鳴瀧カイトは大学への初登校日にひょんな事から殺人の現行犯で逮捕されてしまった。
勿論、彼はやっていない。 だが、どんなにそう訴えても刑事も母も......誰も彼を信じようとはしなかった。
牢の中で何度も死のうとするカイト。
しかし、そんな彼を唯一信じてくれた先生(弁護士)のおかげで彼は再び生きる気力を取り戻した。
そんなある日...。僕は長期懲役者専用の刑務所への移動が決定。
移送車の中で再び絶望を味わったカイト。すると突如車に何かが衝突し、僕らは車外に投げ出された。
幸いにも彼らは軽傷で済んだが、外には謎の生命体(確かお爺さんは“ディアーボルス”と呼んでた)がいて彼らを次々と襲っていく。
それがカイトに襲いかかってきた次の瞬間。それは獅子のような装甲を纏った人物に切り裂かれた。
そのおかげで事なきを得たカイトだが、次に目を開けた時には謎の洋館に連れてこられていた。
彼以外にも自らを医師と名乗る者や金髪の如何にも不良っぽい者、オタクっぽい者にビッチっぽい者、ヒステリックっぽい20代後半の者達が次々と連れてこられている。
謎の洋館に集められた(カイトを含めて)状況が飲み込めず、ただ困惑する6人、そんな彼らの前に車椅子に乗った老人が現れた。
彼の名は“志藤政義”僕がさっき襲われた怪物を倒す兵器を作っている人らしい。
彼らを集めたのは、彼の作った変身ベルトを使いこなせるかもしれない遺伝子を僕らが持っているからという理由らしいが、一見優しい笑顔の持ち主で人類の為に本当に貢献したいんだなって感じの伝わってくる“良いお爺さん”しかし、カイトは何だか瞳の奥に微かに見え隠れした“狂気”を感じ取る。
戸惑う彼らにお爺さんは自身の研究に協力してくれた暁には“罪の減刑や無罪”、そして希望するならば“新しい戸籍と一生遊んで暮らせる大金”を用意すると言ってくる。
『そんな事、急に言われたって無理だよ...』
カイトは思った。
ゆっくり考えてくれと言ってその場を去るお爺さん。
こんな状況下で呑気にケーキを頬張る1人の男がいた。名前は猪鹿月ハヤト。カイトはそんな彼からここにいる6人は皆、長期懲役者であると告げられた。
カイトが殺人罪で懲役150年の実刑判決を受けている事も知っているようだが、いったい彼は何者?
そして、ハヤトあのお爺さんの研究に協力すると言い出した。
予告通り1時間後に先ほどの女性が食事を下げに来た。
食器を一通り台車に乗せた女性は皆に1つずつ鍵を渡しこう言った。
『...廊下を出ると階段がある。それを上がっていった先に貴様らの部屋がある。それは部屋の鍵だ』
『自室には生活用品とネット環境を整えてある。だが、身内との連絡は禁止だ』
『まあ、出来る筈もないだろうけどな』
サトミは言った。
カイトに手渡された鍵には“001”と書かれた札が付けられていた。
『それと...今後は貴様らの事をその札の番号で呼ばせてもらう』
サトミは皆に言った。
『番号か.....、その辺は刑務所と変わらないんだ』
ブラトップの女性が少しガッカリそうに言った。
『004、不服か?』
サトミはブラトップの女性に尋ねる。
『いいえ...何でも無いです』
ブラトップの女性は答えた。
『...消灯は21:00だ。各自早急に部屋に戻れ』
サトミはそう言って台車を押して部屋をあとにした。
『えっ...と。とにかく各自部屋に行ってみませんか?ほら、今日はいろいろあったし.........ね‼ 皆疲れたでしょ』
ハヤトが皆に言う。
とりあえず各自部屋に向かう事にした。
カイトは自身の部屋の鍵を開ける前にふと周りを見渡してみた。
此処に集められたのは自身を含め6人。だがこの階には部屋が7つある。
...残り1部屋は空室なのだろうか。
『002号室って空室なのかな』
ハヤトがカイトに話しかけてきた。
『えっ...此処なんですか? 007号室とかじゃなくて?』
カイトはハヤトに尋ねる。
