アキラは矢でタクヤの脳天をい抜く。
タクヤは怯みカイトの首元から口を離した。
『た...助かった』
カイトは情けない声を出した。
...もし、生身だったなら首の肉を食いちぎられていただろう。
『ボサっとするな! 来るぞ!』
アキラはそう言って2発目を構えた。
『はっ...はい‼』
『おっ...おりゃあ!』
カイトはへっぴり腰ながら変異したタクヤを剣で切りつけた。
タクヤは怯んだ。
だが、その傷口はすぐに塞がってしまった。
『...!? なんで!!』
カイトは驚いた。
『...海洋系の特徴だ。奴等の回復力は他種族と比べても格段に高いからな』
『だが、心臓を潰せば問題ない』
アキラはそう言って必殺技を発動した。
『...っ!!』
『やめて‼』
ユウキは叫び変異したタクヤを庇うかのように両手を伸ばし立ちはだかった。
『...!?』
『...!?』
『...!?』
カイト、アキラ、キョウスケは動きが止まる。
『どけ!! 後藤ユウキ...‼』
『そいつと一緒に死にたいのか‼』
アキラは強い口調で言った。
『ユウキさん...?』
カイトは戸惑っている。
『本当はあたしだって退きたいよ......でも』
ユウキは泣き出した。
『...ユウ......キ』
『俺...なんか...を...なんで......』
変異したタクヤは幽かな声で言った。
『......っ!?』
『タクヤ?』
ユウキはタクヤのほうを振り向いた。
ーーー回想シーン 2年前のクリスマスイヴーーー
...実はタクヤも後悔していた。
タクヤは生まれ育った家庭環境のせいか女なんて金をむしり取るかセッ○スするかくらいの用途しかないと思っていた。
完全に父親の影響だ。
タクヤの父もミュージシャン(ヒモ野郎)で勉強も出来なければ働くのも大嫌い。おまけにセッ○ス依存症でせいぜい歌が上手いのと顔が良いのだけが取り柄というダメ人間だった。
おまけに口癖は『女なんて殴ったり抱いたりすれば何でも言う事を聞く』
『所詮、奴等は俺の見た目しか見てない...』
幼い頃は父のようになりたくない。そう思っていたのだか大人になった自分は皮肉な事に父と同じくミュージシャンという道を選び、そしてセッ○ス依存症となった。
そんなある日だった。ユウキと出会ったのは。
最初こそ、新しいATM発見と思い近づいたが何処までも純粋で優しいユウキに段々と本気で惹かれていくようになった。
父がその存在を一生憎みながらも心の何処かでは一生追い求めていた...。
これが......これこそが“愛”なのか?
タクヤは少しずつだが変わり始めていた。しかし、だからといって急に働く意欲が湧く訳もなく、依存症から急に脱する事なども出来る筈もなく未だにくすぶっていた。
クリスマスイヴの夜、ユウキに会えない寂しさを必死に埋めるように隣に住む女に手を出してしまった。
事を終え、酒も入って良い気分になってしまった2人はある事無い事をベラベラと語り合った。
そこに帰ってきてしまったユウキ...。
泣きながら問いただすユウキの姿に自分達の関係は終わってしまった。自分みたいな奴が愛を求めるなんてやっぱり間違っていたんだ...そう絶望したタクヤはつい心にも無い事を言ってしまったのだ。
あれからのタクヤは誰とも付き合っていない。
そして皮肉な事にあれ以来セッ○スへの執着も無くなってしまった。
ーーーーーー
『俺は......おま...え......を』
『...なん...で』
タクヤは幽かな声で言った。
『あたしにだってわかんないわよ‼ あんな捨てられ方したのに...』
ユウキはうつむきながら強い口調で言った。
タクヤは急に苦しみだし、暴れだした。
『グアァァァァァ』
アキラはタクヤめがけて矢を放つ。
タクヤの爪はユウキの服にかすって袖が破けた。
『...キャっ』
ユウキは吹っ飛ばされた。
『ユウキさん‼』
ハヤトがすかさず駆けつけ、ユウキを受け止める。
ユウキの腕にはドクロのタトゥー(バンドのロゴ)があった。
『...!?』
タクヤはそれを見て動揺している。
ユウキはハッとした。
そして、咄嗟にそれを手で隠す。
『...』
タクヤはゆっくりと膝から崩れ落ち、自身の脳天に刺さった矢を引き抜いた。
そして、その矢を恐る恐る自身の胸に向ける。
『ユウキ......ごめんな』
そう言ってそれを思いきり自身の胸に突き刺した。
タクヤはその痛みについ苦しそうな低い唸り声をあげた。
奥へ奥へと差し込まれていく矢。
『ナ...ニヲ....ス...ル...ヤメロ!?』
『ははっ...ツレねーな...。そんな事言わずにさ。一緒に...心中しよ...う......ぜ』
