※この作品はR-18です。

信じ続ける、明日はきっと晴れだって   作:柳しをん

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どうぞ、お楽しみください。


あなたの気持ち、私が受け取ったよ

次の日 朝。

「ほむらちゃん、ほむらちゃん!起きてー!朝だよー!」

「んー…あと…五分だけぇ…。」

「むぅ…こうなったら…。」

「おっきろー!」

「ひゃあぁぁっ!?」

 

「ふあぁ…ごめんなさい、まどか。起きるのが遅れてしまって…。」

私が起きたのは8時で、まどかが起きたのは6時30分らしい。どうしてこんなに遅くまで寝ていたのかは皆目見当もつかない。あのまどかに起こされるというのも中々心にくるものがあったが、こうやってまどかに起こされるのも悪くない。そう思っている自分がいることもまた事実だった。

「ううん。ほむらちゃんだってそういう日はあるよ!それに、今日は休みなんだから気にしないで?」

「ええ…。そういえば、朝ごはんはどうしたのかしら?」

料理をしていたのか、まどかはエプロンをしている。しかし、料理の良い香りはせず、なにか香ばしい香りが漂っていた。

「うー…えっと…そのー…。」

…あぁ、そういうことか。

「…一緒に作りましょ?そうすればうまくできるわ。」

「あ…うんっ!…でも、ごめんね?一食分の材料、無駄にしちゃって…。」

「まどかが気にすることではないわ。それに、まどかが私のために朝ごはんを作っていたことが嬉しいから。それがたとえ、失敗したものだったとしても。」

「うぅ…。どうしてほむらちゃんって、そんなに恥ずかしいセリフを堂々といえるのかなぁ…。ドキドキしちゃうよぉ…。」

照れているまどかもかわいいわ。トマトみたいに顔を真っ赤にしてしまって…。

…もっと照れさせたいという私は、おかしいのかしら?

「ふふっ…まどか、かわいいわ。顔、真っ赤にして…。」

「ふえっ!?ほむらちゃ…!」

「あぁ…食べちゃいたいわ…朝ごはんの代わりに…。」

「も、もぅ…朝からえっちなんだから…!で、でも、ほむらちゃんが望むなら、いつでも食べていいから、ね…?」

「まどか…!?そ、それは、学校でもしていいってこと…!?そ、そんな破廉恥な…!」

「え、ええっ!?ど、どうして学校なの!?それに、破廉恥って…ほむらちゃんがそれ言うのかなぁ…?」

私の中では、まどか>私なのだけど。

だって、昨日なんて私の手でオナニーしてたじゃない。

…なんて言ったら殺されるわね。まぁ、ここはそれっぽい反応をしておきましょう。

「えと…え?私、破廉恥…?まどかより…?」

「え?」

「え?」

「「え?」」

 

「それで、まどかはなにを作ろうとしたのかしら?」

「えっとね…ベーコンエッグを作ろうとしたんだけど、焼きすぎちゃって…仕方がないからトーストにしようと思ったんだけど、ほむらちゃんの家にオーブントースターがないんだもん…。ほむらちゃんの家って、いくらなんでも前時代すぎるんじゃないかなって。」

どうして焼きすぎたらトーストなのかはよくわからないけど、なんだかバカにされた挙げ句、そのことについてさらに文句を言われるって…。しかも、それが言い訳なの…?

「じゃあ、その間に焦がしてしまって、あんなことに…。」

私が視線を向けた先には、がん細胞の元があった。…ベーコンエッグ程度でこれって、どうなのかしら。

たしか、まどかのお母様も料理はからっきしだったわね…。これが親子なのね。

「うん…焦ってたらね…。でも!ほむらちゃんと一緒なら、できるような気がするよ!」

あぁ…まどかのさっきのセリフ、そのままそっくり返すわ…。私をドキドキで殺す気…?

「そ、そう。じゃあ…なにか、ないかしらね…。」

もう卵はこれ以上消費すると、今週は危うくなってしまうし…まさか、まどかがベーコンをまるまる1パック使うとは思わなかったし…。ご飯、炊き忘れるし…。

パンしかないか。でも、何にしようかしら?私は何もつけないでも問題はないのだけど…。まどかは嫌がるだろう。なにか、なにかないか…?

