『あの...受け入れろとはどういう意味ですか?』
カイトは恐る恐る尋ねた。
『ん? ...まぁ、あれだ。ゆっくり説明してやっからとりあえず座れや』
フューリーはそう言って地面にあぐらをかいて座った。
『はっ...はい』
カイトは戸惑いながらも地面に正座した。
フューリーは1つ溜め息をつき、頭をガシガシと掻いてからこう言った。
『...ぶっちゃけお前弱すぎんだよな~。下手すりゃあ“歴代最弱”』
『さっ...最弱』
カイトは落胆した。
『てっ...て言うか、歴代ってどういう意味ですか? まさか僕ら以外にもライダーに変身した方が...?』
カイトは言った。
『ああ、お前(フューリーの変身者)だけでも149人の前任者がいる』
フューリーはしれっと言った。
『ひゃっ...149人!?』
カイトは驚いた。
『...そんなに驚く事か?』
フューリーは不思議そうに言った。
『おっ...驚きますよ‼ だって、149人ですよ‼』
『2~3人ならまだしも...』
カイトは慌てている。
『へぇ...、人間の価値観はよくわかんねーな』
フューリーは頬杖をついてつまらなそうに言った。
『てか、話戻しても良いか?』
『えっ...? ああ、どっ....どうぞ』
カイトは言った。
『...んで、強くなりたきゃ俺を受け入れろって言うのはだな。そうでもしなけりゃお前はこれ以上強くなれねぇ』
『それに...このままじゃお前は俺様の力に耐えきれずに死んじまうって話だ』
フューリーは言った。
『このままじゃ死ぬ.....か』
『...そう言えば、前にアキラさんにも同じ事言われました』
カイトは悲しげにフフっと笑った。
『やっぱり気づいてやがったか...、さすがは俺のアキラだな』
フューリーはニヤニヤしながら言った。
『あの...、“俺の”ってどういう意味ですか?』
カイトはむっとした。
『おっ! 嫉妬か?』
『良い目するじゃねーか、ますます気に入ったぜ』
フューリーは笑った。
『...それに、忠告してやるなんてアキラの奴もお前の事を相当気に入ってるみてーだな』
『ちょっと妬けるぜ』
フューリーは人指し指で顔をカリカリとかきながらへへっと笑った。
『えっ...?』
カイトは言った。
『フューリーの変身者をそこまで気に入るなんて.....。カズハ、ヒロキ...いや、カノン以来か』
フューリーは寂しげに微笑んだ。
『...?』
カイトは首をかしげた。
『ほら、お前の前任者達だよ。お前だってイチャイチャしてた時の記憶くらいあんだろ?』
フューリーは笑った。
『イチャイチャしてた記憶なんて...』
『...!?』
カイトには身に覚えがあった。
...あれって僕の妄想じゃないんだ。
『だろ?』
フューリーは笑った。
『カズハはアキラが幼少期の、ヒロキは19の時だったかな~。んでカノンはアキラが“完全体”になってからだ』
『まあ...、俺様はみ~んな相棒としてはあんまり好きじゃなかったけどな』
フューリーは溜め息をついた。
『...?』
『どうしてですか?』
カイトは尋ねた。
『どうしてって...、そりゃあ』
フューリーは宙に向上心と炎で書いた。
『うーん、何て言うのかな。 “向上心”ってやつが無かったからだな』
それを息で吹き消した。
『こっ...向上心』
カイトはその演出に少し驚きながらも再度尋ねた。
『...皆、確かに強かった。特にお前の1個前の“カノン”なんざ歴代最強だ』
『けどな。強いが故に皆、テメーの強さを過信しそれに溺れやがってな。俺様の話をろくに聴こうともしない』
フューリーは悲しげに言った。
『そのせいで俺様は、毎度毎度フラスコの中に逆戻りだよ.....。全く』
『はぁ...。これじゃあ何千年、何万年経っても“不老不死”になんて成れやしねぇ』
『ふっ...不老不死!?』
カイトは驚いた。
『...?』
『知らねーのか? お前らライダーは“完全体”ってのになったら不老不死になるんだぜ?』
フューリーは不思議そうに言った。
そんなの当たり前だろと言わんばかりの表情をしている。
『...つってもなかなかなれるもんじゃねーし。今、完全体になってるのはアキラぐらいだもんか』
『アキラさん...不老不死なんですか?』
カイトは驚いた。
『ああ、だから傷はすぐ治るらしい。...毒はダメみてーだけどな』
フューリーは言った。
『そうなんですか...』
カイトは言った。
...だからあの時、僕と同じく苦しんでたんだ。
『今、....気持ちわりーとか思ってたら承知しねーぞ』
フューリーはカイトを睨んだ。
『まさか! そんな事思うわけないじゃないですか!』
『...むしろ、何だか羨ましいです』
カイトはうつむいた。
『羨ましい?』
フューリーは不思議そうに言った。
『だって、アキラさん。いつまでもあんな....。きっ...綺麗な姿でいるんですよね?』
