カイトを001号室のベッドに寝かせる為、カイトを担いで001号室へ向かう篠原。
篠原が戻ってくるまでの間、アキラは空を仰ぎ過去の事を思い出していた。
ーーー今から40年前 ーーー
鳥籠から1匹の鳥が解き放たれた。
アキラはそれを驚いた表情で見ていた。
『ヒロキ...! 急に何を!』
『アキラ.....!俺は必ず君をこの鳥籠(志藤邸)から救いだしてみせる。あの鳥のように......だから!』
ヒロキと呼ばれたその男性は、アキラの両肩を掴み真剣な眼差しでアキラを見つめ言った。
『運命からは逃れられない......、それはお前が一番わかっている筈だ』
アキラはヒロキから目を反らし、悲しそうな表情を浮かべた。
『......俺に、またお前らフューリーの死に様を見送れとでも言うのか?』
アキラはヒロキの手を振り払い背を向けた。
『 ...何故お前らはわかってくれないんだ』
『俺は...、ただ隣にいてくれればそれで良いのに』
アキラは涙を浮かべた。
『...俺だって側にいたいよ。 お前と一緒に毎日お茶したり、手合わせしたりさ......。毎日めちゃくちゃ楽しい』
ヒロキは言った。
『でも、それだけじゃダメなんだ。...どうしても、外の世界を見せてやりたくなる』
『遊園地に行ったり、映画館で映画を観たり、...カフェでパンケーキ食ったり』
『もし、それらがお前と一緒に出来たならって俺毎日思うんだぜ?』
そんなアキラをヒロキは後ろから抱きしめ優しく語り始めた。
『外の世界なんて...、とうの昔に諦めた』
『...お前を失ってまで俺は“自由”を手にしたいとは思わない』
アキラは自身の泣き顔を隠すようにうつむきながら言った。
『俺は死んだりしない...。約束するよ』
ヒロキは優しい表情を浮かべて言った。
ーーーーーー
その3日後。
メイドが走ってアキラの自室に駆け込んできた。
『アキラ様大変です! ...ヒロキ様が‼』
どしゃ降りの志藤邸中庭。
『ヒ......ロキ...』
アキラは膝から崩れ落ちた。
そのには見るも無惨な姿になってヒロキがいた。
ーーーーーー
『お待たせ致しましたアキラ様』
篠原が戻ってきた。
『では、ご説明させて頂きます......』
『カノンは死んでも...。フューリーは死んでいなかった。 そう言いたいんだろ』
アキラは篠原に背を向けたまま、彼の言葉を遮るようにそう言った。
『...!? ご存じだったのですね』
篠原はハッとした。
『アイツが初めて変身した時からわかっていたさ...』
『家主が自身の武器で心臓を突かれて死んだというのに......本当にしぶとい奴だ』
『どうやら、カノンの仮説も所詮は一時しのぎにしか過ぎなかったという事か』
アキラは寂しげに笑った。
『次は男....か。なぁ篠原、俺が死に様を見送るのはアイツで何人目だ?』
『...っ!! 貴方は、またそのような事を......』
篠原は言った。
『だってそうだろう‼ 奴の家主が男だろうか女だろうが結果は同じだ。 皆俺を愛し、此処から連れ出そうとする。そして、奴に破れて無惨に死ぬ.........‼』
アキラは悔しそうに弓を床に投げ捨てた。
『そして...。俺はそれを繰り返さないが為にフューリーを必死につき離そうとしても俺の中の“アイツ”はフューリーを欲する』
アキラは膝から崩れ落ちた。
『...自殺でも出来たらいいんだけどな。 所詮、こんな物で刺したところでただ痛いだけで死ねもしない.........』
そう言ってアキラは床に落ちた矢を手に取り、先端を自身の喉元に向けた。
『...アキラ様!!』
篠原はアキラに駆け寄り矢を奪い取った。
それをへし折ってそこら辺に投げ捨てる。
そして、アキラの両手を自身の両手で優しく包み込みこう話し始めた。
『可哀想な我が主....。その美しさ故に“貴方を愛する者”はこの世にごまんといるでしょう。 しかし、“貴方が愛する者”と貴方...いいえ貴方の中の“彼女”は決して結ばれる事はない......』
