※この作品はR-18です。

蟲愛ずる姫君   作:ゐづみ


原作:Fate/
タグ:R-18 残酷な描写 間桐桜 虫
間桐桜がゴキブリでオナニーします。
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蟲愛ずる姫君

 それは絹を裂くような叫び声だった。

「士郎ー! ちょっと来てぇー!」

「どうした、藤ねぇ!」

 助けを呼ぶ声に応じて、衛宮士郎は居間に駆けつける。隣接するキッチンには、壁に背中を押し当てて、今にも泣き出しそうな表情を浮かべている藤村大河の姿があった。

 普段の彼女からは想像できない女々しい悲鳴に、只事ではない状況を士郎は感じ取った。

士郎の姿を認めると同時に、一も二もなく大河は駆け寄る。そして、シンクの方を指差しながらしきりに「あれ、あれ」と呟く。一体全体何事かと、背伸びをしつつシンクの中を覗き込んで、途端に士郎は肩透かしを食らったような気分になった。

 そこには、つやつやとした光沢を放つ昆虫の姿があった。シンクの壁面に張り付き、ぴこぴこと触角を揺らしている。

「なんだ、ゴキブリじゃないか」

「なんだじゃないわよぅ。冷蔵庫を開けようと思ってキッチンに入ったらあいつがいて、もう本当にビックリしたんだから」

「藤ねぇってゴキブリ苦手なの?」

「当たり前でしょ! 私だって女の子なのよ。苦手どころか怖いわよ。大っ嫌いよ」

 女の子って……と呆れた声が出そうになったが、すんでのところで留める。確かに、どれだけ図太く見えたとしても大河だって女性なのだ。

「セイバーちゃんだってゴキブリ怖いわよね?」

 大河は、居間に正座して我関せずといった様子で湯呑みを傾けていたセイバーに話を振る。この騒ぎっぷりからゴキブリが出たことは察しているだろうが、大河の痴態とは対照的に泰然と構えているセイバーの姿を見て、大したものだと士郎は感心する。

「いいえ。たかが虫の一匹、動じることはありません」

「えぇっ、セイバーちゃん平気なの。じゃああれ退治しちゃってよ」

「大河、無為な殺生は避けるべきです」

「じゃあどっか外へ追っ払っちゃって!」

「すみません、私は今お茶を飲んでいるので虫の類いに触れることは衛生的に承服しかねます」

「そんな、直接触るわけじゃないんだから。それなら、飲み終わってからでいいからさ」

「すみません、飲食の直後に身体を動かすと健康を害する可能性がありますので」

「なんかのらりくらりと躱してない? セイバーちゃんもやっぱり苦手なんじゃない?」

「そんなことはありません」

 セイバーは瞑目しながらズズズとお茶を啜り、大河の方もその先のキッチンの方も見ようとはしない。明らかに、ゴキブリの存在を意識しないようにしている。意外と可愛い一面もあるようで、セイバーもやっぱり女の子なんだなと、士郎は少し頰を緩めた。

 そういうわけで、この場は男性である士郎が対処しなければならないらしい。

 とはいえ、士郎自身も別に虫が得意というわけでもない。セイバーの言う通り殺してしまうのはかわいそうだし、外に逃がしてやりたいところだけど、迂闊に近づくと這い回った挙句にどこか見えないところに逃げ去ってしまいそうだ。止まっていればそれほどでもないが、あのカサカサとした爬行動作は生理的な嫌悪感を催す。

 果たしてどう対処したものかと考えあぐねている時だった。

「どうしたんですか、藤村先生」

 上階にいた間桐桜が居間にやってきた。

 士郎と大河とセイバー、三人が居間に固まりやや緊張した雰囲気を醸し出しているのを見て、桜は少し戸惑った。

「桜ちゃん、あれ見て。あ、やっぱダメ。桜ちゃんは見ちゃダメ!」

 大河の悲鳴は桜の元にも届いていたので、その狼狽えようをみてやはり彼女の身に何か不幸が降りかかったようだと察した。ただ、士郎の表情にはやや呆れの色が浮かんでいて、要はこの家のいつもの風景だと桜は一人納得する。

 大河があれと指差した方を向いてみて、

「あぁ、ゴキブリですか」

 と呟き、そのままスタスタとキッチンに近づいて行った桜は、シンクのゴキブリを事も無げにヒョイと摘み上げた。

 あまりに滑らかな動作だったので、三人は数瞬間状況が理解できず、その後瞠目した。三人で大騒ぎしていたのがまるで冗談のように、桜はなんの躊躇いもなくゴキブリを素手で掴んでみせたのだ。

