私はとても幸せだ。なぜなら、まどかが恋人だし、マミさんやさやかとも友達だし。それに、杏子だって前の時間軸のように仲良くなれるに違いない。
みんなとどんなことしようかな。今までできなかったこと、たくさんしたいな。一緒にたくさんのことしたいな…!
でも。そのためにはワルプルギスの夜を倒さなければならない。全てはそれからだ。私は、もうやり直さない!
必ず、終わらせる!みんなと一緒に!
次の日。
「あっ!ほむらちゃーん!」
まどかがこっちに向かって手を振ってくる。
「まどか、おはよう。待っててくれてありがとう。」
「そんなことないよ?ほむらちゃんのためならいくらでも待てちゃうもん!」
「ふふっ、ありがとう。さ、行きましょうか。」
私はまどかと手をつなぐ。何気ないこんなことがとても嬉しい。
「うぇひひ!さやかちゃんに見せつけちゃお?」
「それはいいわね。私達の愛を見せつけてやりましょうか。」
「なら、早くいかなくちゃだね!」
幸せって素晴らしいことよ。世界中の全員にこれを分けてあげたいわ…。
私とまどかは恋人つなぎをしながら学校へと向かっていた。途中、何人もの生徒が私達を見てきた。
「ねぇ…まどか。」
「なぁに?」
「あの…視線が痛いのだけれど…。」
「ふーん…?私のことよりも周りの視線のことのほうが大切なんだ。」
まどかはそんな風に意地悪く言ってくる。
当然私は焦ってしまうわけで。
「あっ!そ、そういう訳ではないの!私はあなたの方が何倍も大切よ!」
「ほむらちゃん…!」
「まどか…!」
私達が周りのことなど忘れて、いちゃいちゃしていると…。
「おーい?なーにやってんのよ。」
声をかけてきた人物がいた。それは…。
「さっ、さやかちゃん!?」
「さやか!?」
「おおぅ…。そこまで驚くかよ…。」
よく見ると仁美が後ろにいるのが見えた。
「こ、こほん。おはよう、さやかちゃん、仁美ちゃん。」
「…おはよう、さやか、仁美。」
私達は何事もなかったかのように挨拶をする。
「…ま、いっか。おはよ、二人とも。」
「…。」
仁美はどうして何もいわないのだろうか。
「仁美ちゃん…?」
「…き…。」
「き?」
「それは、禁断の恋の形ですのよー!」
そういうと仁美は走っていってしまった。
「ええっ…?」
「禁断…!恋…!」
なんだか、まどかの様子がおかしい。
「ま、まどか?」
「禁断の恋の形…!とってもいい響きだよ!そう思うよね、ほむらちゃん!」
まどかの瞳には期待が詰まっていた。
「え、ええ、そうね。まどかのいう通りよ…?」
「そうだよね!良かった!」
「はぁ…。んじゃ、あたしは先行ってるよ。これ以上二人の邪魔したくないしね!またあとで〜!」
さやかまで行ってしまった。
「あー…。うぇひひ。」
「どうして笑っているの?」
「だって…。」
だって…?
