TOVフレユリの騎士団入隊直後の話です。小説です。
フレンとユーリが喧嘩ばっかりしてます。
輪姦未遂があるのでご注意。
※pixivにも投稿しています。

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渇望【フレユリ】

僕と君の心の闇は・・・

 

どちらが黒く汚いだろう・・・

 

君は僕を綺麗と言い、躊躇うことなく触れるだろう・・・

 

僕には君が美しすぎて、触れることなど出来はしない・・・

 

それでも僕は、君が欲しくて堪らないんだ・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

― 渇望 ―

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユーリ!また君は部屋を汚して!」

 

帝国騎士団へ入隊して一ヶ月が過ぎた。

まだ所属隊は決まっておらず、正式に騎士として採用される為

日々武術や勉学に皆が邁進している。

フレンも強い意志を持って入隊した一人で、今は自分を高める為に鍛錬を怠らず

充実した毎日を送っている。はずだった。

入隊式に出席したフレンは驚きを隠せなかった。

騎士としての品性など、まるで持ち合わせていないユーリがそこに居たからだ。

 

-よぉ、フレン!久しぶりだな!

 

ニヤリと浮かべた得意の不敵な笑みは、あの頃と何も変わっていない。

胸の鼓動が高鳴るのが自分でもはっきりと分かる。手も汗ばんでいた。

彼の前を逃げるように去った頃と、自分も何も変わっていないことを痛感した。

 

-やぁ。驚いたよ、君も騎士団に入隊するのかい?

-ん、まぁ思うところあったしな。んで、お前居るかなと思ったらビンゴだ。

 

なんて自然な会話なのだろうと思った。

自分がユーリの前から突然姿を見せなくなったことなんて無かったかのように。

 

-ははっ。また会えて嬉しいよ。じゃあ僕はあっちだから

 

端整な微笑みを返して、フレンはユーリとの会話を打ち切りその場を後にした。

ちゃんと話せた。ちゃんと笑えた。そう思えてフレンは安心した。

 

やっぱり君は・・・綺麗だ・・・

 

久しぶりに見た彼の姿が脳裏に焼きついてしまった。少しずつ忘れていけたと思っていたのに。

また、少しずつ時間をかけて忘れていくしかない。

これだけ広い施設に、たくさんの騎士や訓練生が暮らしている。

意図して避けていれば、あまり接することもないだろう。

そう思っていたフレンは、また驚きを隠せなかった。

割り当てられた二人部屋の相手がユーリだったのだ。

 

-よっ!フレン。また奇遇だな!よろしく頼むぜ

 

そういって君は屈託のない笑顔を僕に向けた。

 

 

 

 

 

幼い頃に下町に越してきたフレンは酷く塞いでいた。

大好きで誇りだった父親が死に、慣れ親しんだ家から出て行かなければならなかった。

見知らぬ町で知り合いも居なかったから、

元々はつらつとした性格では無いだけに友達も作れなかった。

ある日、フレンはユーリと出会った。同じ歳で彼には既に両親が居なかったのだ。

けれど、ユーリはそんなことなど歯牙にもかけず、とても感情豊かだったのが衝撃だった。

怒ったり、笑ったり、時に泣いたり、とても忙しそうだったけど、

フレンも一緒に過ごして行く中で少しずつ感情を外に出せるようになった。

ふと笑いあったユーリの笑顔が、とても綺麗だと思った・・・

 

 

 

「ユーリ!また君は部屋を汚して!」

 

この台詞をもう何度繰り返したか分からない。

訓練で疲れて帰ってきたというのに、扉を開ければ床には点々と水溜りが出来ている。

身体を洗ったのだろう、髪は濡れたままで雫が今でも落ちている。

服も脱ぎ散らかしたようにあちこちに散らばっている。

当の本人はというと、窓際に座って外をのんびり眺めていた。

 

「いくら幼馴染とはいえ、少しは礼儀と協調性というものを持ってくれよ」

「うるせーなぁ」

「第一ここは君だけの部屋じゃないんだ、好き勝手しないでくれ」

 

床に点々と落ちていた服を拾って、うんざりしながら乱暴にユーリのベッドへ投げつける。

このところ本当に苛立ちが抑えきれない。

自分の調子を崩されることがこんなにも腹立たしいのだ。

ユーリを避けたいと思っているのに、部屋に帰れば常にそこに居る。

意識したくないから、彼の為に割かれる時間が煩わしく感じる。

フレンは素早く着替えを終えると、机の上においてある本を持った。

 

「まーた図書室でお勉強かよ・・・」

 

それを横目で見ていたユーリが皮肉交じりに問いかける。

フレンは苛立つ気持ちを抑えながらユーリを見ずに答える。

 

