そんなお話です
「んっ……あっ……」
都内にある某大学。その大学にある講義室の一室で、甘い女性の嬌声が響いていた。
講義室には、西日に照らされた二人の女性がいる。
一人はほとんど裸で、もう一人はその肌の女性の体を背後から抱きしめるように撫で回している。
二人がしているのは、紛れもなく性行為だった。
「あっ……そこ……です……小糸先輩……」
裸の女性が言う。
名前を呼ばれた女性――小糸侑は、そのかすれた声を聞くと、ニヤリと妖しい笑みを浮かべた
。
「そこ? 一体どこの事? 言われないと、分かんないな」
「んっ……そこじゃない……先輩の意地悪……」
「ほら、ちゃんと言ってくれないと、私分かんないよ?」
そういいながら侑は裸の後輩の体をあちこち撫でる。
その手付きは慣れたもので、的確に後輩の敏感な場所以外を撫で回す。
「んんっ……! だから……その……アソコ……」
「アソコ? アソコって、どこ?」
「……ヴァ……ヴァギナ……です……ヴァギナを……お願いします……」
「……なるほどねぇ、でも、嫌」
そう言いながら侑は、今度はその後輩の胸を揉みしだく。
「んひっ……! ど、どうして……!?」
「私、ヴァギナなんて上品な言い方よりも、もっと下品な言い方のほうが好きだから。だから、あなたが下品な言葉を口にするまで、私、そこを触ってあげない」
侑は胸を撫で回しながら言う。その指使いは、見事に後輩の敏感な部分を避けており、必要以上の快楽を与えないようにしていた。
「下品な……言い方……」
「そ。どんな言い方かは自分で考えてね。私から教えたらつまらないでしょ?」
「は……はい……」
後輩は胸を撫で回されながらも必死に考える。その様子を、侑はニタニタと笑いながら見ていた。
「えっと……その……」
「ほら、早くしないと日が暮れちゃうよ? そうしたら、私、帰っちゃうよ?」
「っ!? ま、待ってください! い、今答えますから!」
後輩が焦る表情を見せる。その顔を見て、侑はクスリと笑う。
「その……こ……」
「え? なんだって?」
「オマンコっ! 私のオマンコ、いじってくださいっ!」
「よく言えました」
後輩が叫んだ瞬間、侑は片手を胸から後輩の秘部に移し、割れ目に指を突っ込んだ。
「あひぃっ!?」
「ふふ、大洪水。随分と欲しかったみたいだね」
「はっ、はいっ! 私っ! これがすっごく! 欲しかったっ!」
「そう、素直でいいね」
「んっ! あっ! あはあっ!」
侑は後輩の秘部をぐちゃぐちゃにかき回す。それに合わせて、後輩が嬌声を上げる。
そして、そうして侑が後輩の秘部を弄んでいる間に、後輩はどんどんと昂ぶっていき、そして――
「あっ、ダメです! わ、私、イ、イッちゃ……!」
「いいよ。イっちゃって。思いっきり、イっちゃっていいんだよ」
侑は耳元で囁きながら、ぐいと指を秘部に深く挿入した。
「あっ、あああああああああああああああああああああっ!」
その瞬間、後輩は大声を上げて、達した。
「こ、小糸先輩。今日はありがとうございました……!」
事後。
服を着た後輩は侑に頭を下げる。その後輩に、侑は微笑みかける。
「ううん、大丈夫だよ。また、しようね」
「は、はい……!」
侑がそう言うと後輩は嬉しそうに頷き、部屋を後にする。
そして、後輩が講義室からいなくなるのを確認すると、侑は側に置いてあった携帯電話を取り出した。
「ふふ……簡単な子」
そして、携帯電話のメール受信箱を開く。そこには、様々な女性の名前が並んでいた。
「ふう、随分来てるなぁ。今度の相手は誰にしよ。あんまり期間開けすぎると拗ねる子いるからなぁ。でも、期間が短かったらそれはそれで勘違いされちゃうし……」