「ほむらちゃんと二人きりだからだよ!」
なるほど、そういうことか。
「ふふっ。私もよ、まどか。私もまどかと二人きりになれてとても嬉しいわ。」
「ほむらちゃん…!」
「さぁ、行きましょう?遅刻してしまうわ。」
「うん!」
私とまどかは、急ぎつつ、ゆっくりと学校へと向かった。
放課後。
「まどか。とても大事な話があるの。」
「…!どうしたの、ほむらちゃん。」
まどかは私の放つ真剣なオーラ(たぶんでているはず。)を察知し、真剣な面持ちになった。
「あのね。これからはあまりまどかとの時間を作ることができなくなるの。」
「えっ…?どうして!?」
「…この街に、最凶の魔女、【ワルプルギスの夜】が来る。」
「…!」
「私達はその魔女を倒すために、準備をしなければならないわ。それにはとても時間がかかってしまう…。」
「…。」
まどかの顔には大丈夫なのか、と書いてあった。
「大丈夫よ。必ず倒してみせる。そのための準備なのだから。」
「ほむらちゃん…!」
「だから…。少しの間、私との時間は減ってしまう。」
「そんな…。」
まどかは悲しそうだ。私だって同じなんだから、そうに決まっているわ。
「でも!一日でも早く終わらせてみせるから!学校では、いつも以上に一緒にいるから!だから…!心配しないで!」
私はまどかを抱き寄せる。
「ありがとう…ほむらちゃん…!私、ほむらちゃんのこと、待つから…!」
「まどか…!私は幸せ者ね…。こんなにも恋人想いの人が恋人だなんて…!」
「うぇひひ…!照れちゃうよぉ…。」
「じゃあ、私はもう行かなきゃいけないから…。また、明日会いましょう。」
「うん…。頑張ってね、ほむらちゃん。」
「さやか、マミさん!」
私はさやかとマミさんと待ち合わせをしていた。
「ほむら、遅いよー!」
「あら、暁美さん。遅かったじゃない。」
「ごめんなさい…。じゃあ、行きましょうか。」
「ええ。確か、私と暁美さんは佐倉さんの勧誘で、美樹さんが魔女探し…だったわよね?」
「ええ。でも…よかったの?」
「何が?」
「さやか一人で魔女探しだなんて…。」
「…心配してくるのは嬉しいけど、もうちょっと信頼してくれてもいいんじゃん。」
「…!ごめんなさい…。でも、あなたの実力を疑っているわけではないの。もしも…あなたに何かあったら心配で心配で…!」
「ほむら…ごめん、あたし意地悪なこと言っちゃったね。」
「いいえ、私が誤解させるようなこと言ったから…。」
「ううん…あたしが…!」
「こほん。」
この永遠に終わらなさそうなやり取りはマミさんの咳払いによって終了した。
「いつまでそうやってつもりかしら。早く行きましょう。」
「ご、ごめんなさい。そうね、行きましょうか。」
改めて、マミさんは私なんかよりずっと大人なんだ、って、そう思わされる。
「じゃあ、あたしは魔女を探して見るよ。」
「気をつけてね。くれぐれも深追いだけはしないで頂戴?」
「わかってますよ、マミさん!ほむらにも心配はかけられないですし!」
「ふふっ、ありがとう。いってらっしゃい、さやか。」
さやかはビルの間へと消えていった。
「私達も風見野に行きましょうか。佐倉さんが見つかるといいのだけれど…。」
「…そうね。まずは見つけないと仕方がないものね。」
「さぁ…この風見野のどこにいるのかしら…?って、あれは…。」
「お願いだよ、おばちゃん!りんご、あと十円値引いてくれよ〜!」
「駄目よ!これ以上は値引かないよ!」
「あれ、絶対にに佐倉さんよね?」
「ええ…。あんなことしてたのね…。」
「はぁ…。すみません。あと十円は私が払います。」
マミさんは大胆なことをする人だ。
「なっ…!?マミ…!?」
「はい、ありがとね!杏子ちゃん、このオネーサンにしっかりお礼を言うのよ?」
「…おい、どういうつもりだ。」
「とても大切な話があるの。せっかくだから、私の家に来ない?」
あれ、私の出番ないわね。マミさん一人で十分なんじゃ…。
「何を企んでるのかは知らないけど、あえて罠に引っかかってやるよ。」
「ふふっ。」
二人の間に火花が見えた。(気がした。)過去に何があったのだろうか。
「お邪魔します。」
「…。」
「いらっしゃい。どこか適当にかけていて頂戴。紅茶を入れてくるわ。」
「なぁ、あんた誰だ?」
そういえば、私は杏子と面識がなかったのね。
「私は暁美ほむら。魔法少女よ。詳しい情報はまた後ですることになるわ。」
