今回は、誰の視点でもなく、第三者視点です。
どうぞ、お楽しみください。
『…時は満ちた。』
『いまこそ、魔なる因果を断ち切るとき。』
『待っていろ、舞台装置の魔女…。』
巨大な機械の鬼は片目を開け、その身体の半分の長さの刀を亜空間から取り出し、一振りした。
その瞬間、星が一つ消し飛んだ。
「さぁて…今日も泊まり込みだぁー!」
「もう!毎日じゃない!」
「別にいいじゃーん!もうワルプルギスの夜だってすぐそこなんだし!」
「むぅ…せっかくの二人きりが…。」
「まぁまぁ…ワルプルギスの夜の作戦会議のためだから…我慢して、ね?」
「そうは言っても…。」
「細かいコトは置いといて…ほむらの家に、ごー!」
「な! 待ちなさい、さやか!」
「あ…行っちゃった。」
「ふふっ、私達も行きましょうか。」
「はい!」
「はい、お茶とお菓子。」
ほむらは当たり前のように、お茶の葉と、お菓子を常備するようになった。
「ありがとう、暁美さん。」
「んで、今日は何の作戦を立てるんだ?」
杏子は出されたお菓子を頬張りながら言う。
「もうワルプルギスの夜の行動予測とか、攻撃のパターンは十分話し合ったから、今日は順番についてよ。」
「ワルプルギスの夜の使い魔は単体ではそこまでの脅威ではないけれど、集まられるとかなり危険よ。」
「それに、使い魔が街に逃げ込めば、追撃は不可能になってしまう。だから、使い魔担当もいなければならないの。」
「なるほどね…じゃあ、どういう配置になるんだ?」
「まず…ワルプルギスの夜への攻撃メンバーは、ローテーションにする。」
「ただ、さやかには遊撃要員兼、回復要員として自由に動き回ってほしいの。」
「できるかなぁ…。」
「まぁ、最近のさやかは上手く立ち回れてるしね。大丈夫でしょ。」
「杏子が言うなら…。」
「…ただ、私は固定にしてほしいの。」
「は?ローテーションにするって言ったのに?」
「ええ。やっぱり、いくら行動パターンを話したとしても、皆には経験がない。だから、私が常に指示を出せるようにしたい。だから、固定にする。」
「なるほど…でも、それじゃあ、ほむらに負担がかかりすぎちゃうよ。本当に大丈夫なの?」
さやかはやや心配そうにほむらに尋ねる。
「ええ。グリーフシードは腐るほど集めたし、なにより何度もヤツと戦ってきたのだから、被害が最小限ですむ動きだってできるわ。」
「でもっ、やっぱりずっとなんて…私、そういうのはよくわかんないけど…とっても辛くて、苦しいことなんだろうって思うの…。皆と協力したほうが…。」
まどかは今にも泣きそうな顔でそう言う。
「まどか、私を信じて。私はあなたを救うためならなんだってできるの。あなたがいるだけで、応援してくれるだけで、力が湧いてくるの。おかしな話かもしれないけど、ワルプルギスの夜が全く怖くない。それは全部あなたのおかげだから…。だから、私を信じて。」
「ほむらちゃん…じゃあ、約束して。絶対、私のところに帰って来るって。それで、抱きしめて、キスするの。それで、愛してるって言うの。」
「ええ…。もちろんよ、まどか。約束、絶対に守ってみせるわ。」
「ほむらちゃん…。」
「まどか…。」
まどかとほむらは手をお互いに握り合い、見つめ合っている。今にもキスをしそうな状況に、マミは困り気味に、
「あー…と…。どうしましょうか。」
と呟く。
「放っておけよ。その内に元に戻るよ、きっと。」
杏子は素知らぬ顔で菓子を食べつつ、そう言う。
「そうですよ、マミさん。こいつらは一回始めると止まらないんですから。」
さやかは大きくため息をはき、呆れ気味に言う。
「んー…!んん…?うわっ!?」
