大変ですよ、もー、大変。
んだもんで、そこらがおかしいかもしれないケド、許してくださいな。
え?
杏子は出てくるのかって?
もちのろんですわ!
だって、メインメンバーですよぉ!?
ま、ワタクシの認識としては出しにくいキャラだなと。
なんというか、まだキャラがいまいちつかめてないんすよ。
杏子って、こういうときってどんな喋り方すんのかなぁ…って。
あとは、さやかとの差別化ですよ。
さやかもどことなく男勝りな喋り方に近いんですけど、しっかりと女らしい喋りをさせるっていう中々に矛盾した感じに仕上げてます。
でも、杏子って不安定になりがちなんですわ。
あ、キャラがじゃなくて、ワタクシの中で、ですよ?
と、前置きはここまでに…。
よーやく完結です。
では、どうぞ!
あ、長いです。
では、ホントにどうぞ!
「…。」
私は原稿を書いていた。
いよいよ一週間後に迫った生徒会総選挙に向け、最終調整をしているところ。
どれだけの非難が降りかかろうが、私はやり遂げなければならない。
まどかと。
皆とそう誓ったのだから。
…とはいえ、最近は動きがかなり過激になってきたような気がする。 私が歩いているだけで周りからはヒソヒソと声が聞こえる。
幸か不幸か、私は魔法少女なので、聴力だって強化してある。
つまり、聞こえるのだ。
その内容は、私を罵倒し、批難し、貶めるようなものばかり。
正直、聞きたくはないのだが、心に決めた以上は気にしないという方向性で貫き通すつもり。
まぁ、その悪口による最も大きな私にとっての不幸は、まどかと一緒に歩くことができなくなったことである。
それは、私がまどかの評を悪くしたくないということも、もちろんある。
しかし、その前にまどかが我慢できなくなるのだ。
前は、その悪口を言っている相手に大声で、
「ほむらちゃんの悪口はやめて!!陰でこそこそやってるなんて、汚いよ!!」
と、食って掛かったのだ。
相手は相手で困惑していたのだが、間違いなく私が一番困惑した。
なぜなら、あの温和で、優しくて、引っ込み思案(私の前ではそうでもないが)で、万物を平等に愛することだってできそうなまどかが、あそこまで声を荒らげて、掴みかかることなど、親友でさえも、恋人でさえも想像できないだろう。
つまるところ、まどかと一緒に廊下を歩くと、かなりの危険が伴うわけだ。
私にとっても、まどかにとっても。
最近は詩織の方も、仁美やマミさんといった生徒会、まどかたちの動きを察してか、過激かつ、細密に行動をしているらしい。
そして、生徒会メンバーを詩織の方に引き込んで、上手く逃れるつもりらしい。
中々、周到な奴らだ。
しかし、幸いなことに、男子のグループは軒並み詩織一派が嫌いなようで、私の味方(?)になってくれているようだ。
しかも、そこらへんはさやかが根回しをしているらしい。
…。
詩織一派とやっていることが変わらないような気もするが、本人によれば…
「だいじょーぶ、だいじょーぶ。あいつらはもともと詩織がだいっきらいだし、最初から味方する気なんてないからさ。あたしがやってもやらなくても、結果は殆ど変わらないよ。ただ、時期が早かっただけってわけさ。」
らしい。
まぁ、いいだろう。
ということで、男子からは何故か手を振られたり、声をかけられたり。
まぁ、例のごとく、社交辞令的な返事をしているのだが、男子はそれで喜んでいるのだから、良いのだろう。
まったく、単純な奴らだ。
さて、そんなこんなで原稿の最終調整が終わったわけだが、私は絶賛絡まれ中なのだ。
いかにもな女子三人組。
適当に、ショートの奴がA、ポニテのつり目がB、ボサボサボブがC。
「ねぇねぇ、暁美さーん。ホントに当選できると思ってる?」
「バカぁ、やめなさいよぉ!暁美さんがかわいそうでしょお!?あっはは!」
「ねー!詩織さんが当選するに決まってるんだからさー!」
「あー、そうね、はいはい。私、これを提出しなきゃいけないの。だから、退いてくれる?」
鬱陶しい。
とっとと退かないかしら、こいつら。
「いいじゃーん!もっと、あたしらと話ししてこうよー、ねぇ?」
「あたしもそれがいいと思うなぁ?」
