ーーー志藤邸に到着ーーー
気絶しているアスカ、ユウキ、サトルは医務室へと運ばれていった。
カイト、ハヤトはそれを心配そうに見送る。
『...さて。ユウキさん達はいずれ目を覚ますとして、僕はもう1人心配な人のところに行ってみるかな』
ハヤトは溜め息をついてそう言った。
『キョウスケさんですか?』
カイトは言った。
『...うん、僕に何が出来るかはわからないけどね』
ハヤトは苦笑いをした。
『カイト君は? これからどうするの?』
『僕は...』
カイトは言った。
...脳裏にはアキラの姿が浮かんだ。
『アキラ坊っちゃん......でしょ?』
ハヤトはニコッとした。
『えっ! あっ...いや、その.........』
カイトは赤面した。
『ま~た赤くしちゃって、本当に君は分かりやすいね』
ハヤトはニコッとした。
『今回のはだいぶショッキングだったからね~。僕らもどうフォローすべきか』
ハヤトは顎に手を当てて考えるようなポーズをした。
『まあ、お互い頑張ろう。 じゃあね』
ハヤトはニコッとした。
そして、足早に何処かへと向かった。
『...』
カイトはハヤトを見送った。
ーーー同時刻 志藤の書斎ーーー
カイト達と“アナザー”達の間に起きた一連の出来事を録画したものをモニターで観ていた志藤はクスクスと笑いだした。
『志藤様、如何なさいました?』
篠原は眉ひとつ動かさず言った。
『いや、“アナザー”とはまた随分と挑戦的な名前をつけるなと思ってね』
『全く...彼女らしいよ』
志藤は言った。
...志藤の脳裏にはある1人の女性の姿が浮かんだ。
『...』
『ですね』
篠原は眉ひとつ動かさず言った。
『まあ、所詮は偽物。 我々のオリジナルには勝てまいよ』
志藤は鼻で笑った。
『...』
...この男は相変わらずだな。
篠原は思った。
『お言葉ですが志藤様、彼女は研究員の中でも随一の秀才でした。今は貴方を裏切り医学会から追放された身とは言え、用心に越した事は無いと思われます』
篠原は言った。
『おや?心配してくれているのかい? 嬉しいねぇ』
志藤はニコッとした。
『 ...いや、君が心配しているのはアキラのほうか』
志藤はニヤリ笑う。
『...』
篠原は志藤を睨み付けた。
『あの子に何かあったら...君も死んだ彼に顔向け出来ないからね』
『...心配せずとも、私だってあの子が大切だ。偽物なんかには指一本触れさせたりはしないよ』
志藤は狂気に満ちた笑みを浮かべた。
『...』
篠原はまだ志藤を睨み付けている。
『そんな怖い顔をしないでくれ。折角の男前が台無しだよ』
志藤は篠原のそんな顔を見て微笑んだ。
『おや、もうこんな時間か......』
志藤は時計を見た。
『出掛けなければ。 ああ、そうだ。篠原はもう少しゆっくりしていきなさい。 メイドに美味しいコーヒーでも入れさせよう』
志藤は微笑んだ。
『いえ、お構い無く。私もアキラ様のおやつを作らねばならない時間ですので、そろそろ失礼致します』
篠原は1つ咳をして、志藤から視線をそらしながら言った。
『そうか』
『...では、行ってくるよ』
志藤はそう言って執事に車椅子を押されて書斎をあとにした。
『...いってらっしゃいませ』
篠原はそんな志藤をお辞儀をして見送った。
志藤の姿が見えなくなると篠原は顔を上げ、ボソッとこう呟いた。
『あの子が大切...ねぇ』
『下心丸出しなんですよ。 ...全く』
ーーー高層マンションの一室ーーー
薄暗い部屋にベッドが1つ、周りには沢山の医療機器が設置されている。
ベッドの上では1人の女が上体を起こし絵を描いていた。
描きかけの絵が辺り一面に散乱している。
『お帰りなさい、皆』
女性は微笑んだ。
