ーーー回想シーン アスカ当時中学2年生ーーー
『そんな顔でよく俺に告白してきたな。鏡見てきたほうがいいんじゃねーの?』
アスカの初恋は相手からのそんな台詞で終わりを告げた。
...私は醜いんだ。
...私は醜いんだ。
こんな顔......誰にも見られたくない!!
アスカはマスク無しでは外を歩けなくなってしまった。
学校に行くにも買い物に行くにもいつもマスクを手放せない毎日。
高校になると化粧を覚え、毎日のようにした。
しかし、高校生で化粧をしての登校など許されるはずもなく次第に問題生徒として扱われるようになり遂には高校を中退。
だが、アスカは後悔などしなかった。そう...アスカにとっては素顔でいる事は苦痛。それに比べれば人生を棒に振るう事など怖くはなかったのだ。
高校中退後、しばらくはアルバイト等をしていたが自身の素顔を心の底から嫌うアスカは“マスク”“整形級メイク”ときて遂に“整形”というものに巡り会う。
まず手始めに鼻にヒアルロン酸注射。
『これが......私?』
驚くほどに美しくなった自身の顔に喜びを覚えたアスカはますますその欲望に拍車をかけていった。
『もっと...もっと、綺麗になりたい』
その頃から水商売で働き始めたアスカ、中退こそしていたものの両親共に教師だった事からその持ち前の学力と整形で得た美貌を武器に昼間はOL、そして夜はキャバ嬢として働いていた。
そんなある日。数人の黒服達にボコボコにされている1人の黒服を目にした。
さんざん殴られボロ雑巾のように捨てられたその男は雨に打たれるコンクリートの上に大の字になっていた。
『ねぇ、貴方大丈夫?』
哀れに思ったアスカはその男に傘を差し出してやった。
言葉こそ発しなかったがその男はアスカのほうを見て微かに笑った。
...それがリョウヘイとの出会いだった。
傘を差し出してやった事から始まったリョウヘイとの友人とも呼べなければ恋人とも呼べない奇妙な関係。
今日も仕事終わりに公園で安いビールを酌み交わす2人。
アスカはふとこんな事を言い始めた。
『私と蛇喰って悩んでる事は全く違うのに何故か妙に気が合うよね~。もし、男同士だったり女同士だったら親友になれてたかも』
『じゃあ...男女の今は?』
リョウヘイは言った。
『えっ...?』
アスカは言った。
不意にアスカはリョウヘイに唇を奪われた。
心に何かしらの闇を抱える者同士。惹かれ合うのに時間は掛からなかった。
付き合い始めて2年が過ぎた頃、リョウヘイは今年の正月は実家に帰省すると話した。アスカにも一緒に来て欲しいとの事だが自身は“整形美人”リョウヘイの家族はそれを受け入れてくれるのだろうか...?
そう思うと怖くなりアスカは共に実家に行くのを拒んだ。
リョウヘイを送り出して2日後、アスカは彼が親族を10人以上殺害したというニュースを知る。
そして、そのニュースの数年後(※現在から数えたら5年前)死刑が失効されたという一報を受け取った。
警察官いわく最後に残した言葉は『俺の恋人に...“愛してる”って伝えてください』だったとの事だ。
その後のアスカはリョウヘイを失った悲しみから逃れるように何人もの男性と付き合った。
スポーツ選手、政治家、俳優......中には既婚者もいた。
最初のうちはアスカのその美貌に惜しげもなく愛情を注ぐ彼らだが、“整形美人”と知ると態度は一変。
罵る者、バカにする者等もいた。
一方的に別れを切り出されるアスカ、不意に街中でその男が他の女と仲睦まじく歩いているところを目にしては嫉妬の炎を燃やした。
その中でも一番傷ついたのは『ヤってるとお前の昔の顔が浮かんで萎える』その言葉を聞いたアスカは心のリミッターが外れ、その男を包丁でめった刺しにした。
刺された相手は意識不明の重体。アスカは殺人未遂の現行犯で逮捕され今に至る。
ーーー回想シーン 終わりーーー
『アスカ......。なぁ、何でだよアスカァ!!』
リョウヘイは言った。
『...ごめんなさい。もう、私達はあの頃には戻れないわ』
『だって...貴方はもう』
アスカは言った。
『死人だからなんて関係ねぇ』
『君も...君もこの力を手に入れたら今度こそ一緒にいられると思ったのに』
リョウヘイは言った。
『そんな奴等の何が良いんだよ...。 なぁ!! 所詮は“依存相手”を変えただけじゃねーか! 』
