嗚呼、何だこれは。
何なのだ、この紅い物は。
まさか私の……
痛い。
身体が痛い。
頭蓋が砕けてしまいそうだ。
脆い。
手足は動かない。
そうではない。
動かせないのだ。
動かす四肢が無いのだから。
暗い。
まるで光が無い。
私は光を失ってしまったのだ。
何故なら両の眼を失ってしまったのだから。
辛い。
生きる事が辛い。
こんな身体のまま生かされるのがとても辛い。
いっそ殺してくれ。
憎い。
私の身体をこんなにした奴が憎い。
きっと今も倒れた私を見下ろしながら笑っているであろう奴が憎い。
憎い。憎い。憎い…
殺したい。
奴を殺したい。
あの細い首に大口で噛み付いてやりたい。
そしてそのまま脈を喰い千切ってやりたい。
俺と同じ様に四肢を刻み背の骨を砕き咥内の歯をへし折り頭蓋を割り脳奬を撒き散らして殺りたい。
奴が泣いて許しを請うまでしこたま顔面に拳を打ち付けて殺りたい。
嗚呼、殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい。殺したい………嗚呼…
醜い
「あら…まだ意識があるのね」
「貴方が凄まじい力を持つ妖怪だと認識はしていたのだけど」
「まさかこれ程までの生命力とはねぇ」
「このまま殺すのは少し勿体無い気もするわ」
「ねぇ、聞いているのかしら?それとも返事が出来ない?舌を喰い千切ったから?」
「ごめんなさいね、貴方の口許を見ていたら……つい」
「それとも聴こえないのかしら?両耳の鼓膜を破り蝸牛神経を破壊したから?」
「ふふっ、不意打ちとは言えまさか貴方に通用するとはねぇ」
「私程度の存在に殺され掛ける何て、貴方も考えてい無かったでしょう?」
「貴方は私が到底及びもしない力を持った妖怪」
「そんな大妖怪が、こんな小娘相手に無様な姿を晒す事になるとは」
「あー…本当に可笑しい」
「最高に面白い」
「笑いが止まらない」
「……そうだ」
「私ね、貴方に一目惚れしたの」
「三十年前、貴方をこの森で一目見た時から」
「毎日毎日貴方の事ばかり考えていたわ」
「本当よ?私は貴方が大好き」
「いえ、愛している」
「だから、貴方には私に忠誠を誓って欲しいの」
「ううん、欲しいじゃ無い」
「誓って貰うわ」
「……よし、これで貴方は私の式よ」
「ふふっ、貴方が一番」
「一番最初で、一番大切で、一番愛してる」
「聴こえないわよね?だから聴こえるまで言ってあげるわ」
「愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる愛してる…ーー」
ふふっ……幸せだなぁ。