※この作品はR-18です。

信じ続ける、明日はきっと晴れだって   作:柳しをん

27 / 38
今回はかなり更新が遅れました…。
元々あったお話を修正(半分くらい)、変なのを同時進行、一話先も同時進行…。
とまぁ、こんな感じで遅れました。
では、どうぞ!


全部、見透かされてた 私の心

「返事をしてっ、さやか、マミさん、杏子!!」

ワルプルギスの夜は街を蹂躙していく。

立ちふさがるものには死を、障害となるもののには破壊を。

その圧倒的な力を傘に、希望を奪っていく。

そして、暁美ほむらもまた、希望を奪われた少女。

「もう…ダメなの…?ここまで、なの…?」

「また、救えないの?私は…!」

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて…いよいよ、だね。」

「そうね…嵐が吹き始めた…ワルプルギスの夜が近いのね。」

「まだ時間はあるわ。体調をととのえておいて。」

「へいへい…分かってますよ…。言われなくてもそのつもりだしな。」

「みんな…。ごめんね、なにも出来なくて…。」

「いいえ、そんなことないわ。あなたは私の…いえ、私たちの心の支えになっている。だから、そんなに自分のことを卑下しないで?」

「うん…。でもっ、やっぱり不安だよ…。」

「もしかしたら、帰ってこれないんじゃないかって…。」

「もしそうなったら、私っ…!」

「大丈夫よ、まどか。」

ほむらはまどかを優しく抱きしめる。

「私たちは絶対に負けたりしない。だって、魔法少女は希望なんだから。絶望になんて、負けたりしないから。」

「希望があるかぎり、可能性は無限大よ。だから、私達を信じて。」

「絶対に、あなたを守ってみせるから。この世界を、絶望で終わらせたりなんてしないから。」

「ほむらちゃ…!」

まどかも泣きながら、ほむらに抱きつく。

「ずいぶんとロマンチックなこと言えるようになったじゃん、ほむらは。」

「いいじゃない、素敵で。私もあんなふうに言ってもらいたいわぁ…。」

「マミにはそんな相手いないもんな?」

「むっ…それは、そうだけど…。」

「はいはい…二人とも、やめよう、ね?」

「…今は、そっとしておいてあげよう。二人とも幸せそうだしさ。」

「そうね…これが最後になるかもしれないものね…。」

悲しそうに言うマミに、杏子は笑ってこう言う。

「何言ってんだ、マミ。最後にさせないために、あたしたちがいるんだろ?」

「…!ふふっ、確かにね。」

「あたしたちは、救うためにいる、か。なーんか、実感湧かないな…。」

「でも、絶対にやりきらなきゃいけないんだ。あたしたちのためにも、ほむらのためにも。」

「暁美さんにこれ以上苦しい気持ちになってほしくないもの。いつまでもあんなふうに幸せでいてほしい。」

「それがあたしたちの願い、ですからね!」

「よーし!あたし、がんばっちゃいますよー!」

 