『僕は全然イケメンとかじゃないけど、いつまでも若くいられるっていうのはちょっと羨ましいです』
カイトは言った。
『...』
『俺は良いことばっかでもねーと思うけどな』
フューリーは再び頬杖をつき、溜め息をついた。
『何でですか?』
カイトは尋ねた。
『だってよ...。どんなに愛した相手も、いずれは老いてっちまう、そして、アキラはそれを看取ってやらなきゃいけねーんだぜ』
フューリーは悲しそうな表情を浮かべた。
『...!?』
『...そんな』
カイトは胸が苦しくなった。
『カズハもヒロキもカノンも......、皆看取ってやってたと思うとな...』
フューリーは悲しそうだ。
『...』
カイトは黙っている。
『俺だって...!! 側にいてやりたかったよ‼』
フューリーは悔しそうに地面を殴った。
『...!! わっ...悪かったな。勝手に叫んじまって』
フューリーはハッとした様子でそう言った。
『いっ...いいえ、気にしないでください』
カイトは慌てている。
『...そうか』
『...何か長々と喋り過ぎちまったな。お前そろそろ起きる時間みてーだぞ』
フューリーは照れくさそうに頭をかいた。
『えっ...?』
カイトは顔を上げた。
『まあ、俺を受け入れる件については、ゆっくり......じゃ死んじまうか』
『...早めに決めてくれや。俺はいつでも待ってるからよ』
フューリーはニコッと笑った。
『えっ...ちょっと! まだ話は終わってな.........!!』
カイトは言ったが、次の瞬間カイトの視界は真っ黒になった。
『...』
カイトのいなくなった真っ白な空間。
1人残ったフューリーは涙を1筋こぼしてこう呟いた。
『...頼んだぜカイト。俺はもう、アキラを1人にしたくねーんだ』
『今まではダメだったけど...。お前なら...、お前となら』
ーーーーーー
『待ってください...!!』
カイトは飛び起きた。
『...』
アキラが驚いた様子でこちらを見ている。
カイトはアキラを強く抱きしめた。
『アキラさん....!』
『..........何なんだ急に』
『て言うか....、痛い』
アキラは困った様子で言った。
カイトはその言葉にハッとしてアキラから離れた。
『...!? すっ.....すいません!』
アキラは呆れたように1つ溜め息をついた。
『...体の具合はどうだ?』
『えっ...!? ...ああ、おっ...お陰様で』
カイトは苦笑いをした。
『...そうか、なら俺は帰るぞ』
アキラは自身の部屋に帰ろうと席を立った。
『まっ...待ってください!』
カイトはうつむいた状態でアキラの手首を掴んだ。
『...何だ?』
アキラは不満そうだ。
『...夢を見たんです。僕とそっくりな人が“『アキラさんを守りたいなら俺を受け入れろ』”って言ってくる夢を』
カイトは顔を上げて恐る恐る言った。
...きっと信じて貰えないんだろうな。
『...!?』
『どう答えたんだ?』
アキラはカイトの両肩を掴み、血相を変えた。
『ばっ...バカにしないんですか?』
カイトはハッとした。
『......フューリーの奴だろう? あの腐れドラゴンが。また余計なことを......』
アキラは苛立つような表情をしてカイトから視線をそらし言った。
『あの人の事...、知ってるんですか?』
カイトは尋ねた。
『ああ、長い付き合いだからな』
アキラは溜め息をついた。
『...それに、アイツに会ったという事は俺の秘密もとうに知っているんだろう?』
アキラは再び椅子に座り、呆れた様子で言った。
『......“不老不死”って事をですか?』
カイトは恐る恐る言った。
アキラはフッと笑った。
『驚いたか? こんな成りだが結構なじーさんだ』
『...もう何人も最愛の人を看取ってきたんですよね』
カイトは涙を浮かべた。
『......もう慣れたさ』
アキラは伏し目がちに言った。
『...!? 何故お前が泣く‼』
アキラはカイトの姿を見て驚いた。
慌ててポケットからハンカチを出したアキラはカイトの涙を拭いてやる。
『全く...本当に変わった奴だな。お前は』
...今までの奴は俺には優しかったが、他の奴には優しくなかった。
まあ、“惚れた弱味”だと半諦めていたがな。
『コラ、下を向くな。 上手く拭けないだろう』
アキラは戸惑っている。
アキラは悲しげにフフっと笑った。
『他人の事をまるで自分の事のように悲しむ奴なんて今までの変身者にはいなかったよ』
『...』
アキラはうつむいてしまった。
『...アキラさん?』
カイトは鼻声で言った。
『いや、...何でもない。 それよりさっさと寝ろ』
『あの腐れドラゴンのせいでだいぶ疲労しているだろうからな』
アキラはそう言って医務室を出ようとした。
『あの...、アキラさん!』
カイトは呼び止めた。
『...何だ?』
アキラは振り向いた。
『おっ...お休みなさい!』
カイトは言った。
『...?』