「・・・少しでも早く立派な騎士になりたいからね」

「さすがフレン様だな。俺には真似できないわ」

 

模範解答というべきフレンの答えにユーリは鼻で笑った。

口を開けば見る見るうちに仲が険悪になる。

そうしたい訳では無いのに、黙っていることが出来ない。

 

「しようと思っても君には出来ないよ・・・

 大体、今日君はキュモール隊の隊員と喧嘩したそうじゃないか

 そんな態度では立派な騎士どころか、騎士になれるかも怪しいものだよ」

 

そう言って改めてユーリを見れば、顔や身体の所々に生新しい傷があった。

その傷跡を見てフレンは苦々しい表情になる。

 

君は何も分かっていない。

たとえ喧嘩の拳でさえも、僕は他人が君に触れるのが許せないのに。

いつだって君は他人と触れ合うことに躊躇いが無く、誰とでも簡単に距離を縮める。

君だけの僕であるように、僕だけの君で居て欲しい。

心の奥底でそんなことを考えてしまっていた。

自分の心底の想いに気づいて、そしてそれは報われないと分かっていたから。

だから君の前から逃げ出した。

いつかきっと・・・僕を見てくれない君に、その思いを吐き出してしまいそうだったから。

優しい君は、僕を拒絶したりはしないだろう。

けれど永遠に、君に僕の気持ちを理解してもらうことは出来ない。

そんな惨めな自分を見るのが嫌で、君の前から逃げ出したんだ。

 

「あっちが最初に仕掛けてきたんだよ、俺の所為じゃねーよ」

 

少しちょっかいをかけるだけのつもりが、自分に話の矛先を向けられて

ユーリはばつが悪くなったのかそっぽを向いてしまった。

 

「どちらが悪かろうと、上官である彼らに歯向かうのは間違ってるよ」

「下町の連中が馬鹿にされたってのに黙ってられるかよ。

 品行方正のフレン様はやっぱり俺とはちがうなー、すげぇすげぇ」

「・・・なんとでも言いなよ。僕にはやっと騎士になる道が開けたんだ。

 簡単にふいには出来ない」

 

これ以上ここに居てもこの言い争いは収まることは無いだろう。

むしろ一層険悪になるのが分かっているフレンは、ユーリの返答を待たずに部屋を後にした。

 

 

 

図書室に向かう廊下は広く、夕方ということもあり訓練を終えた騎士や訓練生が行きかっている。

フレンは煩雑に歩く人をかわしながら足を速めた。

騎士には依然として貴族出身者が多い。

特にキュモール隊は選民思考が強い貴族の集まりだった。

訓練生の中でも下町出身者であるフレンとユーリは、彼らの標的になりやすかった。

学術も武術も上位の成績であるフレンは、妬まれる事が多いのだ。

ユーリの言いたいことは理解できる。フレンも幾度と無く似たような中傷を受けたことがあった。

その度に心の中は煮え返るほどの怒りが湧いたが、表に出すことは無くやり過ごしてきた。

騎士として彼らの言動は決して褒められたことではないが、

自身の目指す目的の為には彼らと争うことは得策ではなかったから。

幼い頃に二人で誓った約束は、せめて守るために。

 

考え事をしながら歩いていたら肩に何かがぶつかった。

その拍子に体制を崩しながらも、人とぶつかったことを認識すると咄嗟に謝る。

 

「・・・っつ・・・、す、すみません」

 

ぶつかった相手を見れば、見知った顔だった。

 

「いってえなぁ・・・下町の鼠がキュモール隊の俺たちにぶつかるとはいい度胸だな・・・?」

「・・・申し訳ありません」

 

嫌なやつらに遭遇したとフレンは心の中で悪態をつく。

事あるごとにフレンやユーリに因縁をつけてくる連中だった。

ぶつかったこと自体わざとだと直ぐに判断できる。

 

「気をつけろよぉ?俺たちは下民には何するかわかんねーからな」

「はい、ご指導ありがとうございます」

 

ユーリとは違い何を言っても歯向かってこない様子に、

彼らは面白くないとばかりに舌打ちをしてフレンの前から去っていった。

毎度の事ながら彼らの妬み、僻み根性には感心さえ覚える。

その感情を素直に表に出せるということも、フレンには出来ないから尚更だ。

感情を押さえ込み、隠して閉じ込める。しばらくの間に完全に板についてしまった。

 

軽くため息をついた後、フレンは図書室へと脚を向けた。

 

 

 

 

 

日付が変わる時刻に、フレンは静かに自室の扉を開けた。

毎日のように、訓練が終わった後は図書室で勉強をしている。

そして、必ずこの時間帯に部屋に戻る。そうすればユーリは確実に眠っているからだ。

 