侑はそんなことを言いながら、スケジュール表を取り出して確認しながらメールに返信を打っていく。
それは、どれもデートやセックスの約束の取り付けだ。
慣れた手付きで鼻歌を歌いながら文面を打つ侑。
そうしてすべてのメールに返信を送ると、侑は講義室から出ていく。
そのときだった。
「随分とご機嫌そうじゃない」
講義室を出た瞬間、侑に話しかけてくる声がした。
その声の主は、佐伯沙弥香。侑とは高校時代から先輩と後輩の関係を続けている女性である。
沙弥香は講義室の扉のすぐ横の壁に背をもたれさせて立っていた。
「あ、沙弥香先輩。どうしたんですか? こんなところで」
「どうしたもこうしたもないわよ。あなた、また新しい後輩に手を出したでしょ」
「ええまあ、そうですけど」
「はぁ……」
沙弥香は呆れたようにため息をつく。一方侑は、あっけらかんとした笑顔を浮かべていた。
「あなたねぇ、一体何人の女の子に手を出せば気が済むのよ。もう二桁は越えているでしょ。そのうち刺されるわよ、あなた」
「だって、しょうがないじゃないですか。みんな、かわいいんだから」
クスっと笑って言う侑。
そんな侑に、沙弥香は厳しい視線を送る。
「あなたね……」
「それに……」
侑が笑顔のまま沙弥香に近づく。沙弥香はその侑から身を引こうとするも、壁に背をもられされていたため動けない。
「沙弥香先輩だって、人の事言えない癖に」
侑はそう言いながら、服越しに沙弥香の胸の乳首を弾いた。
「んひっ……!?」
「あはっ、ちゃんと私の言った通り、乳首にピアスつけたままにしてくれているんですね。ということは、こっちも……」
侑の手が、今度は沙弥香の股に伸びる。
「ちょ、やめ、あっ……!」
「ふふ、ショーツ越しにも分かりますよ。沙弥香先輩が、ちゃんと私の言いつけ通り、クリピアスつけてくれていることを」
「こ、これは……!」
赤面する沙弥香。
そんな沙弥香に、侑はニタリと笑って体を近づける。
「私にあれこれ説教しながらも、快楽に逆らえない、そんな沙弥香先輩の事、好きですよ」
「あ……あなたの好きは……軽すぎるのよっ……! んんっ……!」
乳首とクリトリスのピアス両方を責められた沙弥香は、必死に声を抑える。
そんな沙弥香の顔に侑は顔を近づけ、唇に自分の唇を重ねる。
「んっ……!?」
「んっ……あっ……んあっ……」
沙弥香の口の中に舌を入れる侑。
なすがままにされる沙弥香は、口内や体を侑の好きなようにされてしまう。
「んんっ……! んんんんっ……!」
「んっ……はっ……んはっ……!」
侑がようやく口を離す。その侑と沙弥香の口の間には、よだれで橋ができていた。
「はあ……はあ……!」
沙弥香は腰が砕け、その場に尻もちをつく。
「ふふっ、相変わらず、美味しい」
一方、侑はニヤリと笑いながらくるりと回転し、沙弥香に背中を見せる。
そして、振り返って言う。
「それじゃ、沙弥香先輩。今日はここまでです。沙弥香先輩と寝るのはまた今度で。あ、また何か思いついたらメールしますから、そのつもりで」
そう言って侑は沙弥香の元から離れていく。
そんな侑を、沙弥香は顔を赤面させながら見つめることしかできなかった。
◇◆◇◆◇
「小糸先輩! どういうことですか!」
後日のことである。侑は、先日体を交わらせた後輩から呼び出されていた。
「ん? どしたの?」
「どうしたじゃありません! 先輩、私以外にもいろんな人と関係を持ってるって聞きました! それは本当ですか!?」
後輩は明らかに怒りを露わにしている。
一方、侑は、笑顔のままで口を開く。
「うん。そうだよ?」
「なっ……!?」
あまりにもあっけらかんと言う侑に、後輩は言葉を失った。