そのとき、私の目にあるものがとまった。

「ねぇ、まどか。甘いパンでも構わないかしら?」

「え、うん。私は別に、ほむらちゃんの作ってくれる料理ならなんでもいいかなって。」

まどかの言葉が私にズガン、と響く。

「あ、ありがとう。じゃあ、そこにあるマシュマロをとってくれる?」

「うん。…マシュマロ?うーん?」

まどかは首をひねっていた。

私は、冷蔵庫の奥から、食べかけの板チョコと、クリームチーズを取り出した。

「…?」

まどかはまだ、どういうことか理解していないらしい。

でもきっと、これはまどか好みの味になるだろう。

まず、パンの耳から1〜2cmくらいのところに沿って、包丁で切れ込みを入れていく。そして、その部分を押してへこませる。そこに、マシュマロ詰め込み、その間にチョコを入れる。さらに、上にクリームチーズを乗せる。

あとは焼いてしまうだけなのだが…。

「さて…私の記憶が正しければ…。」

私は変身した。

「ほ、ほむらちゃん?どうして変身なんか…?」

「ガスバーナーを探しているだけよ。…確か、このあたりに…有ったわ!」

私が取り出したのは、いかにもガスバーナーというガスバーナーだった。少し古びていて、なんだか不思議な感じがする。その部分だけまるでタイムスリップしたように。

「ガスバーナー…だよね?まさか、これで?」

「ええ…有効期限は問題ないのだけど、これ、いつ買ったものなのか、よく覚えていないわ。もしかしたら、もう駄目かもしれないわね。まぁ、問題ないと思うわ…。大丈夫よ。」

「…何でだろ、私、ほむらちゃんのこと信じたいのに、嘘つきだなんて思いたくないのに…全然大丈夫っていう気持ちになれない。ほむらちゃんの言ってることが本当だって思えない…。」

「ねぇ!?そのセリフ、今じゃないわよね!?あと、後ずさらないで!?」

「うぇひひ…巻き込まれたら、それはとっても悲しいなって。」

「さっきからなんなのよもう…。大丈夫よ。問題ないって言ってるじゃない。」

私は、妙に既視感のあるまどかの言い回しを無視して、バーナーがつくかを点検する。…問題ないわね。

私はマシュマロやチョコ、チーズがまんべんなく溶けるように、じっくりと焼いていく。

そして、いい感じに匂いが漂ってきて、焼きめがついたら。

「ふぅ…まどかのせいで嫌に時間がかかってしまったけど…スモアトースト、完成よ。どうぞ召し上がれ、まどか。」

「わぁ…!すっごく美味しそうだね!なんというか、意外…。」

「えっ?意外って、どういうことかしら?」

「えっと、ほむらちゃんって、こういう甘いものって好きじゃないよね、って思ってたから…。」

「まぁ、私だって女子中学生で…たまにはこんなジャンクなものだって食べたくなるのよ…。」

「うぇひひ!そうなんだ!ふーん…。」

まどかは私のことニコニコと見ている。

「なっ、なによ。私がこういうものを食べたら、駄目…なの…?」

「ううん、そんなことないよ。ただ、ほむらちゃんも私と一緒でこういう甘いものも好きなんだって、おんなじだなって思っただけだよ。」

まどかと同じ…まどかにはわかるどうかはわからないけど、恋人と同じってすごく嬉しいのよ?

…なんて、言える性格になれたらな。私の意気地なし。

こう、変化球しか出せない自分が情けない。

「…そう。さぁ、食べてしまいましょう。冷めてしまうと固まってしまうわ。」

「うんっ!はむっ…ん〜!おいしい〜!あま〜い!」

「ふふっ、口にあったみたいでよかったわ。」

「はぁ…幸せぇ…口の中がすっごく幸せだよぉ…。」

そんな大げさな…と言おうか迷ったが、本当に幸せそうなのでやめた。

その代わり、意地悪な質問をすることにした。

「ねぇ、そのトーストの味と、私のキスの味。どっちのほうが幸せ?」

「ふえっ!?え…えっと…それは…。」

「…。」

「そんなの…ほむらちゃんの…キスに決まってるよ…。」

「ありがとう、まどか。私もまどかのキスの味が一番好きよ。これまでも、これからもね。」

こうやって変化球を投げて、まどかが直球で投げ返してくれないと、私は直球を出すことができない。

「…もう。バカっ…。」

まどかはそっぽを向いて、熱々のトーストを齧っている。きっと、顔が赤いのはトーストのせいではないだろう。

 

