かなり長いです。頑張ってください…。
「それで、あなたの目的はなに…?」
「あたしの目的はね…。」
「あんたの絶望する顔がみたい。あんたが魔女になるところがみたい…!」
「…は?」
呆れた。なんてやつなの、こいつ。
「そう。でも残念ね。」
「なんで?」
「私は決めたの。絶望なんてしないって。まどかとずっと一緒にいるって、そう約束したもの!」
「いいや。あんたは間違いなく絶望する。」
「だから…!」
「だって、今から、まどかを殺すんだから!」
私の頭がおかしくなったのか。
「な…なんて…?」
「もっと詳しく説明してあげるよ。」
「あんたが死ぬか、まどかが死ぬか。どちらかを決めるようにあたしは、まどかにいったんだ。」
こいつ!!まさか、こんな屑だとは…!!
「なら、私が死ぬわ!まどかを殺さないで!」
「無駄。あんたに決定権はない。まどかが自分で決めたんだよ。まどか自身が死ぬことを…。」
「貴様ぁ…!!許さない…!!許さない!!」
私は今すぐ、この屑を殺してしまいたい!
「…。あと三十分もしたらまどかが来るよ。それまでに、まどかとの、最後の時間の楽しみ方を考えておくんだね。」
「美樹…さやか…!!離しなさい!この…!このっ…!」
「うっさい!!黙ってなさいよ…!」
「っ…!」
怖じけづいてしまった。情けない。
また、まどかを救えないの…!?まどかを殺させない方法を考えなければ…。
しばらくして。まどかを救う案など思いつかず、頭を抱えていると…。
「ほむらちゃん!!大丈夫!?」
「うるさい!まどか!静かにして!」
まどかがやってくる。来てほしくないのに、嬉しかった。
「やめなさい!まどかに傷をつけてみなさい、私があなたを殺してやるわ!」
「威勢だけは認めてあげるよ。でも、あんたその状態で何ができんの?」
私は今、鎖に繋がれ、見動きが取れない。さらにソウルジェムも奪われている。
「ほむらちゃん…!私、あなたのためなら…!」
「やめて、まどか!ずっと一緒にいるって約束したじゃない!」
「さやかちゃん。私に時間を下さい。十分でいいの。お願いします…!」
「…いいよ。」
「ありがとう、さやかちゃん。」
「ほむらちゃん…!」
「まどか…!」
まどかは私に抱きついてくる。
「ほむらちゃん…!私は死ぬ覚悟はできてるよ…!」
「あなたは死ななくていいの!代わりに私が死ぬから…!だから、あなたは生きていて頂戴…!」
「だめだよ、ほむらちゃん。私はあなたが死ぬところなんて…み…たく…な…い…よぉ…!」
泣いている。本当は怖いのだ。こんな小さな子に、死など遠すぎる物語なのだ。
「ほむらちゃん…!ぐすっ…!あなたは…生きて…!私のぶんまで…!」
「ほむらちゃんは私の希望…!だから…。」
「次は…私を救って?私を助けてあげて…?」
「まどかぁ…!だめよぉ…!」
まどかはさやかのもとに戻っていく。
「もういいの?」
「うん。覚悟はできたよ。」
さやかが魔法少女に変身し、まどかに剣を当てる。
「…あ。少し待って。ほむらちゃん、家に帰ったら、私の机を見て?」
「そこに、私の想い全部があるから…!」
「まどか…!まどか!!」
「じゃあね…!ほむらちゃん…!あなたは生き…!」
ザクッ…!さやかの剣がまどかの心臓を貫く。
「まどかぁぁぁぁ!!!」
「…。」
返事が返ってこない。
「死んだよ、まどかは。さぁ、次はあんたの番だ!