舞台装置の魔女。

その圧倒的な力と、巨大な身体ですべてを破壊し、絶望に染め上げる。

その魔力は歴代最高で、一説によれば、複数の魔法少女が合わさることで誕生、または進化したのではないかともいわれる。

普段は歯車のような装置が上向きになっており、反転しているように見える。

しかし、この形態は本来の姿ではない。

この魔女の真の形態は反転した装置が下になり、魔女本体が上向きになったときこそ、真の絶望だといえる。

これまで、真の形態まで追い込んだものは片方の手で数えられる程少ない。

「…と、ワルプルギスの夜の情報はこんなものかしらね。私が独自に作り出したものだから少し怪しいところもあるけれど、だいたいはあっているはずよ。」

「いや、形態変化するなんて聞いてないよ…。」

「ごめんなさい、伝えるのが遅くなってしまって…。」

「まぁ、最初からやばいやつだってわかってるんだから、これ以上何を言われても関係ないね。ただ、ぶっ潰すだけだよ。」

「そう…ね。こんなところで怖気づくわけにもいかないいものね。」

皆、活気づいていた。

この先に待ち受ける絶望が、どれだけの大きさであったとしても、そんなふうに。

しかし。

ただ一人、迷いを隠せない人物がいた。

暁美ほむらである。

どこから来るかも分からない、底しれぬ不安を感じていたのだ。

それは…経験から来る、恐怖、苦しみ。

経験があるからこそ、勝率が上がる。

経験があるからこそ、勝率が下がる。

この二つは、暁美ほむらにとって表裏一体。

しかし、今は僅かな希望だとしても、縋り付く必要がある。選り好みなど、できるわけがないのだ。

なにより、約束がある。

彼女は強くなれる。約束があるから。

「…さぁ、最後の準備を。あと、一時間後…午前五時、それが血戦の時間よ。」

「恭介…。あんたが守った猫の命、今度はあたしが守る番だね。お願い、私に力を…。」

「お母さん、お父さん…私、がんばるから。だから、天国で見守ってて…。」

「親父、お袋、モモ…。あたしは、この街を護るために闘います…だから、力を貸してください…。」

皆、それぞれの形で祈る。

今は亡き、大切な人たちに。

力を、勇気を。

己の信念の為に。

「…さって!ほむら、最後の音頭、お願いね!」

「え?」

「え?じゃないわよ。あなたがやらなきゃ意味がないじゃない。」

「そうだぞ。ほむらが一番倒したいと思ってるんだから、当たり前だろ!」

「ほむらちゃん、頑張って!」

暁美ほむらは少し躊躇う仕草を見せ、仕方ないという表情を見せ、こう話した。

「みんな!ワルプルギスの夜は、とても強大で、恐ろしい魔女よ!でも!私はあなた達を、私自身を信じてる!

だから…絶対に勝って、笑顔でここに戻ってきましょう!」

暁美ほむらは、感じる不安を追いやって、道化になりきった。

自分の心を押し殺すのは慣れている、そんなふうに。

「よーし!やってやるぞ!」

 

「…もう、行っちゃうんだよね。」

まどかとほむらは寝室で抱き合っていた。

「ええ…。もう、行かなければいけないわ。」

「そっか…。」

「あのね。私、怖いんだ。このままほむらちゃんを離したら何処かにいって、帰ってこないんじゃないかって…。」

「でもね、私、信じてるから。ほむらちゃんが、皆が、ワルプルギスの夜を倒して、私達を護ってくれるって。」

「だから…約束。絶対に、帰ってきて。それで、抱きしめて、キスして。私の名前を呼んで…!」

「もちろん、よ。必ず帰ってくる。約束、護ってみせるから。」

「ありがとう…それじゃあ、頑張って。私、応援してるからっ!」

二人は別れのキスをした。

深く、長く、情熱的に。

お互いの感情をぶつけ合った。

 

「遅かったじゃん、ほむら。」

「どーせ、イチャイチャしてたんだろ、いつものことじゃん。」

「まぁまぁ…いいじゃない、こんな時ぐらい。」

信号機は青、黄、赤と、色を変えいつも通り動いていた。

「ごめんなさい。…さぁ、最終確認よ。」

「グリーフシードは一人七個ずつ持った?」

三人は頷く。

「よし。ソウルジェムに穢れはない?」

三人は頷く。

「作戦、弱点、定位置、すべきこと、ちゃんと頭に叩き込んだ?」

三人は強く頷く。

「…それじゃあ、ワルプルギスの夜、絶対に倒すわよ!」

ほむらの掛け声とともに、魔法少女たちは各自の定位置に散っていった。

 