『まあ、此処には6人いるわけだから001~006号室を僕らで使って007号室が余るのが普通の考えだよね』
『...もしかして、もう使ってる人がいるのかな?』
ハヤトは顎に手を当て何かを考えるようなポーズをした。
『それってつまり、もう既にあのおじいさんの研究に協力してる人がいるって事ですか?』
『もしかしたらその人もあんな思いを......』
カイトは悲しそうな顔をした。
ハヤトは溜め息をついた。
『...カイト君は優しいね。懲役150年も食らうような人には見えないよ』
そう言って微笑んだ。
『だから僕はやってなっ......!』
カイトはムッとした。
『あーはいはい、わかったわかった。今日は休もう。お休みなさい』
ハヤトは再びカイトの肩を軽くポンポンと叩いてニコリと笑う。
そして、あくびを1つして003号室へと向かっていった。
『おっ...お休みなさい』
カイトはハヤトにそう言って自身も部屋に入った。
先ほどまでいたダイニング同様に壁も家具も全て白で統一されたその部屋はまるで旅番組等でよく目にする高級ホテルの1室のようだった。
『すっ...すごい』
カイトは驚いて思わず声に出た。
そして、深く溜め息をつく。
今日はいろいろありすぎてとても疲れた...。
ベットに横になり目を閉じててみるが、車内での一連の出来事を思い出してしまい全く眠れそうになかった。
『...』
カイトはベッドから起き上がり、ベランダに出た。
『えっ...何ここ!』
驚くのも無理はない。眼下には海が広がっていたのだ。
どうやらこの建物は断崖絶壁に建てられているらしい。
『何か....ブラックジャックの家みたい』
カイトは呟いた。
『...あいつの趣味だ』
『うわぁ...‼』
カイトは驚いた。
002号室にも人がいた事、そしてまさか自分以外にもベランダに出ている人がいるとは思いもしなかった。
透き通るような白い肌に、ほのかに赤い唇。まるで女性のように整った顔をしている。そして、綺麗な黒髪。
髪の短さと骨格、服装だけが、唯一彼を男だとカイトに思い知らせた。
...めっちゃ美男子だ!? こんな美男子、TVとかゲームとかでした観た事ないよ。
カイトは思わずその美貌にみとれた。
その青年は何だか『ああ、またか』といった様子でこちらを見ていた。
『...あいつはあれの大ファンだからな』
黒いジャケットを来た青年はそう言った。
『...貴方も無理矢理ここに連れてこられたんですか?』
カイトは恐る恐る青年に尋ねた。
『...は? 俺は前から此処の住人だが?』
青年は不思議そうに答えた。
『えっ...住人!? いや...あの』
予想外の返答にカイトは次の言葉が出てこない。
カイトのそんな姿を見て青年は溜め息をついた。
『こんな弱そうな奴も招集するなんて......、あいつも相当切羽詰まってるんだな』
『目的は何だ。 金か?自由か?』
『...まあ、その様子だと。それを手に入れる前に犬死にしそうだがな』
そう言って鼻で笑った青年は部屋に戻っていった。
『えっ...いやその。 ...ちょっと待って!』
カイトは呼び止めようとするがその声虚しくその青年は部屋に戻ってしまった。
...何かカンジ悪い‼ 顔はあんなに綺麗なのに。“天は二物を与えない”って本当なんだな。
カイトは思った。
カイトは溜め息をついた。
『......寝よ』
部屋の中に戻った。
ーーー時を同じくして志藤の書斎ーーー
志藤はワインを楽しんでいた。
すると、突然書斎のドアをノックする音が聞こえた。
『...入りたまえ』
志藤はそう言って側にいたメイドにドアを開けるよう指示する。
メイドがドアを開けるとそこにはハヤトが立っていた。
『猪鹿月ハヤト君だね。さぁ座りたまえ』
志藤はハヤトに座るように促す。
『...失礼します』
ハヤトは一礼して志藤の向かい側のソファに腰掛けた。
メイドがワイングラスとチーズをハヤトの目の前に置いた。
