では、どうぞ。
…。
ここは…どこ…?
私は…家にいたはず…。
なのに…どうしてビル街の中にいるの…?
『さやかちゃんを殺したのはあなた』
何なの…何なのよ、この張り紙は!?
私は苛立ちながらその紙を剥がし、破り捨てる。
少し歩くと、新しい張り紙がある。
『杏子ちゃんを殺したのもあなた』
…!
また破り捨てる。
『マミさんを殺したのもあなた』
破り捨てる。
そして、次に現れたのは。
『私を殺したのもあなた』
その張り紙をもった、まどかだった。
「あんたが…あたし達を地獄におとした。」
さやかが言う。
「おまえが…あたしたちを苦しめた。」
杏子が言う。
「あなたが…私達を悲しませた。」
マミが言う。
「あなたが…私達を殺した。」
まどかが言う。
「あんたは…」
「おまえは…」
「「あなたは…」」
「「「「悪魔だ!」」」」
「はぁっ…!ゆ…め…。」
時計を見ると、まだ二時。
まどかも、さやかも、杏子も、マミさんもまだ寝ている。
「何なのよ…今の…。」
私が…悪魔…?
悪魔…。
あく…ま…?
「あぁぁぁ!!うぅぅっ!?」
頭に声が響く。
まどかの声。
まどかの声は私の頭を殴りつけるように響いている。
「がぁぁあ!!」
それは、私の罪の記憶。
思い…出した。
私がやってきたこと。
まどかが…私を本当はどう思っているのか。
その瞬間、意識が途絶えた。
「…むらちゃ…!…ら…ちゃん…!」
「ほむらちゃん…!」
「ん…まど…か…。」
「よかった…よかったよぉ…。」
まどかは私を強く抱きしめてくる。
「いったいどうしたんだよ。いきなり大声上げて倒れてさ。」
「それに、三時間も気を失ってたのよ?」
「まどかはずっとほむらの名前を呼んで泣いてるし…どうなることかと思ったよ…。」
…やっぱり、みんな優しいのね。
本当の私は…悪魔だというのに。
「…離れなさい、まどか。」
「え…?」
「離れなさいと言っているのよ、まどか。」
「う、うん…。」
このままでは、皆をまた地獄に落としてしまう。
いつか、私が皆を殺す日が来てしまう。
なら、皆に嫌われて、私に関わらないようにするまで。
「もう、私には関わらないで。あとは私がやる。」
「は?なにをいって…」
「黙りなさい。私が話しているの。」
「な…!」
「これ以上私に関わるようなら、私は手段を選ばない。」
「な、なにをいってるの、ほむらちゃん!?」
「…まどか、もう私とあなたは恋人などではないわ。」
「え…!?」
「これからは赤の他人として、生きていきましょう。」
「…どうして!?どうしてそんなこというの!?」
「っ…。私と関わると不幸になるからよ。いつ、私があなた達を殺すかもわからない。だから、私とは関わらないことね。」
「ふざけないでよ…!勝手になにを…!」
「いいから出ていきなさい!!邪魔なのよ!!」
「…っ!」
「…まどか、マミさん、杏子、行こう。」
「でも!」
「いまのほむらは混乱してる。しばらく一人にしておこう。」
「…わかった。」
みんな出ていった。
私は…孤独。
始めからこれでよかったのだ。
私には日常を謳歌する権利など、なかったのだ。
それだけの罪を背負っているのだから。
もう、取り返しのつかない罪を…。
「ごめんなさい…みんな…。」
「ほむらちゃん、どうしたのかな…。」
「さぁね…あいつのことだから、なにか隠してるんじゃないの?」
「でも、隠してるってなにを…?」
「まだ魔法少女の真実のことでも隠してるとか?」
「それはないと思うわ。暁美さんはそんな人じゃないから。」
「…私達に、引け目を感じてるのかな。」
「え?」
「きっと、思い出したんだよ。あの記憶を。」
そう。いつまでもほむらちゃんを苦しめる、あの記憶。
「それって、キュゥべえが言ってたあれ?」
「多分、だけど…。」
ほむらちゃんは優しいから、私達に引け目を感じているんだと、私は考えました。
…ちょっとやり方が強引すぎるのも、ほむらちゃんらしいです。
「でも、それがわかってもどうしようもないじゃん。あいつ自身が解決しない限り、ずっとあのまんまだと思うけど?」
「確かに…でも、さっきのほむらには解決するなんて選択肢はない、ってカンジだったけど。」
「それなら、結局私達がなんとかするしかない、ってことね。」
「それじゃあ、作戦会議だね!」
「え…?作戦会議…?」
「そう!ほむらちゃんを救うの会!結成だよっ!」
「お、おー…?」
「マミ、そこは無理に乗る必要はないんだぜ…。」
と、言うわけで…私たちはほむらちゃんを元に戻すために活動をはじめるのでした…!
