触手を出す甲殻類系の謎の生きものに×××される女の子(10代)の話です ホラー風味

1 / 1
【オリジナルR-18】空き家に潜むもの

 前後の記憶が曖昧だ。閉じこもった室で、口を手で覆い息を潜めながら、頭を必死で働かせる。

 切欠自体は覚えている。母と喧嘩をし、家を飛び出したのだ。

 ほんの些細なことだったと思う。小さな言い合いから、やがて大声を張り上げる喧嘩に発展した。激情に駆られた娘の彼女の方が家を飛び出てしまった。そう、そんなことだ。

 財布もスマートフォンも持たずに飛び出てきた。その上、暦の上では春でも吹く風はまだ寒い。学校帰りに喧嘩をしたから制服のままだった。ただでさえ田舎で人家に乏しく、人通りもない。おまけに日が暮れそうだ――そんな彼女の目に飛び込んできたのは、一軒の空き家だった。

 その家の存在自体は幼い頃から知っていた。物心ついた頃には誰も住んでおらず、人が来る様子もなかった。日常の1部として、その家は溶け込んでいた。だからだろうか。その家に、足が向いた。

(ここで一晩過ごそう)

 母との喧嘩でまだ血が上っていた。正常な判断ではなかった。しかし、財布もスマートフォンも持っていない以上、寒風を凌ぐ方法は他に見当たらなかった。

 さらに。

(……鍵、空いてる)

 ここで鍵が閉まっていたら、また別の方法を探っただろう。しかしその障害はなく。ごく普通の一軒家は、ごく普通に、当たり前のように彼女を出迎えた。

 扉が閉まる。そうして、その家は彼女を飲み込んだ。

 

(意外にきれいだな)

 空き家の中は存外に片付いていた。家具は残されている。ここに荷物を持ち込めばすぐにでも生活はできるだろう――リビングにあったソファに腰掛け、彼女はそんな感想を抱く。やや埃を被っていたが、それも軽く払えば済む話だった。

 玄関から靴を脱いで上がると、床はフローリング、右手にはトイレ。左手には洗面所があり、入ると風呂場があった。玄関から真っ直ぐに進むとトイレの次に階段があり、正面にはリビングがあった。リビングの右手には台所がある。覗くと室があった。リビングの1番奥には食堂らしきスペースがあり、4人がけのテーブルが置かれていた。それらを一巡して見終え、ソファに座ったのだった。手持ち無沙汰で、そのまま寝転がってみる。現代に生きる10代の少女として、スマートフォンのない時間はどう暇を潰せばいいかわからなかった。

(退屈だなぁ)

 ――――――

「?」

 不意に、聴覚が音を拾う。起き上がった。辺りを見渡しても特に異常はない。窓から夕暮れが赤く差し込んできているだけだった。

 その音は、2階からしているようだった。なにかが、蠢動しているような。

 ……何かがいる。

 しかし、その発想は彼女に好奇心を持たせるものでしかなかった。

(犬や猫でもいるのかなぁ)

 そう思いながら、階段へと向かう。階段からは灰色のカーペットになっており、薄暗かったが手すりがあったのでそれを頼りに2階へ登った。

 2階には3部屋あった。3部屋のうち、左手と右手奥の扉は開いている。どちらの部屋にも家具が残されており、ベッドが見える。夜はここで寝かせてもらおうかと考えながら、彼女はまだ音を拾っている聴覚を頼りに、1番奥――唯一扉が閉まっている部屋へと向かった。ドアノブを握ると、自然と唾を飲み込む。そっと、扉を開いた。

 その部屋にはなにもなかった。文字通り、生きものもいなければ、家具も一切ない。扉を開け放って部屋に入り込む。他の部屋にはある家具がこの部屋にはない。彼女にはそれが少し不気味に思えた。

 ――――――

 果たして、音はまだ鳴っていた。

 振り返る。そこではじめて気付いた。扉が開いてぶつかった先。そこは壁一面が押し入れになっていた。扉はきっちりと閉じられている。音は、そこから鳴っていた。

(犬や猫が閉じこめられているのかも知れない)