「はぁ…さっさと退きなさいよ。あなた達、日本語分かる?あら、もしかして日本人じゃない?その無駄に大きい頭にはカニ味噌でも詰まってるのかしら?」
「なっ…!?てめぇ、今なんて言った!?」
「分からない?流石、サヘラントロプス以下の脳しかない女どもね。あぁ、サヘラントロプスっていうのは、猿人のことよ。猿人って、車のあれじゃないわよ?猿、って意味だから。」
「そうね、当たり前のことよね?猿なんだから、日本語分からないのも。」
「うっざ…!あんたなんか、猿以下なんだよ!」
「猿に猿って言われることほど皮肉なことはないわね…。ショック…。」
「このっ…!」
Bが殴りかかってくる。
「あら、すごいスピードね。…止まって見えたわ。」
そうね…さやかのパンチの百倍は遅かったかしら。
いつもならここで、某蛇のように投げ飛ばして気絶させて終わりなのだが、そんなことをしてしまえば、あとの成績に響いてしまうだろう。
「こ、この、離せよ…!」
「いいわよ。頑張って受け身を取ってね?」
私はいつもより力弱めに、壁に突き飛ばす。
Bは壁にぶつかって、そのままへたり込む。
「ふぅ…。いつまでもキーキー鳴いてるからよ。さて、通してくれる?」
「…っ。」
AもCも、そっと引いて、私が通る道を空ける。
「はぁ…魔法少女って便利ね…。」
幻惑魔法で心を落ち着かせることができるし。
それに、あれだけ力で優位にたっていなければ、私はされるがままだったろうし。
過去の私なら、なおさらね。
「さてと…提出も済ませたし、まどかの所に行きましょうか…。」
「ほむらちゃぁん!すごいよぉ!」
教室に戻ると、まどかが一目散にかけてきた。
「ど、どうしたの、いきなり?」
私が聞くと、興奮気味のまどかはこう答えた。
「えっと、ほら、さっきほむらちゃんが、ガツーンって、ドカーン!って!」
まどかは大ぶりのジェスチャーと大袈裟な効果音と共にはしゃいでいる。
「??」
「あー…と。」
やや呆れた声で、さやかが答える。
「さっきさ、ほむらが絡まれたときのやりとりをさ、見てた奴がいたわけ。その子に話を聞いたらさ、すっごくかっこよかったって。」
…?
あの、明らかに馬鹿にしている、小学生レベルのやり取りが?
今思い返せば、私もつい、感情的になって妙なことを言ったものだ、と思うあれを?
「で、その子があたしに自慢げに話してるのを、まどかが聞きつけて、目をキラキラさせながら話してたわけ。それで、こんなふうになってるの。」
「はぁ…。」
「まぁ、大目に見てやってよ。まどかだって毎日、ほむらが抵抗できないのを知ってて、悪口を言ってる奴らにうんざりしてたからね。こうやって、追い払ったっていう報告が嬉しかったんだよ。」
私よりもあとに入ってきた仁美に、真摯熱烈に私の先程の行動を説明している。
まるで、自分のやったことを自慢するように。
仁美としてはそんな事件が起きたとなれば、マミさんに直ちに報告せねばならないことなのだろうが、優しい笑みを浮かべ、まどかの話を聞いている。
「…そう、ね。それだけ私のことを思っててくれたんだものね。」
私とさやかはそんな二人を横目に、話を続ける。
「ま、あたしも嬉しかったけどね。されるがままっていうのはあたしの流儀に反するから。」
さやかはそう言って拳を作り、シャドウをしてみせた。
「嬉しいけど、程々にね。さやかに私のせいで悪評がたつことは避けたいから。」
「へへ、ありがと。でも、あたしの心配なんかより、自分の心配をしないといけないんじゃないの?」
「そのあたりは心配しないで。自分のことくらい、自分でなんとかするから。」
「まぁなんと、頼もしいこと…。ま、ほむららしいっちゃほむららしいけどね!」
「褒め言葉として受け取っておくわ。」
まどかと仁美が話し終えると、仁美が素晴らしい速さで私の腕を掴んだ。
「ほむらさん?ちょっと。」
それはもう、素晴らしい笑顔だった。
拒否などできなかった。
「は、はい…。」
私はそのまま生徒会室に連れて行かれ、仁美の説教をくらっていた。
「ほむらさん、ご自身の立場、分かってますの!?あなたが不祥事をしてかしたとなれば、私達生徒会の信用問題にも関わってくるのですよ!?巴先輩の経歴に泥を塗るおつもりですか!?」
