
提督「........ッ...!」
彼は壁に背を押し当てながら床へへたり込んだ。
提督「....もう、限界か...」
そう漏らした彼の瞳には、普段であれば見ることのないほどに涙が蓄えられていた。
その白髪が増えた姿は、
机の上にある着任当時の写真より数段増えてまるでメッシュ柄のようになっていた。
提督「クソ.....畜生.....ッ.....!」
その涙は悔しさか寂しさか、あるいはその両方か....
誰にも見せたことのない様な顔を、彼はその場で晒していた。
提督「何で俺なんだ.....何で今なんだ.......ッ」
自分の出生をこれ以上恨んだことはない。
無限に繰り返したいほどの幸せをやっとの思いで手に入れて、
その幸せが永遠に続きそうと錯覚した瞬間に奈落に突き落とされる様な感覚。
今の彼の心境はそういう状況だ。
提督「クソ....ッ 畜生ぉ......ッ...!」
何時もの毅然とした態度からは想像もつかないほど、今の彼は泣きじゃくった。
その嗚咽が外に漏れだすことも気にする余裕もないほどに。
‐ 2200 提督の部屋 ‐
提督「........」フゥ
提督「.............」カラン...
提督「......もうじき、そっちに逝く.....もう少しだけ、待っててくれ...」グイッ
兎に角酔いたい気分だった。
そうでないと、子供のように騒ぎまわり無様な姿をさらす羽目になってしまいそうで。
酒が回り悲しみが薄れて来てはいるが、頭は妙に冴えわたっていた。
今なら、何をすべきか的確に把握できていると言って差し支えないと言えるだろう。
提督「.........最期に...別れの挨拶くらい、入れとかねぇとなぁ...」チラッ
目をやった先は鎮守府内の建物すべてに繋がる内線。
建物というからには艦娘たちが住まう住居も例外なく通じるし、
夜中用事があれば使うものもそれなりに居るだろう。
.....チャットが全艦娘に普及した今では、過半数以上がネットでやり取りをしているだろうが。
提督 ピ ポ パ.......トゥルルルル...
青葉『はい、青葉型社宅』
提督「青葉か? 提督だ」
青葉『おや司令官。こんな夜に珍しいですねぇ。何か御用事ですか?』
提督「まあな....急な話なんだが、明日の昼過ぎから撮影を頼めないか?」
青葉『別に構いませんが....何か面白い企画があるんですかぁ?』
提督「面白いかはわからんが.....何、特別な準備は要らんさ」
青葉『何をするかだけ聞かせてもらえませんか? あと時間と』
提督「ただ鎮守府をフラフラ歩くだけだよ。時間は....13時ごろでどうだ?」
青葉『ふむふむ....了解しました!
では13時ごろに庁舎で待ち合わせということでいいですか?』
提督「ああ、ソレで構わない。.....時間を取らせて悪かったな」
青葉『いえいえー! ではおやすみなさーい』
提督「ああ。おやすみ」ガチャ
提督「......フゥ....」ギシィ...ッ
提督「........後どれくらい耐えられるか...1週間は持つか?」カラン..
提督「だとしても....だ」チビ
提督「........いや、止そう。
今はただ....あいつらにどう感謝を伝えるか。
それだけを考えるとしよう....」コト
彼の手は何時になく震えていた。
それは孤独からか、あるいは恐怖からか....。
それを知っているのは彼だけであり、慮れる者はこの場には居ないだろう。
......同じ苦しみを味わった者は、既にこの世に居ないのだから。
【明石の提督の身元調査報告書】
先日提督用の兵装を開発し、提督にその試験の立ち合いをお願いしました。
その結果、提督の振った兵装は粉々となり、その兵装は修復不可能となりました。
この兵装は提督に使ってもらう前段として、
天龍さんなどの艦娘方にお手伝いいただいて調整した代物です。
故に不可解でしかない。何故人間である提督が1振りしただけでそれが粉々に壊れるのか。
それから私は提督の私室に潜入し、手掛かりを集めることにしました。
五月雨ちゃんに共犯になってと土下座までしたんですけれど、
彼女は「私は直接聞きますから....」と協力を拒まれてしまいました。
今日は運よく提督が外出しているため容易に侵入する事が出来ましたが...
