アタッシュケースの中にはブレス型の強化アイテムが入っていた。
『志藤様...、確かこれは政府によって凍結されていた筈では...』
坂本が戸惑いながら言った。
『ああ、そうだったんだが今回は緊急事態だからね』
『4つだけという条件付きで凍結を解除してもらったんだ』
志藤は微笑んだ。
『いや~、まさか私も模造品ごときにあれほどの実力があるとは思わなかったからね』
『80年以上生きてきて久し振りに肝を冷やしたよ』
志藤は言った。
だが、表情は余裕そうだ。
『...問題は、どいつに支給するかですね』
藤咲は眉を潜めた。
『実は、もう決めているんだ』
志藤は誇らしげに言った。
『誰に支給するおつもりで?』
坂本は尋ねた。
『アキラ、鳴瀧君、猪鹿月君、蛇ヶ崎さんだよ』
志藤は誇らしげに話した。
『005ですか!? ...お言葉ですが志藤様、彼女はまだライダーになったばかりです。これを支給するに相応しいかどうか...』
坂本は驚いた。
『私もそう思います。私としては007が妥当かと』
藤咲は必死に訴えた。
『仁王、お前もそう思うよな。 なぁ!』
『...俺は、鳴瀧こそ相応しくないと思いま~す』
仁王はソファにもたれ掛かり、気だるげに答えた。
『仁王...、君は本当に彼が嫌いなんだね』
志藤は呆れた様子で言った。
『サトミはどう思う?』
志藤は微笑みながら尋ねた。
『現段階では、その4人が妥当かと思われます』
サトミは言った。
『はぁ!?』
『おい、ご令嬢...。遂にあんたまで頭が可笑しくなっちまったのか?』
仁王は戸惑った。
『サトミさん、君ねぇ......』
坂本は呆れた様子で言った。
『サトミさん。 いつもならこんな事には直ぐ異議を唱えるのに、今日はどうしちゃったんですか?』
藤咲は困惑している。
サトミはため息をついた。
『まあ...、貴様ら聞け』
『アキラ様は全員納得の戦闘力とそれに耐えうる“器”をお持ちだ。それに001も今回の世代の中では一番の戦闘力だしな』
『003は本人はひた隠しにしているが“奴”とのシンクロ率は今回の世代一』
『そして...、志藤様が007を差し置いてまで005を推すのは彼女が......いいえ、彼女の中の“奴”が唯一、完全体となった者達を殺す術を持っているインヴィディアの変身者という事』
『それに...あの女は恐らく“記憶持ち”だ』
サトミはフッと笑った。
『わかっているじゃないか。さすがは私の孫娘だ』
志藤は微笑んだ。
『...“記憶持ち”!? ...まさかハル兄の?』
仁王は動揺した。
『ハルキ君の記憶を持っているって事ですか!?』
坂本は驚いた。
『ハルキ? 誰ですそれ』
藤咲は尋ねた。
『そうか...、藤咲はまだ小さかったから覚えていないよね。 名は神蛇ハルキ。インヴィディアの前任者にしてライダー部隊のリーダー。そして、ライダー部隊の頭脳と呼ばれていた人なんだ』
坂本は微笑んだ。
『なるほど...、ハル兄の記憶を持ってっからルクスリアの変身者とあんなにベタベタな訳だ』
仁王は呆れた様子で言った。
『...性格が変わったのもそのせいか?』
『ほら...。あいつってさ、もっとこうヒステリックだっただろ?』
仁王は尋ねた。
『ああ、ルクスリアの変身者による影響だろうね』
『まあ、ルクスリアである彼女のほうに過去の記憶は無いみたいだけど』
坂本は苦笑いした。
『では、諸君。納得して頂けたかな?』
志藤は微笑んだ。
『...』
4人は戸惑った様子で互いを見合った。
『...はい』
そして、少し戸惑いながらもそう言った。
ーーー12:00 志藤邸食堂ーーー
カイトはボーッとしながらフォークからポロポロと昼食のパスタをこぼしていた。
...何だか、一昨日の件......、自体はまあ。良い事ではなかったけど。
それをきっかけにアキラさんとの距離はまた少し縮まった気がする。
おやすみって言われたんだよ?