持っていた勉強道具を机の上に置くと、自身も眠るためにベッドへ向かう。

隣のベッドで深く眠りについているユーリを暫くの間見つめる。

彼が眠っている時だけだ。

フレンがユーリを見つめることが出来るのは、そのときだけしかない。

あの強い意志を宿した瞳で見つめられるのは堪らない。

目が合ってしまっては、何かを問い詰めるような瞳を前に、

簡単な嘘すらつけなくなりそうだった。

 

フレンは手を伸ばし、ユーリの長い髪をすくった。

途端にサラサラと指をすり抜けて、ベッドの上へ再び落ちる。

その様子にフレンは強い焦燥を覚えた。

一箇所に留まることは無いユーリと同じだった。

捕まえても指の間をすり抜けて、また別のところへと心が向いてしまう。

 

この手にはいつも何も残らない。いつも、自由な君の後姿を見るだけだ。

そしていつだって、僕だけが君を求めるんだ・・・

 

フレンは自分の掌を強く握った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。食堂で昼食をとっていたフレンは、外が騒がしいことに気づいた。

他の皆が興味を示して見に行こうとしているが、くだらないとばかりにフレンは動くつもりは無かった。

 

-ユーリ・ローウェルがキュモール隊のやつらと揉めてるぞ

 

通り過ぎた誰かが言った、ユーリという単語に途端に反応してしまう。

そして、昨日注意したばかりだと言うのに、また騒動を起こしているようだ。

キュモール隊の連中もユーリも昨日の様子からすると、今日は殴りあいに発展してもおかしくない。

それを察知していたフレンは慌てて騒ぎのほうへ走った。

 

広場には既に人だかりが出来ていて、フレンは分け入って騒ぎの中心へたどり着く。

そこには数人のキュモール隊の騎士たちと、

彼らの内の一人に胸倉をつかまれているユーリが居た。

ユーリも必死で堪えている様子だったが、それももう長くは持たないほど苛立っているように見えた。

フレンはユーリと騎士に駆け寄り、彼らの間に入る。

 

「?・・・フレンっ・・・何でお前・・・」

「申し訳ありません。彼が皆様に無礼を働いたことを、お詫びします。」

 

ユーリを隊員から少し遠ざけると、フレンは頭を下げて謝罪した。

突然現れたフレンに吃驚したユーリだったが、直ぐに我に返り再度騎士の前に向かおうとする。

けれど直ぐに伸ばされたフレンの腕により阻まれてしまった。

 

「何だよっ!邪魔すんなっ・・・」

「この通り彼も反省していますので、この場はどうかお納めください」

 

無理やりユーリを押さえつけて、形だけでも頭を下げさせる。

少し抗っていたが更に力をこめて再度フレンが謝罪をすれば、

ユーリは理解できたのか納得いかない様子だったが大人しく黙っていた。

 

フレンが乱入して更に騒ぎが大きくなり、見物人がかなり増えていた。

これ以上騒ぎ立てて、変に目立ってしまっては彼らも困るのだろう。

低俗な捨て台詞を吐いてこの場を後にした。

騒動が一応収まったとはいえ、広場にはまだたくさんの人が居る。

ここではまともな話が出来ないと思い、フレンはユーリの腕を強く掴んで強引に引っ張った。

 

 

 

人気の無い宿舎裏にたどり着き、フレンは掴んでいた力を緩めた。

途端にユーリは力いっぱい腕を振りほどく。

 

「どういうつもりだよっ!何で邪魔なんかした!?何であんなやつらに謝るんだよ!」

 

引っ張られている最中は大人しかったと思ったら、急に怒りが爆発したようにまくし立てる。

自分が危惧していることにまるで頓着していないユーリの発言に、フレンの苛立ちも更に増す。

 

「昨日僕が言ったことを聞いていなかったのか?

 これ以上彼らと揉めれば、君は処罰どころか最悪除隊になる」

「うるせぇ!・・・俺がどうなろうとお前には関係ねーだろ!」

 

自分がどれだけ心配して気を病んでも、結局彼にはこの一言で片付いてしまうのだろうか。

幼い頃から共に抱いていた夢。それをずっと共有したくて、一緒にかなえたいと思っているのに。

それすら、彼は簡単に捨ててしまえるほどなのだろうか。

 

勢いついでに出てしまった言葉だとしても、フレンには許すことが出来なかった。

乾いた音が響いて、直ぐに自分がユーリの頬を張ってしまった事に気づいた。

あまりに突然のことで、ユーリは驚いた様子で呆然とフレンを見た。

感情的になってしまい、彼を殴ったことにフレンは絶望する。

震える掌を見つめていたが、こちらを見るユーリの視線に気づき慌てる。

 

「・・・すっ、すまない・・・」

「・・・・・・・・・・・・・」

「・・・君には理解できないかもしれないけど、僕は君が思っている以上にっ・・・」

 

何を言うつもりだったのだろう。

ユーリには絶対に理解してもらえない自分の想い、それを口に出してしまいそうだった。

咄嗟に口を噤み、ユーリから視線をそらす。

少しの沈黙の後、何も無い地面を見つめながらフレンは口を開いた。

 

「僕たちが騎士になるのは下町の皆の希望だろ?