....タレコミによれば、
何か武器があったという話だったけれど、何処に隠されているのでしょう?
明石「.....コレ、ですか......」E:暗視ゴーグル
‐ 『提督と巡る鎮守府』ロケ当日 2120 ‐
クローゼットに乱雑に置かれた武器を発見しました。
見たところ普通のアーチェリーと矢、拳銃、それに直刀。
明石「.....趣味でしょうか?」アーチェリーの弦を引っ張る
明石「アレ?」弦を引っ張ろうと躍起
明石「アレレ.....ッ!?」
戦闘向きでないにしても艦娘である私が引けないほどに固い弦に、私は四苦八苦した。
明石「ゼェ.....これは....? このトリガーは一体___」
<パチッ
??「そこで何をしている?」
明石「__!?」ゴトッ
提督「別にそんなに驚くことはないだろう? ここは俺の部屋だ」
明石「(しまった!?)」
提督「.....なるほどねぇ? 俺が何者か。この間聞いたときに答えなかったから強硬手段か」
明石「アハ、アハハハハハ......察しが良くて助かります」
提督「で? 分かったか?」
明石「...........」
提督「ハッ。その様子だと全然みたいだな」
明石「.....恥ずかしながら...」
提督「まあいいさ。エンジニアにとって好奇心は切り離せないものだ。
......いい機会だし、そこの椅子に座れ。酒くらい出す」
明石「そ、そうですかぁ?」ガタガタ
提督「.......」
提督「ウィスキーは大丈夫か?」
明石「あ、はい....」
提督「ならこれでも出すか....」
提督「ほれ」コト
明石「あ、ありがとうございます....」チビッ
提督「.........」グビッ
明石「.....あの」
提督「あぁ?」
明石「.....提督はその....怒ってないんですか?」
提督「何を?」
明石「私がその....提督の過去を詮索しようとしたこと....」
提督「それに対して俺が怒った場合にメリットがあったなら怒ってただろうな?」
明石「そうですか.....」
提督「まあ尤も?」スッ
明石「___へっ?」
提督「俺はその腹いせに、今ここでお前を犯すっていう選択肢がある訳だが.....」ペロリ
明石「_____ッ!!!!!?」ボヒュッ
提督「目を閉じろ」
明石「(うわぁぁぁぁぁぁぁぁ
おとなのかいだんのぼっちゃうぅぅぅぅぅぅきゃーーー!!!)」>_<
明石「____!!!? ................アレ?」
提督「ぶふっ! ブァッハッハッハッハッハッハッハ!!」机バンバン
明石「え、提督.........!? だ、騙したんですか!!!?」
提督「ま、まさかwwww本w気wにwすwるwとwはw思wわwなwんwだwwwwwww」
明石「~~~~~~~~~~~ッ!!!!!?」赤面
提督「ヒィwwwwヒィwwwwwww悪かったってwwwwww」
明石「許しませんっ!」プイ
提督「悪かったからwwww」
明石 ムスー
提督 ほっぺにチュッ
明石「..........? ぇ?」
提督「これで許せ。頼む」ニコリ
明石「ぇ 今提督 あぇ? う、うそぉぉ......」ヘナヘナ
提督「顔が赤いな。酔いでも回ったか?」
明石「......提督って、時折意地悪ですよね。ワザとですか」
提督「はて? 何のことやら.....残念ながら、朴念仁で唐変木な俺には見当がつかんね?」
明石「もう.....そういうことにしておきます」スッ
提督「なんだ、帰るなら部屋まで送るぞ?」
明石「お構いなく......
(今送られたりなんかしたら、私が貴方を襲いそうですから)」
提督「.....そうか。じゃあまた明日」
‐ 2210 明石の部屋 ‐
明石「全く......」脱ぎ脱ぎ
脱いだ服に妙なふくらみを感じて手を伸ばす。
中に入っていたのはUSBメモリ。こんなものをポケットに入れておいた覚えはない。
なら一体いつ? 考えられるとすれば、それは......
