善逸は炭治郎に 小さな気持ちを持ち始め
炭治郎に告白する。
家族に飢えている善逸に炭治郎は、なにを話したのか・・・
大輪のひまわりのようだと思った。
そのひまわりが咲いたとき家族中で、お父さんも布団の中で笑ったっけ。
初めて彼を見たときそれを思い出した。
そういう髪の毛の色をした青年が女の子に抱きついている。
女の子が嫌がってるので、オレは当然引きはがした。
ひまわり髪の青年は、オレと同じ隊服を着てた。
女の子が背を向けて歩いていくと、青年がキッとこっちを睨んだ。
「お前責任とれよ!お前のせいで結婚出来なかったんだから!」
は? だって、今出会って、ぽかぽか女の子に叩かれてたでしょ。君は。
出会ったばかりで結婚はムリなんじゃないかなぁ。
オレが眉をしかめてると、
自分は弱いとか、オレが結婚するまでオレを守れとか、半泣きで言い出してきた。
せっかく、きれいなひまわりの髪がだいなしだ。
自己紹介がまず先だな。
「オレは竈門炭治郎だ」
ひまわり頭は、鼻をぐずぐず言わせながら
「オレは我妻善逸だよ・・・」
『弱いって言ってるけど、かなり修行しないと隊服貰えないから
善逸も強いと思うんだけどなぁ』
鼻をすすりながら
「それは無いよ。
恐怖で気絶しちゃって、起きたら鬼がたくさん転がってて
誰かがやっつけてくれたんだ。」
え?オレ思っただけだよね?話してないよね?
どうして聞こえたの?
善逸は一瞬だけ、ピクリとした。
おにぎりを渡すと黙って食べてる。
そして一個しかないと言ったら、半分に割ってオレに渡した。
これが出会い。
姿はまぶしい夏の青空の下に咲くひまわりなのに
彼はいつも自分に自信なさげだった。いつも何かにおびえていた。
何回も同じ任務を一緒に受けた。
ひどい傷を負いながらも、オレたちは生き残った。
オレも伊之助も、そして善逸も、
犠牲なった人のための後悔の涙がたくさん出た。
『もっと強かったら・・・』
3人のケガ人は救護室で寝ていた。
ベッドから声がするので横を向くと、
善逸は、出会った時と同じように
まだ完治していないのに救護の女の子達の手を握ったり、
明るく振舞っているように見えた。わざとらしいくらい。
だって匂いが楽しそうな匂いじゃなかったから。
桃の花が雨で散ってしまったような・・・
実がもう成らないような
イノシシの面をつけている伊之助が
「うるせい!黄色頭!!」
とベッドから上半身起こして怒鳴ってた。
伊之助は善逸と違って、いつでも強い山の匂いがしていた。
朝露を含んだ草を踏んだ時のような青い匂い。
踏まれてもまた生えてくる草。
そろそろ動けるかなって時に、
『3人とも夕刻過ぎたら、オレの部屋に来るように』と
音柱からの伝言がカラスから届いた。
3人でぞろぞろと音柱である宇髄さんのところに行った。
伊之助は一番めんどくさそうだった。
「並んで座れ」
と言われ、伊之助、オレ、善逸と畳に正座させられた。
目の前には、オレ達の目くらいの高さの台があった。
「明日から俺たちは任務に入る」
やっぱりそうか!がんばらなきゃ!
宇髄さんが話し出した。
「吉原遊郭に潜入する。」
よしわらゆうかく?横を見ると伊之助も首をひねっている。
「え!そんなところ行ってもいいんですか!?」
善逸が大きな声を嬉しそうにあげた。
宇髄さんが
「うるさい!黄色頭!」
善逸の頭をペシーンと叩いた。これはしょうがない。
宇髄さんが話を続けた。
「この3人のうち、女の裸を見たことあるやついるか?」
素直に手を上げたら、
片方の隣に座っていた善逸も手をビシッと上げた。
「春画じゃなくて、本物だ」
しゅんが?善逸はすごすごと手を降ろした。宇髄さんが、オレを見た。
「妹の着付けはオレがしています」
と言ったら、善逸が立ち上がって
「ええええ!ね、禰 豆子ちゃんの裸を・・・この野郎!」
と叫んで、頭をペシーンペシーンとされた。これもしょうがない。
宇髄さんが、ため息をついて、
「要は、身内以外の服を着た女しか知らないんだな?」
半場あきらめた目でオレたちを見た。そっか妹は関係ないのか。
「お前ら、女とまぐわった事ないってことか」
3人とも黙ってしまった。
まぐわうって・・・えっと・・・なんだろう?
