『...篠原』
アキラは立ち止まってそう言った。
『お呼びでございますかアキラ様』
何処からともなく長身のイケメン男性が現れた。
『鳴瀧カイトに関する全ての情報を集めろ』
『俺は....奴の動向を監視する』
アキラは篠原に命令した。
『承知いたしました』
『.......恐れながらアキラ様』
その篠原は言った。
『....無駄口を叩いている暇があったらさっさと調べてこい』
アキラは篠原の言葉を遮るかのように強い口調で言った。
『....出過ぎた真似を致しました。お許しください』
篠原はその場にかしずいて言った。
『...いいから行け』
アキラは言った。
篠原は黙ったまま頷き、その場から姿を消した。
ーーー同時刻 会議室ーーー
『......で?用件は?』
ハヤトは言った。
『鳴瀧カイト...奴は何者なんだ? 答えろ』
サトミは真剣な顔をしてハヤトとキョウスケに尋ねた。
『そう言われましても......ねぇ?』
ハヤトはキョウスケを見た。
『俺も詳しくは知らねー』
キョウスケは首を横に振った。
『......っ!?』
『お前達それなのにあんなに仲良しなのか!?』
サトミは驚いた様子で言った。
『ここに来る前の事なんて全然知らねーよ。 でも、めちゃくちゃ良い奴って事だけはわかる。男同士がダチになる理由なんてそんなもんだろーよ』
キョウスケは言った。
『お前達“男”という生き物は皆バカなのか....?』
サトミは溜め息をついて呆れてた様子だ。
『まあ、女の子のサトミさんにはわからないかもしれませんが、男の子同士が仲良くなる理由なんて所詮そんなものですよ』
ハヤトは微笑みながら言った。
『僕が知ってるのはカイト君は殺人罪で捕まったって事だけです。でも、その程度の情報ならそちらも知っているんでしょう?』
『さっ...殺人罪!? あのカイトがか? ......あり得ねぇ』
キョウスケは驚いた。
『驚くのも無理ないね。だって死体を見ただけで吐き気を催してたもの。僕も今は信じられないよ』
ハヤトは言った。
『...お前達に聞いた私がバカだったようだ』
『もういい、部屋に戻れ』
サトミはそう言って会議室を出ていった。
『......先生といい、サトミさんといい随分とカイト君に興味津々みたいだね。......何でだろう?』
『まあ、今は考えても無駄か。命令通り大人しく部屋に戻ろう』
『行くよキョウスケ君』
ハヤトはそう言ってキョウスケの肩をポンと軽く叩き会議室を出た。
『....』
キョウスケは黙って会議室から出る2人を見ていた。
ーーーPM6:00 医務室ーーー
『だいぶ楽になりました。もう大丈夫そうです。お世話になりました』
カイトは看護士に一礼し、自室へと向かった。
物陰に隠れてその様子を伺う仁王はライフルに弾丸をこめた。
そして、そのライフルでカイトに狙いを定める。
『...!!』
次の瞬間、背後から首を絞められ仁王はその腕を必死に引き剥がそうともがく。
そして、薄れゆく意識の中で自身を絞めるその腕には深い傷跡がある事に気づいた。
『さか...も.........と、て...めぇ!』
『すまないね仁王。彼を殺させる訳にはいかないんだ』
坂本は言った。
『...』
仁王は意識を失ってしまった。
坂本は気絶した仁王を引きずってその場を去っていった。
カイトは視線を感じた。
『...誰かいるんですか?』
返事は無いし、誰もいる様子は無かった。
『...気のせいかな』
カイトはそう呟いた。
自室に戻ったカイトはシャワーを浴びた。
服を着て頭を拭きながらふとアキラの部屋のある側の壁を見る。
医務室での出来事を思い出した。
突如このままライダーに変身すれば死ぬと告げられた事、だが自身はライダーの力を使わないという選択を拒否した事、アキラが酷く動揺していた事......。
だが、どのように拒否したのか覚えていない。
しかし、不思議と拒否した事に関しては全く後悔はしていない。
『このまま変身し続けたら死ぬ......か』
カイトは呟いた。
『...!?』
あまりにも落ち着いている自分に驚いた。
今日の自分は何だかおかしい。きっとまだ疲れているんだろう。
そう思ったカイトは夕食も摂らずに寝ることにした。
ーーーPM9:40仁王の自室ーーー
仁王はベッドの上で目が覚めた。
そして、全てを理解した仁王は舌打ちをする。
『あの野郎....』
仁王はベッドから降りて坂本の部屋へと向かった。
坂本は自室のソファに横になり自身のお腹の上に乗ってきた猫を撫でていた。
突如部屋のドアが開いた。
『坂本てめぇ‼ よくも邪魔しやがったな‼』
仁王が怒りに満ちた表情で言った。
『仁王、ノックくらいしてくれないかな? それにそんな強く開けたらドアが壊れちゃうだろ』
坂本は落ち着いた様子でそう言った。
『あっ......。みーちゃんも逃げちゃったじゃないか』
猫はその音と仁王の声に驚いて逃げてしまった。
『何故、邪魔した?』
