───某月某日。スルーズはいつものように礼装を魔力の塵に変換し、裸となって寝台へ仰向けに寝転んだ。ふかふかしたベッドに裸体が沈み込む。艶のある金髪がシーツに投げ出され、黄金の河となって広がる。人形のようだった白磁の肌は上気し、発情した雌の表情を垣間見せる。
戦乙女はなにかを決意するように深呼吸し、股をゆっくりと開いた。そして、自らの人差し指と中指で中心を広げる。そこは既に十二分に潤っており、にちゃりという湿った音とともに桃色の内臓が露わになった。
今やスルーズの全てが愛する人の前に曝け出されている。
漂う甘い匂い、整った鼻梁、金糸のような豊かな髪、頭の上でぴこぴこと揺れる羽根、濡れた紅い瞳、艶やかな桜色の唇、しなやかな四肢、ツンと立った乳首、引き締まった腰、薄い黄金の陰毛、鞘から頭を覗かせる陰核、きゅっと窄まった肛門、てらてらと光る膣口。それら全てがたまらなく藤丸の情欲を掻き立てる。
ぬるぬるとした空洞が愛しき藤丸の視線を受け、微かに収縮した。
「……恥ずかしくないの?」
空気の読めない少年がぽつりと漏らした。少女は「何を今更」とでも言いたげに小さく笑い、言葉を返す。
「恥ずかしくないと言えば嘘になります。ですが、現代の殿方は積極的な女性を好むと書物で読みました」
「俺は別に……どんなスルーズでも好きだし」
「…………素っ気ない立香と違い、こちらは随分と素直ですね」
熱のこもったスルーズの視線は藤丸の下腹部、臍まで反り返った陰茎に釘付けとなっている。その先端からは既に先走りの露が垂れていた。
これから自らを貫く、太く長大な肉の槍。毎晩──たまに昼間や朝方も──目にしてはいるが、雄の象徴たるそのグロテスクな造形には未だに慣れない。スルーズの視線に反応し、また少し大きくなったようにも見える。
スルーズはなんとなく自らの臍のあたりを撫でた。雄々しいそれが収まりきるか不安になったのである。
「じゃあ……」
「…………はい」
寝台がもうひとりの体重により浅く沈む。藤丸はゆっくりとスルーズの上に覆い被さると、腰と腰との距離を徐々に詰め、秘所へと狙いを定める。
怒張した陰茎の先端が、曝け出されたスルーズの裂け目を上下になぞる。鈴口から滲み出した先走りの液と少女が分泌した白く粘っこい愛液が混ざり合い、塗り伸ばされる。
藤丸の唇がスルーズの耳元へ近付けられ、その可愛らしい耳朶を優しく挟む。
「ひっ、あっ───」
焦らすように入り口を愛撫され、耳朶を甘噛みされたスルーズは脳髄が痺れるような感覚を覚えた。
やがて、堪え切れなくなった少女の腰が動き始める。快楽を求め、肉棒へ股間を擦りつけるように腰を揺する姿は少しばかり滑稽だった。戦場での凛々しいスルーズとは結びつかない、雄に媚びる雌の姿が更に藤丸の情欲を掻き立てる。
「はやくっ……お願い…………しま、す」
スルーズが愛液を垂れ流しながら懇願する。透明な雫が女陰から溢れ落ち、色素の薄い肛門を濡らした。
陰部から伝わるのはもどかしい性感。スルーズは焦らされ続け、これ以上はもう我慢できない様子だった。
戦乙女の思考は少しの恐怖と好奇心、何よりも愛しい人と繋がることによる喜悦に満ちていた。華奢な身体が期待に震えた。
「行くよ」
藤丸が徐々に腰を押し出し、その亀頭が肉を拓き、生温かいぬかるみに沈んだ。にゅるにゅるとした肉襞が侵入者に纏わりつき、ふたりの境目から濁った愛液が溢れ出る。
「ひ、あ゛ッ─────」
その瞬間。押し殺せなかった悲鳴と共に、スルーズはいとも容易く絶頂を迎えた。
股間から脳髄を貫くように電流が走る。引き締まった腹部が複雑に痙攣し、膣肉が亀頭を押し返すように暴れる。スルーズのしなやかな四肢がピンと張り、数瞬の後に脱力した。
「えっ、スルーズ……もう?」