「はぁ…。いまいち信用できないんだよなぁ…。」
うっ。かなり心に刺さるフレーズだ。
「そ、そう。」
「紅茶、できたわよ。口に合うといいのだけど。」
「ありがとう。いただくわ。」
助かった。この空気を打開できる気がしなかったから。
「んで、話ってなんだい?早く済ませてほしいんだけど。」
「あらあら、佐倉さんはせっかちねぇ。どうせすることもないクセに。」
「なんだと…!」
「どうどう。」
「あたしは馬じゃねぇ!」
コントでも始めたのだろうか。なかなか話が進みそうにない。
「あー、こほん。話をしたいのだけど。」
「あっ、悪いな…。」
「じゃあ、マミお願い。」
「ええ。まず…今から二週間後にワルプルギスの夜が来るわ。」
「ワルプルギスの夜ぅ…!?マジなのか…?」
「ええ、大マジよ。嘘じゃない。」
「じゃあ、ワルプルギスの夜が来るって仮定して、どうやってそれを知ったんだよ?」
「そうね…。暁美さんの経験、かしら。」
「経験…?どういう意味だ…?」
真実を話すというのはいつだって辛いものだ。
「…私は未来から来たの。何度もこの一ヶ月をやり直してるのよ。」
「未来から…!?」
「ええ。あなたと会うのももう何回目か分からないくらいにはやり直しているわ。」
「…。未来からきた、か。あたしとはどんな関係だったんだ?」
「そうね…。いうなれば、かけがえのない仲間ね。あなたがいなければ私はここにはいなかったわ。」
「仲間…。」
「あなたはいつだって優しかった。こんな素性も知れない魔法少女を支えてくれた…。いくら感謝しても足りないくらいよ。」
「…なんか恥ずかしいな。」
「そんなあなたに折り入って頼みがあるの。」
「まぁ、何かいいたいのかは分かるけど一応聞いておくよ。」
「ワルプルギスの夜を一緒に倒してほしいの。」
「だろうな…。うーん…。」
杏子は悩んでいるようだった。
「返事はまた後でいいわ。もう一つ話したいことがあるの。マミさん、お願い。」
「ええ。このことは私が話すわ。辛いだろうし。」
ごめんなさい…。私が弱いばっかりに…。
「魔法少女と魔女…。あなたも私も魔女がいなければ生きて行けない…。」
「当たり前だ。」
「じゃあ、魔女はどこから生まれるのかしら?」
「…!」
杏子はなにかに気づいたようだが、そうであってほしくない…そんな顔だった。
「それはね…。魔法少女が絶望することで魔女が生まれる…。つまり、魔女は魔法少女、魔法少女は魔女ということなの。」
「そんな…!」
「辛いかもしれないけどこれが現実なのよ。じゃあ、次の質問をさせてもらってもいいかしら?」
「…ああ。大丈夫だ…。」
「私のソウルジェムは少し濁ってるわよね。じゃあ、このソウルジェムが濁りきったらどうなるのかしら…?」
「それは…魔法が使えなくなるとか…?」
そんな甘いものではない…。口にはとても出せない。
「不正解。正解は…魔女になる、よ。」
「…!?」
「そうね…いうなれば、この濁りは絶望…残りの輝きは希望、といったところね。私はさっき絶望することで魔女が生まれるといったのは、このことを指すの。」
「…。そうなのか…。」
「辛いと思うけど、もう一問。大丈夫かしら…?」
「大丈夫だ…。」
杏子は深呼吸をして答えた。
「どうしてキュゥべえは魔法少女なんて作り出しているのかしら?そもそもキュゥべえって何者?」
「…悪い、全然分かんねぇ…。」
「キュゥべえが魔法少女を作る目的…それは、宇宙の存続よ。」
「…?」
杏子はまったく理解できないという顔をしている。
「キュゥべえによるとこの宇宙はエネルギーが足りなくなり、いつか滅びるらしいの。」
「エネルギーを生み出すためにキュゥべえが目をつけたのは、私達、人間という存在の感情…。」
「人間の中でも、私達、思春期頃の少女の希望が絶望に変わる瞬間が最もエネルギーを回収できるらしいの。」
「そんな…!あたしたちはなんなんだよ…!?」
「じゃあ、そんなことをしているキュゥべえとはなんぞや?となるわよね。彼らは…エイリアンのようなものよ。」
「エイリアン…!?」
「そう。本来の名はインキュベーター…。姿もあんなに可愛らしい姿ではないのよ。」
「インキュベーター共には感情が存在しない。だから、私達人間を利用してるのよ。彼らには悪気の欠片もないのよ。」
「…マミ。あんた、辛くはないのか…?こんなこと知っててさ…。」
