本当に追い詰められた人はこうなるんじゃないかと考えながら書きました。是非、最後までお付き合い下さい。
全部、全部、ほむらちゃんのせいだ
私は暁美ほむら。鹿目まどかを救うため、何度も一ヶ月をやり直している。今は、幸せだ。だって私の願いがかなったから…これは、その時のお話。
ああ、この時間軸は駄目ね。
だって、巴マミが死んで、美樹さやかは魔女化して、佐倉杏子はさやかを救うため死んでいった。
まどかはそのすべてを間近で見ていた。
そう、その悪夢の全てを目の前で見ていたのだ。
自身が当事者として、その悪夢に。
魔法少女になろうとしたときもあった。
その度私は止めた。止めなければいけなかった。
しかし、もうこの時間軸は捨てようと思うようになってきた。
まどかが魔法少女になっても特に…と思っていた。
そんな時だった、まどかが私の家を訪ねてきたのは。
「こんばんは、ほむらちゃん。お邪魔してもいいかな?」
まどかは精一杯の作り笑いをし、そういった。
…哀しそうな笑顔ね。
「ええ、もちろんよ。」
私は、そんな可哀相なまどかを家ヘ招き入れた。
「…ねぇ、ほむらちゃん。」
「なに、まどか?」
「ほむらちゃんは…一人ぼっちで、ワルプルギスの夜に勝てるの…?」
「!…どうしてそんなことを聞くの?」
まただ。
あの時の記憶が蘇る。
「だって、マミさんも、さやかちゃんも、杏子ちゃんもいないんだよ?」
まどかは以前の時間軸でも同じようなことを言ったことがある。
「…勝てるわ。ええ、勝てるわよ。もともとあんな奴らは居ても居なくても変わらないわ。」
どうして。
無駄な強がりをするのよ、私は…。
「ほむらちゃん…!」
「そうよ、あんな奴ら戦力外よ。」
どうしてそんなことを…!
バチン。まどかが私の頬を平手打ちした。
「どうして、どうしてそんなこと言うの…?」
まどかは泣いていた。
「まどか…ごめんなさい、言い過ぎたわ…。」
「…みんな、辛かったのに…。怖くて、おかしくなりそうで…。」
「なのに…ほむらちゃんは…どうしてそんな酷いことを言えるの…!?」
「…それ、は…。」
私は俯くことしかできない。
「…らちゃ…だ…。」
小さくて、なにを言っているかわからない。
「…なに、まどか?」
「…ほむらちゃんのせいだ!全部、全部、ほむらちゃんのせいだ!」
え…?
まどか、なにを言ってるの…?
私の、せいって、何が…?
「ほむらちゃんが見滝原に来たから…!マミさんが死んだ!さやかちゃんだって魔女になった!杏子ちゃんだって…全部、ほむらちゃんが見滝原に来たからだ!」
そんな…まどかはそんなことを言う子じゃない…。
…もしかして、私のせい…?
私が、まどかをそうさせた…?
「出てってよ!ここから出てってよ!この悪魔…!」
「…悪、魔…。」
「…ほむらちゃんは、皆を殺したんだよ…ほむらちゃんが…私達の日常を壊したんだよ…!」
まどかにあんなことを言われるのは、初めてだった。
いや、きっと、誰も見たことがないだろう。
彼女は、壊れてしまっている。
彼女は、まどかであってまどかではない…。
そう、私がそうさせたのだ。
私が何も考えられず、虚空を見つめていると、まどかは私を睨んで出ていった。
「…もう、知らない…!」
あれから、どれだけの時間が経っただろうか。
私はただぼーっとしていた。いや、それ以外にすることがない。思いつかない。
まどかを追いかけるなど、空っぽの頭の中になるわけがなかった。
時計を見れば、一時間ほどの時間が過ぎていた。
街へ出た。
目的はない。目的など、作ることができなかった。
ただ絶望しかけた心を冷やしたかっただけかもしれない。
…そんなことできるわけもないと分かりきっているが。
明日はワルプルギスの夜が来る。
だが、戦う気は欠片も起こらない。
どれだけの犠牲が出るのか、どれだけの犠牲がここまでにあったのかくらい、分かるのに。
家に帰ろう。そして寝よう。
明けない夜なんてないから。
辛いときは寝てしまえばいいのだ。
翌日。
「見滝原全域に避難指示が…。」
ワルプルギスの夜が来たようだ。
私は何もしない。
私は何もできない。
私にできることは、やり直すことだけ。
ただ、その時が来たら、この砂時計をひっくり返すだけだ。
なぜか、気分だけは爽快だ。
きっと、美しいからだ。
見滝原の街が蹂躙されていく様が。
悔いなんて、いつだってなかったときはない。
しかし、私はそんな物に囚われている場合ではないのだ。
私は、次の未来を信じて、砂時計をひっくり返した。
一ヶ月前。
またあの天井だ。
なんの変哲もない、無機質な病室。
あんなことがあったのだから、憂鬱で仕方がない。
とにかく、気分が優れない。
メガネをとって、視力を魔力で矯正。三つ編みをほどく。いつもの私。
前回を思い出し、腹がふつふつと燃え上がる。
なぜ、まどかにあんな言いがかりをされなければいけないの!?