藤丸はパートナーの痴態に困惑する。亀頭しか挿入していないのに相手が激しく絶頂したともなれば無理もない話だった。
「ごめんな、ひゃ、ひっ……」
スルーズは必死に謝罪の言葉を紡ぐ。が、快楽による身体の痙攣と、脳を満たす多幸感がそれを許さない。絞り出された声は呂律が回っていなかった。
藤丸はそんなスルーズの様子を見て小さく笑い、美しい金髪の流れる側頭部を撫でながら少女の耳元へ唇を寄せる。
「大丈夫。さっき言ったでしょ? 俺はどんなスルーズでも好きだよ」
「ひ、あっ……」
耳朶に唇が触れるか触れないかの距離で甘く囁かれた愛の言葉に、スルーズは下腹部が熱くなるのを感じた。
藤丸はねっとりした腰使いで抽送を開始する。陰茎の三分の一程をぬかるみに沈め、ゆっくりと浅瀬を耕すように女陰を掘り砕く。
「ひいっ!? ひっ……ぐっ! ほっ、ほお゛っ!?!!」
「ここ、好きだったよね?」
浅瀬の手前側、ぷっくりとしたふくらみを藤丸が撫で擦る。亀頭が押し当てられる度、スルーズの腰が逃げるように浮く。それを両手で押さえつけ、しつこく責められるというのだからたまらない。
少女の唇から獣のような喘ぎ声が漏れ始めた。
みっちりと詰まった肉襞は白濁した粘液に浸されており、突き込まれる度に溢れた愛液が漏れ出す。
「そっ、それだめっ! い゛っ、気持ちっ、良すぎ、い゛っ!!!」
スルーズは藤丸の身体へ必死にしがみつきながら快楽を享受する。裸の上半身が密着し、乳房が潰れて少年に柔らかな感触を与える。
ふたりは互いの身体の匂いを至近距離で味わいながら、この時間が少しでも長く続くよう下半身から伝わり来る刺激に必死で耐えていた。
だが、それもやがて限界が来る。
スルーズの膣が意識外の複雑な蠕動を始めた。陰茎をきゅうきゅうと締め上げるその動きは、愛しい人を更に奥へと導こうとするようだった。
額に汗を浮かべた藤丸が抽送を止め、スルーズの顔にかかった金髪を優しく除ける。
少年は、乱れた戦乙女に優しく声をかけた。
「このまま奥行っても大丈夫?」
挿入しただけで目を白黒させていたスルーズの身を案じたのだろう。藤丸は『愛しい女を蹂躙し、我が物としたい』という浅ましい欲求を抑え込む。彼はどこまでも少女に寄り添っていた。
当然、スルーズも藤丸が今更そんなことを聞く理由を察している。その意図を知り、少女は少しだけ奇妙な痺れを覚える。
女体の奥の奥───サーヴァント、更に言えば戦乙女自体が使う事のない器官。エーテルで編まれたかりそめの子宮が愛しい人を想い、甘く疼いたのだった。
サーヴァント、過去の残照が生者との間に子を成すことはあり得ない。それをスルーズと藤丸は理解している。だからこそふたりは避妊無しで愛を交わしているのだ。
スルーズが荒い息を整え、ようやくまともな言葉を絞り出した。
「私、は───」
快楽に堕ち続ける狭間。少女はふと、地下図書館の旧い恋物語で読んだ、愛し合うふたりの終着点を思い出す。人間の番いは契りを交わし、夫婦となり、やがてその間に子を授かる。家庭を築き、幸せにいつまでも一緒に暮らすものらしい。
そのような幸福がサーヴァント、ましてや戦乙女である自分が獲得できるはずもないことをスルーズはよく理解している。
藤丸が人間としての歓びを得る頃になれば、サーヴァントたちは既にその役目を終えているだろう。
(私が彼と愛し合えるのはこのグランドオーダーの中でだけ。いずれは現世を去らなければならない。人としての生など、望むべくもない)
それもまた、愛しきマスターと交じり合う日々の中で確信に変わりつつあった。
(それでも、私は───)
紅い瞳に期待と諦観がドロドロと渦を巻く。少女が渇いた口で言葉を紡いだ。
「あなたの、子が……欲しい…………です」
柔らかく微笑んだスルーズの頬を感情の欠片が伝う。膣肉が切なげに陰茎を締め付け、甘い感触を伝えた。