「ちょっと、桜ちゃん。平気なの。えっ、すごっ。あぁ、でもでもそればっちいから。ばっちいから」

「はい、私虫は平気なんです。それにゴキブリって実はそんなに汚くないんですよ。とても綺麗好きな虫なので」

「だとしても指で摘むなんて。すごいな、桜は」

 士郎は、男のくせに先程までゴキブリとの接触を躊躇っていたことが情けなくなった。桜の指に捕らえられたゴキブリは、藻搔くように羽根をバサバサと羽ばたかせている。その羽ばたきが桜の指を掠めているのを見て、感触が想像されて背筋がぞわぞわとした。

 てっきり桜のような女の子は虫が苦手で、ともすれば大河以上の怯えを見せるのではないかと思っていたのでこの反応は意外だった。

 セイバーは依然正座を崩さないまま「やりますね、桜」などとしたり顔で言っている。

「それじゃあ、私がこの子を逃してきますね」

 ゴキブリを摘んだまま桜は居間を出て行き、再び上階へと戻っていく。先程まで喚き散らしていた大河は、そのテンションの落とし所を見失い、とりあえずシンクで手を洗った。自分が直接触れたわけでもないのに、なにやら指に気色の悪い違和感を覚えたからだ。

 士郎もまた、意気込みを持て余して妙な居心地の悪さを覚えてしまった。

 セイバーが空になった湯呑みを座卓の上に置き、カンという乾いた音が静寂を打った。

 

 桜は自室のベッドに腰掛け、掌に乗せた虫を見つめていた。照明の光を、赤茶色の背が艶やかに照り返している。足は止まっているが、触角が左右に揺れ、自分はまだ生きているのだと主張している。

 とても生命力の強い生き物だという。一説によると、首を切り落とされても数日の間生き続けるのだとか。家内を俊敏に駆け回る様は、確かに活力に満ち満ちて見える。一般的に嫌われる事が多いが、桜にはその生命力が羨ましく感じられたし、小さい体で必死に生きようとする姿が可愛いとも思った。

 ――だってこの子は、私に害をなさないのだから。

 掌の上に乗っている、その感触はある。けれど、それだけだ。害意も無ければ貪欲も無い。そんな、生き物として当たり前のカタチを見ているだけなのに、桜は自身の胎の中を意識してしまう。ただそこにあるだけで、自分の全てを貪り尽くそうとする存在を。

 胎の中に棲まうそれは桜に寄生し、常に桜の魔力を搾り取っている。桜の生命活動はそれを生かすために有り、桜という存在はそれを容れる器にすぎない。

 ――この子は私の命を脅かしたりはしない。噛み付くことはあっても喰らい付くことはなく、私の魔力を奪うこともない。誰かに寄生することも、誰かに使役されることもなく、この子はただ一匹で生きていける。吹けば飛ぶような儚い命を懸命に生きている。それがとても愛おしい。

 間桐の血筋の傀儡となり、只管凌辱に晒され、生殺与奪の権利をすべて明け渡してしまっている桜にとっては、このちっぽけで嫌われ者の虫一匹が、自分なんかよりもはるかに貴く強い生き物に思えた。

「あっ」

 不意に、掌の上の虫が駆け出した。桜の白く滑らかな肌膚を、節足を駆使して駆けずり回る。咄嗟のことで反応ができず、腕を伝い、腋窩を越えて、自分の衣服の中に虫が進入することを桜は許してしまった。まるで狙いすましたかのように、衣服の内側に滑り込んできたその動作に、小さく驚きの声を上げた。

 衣服の下、桜の素肌の上を虫は這いずる。虫自身には、人間の身体を踏んでいるという認識はなく、ただ地続きのものとして進んだに過ぎず、自ら袋小路に飛び込んだような形になる。暗所はその虫の得意とするところではあるが、そこは衣服と人体とに挟まれ窮屈で、どうにも不本意な場所に迷い込んだであろうことを悟る。密閉空間に囚われたと知り、脱出しようと羽を広げて飛び立とうとするが衣服に阻まれる。天地を入れ替えて、衣服に着地して駆けてみるが、それでもなかなか出口には至らない。