「おいイノシシ頭、蝋燭を1本以外全部消せ」
宇髄さんが命令して、伊之助が「チッ」とぼやいて消していった。
「来い。雛鶴」
薄い着物を着た女性がいつのまにか宇髄さんの隣に居た。
「毎回すまないな。雛鶴」
と宇髄さんが言うと、その雛鶴さんは首を横に振った。
「くノ一は、こうやって身体で教えてくれるんだ。感謝しろ」
感謝?なにを?
その後、オレ達は一生忘れないと思うことを経験した。
「お前ら、普通は十四歳には、まぐわっておかないと男として失格だぞ」
と宇髄さんが言った。
「オレもう十六歳だし・・・」
と涙声の善逸が言った。この泣き虫なひまわりは、一つ上だったのか!
だから、結婚とか焦っていたのかな
。
「吉原遊郭、花街潜入で女を知らないとか、
いらん結果になっても困るからな。雛鶴頼む。」
雛鶴さんは、オレたちの目の前の台に腰を降ろし
着物をはだけたさせ、膝を曲げて股間をオレたちの前に見せた。
女性の股間を初めて見た。
ゴクリと喉が鳴った自分が恥ずかしかった。
目を背けたい自分と、もっとよく見たい自分がいた。
両方の同志からすごく強い匂いがして、それにもクラクラした。
一気にクチナシの花が咲いたような・・・
雛鶴さんは顔を赤くして横を向いて、オレ達と顔を合わせないようにしていた。
蝋燭の明かりのせいなのか、股間はテラテラと濡れているように見えた。
「そこにお前らの股間を入れるんだ。
それが、まぐわうってことだ」
宇髄さんが続けた。でもほとんど聞こえなかった。
なぜかオレの下半身が熱くなった。
「子作りもこの穴に入れるんだ。
そして知らなくていいことだが、尻の穴に入れたがる奴らもいる。」
伊之助が
「うげっ!」
と吐くように言った。
宇髄さんは、
「世の中には男同志がつきあうとき、そこへ入れる。まあ男と男はそうなるわな。
もちろん男女関係でもそこの穴が好きな奴らもいる。
雛鶴、ご苦労だった。もういいぞ。」
雛鶴さんは、台から降りてスッと消えた。
大きな鼓動の匂いもだけど、血の匂いもする。
横を向くと、両手で鼻を押さえている善逸の手の隙間から血がだらりと出てた。
興奮しすぎて鼻血が出たらしい。あわてて、オレの手ぬぐいを渡した。
「すまない」
三人とも救護室に無言で戻った。。
善逸はまだ手ぬぐいで鼻を押さえている。
二人の心臓の動機が治っていない匂いがする。
もちろんオレも、鼓動が止まらない。
きっと耳がいい善逸には五月蠅かったことだろう。
三人でベッドで寝ていると、
伊之助がおもむろに
「あれ知ってる。まぐわうっての」
と、ぼそりと言った。
えっ!一番こういう事に疎いと思ってたけど。オレも疎いけど。
「山に居た時、
憧れてた大イノシシがメスのイノシシの上に乗っかってた。
しばらくしたら子供のイノシシ連れてた。」
「・・・ふうん」
善逸の匂いはまだ少ししていたけど、背中をこっちに向けて
寝たふりをしてるようなので声はかけなかった。
翌朝、善逸の明るい声で起きた。うるさいくらい。
女の子たちを追いかけて
「ねえ~任務大変みたいだから、手くらい握らせてよ~」
とドタバタしながら言ってた。
伊之助が
「緊張感がねえな。あいつは。」
と服を脱ぎだし、二本の刀を腰にはめ込んだ。
「まあ、オレ様がいれば即終わるけどな」
はしゃぐ善逸をチラ見して隊服に着替えた。
空元気にも見えた。
宇髄さんが木箱を持ってきていて
「動くなよ」
オレ達の顔に筆でなにか塗りだした。
そして女物の着物を、昨日とは違う、くノ一さんが着せてくれた。
褌はそのままでいいらしい。よかった。
鏡を見たら、3人とも物凄く酷い顔でオレも自分が気持ち悪かった。
任務とはいえ、これはいやだなぁ。
伊之助が、
「サイテーだぜ。へんな顔、へんな着物で触感もわかりにくい!」
大声で吐き捨てるように言った。
同じような酷い有様の善逸は、もうどうにでもしろって顔で諦めてた。
吉原遊郭に到着して、
綺麗な着物を着たたくさんの女性や、
それを品定めするような熱気の男たちで匂いがひどい。
そして、各自バラバラになった。
善逸は綺麗な女性を見ても顔は喜んでなかった。
楽しみにしてなかったの?