絶望して魔女になってよ!」
「ふざけるな…!」
私の頭は怒りで満ちていた。一つは美樹さやかに。
もう一つは…私自身に。
「ふざけるな!!美樹さやか!!貴様は!!」
鎖が外れた。これを火事場の馬鹿力、といういうのだろう。
「うぁぁぁ!!死になさい!!美樹さやかぁ!!」
私は美樹さやかを殴り倒して、馬のりになる。
ゴスッ。ゴスッ。ゴスッ。ゴスッ。
何度も、何度も。私はやつを殴り続けた。
「ほむら…。あたしは…。」
やつが名前を呼ぶ。私は手が止まる。
「どこで…間違ったのかな…?」
間違った…!?何を今更…!
「恭介が死んで…。生き返らせるために魔法少女になって…。」
「でも、私はあなたを許さない…!」
殴ろうとしたとき。
「ほむら…。私の話を聞いてくれないかな…?」
…! 話…。そっか…あなたもなの…?
私は熱が冷めていくのを感じた。
「ええ…。」
回想…。
「恭介ぇ…。恭介ぇ…!」
「美樹さやか。」
「え…?猫が喋ってる…?そっか、あたし幻覚見えるようになったんだ…。」
「僕は幻じゃないよ。僕の名前はキュゥべえだ。よろしく!」
「…。で、そのキュゥべえはあたしに何のようなのよ?」
「上条恭介を生き返らせたいんだろう?」
「…!できるの…!?そんなこと…!」
「うん。僕と契約して、魔法少女になったらの話だけど、ね。」
「魔法…少女…?」
「そうだ。僕と契約して魔法少女になってよ!」
「本当に恭介は生き返るの?」
「魔法少女になる代わりに、願いを一つ叶える…。だから、そのことを願えばいい。」
「わかった!私、契約するよ!」
「ただし。君の魔法少女の素質では、完全に生き返る可能性は50%だ。それでもいいかい?」
「それでもやるよ…!私は魔法少女になる!」
「キュゥべえ!恭介を生き返らせて!!」
「君の願いはエントロピーを凌駕した!受け取るといい、それが君のソウルジェムだ!」
「そうして私は魔法少女になった。恭介が生き返ったか見てみたの。」
「確かに、生きてた。でも、植物状態だった。」
「…!」
「もう会話もできない。恭介は死んだも同然だったんだ。こんなんじゃ意味がない。私は看護がしたくて恭介を生き返らせたわけじゃない!」
「しかも、恭介はときどき暴れだすの。原因はよくわからない…。たぶん、こんな状態にしたあたしを怨んでいるんだと思う…。」
「この頃かな…。あたしの心が壊れだしたのは…。」
「ほむら…。あたし…。もう魔女になりそうなの…。」
「さやか…!?」
「ほら…。もう真っ黒でしょ…?」
そういって見せてきた彼女のソウルジェムは真っ黒だった。
「あなた…!魔女を狩らなかったの!?」
「怖かったんだ…!死ぬかもって思うと…。」
「ほむら…。あたし怖いよ…!魔女になりたくない…!」
「あたしは許されないことをした…!死んでも許されないことをした…!」
「あたしは最低だよ…!でも…!」
「ごめん…。ほむら…。」
パリン。
さやかのソウルジェムは、グリーフシードに変わった。
「あなたも…。心に傷を負っていたのね…。」
「それも、一人で抱え込んで…。話せる人もいないで…。辛かったのね…。」
私のソウルジェムは真っ黒だった。魔女化寸前といったところか…。
「さやか…!私と一緒に死にましょ…?まどかのところへ行きましょう…?」
「待てっ!!ほむら!!」
「杏子…!?」
「うぉぉりぁぁ!!」
杏子が槍で、さやかだったモノを攻撃する。
「お前が!死んだら!まどかは!どうなる!!」
杏子は次第にさやかだったモノを追い詰めていく。
「まどかは!それで!喜ぶ!わけが!ないだろ!!」
「杏子…!」
でも…。私は…。
「お前が戦うんだ!お前がこいつにトドメを刺すんだ!」
さやかだったモノは弱りきっていた。
「無理よ…。私には…。杏子…お願い…。さやかを解放してあげて…。」
「…。お前は…。」
杏子がさやかだったモノを倒す。
そして、そいつのグリーフシードで私のソウルジェムを浄化した。
「ほむら、見損なったよ。あんたはまどかのために行動してるのかと思ったけど、違うみたいだな。」
「なにを…!」
「あんたはまどかのためじゃなくて、あんた自身のために行動してるんだよ!」
「そんなことない…!私は…!」
