夜更けのマイルームにノックが響く。
部屋の主たる少年───藤丸立香は読んでいた本を閉じ、顔を上げる。
「はーい。鍵かかってないよ」
「失礼します」
現れたのは一騎のワルキューレ。腰まである金髪と白を基調とした礼装、ルビーのような瞳が特徴的な戦乙女、スルーズだった。普段のクールな表情に、些かの赤みが差している。
「何か用事?」
寝台に座る藤丸が欠伸を噛み殺しながら訊いた。
黄金の戦乙女は無言のまま歩み寄り、マスターの隣へ腰を下ろした。そして、思わぬ言葉を口にする。
「マスター、夜伽に参りました」
スルーズの答えに藤丸は硬直した。身を捩るもスルーズが肩へ頭を載せ、腕を胸に抱いている。
「あ〜〜……スルーズ、本で読んだことを試したいのかもしれないけど……」
「お嫌でしたら令呪をどうぞ」
「…………任務中に使うかもしれないんだし、そんなことできるわけないだろ」
人理を担うマスターのもっともらしい反論に戦乙女はきょとんとした表情を見せ、そのまま悪戯っぽい笑みを浮かべた。
「あら、マスターは言い訳が下手なのですね」
「…………」
スルーズのしなやかな手指が令呪の刻まれた右手を絡め取り、艶のある唇まで持っていく。
「貴方の手には令呪が三画、現在の時刻は午後十一時四十五分。令呪は日付けが変われば回復します。私を自室へ強制送還しても明日の任務には間に合うはずですが?」
少女は赤い蛞蝓のような舌で令呪をなぞり、淫靡な挑発を仕掛ける。戦場での凛々しいスルーズからは考えられない、雌を感じさせる態度に藤丸は思わず生唾を呑む。
「それに」
スルーズが藤丸の胸を軽く押すと、その身体はいとも容易く寝台へと倒れた。
「抵抗する気なんて、無いのでしょう?」
返事は無い。藤丸は腕で顔を隠したまま、羞恥の赤で耳の先まで染め上げている。
「マスター、私は貴方を愛しています」
愛の言葉が藤丸の鼓膜を優しく撫でる。
「スルーズ……」
白魚のような手指がルームウェアの中をまさぐり、熱く滾る雄を包み込む。
「準備万端ですね」
「恥ずかしいから言わないで……」
消え入るような声が漏れるも、その身体はされるがままでいる。健全な男子の期待半分、羞恥半分といったところだろうか。少なくとも拒絶の色は存在しない。
実のところ、スルーズは明確に拒絶されたならば令呪の使用が無くとも身を引くつもりでいた。藤丸も、相手の嫌がることをするような悪辣さがスルーズには無いことを理解している。一連の戯れは無言の合意によって進行していた。
「明かり、落とさせていただきますね。私にも恥じらいというものがありますので」
空中に何らかの幾何学模様───ルーンが浮かび上がると電灯が消え、薄暗く、それでいて暖かな光が部屋を満たした。
互いの表情は見えるが、全身はぼんやりとしか見えない。それが逆にふたりを高揚させる。
「このまま失礼致します」
スルーズが耳元で囁き、藤丸のルームウェアを引き下ろした。
同時に、臍まで反り返った肉棒が露わになる。その幹は十分にに充血し、少女の手へ硬質な感触を伝える。ぷっくりと浮腫んだ亀頭は先走りの粘液を垂らしていた。
「まあ、こんなに滾らせて……」
スルーズが優しく息を吹きかけると敏感な陰茎が跳ね、藤丸が呻く。繊細な手つきで陰嚢をさわさわと弄ぶ度に甲高く、断続的な悲鳴が漏れ、その度にスルーズはくつくつと笑った。
やがて、ゆるゆると竿を扱く動きへと切り替わり、もどかしい快楽が伝わり来る。
いつの間にか先走りの粘液が全体にまぶされ、陰茎を扱く乾いた音が湿った淫靡な音へと変化していた。薄暗い部屋にローペースな水音が響く。
「スルーズっ……!もう……!」
意思に依らず腰がゆっくりと前後し始めた頃、藤丸が苦しそうな声で懇願した。
「『もう』、何なのですか? ワルキューレはきちんと命令を入力しないと動けませんよ?」
巫山戯た台詞とは裏腹に、スルーズは藤丸の要求を完璧に理解している。
主人の求めるがまま、手の動きが苛烈さを増す。指を曲げて作った筒で扱き上げる動きに、先端を手のひらで撫で擦る悪戯が加わる。
