※この作品はR-18です。

東方愛狂録   作:ソーヤー麺

4 / 22
四話 幸せの形

 

 

愛は、強過ぎると嫉妬に変わり。

 

嫉妬は、強過ぎると殺意に変わる。  

 

殺意は、強過ぎると憎しみに変わり。

 

憎しみは、強過ぎると愛に変わる。

 

俺は人が嫌いだ、群れないと何も出来ない人間達が嫌いだ。

だからだろうか?

こんなにも、この人が…

 

 

 

 

殺したい程、愛おしいのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー永遠亭、待合室ーー

 

 

頬に何かが当たる感覚で、夢の世界から覚醒する。

どうやら待ち時間の間に眠ってしまっていたらしく、頬杖を突いていた俺の目の前に、微笑ましく笑う制服姿の兎がいた。

 

「鈴仙さん…済みません、寝てしまって…」

 

「ふふふ…気にしないでください、それよりごめんなさい、良く眠ってたからついつい頬っぺたをつついちゃいました」

 

「いえ、大丈夫です…」

 

「起こしちゃってごめんね?でもあなたの寝顔なんて凄く珍しかったから…」

 

「…永琳さんと同じ様な事言わないでくださいよ…」

 

「あ、そう言えば、何だか凄く幸せそうな表情で寝てましたよ?どんな夢見てたんですか?」

 

夢…?

夢なんか、生まれてこの方見た事が無いのに。

いや、もしかしたら夢自体は見た事があるのかも知れない。

だけどその内容を覚えていないだけなのかも。

 

「済みません、覚えて…無いです」

 

「あらら、そうなんですか…また思い出したら教えてくださいね♪」

 

「えぇ、それより鈴仙さん」

 

「ん?何ですか?」

 

「こんな所で油を売っていると、後で永琳さんに叱られますよ?」

 

「……そ、そうだった!人里に買い出しに行かないと!!じゃあまた今度聞かせてくださいね?必ずですよ!」

 

そう言うと、鈴仙は走り去って行った。

相も変わらず忙しない奴だ。

 

「…夢、か」

 

不思議な感覚が、胸を満たす。

夢の事を考えると、彼女の顔が思い浮かぶのだ。

昨日出会ったばかりの彼女の顔が脳裏から離れない、何だこれは…

 

「…胸が…熱い…」

 

何なんだ…初めての感覚だ。

生まれて初めて恐怖を感じた、怖い、怖い…

 

「…風邪、かな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー午前十時ーー

 

 

「結果から言うわね、異常無しよ。強いて言えば軽い風邪ね」

 

永琳さんがそう言うと、彼女の表情が明るくなる。

だがすぐに暗くなった、この子も忙しい子だな。

 

「ほ、本当ですか…?」

 

「えぇ、ただ頭を強く打ったみたいね、少し瘤になってるわ」

 

永琳さんの言葉を聞いて、頭を自分で擦る。

いちいち反応するなよ……あ、俺もか。

 

「……あ、本当だ、コブがある」

 

「そうね、一時的な記憶喪失よ。大丈夫、すぐに記憶は戻るから。それから凍傷も大丈夫よ」 

 

「そうですか、お忙しい中お手間を取らせてしまい、済みません」

 

「す、すみません、診て頂いてありがとうございます」

 

「良いのよ、何も無いのが一番なんだから」

 

「…これ、診察料です」

 

「あら…要らないわよ?何も無かったし…それに貴方からお金は貰えないわ」

 

「………」

 

「そのお金で、ご馳走でも食べなさい」

 

そう言って微笑む永琳さん、優しい人だ。

彼女も永琳さんに何度も何度も頭を下げてお礼を言ってる。

 

「また何かあったら来なさい、あと柊、貴方ももっと他者と交流するべきよ?」

 

「…善処します、ありがとうございました」

 

「ありがとうございました」

 

深々と頭を下げる彼女を見て、永琳さんは再び微笑む。

嗚呼、他の生き物がみんな彼女の様に笑えば良いのに……それは無理か。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー歌留葉の家ーー

 

 

靴に凍り付いた雪を払ってから、家に入る。

家内の温度は低く、吐き出す息が白くなるくらいだ。

それはそうか、暖炉の火を消しているのだから。

 

「…じゃあ俺は人里に行って来ます、君は待っていても良いですし…勝手に出て行って頂いても構いません」

 

「は、はい…分かりました」

 

「…行ってきます」

 

何故彼女を連れて行かないのかと言うと、人里には人や妖怪が沢山いる…まぁこれは当たり前か。

人が多いと善からぬ噂や、悪い妖怪に連れて行かれたりと悪い事しか無いからだ。

所謂、メリットが無いのだ。

荷物持ちは要らないし話し相手も要らないからな。

 

俺は雪道をドンドン突き進む。

此処から人里までは三十分程だが、こんなに雪が積もっていては、倍は掛かりそうだ。

 

「…寒い」

 

今年の冬は、本当に寒い。

何故こんなにも寒いのだろう、ハッキリ言って異常だ。  

もしかすると、異変の類いなのかも知れない。

今度、博麗の巫女にそれと無く言ってみようか。

 

「寒い、なのに……嗚呼…何故こんなにも胸が熱いのかな…」

 

 

今日は…ご馳走にするとしよう。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。