いうならば、起承転転転転結ってカンジです。
まぁ…それがワタシですから。
では、どうぞ。
ワルプルギスの夜との決戦前日…。
「じゃあ、今日は自由に過ごしていいの?」
「ええ。十分に作戦は練ったし、訓練だってこれ以上教えることもないから、明日への英気を養って頂戴。」
「よーし!さやか、マミ、ゲーセン行こう、ゲーセン!」
「えぇ?私も?美樹さんと二人で行ってくればいいじゃない。」
「だってさやかじゃ相手になんないんだよ。全部遊び尽くしても、さやかがあたしに勝てたことほとんど無かったし。」
「マミさん…お願いですから一緒に来てください…こいつ、昼飯めっちゃ食うんです…。もう、お小遣いが…。」
「はぁ…分かったわ、私も行くわ。」
「ありがとう…女神よ…!」
信号たちはそんな会話を繰り広げながら、ショッピングセンターの方向に消えていった。
「…なんだったの、あの漫才は?」
「さ、さぁ…?それよりも、私たちはどこに行こっか?」
「そうね…特にどこに行きたいとかはないから…私たちもショッピングモールにでも行って、適当にブラブラしてましょうか。」
「そうだね。まずはクレープ食べて、ソフトクリーム食べて、ハンバーガー食べて…。」
「ふふっ、まどかったら、食べることばっかり。」
「あ、えと、その!」
「じゃあ、クレープ食べに行きましょうか。ほら。」
ほむらは手を差し出す。
その手をまどかは嬉しそうに掴む。
「えへへっ、食べさせ合いっこしようね?」
「ええ、もちろんよ。」
「うがー!マミ、少しは手加減してくれよー!」
「ふふっ、それは無理な相談ね。ほら、懐ががら空きよ!」
「あぁ…また負けたぁ…。」
「杏子、いい加減にしたら?もう五連敗だよ?マミさんも、あんまり杏子を刺激しないでくださいよォ…。」
二人が遊んでいたのは、かなり年季の入った格闘ゲームだった。
マミは初めてだったというが、完全に初心者のそれではなく、初っ端から必殺技で杏子をボコボコにしてみせた。
「そうだな…次はあたしの得意の音ゲーで勝負だ!」
「ええ…?それはちょっと…私は遠慮しておくわ。美樹さん、バトンタッチよ。」
「ええ!?あたしですか!?」
「私はもうちょっと、このかくげーっていうので遊ぶから!じゃあ、あとは頼んだわよ〜。」
「おぉ、女神よ!我をお見捨てになるのですかァ〜!」
さやかはそんな言葉を最後にズルズルと奥に連れて行かれた。
「ん〜!クレープおいし〜!」
「本当ね…クレープなんて食べたの、初めて…。」
「そっか、今日がほむらちゃんのクレープ記念日なんだ!」
「く、クレープ記念日?」
「そう!初めてクレープを食べた日だから、クレープ記念日!」
「それでね、ほむらちゃんは私と一緒にいろんな記念日を作っていくの。これから、ずっーと!」
「…だから、絶対にワルプルギスの夜を倒して、私のところに帰ってきて。じゃないと私、毎日泣くもん。ほむらちゃん、ほむらちゃんって。」
「まどか…。」
「…なんだか、湿っぽくなっちゃったね!さーて、次は何処に行こっか!」
まどかは目元に溜まった涙を急いで拭い、ほむらに笑顔を見せる。
「…まどか、無理をしないで…。」
ほむらはまどかを抱きしめる。
「ほむら…ちゃ…。」
「私はまどかを一人になんかしないわ。絶対に。必ずワルプルギスの夜を倒してみせる。そして、まどかとの未来を必ず掴むの。」
「だから、もう泣かないで?」
「うんっ…うんっ…!約束だよ…!」
「ええ。約束よ、まどか…。」
「…なぁ、さやか。さっきのマミ、凄く嬉しそうだったよな。」