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅ〜〜っ……ふふっ、はしたなく腰を突き出して……マスターはキスをされながら扱かれるのがお好みなのですね?」
「そん、なっ、こと……」
慈しむような口付けが藤丸の身体へ落とされる。
頬、額、唇、首筋、耳元。柔らかな唇が触れる度、少年の胸に多幸感が湧き上がる。
それは少女も同じだ。愛しき人の肉体を独占し、口付けを交わし、更には自らの愛撫で快楽を与えている。
その事実がスルーズの霊核を震わせ、昂らせ、この上ない幸せを感じさせる。
(私にしか見せない痴態、この姿は私しか知らない。……そして何より、愛しき人が私という個体に性欲を向けてくれている。それが、とても、興奮する)
粘着質な湿った音と、男女の荒い呼吸が閨に響き続ける。
我慢の限界に達した少年は戦乙女の執拗な責苦に懇願した。
「すっ、スルーズっ!もう射精るっ!もう射精るからっ!」
「ちゅっ……マスター、私のマスター。んちゅっ……戦場で明確な指示を出す勇ましい貴方は……ちゅぴっ、じゅぶっ、じゅぞぞっ、何処へ行ってしまったのですか?」
少女が目を細めて嗤った。陰茎がびくびくと痙攣し、限界が近いことを伝える。
「推測で動くのはあまり褒められたことではありませんが……はい、スルーズはいつでも受け止めて差し上げます」
更に抽送のスピードが上がり、声にならない声が上がった。
そして、それを塞ぐかのように唇が唇へと押し付けられ、舌が舌を絡め取る───と同時に、柔らかい手のひらが最も敏感な部分へ強く押し付けられる。
強すぎる刺激に少年の理性が決壊し、全身を突き抜ける快楽と共に大量の精液を吐き出した。
「ひッ、がッ……うぁ…………っ……ひぁ……」
少女の白い手指が別の白に上書きされて行く。拍動に合わせて吐き出された大量のそれは少女の手のひらから零れ落ち、シーツを汚す。
「れろ……んむっ……ちゅぶっ、じゅぴっ…………じゅぷ……」
柔らかな舌が少年の唇を強引に押し拓き、歯列から舌の根元までを蹂躙する。互いの唾液を混ぜ合い、啜り合い、脳髄までぐずぐずに蕩かされるようなキス。
マスターとサーヴァントという主従の関係が、この寝台の上においては完全に逆転していた。
永遠に続くかと思われた絶頂の波がようやく引いて行き、ふたりの唇が離れた。間に唾液の橋が掛かる。
スルーズの眼前に横たわるのは強すぎる快楽を処理しきれず、快感を通り越して困惑となっている愛しき人。
藤丸の眼前に横たわるのは口元を唾液で濡らし、ぼうと蕩けた目を向ける愛しき戦乙女。
互いの瞳を見つめ合い、無言のまま熱を交わす。先に口を開いたのは藤丸だった。
「もう、一度……キス、したい」
その言葉を受け、少女は微かに目を見開く。そして穏やかな笑みを浮かべた。
「ええ……私も、同じことを思っていました」
ふたりの顔の距離が徐々に近づき、目を閉じ、唇が再び重なった。先程の情欲に満ちた荒々しい口付けではなく、啄むような軽い口付け。
互いの唇の感触を楽しむようにふたりは睦みあう。
気付けばふたりの身体は鼓動が重なるほどに密着していた。故に、藤丸の下半身へ再び熱が集うのにスルーズが気付かない筈もなく───
「あ……また硬く…………マスター……その、今度は口でしてみてもよろしいでしょうか?」
一区切りついて冷静になったのか、少女はおそるおそる訊く。ただ、その大胆さは変わっていない。
藤丸は「口でする」という言葉の意味を脳内で咀嚼し、初めての体験にこの上なく昂ぶりつつあった。
「お、お願いします……」
が、そんな感情を直截的に出すわけにも行かず。少女と同じように静かな声で言葉を返した。
就寝前にシャワーを浴びていたであろう藤丸の身体からは石鹸の優しい香りがしていたのだが、先程の手淫による白濁で汚れた陰茎はむせ返る程に濃厚な雄臭を放っている。
(これが……マスターの……)
寝台に腰掛けた藤丸の前に跪くようにスルーズが座り、陰茎へ顔を寄せる。先程とは違い、鼻先で見て感じる陰茎は逞しく、グロテスクで、それでいて不思議と愛おしいように思えた。
