※この作品はR-18です。

東方愛狂録   作:ソーヤー麺

18 / 22
十六話 諸行無常

 

 

 

 

 

此処で捌くと血溜まりが出来てしまいますね…

嗚呼、そうだ。私の隠れ家へ参りましょうか。

 

 

 

よっと。

む…貴方少し重いですね、不摂生はいけませんよ?肉ばかり食べてるからそんな身体になってしまうのです。野菜を摂りなさい、野菜を。

 

 

 

…苦しそうなお顔ですよ?大丈夫ですか?

嗚呼、済みません…右足の止血が充分では無かった様ですね。

まぁ我慢してください、彼方に着いたらちゃんと止血してあげますから。

 

 

 

……暴れられると、鬱陶しいのですが。

 

 

 

嗚呼、最後の晩餐、如何でした?

 

黙りはいけませんよ?

 

 

まぁ良いですけど……感じ悪いですよ?

 

 

 

大丈夫ですか?雨が激しいので寒くありませんか?何なら上着をお貸ししましょうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さぁ、着きました。お恥ずかしいなからこの掘っ立て小屋が俺の前住居です。

ね、汚くて小さいでしょう。室内も泥々に汚れてしまっていて……

まぁ立ち話も何ですので中に入りましょうか。

 

 

 

 

 

 

どうぞ、お掛けになってください。

 

……足、診てみましょうか。

 

嗚呼、済みません、加減が出来てませんでしたか…

痛そうな傷です…本当にごめんなさい……

 

え……許さない………?

俺をこんな目に遭わせたお前を殺してやる…?

 

そんな簡単に殺すと謂ってはいけません。

第一、俺は誠心誠意謝りましたよ?なのに貴方はそれに応えようともしませんね?いけませんよ?感じ悪いです。罰として足の手当てはしてあげませんからね。

 

ハァ、まぁ今回は此方に落ち度があったので仕方ありませんが……

さて、この話はお仕舞いにしてそろそろ始めましょうか。

 

ん?その手に持った鉈で何をするつもりだ?

 

ははは、訊かなくても判っているでしょう?

遺骨を、取り出すんですよ。遺骨を…ね。

 

嗚呼、別に抵抗して頂いて構いませんよ?余計に痛いのは貴方ですから。

俺は貴方を殺めるつもりはありません。ですが暴れられて手元が狂えば……

 

……中々物分かりが良いじゃないですか。

ええ、じっとしていて下されば痛くしませんよ。

それに貴方だって妖怪の端くれ、腹を裂かれた程度で死ぬ程に柔では無いでしょう?

 

さぁ、其処で仰向けになって下さい。

ええ、大丈夫ですから。

俺を信じて下さい。殺しませんから。

 

 

 

 

 

 

……む、難しいですね、あはは…

あ、あれ?これ……ん、んん?

 

あ、間違えた…不味い…な。

ちょ、動かないで下さい!今動いたら……あっ…

 

だから言ったのに……ハァ…

自業自得ですよ?もう。

あーあ、胃袋を取り出すだけの筈が…何故こんな事に……

 

手が…こんなに汚れてしまった。

帰ったら楓に叱られてしまいそうですね。

 

生きてますか…?

嗚呼、良かった、動いてますね。

喋れますか?無理そうですね、あ、無理しなくて結構ですよ。

ほら無理して喋ろうとするから血が……え?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……化け物?私が?私が化け物…?

 

 

 

 

ふ、ふふっ…!あははははははははははっ!!あはははっ!何を今更!?俺が化け物ですって!?そんなの一目見れば分かるでしょう!?

俺も、勿論貴方も化け物なんですよッ!!俺達が人間に何と呼ばれてるか知っているでしょう!?妖怪、化け物、人外者ッ!!俺達はこの世界に不要な害悪!それ以外の何物でも無いんですよ!!俺だって好きで妖怪に生まれた訳じゃ無いんですよ!貴方だってそうでしょう!?でも俺達は怪物!!紛れもないッ!捻曲げようの無い事実ッ!!怪物なんですよォ!!!!渇けば血を欲しッ!!飢えれば肉を欲するゥ!!!!化け物化け物化け物化け物化け物化け物化け物なんですよォォ!!!!!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……取り乱してしまいました、ごめんなさい。

でも忘れないで下さい。

 

俺達はね……人間と共に生きられ無い。

貴方には最初からそのつもりは無いのかも知れないですが…俺には辛いんですよ……

 

何故俺は妖怪なんですか…?

何故俺を妖怪として創ったんですか…?

 

 

 

 

 

嗚呼、済みません…つい自分の世界に閉じ籠ってしまって。

最近少し情緒不安定気味でして…

さて、俺はそろそろ用があるので失礼しますが…貴方はこの部屋に居たいだけ居てくださって構いませんので。

 

そうだ、また俺の話を聞いて頂いて宜しいですか?

今度は酒でも飲みながら、勿論奢らせて頂きますよ。

では、また御逢いしましょう、さようなら。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

狂ってる!!

完璧に狂ってやがるッ!!

何だ、一体何なんだアイツはッ!!!

クソッ!誰か助けてくれぇ!!!こんな気色悪い場所で死にたくねぇよ!!誰か!!誰か……ウッ!!! 

 

ゲボォ…ッ…!ゲホッゲホッ!!ウグァ……アァ…ちく…しょ…が……っ…!

 

死にたく…ね…ぇ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

湖の畔、膝を抱えて座る少女が一人。

少女には少し大きい番傘を差し、側に寄る蛙を見ていた。

 

「どこに行ったんだろう」

 

少女が呟く。

少女は自身の唯一の家族であり、親友であった彼女を思い浮かべていた。

 

「なんで私は死ねないんだろう」

 

「…諸行無常」

 

聞き覚えのある青年の声に少女は顔を上げる。

其処には自らの羽織で何かを包み、その何かを大事そうに抱き抱えた歌留葉の姿があった。

 

「形ある物は何れ壊れます」

 

そう言って歌留葉は腕の中の物を差し出した。

少女は差し出された物を受け取り、歌留葉の眼を見据えながら言った。

 

「お兄さん、びしょ濡れだね」

 

「…涼しくて丁度良いんです」

 

歌留葉の表情が柔らかくなる。

歌留葉は少女の頭を撫でようと手を伸ばす。だがその手は少女の頭に触れることは無かった。

 

「…では、俺はこれで」

 

不思議そうにする少女に背を向け、歌留葉は今度こそ森を後にしようと歩き始めた。

残された少女は歌留葉に渡された物を力一杯抱き締め、こう言った。

 

「これからもずっと一緒だよ」

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。