「んー?どうしたのさ、いきなり?」
「いや、マミがあんなに楽しそうな顔してるのって、久々でさ…。学校も忙しくて、魔法少女もやってるから、息抜きができなかったと思うんだ。だから、あんなふうに笑ってるのが嬉しくてさ…。」
「杏子…。」
「へへっ、柄にもないこと言ったな。ごめん、今のは忘れて…」
「杏子も楽しそうで、あたしは嬉しいよ!」
さやかが杏子の言葉に重ねるように言う。
「杏子には、今まで楽しめなかった分、楽しんでほしいんだ。もちろん、マミさんだって同じだケド…。」
「まだまだ、たっくさんの楽しいことがあるんだって、二人に教えたいんだ。」
「さやか…やっぱり、さやかって優しいな…。」
「なっ、なっ、なァ…!何言ってるのよっ!」
「て、照れるなよ…あたしまで恥ずかしくなるだろ!」
「…ご、ごほん。マミさんを呼んでご飯にしよっか!」
「そ、そうだな!なに食べようかな!」
二人の間には、不自然な距離が開いていた。
「う〜ん!冷たいよぉ〜!」
「そうね…ちょっとソフトクリームを食べる季節、って感じじゃなかったわね。」
「じゃあ、お昼はあったかいものにしよう!」
「あったかいもの?」
「うん。確か、何処かにレストランみたいなのがあったと思うんだ。そこに行こう!」
「じゃあ、案内よろしくね。」
「お昼ご飯?そうねぇ…まだ遊び足りないけど、もう食べちゃいましょうか!」
「まだ遊ぶつもりかよ…。」
「いいじゃない!あと少しで、すとーりーもーど、っていうのがクリアできそうなの!」
「えぇ!?もうですか!?」
「ま、まぁ、昼飯を先に食べようぜ。さやか、どっか連れてってくれよ!」
「ん〜、じゃあ、あそこのレストランにしよっか!あそこには美味しいケーキとかもあるし!」
「まぁ、ケーキ!そこにしましょう!」
「…ほんっと、楽しそうでよかった。」
しみじみと杏子は呟いた。
「ここだよ!前にさやかちゃんと来たことがあるんだけど、ケーキがすっごく美味しいんだ!」
「ケーキ…楽しみね。それじゃあ、入りましょうか…って、こっちに来るあの三人…。」
「ま、まさか…さやかちゃんたちじゃないよね?」
「いくらなんでも…いえ、やっぱりあの三人…。」
「おっ?まどかにほむらじゃん!二人もここでお昼ご飯?」
「ええ。まどかがここがおすすめだって。」
「へェ…その肝心のまどかは…すごーく、ぶすっとしてるんですケド…?」
「…せっかくの二人きりだったのに…。」
「あー…えっと、とりあえず入りましょう?ね?」
「え、ええ!さあ、まどか、行くわよ!」
「むぅ…。」
まどかたちは六人がけの席に座っていた。
当たり前のようにまどかとほむらがセットになり、残りのメンバーはもう片方の座席にかけている。
注文した料理を待つ間、まどかはずっと信号機を睨んでいた。
「ね、ねぇ…ほむらたちは何してたの?」
「わ、私?えっと…クレープ食べたり、ソフトクリーム食べたり…。」
「食ってばっかりじゃん!」
「…。」
「…。」
会話が続かない。まどかが会話に参加しないことで、話題が続かないのだ。
「えーっと…まだかなァ…料理おっそいなー…。」
「そうねぇ…遅いわねぇ…あはは…。」
実際のところ、注文してから五分も経過していない。
杏子がジュースを半分飲みきって、ほむらをじーっと見つめる。
「な、なにかしら、杏子…?」
「んー、やー…改めて見ると、ほむらって美人だよなぁ、って…。」
杏子が思わぬ爆弾を放り投げた。
この瞬間、ほむらとさやかとマミの心の声はシンクロした。
何故、今!?