「…ほむら。」

「なぁに、さやか?」

「あたし、さ。ちょっと、怖いんだ。」

「…ワルプルギスの夜が?」

「それもあるけど…なんていうか、自分の未来が想像できないっていうか…。」

さやかは語る。

未来の自分のビジョンについて。

「今はワルプルギスの夜っていう大きい目標があったけど、これからは自分で見つけて行かなきゃいけないし。」

さやかは語る。

想像できない恐怖を。

「でも、なにか目標に向かって走ってるあたしが想像できないんだ…。それも、一人でなんてなおさらね…。」

さやかは語る。

恐怖から生まれ出る、さらなる恐怖を。

「そうなったら、落ちてくだけになって…。落ちるとこまで落ちて、迷惑ばっか掛けるんだろうなぁ、って怖くなって…。」

さやかは、泣く。

自分の不甲斐なさに。情けなさに。

全てに。自分の、全てに。

「ほんっと…どうしようもないね、あたしって…。」

ほむらはなにも言えずにいた。

よもや、友人がここまで思いつめているなど考えもしなかったのだ。

マミあたりなら、特に驚くこともない。しかし、ここにいるのはさやかなのだ。

悩みとは無縁…いや、恋の悩み以外寄せ付けないといった感じだっただけに、なにもできないのだ。

ただ、手を伸ばす。

なにをするのか、それは自分にも分からない。

とにかく、伸ばさなければならなかった。

そう、何かが言ったのだ。

「…さやか。」

名前を呼ぶ。

「なに…?」

「…なんでも、ない。ただ、呼んでみただけだから。」

そして、伸ばした手はさやかの頭の上に落ち着く。

わひゃっ、と情けなく鳴いたさやかの顔を見ながら、わしゃわしゃと頭を撫でる。

「な、なにすんのよ!?」

さやかはやや強めに抗議するが、ほむらはまったく意に介さず、撫でつづける。

「も、もー!恥ずかしいから、やめてよー!」

さやかはポカポカという擬音が似合いそうな威力でほむらを殴る。

「な、なんでこんなことするのさ…。」

ほむらは自分のした行為に意味を見出すことができていなかった。

だから、自身の行為の正当化の為、理由を考え込む。

「…こうすれば、安心すると思って。」

嘘は言っていない、そんなふうに。

「さやか、寂しそうで、悲しそうだったから。」

「…なにそれ。」

さやかは少し、微笑んで。

「でも、ありがと。少しは気が楽になった気がするよ。」

「…警戒、続けよっか。」

「ええ。」

少しでも、力になれたのなら。

嬉しい。

 

「…。」

「…。」

こちらの二人といえば、ずっと会話がない。ベテランとはいえ、相手がワルプルギスの夜となれば緊張するのも当然だと言えよう。

そのためか、沈黙がしばらくの続いていた。

そんなときだった。

「…なぁ、マミ。」

「どうしたの、佐倉さん?」

「あたしたちがさ、こうやっていられるのって、全部ほむらがいたからなんだって思うと、不思議な気持ちになってさ…。マミはどう思う?」

「そうねぇ…言われてみればそうね。暁美さんがいなかったら、こうやってることはなかったわね…。」

杏子とマミは、お互いに目を合わせることなく、警戒を続ける。

「あたしはマミと喧嘩別れしてから、ずっと風見野にいたし、さやかにもまどかにも会うことはなかっただろうしさ…。」

「やっぱり、あいつのおかげで人生、いい方向に傾いてる気がしてさ。それで、不思議だって…。」

「私も…そうなの、かしらね…。暁美さんがいなかったら、佐倉さんとも、もう会えなかっただろうし。」

杏子はマミを見つめる。

「…あたし、嬉しかった。」

「え?」

「マミと仲直りできて、楽しく、あの時みたいに過ごして…新しい友達もできてさ。」

「これが、あたしの望んだ生活なのかなってさ。ちょっとだけ、思えるようになってきて…。」

杏子は笑っていた。

そして、泣いていた。

「佐倉さん…。ふふっ、そうね。私も。」

「あなたと、仲直りできてよかった。みんなと出会えて良かった。」

「毎日が楽しくて、魔法少女のことを忘れちゃいそうになって…。」

「へへっ、あたしと同じだな。」

「…んもぅ、恥ずかしいじゃない。」

「…だからさ、恩返ししなくちゃいけないんだ。ほむらに。」

「そうね。未来をプレゼントしてあげないとね?」

「あぁ!愛と正義が勝つ、最高の未来ってヤツをな!」

「あらまぁ…随分とロマンチックじゃない。」

「うっせー。」

「ふふっ、素直じゃない子。」

杏子とマミは、寄り添うように同じ方向を見つめていた。

 