タクヤは口から大量に吐血しながら虫の息でそう呟いた。
タクヤの変異は解かれた。
右目は既に白く濁り、かろうじて黒目の残る左目からは涙を流していた。
だが、不思議と表情自体はとても穏やかだった。
『さよなら......』
声にこそならなかったが口は確かにそう動いていた。
そして、タクヤはその場に倒れた。
『...!?』
カイトは驚いた。
『...!?』
キョウスケは驚いた。
『....』
アキラはそれをただ見つめていた。
『タクヤ......!?』
ユウキはハヤトを振り払い、タクヤに駆け寄る。
『ちょっ...!! ユウキさん』
ハヤトはそんなユウキを呼び止めようとした。
『何で......、何でよ』
そして、ユウキはタクヤを必死に抱き起こした。
だが、抱き起こした時にはもう既に絶命していた。
とても穏やかな死に顔だった。
ユウキはタクヤを抱き締めたまま泣き出した。
アキラもカイトも先程まで感じていた敵の気配が消えたのを感じた。
『...まさか、ディアーボルスと心中するとはな』
アキラは変身を解除し悲しげな表情で呟いた。
『...こんな事って』
カイトも変身を解除した。
悲しげな表情を浮かべている。
『...嘘だろ』
キョウスケも変身を解除した。
動揺している。
『...』
ハヤトも変身を解除した。
悲しげな表情を浮かべている。
『...』
そして、服が破けて異常に露出されたユウキの肌を隠すようにそっと自身の上着を貸してあげた。
ーーー帰りのヘリの中ーーー
ユウキはタクヤを抱き起こした際に付いた血も拭かずにただ黙って空を見つめていた。
『...』
カイトはそんなユウキを心配そうに見つめていた。
ーーー19:00 志藤邸中庭ーーー
ユウキは1人で噴水に腰掛けていた。
カイトは通りがかった。
...自分に何か出来ることは無いだろうか。
『ユウキさ...』
ユウキに声をかけようとした途端。別方向からアスカがやって来た。
...アスカさん?
『...夕飯も食べに来ないと思ったら、こんな所ににいたのね』
アスカはユウキに言った。
...私ったら何でこんな女に声なんて掛けてるのよ。でも、口が勝手に。
『...何しに来たの? バカにでもしに来た?』
ユウキはムッとした表情をして言った。
アスカは呆れた様子で溜め息をついた。
『失礼ね。私だってそこまで非道じゃないわよ』
アスカはユウキの隣に座った。
そして、足を組む。
...私にだってわからないわよ。でも、何だか今のあんたは何だか放っとけない。
『...』
『...』
2人の間にしばらく沈黙が続いた。
『話は聞いたわ...。何て言うかその......辛かったでしょうね』
アスカはうつむきがちに言った。
『...!?』
ユウキは驚いた。
『何よ急に......、辛いだなんてそんな事...。相手はあたしを捨てた奴なんだから......むしろ死んでくれて...清々したんだから』
ユウキは涙が出てきた。
『...』
そんなユウキをアスカは抱き寄せた。
『...泣きなさい。女の胸で良かったらいつでも貸してあげるわ』
...何してるんだろう、私。
『...!?』
ユウキは堪えきれなくなり声を出して泣き始めた。
『...』
カイトは安堵の表情を浮かべてた。
どうやら自分の声かけは不要だと悟りそのまま中庭をあとにした。
ーーーーーー
『...ありがとう。あんたの胸貸してもらったらちょっとだけ気持ちが楽になったわ』
泣き止んだユウキはアスカに照れ臭そうに言った。
『そう...それは良かったわね』
アスカは優しい表情を浮かべた。
『...』
『...もう少しこうしてても良い?』
ユウキはそう言って再びアスカの胸に顔を埋めた。
『なっ...泣き止んだなら離しなさいよ!』
アスカは少し恥ずかしそうに言った。
『い~や~だ!! 』
ユウキはそう言ってアスカの背中に手を回して強く抱きついた。
『ちょっと...』
アスカは困惑した。
『実はあたし...お姉ちゃんいたんだ。あたしさ、小さい頃は泣き虫で些細な事ですぐ泣いてた......』
『そうしたらお姉ちゃんいつもこんな感じにギューって抱き締めてくれてたな~』
ユウキは無邪気に笑った。
『“いたんだ”って過去形って事はまさか......』
アスカは恐る恐る尋ねた。
『死んじゃったの......あたしが9歳の時に。事故で...』『しかも...、あたしを庇って』
ユウキは悲しげな表情を浮かべアスカの胸に顔を埋めながら言った。
『苦労してるのね...あんた』
アスカはそんなユウキを不憫に思い頭を撫でてやった。