「なんだよ、さやか、ビビってんのか?」
「そ、そ、そんなワケないでしょ!たかがゲーム如き…ひぃっ!?」
「あはは!バカらしー!」
さやかと杏子は二人協力プレイのホラーゲームで遊んでいるのだが、まるで協力などできていない。
杏子はどんどん先に進んで武器の無駄遣いをし、さやかは怖がり過ぎて、先に進んでいない。
「ね、ねぇ…このゲーム、私たちもやるの…?」
「もちろんだよ、ほむらちゃん!」
ほむらはやや不安げに、まどかは得意気に言う。
「あー!弾薬が切れちまった!さやか、弾薬くれよ!」
「無理無理無理!あたし、そっちまで行けないってば!」
「あ、さやか、後ろ!」
「へっ?キャァァー!」
画面にはゲームオーバーの文字。
「あーあ…さやかとペア組んだの間違いだったな…。」
「し、仕方ないでしょ!怖いもんは怖いのよ!」
「はいはい…二人とも、お風呂入って来なさい。」
「はーい…。」
二人は口論を続けながら、バスルームへ消えていった。
「じゃあ、私達の番だね!」
「え、ええ…。」
「んーと、武器は…と…これとこれにしよっと!」
まどかが選んだのはマシンピストルとスナイパーライフル、グレネード。
「武器があっても私にできるかどうか…。」
ほむらは残ったハンドガン、アサルトライフル、ショットガンを選んだ。
「ここのステージ暗いねー。どこから来るかわかんないや。」
「そうね…どこから来るか…。ううっ…。」
「あ、敵!」
「ひぃっ!?」
姿形こそ人だが、顔はおぞましく、歪んでいた。
「よーし!この武器で!」
まどかは照準を合わせ、マシンピストルを撃つが、徐々に上に傾いて行き、弾がうまく当たらない。
「あ、あれ?当たらないよぉ!」
「こ、来ないでぇー!」
ほむらは半狂乱になりながら、ハンドガンを撃ちまくる。それが効いたのか、敵はいなくなっていた。
「やったー!ほむらちゃんすごいよ!」
「え、え?あ、ありがとう…?」
ほむらはわけがわからない、という顔をしている。
「わっ、また敵!」
「いやぁ!来ないでってばー!」
ほむらはまた半狂乱に銃を撃つが、弾切れに。しかし、そのことに気がつかずに、トリガーを引き続ける。
「なんで!?どうして弾がでないのよ!?このっ、このっ…!ひゃぁ…来ないで…!」
ほむらの目の前まで、おぞましい敵が接近した、その時。
敵の頭が吹き飛んだ。
「大丈夫だよ、ほむらちゃん!」
まどかがスナイパーライフルで敵を倒したのだ。
「まどかぁ…怖かったよぉ…。」
「大丈夫、私がほむらちゃんを守るよ!」
「ありがとう…。」
「行こう、ほむらちゃん!」
「うん!」
「結局…負けちゃったね、ほむらちゃん。」
「ごめんなさい、まどか…私が不甲斐ないばっかりに…。」
「仕方ないよ。いつの間にか囲まれてたんだもん。」
「ええ…どうしてかしら。」
「ねー。全然わかんないよ。」
それはあなた達がいちゃいちゃしていたから、とは口に出さないマミであった。
「さ、さあ、佐倉さんたちがお風呂上がったら入っちゃいなさい。」
「そうですね。行こっ、ほむらちゃん!」
「ええ。洗いっこしましょうか。」
「うん!」
「…なんなのよ、あのバカップルは…。」
マミは額に手を当て、呆れるようにそう呟いた。
「さぁて、何をしますかね?」
まだ時間は8時。まだ寝るのには早いのだが、何もすることもないので、何をしようか話し合っていた。
「そのことなんだけど…私と杏子から話があるの。今まで話せなかったことを、話したいの。」
「所謂身の上話ってやつだよ。」
「ほむらちゃんと杏子ちゃんのお話かぁ…気になる…。」
「そういえば、詳しくは聞いたことなかったね。ちらほらと出てきただけで。」