篠原は真剣な眼差しでこう続ける。
『...ですかアキラ様。私は彼にはその運命を覆せる力があるのではないかと感じているのです』
『覆せる力......だと?』
アキラは言った。
『はい、そうでございます。根拠はあるのか......と言われると正直返答に困りますが』
篠原は苦笑いをした。
『...』
『...』
2人は見つめあったまましばらく沈黙した。
アキラはフっと笑ってこう言った。
『...お前が根拠もないくせにそんな目をするなんてな』
『......わかった。お前のその自信に満ち溢れた目に免じて絶望するのはまだやめといてやる』
篠原は安堵の表情を浮かべてから急に思い出したかのように1つ溜め息をついてからこう言った。
『...おやおや。さっきまでのしおらしくて可愛い主は何処へやら...。慰めなければ良かったですかね』
『...性格悪いのはどっちだ』
アキラは呟いた。
『おや。聞こえていたんですか? 小さな声で言ったつもりだったんですがね。 これは失礼しました』
篠原はニコニコしながら言った。
『いや...わざとだろ』
アキラは篠原を睨み付けた。
ーーー同時刻 都内の住宅地ーーー
1人のふくよかなマダムがレジ袋片手に朝早くからランニングをしていた。
『はぁ...はぁ...。 やっぱり早朝のランニングは気持ちいいわね』
マダムは首にかけたタオルで額の汗を拭いた。
『さて、じゃあこの辺で休憩を......』
そう言ってマダムはベンチに座ってレジ袋からドーナツといちご牛乳を取り出した。
『いただきま~す』
マダムがドーナツにかぶりつこうとした次の瞬間。人間程の大きさの二足歩行の蚊がベンチの後ろから顔を出し、その鋭い口でマダムの首元を刺した。
どうやら、口から何か注入しているようだ。
『...っ!?』
マダムは叫ぶことすら出来ずにその場に倒れ込んだ。
一通り“何か”を注入し終わった蚊はマダムの首元から口を抜くと力尽きたようにその場に倒れた。
そして、ジュクジュクと腐り最後にはその場に腐った肉片のようなものだけが残った。
しばらくしてマダムはむくりと起き上がりこう呟いた。
『チ...ガ......ホ...シイ』
マダムは千鳥足で歩き出した。
ーーーーーー
カイトの自室。
カイトは夢を見ていた。
夢の中でカイトは白い大きなベッドに横になっていた。
『ここは...何処?』
部屋のドアが急に開いてアキラが入ってきた。
『おいヒロキ!! 貴様いつまで寝ている!! もう昼の12:00だぞ!!』
『...ヒロキ?』
カイトは動揺した。
『この軟弱者。 早く起きろ‼』
そう言ってアキラは布団を無理やり剥ぎ取ろうとした。
『えっ...いや、ちょっと!?』
カイトは咄嗟に布団を取られまいと必死に引っ張った。
すると無意識に自身の右手がアキラの二の腕を掴んで布団の中に引き寄せた。
『...添い寝か? まあ、俺的には大歓迎だけど』
...何言ってんだ自分は。
カイトは自身の放った言葉にハッとした。
『...バカが!! そんなわけないだろ‼ ちょっ......離せ』
アキラは顔を真っ赤にしながらそう言った。
『いや...その。そうしたいのは山々なんですが......体が勝手に』
言葉とは裏腹にカイトの両手はアキラの体を離さなかった。
彼の普段の言動からすると彼にこんな事をしようものなら殺されても文句は言えない。
カイトは死を覚悟した。
だが、どうやら自分を殺す気は無いらしい。
それどころかちょっと受け入れてる...!?
かっ...可愛い。
カイトはそう思ってしまった。
『...』
アキラは抵抗をやめてカイトの胸に顔を埋めた。
『......10分だけだからな』
『エッ............エンダァァァァァァァァァァ』
カイトはそう叫んで飛び起きた。
起き上がるとそこは見慣れた自身の部屋だった。
隣にアキラも寝ていない。
『...夢か』
『僕としたことが......アキラさんで何て夢を』
アキラは頭を抱えた。
...それにしても何故自分は自室にいるのだろう?