「はひ…すいません…。」
「それに、相手だっていつどこで待ち伏せしているかわからないのですよ!?もし目撃者が詩織一派の誰かだったらどうするおつもりですか!?」
「はい…。」
「いいですか!?ほむらさんは、不利な立場にあるのです!その足場を私達が支えているんです!詩織一派にも、そのことは知られているのですよ!?つまり、ほむらさんを支えている全員に同じだけ負担がのしかかるんです!そのことをしっかりと頭に入れるよう、何度も警告したはずですわよね!?」
「はい、仁美先生のおっしゃるとおりでございます…。」
「…ふぅ…とにかく!これからは、ご自身の立ち位置をしっかりと理解し、自身の行動がどれだけの影響を周りに与えるのか、考えてからにしてください!でないと、ほむらさん自身がいつかしっぺ返しをくらいますわよ!」
「…すみませんでした…。」
「あはは…大変ね、暁美さんも…。」
「巴会長、あなたもですわよ?」
「は、はい?」
「最近、詩織さんのこと、かなり深く、嗅ぎ回っているそうではありませんか。報告を受けていますわよ?」
「え、ええ。生徒会長として、必要なことだと思ってるから。」
「巴先輩!!」
「はひ!!」
「全く…どうしてこう、魔法少女というのはご自身の立場を考えずに行動するんですか…?」
「あのですね、巴先輩は目立つんですわよ?生徒会長がこそこそ嗅ぎ回っていたら、ある程度の警戒はするはずです。そうなれば、証拠を掴むのがもっと難しくなるということ、分かっていらっしゃいますか?」
「あー…とぉ…。」
「はぁ…。お二人はもう顔が割れてるんですから、あまり過激な行動は避けてください。こちらはこちらで送り込んでいますから。」
「ごめんなさい…。少しでも暁美さんの力になりたくて…。」
「その気持ちは素晴らしいものですわ。でも、もっと別のことでその気持ちを表してください。」
「…では、私はこれからお稽古がありますから。さようなら。」
仁美は息を切らせて、部屋を出ていった。
「…怒られたわね。」
「ええ、ばっちり怒られたわ。」
「さて、と…。」
夕食を食べ終え、片付けを済ませてしまう。
いつもなら、宿題をするなり、先の予習を済ませてしまうのだが、運良く提出したその日に返却されたのだ。
というわけで、練習を始めることにした。早いに越したことはないだろう。
取り敢えず、スマホのタイマーで制限時間の五分にセットし、演説を始める。
終えたときには、まだ三十秒残っていた。
この三十秒は大きい。…と、中沢君は言う気がするので、少しだけ足してみる。
「…よし。いい感じ…。」
「ふぅー…。ん〜…。」
私は椅子に腰掛け、そのまま伸びをする。
「今、何時かしら…?」
時計を見れば、始めてから二時間が経過していた。
かなり長時間練習していたのね…。
なんとなく、コツは掴めた気がする。
あと、イエロー巨乳の話によれば、歴代生徒会長はジェスチャーをつけて話すのが得意、という情報が入っている。
そう言われるとマミさんもジェスチャーを自然と使っていたような気がする。
「さって、と。」
私は椅子から立ち上がり、上着を羽織る。
戸締まりをし、鍵をかける。
「うー、寒…。なんでこんな日に当番が当たるのよ〜…。」
そう、今日はパトロールの日。
選挙期間中とはいえ、魔女は待ってくれない。
魔法少女だって、人間なのだから、疲れだって蓄積していく。
私の事情など、このシステムは考慮してくれないのだ。
「お待たせ、杏子。」
「お。おっせーぞ、ほむら。」
杏子は焼き芋片手に私を待っていたようだ。
「ごめんなさい、少し事情があったの。」
「ま、いいや!さぁて、ルートはいつものでいいか?」
「ええ。」
「んじゃ、行きますか!」
「うーん…見たところ魔女はいないな。ほむら、もうちょっと休めるぞ。」
「そう…。ここ最近、字ばっか書いてたから…疲れちゃったわ…。」
「はぁ、まさかまた魔法少女が生徒会長とはね。世も末だよ。」
「まだ当選が決まったわけじゃないから。そんな楽観視してられる状況じゃないし。」
「そういえば、マミがなんか騒いでたな。暁美さんが、暁美さんが!って。」
そう言えば、杏子は私の家からマミさんの家に移ったのだった。