そして、宇髄さんと善逸は人ごみの中に消えていった。
後ろ髪がひかれた。
この後は地獄だった。
また十二鬼月の鬼と(正確には鬼たちと)闘うことになった。
みんなの様子を考える、なんて余裕どころか
『オレ、今度こそ死ぬかもしれない』
消えつつある意識の中で思った。
昨日、屋根の上での報告会で
宇髄さんが厳しい目で、こう言った。
「善逸は来ない。オレ一人でここからは動く」
つまり、オレ達には帰れと・・・
「いやです!それは聞き入れません!」
善逸!お前が戻ってくるまでオレは絶対帰らない!
伊之助もオレと同じ匂いがする。
焚火をつけたときのような匂い!
『心を燃やせ!』
そうですよね!煉獄さん!
女の鬼に首を絞められて息も出来なくなってるのに、なぜだろう。
オレの家の庭のひまわりが見えた。
『死ぬのかな』
ひまわりに聞いてみた。
ひまわりは青空の中、静かに風に揺られてた。
遠くから声が近づいてきた。
その時匂いで分かった。
よかった!善逸!伊之助も!二人ともたくさんの血の匂いもしたけど。
善逸!善逸!よかった。ぼくのひまわり。
目を開けるとベッドに寝かされていた。
体中が痛い。痛すぎる。
周りで女の子たちが
「よかったです。本当によかった。」
と嬉しそうに泣いてくれていた。
数か月もオレは昏睡状態だったらしい。
ぼうっとした頭で、オレはハッとした。
「善逸・・・善逸たちは!?」
「善逸さんは、既に任務に出ています。」
そうか。良かった。・・・で、なんで伊之助は天井にいるんだろう。
夜になって、
ベッドにいるオレのとこに脇に誰かが立ってた。
今はオレは弱ってて 鼻が利かない。
「よかった・・・本当によかった炭治郎」
この声は善逸だ。
いつもの半べそ声では無くて、
「よかった。すごく心配したんだぞ。」
ああ、ちゃんと善逸の顔が見えないのが歯がゆい。
「・・・元気になったら、一緒に散歩したい。」
オレの口から自然に出た。
善逸は、
「わかった」
と大きく頷いたようだった。
ああ今、善逸がどんな匂いか、かぎたい・・・
かみさま、どうか善逸にオレの音が聞こえませんように・・・
オレがベッドで寝ているとき、
善逸は指令で出かける前と、
どんなに疲れてても、戻ってきたら会いに来るようになった。
それが習慣になっていった。
「早く風呂に入って寝たほうがいいよ」
と言っても
「いいのいいの。後からで。」
介護の女の子に追い出されるまで、たわいない話を笑顔でしてくる。
オレはそれが嬉しかった。
善逸からは若い桃の匂いがしていた。
夢で、オレはその桃がちゃんと枝から落ちずに熟すことが出来るのか
桃の木をずっと見上げていた。
やっと数歩、歩けるようになってきた。
女の子たちに支えられながら、一歩二歩と。
次の日、善逸はオロオロと
「ま、まだやめときなよ~」
とすごく心配していた。
「大丈夫。散歩、少しだから」
痛いけど、今じゃないとダメなんだ。
夏の夕暮れ、カナカナカナと蝉の音も聞こえる。
あぜ道を並んで歩く。
「ねえ。善逸はなんでも音が聞こえるの?」
善逸は困ったような笑顔で
「意識しないと聞こえないようにしてるよ。
じゃないと伊之助のいびきうるさいし」
「なぜ聞いたの?」
オレは顔が赤くなった。
かみさま、この音が彼に聞こえませんように。
「なぜ炭治郎は、オレと話すとそういう音になるの?」
聞こえてた・・・下を向くしかなかった。かみさまのバカ。
夕焼けの中、オレはやっぱり無理してたのか倒れそうになった。
あわてて支える善逸。
「だから、無理するなって言ったじゃん!」