と。
「…杏子ちゃん。」
「ん?」
「前から思ってたけど、杏子ちゃんってほむらちゃんと仲、いいよね。」
「え?まぁ…人並みって感じだな。」
「本当かな?一緒に住んでるんでしょ?」
「あぁ…。それはそうだけどさ。」
「人並みなら一緒に住んだりはしないよね?ねぇ、ほむらちゃん?」
「え!?え、えーっと…その…。」
ほむらがどう返答すべきか決めあぐねると、まどかは強く、
「ね?」
と凄んできた。
「は、はぃ…。」
結局、折れたのはほむらだった。
「そっか…。一緒に住むのは普通の友達じゃしないんだ、ほむらちゃんは…。」
「じゃあ、杏子ちゃんって、どういうことなのかなぁ…?」
「…まどかが何を考えてるのかは知らないけどさ、別にそういうんじゃないよ?あたしは確かにほむらのことは好きだけどさ、まどかみたいのじゃ…」
「ちょっと黙ってて。」
「あ、はい…。」
「で、どうなの、ほむらちゃん?」
「うっ…杏子はあくまで、友達で、仲間よ。それ以上はないわ。ええ、断じて!」
「でも、おかしいよね?友達と一緒に住むなんて。恋人の!私でも週一回しかお泊りしてないのに!」
「し、仕方がないじゃないの!私だって毎日一緒に過ごしたいと思うわよ!でも、私たちはまだ中学生じゃない!親御さんが許してくれるわけがないわ!」
「杏子ちゃんはいいの?」
「そ、それは…。」
「杏子ちゃんだって中学生くらいじゃない。」
「…はァ。まどか、いい加減にしなって。」
「さやかちゃんは関係ないでしょ?これは私とほむらちゃんの問題だから。」
「そういうことじゃないって…。これ以上ほむらを困らせるのはやめなさい、って言ってるの。」
「じゃあ、さやかちゃんはいいの!?恋人が、自分以外の誰かと同棲してても!?私は無理だよ…。」
「まぁ、それはそうだけどさ。気持ちだってわからなくはないケド、いくらなんでも、嫉妬がすぎるっていうか…。いかがわしい理由じゃないんだから、諦めるとかさ。ほむらだって善意でやってることだし、少しは、ね?」
「むぅ…。」
「あのね、まどか。私は杏子を私的な事情で家住ませているけれど、決して邪な感情は抱いていないわ。ただの感謝、よ。だから、これだけは暫くは続けさせてほしいの。私が充分に恩返しができた、って思える日までは。」
「…仕方ないなぁ。そうまで言われちゃったらもう、何も言い返せないよ…。」
まどかの落ち着いた様子を見て、ほむらはほっ、と息を吐いた。
『さやか、ありがとう。あなたが助け舟を出してくれなかったらどうなっていたことか…。』
『いやいや、これくらいお安い御用だよ。ほむらの弱点がまどかなのは知ってるしね。それに、これ以上あの空気だったらちょっとヤバかったしね。』
『たとえどんな事情があったとしても、私はさやかに感謝しているわ。ありがとう。』
『あはは…。照れるなぁ…。』
「お待たせいたしました、ブラックオリーブのペペロンチーノでございます。」
ちょうどよく料理が到着し、先程の険悪な空気はなくなっていた。
「ごちそうさまでした。」
「やっと食べ終わったのかよー。」
「仕方がないじゃない。私は元々そんなに食べる方ではないのよ。」
杏子、さやか、マミ、まどか、ほむらの順で食べ終わったので、最初に食べ終わった二人はずっとウズウズしていた。
「さって、と!あたしたちはまたゲーセンに行きますか!」
青は言う。
「えー?またかよ…もうやり尽くしたじゃん…。」
赤はぼやく。
「ふふ、あと少しでクリアなんだから…。」
黃はやや不気味にそう言う。
「えっと…頑張ってください、巴先輩…?」