 

辺り一体に、奇妙な笑い声が響く。

厄災の、合図。

戰いの、狼煙。

「…来たわね。さやか、行くわよ!」

「了解!」

 

「行くぞ、マミ!」

「言われなくても!」

 

少女たちは動き出す。

その一筋の光を、可能性を、希望を…。

その手で、掴み取るために。

 

「さやか!突っ込みすぎよ、下がりなさい!」

「でもっ!」

「ダメよ!下がりなさい!引き際を見失う前に、早く!」

 

「おぉりゃあ!」

「佐倉さん、行くわよ!」

「了解!一旦下がるよ!」

「行くわよ!ティロ フィナーレ!」

ワルプルギスの夜の巨体が、僅かに傾いた。

 

「おお!マミさんがやった!」

「…まだよ!まだ、火力が足りてない!このままじゃ…!」

避難所方向に進むのは、変わらない。

「避難所が、あぶない…!」

 

ほむらは迷っていた。

このために準備したミサイル群を発射すべきかどうか。

タイミングを見計らって、撃つという趣旨の話はした。

そのために、さやか、マミさん、杏子はこうやって攻めているのだ。

しかし。

予想以上にワルプルギスの夜のペースが速い。

本来の発射予定時刻はもう少しあとなのだが、予定地点はもうすぐだ。

ここを過ぎてしまえば、市街地に突入する。

そんなところで発射したら、と考えるだけでゾッとする。

『おいほむら!ミサイルってのはまだなのか!?』

テレパシーが飛んでくる。

『…このままじゃ、市街地に突入する。ここでなんとか動きを逸らさないと撃てないわ…。』

『はぁ!?ミサイルが頼りなんだぞ、しっかりしてくれよ!』

『…作戦変更!ミサイル発射予定位置を変更する!新たな発射予定位置は…ここから五.八キロ南西!』

『五.八キロ…!?』

『ちょ、ちょっと待って暁美さん!南西って、真反対じゃない!』

『無茶は承知!やるしかないのよ!私は、ミサイルの発射プログラム修正を行う。それが完了次第、戦闘に参加するわ!それまで、なんとか…!』

『…ったく、むちゃくちゃな奴!』

『へっ、仕方ねぇ!やってやろうじゃん!』

『二人とも、フォーメーションを組み直しましょう!暁美さんの穴を埋めるのよ!』

『了解!今そっちに行きます!』

なんと頼もしいことだろう。

仲間たちは、随分と高い士気なことだ。

私も、やるべきことを成さねば。

そして、私も河川敷へと飛んでいった。

 