 ・・・それを簡単に裏切らないでくれ・・・」

 

-下町の皆

その一言でユーリが息を呑むのが分かった。

けれどフレンはユーリの反応を待つことはせずに、その場を逃げるように去った。

 

 

 

 

 

卑怯な言葉を使ってしまったことに嫌悪感が募る。

自分の言いたいことをはぐらかして、彼が一番堪える言い方を選んだ。

そうまでしてユーリを思い留まらせようとする浅ましさにも自嘲してしまう。

 

フレンは午後の講義や訓練をきちんと受けたが、それから部屋に戻ることは出来なかった。

どんな顔でユーリが待っているかも想像できない。

厭味を言われたり喧嘩になるならいいが、無視や拒絶されるのが怖い。

あれだけ自分から、彼を避けるような行動ばかり取っていたのに。

いつものように図書室へ向かい、適当な本を探し席に着く。

書かれている文章を目は追っているものの、その内容は全く頭に入ってこない。

 

このままではいけない、心無い言葉で彼をなじった事を謝るべきだ。

という気持ちが次第に強くなった。

フレンは意を決したように読んでいた本を勢いよく閉じると、

ユーリが居る自分の部屋へと戻った。

 

 

 

勢いで自分の部屋へ戻ったはいいが、フレンはしばらく扉の前で立ち尽くしていた。

何度もドアノブに手を掛けたものの、直ぐに戻してしまう。

 

「何やってんだ?フレン」

 

自室の前で不思議な行動を取っているフレンを目にして、

偶然廊下を歩いていた同期のアシェットが声を掛ける。

 

「えっ・・・あ、いや、なんでもないよ」

 

突然声を掛けられたことに驚いてしまったことと、不可解な行動を見られてしまったことに

恥ずかしさを覚え、フレンは咄嗟に取り繕った笑顔を向ける。

 

「またどうせ喧嘩でもしたんだろ?ったくいい加減仲良くやれよ」

 

またかと言われるほど、外でユーリと不仲だという態度を取っていたのかと焦る。

表面を取り繕うことに長けている自分が、そんな失態を犯していただろうか。

 

「ま、ユーリの話聴いただけでも、お前がユーリのこと怒りたくなる気持ちは分かるけどな・・・

 でもあいつはそういう奴だし、大目に見てやれよ!」

 

そう言って、アシェットは親しげにフレンの肩を軽く叩く。

一瞬にして殺意が湧く。

ユーリとアシェットは親しいようで、彼には色々な話をしているようだ。

そして、自分のほうがユーリを理解していると言いたげな口調に聞こえてしまう。

どうしようもない嫉妬にかられて、引きつった笑顔しか出来なかった。

 

「そうだね・・・努力するよ・・・」

 

これ以上他の男からユーリの話を聞きたくなくて、フレンは自然と部屋の中へ逃げた。

心の準備がまだ出来ていなかったのに、勢いで部屋に入ってしまったことを後悔する。

閉じて俯いていた瞳を上げて、ゆっくりと部屋を見渡してみたが、

そこは暗いままでユーリは居なかった。

一瞬安堵の息を漏らしたが、本来の目的を思い出す。

ユーリに会って話をきちんとしたいのにその本人が居ない。

彼の寄りそうな場所を、と考えてみたものの全く思いつかないことにも腹が立った。

意図的に避けて、考えないようにしていたのだから当たり前だ。

友人の多いユーリのことだから、別の男の部屋に上がりこんでいるのかもしれない。

そう思うと焦りと苛立ちが勢いよく湧き上がる。

どうしたらいいのか分からずに、フレンは目を泳がせると、自分のベッドに丸められた紙を見つけた。

ユーリがまた適当にゴミを捨てたのかと思い、習慣のようにそれを手に取り捨てようとする。

ふと見るとそこには一行だけ文字が書かれていた。

 

-地下 武器倉庫にて待つ

 

フレンはおそらくユーリがしたように、手のひらでその紙を握りつぶし

メモに書かれている場所へと走った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、一人で来たのか」

 