「すんすん……生臭い、ですね」
「ごめんスルーズ、やっぱ一度シャワー浴びて───」
「……かぷっ」
気を回した藤丸が口を開くや否や、スルーズはそのまま陰茎を小さな口へと含んだ。
「ひあっ……」
「ぐぷぷっ……ぐぽっ…………」
まず初めに亀頭が咥えられ、そのまま少女の喉奥へ呑まれて行く。端整な顔立ちが長大な陰茎を咥え込んだことによりいびつに歪み、口の端から涎が垂れる。
その背徳的な光景を目の当たりにした藤丸は更に陰茎を硬くするも、生温かい口腔粘膜に愛撫され、舌先で亀頭を丹念に磨かれ、すぐさま再度の絶頂へと導かれて行く。
「ちょっ、スルーズっ……! それっ、すぐイッちゃう……!!」
藤丸の腰が浮き始め、それを逃さぬようにスルーズが抱え込む。頭を前後にゆっくりと揺すり、ストロークをかけて陰茎を舐めしゃぶる。
「じゅぶ、じゅぶるっ、じゅるるるっ」
「す、スルーズっ……ひっ、いっ……!!」
そして、スルーズが陰茎を喉奥まで深く咥え込んだ瞬間───藤丸は再び精を放った。
「────ッ!!! あっ、あがっ……いっ……!!」
「んぶびゅっ!? おぶっ……じゅっ、ぐびゅっ……ごぶっ…………」
スルーズは意識が飛びそうになるのを堪えながら大量の精液を喉奥へ収め、そのままそれを嚥下した。
無論、苦く生臭い精液を口が膨らむほど吐き出されて苦しくない訳がない。だが、それ以上に藤丸のことが愛おしかった。
少女が唇を陰茎へ密着させ、残った精液を舌で絡め取りながら引き抜く。
「けぽ、けぽっ……ごほっ、げぷっ」
残骸までを嚥下した少女がようやく息を吸い込み、精液臭い咳をする。
「スルー、ズ……大丈夫?」
「私、は大丈夫です。……それ、よりも」
蕩けた瞳の少女は再び怒張した陰茎へと手を添える。
「最後まで、シたいですよね?」
媚びた表情で少女が自らの前掛けをめくって見せた。そこに下着は無く、髪と同じ金色の陰毛と、糸を引く秘裂があった。
「……下着、履いてないんだ」
「正確には履いてこなかったのです。夜這いなのですから、無粋な布切れなど不要でしょう」
「そう……なのかなぁ?」
「そうですよ」
スルーズは再び藤丸を押し倒す。今度は半分以上自分から寝台に倒れ込み、少女は苦笑した。
粘液にまみれた女陰を自らの指で押し開く。肉の裂け目が広がり、薄桃色の内臓が露わになる。既に雄を受け入れる準備のできたそこは、いやらしく糸を引いている。愛液の雫が藤丸の鼠蹊部に垂れ、冷たい感触を与えた。
「マスター……いえ、立香様」
腰の上に膝立ちで腰を重ね、あとは下ろすだけで挿入が叶う体勢で少女が問うた。
「……何、スルーズ」
先端が生温かいぬかるみに触れ、くちゅりと淫猥な水音を立てる。接合部に目を奪われる藤丸の頬へ両手を添え、視線を固定し、少女は愛しき人と見つめ合う。
「愛しています」
にっこりと少女は微笑み、返事を待たず腰を下ろした。華奢な身体においても肉付きの良い尻が激しい水音と共に揺れ、粘膜と粘膜の絡み合う電流のような快感を伝えた。
「お゛っ゛、お゛お゛っ゛」
劣情に腫れ上がった陰茎により戦乙女の処女膜は呆気なく破られ、反り返った雁首で肉襞の一枚一枚を擦り上げられた。そして容易く最奥へと達し、ぷっくりとした子宮口へと接吻した。
「ぁ゛っ゛、い゛ぃ゛っ!! い゛くっ゛!!」
膣肉を掻き分け陰茎を挿入しただけ、たったそれだけでスルーズは獣じみた下品な喘ぎ声を漏らし、達した。
(私の肉体が、愛しい人を受け入れている───)
そのような思考のカケラすらも、次の瞬間には快楽で塗り潰されていた。
形の良い乳房が身体の痙攣に合わせてプルプルと震える。その先端を藤丸の指が弾くと、スルーズは身体を弓なりに逸らし、更に一段上の絶頂へと導かれた。
ぷしっ、じょぱっ、ぷじゅっ、という排泄音と共に少女の尿道から潮が吹き出し、藤丸の下腹部を濡らす。少女の赤い顔が更に羞恥で染まる。
「申し訳ぇっ、ありま、ひゃんっ!?」
謝罪の言葉は突然の刺激により遮られる。刺激───というよりは衝撃と表現した方が良いレベルの快楽だった。