マミさんが頼み込んで来たときは何事かと思ったけど。
まぁ、恩返しも十分できたし、楽しかったし。
「ほむらー?どーしたー?」
「あ、いえ…。なんでも。それで、マミさんがどうしたの?」
「いや、なんか慌ててるみたいで、話しかけてもそわそわして、話しかけないでー、とか言ってさ。」
おそらく、あの手紙が入っていたときのことだろう。
マミさんに電話したとき、とても焦っていたと聞いた。
「…。まぁ、その生徒会選挙を巡っていろいろあったの。ちょっと、ライバルといざこざがね。」
「へぇー…。マミのときはマミのときでいろいろあったらしいけどね。」
「マミさんが…?」
「ああ。確か…推薦枠ってのがあるんだろ?あの枠をさ、マミともう一人…名前は忘れたけど、争ってたんだってよ。で、マミは普段の行動から生徒会長にアピールしてたんだけどさ、そのもう一人のやつが、マミを陥れて、自分を目立たせようとしたんだと。」
「マミはなんとかしようとしたけど、人脈なんてなくて、どうしようもなくて、落ちるって思われてた。」
「でも、推薦枠に選ばれたのはマミだった。」
「生徒会長は、マミの本当の良さに気がついて、そのもう一人の方の情報操作によって印象が悪くなってるだけって気がついてたんだよ。」
「それが分かってからは、マミは今みたいなポジションになったってわけなんだと。」
「何が言いたいかっていうとさ、信じてほしいんだ。どんなときも、ほむらの本当の良さに気がついてる人がいるってさ。」
「…あ、あたしも気がついてるからな。ほむらの良さに…。だから、選挙頑張れよ。」
「…ふふっ、ありがとう、杏子。」
杏子の言葉は、いつだって私に勇気をくれる。
彼女の言葉には、余計なものがない。
私の心にストレートに届く言葉なのだ。
いつもは人を心配するような素振りを見せないが、心の奥底では心配しているのだ。
その優しさは杏子にしかないし、それ以外の人にあってはならないのだ。
彼女だからこそ、響くのだ。
まどかにも、さやかにも、マミさんにも、仁美にもない。
杏子だけにある、優しさの響き。
「おっと…?ほむら、魔女だ、魔女!ほら、行くぞ!」
「ええ…?あと三十分だったのに…。」
「ぼやくな!あたしらは魔法少女なんだから、やらなくちゃいけないだろ!」
「…杏子…変わったわね。」
「なんか言ったか?」
「いえ、なんでも。さ、行きましょうか。」
「はぁー…やっと宿題終わったぁ…!」
「もー…大石先生、あんなに出さなくてもいいじゃん…。」
「あ、ほむらちゃんにメール、メール…。」
多分、この時間は魔女退治が終わって、帰ってる途中とかほむらちゃんは言ってた気がする…。
【ほむらちゃん、魔女退治お疲れ様!いつも頑張ってるほむらちゃんが大好きだよ〜!今日も街と私の為に頑張ってくれたほむらちゃんに、感謝!あ、あと、今日送ってくれた演説の練習、すっごくよかったよ〜!これなら、当選確実だね!
それじゃあ、おやすみ!また明日、学校で会おうね〜!
大好き、愛してる!】
…我ながらかなりの物ができてしまった…。
ほむらちゃんへの愛を、感謝を、素晴らしさを文にするとこうなってしまうのだ。
なにこれ。
バリバリのバカップルJKか。
…まぁ、ほむらちゃんとバカップルって言われるなら…いい、けど…。
というか、寧ろ本望…。
いやいやいや!
ほむらちゃんに迷惑がかかっちゃうよ!
あー、どうしよ〜…。
送ろっかな…?やめようかな…?
…ええい、ままよ!
三分もしないうちに、返事がかえってきた。
【ありがとう、まどか。今日も一日、まどかとこの街を護れて、私も嬉しいわ。演説も頑張るわ。まどかにかっこ悪いとこ見せられないしね。まどかの声援があれば、絶対に当選できるような気がするの。だから、当日もエールをくれると嬉しいです。まどか、私も大好き。愛してるよ。】
はぁぁ…幸せぇ…。
スマホを放り出し、手近な縫いぐるみを抱きしめる。
「もうっ、もうっ、幸せ…!」
もう一度スマホを見て、幸せを補給して、縫いぐるみを抱いて。
それを何回か繰り返して、時間も遅くなっていることに気が付き、寝る準備をしたはいいが、悶々として寝られない。
寝る前に電話しても怒られないかな…?