仁王は坂本に掴みかり坂本を睨み付けた。
坂本は溜め息をつく。
『相変わらず酒臭いね...。今日は何リットル飲んだんだい?』
坂本は言った。
『...俺の質問にだけ答えろ』
仁王は言った。
『...志藤様のご命令だよ。 今の仁王は彼を殺しかねないから仁王から彼を守ってくれって』
坂本は言った。
『アイツはアキラさんを苦しめてる......』
仁王は言った。
『...確かにそうかもしれないね。任務の度にかつての恋人と同じライダーに変身できる人間が近くにいるなんて、僕なら耐えられないよ』
坂本は言った。
『アキラさんはもう充分苦しんだんだ。それなのに......』
仁王は悔しそうに言った。
脳裏には、かつての憔悴しきったアキラの姿が浮かんだ。
『......君の気持ちも分かるよ。でも、僕の家系は先祖代々志藤様の手足だからね』
坂本は言った。
『...でめぇが何度邪魔しようとアイツは俺が必ず殺す』
仁王は坂本から手を離し真剣な眼差しでそう言った。
『カノンさんが死んだのは俺のせいだ。 .....ならせめて、もう2度とあの人が悲しまないようにフューリーを近づかせない事が......、俺の罪滅ぼしだ』
『たいした師弟愛だ。 大好きな師匠の為なら人も殺す.....か』
坂本は言った。
『けど、....君がその気なら僕は何度でも止める。 僕のほうにも“主従愛”ってものがあるからね』
坂本は微笑みながら言った。
『...』
『勝手にしろ』
仁王はそんな坂本を睨み付けてから部屋を出ていった。
『主従愛か...。自分で言っておいてなんだけど、僕と志藤様の間にそんなものあるのかな』
坂本は力無くフッと笑った。
ソファから起き上がり、部屋のすみに隠れていた猫を抱っこした。
『...ねぇ? みーちゃん』
ーーーPM11:00ーーー
篠原はモニター室でカイトの情報を調べていた。
液晶モニターには“母子家庭”“母親の名は鳴瀧アケミ”“父親はカイトが5歳の時に自殺”......等。
カイトに関する様々な情報が記載されていた。
『おや? お父さん似なのですね。よく似ていらっしゃる...』
篠原はカイト(当時5歳)と父親の2ショット写真を見て呟いた。
とある写真に目が止まった。
『......っ!?』
『これは......!?』
『ははっ......そんなまさか』
篠原は驚いた。
『...こんな夜遅くに何をしている』
サトミがモニター室に入ってきた。
篠原は瞬時に液晶モニターの映像を洋画に切り替えた。
『何って観れば分かるでしょう? 映画を観ています』
『泣けますよ~この映画。良かったらご一緒に如何です?』
『ほら、他にも色々ありますよ』
篠原は数十枚DVDを出して笑顔で言った。
『またお前は...。以前にも言ったがモニターを私物化するのは......っ!!』
サトミは呆れた様子で言った。
『あーハイハイ。わかりましたよ。でも、せめてこの映画だけ観させてください』
『ね? ね? お願いしますよ~サトミ様~♥』
篠原は猫撫で声で言った。
サトミは舌打ちをする。
『...好きにしろ』
そう言ってモニター室を出ていった。
笑顔でその姿を見送った篠原は再び真剣な表情に戻った。
モニターを先程のものへと切り替え直した篠原は真剣な表情でこう呟いた。
『....アキラ様にこれは伝えるべきなのだろうか』
ーーー同時刻 ユウキ自室ーーー
『まさかあんな形でまたあんたの顔見る事になるなんてね...』
ユウキは鏡の前で自身の左肩をメイク落としで拭いた。
すると、そこにはドクロに薔薇が絡み付いているタトゥーがされていた。
ユウキはそれを指でなぞりながらタクヤとの貧乏ながらも幸せだった時期を思い出した。
そして、彼(タクヤ)の夢の実現の為に好きでもない男達に何度も抱かれた事も......。
それほどまでに尽くしたにも関わらず裏切られた事も。
『こんなのまだ残してるなんて......あたしもバカよね』
ーーー同時刻 クラブハウスーーー
若い男女が酒を飲みながらワイワイと踊り狂って騒いでいた。
ある者は服を脱ぎ、ある者は女性を膝に乗せてイチャイチャとしている。
1人の男性が咳をしていた。
何だか顔色も悪い。
『おい、どうした?』
『具合でも悪ぃーのか?』
それに気づいた1人がその男性に話しかけた。
『ううん...何でもない。......何でもないんだ』
その男性は真っ青な顔をして答えた。
すると、ぶわっと汗をかき出して突如震え始めた。
『おい‼ 全然大丈夫じゃねーだろ‼ 病院行こう。今電話するから待ってろよ』
男性がスマホを持ってクラブの玄関に向かおうとした次の瞬間。震えていた男性はスマホを持った男性の首元に噛みついた。
『ぐあぁぁぁぁ』
男性の断末魔は他の客達の声と流れる音楽に無惨にもかき消された。
絶命した男性をまるで酔っぱらいに肩を貸すように抱えたその男性は再び店内の奥へ奥へと入っていった。
第9話【志藤様の手足】......END