『シオンただいま~』
リョウヘイは気だるそうに言った。
『た・だ・い・ま♥』
カオルは何だかご満悦な様子で言った。
『...』
シンスケは何だか不満そうだ。
『こら、シンスケ。 帰ってきたらまずは“ただいま”でしょ?』
シオンと呼ばれるその女性はまるで子供を優しく叱るように言った。
『......ただいま』
シンスケは舌打ちしてからそう言った。
『フフっ......、お帰りなさい』
シオンは微笑んだ。
『ただいまシオン』
『あのね...、私達シオンに謝らなくちゃいけない事があるの』
青い瞳の少女は恐る恐る言った。
『なぁにメアリ? 言ってごらんなさい?』
シオンは優しい表情で言った。
『ヤスヒロの事....助けられなかったの』
メアリは目に を浮かべて言った。
『何だ、そんな事か』
シオンは微笑んだまま。そう言ってメアリの頭を撫でた。
『...!?』
『...!?』
『...!?』
『...!?』
一同はシオンの軽薄な態度に驚いた。
『しっ...シオン? 悲しくないの?』
『仲間が...死んだのよ?』
メアリは驚いた様子で言った。
『ううん、別に。 だって彼は貴方達をオリジナルと接触させる為の口実でしか無いもの』
シオンはニコッとした。
『ねぇ、それよりも貴方達アキラにあったんでしょ? その話を詳しく聴かせて頂戴』
シオンは目を輝かせながら言った。
『シオン...、貴女って人は』
秘書風の女が呟いた。
『アキラ...。まだ見ぬ私の運命の人』
シオンは恍惚な表情を浮かべる。
『...早く会いたいわ』
そう言ってシオンは先程まで描いていた仮面ライダースペルビアの絵を手に取りその輪郭を優しく撫でた。
『...』
...やっぱり僕はこの女が嫌いだ。
シンスケは心の中で思った。
ーーー志藤邸 テラスーーー
『本日の菓子はギモーヴでございます』
篠原はそう言ってそれをテーブルに置いた。
皿の上にはギモーヴが山のようにつまれている。
『そうか』
『...!』
...少し、多くないか?
アキラは思った。
アキラはギモーヴを1口食べる。
『初めて作ったのですが......、お味は如何ですか?』
篠原は恐る恐る言った。
『ああ、悪くない』
アキラは言った。
『やっ...やっと見つけた』
カイトが走ってやってきた。
だいぶ息が上がっている。
恐らく豪邸中を走り回ったんだろう。
『...!?』
『なっ...何か用か?』
アキラは少し動揺している。
『えっ...? あ、いや......その...』
カイトは迷っている。
貴方が心配だったなんて言ったら絶対怒るんだろうな...。
だからと言ってどういう理由にすべきか...。
『...』
『お前...ギモーヴは好きか?』
アキラは伏し目がちに言った。
『...えっ?』
『ぎっ...ギモーヴ?』
...聞いたことない食べ物だ。
カイトは思った。
カイトはポカーンとしている。
『篠原が作りすぎたんだ。 その...、一人じゃ食べきれないから困っている!』
アキラは少し顔が赤い。
『えっ......? いや、その...』
カイトまでつられて顔が赤くなってきた。
『これでも必死なんですよ~。 察してくださ~い』
篠原は笑顔で手招きしている。
『だっ......黙れ‼』
そう言ってアキラは篠原の鳩尾にパンチした。
『......嫌なら、いい』
アキラは赤面したままうつむいた。
『いっ...嫌じゃないです!』
カイトは言った。
『...!!』
『じっ...じゃあ、上がって来い』
アキラはそっぽ向いてしまった。
『しっ...失礼します』
カイトはアキラの向かい側の椅子に座った。
『あの...、誘ってくださってありがとうございます』
カイトは照れながら言った。