…でも、現実はそんなに甘くはありませんでした。
「ほむらちゃん、学校休むって…。」
「はぁっ!?…これじゃあ、作戦が成立しないじゃん!どうするのさ、まどか!」
「…放課後、ほむらちゃんの家に行くしかない!プランzだよ!」
「bじゃなくて、zなのね…って、最終手段じゃん、それ!」
「うっ…仕方ないじゃん!まさか、学校にすら来ないとは思わなかったんだもん!」
「あー、わかった、わかった!放課後、みんなで行こう!」
そして、放課後。
「どうして家にもいないの!?」
「まさかねぇ…こうなることを見越していたのかしら。暁美さん、頭がいいから。」
「むぅー…こうなったら…プランzzだよ!」
「zz!?…ただ言いたいだけだろ…。」
「それで、どうするのさ?」
「手分けして探す!それしかないよ!」
「…まぁ、そうだろうね。」
「それじゃあ、私は西を探すわ。美樹さんは南の方を…佐倉さんには、東を。鹿目さんは北をお願い。」
「わかりました!」
「暁美さんを見つけ次第、連絡をするように。それじゃあ、行くわよ。」
みんなはものすごい速度で消えて行ってしまった。
…私、出遅れてる!?
「おーい!ほーむら!どこにいるんだー!」
あたしはマミに言われたとおり、東を探していた。
ビル街の中に隠れているかと思ったが、そんな気配はない。
「どこいったんだよ…っと…?」
あれは…。
「ほむら!」
「…っ!」
「あ、待て!」
逃げるほむらを、あたしは追う。しかし、なかなか追いつけない。
「待てよ、おいっ!なんで逃げるんだよ!」
「くそっ、追いながらじゃ、連絡できねぇ…!」
そのまま、路地裏に逃げ込んだほむらを追う。
微弱な魔力反応を辿ると、疲れているのか、へたりこんだほむらがいた。
「…もう逃さないぞ…!」
「くっ…!」
「こないで!来るなら…撃つわよ!」
ほむらはそう言って、銃を構える。
その銃はセーフティが外され、トリガーさえ引けば、あたしのソウルジェムを貫通するようになっていた。
「…分かった…分かったよ…。」
手を上げ、抵抗する意思はない、と示す。
「ただ、一つだけ聞きたいことがある。」
「…なにかしら。」
「どうして…あたしたちを避けるんだ?」
「…私は悪魔だからよ。皆を不幸にする、悪魔。」
「私と関わった今までのあなた達は皆、死んでしまった。」
「私は許されない罪を背負っているの。…ただ、せめてもの罪滅ぼしとして、ワルプルギスの夜は討伐するわ。安心して。」
「私はもう行くわ。…杏子、まどかを頼んだわよ。」
「おい、待てっ…!」
なんなんだよ…アイツ…。
悪魔だと…?
…とにかく、連絡をしなきゃな…。
「あら…佐倉さんから連絡…?」
逃げてきた方面は…ちょうどこっちね。
「さて、どう待ち伏せたものかしら…。」
私がそんなふうに考えを巡らせていると、黒い髪の美少女を発見する。
あれは間違いなく、暁美さんだ。
幸い、向こうはこちらに気がついていないようね。
好都合だわ。
誘い込んで、捕まえることにしましょう。
『暁美さん…暁美さん…私、今あなたの近くにいるわ。』
その瞬間、黒髪は身構える。
『大丈夫よ、あなたがなにも抵抗しなければ、手荒な真似はしない。そのまま路地のほうに行きなさい。』
黒髪はこちらに気づくこともなく、素直に路地に入っていく。
「さて、今のうちに連絡を…!んぐっ…!?」
後ろから口を抑えられる。そして、拳銃を押し付けられる。
「そうはさせない。…それにしても、ずいぶんと汚い手を使うのね。」
まさか…バレていたの?