 虫が這った跡には、僅かな掻痒感が残る。しかし、桜にとっては然程不快なものではなく風に吹かれた程度の瑣末な感触だった。一匹の小虫が這い回る程度なら、むしろ心地良いくらいだ。

 虫が今、自分の肌膚のどの辺りにいるのかは感覚として理解できた。先程脇腹を通って、今は臍の辺りで立ち止まった。羽ばたき、飛び立とうとするが失敗。羽が肌着を擦る感触。そのまま下降するが、スカートのウエストに阻まれ下腹部まで辿り着けない。反転し、首を目指す形で上昇。鳩尾を越えて、下着の前中心を踏み、軌道を少し逸らして左のカップの盛り上がりを少し登ると、そこでまた脚を止めた。乳房が押し上げた下着と肌着が密着しているため、衣服に挟まれる形になる。何かを探るように、細かな移動を繰り返す。カップの上を、細かく、細かく。カップの上辺と肌膚の境目、下着に締められて少し盛り上がった乳房に脚を掛ける。そこでまた、羽を広げる。羽ばたきの感触は爬行のそれよりも鮮明で、誰かの指先でやや乱暴に撫でられているような錯覚を覚える。そして、左の乳房を伝う形で谷間を越えて、今度は右の乳房へと至る。再び脚を止め、今度はより長めに羽ばたく。

「……っ」

 バサバサ。バサバサ。乳房を愛撫されているような錯覚に、桜は微かな吐息を漏らす。

 乳房の頂点から飛び立とうとしたがやはり叶わず、右肩の方へと脚を進め、肩甲骨を登って、背筋の方へと向かう。正面と比べて凹凸が少なく、肌着との密着度も低い背面を悠々と這いずり回る。

 先程までと比べて、肌膚の感覚が鋭敏になっている気がした。

 爬行後の瘙痒感は人の指が触れたような感触へと変わっていて、背中を誰かに撫で回されている錯覚に陥った。くすぐったい。それに、ほんの少し、気持ち良い。

 桜の身体は、性的快楽を求めるように改造されている。本質的に、肌膚に触れられることに飢えているのだ。あの、心身を破壊し尽くすかのような荒々しい蟲達の陵辱に比すれば、この虫の愛撫のなんと嫋やかなことか。この虫にその意思はなくとも、桜の身体はあらゆる感触から快楽を引き出そうとする。そして、その反応がまた胎の中の存在を悦ばせてしまう。

 何かのスイッチが入ったように、意識し始めるともう止まることは出来なかった。ただ虫が肌膚を這っているだけなのに、そこに性的快楽を見出さずにはいられない。

 桜は堪らず、ベッドにうつ伏せに倒れこむ。

 指先が背筋を伝っている。人間の指のように体温を感じることはできない。或いは、爪先による愛撫にも似ている。くすぐったさは既になく、虫が這ったあとには快楽の軌跡が桜の背中に刻み込まれていく。

 自身の背中を虫が這い回っているという滑稽な情景は、もはや桜の頭には想像できず、事実を置き去りにして想像が先走り、見知らぬ者の手によって肉体を弄ばれているという妄想が脳内を埋め尽くす。あまりに微かな力加減の愛撫に焦れったくなる一方で、より強い刺激を求めている自分に気付き、頰が紅潮する。

 ベッドにうつ伏せになっているので、虫の軌道が正面に回ることはなく、脇腹や腋窩や首筋や腰のあたりを周回している。桜がより触れて欲しいと思っている所には触れられず、しかし虫にとってはただ地を駆けているに過ぎないのだからそれは当然のことだった。

「お願いっ、です。これ……以上はっ」

 桜は誰に届くわけもない懇願を唱える。だがそれは、自分自身の屈服感を煽るための言葉でしかなかった。声に出し、恥辱に塗れることでより一層の愉悦を煽り立てた。自分が快楽に身を捩らせる度に、裡なる魔術回路が活性化し、胎内に巣食う蟲が快哉を叫ぶ。

 爬行する虫は桜の首筋を這い登り、襟元からついに顔を出した。長い髪の間を蠢き進み、やっとの思いで自由を得る。蛍光灯に照らされたことで、自分が日陰を抜け出したことが虫にも理解できた。そのまま飛び立とうと羽を広げたところで、しかし再び体を締め付ける圧力に包まれた。