「ごちそうさまでした!」

「お粗末様でした。…さて、片付けてしまわないと…。」

その時。

携帯の着信音が聞こえる。

「ん…?まどか、寝室の携帯を持って来てもらえるかしら?」

「わかった。すぐに持ってくるよ。」

誰からだろうか。私の交友関係はそんなに広くはない。

さやか、マミさん…杏子は携帯を持っていないから違う…。

「はい、ほむらちゃん。巴先輩からみたいだよ。」

渡されたそれは、未だに振動を続け、けたたましい音を響かせる。初期設定のままにしてあった着信音はいかにも、という感じで…うるさい。…着信音、変えよう。

「はい…マミさん?どうしたの…」

『あ、暁美さん!大変なの!美樹さんが…美樹さんが!』

「さやかが…?どうしたの?」

『わ、わからないの…でも、ソウルジェムがすごく黒ずんで…!このままじゃ…!』

「…!すぐに行くわ!場所は!?」

『私の家よ!』

「わかったわ!」

私はそこで通話をストップする。

「ねぇ、ほむらちゃん、さやかちゃんがどうしたの?」

「わからない…でも、このままじゃ、魔女になってしまうそうよ…。」

「えっ!?さやかちゃんが…!?」

「ええ。だから、私はマミさんの家に行く。まどかは…」

「私も行く。私だって、さやかちゃんのこと心配だもん!」

「分かったわ。でも、急いで行かないといけないから…よいしょっと…。」

「わわっ!?お、お姫様抱っこは流石に恥ずかしいよぉ!」

「我慢して!さぁ、飛ばすわよ!」

どうか…どうか間に合って…!

さやか、あなたが死ぬことは私の人生のオプションの中にはないわ…!だから…!

死なないで、さやか!

 

ピンポーン。

マミの家のインターホンは、高い音を響かせる。

「はーい!今開けるわ、暁美さん!」

声の主はマミさんのようだ。

「さぁ、早く上がって!…って、鹿目さんも?どうして…?まぁいいわ、早く!」

 