『単刀直入に申し上げます。僕を貴方の研究に協力させてください』
ハヤトは真剣な眼差しで志藤を見つめて言った。
『ははは...。その言葉を待っていたよ』
『君は、記念すべきライダー第一号だ。 本当にめでたい、今日は祝杯をしなければならないね』
志藤は静かに笑う。
『さぁ、飲みたまえ。老いぼれの味覚だ...。 口に合うかどうかはわからんがね』
志藤がそう言うとメイドがハヤトの目の前にあるワイングラスにワインを注いだ。
『...頂きます』
ハヤトはそう言ってワインに口を付けた。
ーーー午前7:00カイトの部屋ーーー
カイトは目が覚めた。
あの人が部屋に戻ってしまってから、自身も部屋に戻りベットに横になっていたらいつの間にか眠っていたようだ。
部屋をノックする音が聞こえた。
『001起きているか?』
女性の声が聞こえる。
恐らく昨日のあの無愛想な女性であろう。確か名前はサトミだっただろうか。
『はい、おはようございます』
カイトは返事をした。
『朝食の準備は出来ている。 支度を済ませてすぐに下へ降りてこい』
サトミはそう言ってドアの前から去っていった。
カイトは部屋のドアを開けた。
するとドアの足元には着替えとお風呂セット一式が白い篭に入った状態で置かれていた。
カイトはそれを持って自室のシャワー室へ向かいシャワーを浴びた。
シャワーから上がり髪を乾かしながらふと着替えに手をかける。
ドラマや映画でよく観る。いかにも実験体って感じの上下真っ白の服なのかと思ったがそこにはごく普通の衣類が入っていた。
しかも自身が普段着ているようなデザインの物だし、気持ち悪いくらいにぴったりサイズだ。
カイトはそれを着て下へ降りた。
リビングにはもう既に皆集まっていた。
『...おはよう』
1人の女性が話しかけてきた。
『えっ...と。君、001号室の人だよね? 昨日話してた眼鏡かけた男の人は一緒じゃないの?』
『ハヤトさんですか? いや、僕も朝から会ってなくて...って! うわっ‼』
カイトは無意識にその女性の胸に目がいってつい動揺してしまった。
昨日はブラトップだったけど、今日はキャミソールだ。何故この女性はこうも目のやり場に困る格好をするんだ......。
童貞なカイトには少し刺激が強すぎる。
『あっ...ごめん。まずは自己紹介からだよね。 私は後藤ユウキ...此処では004って呼ばれてるんだ』
ユウキはそう言って微笑んだ。
こちら側に谷間がよりはっきりと見えた。
...この人絶対わざと見せてるな。
カイトは思った。
『ぼっ...僕は志熊サトル。部屋の番号は006です』
サトルは言った。
『私は、蛇ヶ崎アスカ。 部屋はこのビッチ女の隣よ』
アスカはそう言ってユウキを睨む。
『僕は鳴瀧カイト。部屋は001号室です』
カイトはそう言って皆にお辞儀をした。
『そこの金髪男。あんたも自己紹介しなさいよ』
アスカは金髪の青年にそう言った。
『......鼠田キョウスケ。部屋は一番端だ』
誰とも目を合わせずにキョウスケはそう言った。
『やあ皆さんおはよう‼ 今日も爽やかな朝だね~』
ハヤトはドアをバンっと開けてご満悦な表情で言った。
右上腕に謎の腕輪(いや、手錠ならぬ腕錠?)をしている。
...金属製で全体的に黒色。真ん中に赤い線が1本通っていて、その腕錠から何が注入しているのだろうかよく見るとその赤い線はクリアパーツで小さな気泡が気泡がぷつぷつと出てきていた。
『ハヤトさんおはようございます。
腕のそれ...なんですか?』
カイトはハヤトに尋ねる。
カイトは思い出した。
確か昨日出会った青年も同じような物を左上腕に付けていたのだ。
『ああ、これかい? 僕も詳しくは教えてもらえてないけど、これは制御装置なんだって。 何か常にここから“安定剤”を注入しているらしいよ』