おそるおそる、電話をかけてみる。
いつものコールが二回なったところで、愛おしい声が聞こえる。
『んー…どうしたの、まどかー…?』
…いつもよりも眠そうな。
「ご、ごめんね?特に用事はなかったんだけど…声が聞きたくなっちゃって…。」
『えへへ…私も、まどかの声が聞けて嬉しいなぁ…。』
ついでに寝ぼけてる。かわいい。世界一。
「じゃあ、もう切るね。ばいばい、ほむらちゃん。」
『うん…。バイバイ、まどか…。大好きぃ…。』
「ほむらちゃん…!」
『すぅ…すぅ…まどかぁ…。』
可愛らしい寝言を聞き惜しみつつ、電話を切る。
「はぁ〜!かわいい〜!」
どうしたらいいのか。
悶々を抑えるために電話をかけたのに、さらに悶々としなければならないのか。
明日、学校でイジることを想像し、さらに悶々する。
「絶対にかわいい反応するよ〜!も〜!」
どうしたらいいのか。
寝られない。
「おはよ〜…。」
「おはよう、まどか。どうしたの?目の下に隈ができてるわよ?」
それはほむらちゃんのせいなのだが…。
「それに、なんだか眠そう…。」
それもほむらちゃんのせい…。
というか殆どほむらちゃんのせい。
「うん…大丈夫、気にしないでいいよ…私、保険委員だし…。」
「そう…でも、辛くなったら、一番に私に言って。少しでも、まどかの力になりたいから。」
「…もう…そういうところだよ、ほむらちゃん…。」
「え?わ、私、なにか変な事でもしたかしら…?」
「ううん、ただ、ほむらちゃんがかわいくてかっこいいってこと!」
「え、えぇ?よくわからないけど…ありがとう…?」
「…そういえば、さやかたちが遅いわね。」
「ねー。どうしたんだろ。」
「先に行ってしまったのかしら…。」
「えー、さやかちゃんに限ってそれはないと思うけど…。」
「まぁ、さやかに限ってありえないわよね…。」
さやかちゃんへの散々な評価は置いておいて、内心嬉しくもあった。
もしかして、二人っきりの登校?
久しぶりのことだ。
ここ最近はいろいろごたついていたので、二人だけで登校することなどできなかったのだ。
「…このままじゃ遅刻してしまうし、先に行きましょうか?」
「うん、そうだね。」
と、その時だった。
鳴り響く着信音。
「あれ、ごめんね、ほむらちゃん。スマホが…。」
かけてきたのはさやかちゃん。
「あ、もしもしさやかちゃん?今どこに…え?ほむらちゃん?居るよ。どうしたの?」
「私?」
「代わって、だって。」
「はぁ…。」
電話口のさやかちゃんは息が切れていて、今も走ってるみたい。
口調も焦っているようで、落ち着かない。
「それで、どうしたの?…教室に早くいけ?なに、なんなの?」
「あ、切れた…。」
「なんだったんだろうね。」
「さぁ…。まぁ、さやかがあれだけ急いでいるのだから、行ってみましょうか。」
教室の方向はかなりざわついていた。
なにやら、張り紙がしてある。
その周りに何人もの人が集まっている。
「…ちょっと、ほむらさん。」
手を引かれる。仁美だ。
「ひ、仁美?」
「…黙ってついてきてください。緊急事態ですわ。」
「まどかさんも、私に着いてきてください。」
「う、うん…。」
「あ、やっと来た。ほむらのこと、ずっと待ってたんだよ。」
また生徒会室に閉じ込められる。
そこには、さやか、マミさん、中沢君…あとから入ってきたメンバーと、生徒会委員の…確か、佐藤さんがいた。
「それで、なんなの?さっきのあれといい、この集まりといい…。」
「…あのね、暁美さん。」
かなり神妙な空気の中、生徒会長席に腰掛けたマミさんが口を開く。
ソファーに座っている私から見ると、かなり高圧的に見える。
「昨日のアレ、新聞になって、各クラスに配られてるの。」
「な…。」
アレ、とは何なのか、容易く想像できた。
「しかも、突き飛ばした瞬間だけを切り取ってね…。」
そう、昨日の提出の前のいざこざ。
「…だから言ったのですわ。迂闊な行動は避けるように、と…。」
「でも、あれは仕方がないよ…!ほむらちゃんだって辛くて、嫌で…!」
「しかし、事実は事実です。こういう物事は、いかに自分を自制し、表を良くするかに重きを置かなければならないのです。」
佐藤さんは言う。
「…そんな…。」
「はっきりと申し上げて、暁美さんが当選する確率は、ほぼゼロと言えるでしょう。」