オレは
「散歩の約束、早くしないと消えると思った」
と、ぐったりしたまま言った。
そしてそのまま、気絶した。
「だからまだ安静だと言ったでしょ!」
ガミガミ女の子に怒られた。
「善逸さんが背負って連れてきたんですよ!
もちろん善逸さんも叱りましたけどね!こんな病人連れだして。」
ちがう・・・ちがうんだよ。
オレがわがまま言ったんだ。
深夜、桃の匂いがした。うっすら目を開けると
「オレ、散歩覚えてた。楽しみにしてた。」
善逸は、それだけ言って背中を向けて
スタスタと行ってしまった。
オレはその背中を呼び止めることが出来なかった。
そんな時でも薄い月明りの中、ひまわりの髪の色は綺麗だった
どうか若い桃が落ちませんように。
善逸は、朝からひょっこりやってきた。
もう来ないかと思ってたので驚いた。
女の子たちを追いかけて、平手打ちされてた。
そして、こっちを向いて
「おはよう!」
と笑顔で言った。
散歩はなんだったの?あれは夢だったのかな・・・
夜、血の匂いでぼんやりしてた目が開いた。
善逸があちこちから血を流しながら
「今日も話に来たよ。なにを話そうか?」
笑顔で言った。
血まみれの隊服で。
即 明かりがついて女の子が
「きゃあ!善逸さん!!」
と口を押えた。
血が玄関から廊下をたどって、ここにいたのがバレたらしい。
「あはは。オレもベッド行きかもなぁ。介護されてえ~」
ふざけて言って怒られていた。
そして、オレの方を向いて
散歩した時と同じ困った笑顔をオレに見せた。
善逸はあばらが2本、あと深いひっかき傷が数本。
「あいててて~ねえ、もっと優しく手当てしてよ~う」
いつもの善逸だった。
オレの耳元で小さな声で、包帯でぐるぐる巻きの額のまま
「また、散歩しような」
そう囁かれて、心音は聞こえてしまうかもしれないのに布団に顔をうずめた。
そんなことしたってしょうがないのに。
「うん・・・」
やっぱり夢じゃなかっんだ。
なぜか 桃の夢は見なくなった。
桃どうなったのかな・・・
風で飛ばされてないといいけど・・・
それから ほぼ同時くらいに歩けるようになった。
しばらく指令は来ないそうだ。
お互いベッドで寝ているとき、
善逸が女の子にちょっかい出したり、
オレにいつも通りのたわいもない話をしてくれていた。
今日のおかずはおいしかった、とか、漬物は欲しいんだけどな、とか。
その屈託ない笑顔を見てると
『オレの弟に似てるなぁ』
と明るく元気だった弟を思い出した。
悲しいけど、楽しかった家族の思い出。
その時、ぶわっと幼いときのひまわりの夏の匂いがした。
久しぶりに嗅いだ懐かしい匂い。
気づくと
善逸が上半身を起こして、こっちを見てた。
オレがびっくりして目を丸くしてると
「今日の夕方、ゆっくり歩ける?」
しっかりした口調で聞いてきた。
困ったような笑顔に
「うん」
断る理由も無かった。
それから、夕方まで善逸は何も話さなくなった。
寝たふりしてるのがわかったけど、
その背中になぜか声をかけることが出来なかった。
『前もこういうことあったな』
夕暮れのあぜ道、お互い黙って歩いていた。
「家族ってさあ」
善逸が切り出した。
「いいよな。」
どうしてそんなことを善逸が言い出したのか不思議だったけど
「うん。すごく楽しかった。
今は禰豆子だけは守りたい。大事な妹だから。」
「そっかぁ、そうだよな・・・」
日が落ちそうな空を見上げて、善逸は
「家族かぁ・・・」
とまたポツリと言った。
昼間、もしかして
オレが家族を思い出した時の心音で起き上がったの?