『僕みたいなタイプはこれをつけてないと腹ペコになった“彼”に食べられて死んじゃうんだって。 ...もうさ~、こんなところにつけられちゃったから着替えが大変だよ~』
ハヤトはヘラヘラしながら言った。
『...!?』
一同は驚いた。
『...食べられる?』
アスカは驚いた表情で言った。
『そっ...そんな物付けられちゃうんですか!?』
サトルは言った。
『何それ...意味わかんない』
ユウキは言った。
『ハヤトさん...』
カイトは驚いた表情でハヤトを見つめる。
ハヤトはカイトのほうを見て『何でそんな顔するの?』といった感じで微笑みながら首を傾げた。
すると誰かが走って来る音がした。
ドアがバンっと開けられた。ドアを開けたのはサトミだった。
『ディアーボルス牛型が出た。至急向かうぞ。貴様らヘリに乗れ!!』
『りょーかい』
ハヤトは笑顔で答える。
『さぁ~て。 初陣初陣♪』
ハヤトは何だか嬉しそうだ。
『えっ...貴様らって事はつまり......』
サトルは言った。
すると、2人の武装した男がサトルの両脇を抱えた。
『うわっ...!? ちょっと! 離してください!』
サトルは言った。
皆もそれぞれ武装した男達に両脇を抱えられ強引に部屋をあとにした。
ーーー都内某所ーーー
ヘリで無理矢理乗せられ、ここに連れてこられた一同。
武装部隊の後ろに一ヶ所に固められ部隊長らしき人に『此処で見ていろ』と指示を受けた。
その武装部隊が作った“武装の壁”の外にハヤトと昨日出会った青年がいた。
『さて! 初陣といきますか』
ハヤトはやる気満々だ。
『よろしくお願いしますね。アキラ坊っちゃん』
隣にいる青年にそう話しかけた。
『...変身』
青年はハヤトを無視してライダーに変身し、武装部隊を発見し、今にもその場からの逃走を図ろうとしていたディアーボルス牛型に飛び蹴りをした。
牛というよりは二足歩行な為か何だかケンタウロスみたいな見た目のそれはアキラと呼ばれていたその青年の蹴りで顔がおもいきり建物の壁に叩きつけられた。
『...中級風情が、俺から逃げられると思うな』
アキラはそう言った。
ライオンにも似たそのライダーの装甲。カイトには見覚えがあった。
『...!?』
『...あの人』
化け物に襲われそうになっていた自分を助けてくれたのは、あの人だったんだ。
『カイト君、あの人の事知ってるの?』
ユウキは尋ねる。
『いや......知ってるって程じゃないんですけど、僕を助けてくれたっていうか...命の恩人っていうか』
カイトは答えた。そして再び2人に視線を戻す。
『......無視か。 まあ、良いや変身...!!』
ハヤトも変身した。その装甲はどこか猪にも似た姿をしていた。
『...さぁて。 ランチの時間だよ!』
そう言ってベルトの上のほうを一叩きしたハヤト。
すると、突如手元にハンマーが現れハヤトはそれを掴んで牛型に向けて振り回し始めた。
『総員射撃用意。......打て!』
サトミは武装部隊に命令を下す。
武装部隊は援護射撃を始めた。
ハヤトはやはり初陣だからか戦闘には不馴れな様子。
アキラの足手まといにしかなっていない。
敵を攻撃しようとしては瞬時に避けられ挙げ句の果てにはその攻撃がアキラに当たりそうになる。
瞬時に自らのベルトの上のほうを叩き、自身の武器を召喚したアキラはそれを武器で受け止めた。
『アキラ坊っちゃん!? ごっ...ごめんなさい』
ハヤトは動揺している。
『邪魔をするな‼ ......どけ‼』
アキラはハヤトを蹴り飛ばした。
『青いライダーさん、貴方はなかなかやるようですが、相棒は使い物にならないですね』
牛型は鼻で笑った。
『...この男を相棒だと思ったことは1度もない』
アキラはそう言って牛型に弓を放った。
2人のコンビネーションは最悪だった。
...もう、コンビネーションが悪すぎて見ていられない。
『僕ならもっと左サイドから攻めるのに...』
『...え?』
カイトは自身の言葉に驚いた。
...僕、今なんて?