『どうせ依存するなら俺に......俺と!!』
リョウヘイは唸り声をあげてライダーキックを発動させた。
『リョウヘイ...!!』
アスカもライダーキックを発動させた。
『...!?』
何かを察知したリョウヘイは動きを止めた。
『...!?』
アスカも何かに気づく。
『リョウヘイ、挨拶はもう十分よ。帰りましょう』
女の声が聞こえた。
カイト達が振り返るとそこにはドラゴンのような姿をした化物が獅子、猪、熊、ヤギ、針ネズミのような姿をした化物と後方に大量の中級,下級体のディアーボルスを引き連れていた。
中級,下級体のディアーボルスはカイト達に襲いかかってきた。
カイト達は再び変身し、応戦する。
仁王班,坂本班も狙撃を始める。
ーーーーーー
そして、ドラゴンのような姿をした化物は人間体へと戻った。
『皆さん初めまして、私は“アナザー”のボスで名を龍崎シオンと言います』
シオンは微笑みながら言った。
『...!?』
カイトはその顔に見覚えがあった。
...確か、アキラさんの隠し部屋で見たビジョンに出ていた人。
『...!? カ...ノン』
アキラは言った。
ひどく動揺している。
『気づいてくれたのねアキラ。嬉しいわ』
『 そうよ貴方の死んだ恋人と同じ顔にしてみたの......。気に入ってくれたかしら?』
『ママがね、こうすれば...アキラに愛してもらえるわよって言っていたから』
シオンは照れながら自身の頬を触り言った。
『カ...ノン』
アキラの脳裏にカノンとの幸せな日々や自らの手で殺した事が走馬灯のように浮かんだ。
アキラは膝から崩れ落ち過呼吸になった。
そんなアキラに近づいてきたシオン。
『大丈夫よアキラ、私は......ここにいる』
『...!? 触......る...な』
アキラは過呼吸になりながらも必死に声を振り絞った。
アキラは変身ベルトを外され変身を解除される。
シオンはアキラの頭を撫でながらこう言った。
『...綺麗な顔。今の恐怖に満ち溢れた表情も素敵だけど、きっと笑顔はもっと素敵なんでしょうね』
『アキラさん‼』
カイトはアキラを守るように2人の間に割り込んだ。
『...あら。オリジナルが何の用?』
シオンは言った。
『これ以上アキラさんに近づいたら....貴女を殺す‼』
カイトは言った。
だが、構えた剣は震えていた。
“この女は危険だ”“怖い”“今の自分じゃ敵わない”...頭ではわかっている。
だが、アキラを守る為ここは引くわけにはいかなかった。
『...強がっちゃって。剣が震えてるじゃない』
『死にたくなきゃそこを退きなさい...“弱虫くん”』
シオンはクスクスと笑い出した。
『だっ...黙れ‼』
カイトは言った。
『アキラさん...、貴方は僕が必ず!』
カイトは後ろを振り返った。
『いい心掛けだ、...ますます気に入ったぜ』
何処からかそんなに声が聞こえた。
カイトは急に首をカクンとしたと思ったらゆっくりと顔をあげてシオンにこう言った。
『覚悟しな...、この偽物野郎』
カイトは炎を帯びた斬撃を放った。
『...!?』
シオンは咄嗟に防御したが間に合わず数十メートルも吹き飛ばされた。
『...フューリー』
シオンはニヤリと笑った。
『偽物風情が触ってんじゃねーよ』
『こいつはな...、俺のものなんだよ』
カイトはそう言ってシオンに向かっていった。
シオンは怪人体へと変異しカイトに襲いかかる。
2人の戦いは互角...いや、少しカイトが押されているように感じる。
『オリジナルといってもまだ“未完全”。貴方の力に弱虫くんの体がついていけてないみたいね』
シオンは言った。
『...うるせぇ‼』
カイトは言った。
『...!?』
体に激痛が走り、カイトは地面に片膝をついた。
『この貧弱野郎が...!』
シオンはクスクスと笑った。
『これで...終わりよ』
シオンはライダーキックを発動した。
次の瞬間、シオンに向かって矢が飛んできた。
『...きゃっ』
『...!?』
カイトは後ろを振り返った。
『その男は......殺させない!』
矢を放ったのはアキラだった。
『もう! アキラったら何するのよ』
『...!?』
シオンはアキラの鋭い眼光に恐怖を覚えた。
『...やっぱりそっちを選ぶのね』
そう呟いてシオンは笑い出した。