「辛いわよ。すっごく辛い。あなたが黙ってどっか行っちゃったときくらい辛いわよ…!」
「わ、悪かったって…。」
「でも、私は絶対にめげたりなんかしないわ。大切な仲間だって、友達だって、街だってあるもの。私はこんなところで立ち止まっているわけにはいかないのよ。」
彼女はこんなにも強い。とても頼りになる人だ。
「マミ…。」
「…マミさん、私は帰るわ。二人で話がしたいでしょうし、さやかのことも気になる。私の話はまた後日できるでしょうし…。」
「そう。じゃあ、美樹さんのこと、頼んだわよ。」
「さやか! 魔女はいた?」
「うーん…。いないかな。」
「そう…。」
いくらイレギュラーが起こっているとはいえ、そこまで魔女のパターンに変化はないのかもしれないわね…。
「ねぇ、ほむら。今、幸せ?」
「いきなりどうしたの?」
「いいから。答えてよ。」
「…幸せよ。すごく幸せ。まどかが恋人で、さやか、マミが友達で…。」
「そっか!ならいいんだ…。」
「…?」
さやかの質問の意図がよくわからないが、これでよかったらしい。
「んじゃ、帰りますか。」
「あの…提案があるのだけど。」
「何?」
「私の家で一週間泊まっていかない?」
「…は?」
「いえ、準備をするには誰かの家にみんなで集まってやったほういいと思うの。」
「それに、私の家にはワルプルギスの夜の資料だってある。」
「…あたしは別にいいけど、親がなぁ…。それに学校だってあるし…。」
「別に無理に来る必要はないの。でも、一日、一秒が惜しいから、すぐに情報共有できるからそっちのほうがいいと思っただけだから。」
「ま、親にかけあってみるよ。」
「頼んだわよ。私はマミさんにも伝えてくるから。」
「うん。いってらっしゃい。」
「マミさん、話があるのだけど。開けてもらえるかしら?」
私はマミさんの家のドアの前に立っていた。
「いらっしゃい、暁美さん。今日二回目だけどね。」
「お邪魔します。」
「話って何かしら?」
「これから一週間、私の家で泊まってほしいのだけれど。」
「…なるほど…。」
まさか、これだけで意味がわかったのだろうか。
「ワルプルギスの夜討伐準備をするにはお互いの情報の共有が大切だものね…。」
あの一言だけで理解できるなんて、ずいぶん羨ましい構造をした頭を持っているらしい。
「マミさんの考える通りよ。私もそのほうがいいかと思ってから、提案したの。」
「うちじゃだめなのかしら?」
「別にかまわないけれど、ワルプルギスの夜の資料が家にあるから、そっちがいいと思っただけよ。」
「そう。なら、私は行かせてもらうわね。美樹さんは?」
「たぶん来ると思うわ。そういえば、杏子はどうだった?」
「まぁ…。とりあえずは協力してくれるそうよ。ただ、彼女は彼女でしたいことがあるから少しの間は風見野にいるそうよ。」
「そう…。よかった…。」
「じゃあ、また後でお邪魔するわね?」
「ええ。私は何時でも構わないわ。」
私は自分の家へと帰ることにした。
ピンポーン。
「ほむらー!来たぞー!」
「こらっ…!もう夜なのよ。少しは考えなさい、美樹さん。」
「はーい…。ごめんなさい、マミさん。」
「家の前でコントをするのはやめて頂戴。さ、入って。」
「お邪魔しまーす。って何もないなぁ…。」
「悪かったわね。生活に必要なものと資料と本しか置いていないのよ。」
「ふーん。ま、この部屋もあたしとマミさんが住むから少しは鮮やかになるでしょ!」
「…。」
「…。さ、荷物を置いてしまいましょう。」
「スルーだと…!?」
次の日。
「ふわぁ…。ねむーい…。」
まったく…。これから一週間こんなで大丈夫なのだろうか。
「ぼやかないの、美樹さん。…ふわぁ…。」
「はぁ…。揃いも揃って…。少しは慣れなさい。」
「だって…三時まで起きてることなんて滅多にないもん…。」
「さやかは仕方がないけど、マミさんは慣れているでしょうに。」
「私、パトロール終わったらすぐ寝るから、一時には寝ちゃうのよ…。」
「そう…。なら仕方がないわね。」
私達はそんな他愛のない話をしながらまどかと仁美との待ち合わせ場所に向かっていた。
「あっ!ほむらちゃーん!」
「まどか!」
私はまどかを見つけると、一目散に駆け寄った。
「ほむらちゃん…!」
「まどか…!」
私とまどかは手を握って見つめ合っていた。
「おぅ…。朝から見せつけてくるねぇ…。」
「それに、鹿目さんは暁美さんの名前しか呼んでなかったわよ…。」