「さやか!」

「さやかちゃん!」

私とまどかが部屋にかけこみ、さやかの様子を見る。

「あ…まどか…ほむら…!ごめんなさい…!」

部屋に入るや否や、さやかは謝ってきた。

「さ、さやかちゃん?どうしたの?」

「ひぃっ…!も、もう…しません!だから、許して…!」

「さやか…?いったいどうしたのよ?」

「あぁ…!わ、悪気はなかったから…!ごめん…なさい…!」

「さやか、本当にどうしたの?」

私がさやかに近づくと…。

「いやぁぁ!やめ…やめて…!あぁぁ…!」

さやかは倒れ込んでしまった。

「さやかちゃん!?どうしたの、ねぇ!?」

まどかが身体を揺さぶる。しかし、反応はない。

「…息はしているわ。ただ寝ているだけだと思うわ。」

「よかったぁ…もしさやかちゃんになにかあったら…。」

「…さて、マミさん、どういうことか説明してくれる?」

「ごめんなさい、私にもよくわからないの…。私の言葉には反応しなくて…。それに、ビクビクしていたから暁美さんを呼んだのだけど…。」

「…そう。」

どうしてこうなったのかは皆目見当もつかないが、黒幕くらいは察すことができた。

「でで来なさい、インキュベーター!」

『やれやれ…。君は勘がいいんだね。』

「残念ね、インキュベーター。私のこれは勘ではなく、統計よ。さぁ、さやかに何をしたのか、答えてもらうわよ。」

『僕はさやかの希望に従っただけさ。』

「さやかの…?」

『あぁ、そうだよ。さやかはほむらの過去をもっと詳しく知りたがっていたからね。体験させてあげただけに過ぎないよ。むしろ感謝してほしいくらいだよ。』

「まどかに使ったアレをさやかにも使ったの!?…盲点だった…しっかり監視しておくべきだった…!」

『そうだね。君はまどかばかりに目を向け、僕やさやかたちにあまりにも目を向けなかった。』

「…黙りなさい!」

私は苛立ちを隠せなかった。インキュベーターが私に言ったことはすべて真実。しかし、それをインキュベーターに言われたことがとても癪だった。

『やれやれ、君たちはどうしてありのままの真実を伝えれば、そうやって憎悪を抱くんだい?』

「黙りなさいと言っているでしょう!?」

部屋に不穏な空気が流れる。そんな空気を破ったのは一人の少女の声だった。

「…ねぇ、キュゥべえ。それって、私にも使えるの?」

「まどか!?あなた、なにを…!?」

この子はどうしてしまったのだろうか。あんなことがあったというのに、また体験したいだなんて。

「私も。キュゥべえ、私もよ。暁美さんの過去を体験したい。」

「マミさん…!?あなた…!」

いよいよ気が狂ってしまったのか。さやかがあんなになっていると分かっていながら、自ら危険に飛び込んでいくの…?

『もちろんだよ。そうだ、前回からの変更点がかなりあるから話しておくよ。まず、君たちには一ヶ月、暁美ほむらとして行動してもらうことになる。つまるところ、本当の意味で暁美ほむらの過去を体験することになる。ただし、現実とその世界は完全に切り離されているから、こちらの世界では一分ほどしか経っていないから安心してほしい。』

『そして、君たち人間の感覚、感情、さらに深い心理…すべてを再現している。だから、過去の暁美ほむらが痛いと感じれば、君たちも痛いと感じる。憎らしいと感じれば憎らしくなる。それでも構わないかい?』

「うん。私はやるよ。だって、それがさやかちゃんをもとに戻す方法につながるかもしれないし。それに、もっとほむらちゃんのことを知れると思うから。」

「ええ。私も、暁美さんについて知ることができれば、それだけ彼女の苦しみを、辛さを、喜びを分かち合える。だから、私もやるわ。」

「二人とも…いいの…いいのよ、苦しむのは私一人で十分よ…だから、二人が苦しむ必要なんて…。」

「ううん。そんなのダメ。一人で背負い込んじゃダメだよ。」

「だって、私はほむらちゃんの恋人で、一番大切な人だから!」

「…!」

「そうよ、暁美さん。私達は仲間じゃない。私はあなた一人が苦しんでいる姿なんて見たくない。みんなで苦しみだって分かち合えば、きっと辛くない。」

「だから、私達を信じて。」

「まどか…!マミさん…!」

私は素晴らしい人たちと巡り会えた。そう改めて感じた。だからこそ、私はここまで頑張ってこれたのだ。

私が護りたい、取り戻したいと思い、頑張ってこれたのは、この二人がいたから、というのも大きい。

初めてこの二人に助けてもらったとき、世界が変わった。まるで、モノクロな世界がカラフルになったように。

私はこの二人がいたからこそ、ここにいる。

そして、また私のことを気遣い、助けようとしてくれている。もちろんさやかのため、というのもあるが、そのことが何よりも嬉しかった。

「ありがとう…!私…本当に、幸せものね…!」

「うぇひひ。大げさだよ。…それじゃあ、キュゥべえ。

お願い。」

『わかった。それじゃあ、君たちの意識が途切れた後に、意識が暁美ほむらのものに切り替わる。』

『その後、君たちには暁美ほむらとして行動してもらう。ただし、あくまで体験だから、君たちの好きなようには行動できない。簡単にいってしまえば、君たちは何者かに操られているように感じると思う。』