護ってあげてるのに…!
馬鹿なあなたを護ってあげてるのに…!
約束、護ろうとしてるだけなのに…!
巴マミだって、美樹さやかだって、佐倉杏子だって、護ってあげたいけど…!
勝手に誤解して、勝手に死んでいくのよ!
あなた一人さえ護れない私に、みんな救えって?
馬鹿言わないでよ!
一通り、心の中でイライラを爆発させて、スッキリした。そう思わなければいられなかった。
そうだ、魔女を狩りに行こう。
魔女でストレス発散すればいいのだ。
直ぐに行動に移すことができるのは、私の良いところだ。
窓から病室を抜け出した。
案外、早く魔女は見つかった。が、先客がいた。
巴マミだ。
いかにもな戦い方をしている。
なぜだろう。とても彼女が忌々しい。
今の私には、彼女の姿は鬼よりも醜い姿に映っている。
今すぐ、殺してやりたい。…いや、殺してやろう。
今思えば、彼女も原因の一つだ。
まどかを魔法少女にする原因の一つ。
だいたい彼女は繊細すぎるのだ。
魔女化の真実を話せば、発狂してしまう。
しかも、独りぼっちは寂しいとか言いながら、私を拒むし…!
そうこうしているうちに、戦闘は終わっていた。
「巴マミ。」
私は声をかけた。
「だれかしら。どうして私の名前を知っているの?」
警戒混じりの声で言う。しかし、関係ない。
「ふふ…生憎、貴方に名前を教えるような義理はないのよ。」
「…呆れた。その格好、魔法少女でしょう?新米?」
「…ごちゃごちゃうるさいわね…。死になさい、巴マミ。」
「なっ…!?」
時間停止。
銃口をソウルジェムに向ける。
いや、その前に。頭、足、手、腹。それぞれに銃弾を撃ち込む。
時間停止解除。
「がっ…!?ああぁうう!?」
うるさいわね。
時間停止。
「ふふ…今、楽にしてあげるわ。」
ソウルジェムに銃弾を撃ち込む。
「あっ…。私、は…。」
死んだようだ。呆気ない。
彼女が持っていたグリーフシードを奪い、その場を去る。
ああ、なんて清々しいの!
いいザマよ、巴マミ。
あなたがいないと、後々楽になるわ。
転校の日まで魔女狩りをしようかしら。でも、その前に、私の家へ帰ろう。
自宅。
やはり、自分の家が一番ね。
外の吐き気がするような空気とは違う。
ここは私だけの場所なのだから。
両親が早く自宅を用意していてよかった。
巴マミ、私が殺したのよね…。
…私は、悪魔なのか…?
まどかに言われたことを思い出す。
うっ…、吐き気がする…。
洗面所で吐いてしまった。
まどか…あなたを考えると吐き気がしてしまう…
なぜ?なぜなの?イライラするわ。もういいわ、寝てしまおう。
一週間後。
特に巴マミを殺したこと以外変化のない時を過ごしていた。今日は転校当日。憂鬱だわ。とても憂鬱。
なぜかしら。
本当はなぜなのか、知っているけれど。
鹿目まどか。美樹さやか。会いたくない。
しかし、彼女たちを魔法少女にするわけにはいかないわ。
それが、私の使命なのだから。
「目玉焼きは堅焼き?それとも、半熟?ハイ、中沢くん!」
「えぇ!?どっ、どっちでもいいんじゃないかと…」
「その通り!男子の皆さんは、目玉焼きの焼き加減を気にする人にならないこと!女子の皆さんは決してそんな男子に、ひっかからないこと!」
「ハイ、さて!転校生を紹介します!」
「いや、そっちが後かよ!」
いつも通りのやり取りが聞こえる。
「さぁ、暁美さん、入って。」
私は陰鬱な気分を隅に追いやり、社交辞令的な挨拶をする。
「おぉー!」 「美人だね〜!」 「かっこいい…。」
クラスがざわめく。
「暁美ほむらです。よろしく。」
まどかを一瞥する。
戸惑い気味に、まどかは私に微笑んで見せる。
うっ…、少し見ただけなのに。
気持ち悪い。
「暁美さんは、心臓の病気で入院していたの。皆さん、仲良くしてあげてくださいね!」
いつもの質問ラッシュに適当に受け答えをした。
「具合が悪いから、保健室にいかせてもらうわ。」
いつものことだ。
「鹿目まどかさん、保健室につれていってもらえるかしら。」
「えっ…う、うん…わかったよ、暁美さん。」
「あ、あのさ、ほむらってかっこいい名前だよね。
なんか、燃え上がれーって感じで!」
デジャブ。
「そんなことないわ。名前負けしているし。」
「そんなことないよ、暁美さんはかっこいいよ。」
「…ありがとう。あと、ほむらでいいわ。」
「あ、うん。わかった、ほむらちゃん!」
…何この感じ…?
まどかに名前を呼ばれただけなのに…。
目眩が…!