『...!?』
カイトは突然激しい動悸に襲われた。
息が苦しい。立っていられない。
体が燃えるように熱い。
意識が遠のいていく......。
遠のいていく意識の中で『...俺に変われ...』という声が微かに聞こえた。
カイトは遂に意識を失ってその場に倒れてしまった。
『...カイト君!!』
『しっかりして‼ ねぇ急にどうしちゃったの!』
ユウキの声でカイトの異変に気づいた他4人もカイトに駆け寄る。
『どうした...!! 001! おい001!』
サトミも駆けつけて顔を叩き呼び掛ける。
意識を失っていたはずのカイトは自身の頬を叩くサトミの手をガシッと掴み。目を開いてこう言った。
『いてーんだよクソ女。 死にてーのか?』
『...っ』
サトミは自身の背筋が凍りつくように冷たくなるのを感じた。
カイトはすくっと立ち上がった。
『退け。 邪魔だ』
そう言って“武装の壁”をかき分ける。
そして目に留まったアタッシュケースを雑に開けて中の変身ベルトを取り出した。
『...カイト君?』
ハヤトも異変に気づきカイト達の方を見る。
するとディアーボルス牛型はハヤトを突き飛ばす。
『うわっ‼』
ハヤトの変身ベルトはディアーボルスの角によりハヤトから外れ、ハヤトの変身も強制的に解除された。
ハヤトへの距離をじりじりと詰めていくディアーボルス牛型。
『あわわ......』
ハヤトは腰が抜けて動けない。
『...クソが!』
アキラは必殺技を発動する。
その瞬間。走ってきたカイトはディアーボルス牛型に自身の右手の拳で一撃を与えた。
『...!?』
牛型は怯んだ。
『やっぱり、俺様じゃなきゃアキラの相棒はつとまんねーよな。 ...引っ込んでな“おデブちゃん”』
カイトはニヤリとした。
『えっ...? 僕って、どっちかと言うと“ガリ”なほうだと思うんだけど......』
ハヤトは言った。
『...? ああ、すまねぇ。もう“入れ物”を見つけてやがったな』
カイトは苦笑いし、頭をかいた。
『邪魔をするな。......ただの人間風情が!!』
牛型は言った。
『は? 舐めてんじゃねーぞコラ。テメーの相手はこの俺様なんだよ』
カイトはドヤ顔で言った。
ディアーボルスの固い体に生身の人間の体が無事であるわけもなくカイトの右手からは血が滲み出していた。
牛型はカイトの右手を見て笑い出した。
『血が出ているぞ人間』
牛型の目が怪しく光った。
『折れているようだが......、そんな手で何が出来る』
だが、まもなくして牛型の体にも殴られた箇所から出血が見られた。
『...!?』
怯むディアーボルス牛型。
『そんな...!? 人間ごときのパンチで!?』
『お前...、いったい何者だ!!』
『...テメーはすぐに死ぬんだ。名乗る必要もねーだろ』
カイトは自身の右手を1度ちらりと見た。
そして、牛型乗るほうを見てニヤリと笑った。
左手には変身ベルトが握られている。
『カイト君..?』
ハヤトは戸惑った様子で言う。
『...あいつバカなのか!』
アキラは呟いた。
『おい!今すぐそいつから離れろ! 死にたいのか!』
アキラはカイトに向かって叫んだ。
アキラのほうをチラッと見たカイトは一瞬だけ嬉しそうに微笑んだような気がした。
カイトはベルトを腰に巻く。
『さぁ、龍の怒りを食らいな』
『...変身』
カイトは変身した。その装甲はドラゴンにも似た姿だった。
『...!? フューリー』
アキラは驚いた様子で言った。
『お前は...!? そんなまさか!!』
牛型は言った。
『まさかかどうか...、試してみるか?』
カイトは言った。
『...』
『うおォォォォォ』
牛型はカイトに襲いかかる。
カイトはその攻撃を華麗に避けて2,3発パンチをおみまいした。
怯む牛型、そんな奴に容赦なくカイトは炎を纏った蹴りが放った。
避けては攻撃...。また避けては攻撃を繰り返すカイト。
『...歯ごたえねーな。 お前、下級体じゃねーのか?』
カイトは鼻で笑った。
『...っ‼』
牛型は恐怖で声も出なかった。
遂にカイトは必殺技を発動した。
複眼が光る。
......奴の心臓の位置が見える。
『そこか...』
カイトは大きくジャンプし、ディアーボルス牛型に必殺技(ライダーキック)を食らわせた。
カイトの必殺技を食らいディアーボルス牛型は爆散。
ユウキ達も、サトミも、武装部隊も、ハヤトも、そして......アキラもその場にいたものはカイトの戦いをただ固唾を飲んで見守る事しか出来なかった。
『ふぅ...。久し振りの変身は疲れ......る...ぜ』