「すごい嵐だね…。」

「タツヤは?」

「寝ちゃったみたいだね。」

鹿目一家は避難所にいた。

ちょうど、ワルプルギスの夜の進行方向の。

まどかは、震えていた。

「…まどか?」

そんな娘を心配した父、知久はまどかの肩に手を置く。

「…なんでも、ないよ。」

まどかは、怯えていた。

恐怖に。

ただ、怯えることしかできなかった。

失う、恐怖に。

「…もしも、だよ。」

「この嵐が、本当はとっても悪い何かのせいで…私の大切な人たちが、命をかけてそれを倒そうとしてるとしたら…。」

「私は、なにをすればいいのかな…?なんにも、できない私に、何ができるのかな…。」

まどかは、家族に問う。

解決策なんて、求めていない。

しかし、問わずにはいられなかった。

自分と同じ、怯えるしかない、という答えがほしいのだ。

情けない自分を、認めたくない。

他と同じでいいから。

「…あたしだったら、祈るかな。」

母の答は、母らしくないものだった。

「絶対に、悪いやつを倒して、生きて帰ってこいって。」

「無駄でもいいから、気持ちが届かなくてもいいから…祈る。」

「僕は…なにかできることはないかって探すかな…。」

「なにもできないなんて、認めたくないからね。頑張ってる人の助けになることがあるんじゃないかって、探すんだ。」

父の答は、父らしくないものだった。

「…そっか。二人は、強いね。」

「私は、なにもできない…。ただ、怯えるしかできないの…!」

「情けないね、私…ほんと、嫌になっちゃうよ…。」

まどかは泣いた。

泣かずにはいられなかった。

自分の正しさを証明するためにした質問が、自分の弱さを、醜さを照らし出すものになってしまったからだ。

「なんで、こんな性格になっちゃったんだろ…。」

心の中で、私が魔法少女だったら、変われたのかな、と付け加える。

「まどか、そんなふうに自分を責めちゃだめだよ。まどかは、まどかなんだから。」

父は言う。

「人間、誰しも弱さはあるんだ。それを認められるから、強くなれる。」

「だから、そんなに落ち込むなって。

母は言う。

しかし、私の心には届かない。

「…ありがとう。」

 