 布団に顔を埋め不規則な呼吸を繰り返しながら、桜はもう一度指で虫を掴んだ。不随意に溢れる唾液と涙がシーツを濡らしている。力の加減が上手くできず、虫を危うく取り落とすか、もしくはそのまま握り潰してしまいそうになる。しかし、このまま彼にここを離れられては堪らないと、必死に繋ぎ止めようとした。こんな状態で置き去りなんて、耐えられるわけがない。

 虫を掴んでいない、もう片方の手をショーツに掛ける。徐ろに引き下ろすと、下露が満溢して糸を引いた。秘部が外気に晒されただけで桜は悶絶する。更なる愉悦を求めて秘部は蠕動し、滴る下露は太腿を濡らしていた。

 拘束を逃れようと羽をバタつかせる虫の生に満ちたその抵抗が、桜の情動をより滾らせる。奇怪に蠢く三対の節足が目に入ると、それが力強く自分の秘所を掻き進む感覚を想像してどうしようもないほどに濡れそぼってしまった。

 この生命力を直接感じたい。この度し難いまでに淫奔な肉体に刻み込んでやりたい。

 虫を掴んだ右手を、ゆっくりと下肢の方へと運んでいく。露出した太腿に細い触角が少し掠るその僅な感触すら、何倍にも増幅された快感となって桜の心身を震わせた。

 虫を身に受け入れられるように、うつ伏せのまま腰を浮かし、尻臀を突き上げる。剥き出しの秘部を見せつけるような形になり、もしも階下の士郎がこの部屋にやって来たらと思うと桜の羞恥は最高潮に達した。こんな姿を先輩に見られたりなんてしたら、と己の痴態が信じられないという心地でありながらも、意識すればするほどに秘部はより多くの下露を湛え、滴り落ちてシーツに染みをつくった。

 この部屋で自慰をするのは初めてではない。衛宮士郎の事を想いながら、桜は幾度となくこの部屋で嬌声を漏らしていた。想い人が住まうこの家に自らの淫らな飛沫をまき散らしている事に、強い慚愧の念を常に感じていた。叱って欲しかった。こんなはしたない自分を許さないで欲しかった。

 本当のところでは士郎にこの姿を見られる事を、桜は望んでいたのかもしれない。こんな自分を知られて幻滅されたくはないと思うと同時に、幼少の頃より定められたこの呪わしき肉体を、愛する人に糺して貰いたかった。相克する理性の葛藤は、しかし今この瞬間においては悦楽を希求する動物的本能に掻き消されて意味を成さない。

 辛うじて出来たのは、祈りをのせることだけだった。この虫は生命力が強くあらゆる環境で生育し、しかも雑食であるという。女性が誤飲したものが繁殖し腹を食い破って溢れ出てきた、などという都市伝説まである程だ。その力強さに祈りをのせた。私のこの穢れた体を、私の胎内に巣食う魔の象徴をどうか内側から喰らい尽くしてほしい、と。汚辱にまみれたこの身を浄めてほしい、と。その願い自体が、欲求に支配された身から発せられたものだということを忘却しながら。

 突き出した秘部に、ゆっくりと虫の腹の面を近づけていく。鋭敏になった自身の性器から奔る快感を想像するだけで痛いほどに動悸が高鳴った。じりじりと近づけていき、触れるか触れないかのところで手を止めていたが、蠢く虫の節足が不意に桜の肉芽を掠めた。

「ッーーーーー!!」

 体が波打つ。ほんの一瞬だったが、身体中を電流のように衝撃が駆け抜けた。

 もう、自制は効かなくなった。

 桜は夢中で、虫の腹を自身の肉芽に押し当てた。

「っ! あっ……ぅぁっ! んっ……」

 藻搔く節足が、桜の肉芽をがりがりと掻き毟る。絶え間ない快楽が桜の身体に注ぎ込まれる。虫の僅な挙動の一つ一つが名状し難い衝撃となって桜を弄んだ。

 ビクビクと身体を撓らせ、殆ど痙攣のような動作で、伝播する感覚を全身で享受する。自身の中で滞る快楽を体外に分散させるかごとく、肉体を叩きつけるようにしてベッドを軋ませる。ギッギッ、とベッドが悲鳴をあげる度にうつ伏せで下敷きになっている乳房が圧迫され、痛みと息苦しさが桜を襲った。剥がれ落ちていく理性を何とか繋ぎ止めて、左手を肌着の中に忍び込ませ、下着のホックを外す。開放感と共に、熱を帯びた吐息が漏れる。緊張が少し和らいだその瞬間に、強烈な痛みが奔った。