「それじゃあ…まずはあたしから。」
「あたしは元々、教会の子だった。あたしら家族は大変だったけど、毎日を楽しく過ごしてたんだ。でも、ある日、親父が教えにないことを話し出すとみんな来なくなったんだ。」
「親父は毎日辛そうで、見ていられなかった。少しでも、少しだけでいいから耳を傾けてほしい。そう思ってたら、キュゥべえが現れたんだ。」
「あたしはこう願った。親父の話を聞いてほしい、ってね。」
「その結果、教会にはたくさんの人が来るようになった。親父は大喜び。あたしも嬉しかった。」
「でも、そんな幸せはすぐに崩れ去った。」
「教会に人が来るのは親父のおかげじゃなくて、あたしの願いが原因だってばれたんだ。」
「親父はそのことに怒って、ヤケになった。そして、一家心中をしようとして、火をつけた。でも、あたしは魔法少女だから生き残った。」
「そのころかな…マミと別れて、魔法は金輪際自分のために使うんだって思い出したのは…。」
「そんな…そんなことが…。」
「…どうして杏子ちゃんがそんな辛い思いをしなくちゃいけないの?おかしいよ…幸せを願って契約したのに…。」
「佐倉さん…よかったの?このことを話して…。」
「ああ。あたしが話さなくちゃいけないって思ったからね。」
「…悲しんでいるところ悪いけど、次は私の話を聞いてほしいの。」
「うん…あんな話のあとだから、そんなに驚くかどうか分からないけど…。」
「…元々私は何もできない子だった。ずっと病院に心臓病で入院していて、学校なんて滅多に通ったことなんてなかった。だから、友達も居なかった。」
「見滝原中学校に転校したときも、勉強もできず、運動もできず…どうして生きているのだろうって思って過ごしていたわ。」
「そんなとき、魔女に私は襲われた。魔法少女ではなかった私は、ここで死ぬんだって確信した。でも、ある二人の魔法少女が私を助けてくれた。」
「それが、まどかとマミさんだった。」
「私を助けてくれた二人が私に微笑んでくれたとき…私のことを友達だって言ってくれたとき、私のモノクロな世界に色がついた…。」
「それから私は何度も二人に助けられた…特にまどかにはよく助けてもらった。」
「私にポッカリと空いた穴を埋めるように、まどかとの毎日は充実していたわ。でも…。」
「その幸せを打ち砕くように、ワルプルギスの夜が現れた。」
「ワルプルギスの夜が去ったあと残ったのは私と瓦礫と…まどかの死体だけだった…。」
「私は私自身を憎んだ。とても強く。非力な自分が嫌になって、たまらなく悔しかった。私は守られる側じゃなくて、守れる人になりたいと願った。」
「そして、私はインキュベーターと契約した。まどかとの出会いをやり直したい、と…。」
「そして、私は時間遡行を始めた。皆を…まどかを救うために。」
「でも、ここでも私は非力な自分を痛感されられたわ。いくら私が頑張ったとしても、誰一人として救うことはできなかった…。むしろ、状況は悪くなる一方だったわ。」
「ある時、私とまどかはワルプルギスの夜に打ち勝った。でも、ワルプルギスの夜がもたらした呪いは通常のそれとは比べ物にならなかった…。」
「魔女になる寸前、まどかは私に未来を託したの。キュゥべえに騙される私を助けて、って。そして、私はまどかのソウルジェムを撃ち抜いた…。」
「そして、私は変わったわ。まどかを救うためならなんだってする。仲間なんていらない。神に祈ることなんてしない。信じるのは自分だけ。そんなふうに考えるようになった。」
「その結果、待っていたのは、最悪の未来だった。もうどうしようもない。でも、ここで諦めるわけにはいかない。そんなふうに何度も何度も苦しんできた。」