藤丸のごつごつした手が腰を掴み、そのまま少女を押し倒して体位を変更し、荒々しいピストンを開始した。吸い付く肉襞は腰を引くたびに陰茎へと縋り付き、少女は膣をめくられるような錯覚を覚えた。亀頭が抜けるか抜けないかあたりまで引き抜かれた陰茎は、そのまま容赦無く最奥へと再び突き込まれ子宮口を苛烈に叩き嬲る。
「お゛お゛お゛お゛っ゛!? い゛っ!!! い゛ぎゅ゛っ゛!! ま゛、た─────ッ゛!!」
「スルー、ズ」
藤丸がゴツゴツと腰を打ち付けながら、スルーズの耳元へと唇を寄せた。
「ふぎっ゛!! ん゛ん゛っ゛!! い゛い゛っ゛」
スルーズは絶え間なく与えられる快楽を受け止めるのに必死で、耳元に迫る愛しき人に気付かない。下品な喘ぎ声を我慢しようと必死に口を閉じるも、突き込まれる度に獣の法悦が唇から漏れ出る。
自らの腕の中で乱れ狂うスルーズに藤丸は苦笑し、そのまま音に言葉を載せた。
「愛してる」
突然耳元で囁かれた愛の言葉。スルーズ自身が幾度となく紡ぎながらも、返されることは未だ無かったもの。少女が本当に求めていたもの。
藤丸は告白と共に子宮口めがけて破城槌を叩き込み、そのままぐりぐりと抉り込む。肉襞がこれ以上ない程に締め付け、子宮口のぷにぷにした感触がトリガーとなり、信じられない程の量の精液を放つ。
「ひっ゛──────」
決定的な一撃だった。愛を囁かれながらの同時絶頂。スルーズの霊核が有り得ない程の多幸感に支配された。
ふたりはそのままひとつの生物になったかのように痙攣し、永い絶頂を味わう。固く抱きしめ合うことにより、互いの鼓動と呼吸がひとつになるのが手に取るように分かった。
接合部からは愛液と精液のミックスジュースが下品な水音と共に溢れ出し、ふたりの股間を伝ってシーツを汚す。ちょろちょろと漏れ出る潮は白濁液の流れに合流し、粘度の違う染みを広げていた。
「シーツ、洗わなきゃだね」
「は、ひっ…………」
絶頂の波が引いた後もふたりはひとつになったまま、同じ時間を過ごしていた。
やがて、藤丸が身体を起こし、全てを吐き出した陰茎が引き抜かれた。膣から白濁液が逆流し、シーツの上にいやらしい水溜りを作る。精液も愛液も粘度は高いのだが量が尋常ではないので無理もない話だった。
藤丸が机の上から取ったティッシュでスルーズの股間を拭うと、その感触だけで敏感な女陰が再び達し、腰がかくかくと跳ねた。潮の残滓が漏れ出す。
スルーズは己の淫乱加減に少々呆れながらも、天井を見つめて性交の余韻に浸る。
その隣へ、藤丸が横たわる。
「つっ……疲れた……」
スルーズだけではなく藤丸も体力を消耗しきっており、相当の疲労がうかがえる。
スルーズは藤丸の黒髪をいたわるように優しく撫でた。若干癖のある髪が指の間を通り抜ける。ぐりぐりと手のひらへ頬を寄せる少年は、なんだか人懐っこい犬のようにも思える。
気付いた時にはその頭を胸へと抱えていた。顔面へ柔らかな乳房を押し付けられ、藤丸がもがく。そんなことはおかまいなしにスルーズは口を開いた。
「立香、私は貴方を愛しています。大好きです。この世界でいちばん好きです。大大大大、大好きです」
普段の理知的な戦乙女からは絶対に想像できない、幼子のような告白だった。しかしスルーズにしてみればとても決意を要する言葉だったのだろう、白磁の肌は赤く上気していた。
「俺も、スルーズのこと大好き。愛してる」
藤丸もまた、恥ずかしい告白をした。
柔らかくはにかむふたりは見つめ合い、そのまま口付けを交わす。性臭がくすぶる口付けだった。しかし、愛を確かめたふたりにとっては些細なことに思えた。
唇を離すと互いの瞳が潤んでいることに互いが気付き、抱き合う力が強くなる。と、同時に身体が更に密着し、スルーズは藤丸の身体の変化に気付いた。
またしても固くなった陰茎が、少女の太腿へ押し当てられている。
「……もう一回、したい」
額と額がぶつかる距離で藤丸が口を開く。至近距離で劣情を向けられたスルーズは可笑しそうに笑う。
「ふ、ふふふっ。ええ、私も同じことを思っていました」
微笑む戦乙女は、勇士の鼻先へキスを落とした。