ふとテーブルを見るとそこには置き手紙とオロナ○ンCが1本置いてあった。
カイトはそれを手にとって読んだ。
『鳴瀧さんヘ 今朝は鍛練にご参加頂きありがとうございました。しかし急に倒れられたので私もアキラ様も大変ビックリ致しました。恐らく昨日の疲労が残っていたのだと思われます。これを飲んで早く“元気”になってくださいね。 篠原より』
『そっか...僕倒れたんだ』
アキラはそう呟いて時計を見た。
『10:00か...』
ドアがノックされた。
『001、出撃命令が出たぞ。速やかに出撃の準備をしろ』
『あっ...はい』
カイトは着替えてヘリへと乗り込んだ。
ーーー現場に到着ーーー
...気まずい。
カイトはアキラを直視出来なかった。
自身の夢の中とはいえ、あんな可愛い姿を見てしまうと.....。
『...』
アキラはそんなカイトを見ていた。
現場に到着するとサトミが今回の任務内容を話し始めた。
『今回はディアーボルス蚊型 下級体だ』
『下級? って事は雑魚じゃねーか。今回の任務は楽勝だな』
キョウスケはへへっと笑って言った。
『蚊かぁ...まさか刺したりしないですよね?』
ハヤトは不安そうに言った。
『蚊型は昨日の個体と同様、寄生型だ。対象者の首元を長い口で刺して寄生する。まあ変身さえしていれば問題ないとは思うがな』
サトミは言った。
『うわぁ~...やっぱり刺すんですね』
ハヤトは首元を押さえた。
『うわぁ~...寄生寄生すんのかよ』
キョウスケは首元を押さえた。
『寄生型? じゃあ、あたしの出番ね』
ユウキは自信満々に言った。
その左上腕にはハヤトと同じ腕輪が付いていた。
『変身!!』
ユウキは仮面ライダールクスリアに変身した。
『...!? ユウキさんいつの間に』
ハヤトは言った。
『ビッチ女、お前っ...!?』
キョウスケは言った。
『ん~? ちょっとね』
ユウキは屈伸をしながら言った。
『よろしくね...。セ・ン・パ・イ♥』
ユウキはカイトの耳元でまるで誘惑するような猫撫で声で言った。
『えっ、あっ...その。こちらこそ』
カイトはユウキから素早く離れて囁かれたほうの耳を抑えながら言った。
『頼もしい後輩ちゃんだね。 変身!!』
ハヤトは変身した。
『足引っ張んなよ。 ...変身!!』
キョウスケは変身した。
『...変身』
アキラは変身した。
『へっ...変身!!』
カイトも変身した。
ふくよかなマダムが右半分だけ蚊型ディアーボルスの姿になった状態で5人の前に現れた。
左半分はまだかろうじて人間の姿を保ってはいるが目は白く濁り、まるで涙のように血を大量に流していた。
『チヲ......チヲヨコセェェェェェ』
マダムが遅いかかってきた。
5人はそれを避けそれぞれの武器を召喚、攻撃を開始した。
『えいっ!』
カイトは剣でマダムの左肩に斬撃を。
『...フンッ』
アキラは弓で中距離から弓を放つ。
『そぉ~れ!』
ハヤトはハンマーで地面を歪ませマダムの体制を崩す。
『オラオラオラァァァァァァ‼』
キョウスケはチェーンソーをマダムの左肩をぶっ刺した。
『そこね...!!』
ユウキは必殺技を発動した。
ユウキの斤は空を切った。
『これで良しっと』
『何してんだよお前。空ぶってんじゃねーか!!』
キョウスケは言った。
『いや違う...これは!?』
ハヤトは言った。
『...!?』
アキラは驚いた。
『...?』
カイトは状況が飲み込めない。
断末魔と共にマダムは倒れた。
するとディアーボルス化していた右半身が段々と人間の姿に戻っていく。
ユウキは変身を解除し、マダムに近づいてこう言った。
『苦しかったよね。でも、もう大丈夫。 次に目が覚めたら貴女は前と変わらない生活が送れるわ』
『...あいつ何したんだ?』
キョウスケは言った。
『...わからない。 でも、とりあえず僕らの今日の出番は終わりみたいだね』
ハヤトは変身を解除した。
『ルクスリアの特殊能力か...』
アキラは変身を解除した。
『特殊能力?』
カイトは言った。
『うん、そう! あたしの力は“性”と“生”を操る事。そうだな~簡単に言うなら今のは敵の“生”を操って消しちゃった......みたいな?』
ユウキは言った。
『いやいや、それ全然説明になってないよ』
ハヤトは言った。
『訳わかんねぇ...』
キョウスケは困った様子だ。
『よくわからないけど...すごいねユウキさん!』
カイトは言った。
『まぁね~。でも、カイト君が頑張ってくれたから出来たんだよ』
ユウキはカイトに近づいてきた。
『...ありがと』
ユウキはカイトの耳元でそう言ってからカイトの頬にキスをした。
『...!? 何するんですか急に』
カイトはユウキから離れた。
『...!?』
『...!?』
アキラとキョウスケは驚いた。
『何って~決まってるじゃん。カイト君に対するあたしからの細やかなお・れ・い♥』
そう言ってユウキはクスクスと笑った。
第14話【逃れられない運命】END...