『どうぞ』
篠原が紅茶を出してくれた。
『これがギモーヴ。 何か四角形のマシュマロみたいですね』
『頂きます』
カイトはギモーヴという物を初めて口にした。
『...!! 美味しいです』
カイトは笑顔で言った。
そして、ギモーヴをパクパクと口に頬張り始めた。
『...』
...美味しそうに食うな。
アキラはそんなカイトを愛おしそうに眺めた。
...そういえば、カノンもよく食べる女だった。
脳裏にカノンがお菓子を美味しそうに頬張る姿が浮かんだ。
『ありがとうございます。 ...どっかの誰かさんも、こうやってストレートに褒めて下されば良いんですけどねぇ』
篠原はアキラを見ながら微笑んだ。
『...』
アキラはそんな篠原を見て舌打ちした。
そして、再びカイトに目をやる。
『...!』
アキラはクスクスと笑ってこう言った。
『付いてるぞ』
『えっ...!? どっ...どこですか?』
カイトは口を必死に拭った。
『...違う、ここだ』
アキラはカイトの顔についたギモーブの欠片を取ってやった。
『...え?』
カイトは驚いた。
『...っ!?』
アキラも自身の行いに驚いた。
『すっ...すまない』
アキラは再び赤面した。
『えっ...いや、......全然』
カイトもつられて赤面した。
『...』
『...』
2人はしばらく沈黙した。
『...』
『いや、ウブなカップルか!』
篠原はツッコミをいれた。
2人はハッとした。
そして、篠原は咳払いをしてこう続ける。
『......紅茶のおかわり、如何ですか?』
『あっ...ああ』
アキラは言った。
『あっ...ありがとうございます』
カイトは言った。
ーーー志藤邸 医務室ーーー
アスカは目を覚ました。
『...っ』
首元が痛む。
触るとそこには包帯が巻かれていた。
『...良かった』
ユウキは涙目でアスカに抱きついた。
『ねぇアスカ。私の事わかる?』
ユウキは上目遣いで言った。
『...わかるわよ』
アスカは安堵の表情を浮かべユウキの頭を撫でた。
『...ここは?』
アスカは辺りを見渡しながら言った。
『医務室です。.....僕ら“あれ”を見て気絶しちゃったみたいで...』
『さっき隊員の方が来て教えてくれました』
サトルは真っ青な顔で言った。
『...そう』
アスカは伏し目がちに言った。
脳裏にリョウヘイの姿が浮かんだ。
『アスカ、うなされてたのよ?』
ユウキは心配そうに言った。
『私が?』
アスカは不思議そうに言った。
『はい。でもあんなものを見た後ですもん。仕方ないですよ』
『僕も...、まだ吐き気が収まりません』
サトルは自身の口をおさえた。
『...ええ、そうよね』
アスカは伏し目がちに言った。
『...そう言えばアスカさん、あの中に知り合いの方がいたみたいですけど。あの人はいったい......』
サトルはまだ顔が真っ青だ。
『元恋人よ...名前はリョウヘイって言うの』
『......でも、あり得ないわ』
アスカは困惑した。
『...あり得ない? なんでですか?』
サトルは尋ねた。
『だって、リョウヘイは5年前に...』
『...!?』
そう言いかけたアスカは急に苦しみだして吐血した。
『...っ!? アスカさん‼』
サトルはアスカに駆け寄って必死に呼びかけた。
『アスカ!?』
ユウキは必死に呼び掛けた。
『お願い誰か! 誰か来て!』
そして、ユウキはNSコールを押し懸命に呼び掛けた。
白目を向き、アスカはそのまま床に倒れ痙攣していた。
ーーー高層マンション 1室ーーー
『...!?』
薄暗い部屋の中で何かを察知したリョウヘイ。
『...ようこそ、アスカ』
そう呟いてニヤリと笑った。
第22話【まだ見ぬ運命の人】...END