 彼女がそう考えるのは、比較的自然なことだっただろう。しかし、押し入れに犬や猫がどうやって入り込むというのか。その点について、彼女は考えなかった。否、今自分が起こそうとしている行動に否を突きつけたくなかったのかも知れない。彼女は脳の片隅で警報を聴いていた。しかし、その警報を無視し、襖――というより引き戸。よく見るとレールがあり、戸にはキャスターがついていた――を開けた。

 部屋は西向きのようだった。窓から、西日が差し込んでいる。その西日は、押し入れの中も照らしていた。彼女は固まってしまっていた。押し入れの中にいた、異形に。

 それは、昔図鑑で見た甲殻類に似ていた。1番似ているのはカブトエビだった。しかし、それにしては尻尾がない。それにカブトエビはどちらかといえば水棲ではなかっただろうか。さらに、大きさは大型犬ほどもあり――何より異常だったのは、恐らく口なのだろう場所から、紐状のピンクの触手を出し入れしていることだった。彼女は動けなかった。金縛りになった。それでも、なんとか動けたのは、それが――仮に蟲と呼ぼう――触手を伸ばしてきたからだった。今こそ彼女は靴下裸足だったことを後悔したことはない。靴を履いていれば足蹴にできたのに――本能で逃げようとした。しかし、触手はそれより速かった。彼女の片脚に触手を伸ばし、強かに転ばせる。衝撃で一瞬、息が詰まった。やや埃の積もったカーペットの上で息を吐く。しかし、直後に起きた事態に彼女は再び息を詰まらせた。

 転んだ衝撃でスカートがめくれ、露わになったショーツ。それの両端が断ち切られた感触がした。

「――!」

 慌てて身をよじる。何が起きたのかわからなかった。カーペットの上で藻掻いていると――視界に、片脚を縛る蟲がいた。蟲は、高々と触手でショーツを掲げていた。それをその辺りに放った。そしてゆっくりと、ピンクの触手をこちらに伸ばしてくる。

 女としての本能が今度こそ叫んだ。これはまずいものだと。

「いやっ……やだ離して!」

 叫びながら、自由な方の片脚で蟲を蹴る。本当は触れたくもなかったが、そうもいっていられなかった。その上、蟲は特に堪えた様子もない。さらに危惧していたことが起きた。触手はとうとう、彼女の秘部に触れた。触れた瞬間、おぞましい快感が駆け抜ける――快感? そう、覚えた感覚は快感だった。直感で、彼女はこれは触れるだけでヒトに、生物に快楽をもたらすものだと察知した。尚のことおぞましい。しかしピンク色のそれは、彼女の拒絶を気にせずに触れてくる。陰毛を掻き分け、クリトリスを小陰唇の上からこすりつけるようになぞった。

「あ」

 ぞくぞくと背筋が走る。いやだ、という感情はたしかにあるのに、その触手は小陰唇越しにクリトリスをこすりあげ、彼女を責め立てる。異常だった。まだ少し触れられただけだというのに、誰にも見せたこともないのに、彼女は既に喘いでいた。2本の触手が挟み込み、何度も何度もこすりあげる。やがて、淫靡な水音が、静かな室内に響きはじめた。それを聴いて、彼女は絶望的な気持ちになる。

「やめて、お願い」

 がくがくと口を塞ぎながら、カーペットの上で彼女は喘ぐ。頭が混乱していた。自分はなぜ逃げ込んだ先のこの家で、こんな目に遭っているのだろう。触手はそんな彼女の気持ちを知ってか知らずか変わらず責め立てる。

 やがて、触手は彼女に未知の快感を与える。それまで陰唇越しにいじっていたクリトリス。それを、包皮をめくりあげた。

「――あっ、やぁっ……!」

 腰が上がる。それに合わせるように触手も伸びた。触手は包皮を捲り上げたまま、クリトリスを直に愛撫する。彼女はがくがくと腰を揺らした。スカートがめくれ、尻まで露わになる。彼女はそれも見えないほどに腰を振った。ちかちかと視界が点滅する。