「まどか、私たちはどうしましょうか?」
「うーん…ここでお昼食べちゃったから、ハンバーガーは無理だね…。」
まどかは少しばかり考える仕草を見せ、こう言った。
「そうだ!ほむらちゃん、服買おうよ、服!」
「ふ、服?」
「うん!ワルプルギスの夜を倒した後にデートいっぱいするんだから、服もいっぱいないとだめでしょ?だから、ね?」
「…そうね。服、買いに行きましょうか。」
「あーあー、人前でまーたイチャイチャしちゃって…。」
「ほんと、程々にしてほしいよ…。」
「もう満腹、って感謝かしらね。ふふっ。」
信号機はぼやきながらお代を払い、出ていった。
「…おごられちゃったね。」
「当たり前のように支払いを済ませていたわね…。」
「まぁ、細かいことは気にしなくていか!さやかちゃんたちが優しかったってことにしておこう!」
「そうね。また機会があればお礼をしておくわ。」
「なぁ、マミ…。」
「なぁに、佐倉さん?」
「こうやって、また日常を送れるっていうのがさ、嘘みたいに思えない?」
杏子はクレーンゲームではしゃぐさやかを見つめ、言う。
「そうねぇ…私も、こんなふうに佐倉さんとおしゃべりできるとは考えもしなかったわ…。」
「あたしが出ていったこと、まだ怒ってるか?」
「ええ。少し、ね。」
「でも、今がこんなに楽しいから、別にいいかな。」
「マミ…。」
「ふふ、柄にもないこと言っちゃったかな?」
「いいや、あたしも同じだよ。マミがいて、皆がいて。いつまでもこんなふうにいたいって、最近よく思うんだ。」
「これも全部、暁美さんのおかげね。」
「そうだな。ほむらのためにも、絶対にワルプルギスの夜を倒す。それが今の目標ってとこかな。」
「そうね…。暁美さんに恩返ししなきゃね。」
「おーい、杏子、マミさ~ん!次は向こう行きません?」
「こらこら、遊びすぎは良くないぞ?」
このとき、さやかと杏子は同時に、
あんたが言えた義理じゃないだろ…
と、思ったのであった。
「ほむらちゃんって、どんな服も似合うよねぇ…ずるい!」
「そ、そんなこと言われても…。」
「それに私に似合う服なんてたかが知れてるし…まどかのほうが似合う服が多いんじゃないかしら?私よりもかわいいんだから。」
「むぅ…。私が大人っぽい服きたら、さやかちゃんに、背伸びしすぎてて面白い、って言われちゃったの!」
「ふふっ、確かにまどかが大人びた格好をしていたらそう思うかもしれないわね。」
「あー!ほむらちゃん、ひどいよー!」
「でも、まどかには可愛らしい、ふわふわした服が似合うわ。そのほうがかわいいし。」
「…えへ、ありがと。」
まどかは繋ぐ手をより強く握り、ほむらの身体によりまどか自身の身体をくっつけた。
「あら、今日はずいぶんと甘えん坊さんね?」
「ほむらちゃんが悪いんだよ?さっきから私、ほむらちゃんのせいでドキドキしっぱなしなんだから。」
「ま、まどか…ち、近いわ…!」
まどかは顔をあと少しでキスができそうな距離にまで持っていく。
「私だけがドキドキするなんて不公平でしょ?だから、ほむらちゃんにもドキドキしてもらいたいの。」
顔にはまどかの吐息がかかっている。
「まどか…ダメよ…こんな往来で…!」
まどかはトマトのようなほむらの耳元で、
「大好き、ほむらちゃん。」
と、囁いた。
「えへへ…ドキドキした?」
「ええ…すっごく…もう、心臓がはちきれそうよ…。」
「これでおんなじだねっ?」
「うぅ…。恥ずかしぃ…。」
「それじゃあ、行こっか?」
「ええ…。」
まどかとほむらは買い物を済ませ、モール内を歩いていた。