「おはようございます、美樹さん、巴先輩。」
「おはよー、仁美。」
「仁美さん、おはよう。そういえば、生徒会のあの企画、どうなった?」
「ああ、あれですの?今、先生にかけあっているところですわ。なので今日中にはどうにかなると思いますわ。」
「…あれ?あたし、ぼっち?え?」
私はほむらちゃんに放課後、呼び出されていました。
「まどか、渡したいものがあるの。受け取ってくれるかしら…?」
「え、あ、うん。なにかな!楽しみ!」
ほむらちゃんが差し出してきたのは、手紙でした。
「これからはあまりあなたとの時間がとれなくなってしまうから、手紙を毎日書こうと思って…。」
「あの…迷惑じゃなかったら、返事を書いてほしいな、なんて…。」
ほむらちゃんはモジモジしながら私に言ってきました。
それがとっても可愛くて。
「もちろんだよ…!ほむらちゃんからの手紙、すっごく嬉しいよ…!」
ほむらちゃんを抱きしめました。
「ありがとう、まどか…。」
それから、私達は一週間ひたすらに魔女を狩り、できることを一つずつ片付けていく。
私は武器の調達。まどかへの手紙、毎日の日記。それをしているうちに私の睡眠時間は削られていく。しかし、残りはワルプルギスの夜討伐ための作戦会議をする時間に当てていた。
そして、杏子も参加し、いよいよ本格的に活動をする…。そんなときのことだった。
「さぁ、行きましょうか。さやか、マミ。」
「うん!とっとやっつけてやるぞー!」
「佐倉さんがいないのが心配だけど…大丈夫よね。」
結界内に入ると、直ぐに魔女の部屋だった。なかなかそんなことはないので少し動揺してしまう。
「これは…。」
「触手、ね…!厄介だわ…!」
「私とマミがサポートする。さやかは切り込んで!』
「りょーかい!さやかちゃん、頑張っちゃいますよー!」
「はぁ…はぁ…!こいつら…!いくら倒しても!」
私達は苦戦していた。触手単体の能力は低い。しかし、その再生能力がいかんせん高く、なかなか本体に攻撃をすることができない。人が足りない。
「くっ…!もうソウルジェムに負担はかけらないわよ…!」
マミがいう。どうしたらいいのか。
「さやか、マミ。私が時間停止を上手く使って切り込む。二人にはサポートを頼めるかしら?」
「その手があったか!オッケー!マミさん、やりましょう!」
「ええ!暁美さん、頼んだわよ!」
時間停止。触手をかわしつつ、本体へと向かう。しかし、継続して時間停止をしていると体にかなりの負担がかかるので、少しずつ間隔を開けて使う。
しかし、これが大きな弱点であることを私はしっかりと理解していなかった。
まずい…!足が…! 私は時間停止を解除するタイミングで、足を挫いてしまった。そして、触手は私が時間停止をするより早く、私を絡め取ってきた。
「くっ…!」
このままでは時間停止が使えない。
「ほむら!今行く!うわっ…!」
「暁美さん…!美樹さん…!くっ…!」
二人は自分のことことで手いっぱいだ。自分でなんとかするしかない…!
しかし、触手はそんな私の考えを遮るように、絡める力を強くしてきた。
「くうぅ…!」
お腹が苦しい。どんどん圧迫される感じがする。触手の力はどんどん強くなる。
パキッ。そんな音がした気がする。
「がはっ…!」
私は吐血する。きっと、さっきのは肋骨が折れた音だろう。
触手は力を弱めた。このすきに、そう思った瞬間だった。
「がっ…!?」
触手が私のお腹を貫いた。穴があき、血が流れる。
そして、激しい痛みを感じる。
「うぁぁ!!ぐぅぅ!!ああぁぁ…!!」
言葉にすることのできない痛みが襲う。私はさやかやマミさんのような高度な治療魔法は使うことができない。
「ほむらっ!!うぉおお!!」
「美樹さん!?危険よ、下がりなさい!!」
さやかが敵の攻撃を受けながらもこちらに来るのがわかる。マミさんは、その敵を上手く倒そうとはしているが、さばききれない。
「あああぁ!!がぁぁ!!」
触手はもう一箇所刺してきた。同時に伝わる痛みに意識が無くなりそうになる。
さやかが触手を一刀両断する。
そして、体内から触手が消えた。
「ほむらっ!大丈夫!?今、治してあげるから…!!」
「さ…やか…私の…こ…と…より…魔女を…早く…!」
私は途切れそうになる声で言う。
「ま…どか…の…ために…も…!早…く…!!」
「そんなことできるわけがない!!ほむらを見捨てられない!!」