「あ、やめ、やめてぇっ……!」

 ただでさえ自分でも触れたことのないような場所だ。それを、快感を与えてくる謎の分泌物を持つ触手になぞられている。頭がおかしくなりそうだった。腰を掲げ続け――やがて、ある瞬間、果てた。腰が落ちる。荒い息が室内を満たす。頭がぼんやりとしていた。床に腰を落とすと、秘部から愛液が垂れるのがわかる。自身はこんなにも興奮していたのか。茫漠とした意識で、ふと足元を見る。

 触手が、それまでの比ではない数の触手を吐き出していた。

 はたと気付く。自身は、「まだ」挿入されていない。そう、「まだ」。

 あの触手たちが入り込むのだ。

「――いやっ!」

 悪寒が走り、それが彼女に渾身の力を出させた。今度こそ、彼女は蟲を蹴り飛ばせた。ボーリングのボールを蹴飛ばしたような重みだったが、それでも触手が外れたのはわかった。ふらつきながらも、なんとか立ち上がる。そして扉を開けたまま逃げ出した。

 こんな家、出なければ。階段を転げ落ちるように降り、左手に曲がる。靴を履くことも忘れ、ドアノブに縋り付いた。

 開かない。

 鍵を確認した。開いている。しかしドアノブは頑なに開かなかった。

 ――この家の支配者の意思に従うように。

 咄嗟にドアノブを離れる。階段の向こう、2階からなにかが這ってくる音がした。それを耳にしながら、窓に縋り付く。鍵は開いていた。しかし開かない。手近にあった灰皿を掴んで叩き割ろうとする。しかし灰皿は跳ね返された。絶望の思いで、辺りを見渡す。そして気付いた。

 台所に室がある。あそこに隠れよう。

 扉に飛びつくと、中に何も入っていないことに安堵し、飛び込んでそっと蓋を閉めた。

 ――真っ暗な室。隙間から僅かに光が差し込んでいる。

 なにかが這いずってくる音が、床から響いた。頭を抱え、震えながらそれを聴く。

 ……ずるっ、ずるっ。

 「それ」は、遠退いているように聞こえた。それに安堵する。朝までここにいよう。きっと、朝になれば大丈夫。何の根拠もなくそう思った。

 しかし絶望が彼女を襲う。「それ」が、たしかにこちらに近寄ってくる音がした。

(ひっ……!)

 ずる、ずるっ……ずるっずるっ……「それ」は風呂場からやって来て、玄関の前を通り、リビングへと入ってきた。一瞬、動きが止まる。しかし、「それ」は確信を持ったように、台所へ入ってきた。

(室に気付きませんように、気付きませんように)

 彼女は必死に祈った。受験でもここまで真剣に祈らなかった。彼女は必死で祈った。

 かちゃり。

 室の取っ手が引っ掛けられる音がした。ゆっくり、ゆっくりと室の蓋が開く。

 「それ」は、触手で器用に室の蓋を開き、こちらを覗き込んでいた。

 祈りは届かなかった。

「い、いやっ」

 後退ろうとするが、室なのですぐに背中がくっつく。咄嗟に頭を庇おうとして上げた腕に、触手が幾本も絡みついた。そして驚くほどの力で引きずり出される。そして、蓋が乱雑に落ちる音と共に、彼女の体は台所の床に放り出された。彼女はそれでも足掻いた。恐怖で萎えた足腰を叱咤しながら床を這いずる。蟲が少しでも届かない場所へ、と祈りながら、リビングのソファへと這いずった。だが、逃避行もそこまでだった。触手が、彼女の両脚を捉えたのだ。