あんな優しい表情で言われたんだよ‼
...嬉しすぎて逆に眠れなかった。
あー、今までの人生の中で今が一番幸せかもしれない。
そして、今の僕はめちゃくちゃ眠い。
ああ、意識が.........。
『カイト~! もしも~し!』
キョウスケはカイトの方を叩く。
『パスタこぼしてるぞ~!』
『本当に大丈夫なのかよ...、まだ休んでたほうが良いんじゃ......』
キョウスケは心配している。
『...放っておこう。それ、たぶん自惚れてるだけだから』
ハヤトは蕎麦を食べながら冷めた様子で言った。
『そっ...そうか? 俺にはそうは見えねーんだけど...』
『まあ、....とりあえずあんま無理すんなよ』
キョウスケはカイトの頭をワシャワシャと雑に撫でてやった。
『ねぇアスカ。オムライス美味しい?』
ユウキはアスカの向かい側の席に座ってニコニコしながら言った。
『ええ、美味しいわよ。ユウキも頼んだら?』
アスカはユウキに微笑みかけた。
『あ~』
食べさせてと言わんばかりに口を開けるユウキ。
それを見たアスカは、またかと言わんばかりに1度ため息をついて、スプーンで1口すくい。ユウキに食べさせてやった。
『美味し~い』
ユウキは自身の両頬を抑えてニコニコしながらオーバーなリアクションをした。
『もう1口!!』
『ダメよ。これ以上は私の分が無くなっちゃうわ』
アスカは困った表情で言った。
『え~、良いじゃ~ん。あたしの半分あげるから~』
『...アスカのケチ』
ユウキはまるで子供がむくれたように頬を膨らました。
...可愛い。
アスカは思った。
『...何か頼んだの?』
アスカは尋ねた。
『うん、オムライス‼』
ユウキは笑顔で言った。
『...同じじゃない』
アスカはクスクスと笑った。
『全然違うし! そっちはデミグラスのだけど、こっちはケチャップのだもん!』
ユウキは少しむくれながら言った。
そんな2人のイチャイチャ(?)を見ていたサトルがニヤニヤしながらこう言った。
...福眼。
サトルは思った。
『...やっぱり、百合はいいですね』
サトルはニヤニヤしながらグミを頬張っている。
『...お前、よくそんなんで足りるな』
キョウスケは呆れた様子で言った。
キョウスケの右肩には眠ってしまったカイトの頭が乗っている。
『何ですか? もう、余計なお世話です』
サトルはムッとした。
『それに...、僕BLはちょっと』
サトルは苦笑いをした。
『な訳ねーだろ。たくっ...張り倒すぞこのクソもやし』
そう言ってからキョウスケは肩に乗ったカイトの頭を見てため息をついた。
『...人の肩で寝んなよ。 たくっ...気持ち良さそうに寝やがって』
キョウスケはカイトの額に軽くデコピンした。
ーーー14:30 志藤邸テラスーーー
外は生憎の雨。
アキラは窓から外を眺めていた。
...雨は、嫌いだ。
そういえば俺がフューリー(歴代の恋人達)を失う日は決まって雨だった。
雨に晒され冷たくなったその死体を自分は何度抱き起こして泣いただろうか。
『しっ...失礼いたします!』
メイドが慌ててカーテンを閉めに来た。
ちなみに、アキラの雨嫌いは使用人皆が周知している。
メイドがカーテンを閉めようとした次の瞬間。
『...!?』
アキラは外に人が倒れているのを発見した。
『待て、閉めるな』
アキラはメイドに言った。
『アキラ様?』
メイドは不思議そうに尋ねる。
アキラは外に出ようとする。
『ちょっ...! お待ちくださいアキラ様!! 只今傘をお持ちいたします』
メイドはそんなアキラを制止したが、アキラはそれを無視して外へ出てしまった。
アキラはその人物の前に立ち、不機嫌そうにこう言った。
『...ここで何をしている』
倒れていたのは篠原だった。
篠原は起き上がってこう言った。
『そうですねぇ...。“あの日”の再現と言ったところでしょうか』
篠原は悲しげに笑った。
『...お前はバカなのか?』
アキラは嫌悪の表情を浮かべて言った。
『...ええ、自分でもそう思います』
篠原は、寂しげにハハッと言った。
すると、急に土下座した。
『...!? なんだ急に』
アキラは戸惑った。
『昨日の愚行......、どうかお許しください』
篠原は、声を震わせながら言った。
『...』
アキラは黙っている。
『...所詮、私は“彼”の模造品。貴方を守る事は出来ても、貴方の隣にいるに相応しい存在ではありません』
『貴方を守り、貴方を幸せに導くのが私の役目』
『なのに...、彼の思念が私に流れ込んでくるのです。そして、その思念が貴方との主従以上の関係を求め出す』
篠原は悲しそうな表情で言った。
『一層の事、死んでしまいたい。...ですが、今の私にはそれすら叶わない』
『だから私は....、その感情を殺します』
『だから何卒...、お側に置いてください』
『...』
アキラはため息をつく。
『カスタードプリンを作れ』
アキラは言った。
『...!?』
篠原はアキラを見上げた。
篠原は安堵の表情を浮かべた。
『....承知致しました。では、アキラ様はお風呂に入ってきてください。そのままでは風邪を引いてしまいます』
傘を持ってメイドが走ってきた。
『遅くなって申し訳ありません。 ...って篠原さん!! 何故びしょ濡れなんですか!?』
メイドは言った。
『百地さん、冷蔵庫に卵はいくつありますか?』
篠原は立ち上がって言った。
『えっ...? ああ、確か先日仕入れたばかりなのでまだ600個程は......』
メイドは言った。
『そうですか。では、折角ですから皆様の分もお作りいたしましょう』