『あとは…暁美ほむらの過去の体験が嫌になっても、途中で中断することはできない。一ヶ月はそのままだ。』

『それでも構わないかい?』

「うん。ほむらちゃんの過去がどんなに辛くたって、私は途中で投げ出すことなんてしないよ。 」

「ええ。私も鹿目さんと同じよ。」

『ならいいんだ。じゃあ、機械を作動させるよ。少し待っていてくれ…。』

「まどか、マミさん。これだけは…守ってほしいの。…二人とも、絶対に絶望なんてしないで。さやかがああなってしまって、二人まで絶望したら…私…!」

「もちろんだよ。ほむらちゃんがいままで頑張ってきたのに、私だけ絶望なんてしてられないもん!」

「そうよ。それに、私は絶望なんて感情、過去においてきたわ。あの人と…約束したから。」

あの人とは、おそらくマミさんの過去の先輩魔法少女だろう。

「ありがとう…!私はなにもできないけど…頑張って…!」

「うんっ!…それじゃあキュゥべえ、お願い。」

『わかった。それじゃあ、いくよ。』

「うん…あうっ…!」

「…っ!」

二人はぐったりとして倒れ込んでしまう。私は二人を抱きかかえた。

「まどか、マミさん!…インキュベーター、本当に大丈夫なの…?」

『あぁ。そのあたりは安心してほしい。僕たちの星の最新技術を使っているからね。』

「…ずいぶんと研究熱心なのね、あなた達は。」

『もちろん。鹿目まどかと契約するためだったらどんな回り道でもするよ。』

「変わらないわね、あなた達は。」

「褒め言葉として受け取っておくよ。」

皮肉のつもりだったのにね、とは言わず心に留めておく。

インキュベーターとそんな話をしていると。

「うぅん…ここは…!」

「はぁ…はぁ…!」

二人が目を覚ました。

「まどか、マミさん!よかった…!」

「ほむらちゃん…!」

まどかは私に抱きついてくる。

「わっ…!まどか、どうしたの?」

「ごめんね…!ごめんね…!ほむらちゃん…!私、迷惑かけて、邪魔してばっかりで…!」

「…まどか。ううん…いいの。あなたが優しいから…それがあなたのいいところなんだから…。それに私が何度救われたか…。」

「うわぁぁん…!ほむらちゃ…!もう、どこにも行っちゃやだよぉ…!ずっと、ずっとそばにいて…!」

「うん…うん…ずっと一緒よ、まどか…。」

私がまどかを抱きしめていると。

「暁美さん…私、私…!本当にごめんなさい…!あんな…!」

「マミさん…ううん、気にしないで。私がここにいるのも、あなたのおかげでもあるんだから…。」

「暁美さん…!ありがとう…!ありがとう…!」

二人とも辛かったようだけど、無事でよかった…。

 

「…それで、少し聞きたいのだけど…。二人が体験した一ヶ月って、どれだったのかしら…?」

「えっと…私は、さやかちゃんに、巴先輩、佐倉さんが全員死んじゃって…私が契約しちゃうっていう一ヶ月だったよ…。」

「私は、暁美さんがメガネで三つ編みだった頃の一ヶ月ね…前に暁美さんが話してくれた、私が狂ってしまったっていうのよ。」

「そう…バラバラなのね…。じゃあ、さやかは…?」

さやかはすぅすぅと規則正しい寝息をたてて、未だに起きずにいる。

『それについては僕から説明しよう。さやかは、君がたどった一ヶ月の中で最も新しいものだ。』

『君がまったくのイレギュラーと呼んだあの時間軸だよ。』

「な…!あれを…あれを見せたっていうの!?」

『あぁ。なにか問題でもあったのかい?』

大アリだ。あれだけは…さやかには秘密にしておくと決めたのに…。

あんな自分の姿、見たくもないだろうに…!

