男装麗人は2人の妻と異世界をまったり生きる。 作:オダマキ
神界
真っ白で何もない空間に 銀髪の獣人に見える女性が横たわっているかの様に浮かんでいる。その傍には神々しい光を纏った金髪の美しい女性がたっており、獣人の女性を眺めている。
創造神「どうしてこうなったのかしら?本当ならこの子もあちらの世界で普通の生活を送れていた筈なのに。」
その呟きに応えるかの様に黒髪の優しい雰囲気の青年が現れる。
???「母上、お呼びでしょうか?...おや?その者まだ魂がありますな。欠けてはいますが。ここに神以外がいるのは初めてですね」
創造神「ええ、そうね死神。それで、さっそくで悪いけど、あなたを呼んだのは、あちらの世界からの疑似的な来訪者を呼ぶ計画についてなのよ。一定の成果が出て、これ以上は見込めないと思って、中断したの。だけど問題が発生したのよ。」
死神「確か、あちらの世界の人間の娯楽器具を媒体に、こちらの世界に魂の一部を呼び、新たな体を与え、それを操り、この世界に貢献をしてもらうと言う計画でしたな。その問題というのがこの者ですか?」
創造神「えぇ、そうなの。本当なら中断した際、この子の魂もあちらに戻せる様にしていたわ。この子以外は戻れたのに、なぜこの様なことになったのか分からないのよ。」
死神「そうですか。ですが、今は原因よりもこの者の今後について考えるべきかと。魂の損傷を放置すると再利用できませんからな。その手にお持ちなのはこの者の魂の欠けた部分ですね?」
創造神「えぇ。」
死神「ならばそれを治してしまいましょう。その後は転生させますか?それともこの体に魂を定着させますか?」
創造神「元の体に戻すことはできないの?」
死神「計画の参加者なら、この者の元の体は人間でなのしょう?」
創造神「えぇ」
死神「であれば死んでいるでしょう。もし万が一生きていたとしても、もう定着はしないと思われます。」
創造神「なぜ、定着できないの?」
死神「この者の魂の質、とても人間の体に合うとは思えません。恐らく、この幻獣の体に適応してしまったのでしょう。適応してしまった為に、中断の際、元の人間の体に戻ろうとせず、あちらとこちらを繋いでいた門が閉じ、魂は分断されたと思われます。幸い時間はあまり経過していないですし、損失されたわけではない様なので、すぐ治せるでしょう。」
創造神「そうだったの...ではこの体に魂を定着してちょうだい。この子にはこちらの世界でこのまま生きてもらいましょう。良い行いをしてきた子だもの、その方が都合が良いわ。何より幻獣に成れた子をそうそう手放せないわ。」
死神「承知しました。ではその様にいたします。」
創造神「あちらの世界の神々とも話さなければいけないわね。今度は何を要求されるかしら。」
死神「その話し合い、私も出席したほうが良いですか?」
創造神「大丈夫よ、あなた達は留守をお願い。久々にお父さんに働いてもらいましょう。
死神「...承知しました。その...仲良くして下さいよ?」
創造神「それはあっち次第よ。」
死神「...」
獣人の国 冬山 白亜の屋敷、ハベナリア 2階 コルチカムの個室 [神界から降りて五日後] <8:30>
部屋にあるワイドキングサイズのベットには銀髪の麗人、コルチカムが寝ていた。いつもは立っている耳は後ろに折れている。その傍らには3対の黒い翼を持つ銀髪のグラマラスな女性が椅子に座り、不安そうな表情でその寝顔を見つめている。
???「コルチカム...なんで私には何も伝えてくれなっかたんだ。お前と永遠の愛を誓ったのはオクサリスだけではないのだぞ。それに、お前は来訪者だったそうじゃないか。どうして大切な事を話してくれないんだ?私は...本当に...お前に愛されて居るのか?」
女性は悲しみに打ちひしがれる思いだった。
愛しい人が自分達に秘密にしていた事を他人から知らされた事。愛しい人を共に支え合うと決めたオクサリスには話していて、自分には話していないことがあると知った事。愛しい人が倒れてしまった時、なぜ側に居るのが自分では無かったのかと思った事。
仕方ないこともあった、しかし到底納得できない。涙が溢れそうになる。胸が今まで感じたことがない位に締め付けられる。
もし、愛しい人に自分が愛されていなかったら、オクサリスだけを見て居るなら、私はどうすればいいんだ?私はどうすれば良かったんだ?私はどうなってしまうんだ?