目の前の男は武器や防具が入った木箱の上に座り、

部屋の中央に立っているユーリを見ながらわざとらしく驚いて見せた。

 

「なんだよ、気にいらねーのか?」

「いや、こっちもその方が都合いいからな・・・」

 

おちょくるようなユーリの反論にも、男は気にすることなく即座に答える。

座っていた木箱から立ち上がり、ユーリに臆することなく歩み寄る。

ユーリはその分だけ後ろに距離をとってしまった。

 

「なんだ?あれだけ生意気な口きいてたのに、今更ビビってんのか?」

 

部屋を見渡してみると、近寄ってくる男以外に6人程いた。

2、3人なら負けるつもりは無いと思っていたが、その倍となるとかなり難しい。

ユーリは心の中で舌打ちしながら、気圧されない様に睨み付ける。

 

「良い目だな、いつまでその威勢が続くか見ものだ・・・」

 

そう言いながらもまだ歩み寄ってくる男に合わせて、ユーリも距離をとっていたが、

背中が壁にあたり追い詰められたと思った。

 

「・・・なっ、うわっ・・・!」

 

突然両腕を掴まれて、後ろ手できつく縛り上げられてしまった。

壁だと思ったのは別の男で、その男に腕を取られていたのだ。

そして頭をつかまれ地面に転がされる。

 

「いって・・・」

 

うつぶせで倒れこんだ所為で起き上がるのに手こずっている間に、

目の前に立っていた男が、しゃがみ込んでユーリの顎を掴み強引に上を向かせた。

屈辱的な体勢を強いられながらも、負けじとユーリは相手をにらみ続ける。

 

「ははっ・・・ゾクゾクするな、その表情・・・おい、あれ持って来いよ」

「なに気持ちのわりぃこと言ってんだよ、殴るんならさっさとやりやがれ!」

 

何がゾクゾクするのか分からない。周りを見ても同様にニヤニヤと気持ち悪く笑っているだけだ。

これまでの諍いに話をつけるつもりだったのに、相手には全くそんな様子が無い。

 

「殴る?・・・俺たちがそんな野蛮なことするかよ」

 

身動きを取れなくして、袋叩きにでもするのかと思っていたら、それは違うと笑って否定される。

それしか思い浮かばないユーリは、男たちが何で笑っているのか理解できずに混乱する。

少し不安になったユーリの瞳を見て、男は口の端を上げた。

 

「何されるか分からないって顔してるな、直ぐに分かる」

 

そう言い終わると、周りにいたはずの男たちが直ぐ近くに来ていた。

身体を起こされて強引にベルトをはずされる。

必死に逃れようと脚をばたつかせて、相手を蹴ろうと試みたが直ぐに押さえつけられてしまう。

下半身に身に着けていた衣服を剥ぎ取られてしまった。

 

「何のつもりだよっ!この野郎!」

「本当にまだ分からないのか?その顔だからとっくに誰かに喰われてると思ったが・・・」

 

少し離れて仲間たちにユーリが脱がされているところを鑑賞していた男は、

嬉しそうに笑いながら傍に寄った。

その間ずっと脱がされたユーリの身体を見つめていて、ユーリは居心地の悪さに身を捩る。

目の前に座った男の視線から何とか逃れようとするが、脇にいた男たちに両膝を抱えられてしまった。

脚を大きく開かされ、普段人に見せることの無い部分を曝け出されて、ユーリは思わず声を上げる。

 

「やめろっ!はなせっ・・・」

「綺麗な色してるな、あまり使ってないのか・・・?」

 

開かされた部分をまじまじと見られ、それを揶揄された。

あまりの恥ずかしさにユーリの顔は一瞬にして紅潮する。

 

「っ・・・だからなんだよ!こんなもん恥ずかしくもなんともねーよっ!」

 

誰が見ても分かるほど、分かりやすい強がりだったが、男は益々口角を上げる。

 

「そうだな、これくらいで値を上げてもらっちゃ困るからな・・・」

「?」

 

男は手に持っていた小瓶をユーリに見せつけてから蓋を開けた。

そしてその瓶をゆっくり傾け、中に入っていた液体をユーリの中心に垂らす。

 

「・・・っつ・・・」

 

予想以上に冷たいのと、そんな場所に垂らされる液体に恐怖を抱き、ユーリは咄嗟に腰を引く。

けれど、他の男たちにがっしりと腰も抱えられているため、びくともしなかった。

 

「そう怯えるなよ、直ぐに悦くなるさ・・・」

 

瓶の中の液体を半分ほど垂らしたあと、男は無遠慮にユーリの性器を扱う。

突然の刺激にユーリは目を見開いた。あまりの不快感に身体が戦慄く。

 