「いや――!」

 ソファの上で彼女の体が引っ繰り返される。仰向けになった彼女が叫ぶのも構わず、触手がぞわぞわと、幾本も幾本も体に伸びてきた。彼女の両脚が大きく開かれた。スカートが弾かれ、大股開きとなる。あまりにもあられのない姿だった。

 床の上の蟲。触手の何本かが制服の上着の下へと這いずってくる。そのうちの何本かが、粘性を持ったなにかが、彼女の豊かな乳房、両の乳首に吸い付く。

「ひ――あ、やぁっ……」

 触手は水音を立てながら、彼女の乳首を吸い上げる。舐め上げるように、彼女の乳房に絡みつきながら、触手は乳首を嬲った。ソファに座ったまま、彼女は再び腰を揺らす。自分でいじっても、乳首でこんなに感じたりしないのに。そんなことをどこか麻痺した頭で考える。そのために一瞬忘れていた。自分がなにから逃げたかということを。

 ふとそちらを見る。蟲の口から、先程のように触手が幾本も吐き出されていた。

 今度は抵抗する間もない。触手が、スカートの下。彼女の膣口から1本、挿入してきた。

「――!」

 彼女は処女だった。自身の指で慰めることしか知らない。しかし触手はそんな彼女の限界を試すように、1本ずつ、1本ずつ触手を増やして挿入してくる。その間にも乳首は愛撫され、腰や腹、尻にも触手が這いずった。彼女の目からは徐々に光が消えていく。

「あ……あぁ……」

 彼女のナカに、どんどん触手が満ちていく。ざわざわと細かく蠢くそれは、ソファの背もたれに頭をこすりつける彼女に最早麻薬のような快感しか与えなかった。とんとん、と子宮を叩く音すら聞こえてくる気がした。否、実際叩いていた。彼女の中の触手は既に充満していた。

 ふと、思い出したように、触手が2本伸びてきた。それは、あられもなく晒された彼女の外陰部。触手が挿入された膣口の上――クリトリスに向かった。再び、包皮が剥かれる。

「ひっ!」

 触手が、再び剥き出しになったクリトリスを愛撫した。同時に、彼女のナカを満たした触手がピストンをはじめる。乳首を舐める触手が口を開き、彼女の乳首を吸い上げた。

「ひっ、あ! だめ! だめえ!」

 同時に襲いかかる快楽の波に、彼女は悲鳴にも近い喘ぎ声を上げる。ソファを掴み、大開きにされた股に挿入される触手たちを迎え入れる。彼女の思考の軸は既にぶれていた。なぜ自分は、なにを我慢しているのだろう? ――ふと気付く。そういえば先程からずっと悲鳴を上げているのに、なぜ誰も気付かないのだろう。だが思い出した。ただでさえ人気のない、人通りに乏しい田舎だ。声など、誰にも届かないだろう。

 ――ならば、あられもなく、この異形に身を委ねても誰も咎めない。

 そう考えた瞬間、何かが切れた。そして同時に、ピストンが大きく撓められ、そして彼女の子宮を突き上げた。彼女は叫んだ。

「あっ! あっ、もっと! もっと! もっとぉ! 気持ちいい、気持ちいいよぉ、もっと気持ちいいのちょうだぁい! あっああ、あああああああ――!!」

 それに応えるように、触手は身を太らせ彼女を突き上げた。

 

 

 

 母親が娘を出迎えたのは、喧嘩をした翌朝だった。

「どこに行ってたの! あん……た……」

「……ただいま……」

 母親は絶句した。娘の姿はどこかぼろっとしていて、さらに、彼女の脚。そこから何かが垂れている。娘の身に起きた何事かを察した母親は、ふらつく娘を抱き締めた。

「ごめんね! 怖かったね!」

「……ただいま……」

 泣きつく母の腕を抱き締め返しながら、娘は虚ろな目をしていた。しかし、その虚ろさの裏には、性に目覚め、そして狂った雌の陰があった。

 それから、娘は何度か姿を消すことがあり、それが途絶えたのは、近所にあった空き家が取り壊されたときだった。

 

 

了


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
点
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。