そんな事を女性が俯きながら考えていた時、布が擦れる音が聞こえベットを見る。ベットに横たわる愛しい人の瞼が震えて居る。目覚めてしまう。そう思い女性は涙を急いで拭う。
コルチカム「あれ?...イベリス...泣いて居るのかい?...おいで、君に触れることはできないけれど。近くにはいてあげられる。」
嗚呼、やはりこの人じゃないとダメだ。この人の優しさや愛しさに触れたならもう離れられない。もしこの人がいない世界があるならば、そこはきっと空虚で寂しい。そうイベリスは思った。
愛しい人が確かに自分の前に存在して居る。愛しい人の赤い目が自分を見つめて居る。愛しい人がくれた自分の名前を読んでくれた。自分を励まそうとしてくれて居る。そんな数日前まで普通だったことがとても嬉しく感じる。とても安堵する。さっきまで心を苛んでいた疑念も苦しみも寂しさも軽くなってしまった。
イベリス「フフフ...あぁ、少し邪魔するよ。」
そう言ってイベリスは微笑み、立ち上がりコルチカムが寝て居るベットに向かう。
コルチカムはイベリスに微笑み返しながら、毛布をイベリスが入りやすいように少しどける。
イベリスがベットに入り、添い寝する。その時コルチカムは異変に気付く。
コルチカム(あれ?イベリスの匂いが今日はすごく濃い。すごく甘い匂い。それになんか音もいつもより良く聞こえる。視力も上がった?なんで?)
イベリスは隣に寝て居るコルチカムが目を見開き、耳がピンっと立って居ることに気付く。
イベリス「どうしたんだ、コルチカム?」
コルチカム「え?いや...なんか、君がいつもよりすごく綺麗に見えるし、スン、スン、やっぱり匂いが強い気がするんだ。...ずっと嗅いでいたいぐらいいい匂いが。」
コルチカムはイベリスの匂いを嗅ぐ。
前はこんなに強く甘い匂いはしていなかった。だけど何度も嗅いだ匂いだ。甘く、誘惑してくるような濃い芳香にコルチカムは、段々落ち着かなくなってくる。自然と顔が近ずく。
イベリスは少しずつ近ずいてくるコルチカムの目が潤み、トロンとしている事、明らかに顔が紅潮して居る事、息が少し荒い事に気付く。
イベリス「どうした?体調が悪いのか?」
そう、ニヤつきながら言ってイベリスが鼻が触れそうな距離のコルチカムの額に触れる。イベリスはコルチカムの事をまだ許したわけではない。
コルチカムは、はっとする。そこで自分が何をしていたのかに気付き、急いで上体を起こし、座るような姿勢になり、顔を隠す。
イベリスも同じように上体を起こす。
コルチカム「い、いやそんな事ないよ。ただちょっと、ほんのちょっとだけドキドキしてるかも。だから熱測らなくていいよ。...あれ?...熱を測るために、触られた?ね、ねぇ...どうして触れたの?」
イベリス「ん?あぁそういえば、私は存分にお前を『堪能』したからいいけ...ゲフンゲフン、お前に伝えなきゃいけないことがあったんだ。この世界はお前が思っている、その、ゲーム?とか言う変な世界ではない。お前が元いた世界と同じように存在する世界だ。つまりお前はこちらで言う来訪者だ。まぁ今は完全に肉体が変わっているから。転生者が正しいのかもしれないが。転生したお前はもうこの世界の正式な住民。だから触れるんだ。」
コルチカム「え?...え?......どう言うこと?...じゃあどうして触れなかったの?...ていうか堪能したって何⁉︎」
イベリス「さぁな、私はあまり詳しく知らん。 まぁお前を呼んだのは神々だと言う話だから神様に聞け。」
イベリスは顔を逸らしながら『堪能』について語らず、投げやりに言う
コルチカムはそんな投げやりな言葉に呆然とし、一体何をされたんだ?と思う。だがすぐに『堪能』と言う言葉に、触れるのなら、今まで焦がれていた事を出来る事に思い至る。
気持ちが高ぶると共に期待と不安がコルチカムの胸で綯い交ぜになる。自然と喉がなる。
コルチカム「コクッ...イベリス...あのさ。」
コルチカムの少し不安そうな呼びかけにイベリスは答え。顔をコルチカムに向ける。
コルチカムは恐る恐るイベリスの頬に触れる。少しイベリスの頬は赤くなる。
イベリス「なんだ?」
コルチカム「キ、キスを...してもいいかい?」
イベリス「あぁ...いいぞ。と言うかそう言うのは黙ってやるのが普通じゃないのか?」
コルチカム「お互い初めてなんだし。それに嫌がられることはしたくないから。...そ、それじゃ、するよ?」
イベリス「あぁ。」
コルチカムはイベリスの頭の後ろに手を回す。
二人は見つめあったまま触れ合うだけのキスを数秒間する。初めて味う自分の唇に触れる柔らかい感触に二人は大きな喜びと恥ずかしさを感じた。二人はキスの後お互いに顔を背ける。
イベリスは顔を真っ赤にして、顔を隠し、何か小声で呟いている。顔を見られたくなくて自らの黒い翼でコルチカムとの間に壁を作る。イベリスはコルチカムから愛されていると言う確かな実感を得た。
一方コルチカムはイベリスの呟きに耳を傾ける余裕はなく。耳は忙しなく折れたり立ったりを繰り返している。こちらは顔を真っ赤にしている唇を指でなぞっている。
何年も触れられなかった二人、それにより出来てしまった穴を埋めるには足りないが、今はこれだけで十分だった。