佐藤さんは続ける。
「あれだけの不祥事を見てもなお、投票するものは相当の物好きか、ファンの方なのでしょう。しかも、あの記事は詩織一派によって脚色されています。被害者の気持ちを全面に押し出し、暁美さんを悪くするように。」
「私も見たけど、流石詩織一派だと思ったわ。情報操作がいやらしいもの。」
「…。」
頭が真っ白になる。
証拠はあるのだから、否定はできない。
それに、加害者の弁解をどれだけの人が聞いてくれるのだろうか。
私達の一枚上手を行く人間を、どうやって倒せばいいのか。
演説がどこまで届くのか。
もう駄目だ。
ここから先には、進めない。
そんな中、口を開いた者がいた。
「暁美さん、まさか辞退しようなんて思ってないよね?」
中沢君だった。
「…だって、辞退するしかないじゃない…。」
「どうして!?」
「だって、結果は見えてるじゃないの…。」
「暁美さんは、その最悪の未来を今にして、可能性を全部捨てるの!?」
「だって、これ以上何ができるっているのよ…!?」
「できるよ!!暁美さんは一人じゃない!!皆がいるじゃないか!!」
「…!」
「ここにいる皆、暁美さんの力になりたくて集まってるんだよ!?ここで諦めるなんて、ここにいる皆への冒涜だよ!!」
「だから、もっと頑張ってみようよ!僕たちは暁美さんの事を信じてるから!」
「暁美さんの良さを分かってるから!!」
…!
昨日の杏子と中沢君が重なる。
必ず、私の良さを分かってくれてる人がいる。
「…中沢君…。ありがとう、励ましてくれて。」
「私、頑張ってみる。諦めないで、最後までやってみるわ。」
「…へっ、中沢もいいこと言うじゃん。見直したよ。」
「僕は人として当たり前の事をしただけだよ。」
「おー、かっこいいねぇ。」
「からかうなって。」
「ほむらちゃん、私も最後まで応援するよ!どんな逆境でも、どれだけ敵が多くても、諦めないから!」
「だから、ほむらちゃんも頑張って!」
「ええ!ありがとう、まどか!」
「…叶わないわねぇ。あの中沢君って子、結構シャイな子かと思ってたけど、凄くいい子なのね。ね、佐藤君?」
「客観的に見て、彼はかなり優しい性格だと言えます。このような場面には最適な人物だとは思いますが。」
「もう、相変わらずロマンがな言い方ね。だからモテないのよ?顔はいいのに。」
「生憎、恋愛には興味がありませんので。ただ生徒会の一員として、会長を支えることだけが私の仕事です。恋愛などにうつつを抜かしている場合ではありません。」
「あ、そ。まったく、同じ学年とは思えないわね。」
「褒め言葉として受け取っておきます。」
「…それで、暁美さんの応援は?」
「もちろんします。私としても、彼女の良さは会長を通してよく知っていますから。」
「…ふふ、素直じゃないのね。」
「からかうのはやめてください。」
皆が口々にこれからの事を呟く中、仁美が大きな声を出す。
「ならば、これからプロジェクトRを発動します!」
「プ、プロジェクトR…?」
「ええ。Rとは、リベリオンのRですわ。リベリオンとは、反抗、叛逆、反乱という意味です。つまり!今優位な詩織一派に一泡吹かせるのです!」
「具体的な内容としては、積極的な選挙活動。こちらから働きかける分には、期間中ならば何をしてもよいということになっています。ですわよね、佐藤さん?」
「はい。大規模、小規模、どちらにしても過激でなければ選挙活動は原則自由に行ってよい、との記載があります。」
「あいさつ活動、演説、アピール方法は様々です。どのような方向性で行くかはほむらさんにおまかせします。」
「皆さんは、ほむらさんのサポートをお願いします。きっと、必要になってくると思いますから。」
「私の方は、調査をかなり大規模のものにしていきます。必ずや、不正の証拠を掴んでみせます。」
「…仁美…。」
「これが、私にできる精一杯ですから。」
仁美はそう言って、私の手をとる。
「ほむらさん、私達はあなたを決して見捨てたりはしません。どんな困難があっても、仲間がいることを、絶対に忘れないでください。」
「ありがとう、仁美…。」
「さぁ、皆様にお声をかけてください。ほむらさんの声を待っていますわよ。」
「ええ。…皆!今回は私の不注意で、皆を心配させるような事をしてしまって…本当にごめんなさい!でも!