「こうやって、ただ歩くのも悪くないわね…。」
「そうだねぇ…幸せ、って感じだな…。」
「いつまでも、こんなふうにいたいわね…。」
「ね。私も…そう思うよ。」
しばらく沈黙が続き、ゆっくりと歩き続ける。
そんなとき、ふとまどかが言った。
「明日、ワルプルギスの夜が来るって言われても信じられないくらいに平和だねぇ…。」
「そうね…でも、現実は違う。アイツは絶対に来る。」
「…そうなんだ。でも、私は…。」
「まどか?」
「ううん、なんでもない…。」
まどかは何かを言いかけ、俯いてしまった。
「どうしたの、まどか…?」
「なんでもないってば…!」
「でも…。」
「…本当に、なんでもないから。自分が少し嫌になっただけだから…。」
まどかはそう言うと、手を離し、ほむらより半歩早く歩き出す。
ほむらも追うように速度を上げて歩くが、まどかは止まってしまう。
「まどか…?」
「…嫌な子だよ、私…。」
「え…?」
「ほむらちゃんの話、信じたくないって思っちゃった…そんな話、嘘なんだって…ワルプルギスの夜なんていないんだ、って…。」
「そんなことあるわけないのに、自分の都合の良いように考えて、ほむらちゃんを失いたくないって、勝手に縛りつけようとして…!」
「なんで、私ってこんな嫌な子なんだろ…。最低だ…私…。」
「まど…」
「今は、何も言わないで…。ほむらちゃんの声を聞くと、切なくなっちゃうんだ…。」
「明日にはもう会えなくなるんじゃないかっていう焦りを感じて嫌になるの…。」
「えへっ、おかしいなぁ…大好きなほむらちゃんの声のはずなのにね…。」
「ほむらちゃんが優しい声をかけてくれる度に、涙が出そうになっちゃうんだ…。」
「…だから、ごめん。ちょっとだけ一人にさせてほしいんだ。」
まどかは涙をこぼし、走っていってしまった。
「…まどか。」
ぽつりとつぶやいたほむらの言葉に返事はなかった。
ただ、伸ばした手が中を裂く。
誰もいない、その場所を。
さっきまでまどかがいた、その場所を。
そして、手繰り寄せる。
何もない、その場所から。
「まどか…。」
そして、少女はまたつぶやく。
外はいつしか、雨が降り出していた。
まどかは走っていた。
ただ、哀しみに支配された心のままに。
走ったところで、なにが解決するわけでもない。
満たされるわけでもない。
しかし。
走らざるを得なかった。
逃げているのだ。恐ろしく、巨大ななにかから。
正体など、察しはつく。しかし、それを認識することをまどかの心はよしとしなかった。
深く、いつまでも続く絶望。
浅く、儚い希望。
そんなものばかりが心の中に渦巻き、いつしか希望は消えかけていた。
ほむらのことを思い浮かべる度、哀しみに囚われていく。
愛おしいはずの、ほむらの顔でさえ、哀しみを生む。
途中、人とぶつかる。
ごめんなさい、と謝り、また走り出そうとする。
しかし、勢いが足らず、転びそうになってしまう。
その時、まどかの手は何者かに掴まれた。
「あのっ…!?」
振りほどこうとすると、抱きしめられた。
「あぶないよ、まどか。」
声の主は、さやかだった。
「えっ…!?」
「もう、何やってるの?ほむらは?」
「えっと…。その…。」
「…また、喧嘩でもした?」
さやかは優しく囁く。
「そう…なの、かな。」
まどかは、その優しさに身を委ねる。
「相談して?あたしはまどかとほむらの力になりたい。」
「…うん。」
まどかは話す。
自分がなぜ、こんなにも哀しみに囚われているのか。
「きっと、私は…ほむらちゃんを失うのが怖いの…。どれだけ大丈夫って言われても、不安になって…!」