「せめて、一番奥にっ……今の霊基が塗り潰されるぐらい……好きに動いて、貴方の精を……吐き出してください」
スルーズの腰をがっちりと掴んでいた腕がゆっくりと上に伸びる。頬へと到達した手指が濡れた頬を拭い、優しく撫でた。
「わかったよ」
藤丸が答える。そしてそのままスルーズを抱きしめ、耳元で囁いた。
「……スルーズ」
「ひゃ、いっ」
「俺は、君のことが好きだから、愛してるからこうしてるんだ。だから、その……無責任かも、だけど…………未来のことばかり見つめて泣かないでほしい」
サーヴァントであるスルーズが子を欲するのはどういうことか、少女が笑いながら涙を流すのは何故か。その理由がわからない程に藤丸は愚かではない。
藤丸が身体を起こし、スルーズの目を至近距離で真正面から見つめる。真剣な彼の瞳に、少女の心臓が跳ねた。
「今の俺を見ていて。そして、一緒に今を歩いてほしい」
愛しき人の吐露に、スルーズはふわふわとした感覚に陥る。頬が熱い。視界が回る。
「わっ、わ、わわわわ私、私も!」
思考回路がショートし、戦乙女は上手く返答を紡げない。舌が固まる。深呼吸を繰り返し、それでもどうにか絞り出したのは単純明快なフレーズ。
「……私も、貴方を愛しています」
───愛の言葉だった。
藤丸は一瞬きょとんとした表情を見せ、すぐにふにゃっとした笑顔に変わる。そして更に顔を近づけ、その唇を少女と重ねた。
顔が離れた後、ふたりはそそくさと視線を逸らす。少しの間散々痴態を繰り広げているというのに、キスの前後には緊張するのであった。
やがて、どちらからともなく視線を再び絡め、スルーズが口を開いた。
「その、立香。そろそろ……」
「……うん、動くよ」
藤丸は答えると、そのまま腰を押し出す。
女陰の浅瀬に咥えられたままだった亀頭が、少しずつ少女に沈んで行く。
「ひっ! あ゛っ゛、がっ!!」
陰茎が肉襞の沼へ潜り込む毎に、スルーズの唇からは意味を成さない呻き声だけが漏れる。
「スルーズ、大丈夫?」
「だい、ひょうぶ、れひゅっ……い゛っ!!?」
明らかに気をやっているのに大丈夫と言い張るスルーズに藤丸は苦笑した。しかし、彼はそのまま腰を沈め続ける。「好きに動いて」と言われたためである。
ぷにっ、という弾力のある感触と共に、亀頭が最奥へと達した。媚肉の締め付けが強くなり、侵入してきた肉棒に絡みつく。甘い刺激はあるものの、動かなければ射精へ導かれる程ではない。
微かに息の荒いスルーズを藤丸は抱きしめ、しばらくの間ふたりは互いの体温と息と匂いと鼓動を楽しんだ。
数分の抱擁の後、少年がじわじわと腰を引き、媚肉に埋もれた陰茎を引き摺り出す。
「い゛っ!?めくれ゛ぇっ、りゅっ、う゛っ゛!!」
彫りの深いカリ首が肉襞の一枚一枚を削り取る。膣肉をめくり上げられていると錯覚してしまうほどに強烈な感覚。
引き抜かれる陰茎は亀頭が浅瀬に留まるほどで止まった。
いやらしい水音と獣のような声が響いていた部屋が、少しだけ静かになる。空気に波紋を落とすのは男女ふたりの荒い呼吸のみ。
汗が浮き上がる肌と肌が密着し、両者に粘ついた感触を与える。しかし、互いの輪郭がよりはっきりと認識できるようで不快ではなかった。
スルーズはようやく訪れた快楽の果てに息を吐く。
───もっとも、藤丸はこれで終わる気など更々無いのだが。
「じゃ、また動くね」
「………………ふぇ?」
突然の宣告に、油断していたスルーズが間の抜けた声を漏らした。と同時に、藤丸は再び陰茎を叩き込む。そして間髪入れず引き摺り出す。
「──────ほッ゛、ほぉぉぉぉぉおおッ゛!?」
完全防音のマイルームに法悦の満ちた絶叫が響く。シーツに濁った愛液が飛び散ろうが、スルーズが仰向けに潰れたカエルのような姿勢で獣の声を上げようが、少女の尿道から淫らな潮が吹き出し、ふたりの下腹部を濡らそうが。そんなことはどうでも良いと言わんばかりの荒々しいピストンが繰り返される。