「・・・さわんなっ!気持ちわりぃ・・・」

 

精一杯虚勢を張るユーリをよそに、男たちの手が次々とユーリに伸びる。

上半身の服をたくし上げ撫で回したり、ユーリの薄い尻の双丘を揉み上げる。

性器を扱っている手は、先ほど垂らされた液体を塗りこむように、水音を立てながら上下する。

 

「や・・めろ・・・この、下種野郎・・・」

「そろそろだな・・・。お前も直ぐに触って欲しくて強請るようになる」

「ざけんなっ・・・そんなこと誰がっ・・・」

 

するか。と続くはずだった言葉が途切れる。

尚も弄られている下肢が異常な熱を帯び始め、言いようの無いむず痒さが湧き上がる。

 

「あっ!・・・ふっ・・・ぅ・・・」

「効いてきたか?流石、即効性の薬だ・・・」

 

明らかな反応を見せたユーリに、男は嬉しそうに囁く。

敏感な先端を強く擦られ、ユーリの背中が弓なりに反れる。

あまりに強い刺激に頭が朦朧とする。

自分の身体が、思うようにならない事に恐怖を覚えるが、それも直ぐに何も考えられなくなってしまう。

せめて声を上げないように、堪えるので精一杯だ。

 

「いい表情になってきたな・・・。こっちにもやるよ」

「!?・・・やっ!」

 

男は残っていた瓶の中身を手に零し、ユーリの後孔に指を滑らせた。

性器に塗られた薬の効果を考えたら、そこに塗られるのは冗談ではないと思い、

ユーリは必死に抵抗したが、薬の滑りを借りて易々と侵入されてしまった。

 

「う・・ぁ・・・」

「キツイな、ここに突っ込まれるのは初めてか?」

 

激しい異物感に全身が総毛立つ。男の指はその場所を広げるように円を描き、

中の粘膜に薬を塗りこむ様な丁寧な動きだ。

指が引き抜かれ、ユーリが安堵したのもつかの間、薬を更に塗りつけ再度開かれる。

二本に増やされた指で犯され、ユーリは苦しさからその指を締め付けてしまう。

指に反応するように収縮する様子に、男は気をよくしたのか強引に指をもう一本増やす。

 

「あぁっ!・・ぁ・・やっ・・・あっ・・・・」

「良い締めつけだな・・・早く突っ込んで泣かしてやりてぇな・・・」

 

何をどこに突っ込むつもりなのかと頭をよぎるが、

ユーリを弄る男たちの手によって直ぐにかき消されてしまう。

卑猥な音を立ててユーリの中をかき回していた指が、ある一点を捉える。

 

「あっ!・・・あっ・・あ・・・そこ・・・やめっ・・・」

 

触れられていなかった性器に直接響くような快感に、ユーリの身体は大きく跳ねる。

 

「ここがお前の感じる場所か」

 

男は嬉しそうにそう言って、ユーリが特別な反応を示した場所を執拗に擦る。

無理やり与えられる快感に、どうすることも出来ずに腰を揺らしてしまう。

 

「あっ・・ぁ・・・いや・・だ・・・フレ・・ンっ・・・」

 

身体の中を蠢く指にあわせて、性器も同時に扱かれる。

あまりの気持ちよさに頭が真っ白になり、口から絶えず声が漏れる。

無意識にフレンの名を呼びながら、嫌々をするように頭を振ることしか出来ない。

 

「もっ・・・だめっ・・・ぁ・・・」

 

性急に追い上げられた身体は、絶頂を迎えようと小刻みに震える。

あともう少しというところで、男はユーリを弄る手を止めた。

 

「ぅ・・あっ・・・」

 

恍惚とした表情で中途半端に手を止めてしまった男を見た。

男はズボンをくつろげ、既にたち上がっている怒張を見せ付ける。

 

「まだいくなよ?・・・これで今からお前を、俺たちの女にしてやるよ・・・」

 

卑下た笑いを浮かべながら、ユーリの後孔に性器を擦り付ける。

その生々しい感触に、ユーリは我に返り力の限り暴れる。

 

「やめろっ!!・・・いやだっ!・・・フレン、フレンッ!!」

 

突然大声を出して暴れ始めたユーリに、男たちは焦って押さえつける。

叫び続ける口には布が詰められ、ぐもった声しか出せない。

 

 

「手こずらせやがって・・・おとなしくしてろっ」

 

組み敷かれたユーリに圧し掛かって、細い腰を力強く掴む。

男の腰に引き寄せられるのを必死に抵抗したが、身体の自由を奪われた上に、

薬も使われて思うように力が出せなかった。

立ち上がった男の先端を押し当てられ、ユーリは目を瞑った。

 

-いやだ、いやだっ!フレン!!