「…どうしたらいいのよ…。もう…私には…。」

さやかが一度ああなってしまえば、あとは落ちていくだけだ…。今までの経験がそういっている。

「ほむらちゃん!」

私の思考は、まどかの声で遮られた。

「勝手に諦めないでよ!勝手に絶望なんてしないでよ!」

「さやかちゃんを救うんじゃないの!?それなのに、私には、なんて言わないでよ!」

「まどか…。」

「ほむらちゃん、さやかちゃんを…一緒に助けよう?」

「ええ…!」

「巴先輩も…お願いします。」

「もちろんよ、鹿目さん。美樹さんも私の大切な仲間だもの!」

とはいったものの、解決手段は見つけられていない。

しかし、先程のような絶望感はまったく感じられない。

「さやかちゃんを元に戻す方法…。」

「…分からないわね…。なにか…。」

そんなとき、家のチャイムがなる。

「…?私が出るわ。…はーい、どなたでしょう…って、佐倉さん!?」

「はぁ…はぁ…さやかは!?」

どうやら杏子のようだ。

「あ、あぁ…部屋にいるわ。」

「分かった!」

そう叫ぶと杏子は部屋に駆け込んできて。

「さやか!大丈夫か!?」

「きょ、杏子落ち着いて!さやかは寝ているだけだから、大丈夫よ!」

「そ、そうなのか?よかった…さやかが無事で…。」

「杏子…。」

よほど心配だったのね…。こんなに焦って…。

「んぅ…あたし…は…。」

「さやか!?おい、さやか、あたしが分かるか?」

「んー…杏子…。どうしたの…?」

杏子には無視もしなければ、拒絶もしない…。

…まさか、これが解決への糸口?

「さやか、大丈夫?」

「いやっ…!も、もうしないから…!」

「おい!テメェ、さやかに何をした!?」

「やっぱりか…。」

「なにがやっぱりなんだよ!」

「や、やめて、杏子…。ほむらはなにもしてない…あたしが…あたしが悪いんだから…。」

「…!わ、わりぃ…ほむら…。あたし、かっとなって…。」

「いいえ、むしろいい情報を得られたわ。杏子、少し話したいことがあるの、来てくれる?」

「え?ここじゃだめなのか?」

「…もう一度さやかにこの話をすれば、間違いなく絶望する。だから、二人だけで話したいの。」

「…あぁ。んじゃ、あたしたちは出でくるよ…。」

「ごめんなさい、まどか、マミさん。少し席を外すわね。」

「…うん。分かった。」

 

私は前回の時間軸のことをすべて杏子に話した。

杏子はなんとなく、さやかやまどか、マミさんに話せない理由を話す最中に察してくれたようだ。

「なるほど…さやかはそれを実際に体験した、と…。」

「ええ。半狂乱になった自分の姿なんて見たくもないでしょう?…それに、まどかを殺してしまった。そのことが深くのしかかっているのよ…。」

「…それで、あたしは何をしたらいいんだ?」

「さやかの説得をしてほしいの。」

「説得…?どうやって?それに、ほむらのほうが向いてるだろ、そんなこと…。」

「これはね、杏子にしかできないの。もう、私やまどか、マミさんの言葉は彼女にはもう届かない。でも、杏子は違う。なぜかはわからないけどね…。」

「だから、杏子に説得をしてほしい。私は怒ってなんかいない。むしろ、さやかには感謝してるって。何度も何度も助けられて…あのことは気にしないでって伝えてほしいの。」

「…分かった。あたし、やってみるよ。」

 

その後、杏子とさやかは出ていった。

「…ねぇ、ほむらちゃん。さっき、杏子ちゃんと何を話してたのかな。」

「え?それは…杏子に説得を頼んだだけで…。」

「でも、それだけじゃないよね。」

「…。」

「隠してること、話してほしいな。」

「…それは…でき…ない…。」

「ねぇ、ほむらちゃん、その話を私が聞いたら悲しむとか、勝手に思ってないよね?」

「…。」

私はうつむくことしかできない。

「やっぱり…。」

「あのね、ほむらちゃん。」

「…?」

「バカにしないでよ!!」

「まどか…!?」

私はあまりの迫力に驚いてしまった。

「勝手に…勝手に決めつけないでよ!私が悲しむとか、わかんないのに勝手に決めつけたりなんかしないで!」

「そうやって…自分の中に抱え込まないでよ!私のことも頼ってよ!!」

「まど…か。」

まどかは泣いていた。

私は…何をしているのか。まどかの涙を見て気付かされる。

「ほむらちゃんが隠し事してるんだ、って分かって私、すっごく悲しかった。あぁ、私って頼りにならないんだなって…。」

「まどか…!」

私はまどかを抱きしめた。

「私…ただ怖かっただけなのかもしれない。まどかが知って、私のことを嫌いになるんじゃないかって…。勝手に怯えていたの…。」

「でも、まどかの涙を見て…言葉を聞いて…わかったの。」

「いつまでも、閉じこもってる必要なんてないんだって…!」

「ほむらちゃん…!」

「…私、話すね。前回のこと。すごく辛いことだけど…まどかに知ってもらいたい。」

「うんっ。私、ほむらちゃんが一緒なら、どんな辛いことだって乗り越えてみせるよ…!」

「まどかっ…!ありがとう…!」

 