「ほぎゅっ!? ひぎっ!? ひゅぎっ!!! ん゛ぃ゛っ゛!!!!」
淑女が口にするには憚られる程に下品な嬌声。流石に羞恥を感じたスルーズが口許を手のひらで覆おうとするも、藤丸がそれを許さない。
藤丸はスルーズの華奢な手をごつごつした手で絡め取る。互いの指が互いの指の間に滑り込み、そのまま優しく握り締めた。両手を恋人繋ぎによって封じられた少女は声を抑えることが叶わない。
「スルーズ、好きだ。だからっ、全部……見せてほしい……!!」
「………………ッ!!!」
必死に腰を叩きつけながらの懇願。ワルキューレとしてではなく、スルーズという個人へ向けられる愛。
(それほどまでに激しく、情熱的に求められたら私は───)
羞恥が多幸感に敗北し、スルーズは抵抗を諦めた。必死に食いしばっていた歯が緩み、快楽に溺れた喘ぎを諦観と共に吐き出す。
「ん゛ほぉ゛ぉぉぉぉぉお゛っ!? お゛っ、おぐっ!! 奥にっ…………い゛っ、い゛ぃ゛っ゛!!」
スルーズは一往復毎に絶頂し、絶え間ない快感に襲われる。それはまるで、スルーズの身体を構成するエーテルのひとしずくまでが快楽に支配されているようだった。
スルーズは半狂乱で頭を振り乱す。入力される快楽が大きすぎてどう処理したら良いかわからないのだ。
「スルーズっ……! もうっ……!!」
藤丸は限界を伝え、思いっきり腰を引いた。助走を十分につけた強靭な陰茎で肉襞を強引に押し拓き、カリ高な亀頭で膣肉を抉り、鈴口が子宮口に荒々しいキスをする。一瞬にして最奥まで叩き込まれた陰茎は破城槌のように子宮口をノックした。
「ふ、う゛っ────」
子宮を叩かれた衝撃で息を吐き尽くしたスルーズの喉から奇妙な音が漏れた。
そして、コリコリした子宮口をそのまま押し上げ、膣肉にこれ以上なく締め付けられ、限界を迎えた陰茎が爆発的に精を吐き出す。
「──────────ひっ゛」
子宮口にぴったりと押し付けられた鈴口から注がれる精液。それは胎を充たし、肉襞の一枚一枚を染め上げ、少女自身の分泌した愛液と入り混じり、ふたりの接合部から垂れ落ちる。少女の尿道からは拍動に合わせ、びゅぶっ、じゅびゅっ、という下品な水音と共に絶え間なく潮が漏れ出していた。
「んお゛っ゛、お゛ぉぉ……お゛っ…………」
今のスルーズに戦乙女の凛々しい面影など存在しない。蕩けた表情は完全に雌のそれである。
───愛する男に組み伏せられ、愛を囁かれ、全てをさらけ出し、繋がっている。
寝台で乱れ狂ったふたりは、深く長い絶頂の波が引いた後も肩で息をしていた。荒い呼吸が室内に響く。
やがて、精を吐き尽くして萎びた陰茎が引き抜かれる。ぬぽんっ、と音がするように陰茎へ吸い付いた少女の膣口から、こってりとした白濁液が溢れ出す。粘度が高いためゆっくりと溢れ、秘裂の端から肛門へゆっくりと降りて行く。
スルーズの微かに上下する尻には珠のような汗が浮かんでおり、蠱惑的なものを感じさせた。
「立香……とても、素敵でした…………」
少女が嘆息した。
▽
それからも再び何度か交わった後。体力を使い果たしたふたりは寝転がったまま向かい合い、他愛もない話をしたり、互いの髪や頬を撫でて同じ時間を過ごしていた。
とはいえ、激しい運動を繰り返した後である。ふたりに微睡みの影が忍び寄る。
最後に、瞼の降りてきた藤丸がスルーズの耳元へ唇を近づけ、愛の言葉を絞り出した。
「大、好き……だよ。ずっと、一緒に…………」
そして、そのまま眠りの淵へと意識を手放した。その手のひらには少女の手のひらが握られている。
「…………ええ。願うことならば、いつまでも」
少女の言葉は愛しい人には届かず。涙の雫が重力に引かれるまま横に流れ、枕に染み込んだ。