『まどか…まどか…話があるんだ。ちょっと来てくれないかい?』

不意に、キュゥべえの声。

「…! ごめん、私、トイレ行ってくる。」

「早く戻ってこいよー。」

母の声を背に、キュゥべえの元に向かう。

きっと、魔法少女の勧誘だろう。

…でも。

もしも。

ほむらちゃんたちが負けた、という報告だったら。

死んでしまったという報告だったら。

足が止まる。

進まない。いや、拒んでいる。

脳が、拒んでいるのだ。

ただ、立ち尽くすことしかできなくなる。

そして、震えが強くなる。

手には爪が食い込み、噛んだ唇からは、出血している。

「…もう、嫌だよぉ…。」

本音が、漏れる。

「ほむらちゃん…私を、ひとりぼっちにしないで…!」

膝からその場に崩れ落ちる。

「ワルプルギスの夜なんてどうでもいいから…帰ってきてよ…。」

『まどか、何をしているんだい?』

顔を上げると、目の前には真っ赤な瞳。

ひっ、と少しだけ後ずさる。

「…なにかな、キュゥべえ…?」

私は目を擦って、立ち上がる。

『君に伝えたいことがあるんだ。君も分かっていると思うけど…』

「魔法少女になってよ、でしょ?」

『分かっているなら話が早い。さぁ、契約してよ。』

「ごめんね、キュゥべえ。私は契約しないって、心に決めてるから。」

『…そうだね、君はそういう人間だったね。』

私は、なんとなくキュゥべえが何を言いたいのか分かってしまった。

できることならわかりたくない、いや、そうであってほしくないという考え。

『もしも、暁美ほむらが死ぬことになったとしても、契約はしないのかい?』

予想通り。

心臓の鼓動が早くなる。

加速していく。

「ほむらちゃんが死ぬわけないよ。」

『どうしてそう言いきれるんだい?相手はワルプルギスの夜だ、死ぬ確率の方が高いにきまっているじゃないか。』

加速していく。

「だって、約束したから…。」

『どうして人間は約束なんていう、不確定な契約にそこまでの信頼をするんだい?まったく、わけがわからないよ。』

加速していく。

「ほむらちゃんは、嘘なんてつかないよ!」

『そんなわけないじゃないか。彼女はきっと、たくさんの嘘をついて生きてきたんじゃないかな。』

『例えば、絶対にワルプルギスの夜を倒してみせる、とかね。』

心臓がはちきれそうなくらいに鼓動が加速する。

『君は今、暁美ほむらを信じられなくなっている。本当に、生きて帰ってこれるのか?違うかい?』

「そんなこと、思ってるわけないよ…ほむらちゃんのことを信じてるから…。」

そう、信じられない。

ほむらちゃんを。

『君は恐いんだろう?ほむらが死んでしまうことが。いなくなってしまうことが。』

「何を言ってるのかな、よく分からないよ。ほむらちゃんは死なないって言ってるじゃん。」

そう、恐いのだ。

ほむらちゃんがいなくなることが。

『そして君は、契約したがっている。ほむらを、皆を助けるために。』

「…契約なんてしないよ。私、信じてるから。」

本当は、したくてたまらない。

『…そうかい。なら、僕は大人しく退散することにするよ。また、誰かが死んだときにでも来ることにしようかな。』

キュゥべえはそう言うとどこかに消えて行ってしまった。

「…全部、見透かされてた…。私の、心…。」

ただ、立ち尽くす。

それだけ。

いや、それ以外にできることがない。

 

「くそっ!このままじゃ…!」

「諦めないで、佐倉さん!まだまだ、これからよ!」

「そうだよ、杏子!行くよ、連携!」

「…了解!マミ、サポート頼んだよ!」

「分かったわ!」

 

「…発射角度修正…二段目燃料着火タイミング修正…弾道切り離しタイミング修正…。よし!」

プログラムは整った。所定位置にくれば、弾道ミサイルを叩き込むことができる。

軍の最新鋭のミサイルなのだ、魔法でなくともかなりの威力が期待できる。

…それに、もしもを考えて米軍基地のミサイルの発射コントロールだって奪うことができる。

後は、誘導するだけ。

「私も、行かないと。」

頼れる相棒、ミニミ軽機関銃を片手に、飛ぶ。

 

「さやか!」

「ほむら、遅いよ!」

「状況は!?」

「なんとかって感じ!ちょっと火力足んない!」

「なら、私が無理矢理にでもやってやるわ。」

『みんな、ワルプルギスの夜から離れて!』

時間停止。

私は隠しておいたエイティーフォー(AT-4)、M72対戦車ロケット弾、RPG-7(全て合わせて五十発程)を一発ずつ発射する。

市街地での爆発物の使用は避けたいところだが、この程度なら問題はない、と言い聞かせる。

「喰らいなさい!」

時間停止を解除する。

全弾命中を確認。

「おわっ!?」

「暁美さんね!」

「いいぞ!もっとやれー!」

ワルプルギスの夜はグラッと傾き、安定させるために方向を変える。

「今よ!畳み掛けて!」

「行くよ!スプラッシュスティンガー!」

「盟神快槍(くがたち)!」

「ティロ フィナーレ!」

ワルプルギスの夜は完全に方向転換をした。

「やった…!」

「でも、これからよ!」

「皆、休憩よ!ヤツが所定位置に移動するまでに体力回復を!」

「りょーかい…。」

「…さぁ、休憩は終わりよ。私がミサイルを発射して、爆炎がなくなったら突撃。いいわね?」

「へいへい…。」

「…ワルプルギスの夜、予定位置到達まで…十、九…」

「八、七、六、五、四、三、二、一…!」

「全弾発射!」

手元のスイッチを押す。

ミサイルは全弾無事に着弾したよう。

爆炎が消え、ワルプルギスの夜は…。

「…あれって…!?」

そう。

「反転してる…!」

つまり、ダメージが大きかったということ。

怒り狂うように、ミサイル発射装置を破壊していく。

「…やるしかないじゃん!」

さやかが突撃する。

「あぁ!反転したからなんだってんだ!」

「やってやるわ!」

杏子、マミも続く。

「あ、待ちなさい!」

私は行くべきか迷っていた。

実は、予備の無反動砲がいくつか残っていたのだ。

回収すべきか否か…。

もちろん、回収すれば戦力になる。

しかし、回収の間、三人になってしまうのだ。

回収に行くべきなのだろうか。

「…でも、こんなところで足踏みしている場合じゃない!私も、行かなきゃ…!」

結局、回収はせずにほむらもあとから遅れるように向かった。

 

しかし、この一瞬の迷いが後の惨劇を引き起こすとは想像しなかった。

 

そして、物語は冒頭へと続く…。

 




今回はちょっと時間ないんで、一言。
雲行き怪しいのって、いいっすよね!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。