「あなたは自分がどれだけ目立っているのか、しっかり考えるべきだったわね。」
「人通りがまったくないこの場所で、隠れていたつもりなのでしょうけど…丸見えよ。」
「少し演技をしただけでまんまと引っかかって…自覚が足りないんじゃないかしら?」
「んー!」
そんなこと…なくなく…ない…かも…。
「もう私に関わるのは止しなさい。私といるとあなたは不幸になるわ。」
「…お願いだから、放っておいて。」
最後にそう言った暁美さんの声は寂しそうだった。
去ろうとする暁美さんにせめても、として声をかける。
「暁美さん!私たちはあなたとずっと一緒にいたい!私はあなたにいてほしい!これだけは覚えていて!」
「…心得ておくわ。」
暁美さんはそのまま立ち去ってしまった。
…本当に、一人になることを望んでいる人の言葉じゃなかった。
なにかが…彼女を苦しめていたに違いない。
でもきっと、それを解決できるのは…。
「ほむら…どこにいんのよ…。」
あたしは、高い建物から見渡して見てるけど、全然見つからない。
…ん?ビルの上をぴょんぴょんしてるのは…。
前言撤回。いた。
あれは…ほむらだ!
「待てぇー!」
あたしは脚力を強化して、ほむらを追いかける。向こうもあたしに気がついたみたいで、スピードが上がる。
でも、あたしの方が早いっぽい。
「あと…少しで…!」
ほむらとの距離はどんどん縮まっていく。
「つか、まえたぁ!」
私は後ろから抱きついて押し倒すと、キャッ、とかわいい越えを出しながら倒れた。
「は、離しなさい!」
ほむらはジタバタと手足を振る。
「痛い痛い痛い!でも、離さないよ!」
「くぅっ…!…分かった、降参よ…。だから、拘束を…」
「嫌だね。ほむらのことだから、拘束を解くと同時に逃げるでしょ。」
「…。」
「沈黙は肯定の証っと…。それじゃあ、いくつか質問に答えてもらうよ。」
「…仕方ないわね。」
「まず一つ目。ほむらは自分のコトを悪魔って言ってたケド、どうして?」
「そんなの、言葉の通りよ。私は皆の命を奪う悪魔なの。私がいれば、この街を、皆を…まどかを殺す。…必ずね。」
「あっそ…。じゃあ、二つ目。どうしてそんなコトを言い出したの?」
「…全部、思い出したの。私の罪の記憶を。」
「私は許されないことをしたわ。何度も何度も…私はあなた達を見捨て、殺した…。」
「だから、私はその罪を背負って生きなければならない。その罪にあなた達を巻き込むわけにはいかない…!」
ほむら…そんなふうに自分を追い込んで…。
こりゃ、あたしが何言っても無駄、かな…。
「じゃあ、最後。…まどかはどうするの?」
「…!」
「本当にこのままでいいの?悲しんでるまどかがいても、あんたはまだそんなコトを言っていられるの?」
「…ええ。もうまどかとは関わらない。影から守って行くわ。それで私は十分よ。」
「ほむらは何も分かってない…。まどかがどれだけあんたを大切にしてるのか!」
「…!余計なおしゃべりはここまでよ!」
その瞬間、あたしの体が地面に押し付けられ、頭に銃が押し付けられる。
「抵抗しないで。いくら魔法少女でも、頭を撃ち抜かれたらどうなるでしょうね?」
「くっ…。」
「…お願いだから、私に関わらないで…。これ以上あなた達に優しくされると、私は弱い自分に戻ってしまう…。」
「もう、あなた達を傷つけたくない…だから、私を一人にして…!」
ほむらはそう言い残して、去ってしまった。
「…ほむら…。」
アイツ…泣いてたんだ…。
凄く苦しそうな声だった。
あたしには、ほむらを説得できる気がしない…。
でも、まどかなら…!
「おーい!ほむらちゃーん!どこに行ったのー?」
杏子ちゃんから連絡があって、ずっと探しているのですが、どこにもいません。
「はぁ…ほむらちゃん…どこに行っちゃったの…?」
「寂しいよ…ほむらちゃん…。」
私が公園のベンチで休憩しようとすると、先客がいました。
そう。
「ほ、ほむらちゃん!?」
向こうも私に気がついたのか、慌てて逃げようとします。
「待って!」
案外すんなりと捕まりました。
「離して。」
「嫌!」
「お願い、離して…。」
「絶対に離さないよ!」
ここで離してしまえば、二度と会えない。
そんな気がしたのです。
私の直感が正しければ、ここで説得できなければ、ゲームオーバーということです。
「ねぇ、ほむらちゃん、どうして逃げるの?」
「…皆、そのことを聞くのね。」
「当たり前だよ。みんな、ほむらちゃんが心配なんだから。」
「心配、か…。私には、心配される権利なんてないわ…。」
「どうしてそんなことを言うの?」
「私が悪魔だから。いくつもの命を奪って、ここに私はいるのよ…。」
悪魔。
ほむらちゃんは自らを、そう呼ぶようになりました。
「何度も何度も、あなた達を救えず、私だけが生き残って、先に進もうとしている…。」
「たくさんの犠牲があっても、私は何もできない…むしろ、被害は広がっていく一方よ…。」
「ここ何度かのループだって、さやか、マミさん、杏子が生きていたことはほとんどなかった。」
「全部全部、まどかの言うとおりだったのよ。私は悪魔。この街を破壊し、皆の命を奪っていくのよ…。」
私の…言うとおり…?