「そんなっ…!そんなのって…!」

まどかはショックを受けている様子だ。

…無理もあるまい。私もまどかの立場なら、同じ反応をしていたに違いないだろう。

「まどか。あなたに見せたいものが…。」

私が取り出したのは、まどかからの手紙だった。

「これは…?」

「過去のあなたの手紙よ…。読んでみてほしいの。」

「うん…。」

「…。…っ!…うん、うん…。そうだね…。」

まどかはなにやら、頷いたり、声をだしたり…。

読み終えると、大事そうに手紙を抱えた。

「あなたの気持ち…私が受け取ったよ…。」

「ありがとう、ほむらちゃん…私、もう悲しくなんかないよ。辛くも…ないよ。」

「本当に…?大丈夫なの…?」

「うん…でも、抱きしめてほしいの…。」

「…! もちろんよ。」

「ふぅっ…温かい…ほむらちゃん…ぐすっ…!」

「ほむらちゃん…!やっぱり、ほむらちゃんはすごいよ…。一人であんなに頑張って…。」

「ううん…一人なんかじゃないよ。まどかが…みんながいたから…一人なんかじゃない。」

「ほむ…らちゃ…!やっぱり…あなたは、私の最高の恋人なんだね…!」

「…最高の…恋人。うん…うん…!そうだね…!」

 

その後しばらくして、さやかたちは帰ってきた。

「まどか…ほむら…マミさん。本当にごめんなさい。

あたし、一人で抱え込んで…悩んで…壁を作って…。」

「ほんっとに…ごめん…!」

「さやかちゃん…ううん、気にしないで。だって、私達は親友なんだから。」

まどかはさやかを抱きしめる。

「まどか…!ごめん…ごめんね…!」

「さやか…本当によかった。あなたが死んでしまったら…私…!」

私はさやかに抱きつく。

「やだなぁ…あたしがそう簡単に死ぬわけないじゃん。」

「まだ、ほむらとの約束も果たしてないからね…。」

「そうよ…約束、絶対に守ってよね…!」

「美樹さん、心配したのよ?」

マミさんもさやかに抱きつく。

「マミさん…。」

「あなたが遠くに行ってしまったみたいで…すごく悲しかった。」

「…本当にごめんなさい。」

「でも、無事でよかったわ…!もう…!」

「あはは…あたし、モテちゃってますね。…本当に、みんなが仲間で…よかった…。」

 

「んじゃ、あたしと杏子はこれで。…まどか、ほむらと仲直りできて、本当に良かったね。」

「うん。これもさやかちゃんのおかげだよ。ありがとう!」

「えへへ…照れちゃいますね…。」

「んー、さやか、早く!」

「あーもう。…じゃあね、みんな!」

「バイバーイ!…それじゃあ、私達も帰ります、マミさん。」

「ええ。さようなら、二人とも。夜道には気をつけるのよ?」

「分かってる。私がまどかを守るから、問題ないわ。」

「ほむらちゃん…!」

「あーはいはい。惚気はいいから…早く帰りなさい。」

 

「ん…私が送っていけるのはここまでね。名残惜しいけど…また明日ね。」

「うん…行っちゃうんだよね。」

「…?ええ…私も帰らないといけないし…。」

「そっか。…じゃあ、お別れのキス、してほしいな。」

「…もう、まどかは甘えん坊さんね…。」

「ほむらちゃんは…甘えん坊な私は嫌い?」

「バカね…そんなわけないじゃない。大好きよ…。」

「えへ…ありがと。…じゃあ、して?」

「ええ…。んぅっ…。」

「んっ…。」

「はぁ…まどか…。」

「ほむらちゃん…。」

「また、あした。」

「うんっ!またあした!」

 

私とまどかは、明日の再開を約束し、お互いの帰路へとついた…。

 




いやー…キュゥべえって、相当進んだ技術を持ってるってことですから、いろんなオリ設定に使えて便利ですね。
こんな風にも絶望させたり、希望をもたせたり…。
では。
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