篠原は微笑んだ。
ーーー15:20 志藤邸リビングーーー
『ウッッッッマ!!』
キョウスケは言った。
『こんな美味しいプリン初めて』
ユウキは言った。
『...美味しい』
アスカは言った。
『ありがとうございます“篠原さん”』
ハヤトは言った。
『ご存じなんですか?』
カイトは言った。
『うん、他の人から存在だけはね』
『会うのは初めてだけど』
ハヤトは言った。
『皆様、はじめまして。私はアキラ様直属のSSで名は篠原順一郎と申します』
篠原は言った。
『SS?』
ユウキは言った。
『りっ...リアル“妖狐×僕SS”.........?』
サトルは唾を飲み込んだ。
『シークレットサービス。そうだな~、日本だと総理大臣とか皇族の方を護衛する人達だよね。 ...て事は。えっ?』
ハヤトは言った。
『...まあ、今のアキラ様はその方々と同等の価値がおありですから』
篠原は笑顔で言った。
『エェェェェェェェェェェェェ!?』
6人は叫んだ。
『おっ...御曹司どころじゃなかった』
ユウキは言った。
『...あの時ヤっとけば金持ち婦人じゃない』
『...ユウキ? 何か言った?』
アスカは言った。
『うっ...ううん。何でもない』
ユウキは苦笑いした。
『そのSSってのはこんな旨いプリン作るのも仕事なのか?』
キョウスケは言った。
『いいえ、料理はあくまで私の趣味です』
『一応、趣味で身の回りのお世話もさせて頂いています』
篠原は言った。
『護衛に身の回りの世話、スイーツ作りまでしてもらえるなんて。いっ...至れり尽くせりですね』
ハヤトは言った。
『...篠原さん、一家に一人欲しい』
ユウキは言った。
『フフッ...。お褒め頂き光栄です』
篠原は言った。
『それと、これは皆様にお願いなのですが...』
『何ですか?』
ハヤトは言った。
『アキラ様には今までと変わりのない接し方をして頂きたいのです』
篠原は言った。
『身分が身分なので、これを知ると人に避けられてしまう事も多くて......』
『しねーよ。そんな事』
『あいつには何度か助けられてるしな』
キョウスケは言った。
『ぼっ...僕もしません‼』
カイトは言った。
『心配しなくても大丈夫ですよ。篠原さん』
ハヤトはユウキ、アスカ、サトルを見て言った。
ユウキとアスカは頷いた。
サトルも一瞬ハッとしたが頷いた。
『...ありがとうございます。皆さん』
『あっ...そうだ。おかわりいかがですか?』
篠原は言った。
『食べる~‼』
ハヤト、ユウキ、サトル、キョウスケは元気よく答えた。
『本当にわかってるのかしらあの子達』
アスカはため息をついた。
『さっ...さぁ』
カイトは苦笑いした。
『...でも、少なくとも僕はこれからも変わらずアキラさんの側にいたいと思ってます』
カイトは真剣な眼差しで言った。
『...貴方は本当に彼の事が大好きなのね』
アスカはクスっと笑った。
『えっ....!? あっ...いや、その....』
『友達としてです‼ そう、友達として......』
カイトは言った。
『...その気持ち、今度こそ絶対に最後まで突き通しなさいよ』
アスカは真剣な眼差しで言った。
『...? アスカさん?』
カイトは言った。
『...冗談よ』
アスカはフッと笑った。
その瞳はプリンを嬉しそうに頬張るユウキを見つめていた。
ーーー22:00 志藤邸 書斎ーーー
メイドが志藤の目の前に置かれたグラスにワインを注いでいた。
メイドはPC画面を見てハッとした。
『志藤様、スティーブ大統領からお電話です』
『こんな時間にかい? 全く常識の無い男だ。 ......わかった、繋げてくれ』
志藤はため息混じりに言った。
マウスをクリックすると液晶画面にスティーブ大統領が映し出された。
『Good evening Mr.Sido This time, I informed about the issue of giving away 7 riders to EU(こんばんは、志藤さん。今回は7人のライダーをEUに明け渡していただく件についてご連絡をしました。)』
『I will that again or again, but I have no desire to surrender(またその話ですか、何度も言いますが明け渡す気はこれっぽっちもありませんよ) 』
志藤は言った。
『I need to surrender, I'll be in trouble because we need them(明け渡していただかないと困ります。我々には彼らが必要なのですから)』
スティーブ大統領は言った。
『Wepons and pseudo riders should have been given enough(武器や疑似ライダーはもう充分お渡ししている筈です)』
志藤は言った。
『I am saying because I am not enough!(足りないから言っているのです!)』
スティーブ大統領は強い口調で言った。
『The damage by the people is serious even in the United States, and a sub-rider and special weapons alone can up with it very much(アメリカでも奴等による被害は深刻です。疑似ライダーや専用武器だけでは討伐はとても追い付かない)』
『Mr.Shido You should surrender one rider at a time to EU(志藤さん、貴方はEUに戦力として1人ずつライダーを明け渡すべきだ)』