『今日のところはアキラに免じて見逃してあげるわ。 ....でも、今度会った時には絶対に殺してあげるから覚悟なさい』
『...じゃあ、またね』
そう言ってシオンは大きくジャンプしてその場を去っていった。
『待ちやがれ‼』
カイトは言った。
だが、体が言うことを聞かない。
『...鳴瀧‼』
アキラはその場に倒れたカイトに駆け寄り抱き起こした。
ーーーーーー
『リョウヘイ帰るよ~』
シンスケは気だるげに言った。
『...ちょい待ち! まだ決着がついてねーんだよ!』
リョウヘイは言った。
『そんなの良いから、早く帰るよ』
シンスケは気だるげにそう言ってリョウヘイの鳩尾に思いきりパンチをした。
気絶するリョウヘイ。
シンスケはそれを抱えてその場を去ろうとした。
『...待って!』
アスカは言った。
『も~。そんなに慌てなくても近いうちにまた会えるって』
『その時までには、もうちょっと強くなっててね......“お姉さん”』
シンスケはそう言ってその場を去った。
アスカは追おうとしたがディアーボルス達に阻まれ追う事が出来なかった。
ーーー18:00 志藤邸 リビングーーー
皆で協力することで大量の中級,下級体ディアーボルスの討伐に成功したカイト達。
だが、その代償は大きく多量の負傷者が出る結果となった。
『カイトさん...大丈夫でしょうか』
サトルは言った。
『...どうだろう。討伐隊の話によると“アナザー”と1人で戦かったらしいからね』
『それにしても、僕らの中でも1,2を争う強さのカイト君が負けるなんて......。“アナザー”僕らの模造品にしては侮れないね』
ハヤトは言った。
『...カイト』
『俺、ちょっと様子見てくる』
キョウスケはそう言って立ち上がった。
『じゃあ、あたしも』
ユウキは言った。
『私も行くわ』
アスカが言った。
『僕も行きます』
サトルは言った。
『待って。皆』
ハヤトは言った。
『んだよ。行っちゃダメなのか?』
キョウスケは言った。
『心配なのは僕だって同じだけど、だからって怪我人が大勢押し寄せてもどうするの?』
『とりあえず今はアキラ坊っちゃんがついててくれてるみたいだし、僕らもまずはケガを治さないと』
ハヤトは言った。
『えっ...? あのイケメン御曹司が!?』
ユウキは言った。
『...意外な組み合わせね』
アスカは言った。
『でっ...ですね』
サトルは言った。
『そう! だから今は心配な気持ちをグッとこらえて治療に専念しよ?』
ハヤトは言った。
ーーー同時刻 医務室ーーー
アキラはベッドの上で眠るカイトを見つめていた。
『...』
アキラはカイトの手を見た。
...本当、こいつの掌は見ているのが痛々しいほどに血豆だらけだ。
それに、よく見たら腕もアザだらけ。
篠原の奴に強引に決められた手合わせの約束......毎朝付き合ってやっていたが、あまりにも剣術や体術の進歩が早すぎた。
毎朝眠そうにしていたのも今思えば早朝というだけではなく、まさか夜中まで1人で鍛練をしていたからか...?
そこまでして俺の為に強くなろうとしていた......っと思うのはさすがに考えすぎかな。
『...本当バカだよ、お前は』
『そして...、それを少し嬉しく思っているこの俺もな』
アキラは眠るカイトにそう呟いた。
ーーーーーー
カイトは夢を見ていた。
自身は真っ白な空間に1人立っていた。
『ここは...何処だ?』
『...!?』
カイトは背後から殺気を感じて振り返った。
そして、その殺気の主は容赦なくカイトに斬りかかってきた。
カイトはそれを完全には避けきれず剣が右頬を霞めた。
『誰だ!!』
カイトは殺気の主を睨み付けた。
『...!? ぼっ...僕!?』
目の前には自身と瓜二つの青年が立っていた。
その青年は舌打ちをしてこう言った。
『このくらい避けろよな。......たくっ、どんくせーガキだぜ』
『...君はいったい』
カイトは言った。
『あ?』
『おっ!そうかそうか。 そういゃあ、こうやって顔を合わせるのは初めてだったな』
『俺様の名は“フューリー”。 鳴瀧カイト単刀直入に言わせてもらうぜ』
『アキラを守りたけりゃあな......、俺様を受け入れろ』
『うっ...受け入れろ?』
カイトは言った。
第25話【共依存】......END