「いいや違う!本当にまどかのことを想っているなら、あいつの望みを叶えてやるべきだ!」
「今のあんたは傷つくのを恐れてるだけだ!だから何もしない。そんなんでいいのかよ!?」
「あなたに何がわかるっていうのよ…!!」
「えっ?」
「あなたに何がわかるのかっていってるのよ!!」
「どうせわからないわよ!!あなたに話をきいてもらえない苦しみなんて!!」
「ほむら、それは…」
「ほっといてよ!!一人にさせてよ!!」
「…。わかった。そのかわり、明日ファミレスに来い。話がある。」
「…。」
「じゃあな。」
「…。」
沈黙が訪れる。私の魂は徐々に濁っていく。
「まどか…!ずっと一緒だっていったじゃない…!約束したじゃない…!」
私の生きる意味。それを失った私。時間を巻き戻すことはできるが、それ以上に傷は深かった。
私はまどかを抱き、家に帰ってきた。
「…ただいま…。」
「ほむら!?心配したぞ!まどかは…!?」
「ううっ…。ごめんなさい…。護れなかった…!」
「まどか…!おいまどか!なぁ…!目を覚ませよ!おい!?おい!?まどか…。そんな…!!」
「ごめんなさい…!私のせいで…!うわぁぁん…!まどか…!!」
私とお母さんは泣いた。奥ではお父さんが座り込んでしまっている。私達は絶望した。まどかが死ぬ。それは、私達を壊すには十分すぎる出来事だった。
次の日。
「…。ご飯いらないわ…。」
「ほむらちゃん…。ご飯くらいは…。」
「いらないっていってるでしょう!?」
「おい…!ほむら、テメェ…!!」
お母さんが私に掴みかかってくる。
「離して。」
「…。」
「離してよ!!」
「…っ!」
お母さんが私を離す。
「ごめんなさい…。お母さん…。」
「ほむら…。」
私は部屋に入る。
「まどか…。」
つい昨日まで、ここでまどかが暮らしていた。
このベッドで寝ていた。
この椅子に座っていた。
この机で…。
「机…?」
思い出す。机をみてっていってたっけ…。
机には手紙があった。おそらくまどかの書いたものだろう。まどからしいかわいいデザインだった。
「読んでみましょうか…。」
『拝啓、ほむらちゃんへ。
あなたがこの手紙を読んでいるときは私はきっと死んでしまっているでしょう。…なんて、ベタだったかな?』
「ふふっ…。まどか…。」
『私がこうして手紙を書いたのは、ほむらちゃんに伝えたいことがたくさんあったからです。』
「伝えたいこと…。」
私にもたくさんある。なのに…。なのに…!
『一つ目。私は、ほむらちゃんに謝らないといけません。私はほむらちゃんに何度もひどいことをしてしまいました。あのとき謝ったけど、もう一度謝らせてください。』
「そんな、いいのに。」
自分の死の間際なのに、こんなに優しくなれるものなのだろうか。
『二つ目。勝手なことをしてごめんなさい。でも、私は後悔していません。ほむらちゃんのためなら、そう考えると怖くなかったです。だから…。自分を責めないで、ほむらちゃん。』
「まどかぁ…!あなたって子は…!」
私は涙が溢れてきた。
『三つ目。これは…。私のわがままだけど、
もっと…!もっと…!いっしょにいたかった…!ほむらちゃんと学校にいって、出かけて。もう一度、あのカレーを食べたかった。
ほむらちゃんをもっと知りたかった…!』
「まどか…。私もよ…!どうしてなのよ…!」
まどかの手紙は濡れていた。
新しい濡れた跡と、古い濡れた跡。
まどかも書きながら泣いていたのだ。私と同じだったのだ。
『でも…。私はほむらちゃんを信じます。また、やり直して、私達を救ってくれるって。辛いかもしれないけど、必ずほむらちゃんは乗り越えることができます。
だって、ほむらちゃんは強いから。』
気付かされる。私は臆病になっていたのだ。
「…ええ、そうね。こんなところでくよくよしていられない!」
『四つ目。次の世界でも、私や、さやかちゃん、杏子ちゃん、それからほむらちゃんが殺してしまった人とも、
仲良くしてあげてください。じゃないと、悲しいから。
ほむらちゃんは一人ぼっちじゃないから。みんながいるから!だから…。諦めないで!』
「仲良く…。」
私はもう誰にも頼らない。そのつもりだったけど。
一人ぼっちじゃないもの…!