スティーブ大統領は言った。
『I refuse(お断りします)』
志藤は鼻で笑った。
『...!?』
『Do you know position!(貴様、自身の立場がわかっているのか!)』
スティーブ大統領は激怒した。
『Yes, of course. I know that I can not afford to let go...(ええ、勿論わかっていますよ。だからこそ手離すわけにはいかない...)』
『Do you understand? Now that they are threatening humanity, they are as valuable as nuclear waepons, no(お分かりですか? 奴等が人類を脅かしている今、彼らは核兵器と同様。いいえ、それ以上の価値があります)』
『...You know that they don't even have nuclear waepons(奴等には核兵器すら効かない事は貴方もご存じでしょう)』
『...Human experimentation, clone development, homicide, abduction, confinement. Certainly, I would not be funny if I was caught without the back of the Japanese government or EU(人体実験、クローン開発、殺人、拉致、監禁。 確かに私は日本政府やEUの後ろ楯が無ければ捕まっていても可笑しくない身だ。)』
『...I think that you should keep it heve. However , it is me who created the rider system . I can only do that maintenance and reimbursement. It is up to me to use them or kill them.(...ここは大人しく従っておくべきなのかもしれませんね。ですが、ライダーシステムを生み出したのは私です。アレのメンテナンスも強化も私にしか出来ない。彼らを、ライダーシステムを生かすも殺すも私次第です。)』
志藤は微笑みながら言った。
『...』
スティーブ大統領は言い返せないでいる。
『Just kidding. You don't destroy belts or kill them because you don't want to hand over them. However, it is a story because it can be done at the moment.(冗談です。渡したくないからってベルトを破壊したり、彼らを殺したりはしませんよ。ただ、いざとなれば出来ますよって話です。)』
志藤は微笑みながら言った。
『Are you all right? it difficult to stay late when you get old...(そろそろ宜しいですか? 老体になると夜更かしが辛くてね...)』
志藤はそう言ってわざとらしくあくびをした。
『So, good night(では、お休みなさい)』
志藤は笑顔でそう言ってテレビ電話を切った。
『...!?』
『Wait! the story is not yet!(待て! まだ話は終わっていない!)』
『...Son of bitch!(このクソ野郎!)』
スティーブ大統領はそう言ってノートパソコンを床に叩きつけた。
『....ふぅ』
『全く、あの男にも困ったものだ』
志藤はメイドに言った。
『ライダーの明け渡しに関しての催促ですか?』
メイドは言った。
『...何度言われても私の答えは変わらないのにね』
志藤は言った。
『フューリーも、スペルビアも、アツェディアも、ルクスリアも、インヴィディアも、グラも、アヴァリツィアも......EUなんぞに絶対に渡すものか』
『特にスペルビアを私から奪おうものならば......』
『私は...、この世界を滅ぼす』
志藤は言った。
メイドは志藤が一瞬だけ20代くらいに若返ったように見えた。
『志藤......様?』
『...どうかしたのかい?』
志藤は言った。
『い...いいえ、何でもございません』
メイドは言った。
『...そうか』
志藤はニコリと笑った。
『...』
『ワインのおかわりは如何ですか?』
メイドは言った。
『ああ、お願いするよ』
志藤は言った。
ーーー同時刻 アキラ自室のベランダーーー
アキラはカイトとベランダで月を見ながら談笑していた。
『...!?』
アキラは何かを察知した。
『...で。そこのアイスがとても美味しいんですよ。もっ...もし行けたら一緒に行ってみたいな~...なんて』
『...アキラさん? どうかしたんですか?』
カイトは言った。
『いっ...いや、何でもない』
『それより、そろそろ寝ないか?もうこんな時間だぞ』
アキラはカイトにスマホの画面を見せた。
『あっ...本当だ。じゃあ、続きはまた明日って事で』
『お休みなさい、アキラさん』
カイトは笑顔で言った。
『...ああ、お休み』
アキラはそう言って部屋に戻った。
その表情は優しく微笑んでいた。
窓を閉めカーテンを閉めたアキラは舌打ちし、こう呟いた。
『全く、....相変わらず気持ちの悪い気配だ』
第27話【思念】......END