___チュッ__
思い出すだけで顔が熱くなる。
明石「全く.....貴方という人は本当に...狡い人です」
自室のノートPCのUSBハブにメモリを挿して内部の情報を確認する。
『USBの情報』
被検体No.0001 識別呼称:甲木 燈(カブラギ アカリ)
種族:AF(深海棲艦)+人間(日本人)のハーフと思われる
体長:175㎝
血液型:同人類のAB+型と非常に酷似した性質を持っている
経緯
地点Oにて発生した住民失踪事件(200x)の容疑者として遭遇。
遭遇時点での見た目は以下画像ファイルに添付。
画像の通り人間というにはあまりに血色が悪く獰猛であったため、
大型動物用のテーザーガンで気絶させた後捕縛。
その後採血やMRIなどの検査を通して被検体は人間の特徴と未知の身体構造を持っていることを確認。
仮にこの器官を"AF器官"とし、以下研究を急がれたし。
・AF器官の役割
・血中に増殖し続ける未確認の細胞の詳細
AF器官の役割
研究によるとこの器官は血中に流れるAF細胞を生成する器官のようだ。
この器官により生成されるAF細胞により身体能力を飛躍的に向上させ、
地上でも生活できるように適用出来たものとみられる。
またこの細胞の働きにより瞬間的に血液の高質化を確認。
住民の殺害にはこの血液の高質化を利用した刺突したと仮説を立てる。
AF細胞の転用について
被検体の身体能力テストの結果、
全ての試験で人間の能力限界を大幅に超えていることが確認された。
また、水上を滑るように移動できることを確認したため、この能力の軍事転用を提案。
もし実用化が為されれば、
核を持たない我が国の切り札的存在になり得る可能性も視野に入れ、
急ピッチでの研究を要求する。予算は惜しまない。
AF細胞の移植に伴う拒絶反応の危険性
状態が良いものでエボラウィルスに感染したような状態に陥ったのちに死亡。
酷いものでAF化して数分後に死亡。その際に一部機材の破損。
AF化した被験者の体内から"砲"のような物を発見。No.0001に扱わせたところ砲撃に成功。
もしかするとAF内蔵の武器を扱えるようになるやもしれん。実験続行。
髄液、血液、皮膚、臓器の一部の移植を試みた結果、
髄液移植による転用が最も成功率が高い様だ。
但し、採取に失敗した研究員が転化。
後に立ち会っていた数名の研究員が死亡した。増員を要請する。
対AF部隊の組織案
No.0001の髄液を移植した被検体100名を対AF部隊として軍事転用を提案。
武装として転化した被検体の外装を鍛えて作らせたものを。
試験として作らせた軍刀による装甲の破壊は実証済み。
またAF細胞同士の食い合いによる装甲の融解をNo.0001の血液を用いることで確認。
AFの装甲に現代兵器が通らないのはこのせいか?
対AF部隊甲木迎撃大隊設立
No.0001改め、甲木燈を大隊長に据えた対AF部隊を設立を宣言した。
この部隊の設立は第1級軍事機密とし、民間人及び将官クラス以下の全自衛隊員に秘匿とする。
甲木遊撃部隊を起用した横須賀近海の奪還作戦
安定した国営には安定した指示系統の樹立が火急である。
甲木迎撃大隊員が計10名を下回ったため
甲木遊撃部隊と名を改めここに第一次反攻作戦の実施を宣言するものとする。
以下作戦実施区域
幌筵、単冠湾、大湊、松島、横須賀、呉、柱島、宿毛湾、鹿屋、岩川、佐伯湾、佐世保、舞鶴、佐渡、男鹿。
アパッチを利用してAFの目撃海域まで飛行の後部隊を投下____
_____________
___________
_________
明石はそこまで読んで、PCを閉じた。
明石「........これ以上は...見るに堪えませんよ......ッ...!」ポロポロ
今まで共に戦ってきたあの提督が、実は我々が戦っている深海棲艦のハーフ。
その事実が明石の心に痛烈な一撃を見舞った。
もし本当にそうだったとしても提督は提督であることに変わりはなく、
彼が本当に自分たちの身を案じてくれているのは彼女達が一番感じているところだ。
明石「こんな....っ...こんな重荷背負わせて....一体何がしたいんですか.....!」
‐ 2200 提督の部屋 ‐
提督「..........」カラン...