「…あの頃の私はまどかを救うのに必死で、目的そのものを失っていたのかしらね…。」
「でも、そんな私を変えてくれたのは…皆とまどかだった。」
「皆は私に一人ならなくていいということを教えてくれた。希望を教えてくれた。楽しさを教えてくれた。」
「感謝してもしきれないわ…。」
「…ごめんなさい、いきなりこんなこと言われても、困るわよね…!おかしいし、気持ち悪いよね…!」
「でも、私は絶対に掴みたいの…皆が笑いあえる幸せな未来を…!だから…!」
「私を…助けてくれますか…?」
ほむらは涙ながらにそう、小さく、しかし力強く、そう言った。
「そんなの、当たり前だよ!」
まどかはほむらを抱きしめ、言う。
「だって、あたしたちはほむらのことが大好きだから!」
さやかも、ほむらを抱きしめる。
「何度だって私は暁美さんを助けてみせる。なにがあったとしても、大切な後輩ですもの!」
マミはほむらの頭を撫でながら言う。
「あたしだって、ほむらには数えきれない位に助けて貰ったからね。今度はあたしたちの番だよ!」
杏子はほむらの涙を拭きながら言う。
「ありがとう…私の最高の、仲間たち…。」
ほむらはそのまま寝てしまった。
「わっ…どっと話して、疲れちゃったのかな…。」
「…にしても、すごい話だったな…あたしの話なんて、ありんこみたいに感じるよ…。」
「それは流石に言い過ぎだと思うけど…でも、暁美さんはこんなにも辛いことを一人で背負っていたのね…。」
「キュゥべえが言ってた、一人の女の子が背負っていい闇の量じゃないって言う意味が分かったよ…。」
「だからこそ、私達がほむらちゃんの支えにならないと駄目なんだ…。ほむらちゃん、すぐに一人で背負い込んじゃうから…。」
「不器用っていうか、優しいっていうか…。」
「とりあえず、ほむらちゃんをベッドに移そう…。」
「すぅ…すぅ…。」
ほむらは規則正しく寝息を立てている。
その顔には、幼さを感じさせる何かがあった。
それは安心なのか、幸せなのか。或いはその両方なのか。
それは誰も知る由はない。
「うぇひひ…ほむらちゃんの寝顔ってやっぱりかわいいなぁ…。」
「ほんっと、羨ましいわぁ…このスベスベプニプニの、真っ白い肌…。」
「肌だけは赤ちゃんみたいよね…暁美さんって。」
「…妹を思い出すな…。この柔らかさ…。」
彼女たちが抱く想いは様々に、ほむらの柔肌をツンツンと突っいていた。
「んんっ…くすぐったいですぅ…。」
「…おい、誰だよ、今喋ったの。」
「あたしじゃないよ?」
「わ、私でもないよ?」
「私も違うわ。」
「じゃあ…。」
「まさか…?」
「ほむらちゃんなの…?」
「ええー?まさか、そんなわけ…。」
「いいや、絶対にほむらだよ!」
「そんなに騒いだら、ほむらちゃんが起きちゃうよ!」
「…ん…もう朝ぁ…?」
「あーもう…ほむらちゃんが起きちゃったよ…。」
「ふぇ…?」
「いいの、ほむらちゃん。まだ夜だから、寝てて?」
「うん…でも、鹿目さんも一緒に…ギュッってしてほしいのぉ…。」
「仕方ないなぁ…じゃあ、一緒に寝よっか。」
「ん…。」
「…じゃあ、三人は自分で布団を敷いて寝てね。おやすみ…。」
「…何なんだ、あいつら。」
「バカップルだよ。ただのバカップル。」
「ええ。バカップルね。」
三人は呆気にとられ、しばらくその場を動くことができなかった。
いかがでしたでしょうか。
毎回思うんですケド、大事な場面の構想が浮かんで、パッと書かないと、なんか違うってなって、何度も修正するんですケド…しっくりこないんですよねェ。
どうしてでしょうか。
以上、最近涙もろいまどほむ派でした。
次回もまたお楽しみに〜。