善逸も家族欲しかったの?
なにげにオレは夕明け空を見ながら
「あのさ、悪い鬼をぜーんぶ倒したら、
オレ達、家族にならない?
オレと善逸と禰豆子!伊之助はついてくるかなぁ~」
ふふっと横を向くと、後ろで善逸が立ち止まっていた。
え?どうしたのかなと戻ってみると、驚いた。
善逸がぼろぼろ涙を流してた。
たくさん涙が出てた。
地面にぽたぽた落ちるくらい。
眼が離れなかった。
「そんなに見ないでよ」
「オレが嫌な事言ったんならごめん!謝る!!」
「なんで炭治郎が謝るんだよ」
久しぶりの泣き声にどうしたらいいかわからなくなった。
袖で顔を隠してたけど、くぐもった泣き声は夕暮れに響いた。
オレは黙って突っ立てた。
「・・・帰る」
まだ声は泣き声だったけど・・・
戻ると女の子が腕組みして、オレ達を待っていた。
それからの善逸はいつも通り明るかった。
数日後いつもの布団に戻ってきた。まだまだ安静だけど。
伊之助が元気そうに
「おう!」
と手を上げた。
いつも通り、伊之助、オレ、善逸の並びで寝た。
オレは数日前の夕方のぼろぼろと涙を流した善逸が気になってしょうがなかった。
『善逸・・・なんで泣いたの?』
背を向けたまま善逸がぽつりと
「家族になろうって言われて、ものすごく嬉しかった。」
話し出した。
オレが起きてるのが心音でわかっていたんだろう。
「うん。それは本当の事だよ」
「・・・オレは母親の顔も知らない。
だから、誰かと家族になりたくて、
嫌がる音の女の子にも、たくさん頼んだ。
そしたら、一番心音が悪い子がオレを騙した。」
オレはもう眠るどころじゃなくて
薄暗い月明りのひまわり色の髪と背中を見てた。
「騙されて、もう心を閉ざしたオレを家族にしてくれたのは、
凄く強いじいちゃんで、凄く厳しかったけど、
たまに褒めてくれたり・・・ひとつ屋根の下でみんなでいるのが嬉しかった。
・・・だけど、みんなみんな死んじゃった。
誰も、いなくなっちゃった。」
「オレさ、炭治郎の心音大好きだよ。正直でまっすぐで。」
善逸はゆっくりとこっちを向いた。
強い桃の匂いがする・・・
そうか、お前落ちてなかったんだな。
善逸がはっきりと、
「好きな人としか、まぐわうことは出来ない。」
「う・・・うん。そうだね。」
なにが言いたいの?どうしたの?