私は絶対に諦めたりしないから!!最後まで、ゴールテープを切るまでは、絶対に止まったりはしないから!!」
「だから、私に…勇気を、力を…。皆に、分けてほしいの!これから、辛い思いだって、酷い目にだって会うかもしれない!でも、ついてきてほしい!!」
「うん!私はどこまでもついてくよ!ほむらちゃんがどれだけ熱い炎に飛び込んでも、どれだけ冷たい水を進むとしても、私も歩みは止めないから!皆もそうだよね?」
全員が強く頷く。
「…ありがとう。私は凄く誇らしいの。こんなにも素敵な仲間がいることが…。」
「皆の期待、裏切ったりはしないから。当選を目指して、私も頑張るわ。だから、皆もできることを頑張ってほしい!」
感動的なムードに包まれる中、さやかが声を上げる。
「よーし!円陣しよ、円陣!」
さやかに続き、マミさんも声を上げる。
「いいわね!円陣しましょう!」
「…円陣など、意味のない…。」
「ほーら、佐藤君もかたっ苦しいこと言ってないで、早く!」
「か、会長!引っ張らないでください!」
「ほらほら、中沢も!」
「ぼ、僕も!?」
「ほらほら、こんな美少女たちと肩組める機会なんてそうそうないぞ〜?」
「くっそ〜…わかったよ!でも、そんなのが目的じゃないからな!」
「ほむらちゃん、こっちおいでよ!」
「…ええ、たまにはこういうのも悪くないかもね…。」
「ほら、ほむらちゃん、掛け声、掛け声!」
「わ、私?えっと…当選目指して、頑張るぞー!」
「おー!!」
今日は、いよいよ本番当日が明日に控えた日。
幸いなことに、プロジェクトRは面白いくらいに円滑に進んでいった。
仁美によって、あの画像の真実が告げられ、私も謝罪した。
その結果、私は許された。というか、歓迎されてしまった。
少しばかり不思議に思いながらも、仁美に感謝せねばならないのは確かだ。
そして、自主演説の度に男子からの声援が増えているような気がする。
彼らもまた、杏子や中沢君の言う、私の良さを分かっている人たち、なのかもしれない。
しかも、嬉しいことに、女子の声援も混じってきたのだ。
それも、元々詩織一派のグループだった人たちが、だ。
そのような人たちは皆、口々に、
「いままで、酷いことをしてごめんなさい!あの、演説を聞いたり、普段の頑張ってる姿を見てると…詩織さんより、暁美さんの応援をしたくなったの。今更、虫がいいかもしれないけど、応援するから!頑張ってください!」
と言うのだ。
大きい組織ほど、ぼろが出やすく、崩れやすい。
下の方の組織はそこまで忠誠心は高くない。
高い理想は身を滅ぼす。
詩織にピッタリの言葉だ。
彼女といえば、今更になって必死に演説を始めたところ。
しかし、身内に頼りきりだった彼女の演説は聞くに堪えないもので、とても立候補者には思えない。
私の方も、ああなってしまってはいけないと、毎日のように練習を重ねている。
頼れる仁美と中沢君に何度も修正されながらも、なんとか覚えることができた。
我ながら、中々の物ができた気がする。
マミさんからも、効果的な演説の仕方を教わることで、より自身が伝えたいことを皆に伝えられることもできるようになった。
さやかはその広い人脈を活かして、情報集めに走っているらしい。
私としては危険なことは避けてほしいというのがもっともな意見なのだが、本人は私の力になりたいと言って聞かない。
少々心配ではあるが、さやかが望むのなら仕方があるまい。
まどかはここ最近、私の家に泊まり込みで家事をしてくれている。
まどか曰く、ほむらちゃんがお家でも頑張れるような環境作りと、ふと休憩したときにお家が安らげる場所であってほしいから、だそう。
やはり、まどかは私の最高の恋人だ。
これだけ尽くしてくれる人など、そうそういない。
なんでも、まどかのご両親までもが協力してくれているらしく、時々美味しそうな料理を持ってきたりする。
…あの家族は、本当に人が良い。
どれだけお礼を言ったとしても、足りないほどに。
そして、例の佐藤さんは生徒会としての詩織への弾圧の用意を進めているらしい。
なんでも、前回の生徒会選挙の不正の決定的な証拠を掴んだらしいのだ。