まどかは話す。
なぜ、私がほむらを信じられないのか。
「私は、ほむらちゃんを信じたい…。でもっ…ほむらちゃんが言ってることがまるで自分に言い聞かせてるみたいで…。不安にならないようにそういってるだけで、ほむらちゃんはそんなふうには思ってないんじゃないかって…!」
まどかは話す。
自分が感じる焦りを。
「…なんとなく、ね。明日、ほむらちゃんは帰って来ない気がするんだ。そんなはずないって、心で否定し続けても、なくならない…。きっと、それが焦りなんだと思う…。」
まどかは話す。
ほむらを思うと感じる、切なさを。
「たまにね、こう思うときがあるんだ。ほむらちゃんは私を見ているようで、私を見ていないんだ、って…。変、だけど…そう、わかっちゃうんだ。そうすると、全身がキュッってなって…。これが切なさなんだ、って…。」
まどかは話す。
ほむらに明日戦ってほしくない、と。
「…もう、失いたくない…。ほむらちゃんを…。」
「戻ってこないなんて、絶対に嫌…。」
「この街よりも、私だけを見て、守ってほしい…!」
「だから、ほむらちゃんを…戦わせたくないよ…。」
まどかは、以前体験したほむらの記憶を思い出していた。
ほむらの、悲しみの記憶。
いつまでも、ほむらを縛りつけ、ほむらをほむらたらしめる、あの記憶。
「思い出すと、怖いんだ…。こんな可能性が、こんな未来が…私達を待ってるのかもしれないと思うと…。」
まどかは、話したいことは全て話したというふうに、さやかの身体にもたれかかる。
「…。」
さやかはそれを優しく受け止め、頭を撫でる。
「…それでも。」
「え…?」
「それでも、ほむらは諦めたりはしないよ。」
「あいつは、まどかに止められたって、勝ち目なんてないって言われたって止まらない。」
「いつだって、ほむらは全力だから。まどかを、たった一人の愛してる少女のために全力だからさ。」
「その想う力がアイツを突き動かしてるんだよ。」
「だからさ、まどかも想ってやってほしいんだ。ほむらがまどかを想うように、まどかもほむらを。」
「それだけで、アイツは強くなれるから。」
しばらく、沈黙が続く。
「…信じるって、難しいよね。」
「人はそう簡単に人を信じることはできない。でも…。」
「信じることができるからこそ、人なんだ。」
「だから、まどかも信じてほしいんだ。ほむらを、あたし達を。」
「…うんっ…。」
まどかは泣いた。
ただ、泣いた。
さやかの胸に顔を埋め、ひたすらに泣いた。
「まどかっ!」
「ほ、ほむらちゃん!?」
まどかはさやかから飛び跳ねるよう、離れる。
「やっと、見つけた…。」
ほむらはまどかを強く抱きしめた。
「もう、ほむらちゃん…痛いよぉ…。」
「まどかは私に抱きしめられてればいいの…。」
「ほむらちゃんってば、甘えん坊さんなんだから…。」
「…ごめんなさい、あのとき、なんて声をかければいいかわからなくて…。」
「ううん、いいんだ。悩み、解決したから。それよりもあんな態度とってごめんね?」
「いいの…あなたが解決したなら、それで…。まどかの悩んで、苦しむ姿なんて見たくないもの…。」
「えへ、大袈裟だよ…。」
「ううん、そんなことない。まどかにはいつだって楽しい顔でいてほしいから。」
「嬉しいなぁ…ほむらちゃん、やっぱり大好き。」
「私も。まどか、大好きよ…。」
空は、夕焼け色に染まり、虹が顔を出していた。
最近、さやかちゃんが好きになってきたワタシです。
でもやっぱりまどほむです。
では、また次の話でお会いしましょう。