『ほむらちゃん、愛してるよ。 まどか』
「私も愛してるわ。まどか…。」
読み終え、私は手紙を盾にしまう。
いつか、終わらせる。いや、次で終わらせる。
そのときにまた、これを次のまどかに見せてあげよう。
そういえば杏子が来てといっていたわね。
「あのファミレスにはお世話になりすぎね。」
私は杏子に会いに向かった。
「いらっしゃいませ。お一人様でよろしいでしょうか。」
「いえ、連れがいるので。」
「失礼いたしました。ごゆっくりどうぞ…。」
この店員は静かだ。バイトではなく、正社員なのだろう。
「杏子。」
「ほむらか…。遅かったじゃん。」
「ごめんなさい。気持ちの整理に時間がかかってしまって。でも、もう決めた。私はやり直すわ。」
「…ワルプルギスの夜は?」
「…この世界の人たちには悪いけど…。」
「そっか…。いいよ。あたしがなんとかする。」
「杏子…!」
正直、この時間軸で私が一番お世話になっているのは杏子だ。
「ただ、そのかわりにあたしの話を聞いてくれるかい?」
「話?そんなことでいいなら…。」
杏子から相談されるのって久しぶり…いや、初めてかもしれない。
「ほむらはこういったよな。お前には話を聞いてもらえないことの苦しみがわからないだろう、って。」
そんな言い方だったかしら…?
「ええ…。言ったわ。」
「あたしさ、わかるんだよ。あたし、話を聞いてほしくて契約したからさ。っていっても聞いてもらえなかったのは親父だけどね。」
杏子の契約理由は今まで分からなかったけど、まさかそんなことだとは…。
他人のために魔法なんか使うな、なんていってるのにも理由があるのかもしれないわね…。
「親父は神父だった。うちの教会には教徒の人たちが沢山来てた。でも、親父が教えにないことを話し出すと、教徒は来なくなった。」
「で、あたしは嫌になって、キュゥべえにこう願ったんだ。『親父の話をみんなが聞いてくれるように。』って。」
「そしたら、沢山の教徒が来てくれた。親父は喜んでた。話を聞いてもらえるって。」
「でも、ある日、親父にあたしの願いがバレちまったんだ。」
「親父はみんなが話を聞いてくれるのは自分のおかげじゃなくて、あたしのおかげだって知ってヤケになった。」
そんなことが…!
「その結果一家心中が起きて、あたしだけが生き残った。」
「だからあたしは、あんたが『どうしてみんな話を聞いてくれないの』っていってるのを聞いて、聞いてやらなきゃいけないって、そう思ったんだよ。」
「杏子…。私、あなたの事、誤解してたわ。」
「いいんだよ、気にすんなって。あたしは話を聞いてもらえて満足だからさ…。」
あなたも辛かったのね…。
どうして私の周りの人間はこんな辛い思いをした人間ばかりなのよ…!
「あんたはやり直してさ、みんなを救ってやってくれよ。あたしにはできないことがあんたにはできる。だからさ、ほむら。頼んだぜ。」
「わかったわ。あなたの気持ち、絶対に無駄にしない。」
私はファミレスを後にした。
今思えば、私はたくさんの人たちに助けられてきた。
杏子、まどかの家族、そして、まどか。
私はその人たちのために世界をやり直す。
私のためではない。まどかだけのためではない。
みんなのために…!