「ぃいっ……ぁあぁっ!」

 桜の肉芽に虫の顎門が噛み付いた痛みだった。剥き出しの神経を直接刺激されるような感覚に、頭がパニックを起こしそうになる。針で貫かれるような痛みと、それに伴う激しい愉悦とで秘部から分泌液が噴出する。桜の愛液を虫は既にどろどろに纏っていて、それを持つ桜の右手にまで伝ってきている。

 悲鳴に近い嬌声を上げそうになり、階下に聞こえないように枕を噛んだ。声を必死に抑えようとして、口角から漏れ出る唾液が枕をぐしゃぐしゃに濡らした。

 込み上げる切なさに、頭がおかしくなりそうだった。自分がもう絶頂を迎えているのかどうかもわからなかった。最早快楽を受容するためだけの器官と成り果てた桜は、より強く、より深い刺激を唯々求め続けた。

 虫を秘部に押し付け、虫が生き汚く抵抗し、更に強く抵抗して見せろとより力を込めて押し付ける。窒息寸前になりながら、噛み付き、足掻き、その小さな身体で懸命に生きようとするいじらしさが、嘗て無抵抗に生を放棄した桜には愛おしくて仕方がなかった。

 この虫が、自分の胎内を這い進んで行く感覚を想像する。ずるずると、自身の性器を押し拡げる異物感は桜にとってはあまりに慣れ親しんだもので、不快感は無く、為すがままを受け入れるつもりだった。虫が蟲の元まで至り、その顎門を突き立てる様を想った。

 祈りが増すごとに、力が籠った。もっと強く、生きて、生きて、生きて、生きて見せて。虫の生命力が桜の快楽に直接変換されているようだった。秘部への刺激は未だ絶え間なく、桜は尻臀を突き上げた体勢を保つことがやっとだった。

 今すぐに膣内に虫を侵入させたかった。しかし、ここで一度秘部から虫の身体を離して快楽を途切れさせると、そのまま意識を失ってしまいそうだった。底無しの貪欲は、秘部を刺激する以外の選択肢を与えてくれなかった。

 押し付け、擦り、また押し付ける。不随意に動く指先にどのくらいの力がかかっているのか知る由はない。虫の細く尖った節足で自分の性器を抉り取らんばかりに、桜は虫をひたすら押し付け続けた。既に虫が窒息し絶命していることに気付かないまま。

 切なさが希う。蠢動をやめてしまった虫に対し、もっと痛みを、と。更なる悦楽を、と。ぎちぎちと指先に力を込めるたびに、もはや抵抗ができなくなってしまった虫の胎が潰れ、羽が砕け、足が千切れる。裂けた腹から溢れる白濁した体液と桜の愛液が混ざり合い、グロテスクな色相を為している。

 宛ら捕食のように、桜は自身の膣内に指先を挿し込み、千切れた虫の肉片を奥へと誘う。構わず桜は、自らの中指を深く深く挿入する。虫の死骸を擦りつけるように、内壁をかき回す。蠢く虫の生命力はもう感じられず、ただの異物感になり果ててしまっていたが、不満を唱える前に、迫る快楽の波に流されることを優先した。

「ぁ、ぁああ、んーーーーーーーーーーっ!」

 下階に響かぬよう声を押し殺しながら、桜は幾度目かの絶頂を迎えた。

 そのまま事切れるように全身を弛緩させる。突き上げていた尻臀が崩れ落ちる。

 唾液と涙と鼻水で顔面をぐしゃぐしゃにしながら荒い呼吸を繰り返す。

 どれほどそうしていたか、やがて落ち着きを取り戻した桜は虚無感に苛まれた。自身の指先を見てみると、乾いた自らの愛液と虫の体液と肉片の残滓こびりついていた。快楽に突き動かされるまま圧殺してしまった虫の死骸は、まだ自分の膣内にとどまっている。

 こんなちっぽけな虫一匹が、この呪われた身体をどうにかできるはずはない。妄想と呼ぶのも生温い幻想を抱いていた先ほどまでの自分を恥じ入る様に、桜はため息をつく。

 乱れた呼吸や衣服を淡々整え、ショーツを穿き直す。

「シーツ、汚しちゃったな。洗わないと」

 胎内の虫がドクリと蠢いた。


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