 

次に訪れるはずの苦痛がこないばかりか、頭上で鈍い音がしたと思ったら

木箱や武器が盛大に崩れる音がした。

恐る恐る瞑っていた瞳を開けると、拳を握って息を荒げているフレンがいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

必死で走って武器庫の前にたどり着き、勢いよく目の前の扉を蹴り飛ばした。

そこには、何人もの男がいて、誰かを組み敷いているのが分かる。

あられもない姿で男に囲まれているユーリを目にして、フレンの怒りは一瞬にして振り切れてしまった。

怒りで何も見えなくなり、ユーリに覆いかぶさっていた男を掴み上げ殴る。

動揺してうろたえていた別の男も、同じように力の限り殴った。

それでも怒りが治まらないので、その他の男に歩み寄る。

狼狽していた男が、奇声を発しながらこちらに向かってきたが、

フレンは受け流して相手を簡単に鎮めてしまった。

まだ残っている連中に目を向けたが、あまりの鬼気迫るフレンの様子に怯え、

後ずさりながら部屋から逃げていった。

 

「フ・・・レン・・・?」

 

小さく自分を呼ぶ声がして、フレンはその声が発せられた方を見る。

そこには下半身は何も纏っていないユーリがいて、

あまりの色っぽさにフレンは咄嗟に目をそらしてしまう。

その瞬間、ユーリが悲しそうな表情になったことも、フレンは気づけなかった。

とにかくこの場所にずっと居るわけにはいかないと思い、

尚もユーリを直視しないまま、フレンはユーリに歩み寄った。

 

フレンはユーリの腕を縛っていた布を、遠慮がちに解く。

床に落ちていたユーリの服を拾い、自分の羽織っていた上着をユーリの腰に巻きつける。

 

「ごめんねユーリ・・・」

 

そう言って、フレンはユーリを抱き上げた。

力強くユーリを抱いているけど、歩き方は気遣うように優しかった。

ユーリはフレンをずっと見上げていたけれど、

フレンは部屋に着くまで一度も、ユーリを見ることは無かった。

昔のようにこんなに近くにお互いの顔があるのに、

笑いかけられるどころか、一度も目を合わせ様としない相手に、

ユーリは悲しくて自分の上着をきつく握り締めた。

 

 

 

 

 

 

 

ユーリを部屋まで連れて行き、自分のベッドに腰掛けさせる。

上半身の衣服は肌蹴たままで、直視出来ないフレンは目を泳がせながらユーリを気遣う。

 

「大丈夫?ユーリ・・・今、身体拭くもの持ってくるから・・・」

 

足早にユーリから離れようとするフレンの腕を、ユーリは放さなかった。

 

「ユ、ユーリ?」

「・・・・ちゃんと俺を見ろよ・・・」

 

ユーリの真剣な台詞に、フレンは動揺する。

ゆっくりとユーリの瞳を見るが、直ぐに耐えられなくなり逸らしてしまう。

自分から願っても、逸らされてしまった瞳に、ユーリは無意識に涙がこぼれていた。

 

「もう俺・・・、騎士団・・・辞めるわ・・・」

「えっ!?・・・あ、・・・ユーリ?」

 

反射的にフレンはユーリを見て、そして泣いている事に狼狽する。

 

「ユーリ?・・・なんで泣いて・・・、そ、それにどうして辞めるなんて」

 

驚くことが次々と起こり、フレンは上手く処理できない。

慌てているフレンをよそに、ユーリは俯きながら小さく話す。

 

「俺は・・・、こんなつもりで騎士団に入ったんじゃねぇ・・・

お前が俺の前から急にいなくなって、どうしてか分からなくて・・・

騎士になるって約束に頼って、入隊した。

そしたらちゃんとお前が居て、やっと話せると思ったのに・・・。

全然会話にならなくて、喧嘩してばっかりで。

ちがう・・・、俺・・・お前とそんなことしたいんじゃねーんだ・・・」

 

嗚咽を堪えるような声で、ユーリは涙をぬぐいながら続ける。

 

「それにお前・・・、俺のことなんて興味無いって顔して、迷惑そうな顔して、俺のこと全然見ないだろ?