明石が帰った後、静けさが支配する部屋で彼は独り、呑みさしの酒を舐めていた。
明石に自身の素性の一切を託した以上、鎮守府全体に知れ渡るのも時間の問題か....
いや、彼女がそのような軽率な行動をとるとも思えないし、
何より彼女自身が情報を受け止めきれるかもわからない。
もし彼女が見た目以上に感情的なタイプなら、
暫くの間は激しい疑心暗鬼に駆られたり、逃避に走るかもしれない。
.....まあ、それはそれで一向に構わないのだが。
いずれ、向き合わなくてはならない時が確実にやって来る。
その時の準備の一助となればという老婆心であのUSBを託したのだ....
提督「..........」
ふと脳裏に過るのは今晩の撮影のことだ。
先日の大規模作戦から3日ほどの時間だが、鎮守府全体は落ち着きを取り戻し、
各々が娯楽に心を躍らせ、あるいは修練に精を出す日常が回帰していた。
あの子.....五月雨は、今回の作戦で大きく成長したはずだ。
サポートありきだとしても、大規模作戦の司令官を務め、
作戦中の指示に無理な出撃などはなかった。
都合7カ月ほどだが、連日のように秘書艦を務めさせた甲斐があったというものだろう。
_________________________________________
五月雨「あ"っ、わたしこ"そぉ"......っ!
て"い"と"く"の"ひし"ょかんをつ"と"められて"ぇぇ....!
えぐっ....! ほんと"うに"ぃぃ...!
こっ、光栄に思って"ます"ぅぅぅぅ!!!」
提督『これで......思い残すことはない』ボソッ
青葉「いやぁ~....っ、感動ですねぇ.....!」グスン
_________________________________________
提督「.....フッ」
彼女達が真の意味で言葉の意味をくみ取れているかは知れないが、
我ながら部下に恵まれたものだと自嘲する。
五月雨を筆頭に千歳、摩耶、比叡、赤城、衣笠、五十鈴を含む皆が居れば、
ここにはもう、彼という存在は必要ないのかもしれない。
そのことが堪らなく誇らしく、それと同時に堪らなく寂しい気持ちにもなる。
その寂しさを紛らわせるように葉巻に手を伸ばし、
提督「........」パチン クリックリッ ボォォォォッ!
吸い口を作り、早速火を点して一服。
一連の動作にも慣れたものだが、この動作が悠々と続けられる時間は残り少ない。
提督「.......あと1週間、あと2週間....」スゥ
提督「...........永遠に」ハァ.....
続けばいいのに。
口から漏れ出そうになったその言葉を煙に乗せて、静かに吐き出す。
ここに来る前から分かってはいたが、いざ直面すると震えて判断を誤りそうになる。
提督「.....老いたなぁ」
AF兵として前線で戦っていたころは、そういう神経が麻痺していた。
日常的に人が死ぬ中ではある意味必然的とも言えることだが、
ここでの生活は彼とって、些か"暖か過ぎた"。
提督「贅沢を知ったその時から、猿は人になり、人は神を目指そうとする......