対して、侑はやはり余裕な態度を崩さない。
「私、他にもいっぱい女の子と付き合ってるよ。あなたはもう何人目になるかなあ。十人から先は面倒で数えてなくて」
「……っ! そ、そんな……! 小糸先輩が、そんな不誠実な人だったなんて……!」
「そうだねー。確かに不誠実だね。でもね」
そこで、侑は怒り心頭になっている後輩と距離を詰める。
そして、すぐさま後輩の手を掴み、そこからすすすっと手を体に伸ばしていく。
「体だけの関係で、何が悪いの?」
「は……?」
後輩が侑の言葉が信じられないと言ったような顔を見せる。そんな顔ですら、侑は楽しんでいるようだった。
「だって、あなたは気持ちよくなれて、私は女の子と触れ合える。これの何が悪いの?」
「な、何がって……」
「確かに最初にあなたに声をかけたのは私。でも、それに乗ったのはあなた。その時点で、あなたは私とそういう関係になることを認めたようなものだよ?」
「そ、それは! 小糸先輩と誠実な関係になれると思って……!」
「誠実? ふふっ!」
そこで、侑が馬鹿にするように吹き出した。後輩はその侑の態度に驚く。
「な、何がおかしいんですか!」
「いい? この世に誠実なお付き合いなんてないの。結局は、相手を意のままにするかされるか。気持ちいいかよくないか。それだけなの。誠実なお付き合いなんて、結局幻想みたいなものだよ」
そう言う侑の手は、いつしか後輩の腰に回っていた。
侑はそのまま後輩を抱き寄せる。
「っ!?」
「ねぇ、無理にとは言わないよ? 私が嫌になったなら、私の元から去ればいい。でも、あなたは忘れられるのかな? 私と交わる、楽しさを」
「交わる……」
「そう。いいじゃない。お互い体だけの関係でも。それが一番人間関係で傷つかない理想的な関係だと、私は思うんだけどな。私と付き合ってくれている子は、みんなその関係を受け入れているよ? だから、さ……」
そして、侑は後輩の耳元で囁いた。
「あなたも、私のものになってよ……」
その囁きはあまりにも甘く、衝撃的で、後輩の頭は麻薬でも打ったかのようにぐわんぐわんと揺れる。
そんな後輩に、もはや回答は一つしか残されていなかった。
「……は、はい……」
「うん、よろしい」
そう言って微笑む侑の顔は、とても明るいものだった。
◇◆◇◆◇
「んっ! あっ! あっ! あっ!」
また別の日。
侑は、自宅で沙弥香と体を交じり合わせていた。
ベッドの上で両者裸になり、侑が沙弥香の体を後ろから抱くような態勢になっている。
沙弥香の体には、乳首とクリトリスの両方にピアスが開けられていた。
「ふふっ、沙弥香先輩、相変わらずかわいい声を出しますね」
「んっ、う、うるさいっ……! あっ……!」
沙弥香の弱いところを的確に攻める侑。
その度に、沙弥香は甘い声を出す。
「んんっ……! あ、あなた……いい加減、女の子を増やすのやめなさい……!?」
「あら、行為の最中に説教ですか? ムード台無しになるからやめてくれませんかね、そういうの」
侑はそう言って、沙弥香の胸のピアスを引っ張った。
「あひぃ!? ……だ、黙らないわ……だって、あなた、燈子に振られたこと、まだ引きずっているんでしょ……?」
「っ……!」
そこで、侑の手が止まった。
沙弥香は、この機を逃すまいと、説得を始める。
「……あなたが燈子にすごく傷つけられた事は知ってる。それで、あなたが一時期かなり追い詰められていたこともね。だからって、こんなやり方で自分の心を慰めようとしたって、虚しいだけよ」
「…………」
「あなたがやっていることは結局その場しのぎに人を傷つけているだけ。そんなの、いつか破滅がやってくるわ。だから、今すぐにでもこんなことは――」