 それが何でかすげぇ悲しくて・・・、もう俺嫌だ・・・」

「・・・ユーリ・・・」

「なんで、何で俺ばっかりお前のこと見てんだよっ!もう嫌だ!!」

 

急に癇癪を起こしたように、ユーリはフレンを叩き始める。

フレンは自分を叩く腕を掴み、ユーリの行動を無理やり制止させた。

そして自分ばかりと嘆くユーリに、若干の苛立ちを覚えユーリの腕を掴む力を強めた。

 

「・・痛って・・・」

「ユーリだって、何も分かってないよ・・・?」

 

そう言うとフレンは、ユーリを強引にベッドへ押し倒す。

突然のことにびっくりして目を大きく見開いたユーリは、悲しそうな顔をしているフレンに更に瞠目する。

 

「僕が君の事を興味ない・・・?どうしてそんな事が言えるんだい?

 ほら、分かる?・・・僕は君に触れるだけで、こんなにも震えてるんだ・・・」

 

ユーリの腕を掴んでいた一方の手を離し、そのまま頬に触れる。

ぎこちなく、遠慮がちに頬に触れた手は、確かに震えていた。

 

「ねえユーリ・・・、僕は君が好きなんだ。・・・好きでたまらないよ・・・」

 

フレンはユーリの胸に顔をうずめて、震える両腕で抱きしめる。

自分の思いを彼に告げてしまった。もう戻ることは出来ない。

けれど、拒絶されるのも怖くて、フレンはどうして良いのか分からなくなった。

離したくないという様に、ユーリを抱きしめる力を強めた。

 

「・・・やっと言ったな・・・」

 

頭上からいつもの調子のユーリの声が聞こえた。

聞き間違いではないかと思い、咄嗟に顔を上げる。

 

「・・・えっ?」

 

見上げた先にはいつもどおり不敵な笑顔をしたユーリがいて。

 

「・・・遅いんだよバカ」

 

呆気にとられていたフレンの唇に軽くキスをして、照れた様に笑った。

 

「え?・・・え、ユーリ?」

「・・・・気づけよ・・・・」

「ちっ、違うよユーリ・・・」

「あん?何が違うんだよ」

 

きっと彼は誤解している。自分がユーリを想っている、好きという感情は、

彼が思うような綺麗なものではない。

でもそれを言ってしまったら、ユーリの心は離れてしまうのだろうか。

 

「いいから言えよ」

「・・・僕の君が好きって言う想いは、君が思ってるような綺麗なものじゃないんだ・・・

 さっきの奴らみたいに、ユーリに・・・触れたいって思うんだ・・・」

 

言いにくそうに、苦しそうに視線をそらしながら言うフレンに、ユーリは苦笑した。

フレンの首に腕を回し、金色の頭をなでる。

 

「良いぜ、好きにしろよ」

「!?だっ・・・駄目だよそんなっ・・・」

「大体!」

 

ユーリの大胆な発言にうろたえるフレンを無視して、ユーリは続けた。

 

「さっきクズ野郎共に変な薬使われたんだ。

そこから助け出したお前が責任取らなくて、誰が取るんだよ・・・」

 

無茶苦茶な言いがかりだったけど、ユーリらしくてフレンは笑ってしまった。

それにつられてユーリも笑う。

しばらく見ることが出来なかったユーリの笑顔は、やっぱりとても綺麗だった。

 

 

うん、ありがとうユーリ・・・ずっと僕が、責任を取るから・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

差し込む日の光の眩しさに、ユーリは呻きながら目を覚ます。

 

「おはようユーリ・・・」

 

寝ぼけ眼のまま上半身を起こしボーとしていたら、頬にフレンのキスを受ける。

 

「・・・・ん。・・・え、もう昼か・・・?」

「そうだよ、何か食べる?」

 

そうやって他愛も無い会話をしている最中にも、フレンはユーリの髪や首筋、肩に口付けている。

ユーリは昨夜の名残のまま裸だったが、フレンはきちんと着替えていた。

フレンはそのままユーリを起き上がらせること無く、ベッドに押し戻した。

 

「え、フ、フレン?・・・お前、訓練はどうしたんだよ?」

「今日は二人とも休みにしたよ。

 ユーリは辛いだろうし、僕も君と一緒に居たいからね」

 

昨日までのフレンとは打って変わった大胆さに、ユーリは驚いてしまう。

そんなユーリを見てフレンはにっこりと笑った。

 

「ユーリ、僕決めたよ。

 これからはもっと素直に自分の気持ちを表現するよ。」

 

 

-もう遠慮はしないから・・・。だから覚悟してね?

 

何もかも吹っ切れたフレンの笑顔を見て、ユーリは少し後悔した。

 

 

 

 

 

 

 

僕の心の闇が、どれほど黒く汚くても・・・

 

君はそれを全て受け止めてくれるだろう・・・

 

どれだけ触れても汚れない君の美しさが・・・

 

僕を捕らえて離さないんだ・・・

 

 


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