そう呟いて変身を解除したカイトは再び意識を失いその場に倒れこんだ。
すぐにハヤトが駆け寄る。
『カイト君...? カイト君!』
サトミも駆け寄りカイトを抱えた。
そして無線機にこう伝えた。
『こちらサトミ班。標的の消滅を確認』
『負傷者は2名。直ちに帰還致します』
アキラも変身を解除し、こう呟いた。
『何故あいつが......』
武装部隊は手際よく撤退準備を始めた。
ーーーモニター室ーーー
モニターで一連の出来事を目の当たりにしていた志藤は歓喜した。
『素晴らしい...!! やはり私の目に狂いはなかった‼』
『彼が...!! 彼こそが私の追い求めてきた...』
その瞬間。志藤は激しく吐血した。
『志藤様...‼』
すぐに駆け寄る白衣の男達。
1人は脈を確認し、また1人は薬を準備する。
『旦那様...さぁ。お薬でございます』
メイドが志藤を抱き起こし、薬を飲ませる。
ーーー数十分後ヘリが到着ーーー
メイドと執事が出迎える。
『お帰りなさいませ、サトミ様。 旦那様が...』
『!?......志藤様が』
サトミは驚く。
『...こいつらを頼む。 私は志藤様の元へ行く』
サトミはそう言ってカイトを執事にまかせてメイドと共に志藤の元へ向かった。
『...貴方達はこちらへ』
ハヤト達は執事に医務室へと案内された。
アキラは自室に帰ろうと踵を返した。
それを執事は呼び止めた。
『アキラ様もですよ。さぁこちらへ』
アキラは不満そうにこちらを見て渋々医務室へとついてきた。
医務室に到着したハヤトは驚く。
『執事さん...これは医務室って言うよりもはや病院じゃないですか』
最新機器がいくつも揃ったその場所は“医務室”というのは名ばかり......もはや病院としか言いようがない。
あとは医師や看護士がいれば完璧だ。
『糸村さんはハヤトさんを看てあげて下さい。私は彼を』
執事はその場にいたメイドにそう言って自身は上着を脱ぎワイシャツの袖を捲る。
『ちょっと待って。執事さん診れるの?』
ハヤトは尋ねる。
『ええまあ、医師免許を持っていますので』
執事は答える。
『そうなんだ。志藤先生って本当に凄い人だな...』
ハヤトは言った。
一通りのカイトを診た執事は安心したかのようにふぅ~と息を吐いた。
『命に別状は無いみたいです。問題は拳のほうですね......折れているかも』
ハヤトは治療されながら横目でカイトを見つめていた。
カイトはベットに移された。まだ意識は戻らないままだ。
検査の結果、やはり右手は骨折しているらしい。
『無茶しすぎだよ...カイト君』
ハヤトはそう呟いてそのベットの横に丸椅子を持ってきて腰を掛ける。
『猪鹿月ハヤト...面を貸せ』
そこにアキラがやって来てハヤトにそう言った。
そして、足早に部屋をあとにした。
『...?』
ハヤトは一瞬ニヤリと笑いアキラの後をついていった。
突然足を止めたアキラ。ハヤトはアキラに尋ねる。
『どうしたんですか? アキラ坊っちゃん。......!?』
アキラは急にハヤトに殴りかかった。
ハヤトは咄嗟にそれを右手で受け止める。
『どうされたんですか?』
ハヤトは余裕の表情だ。
『お前...わざとだろ』
アキラは言う。
『まさか、残念ながらあれが今の僕の実力ですよ』
ハヤトはニコリと笑う。
『...昨夜はもっと(戦闘スタイルが)激しかったし、強かっただろ』
アキラは言った。
『アキラ坊っちゃん...。その言い方だと聞く人が聞いたら勘違いするかもしれないのでやめてください』
ハヤトは少し焦った。
『昨日はお酒が入ってたからですよ。素面の僕なんてこんなもんです』
『あっ...何かこの言い方も勘違いされそうですね』
ハヤトは言った。
『あの男を変身させる為か...?』
『あの男はいったい何なんだ! 何故フューリーの...』
アキラは言った。
『だ~か~ら、違いますって。 あんな“The好青年”みたいな子......誰が変身すると思います?』
『さすがに僕も命は惜しいですからね。そんなリスクしか無いことしませんよ』
ハヤトは笑う。
表情は確かに笑っている。
だが瞳の奥には志藤と同じ狂気じみた何かを感じた。
『....!?』
アキラは冷や汗をかいた。
『じゃあ、そういう訳なので僕はカイト君の所に戻りますね』
そう言うとハヤトはアキラの拳から手を離しアキラのジャケットを丁寧に直す。
『では、失礼します』
ハヤトはアキラに一礼して医務室へと帰っていった。
『....』
アキラはそんなハヤトの後ろ姿をしばらく睨み付け、踵を返しある部屋へと向かう。
第2話【覚醒(?)】END