じゃあ、俺は何になるんだろうなぁ......やはり、悪魔か。あるいは......」スゥッ
瞳を閉じれは目の前に愛してやまない彼女達が居る。
たったそれだけのことだが、今はそれさえあれば神にさえ成れてしまえそうな気がする。
便宜上愛という言葉を使ったが、
その感覚がない彼からすれば"愛"は未知以外の何物でもなかった。
提督「でも....」
この気持ちが愛と呼べたなら、なんて素晴らしいのだろう。
提督「......あいつらも、同じ気持ちなのだろうか....」
もし同じ気持ちなのなら、彼のこの願望は正当化されるのだろうか。
提督「......フッ。愛する人の腕の中で死ぬ。
小説か劇の大袈裟な比喩と思ってたのに、これじゃあ馬鹿にも出来ないな」
今の心境、それを言葉に表すのならこうなる。
『彼女達に、殺されたい』
最も愛しているからこそ。
自らの手で自分という存在を消させて決別を付けさせる。
何の感慨もなく自分の死を知らされるのではなく、
死を目の前に突きつけることで前へ送り出そう。
提督「これがきっと....お前たちの助けになるだろうと....
今だけは、信じていたい.....」
これが、最期の大仕事だ。
『対AF部隊 武器規格』
AF結晶
特尉または回収したAFの血液より生成したAF細胞の結晶体。
基本規格
*実際に攻撃に用いられる箇所にAF結晶を用いること。
*長時間の戦闘でも耐えられる耐久性と他兵士との汎用性(一部戦略兵器を除く)
アーチェリー(コンパウンド:戦略兵器)
グリップにトリガーが取り付けられた特製のコンパウンドボウ。
使用が特尉にのみに限られているが、
その理由はトリガーを握った際にグリップから飛び出る3本の棘にある。
この棘には目視出来ない程度の細やかな穴が多数空いており、
そこから特尉の血液を一定量吸収して弓の牽引力を引き揚げさせる効果がある。
これにより瞬間時速は超音速に達し、
並の深海棲艦なら1撃で粉微塵に出来るほどの威力を出す事が出来るようになる。
以下特尉使用時の性能
2204ポンド(約1t)+矢(AF結晶配合カーボンセラミック+:23g)、引き尺(0.72m)
予想加速度:553.88m/s = 1994km/h ※空気抵抗を考えないものとする
矢
上記のコンパウンドボウ用の矢。
*焼夷:着弾後、矢先端部に仕込ませたAF結晶粉末を配合した火薬が爆ぜ、
体内を焼き尽くすことを目的とした矢
*三式:上空に射出後、
一定以上の圧力がかかった時に炸裂して内蔵されたAF特攻針が降り注ぐ
*徹甲:表面にAF結晶配合の炭化チタンがコーティングされた貫通力を意識した矢
直刀(汎用兵器)
特尉をはじめとする対AF部隊用に開発された近接武器。
混戦状態が予想されるAFとの戦闘でも取り回しが楽なように刃渡りは短めに設定され、
また特殊技術により超高密度でありながら軽量なAF特攻のブレードを実現した。
刀身(AF結晶配合炭化チタン:60㎝)、グリップ20㎝
重量:700g
拳銃(リボルバー:汎用兵器)
通常のリボルバーを参考に、マガジンにショットガンの弾を詰められるようにしたもの。
銃弾はスラッグ散弾問わずAF結晶を配合したものを支給し、
スラッグ18発に散弾54発をそれぞれ常備させること。
お休みがほちぃ(切実)
彼是1カ月ぶりくらいの投稿です。
何かここに書くことの大半が『疲れた』とか『休み欲しい』とかそう言ったことになっているような気もしますが、欲しいモンは欲しいんじゃい!(情緒不安定)
さて本題に移りましょう。
今回の話で提督こと、甲木燈中将の素性の一切がほとんど公開されました。
勿論まだまだ公開しきれていない個所もありますが、
研究者視点で言えば、これ以上の情報は望まないでしょう。
前回予告した通り、ここから物語は加速度的に絶望へと転がっていきます。
絶望。天望。
匂わせ程度だったシリアスが、ここから目出し帽を外し、表舞台へと顔を出します。
もちろんこれまで通り茶番を挟んだりしながら、
シリアス疲れしないような投稿をして行くつもりです。
終焉へと向かう物語。その結末と経緯。ご期待ください。
ではまた次回。