私は家に帰ってきた。家族に話さなければならないことがいくつもある。
「ただいま、お母さん、お父さん、たっくん。」
「おかえり、ほむらちゃん。お風呂入るかい?」
「大丈夫よ、お父さん。後で入らせてもらうわ。」
お父さんも気丈に振る舞っているけれど、本当の意味では笑えていない。それがとても悲しかった。
「…おかえり。」
「みんな、話があるの。私のこと…。それと、まどかのこと。」
「まどか…!ほむら!今すぐ話せ!おい!」
お母さんは取り乱している。それだけショックだったのだ。
「マ、ママ…!落ち着いて…!」
「うるさい!早く!早く話せよ!」
「うぁぁぁん!!」
「…っ!あなたは…!」
バシン。
私がお母さんの頬を叩いた音だ。
「あなたね、それでもまどかの母親なの!?あなたがそんなに取り乱して!あなたが家族のこと蔑ろにして!
まどかがそんなんでよろこぶと思ってるの!?」
「ほむら…。あたしは…。」
「確かにまどかが死んだことはショックだった…。
でも、それを乗り越えなきゃいけないのよ。」
「だから、話したいの。私のこと。」
「もうお母さんにはいったけれど、私は魔法少女と呼ばれる存在なの…。」
「魔法…少女…?なんだい、それは?」
「魔法少女とは、ある生き物と契約することでなれる存在。私達はその生き物に願いを一つ叶えてもらう代わりに、魔法少女として一生魔女と呼ばれる存在と戦うことになる…。」
「ほむらちゃん、それは本当かい?そんなものが存在するなんて…。」
「ええ、本当よ。そして、私の願い。それはまどかとの出会いをやり直すこと…。」
「まどかとの、出会い…?」
「ええ。私は何度も、何度も、この一ヶ月をやり直してるの。まどかが死ぬ…そんな未来を避けるために。」
「そんな…。」
「ここまではお母さんにはもう話してあるわ。
ここからが本題なのだけど…。」
「…やり直すんだろ、まどかのために。」
「ええ。私はやり直す。まどかだってそれを望んでる。
私だってそう望んでる。」
「ほむら…。でも、お前は残された奴の気持ちがわかるのか…?」
「…っ。」
「もうあたしは嫌なんだよ…!まどかがいなくなって、その上ほむらまでいなくなるなんてよぉ…!」
「お母さん…。」
「行かないでくれよぉ…!あたしのところにいてくれよぉ…!!一人にしないでくれよぉ…!!」
「お母さん、それは…!」
「詢子さん。ほむらちゃんを行かせてあげるべきだ。
ほむらちゃんだって辛いさ。でも、こうやっていってるんだ。それを送り出すのが親の役目じゃないかな?」
お父さんがお母さんのことを名前で呼んでいるのは初めて見た。それだけ、真剣なのだろう。
「知久…!でも、知久は寂しくないのか…?」
「僕だって寂しいさ。今すぐ、泣いてしまいたいくらいにはね。」
「なら…!」
「でも、親が寂しいから、なんて理由で子供を縛ったらいけない。ほむらちゃんだって覚悟の上だ。それを止めるのは、親としてはやってはいけない行為だ。」
「誓っただろう?僕たちは、子供の決定を否定しない、って。ふざけているのなら止めるけれど、ほむらちゃんは本気だ。それを止める資格は僕にも、詢子さんにもない。」
「知久ぁ…!」
「…それに僕たちにはタツヤだっている…。寂しさなんていつかなくなるさ…。」
「だから、ほむらちゃん。君が進みたい道に進むといい。後悔だってあるかもしれない。でも、ほむらちゃんはそれすら乗り越えることができる。そう信じているから。」
「お父さん…!」
「次も、僕たちと仲良くしてやってくれよ。」
「うん…!もちろん…!」
「ほむら…。情けないとこ見せちまったな…。でも。
