男装麗人は2人の妻と異世界をまったり生きる。 作:オダマキ
「Symbiosis of life online」2072年、今から8年前にサービスを開始した、このゲームは独特な部分があるフルダイブ型VR RPGゲームだった。
まず、レベルが種族レベルと職業レベルに分けられ、両方100レベルが上限で総合レベルは200が上限だった事、プレイヤーが選択できる種族は人間と亜人種に限られ、亜人種だけは(獣人やエルフ、ダークエルフ、ドワーフ)種族レベル20毎に進化ができ、条件を満たせば伝説の生物になることが可能。また、職業レベルについては10レベルで派生し上位職になれる。(人間は種族レベルが無く、職業レベルを200まで上げられる)
次に現実に近い感覚でゲームを楽しめる事。フルダイブ型VRゲームにおいて嗅覚や味覚や現実の人間に近いNPCの再現は難しいとされている。しかしこのゲームは五感すべてを再現(NPCやプレイヤーには触れない)しているし、NPCはまるで行きている様に感じるほど違和感はない。モンスターも表情は変わるし迫力もある。死体もその場に残る。
五感を再現されているため、森林や生物、花々の匂い、鳥の囀りや川のせせらぎ、飲食物の味、武器や生物の感触なども感じる事ができる。
まるでこの世界に生まれ落ちた様に感じる事が出来た。
最初は人気だったこのゲームだが、しかし8年で五感再現出来るゲームも出てきて、プレイヤー数は著しく減少し、サービス終了が決定した。
獣人の国 四季の山の1つである冬山 <11:51>
今は夏の季節なのにこの山の地肌や植物は雪に覆われている。この山は常に雪が解けることはなく冬に季節が固定されている。そんな冬山の頂上には白亜の屋敷、『ハベナリア』が立っている。その屋敷のバルコニーには 黒のスリーピーススーツを着込んだ銀髪の頭頂部に犬耳を持つ麗人、コルチカム・スターチスが立っていた。コルチカムはサービスが終了する12時を夜空を見ながら待っていた。
コルチカム「はぁ、やっぱりここから見る雪景色に月、綺麗だな。このゲームも景色も、結構好きだったんだけどな。」
物哀しそうに呟く。
そこに6対の白い翼を持つ金髪の美麗な女性が夜空から舞い降りる。
???「やはりここにおられましたか。...どうされたのですか?その様な顔をされて。」
コルチカム「やぁいい夜だねオクサリス。今日は風が無いから月も星も雪景色もよく見える」
オクサリス「そんな悲しそうな顔をして、どうされたのですか?」
コルチカム「いや....何でもないよ....ただ、その...はぁ...前、話したと思うけど、あともうちょっとで行かなければならないんだ。」
オクサリス「...先日お話頂いた件ですね?」
コルチカム「そうなんだ...多分もうここには帰っては来れない。」
オクサリス「そう...ですか...今日ですか。別の世界に行ってしまわれるのですよね?」
コルチカム「うん。そうだよ。」
オクサリス「....」
コルチカム「....」
二人とも言葉を何も発せない。その間にも時間は進む。 <11:56>
オクサリス「神がお決めになった事なのでは仕方ないですよね。諦めるしか...ないのですよね?」
コルチカム「そう....だね。」
オクサリス「そう....ですよね。」
コルチカム「今までありがとうね。オクサリスとイベリスが一緒に居てくれた時間は、とても幸せだったよ。」
コルチカムは微笑む。本当にとても幸せだったと少しでも伝わる様に。
オクサリスは涙を浮かべ口を引き結ぶ。離れないでほしいと。
<11:58>
コルチカム「できる事なら、今まで通り二人と一緒に暮らして居たい。」
オクサリス「私もあなたと、コルチカムと一緒に過ごせた時間はとても、とても幸せでした。」
二人は感情が高ぶり、堪えきれず涙が零れる。お互いを求める様に二人は抱きしめ合う....ところで何か透明な壁の様なものに阻まれ直接触れられなかった。二人は渋々少し距離を離す。 <11:59>
コルチカム(くっ‼︎最後くらい空気読んでよゲームシステム。少しぐらいいいじゃないか!)
コルチカムは誰に言っても仕方ないと思い口には出さなかった。だがコルチカムは憤りを覚えた。
オクサリスは胸を締め付けられる様な切なさを覚えた。
オクサリス「そういえば....触れないのでしたね。抱きしめ合うことさえ許されないのですか。」
コルチカム「はぁ....イベリスにも伝えてね、僕はオクサリスとイベリスの二人をとっても愛してるって。大好きだって。今まで本当にありがとうって
。伝えて、僕は....」
突然コルチカムの意識は途切れオクサリスの方に倒れてくる。それをオクサリスは受け止める。今度は何の障害も無く抱きしめる事が出来た。とても軽く、温かい。
<12:00>
オクサリス「コルチカム?....どうしたのですか?...コルチカム答えてください‼︎ コルチカム...」
コルチカムの体を揺する。しかし、コルチカムは反応を示さない。オクサリスはコルチカムが死んでしまったと思った。
涙が止め処なく零れる。コルチカムの胸に耳を当てたがまだ心臓は動いていた。息もしていた。まだ生きている。しかし答えてはくれない。
オクサリス「コルチカム...答えてください。やっと、やっとあなたに触れらたのに、あなたが...いないのは嫌です。コルチカム...コルチ...カム、くっ..うぅっううー」
オクサリスは歯を噛み締め声を抑えてすすり泣く。愛しい人を失ったことはオクサリスの心に傷を付ける。
月明かりが照らすバルコニーに神々しい光が射し、強大な気配をオクサリスは感じた。
???「白き子よその者を私に預けてはくれませんか?」
オクサリス「えっ創造神様?...ですか?何故このような場所に...申し訳ありませんがコルチカムは渡したくありません。あなた様に対し、この様な無礼を働くわがままな私をどうかお許しください。」
創造神「安心しなさい、その者をあなたから奪おうとは思っていません。私はその者を助けたいのです。」
オクサリス「ほ、本当ですか⁉︎」
創造神「えぇ。その者はまだ生きています。今なら助かるでしょう。」
オクサリス「はい!どうか、どうかお願いします。コルチカムを助けてください!」
オクサリスは抱きかかえたコルチカムを光が射してくる方に捧げる様に持ち上げる。すると、コルチカムの体はかき消えた。
創造神「確かに預かりました。何日掛かるか分かりません。しかしこの者は必ず助けてみせます。だから安心するのですよ。」
オクサリス「はい、創造神様、コルチカムをよろしくお願いします。」
神々しい光と気配がかき消えた。その後、オクサリスは光や気配を感じた方向に祈りを捧げ続けた。