「うるさい」
侑は、そう言って暗い表情で沙弥香のクリトリスのピアスを急に引っ張った。
「んぎぃ!?」
「そんな事、分かってるんですよ。でも、今の私にはこれしかないんです。他人を弄ぶことでしか、人と繋がっている実感がしないんです。そもそも、沙弥香先輩が私に何かを言える立場ですか? 私を下手に慰めようとして、そのままずるずると私の与える快楽の虜になって。そんな人の説教なんて、頭に入ってこないんですよ」
「んっ!? あっ!? ああああっ!?」
厳しい表情をしながらも、沙弥香の性感帯を攻める侑。
その度に、沙弥香は言葉を発することができないほどの快楽に襲われる。
「それともなんですか? 沙弥香先輩は私を愛してくれるとでも言うんですか? 無理ですよね? だって、沙弥香先輩だって未だに燈子先輩の事、引きずってるんですから。私に対して新しい恋を見出す事なんて、できるはずないんですよ」
「あひっ!? んひぃっ!? んんんんんんぎぃっ!?」
「それに……私にも人を愛することができない。一度は知ったはずなのに、今は愛するという感情が分からない。多分、私は一生人を愛せないまま終わる。そんな私のせめてもの他人とのつながりを、奪おうとしないでください」
「そ、それは……あああああああああっ!」
「だから先輩……先輩は、私のかわいいオマンコ人形でいてください。私の、私だけのための……」
「こ、小糸さ……」
「そのためにも……さあ、イってください。先輩」
侑は、その言葉と同時に、沙弥香の秘部の中に指を入れ、かき乱した。
「あっ!? そんな急に……!? あっ、あああああああああああああああああああっ!?」
そうして、沙弥香は絶頂した。
激しく潮を吹きながら、快楽に蕩けた表情を見せて。
そんな沙弥香を、侑は冷ややかな目で見ていた……。
「…………」
侑は、ベッドに座り裸で携帯電話をいじっている。
その直ぐ側には、寝息を立てる沙弥香の姿が。
「さて、沙弥香先輩には今度はどんな無茶を頼もうかなぁ。ローターをつけて構内一周させてもいいし、いっそのことタトゥーを入れてもらうってのもありかな」
携帯電話の画面には、沢山の女性からのメールが表示されていた。
そのメールを見ながら、侑は呟く。
「うーん、今月のローテーションはこの子からかなぁ。この子、ちょっと嫉妬深いところがあるからかまってあげないといけないし。うーん……」
そう言いながら、侑は振り返りベッドの上で眠っている沙弥香を見る。
沙弥香は安らかな表情で眠っている。そんな沙弥香を見て、侑は表情を曇らせた。
「虚しいだけ、か……。分かってるよ、そんなこと」
侑は携帯電話をベッドの上に放り投げる。
「でも、これしかないんだもの。誰も私を愛してくれない。私の表面しか見てくれないで、心に踏み込んでこようとしない。そして、私も私で、誰も愛せない。愛することが、怖くて踏み込むことができない。なら、そんな人間にできるのは、体で繋がることだけ。……本当、馬鹿みたいだ……」
そのとき、侑の瞳からつつっと、涙がこぼれ落ちた。
「……あれ、どうして私泣いているんだろ。おかしいな。どうして……」
侑の瞳からどんどんと涙がこぼれ落ちる。
彼女の視界が、薄ぼんやりとしたものになっていく。
やがて、侑は肩を抱き、体を震わせて泣き始める。
「……寒いよ……苦しいよ……誰か……誰か私に、愛をちょうだい……燈子先輩……」
侑はさめざめと泣き続ける。
しかし、そんな侑を救うものは誰もいない。
彼女はこれからも、一人孤独に苦しみながら、仮初めの繋がりを求め続けるだろう。
「誰か……」
侑のか細い、哀れな声は、誰の耳に届くことなく、虚空に消えていった……。