『暁美さん、美樹さん、ここは逃げるわよ!この数ではあまりにも不利よ!私が援護する、美樹さんは、暁美さんを担いで!早く!』
マミさんのテレパシーが飛んでくる。
「…!ほむら、少しの間我慢してね…!結界から出たらすぐ、治すから…!!」
そこで私の意識は薄れ、次に目が覚めたのは翌日のことだった。
二人曰く、とても酷い状態だったそうだ。触手は私の胃と肺を貫いていたそうで、なかなか魔法でも治すのが難しい状態だったようだ。
なぜ、痛覚遮断を使わなかったかというのは、ただ単に痛みのあまりそのことを忘れていたというのもあるが、まどかとの約束があったから、使わなかったのだ。
ある時間軸で、私とまどかはこう約束した。
『痛覚遮断はあんまり使わないようにしよう。できるだけ、痛みを感じるようにしよう。』
と。別に私やまどかはマゾというわけではなく、魔法少女の真実を知り、自らがもう人間ではないことを知ってしまったからだと思う。つまり、痛みを感じることで自分は人間なのだ、と言い聞かせていたのだ。
今考えればかなり狂ってはいるが、私はできるだけ守り続けたいと思う。
そして、私はできる準備を全て終わらせて…
「ふぅ…。これでいいの、マミさん?」
「ええ。とても上手よ。素人とは思えないわ。」
ケーキを作っていた。
「あとはクリームをスポンジに塗って、いちごと鹿目さんの名前をチョコ板に書いてつけて終わりね。」
「かなり骨の折れる作業だったわね。ごめんなさい、マミさん。」
「いえ、いいのよ。それにとっても意外な一面を見れたから。」
マミさんは意地悪く笑っている。
「むぅ…。意地悪…。」
「…! なにかしら、子のゾクゾクってくるなにかは…!私、目覚めそうよ…!」
「マミさん…?」
「さて!完成ね!」
「…。うーん…。」
私はいまいち納得がいなかった。
「どうしたの?どこか不満でも…?」
「ええ…。少し形が崩れてしまったなって…。」
「もう…!そのことは気にしないっていったじゃないの!あなたがそんな気にしぃだとはおもわなかったわ…。」
「だって…。まどかに食べてもらうんですもの、妥協はできないわ。」
「あのね、暁美さん。鹿目さんはこのケーキのことを世界で一番美味しいって言ってくれるわ。」
「え…?」
「だって、あなたの愛情がこもっているから。あなたの気持ちがこもっているから、必ず美味しいって言ってくれるわ。」
「…!ありがとう、マミさん…。」
やっぱり、マミさんは大人だ。クールぶってる私とは違って、本当に大人な人なんだ…。
次の日の放課後。
私はケーキを持ってまどかを探していた。
「まどか…?どこ…?」
「ほむら、まどかなら屋上にいたよ。早く行ってきなよ!」
ありがとう、さやか。私はそう心でつぶやいて走って屋上に向かった。
「はぁ…はぁ…!まどか…!」
私は無我夢中で階段を上る。息が上がることなど気にせず、階段を上る。
「まどか!」
私は屋上につき、まどかを探す。
そこで、私が見たのは。
「あっ…!ほむらさん…!」
「ほむらちゃん…!」
まどかと仁美が抱き合っているところだった。
「え…?何をしているの…?」
ケーキを持つ手が震える。落としそうになる。
頭は真っ白になる。何も考えることができない。
「わ、私、仁美ちゃんと付き合うことにしたの!」
「まどかさん…!?あなた、なにを…!?」
私は手に持つケーキを地面に落としてしまう。
しかし、そんなことを気にしている余裕など、私にはありもしなかった。
まどかへの怒りが浮かぶ。あのときの言葉はうそだったの、と。しかし、その思考を追いやる。
そして、まどかが私より仁美のほうがいい理由などいくらでも思いついてしまう自分が憎かった。
「…そうよね。」
「え?」
「こんな、恋人との時間一つも作ってあげられない人なんて嫌よね…。仁美の方がよっぽど素敵だし、ずっとそばにいてくれるものね。」
「え、あ、ほむらちゃん…」
「ごめんなさい!邪魔しちゃたわね…!もう行くわ…!」
「ほむらちゃん…!待って…!」
「さようなら、まどか…!」
私は居られなくなって、辛くて、逃げ出してしまった。
「さーて、魔女探しをしないとなぁ…。」
あたしは魔女探しをするために帰ろうとしていた。
「ん…?あれ、ほむらじゃ…?」
しかしおかしい。ほむらには間違いはないのだが、まどかがいない。あのピンク頭がいない。どういうことだろう?