行ってこい!まどかを救ってこい!」
「お母さん…!ありがとう…!」
「ところで、いつほむらは行くんだ?」
「明後日よ。その時が来たら私は魔法を使えるようになる。」
「それまでどうしてるつもりなんだい?」
「見滝原を満喫しようと思ってるわ。思い出巡り、ってとこかしら。」
「そっか。楽しんでこいよ。」
「ええ。ありがとう。」
私は部屋で支度をしていた。
「そういえば、次の時間軸もこんなイレギュラーだらけなのかしら…?」
『それについては僕が答えよう。』
私が疑問を口に出し、それに答えたのは…。
「インキュベーター…!!」
『そんなに警戒しないでくれ。僕は君に仮説を伝えにきたにすぎないよ。』
「…伝えたいことって、何かしら。」
『次の時間軸もこのようなイレギュラーが起こると推測される。』
「どうして?」
『おそらく、今回のイレギュラーは君が原因だ。
君が極めて精神が不安定な状態で時間遡行したことによって、時間遡行時に何らかのトラブルが発生した…。』
「よく聞くような話ね…。タイムマシンで漂流するっていう話…。」
『ああ。しかし、君はまだそのトラブルから抜け出したわけではない。だから、またトラブルでも起きない限りは元の状態に戻ることはないだろう。』
「そう。…ところで、どうしてあなたがそんなことを知っているのかしら?返答次第では…。」
「…魔法少女の監視も僕の仕事だ。」
「インキュベーター…。あなたってやつは…。」
『大丈夫だ。僕には感情はないから、お風呂を覗いたくらいじゃ興奮しな…キュプ!』
私はインキュベーターの口(?)に拳銃をも突きつけた。
「これ以上喋ると、もう喋れなくするわよ…!」
『やれやれ。僕はテレパシーで話しているから無駄なのに…。』
「聞くけど、まどかのお風呂は…?」
『ああ、君よりは胸があったね。それに、下の毛も…』
「インキュベーター!!」
『キュップイ!!』
その時、まどかと私の部屋には銃声と(私にしか聞こえない)インキュベーターの声が響いた。
このあと、家族に心配されたのは言うまでもない…。
そして、ワルプルギスの夜襲来当日。
「ほむら…。あたしたちの未来。お前に託したぞ。」
「ほむらはちゃん、僕たちは何もできない。だから、僕は祈るよ。ほむらちゃんがやり遂げることを…。」
「ほうあー!がんばえー!」
「ありがとう。私は幸せものね…。こんなにも信頼してくれる人がいるなんて…。」
「じゃあ、いってきます。」
「おう。いってらっしゃい。ほむら。」
私は家を後にした。
私は高層ビルの屋上から見滝原の街を見ていた。
ここからでも杏子がワルプルギスの夜と戦っているのが見える。
「杏子、ごめんなさいね。あなたにばかり負担をかけて…。」
でも。
「私は行くわ。あなたのその気持ちを無駄にしないように…!」
そう決意し、時間を巻き戻そうとした、その時。
『暁美ほむら。』
「インキュベーター…。なんのようかしら?」
『いや、挨拶と頼みごとをしようと思ってね。』
「ふん…。どういう風のふきまわしかしら?」
『いや、鹿目まどかを救ってやってくれ、それを頼みに来たんだ。』
「…。」
『こちらとしては鹿目まどかに死なれると困るからね。』
「…インキュベーターはインキュベーターか。」
『僕に感情はないからね。』
「じゃあ、もう行くわ。」
『ああ、頼んだよ。暁美ほむら…!』
私は盾を反転させ、時間を巻き戻した…。
必ずまどかを救う。まどかとの約束を果たしてみせる!
そう誓いながら…。
いかがでしたでしょうか。
いや、思ったより絶望期間が短いですね。もうちょい絶望しててもいいかな…?でも、希望あったほうがいいですよね? では。