まぐわうって・・・
宇髄さんのところで在ったことを思い出して顔が赤くなった。
「・・・夕方さ、炭治郎が
オレと禰豆子ちゃんと伊之助と家族になろうかって言ってくれたでしょ」
「うん。言った」
善逸の目が潤んでいる。これは泣く寸前の顔だ・・・。
「オレ、炭治郎好きだよ。意味わかる?」
「オレも善逸の事 好きだよ」
善逸の顔が曇った。
「ちがう・・・オレの事を一番に考えてほしいの。」
まっすぐな目で見られた。
横向きなので、ひまわり色の髪の毛が斜めにサラリと動いた。
オレは思い出していた。
死ぬ間際に見たのが
青い大空の中のひまわりだったのを。
ひまわりは、いなくなった家族との思い出とそして 善逸の髪の色・・・
おにぎりを半分にした善逸。
毎日見舞いに来てくれた善逸。
夕焼けの中、あぜ道をおぶってくれた善逸。
それから、それから・・・
「・・・禰豆子は妹だから、置いといて・・・
次は善逸。これって1番ってことでいいのかな?」
「ほんと、炭治郎は正直者だなぁ」
困ったような笑顔が薄明りの中、見えたと思ったら
布団から腕を出して、オレの襟元を引っ張った。
口と口が重なった。
これは知ってた。好きな人にするやつだ・・・
町に炭を売りに出たとき、店の隅っこや木の陰でこういう事をやってる
男女を数回見たことがある。
熟した桃の強い匂いがした。
ああ 若い桃はちゃんと熟すことができたんだな。
よかった。本当によかった。
ずっと口を離してもらえない。
息が出来なくて
「ぷはっ!」
思わず、善逸の肩を押して口を離してもらった。
「鼻で息するんだよ」
「そ・・・そうなんだ。善逸はなんでも知ってっ・・・」
言葉をさえぎられてまた口を塞がれた。
さっきより長く。
ちょっと口を離して
「少し口開けて」
と言われて、そうやったら善逸の舌がオレの口に入った。
それが口の中で動くそれに、いつの間にかオレも絡めてた。
くちゅくちゅと音が響いた。
口から顎に涎が垂れたころ、やっと口を離してくれた。
オレは肩で荒い息をした。善逸の息が止まった。
「善逸・・・?」
善逸を見たら静かに泣いてた。
また ぽろぽろと。
枕が涙にたくさん落ちている。
「泣くなよ・・・どうしたんだよ」
「オレは炭治郎とまぐわいたい。
でもそれで、二度と話せない関係になるなら
笑える友人のままでいいんだ・・・今なら戻れる。」
涙をを手で拭って、困った笑顔で
「はは・・・炭治郎の前で何回泣いたかな」
オレの手は、考えるよりも先に善逸の服を引っ張り、口づけした。
「いいのか?」
「うん」
オレは嘘はつけない。それは善逸も知ってる。
布団の上にお互い正座した。善逸がオレの服を脱がしていった。
「どうしよ。ずっと前に見た女の股間より
今のほうが、もっともっと血がたぎってる」
どんどん、どんどん桃の匂いは強くなる。
むせかえるほどに。
「・・・もっとたくさん鼻血でるかも」
「すごく綺麗だ。炭治郎・・・
最初に会ったときから、こんな綺麗な心音聞いたことが無かった。」
そんなの言われたこと、生まれて初めてで思わず顔を逸らした。
「こっち向いてよ」
「あっ」
耳や首筋を舐められ胸を吸われて、変な声がでた。
ちゅっちゅっと音を立てられて吸われて、
片手は、もう一つの胸をずっと摩ったり、優しくつねっていた。
へんな気持ちになった。なに?この熱い気持ち。
どっちも胸は赤く腫れた。暗い月明りでよかった。
この真っ赤な顔が善逸に見られない。
「気持ちよかったって、心音が言ってる。」
くすりと善逸が小さな笑い声を出した。
ああ、顔が濃い影で隠れても無駄ってことか・・・
もっと下まで服をに脱がされた。
「よかった。ちゃんと起ってる。」
「み・・・見ないで」
褌が濡れているのオレは今、わかった。
膝を閉じようとしたら足をぐっと広げられた。
褌をずらされそうになった時、怖くなった。
こんな事、知らないから。
「大丈夫。何も心配しないで」
恥ずかしいと思った鼓動が伝わってしまった。