「おーい!ほむらー!」
あたしはほむらのところに駆けていった。
「あ…!さやか…。どうしたの?」
ほむらは目をこすってあたしの方を見た。その目は真っ赤だった。
「…!まどかはどうしたの?一緒じゃないの?ケーキもないし…。」
「…。」
ほむらの顔は一瞬で暗くなってしまった。
「ほむら…?」
「私、まどかに振られてしまったわ…!」
ほむらは精一杯の作り笑顔でそう言った。
「は…!?何を言って…!?」
「屋上にいったら、まどかが仁美と抱き合っていて…。何してるのかって聞いたら、まどかが仁美と付き合ってるって…。」
「…!?」
仁美と…!?
「ふふっ…。私すごく無様よね。」
「でも、いいの。私はまどかが幸せならそれでいいのよ。私と居るより仁美いるほうが幸せならそれでいいのよ…。」
いいわけがない…!そんなことがあるわけがない…!!
「それに、私は最低なのよ。だって、まどかに怒りがわいてしまったの。あのときの言葉は嘘なの?って。」
「人の幸せを妬むなんて最低よね…。私は最低だからまどかにふられてしまったのよ…。」
そんなことない!そういってやれない自分がすごく憎い。なぜか、声が出ないのだ。
「でも…教えて、さやか…!」
「え…?」
「どうして、まどかと仁美が一緒に居るところを想像すると、こんなにも心が苦しいの…?」
「まどかが幸せなのに、どうしてこんなに苦しいの…?」
あたしはほむらを抱き寄せた。
「それはね…。ほむらがまどかのことを本気で愛してるからだよ…。たった一週間会えないだけで信頼できなくなるようなちゃちな愛じゃなくて、本気で愛してるからだよ…!」
「さやか…!まどかのことを悪く言わないで…!」
「だって…!!ほむらがこんなにも愛してくれてるのに…!!あいつは…!!」
「私がいけなかったのよ…!ワルプルギスの夜のためにまどかとの時間を割いてあげられないから…!私が出来損ないだからなのよ…!だからまどかのことを悪く言うのはやめて…!」
「ほむら…!いいんだよ…!泣いていいんだよ…!辛いときはないたっていいんだ…!怒りがわいてきたなら抑える必要なんてないんだよ…!もっと…自分のことを大切にしてよ…!」
「さやか…!うぇぇん…!」
「どうして!どうしてなの…!?」
「私はこんなにもまどかを愛しているのに…!まどかだって愛してるって言ってくれたのに…!」
「うん…うん…。」
「ずっと一緒だって言ってくれたのにぃ…!どうして嘘をつくのよぉ…!」
「付き合う気がないなら最初から付き合わないでよぉ…!私を期待させないでよぉ…!」
「ほむら…!辛い…辛いよね…!」
まどか…!あいつは…!
「ありがとう、さやか。すっきりしたわ…。」
そういうほむらの顔はすっきりとはかけ離れた顔をしていた。
「ううん。あたしにできるのはこれくらいだからさ…。」
「さやか、約束してほしいことがあるの。」
「約束?別にいいけど…。」
「絶対に、まどかのことを悪く言わないで。仁美との関係を崩そうとはしないで。もし、それを崩そうとするなら、私はあなたを殺してしまうかもしれないわ。」
「…!」
「だから、お願い。まどかの幸せを…。邪魔しないであげて…。」
「ほむら…。わかった。」
「…ありがとう。私は疲れたから帰らせてもらうわ…。」
私はどこで間違ったのだろうか。何を間違ったのだろうか。まどかは、私のどこが気に入らなくて、仁美のどこに魅力を感じたのだろうか。
別に仁美のことを妬んでいるわけではない。まどかのことが嫌いなわけではない。
しかし、気になってしまう。口ではまどかの幸せを、とかいっているけれど、ダメージは大きい。嘘ではないのだけど、いざ直面すると辛いものだ…。
私は、どうしたらいいの…?
いかがでしたでしょうか。後書き、二度目なので書くことがないです。はい。
では。