『おやすみ』
アキラはカイトに優しく微笑んで部屋を出ていった。
ーーーーーー
アキラが医務室を出ると篠原が医務室の壁に聞き耳をたてていた。
アキラはそんな篠原の尻を思いきり蹴り上げた。
『いやんっ!?』
変な悲鳴をあげて床に倒れこむ篠原。
『盗み聞きとは感心しないな』
アキラは睨み付けながら言った。
『だって...、入ったら私。絶対サイコロステーキ状に切り刻まれちゃうじゃないですか....』
篠原は自身の尻を擦り、痛みに耐えながら言った。
『ああ...、私の美尻が』
『サイコロどころじゃない...ミンチだ』
『序に、その美尻は犬の餌にしてやろう』
アキラは鼻で笑った。
『...何だか、明るくなられましたね』
篠原は少し不満そうに言った。
『...!?』
アキラはハッとした。
『今のアキラ様は、まるでヒロキ様、...いいえカノン様と過ごされていた時のようです』
篠原は起き上がろうと四つん這いになった。
『......また懲りずに愛してしまったのですね。フューリーを』
『いいえ、どちらかと言うと愛しているのは彼のほうですか?』
篠原はフフっと笑った。
『黙れ‼』
アキラは怒りに任せて篠原の腹部を勢いよく蹴った。
そして、倒れた篠原の腰を踏みつける。
『篠原...お前、このまま蹴り殺されたいのか?』
『殺したければ殺せばいい......』
篠原は挑発的な目をした。
『私は貴方様の忠実なる僕、生かすも殺すも貴方様次第です』
篠原は口角から血を一筋流しながら言った。
『さぁ、おやりなさい‼ いつも怪物共にやっているように‼』
篠原は叫んだ。
『お前...!! いい加減に』
アキラは篠原の髪を掴んだ。
『...!?』
篠原を殴ろうとした瞬間、篠原とヒロキの顔が重なりアキラは殴るのをやめた。
...ヒロキ。
アキラは篠原を殴る気が失せてしまった。
『...元の主と瓜二つで命拾いしたな』
そう言ってアキラはその場を去った。
アキラが去ってしばらくしてからゆっくりと起き上がった篠原。
ふと目に入ったガラスに映る自身の顔を見て悲しげに笑ってこう呟いた。
『なぁ、主よ。あんたは何故私を生み出したんだ....』
『こんな...、こんな気持ちを抱いて彼に仕えるくらいなら。あの時、あんたと一緒に死んでおけば良かったよ...』
ーーー高層マンション 23:00ーーー
リョウヘイは上半身裸で椅子にくくりつけられていた。
白目を向いた状態で目鼻から血を流しながら小刻みに震えている。
『あっ...アスカ』
『アスカ......なん...で』
ケンセイは手足の爪を1枚1枚剥がしていく。
その痛みにリョウヘイは悲鳴をあげた。
『ケンセイお疲れ様、お仕置きは順調?』
シンスケがやって来た。
『うん。てか、この薬すごいね! ちょっとやそっとの拷問じゃ声も出さないあのリョウヘイが面白いくらいに声あげてビクついてる』
ケンセイはワクワクした様子で言った。
『そりゃあ、“究極体用 び薬”だから。どんなに痛みに強いリョウヘイでも感覚を変に研ぎ澄まされちゃ痛みも我慢できないよね』
シンスケは言った。
『さぁ、リョウヘイ。僕の兄ちゃんを虐めた罰はこのくらいじゃすまないよ』
そう言ってシンスケはナイフをリョウヘイの胸に突き刺した。
『...ねぇ、リョウヘイ。いったい何処から毒を注入したの?』
『胸? 肩? お腹? ...それとも首かなぁ!!』
シンスケはそう言いながらナイフでリョウヘイを滅多刺しにした。
『全く...殺しちゃダメだからね』
ケンセイは呆れた様子でそれを見ていた。
『!?』
『いっ......言われなくてもわかってるよ』
シンスケはそう言ってナイフを床に投げ捨てた。
そして、壁にかけてある時計を見た。
『うわっ...! 見てケンセイ。もうこんな時間』
『えっ....ヤバ!? 早く寝ないと!』
ケンセイは言った。
そして、スマホで通話をし始めた。
『あっ...もしもしカオル? 僕、明日収録だからそろそろ交代してくれない?』
『うん、わかった。 ありがとじゃあねー。おやすみ』
ケンセイは通話を切った。
『交代してくれるって?』
返り血まみれのシンスケは言った。
『うん、だから僕らはもう寝るよ』
ケンセイは言った。
『そうだね。 あっ...でもその前にシャワー浴びないと』
シンスケは言った。
『...もう、自業自得だよ』
ケンセイは言った。
2人はゲラゲラと笑った。
そんな2人をリョウヘイは黙って睨み付けていた。
ーーー翌朝 11:00ーーー
志藤の書斎にサトミ、坂本、仁王、藤咲の4人が集められた。
『今日は君達に渡したいものがあってね』
志藤はそう言うとメイド達が4人の前にアタッシュケースを配った。
困惑する4人。
『...開けてみたまえ』
志藤は言った。
恐る恐る開けてみると4人はその中身に驚愕した。
『こっ...これは!?』
第26話【もう1人になんてしたくない】...END