「私、ほむらちゃんのことを悪魔なんて言ったことないよ?」
「ええ、あなたは言ったことないわ。…過去のまどかに言われたのを思い出したの…。」
また、過去の私。
いつまでもほむらちゃんを苦しめ続ける私。
できることなら消し去りたい、私。
「…だとしたら、その私はバカだよ…!」
「え…?」
「ほむらちゃんが悪魔なんて、有り得ない!」
そう。
悪魔なんかじゃない!
「私達を助けようとしてくれる、女神だよ!」
「め、女神…?」
「だって、ほむらちゃんは、どんなに辛くたって、私達を助けるために、自分を削ってここにいるんでしょ?」
「私だったら、そんなの絶対に無理だもん。」
「…まどか。でも、私は…いくつもの命を…!」
「そうならないために、ほむらちゃんはここにいるんじゃないの?」
「それは…。そう…だけど…。」
「過去を振り返るのも大事。でも、それを乗り越えて、未来への糧にすることはもっと大事なの。」
「それに、いままで犠牲になった人たちだって、ほむらちゃんに希望を託して送り出したと考えればいいんだよ。」
「…でも…私には、皆と笑い合う権利なんてないのよ…。もう…取り返しがつかないの…。」
「もう…!どうしてそう、変なところで頑固なのかな…。」
「これだけは…絶対に譲れないの。たとえ、まどかだとしても…。」
万策つきたか…そう思ったそのとき。
ポケットに紙が入っていました。
それは、過去の私からほむらちゃんに送った、あの手紙。
「ほむらちゃん、これ見て!」
「これは…。まどかからの手紙…?」
そう。
『ひとりぼっちにならないで。』
その言葉が、今のほむらちゃんに必要、そう思ったのです。
「ほむらちゃん。今の私とこの私の気持ちは同じ。ひとりぼっちにならないで。」
「だから…皆のところに帰ろう?」
「…いいの…?私が…皆の中に戻っても…?」
「うん!皆、ほむらちゃんを待ってるんだよ?」
「うぇぇん…!私っ…つらかったの…!」
「皆を失うのが…怖かったの…!」
「そんなの…もう、見たくなかった…だから、逃げたの…。」
「こんな…こんな私を許してくれますか…?」
「もちろん。だって、私たちはほむらちゃんが大好きだから!」
「えへ…ありがとう…。」
「ほら、ほむらちゃん。いつまでも私の後ろにくっついてないの。皆にごめんなさいって言うんでしょ?」
「う、うん…。でも、ちょっとだけ怖いの…。」
「もう…皆が許さない、なんて言う人だと思うの?」
「ううん…思わない…。」
「なら、信じようよ。皆のこと、もっと信じてみよ?」
「…うん!信じてみる!」
「あ、あの…本当に、ごめんなさい!勝手にひとりぼっちになって…銃まで突きつけて…。」
「大丈夫よ、暁美さん。皆、怒ってなんかいないわ。」
「そうだよ。むしろみんな、喜んでるよ!ね、杏子?」
「…ああ、そうだね。おかえり、ほむら。」
「杏子…!」
「うんうん…解決ですな。どうやったのかはあえて聞かないでおくケド。」
「そうね。無理に詮索するのも、野暮よね。」
「…で、今日も泊まっていくの?」
「うん。当たり前だよ。」
私はもとよりそのつもりでした。
「そうだよ。当たり前なんだよ。」
さやかちゃんは言います。
「私は…なんとなく、ね。」
巴先輩は言います。
「あたしは家がないし、もとから居候させてもらってたしな。」
…もとから?聞き捨てならない言葉が…。
「まぁ…いいけど。楽しいし。」
「なんだよー!今日はやけに素直じゃん!」
「…素直な私は…嫌…かしら…?」
「うっ…上目遣いは反則だってば…。嫌じゃない、嫌じゃないよ!」
「えへへ…良かった…。」
「…ねぇ、まどか…ほむらってこんなキャラだったっけ?」
「本当のほむらちゃんはこんなふうに素直で良い子なの。だから、もとからだよ。」
「あぁ…そうですか…。」
【私は許されない罪を背負っているの】
ーFinー
いかがでしたでしょうか。
最近は急ぎ足になっているせいで、長さがちょっと…って感じですかね。
その分、話数が増えていきます。
では、またお会いしましょう。