ユウキは目を閉じた。
...何か、この人の腕の中って凄く落ち着く。
『...ねぇ‼ これからは“アスカ”って呼んでも良い?』
ユウキは急に顔を上げて明るい表情で言った。
『...切り替え早いわね。あんた』
アスカは少し引いている。
『そっちも“あんた”とか“クソビッチ”とか呼ばずに“ユウキ”って呼んでよ‼ ね?ね?』
ユウキは無邪気に笑って言った。
『...わかったわよ』
アスカは呆れた様子で言った。
だが、何だか嬉しそうにも見える。
『じゃあ決まり!! これからよろしくね。アスカ』
ユウキは無邪気に笑った。
『...!』
アスカはそんなユウキの姿を不覚にも可愛らしいと思ってしまった。
『よろしく、ユウキ』
アスカは微笑んだ。
...何故だろう。何だかこの女とはずっとこうなりたかった気がする。
『...!!』
アスカは再び頭痛を感じた。
脳裏に芝生の上を裸足で駆け回る女性の姿が浮かんだ。
その女性は急に止まり、アスカのほうを向いて笑顔でこう言った。『ねぇハルキ、私の事好き?』
『...!?』
アスカはハッとした。
...何、いまの。
『じゃあ、そういう事だからあと30分~』
ユウキは嬉しそうにそう言ってアスカの胸により一層顔をすり寄せた。
『いや...いい加減離れなさいよ』
アスカは呆れた様子でユウキの頭に軽くチョップした。
ーーー22:00 ユウキ自室ーーー
アスカと別れ、部屋に戻ってくると再び悲しみが押し寄せてきた。
部屋がノックされた。
『004いるか?』
サトミの声だ。
ユウキはドアを開ける。
そして、恐る恐る尋ねる。
『...なんですか。こんな夜中に』
『...志藤様がお呼びだ。一緒に来い』
サトミは言った。
『...』
ユウキ不安げな表情を浮かべサトミについていった。
サトミは志藤の書斎の扉の前で足を止めノックをした。
中からメイドがドアを開けた。
『志藤様、004を連れて参りました』
サトミは志藤に一礼。
『入れ』
ユウキに中へ入るように促した。
ユウキは指示通り恐る恐る中へと入る。
『こんばんは、後藤さん。さぁ、そこに座りたまえ』
志藤は優しい笑顔でそう言い、ユウキに自身の向かい側にあるソファへ座るよう促す。
『...失礼します』
ユウキは恐る恐るソファに座った。
『聞いたよ...今回の被害者は君の元恋人だったんだってね...』
『カンディル型か...。君がライダーになっていたならば彼を助けられたかもしれないね』
志藤は悲しげに言った。
『ライダーになっていたら...?』
ユウキは尋ねた。
『ああ、そうだ。君に適合しているライダー...ルクスリアは“性”と“生”を司る力を持っていてね』
『対象の生を“奪う”事も出来れば“与える”事だって出来る。ルクスリアはね......その“命の入れ替え能力”を駆使する事によってカンディル型等の寄生種から被害者を救い出せる唯一無二の存在なんだ』
志藤は言った。
『そんな事......今更言われても』
ユウキはうつむいた。
『確かにそうかもしれないね』
志藤は申しわけなさそうに言った。
『...しかし、君がライダーになる事で君と同じ悲しみを味わう人を無くせるとしたら?』
志藤は幽かに笑みを浮かべて言った。
『...!?』
『ばっ...バカバカしい。あたしに人助けでもしろって言うの?』
ユウキは動揺している。
『...人助けというよりは、救えなかった彼への罪滅ぼしとでも言っておこうかな』
志藤はニヤリと笑う。
『後悔しているんだろう?』
『...!?』
ユウキはハッとした。
ユウキの脳裏にタクヤの最期の姿が思い出された。
志藤はニヤリと笑った。
『...確かに彼は救いようの無いクズだ』
『だが、君の事は本当に愛していたんだよ。だからこそ自身の身を呈して守った‼ 君を!!』
『それに。そんな彼を......君をあんな捨て方をした彼を!! 今でも心の何処かで愛している。 そうだろう?』
志藤は熱弁した。
『ちっ...違う!! あたしはあんな奴の事なんて......』
ユウキは動揺した。
『素直になりたまえ...愛の形は人それぞれだ。 私は君の思考を尊重するよ?』
志藤はニヤリと笑った。
『...違う‼ あたしは...!! あたしは......!!』
ユウキは頭を抱え混乱した。
ーーー翌朝、AM3:00ーーー
『...おや? お目覚めかい?』
『おはよう後藤さん。今日から君は仮面ライダールクスリアだ』
志藤は微笑んだ。
『......』
ユウキは横たわったままそんな志藤をただ黙って見つめていた。
第12話【罪滅ぼし】END.........