自分でも摩ったことが無い場所を、触られた。
身体が跳ねた。
「すごい心音だね。オレも同じだよ。」
オレの手を善逸は自分の心臓に充てた。
どくんどくんと大きな音がしてた。
股間ががぬらぬらしてて、
指が擦りやすいのを、善逸は知ってるんだ・・・
気づくと、オレは善逸の肩に両手を回していた。
短い時間が長く感じた。
肩に回した手がガクガク震えた。
何度も上下に擦られ、なにかが頭からはじけた。
雷が頭の中に落ちたように。
善逸のきれいな技のような・・・一瞬の光。
「たくさん出たね。」
オレから出た、なにかわからない液体を、
オレの肛門に塗りつけた。流石にそれには声が出た。
「やだっ!それは怖い」
善逸は、静かに
「・・・そっか」
と小さく言った。
オレの服を直そうと手をかけた。
オレはその両手首を押さえた。
「善逸の好きにしていいよ!だから行かないで!」
驚いた顔の善逸の目にオレが映ってる。
『熟した桃が食べてってオレ達に言ってるんだよ!』
後ろ向きで膝を立てるように言われた。
「昔、じいちゃんとこの兄弟子に見せてもらった春画に
こういう絵があってね。すごく興奮したんだ。
あっちは男女だったけどね。」
しゅんが?前も言ってた・・・善逸。
「痛かったら言ってね」
人差し指をねじ込んできた。
変な気持ちをぐっとこらえた。腰が引けた。
ぐっと善逸がそれを引き戻した。
深いなにかの場所を探し当て、押した。
目がくらっとした。
そこばかり、押されて・・・また、わからない液体が出た。
指が徐々に増えていって、お互い息が荒くなった頃、
「いくよ・・・炭治郎」
大きな熱い棒のようなものがじりじりと入ってきた。
痛くて思わずのけ反った。
鬼に爪でひっかかれた時の後のように
じわじわとした傷のように痛かった。
善逸がすぐに
「んっ・・・」
呻いて、オレの入口に熱いものをどくんと出した。
「はは・・・出ちゃった。
でも・・・滑りがもっと良くなっていい」
熱い棒は、抜かれることなくどんどん奥へ入ってきた。
さっきよりは痛くない。
熱い棒はオレの奥を何度も摩っていく。
さっき擦られたところを何度も突かれた。
オレはまた吐き出した。
擦られるたび、オレの股間からは、ぽたぽたずっと雫が出ている。
オレはかすれた声で
「善逸・・・善逸・・・もう困った顔しないで・・・
オレ達・・・家族なんだから・・・」
考える前に口が勝手に動いた。
善逸はどんな顔してたんだろう?
ずっと布団を握っていた。その手もガクガクしてた。
息も出来なくなって、喘ぐ声も出なくなった。
オレの上で荒く動いていた、善逸の吐息の混じった声が聞こえた。
「・・・炭治郎、オレはどこにも行かない・・・行かないよ。」
そして、動きが止まって、
オレの奥の奥に熱いなにかが、たくさん吐き出される感覚を感じた。
それをずるりと引き抜かれた瞬間、オレは布団にどさりと倒れた。
かみさま どうか どうか
ずっと善逸といっしょに居させてください
ぼくから ひまわりを取り上りあげないで。
かみさまにお願いしながら記憶が薄れた。
オレの手を善逸が握って、オレの心音を静かに聞いていたことは
オレは知らないままだった。
朝になってて、服もきれいに着ていた。
布団のシーツも代えられていた。
伊之助が
「よく寝てたな~お前」
と、ありえない柔軟体操をしてた。
下半身がズキズキして、昨日が夢じゃないことを物語っていた。
褌が擦れると痛い・・・
隊服にのろのろと着替えると食堂に向かった。
食堂から見える庭に善逸と禰豆子が居た。
禰豆子はオレを見つけると、たたたっと走ってきた。
手にひまわりを持っていた。
「ひまわり・・・」
「1本くれるって、畑のおっさんが言ってくれたんだぞ!
取ってないからな!」
善逸は焦って、大きな声で言った。
「わかったよ!」
オレも庭に向かって大きな声で言った。
夏の終わりの青空の中
ひまわりは風に揺れて、
とても
とても綺麗だった。