視界が、安定しない。
まるで、蟻地獄に落ちていくよう。
いや、いや、いや…!
『ほむらちゃんのせいだ!』
『見滝原から出てって!』
いや!私のせいじゃない!いや!いやぁぁぁ!!
「いや、いやよ!わたしはなにも、ただあなたを護ってあげたいだけなの…!」
あぁ…まどかが怒っている…。
私を許さないと、牙を剥く。
「大丈夫!?ほむらちゃん!?」
「ま、まどか…?ごめんなさい!ごめんなさい!私は…ごめんなさい…!」
「ほむらちゃん!大丈夫、あなたは何もしてないよ?」
『あなたのせい…あなたのせい…あなたのせい…!』
『みーんなあなたのせい…!』
「いや、来ないで…来ないで…まどか…来ないで!」
「ほむらちゃん…?大丈夫だよ!」
「いや…!やめて…!許して…!」
視界が暗転していく。
徐々にまどかの声は聞こえなくなる。
「ほむらちゃん!?ほむらちゃん!?大丈夫!?」
「はっ!」
ここは、ベッド?
保健室のようね。
「すぅ…すぅ…。」
隣からは、規則正しい寝息が聞こえる。
ん?まどか…?
寝ているのかしら。ふふっ、かわいい寝顔ね。
今は、昼休みね。かなり寝ていたらしい。
「ふぁ…あっ、ほむらちゃん起きたんだ!心配したよぉー。いきなり倒れちゃうんだから。」
「ごめんなさい。…見苦しい所を見せてしまったわね。」
どうしてかしら。
さっきはあんなになってしまったのに今は何も感じない。
むしろ、楽しいとさえ思っている自分がいる…
「ううん、大丈夫だよ。きっと、つらいこと思い出しちゃったんだよね。」
「ええ、ありがとう。さぁ、行きましょう。皆、心配しているわ。」
「えへへ、そうだね。行こう、ほむらちゃん!」
相変わらず退屈な授業だ。
もう、何度受けたことか。新鮮味がなく退屈だ。
少し考える。まどかのことだ。どうして、廊下では取り乱してしまったのに、保健室ではなんともなかったのかしら?あの症状のトリガーはなんなの?どうして、巴マミを殺してしまったのだろう。あのときは感情にまかせていたから…まったくわけがわからない。…このセリフといえば、インキュベーターね。巴マミがいない今どうしているのかしら?まぁ、いいわ。あんなのどうでもいい。
放課後。
まどかと美樹さやかが声をかけてきた。
「ねぇ、一緒にCDショップに行かない?」
「まどかが転校生と一緒がいいってうるさいからさ。
一緒に行ってやってよ。」
「…えぇ、いいわよ。」
初めてのパターンね。
「でさぁ、仁美ったら、あの時さぁー…」
「さやかちゃん…」
「ねぇ、転校生はどう思う?」
しまった、考え事していて聞いていなかったわ。
「えっと、ごめんなさい。なんの話をしてたかしら…?」
「えっ、転校生聞いてなかったの?もぉー、そういうことしてると、皆から嫌われるぞぉ?」
「…ごめんなさい、美樹さん…。…それで、なんの話だったの?」
「だから、仁美がさ~…」
美樹さやかは美樹さやかね。何も変わらないわ。
変わらない美樹さやかなら楽なのに、ね。
「それは、あなたの自業自得よ、さやか。」
「なんだとー!って、今、さやかって…!」
「…え?」
「くすっ、ほむらちゃん、さやかちゃんのことをずっと美樹さん、って言うんだもん。ね、さやかちゃん?」
「…そういえば。」
特に意識はしなかったが、自然とさやかと呼んだようだ。
「あたしもさ、転校生じゃなくて、ほむら、って呼んでもいい?」
「…ええ。構わないわ。」
懐かしいわ。久しぶりかもしれない、美樹さやかにほむらって呼ばれるの。
気持ち悪くもない。特に何も感じない。…いえ、楽しいわね。
「ヤッター!ほむら、ほむら、行こっ!」
「ま、待って!さやか、手っ引っ貼らないで…!」
「あっ、待ってよ、さやかちゃん!ほむらちゃん!」
CDショップ。
ここがまどかたちの運命の分岐点だ。
まどかは…演歌、渋いわね。
さやかは…まぁ、当然クラシックね。
さて、そろそろインキュベーターが騒ぎ出す頃合いなのだけど。私が奴を殺しに行かないとどうなるのかしら。
『助けて…!』『助けて、まどか…!』
インキュベーター…!
やはり、奴は奴だったか…!
まどかは?どこに?
辺りを見回すが、まどかはいない。
もういないなんて…!
「…さやか、ごめんなさい。急用ができてしまったの。また明日、学校で会いましょう。」
「えぇー、ほむら帰っちゃうのかーって、もういない…」
ごめんなさい。今はあなたに構っているような余裕はないの。
まどかを…まどかを魔法少女にさせるわけには…!
第二話ヘ続く…
第一話は終了です。いくらまどかといえど、友達が目の前で死んで、それがほむらが来ると同時となるとあんなことを言ってしまうと思いました。
では。