なんとまぁ、生徒の自治が進んだ学校だ。
とにかく。
皆、私の為にここまでしてくれているのだ。
私の事を信じ、ここまでついてきてくれているのだ。
私は完走しきらねばならない。
当選という、たった一つの目標に向けて。
それだけが、皆への恩返しとなるのなら。
私は、走り続ける。
本番当日、舞台裏。
「ふぅー…緊張してきた…。」
「大丈夫、暁美さんならやれるよ。」
中沢君は私の背中をさすり、水を差し出してくる。
私はそれを受け取り、一口。
「…僕、信じてるからさ。暁美さんは、絶対に負けないって。」
「だから、ありのままの暁美さんで喋ればいい。そうすれば、皆暁美さんの良さを分かってくれると思うから。」
「…ありがとう、中沢君。」
優しい声の中沢君に勇気づけられる。
表では、拍手が巻き上がる。
「さぁ、暁美さん!行ってらっしゃい!」
中沢君は私の背中を押す。
その顔は、笑っていた。
「…ええ!」
その笑顔につられて、私も笑う。
一歩、二歩と、演台へと歩んで行く。
所々から、歓声が飛ぶ。
その中には、まどかやさやかの声も聞こえる。
手を振る二人にお辞儀をしてみせる。
すると、また歓声が上がる。
マミさんの、静粛に、という声で歓声が止む。
私はまた、生徒会席、先生、そして正面の生徒たちにお辞儀をする。
「私はーー」
私は、夢中だった。
とにかく、話すことが楽しかった。
この学校の、全ての人が私の話を聞いている。
私だけが、この空間で喋っている。
まるで、支配者になったようだった。
この快感に、詩織が堕ちるのも無理はあるまい。
いつしか、時の流れさえもなくなったように感じる。
私は、ひたすらに話す。
機械のように、原稿の内容を。
どこまで読んだのか覚えていないのに、次の言葉は、直ぐに紡がれていく。
そして、終わりが訪れる。
私が一歩下がり、お辞儀をする。
顔を上げると、拍手と歓声が巻き上がった。
その時、私は震えた。
全てに、震えた。
自分が、ここまでやってきたのだと。
皆に称賛の音色を浴びせられることで、初めて認識する。
私は、確信した。
最良の未来は、すぐそこにあると。
こんな気分は、ワルプルギスの夜以来だった。
心は、充実感に支配され、興奮はまだ醒めない。
これは、私の求めていた刺激なのか。
いや、人間誰しもが求め続けるものなのかもしれない。
私がそんなことを考えていると、まどかとさやかがかけてきた。
「すごい、すごいよ、ほむらちゃん!かっこよかったぁ!」
まどかは抱きついてくる。
「やー、お疲れ!あたし、感動しちゃったよ!すごい、何かの役に入り込んだみたいに、熱中してたじゃん!」
「ええ。自分でもよく分からないけど、すごく楽しかったの。」
「楽しい…ねぇ。はい、暁美さん。」
中沢君は水を差し出す。
私はその水を一気に飲み干して、中沢君に返却する。
「ほら、戻ろうよ!そろそろ投票が始まるよ!」
私はまどかに手を引かれるまま、連れて行かれる。
先程の興奮は醒めて、まどかへの愛おしいという想いが私を支配し始める。 私もまどかの手を握り、ついて行く。
後ろからは、さやかと中沢君の楽しそうな会話が聞こえる。
あぁ、そうか。
人は、刺激を欲しているというのに、平穏を愛しているのだ。
この矛盾した考えこそが、人を人たらしめているのか。
私は、なんとなくそう思った。
数日後。
今日は遂に、当選者発表の日。
昨日はまどかから、緊張して眠れないという趣旨のメールが来て、そこまで心配するのか、と思ってしまった。
しかし、やはり嬉しいものは嬉しいもので、自然とありがとうと返信をしていた。
慌てて取り消そうとしたが、まどかの喜んだメールが返ってきたので、消さないことにした。
まだ興奮醒めやらぬ体育館にて、生徒会長から発表がある。
先程は副生徒会長が発表され、見事仁美が当選を果たしていた。
そして、生徒会長当選者の発表。
「…発表します。来期生徒会長は…。」
誰もが、息を呑み、発表を待つ。
わざとらしい間の後に、こう言った。
「二年三組。暁美ほむら!」
その瞬間、体育館中に歓声が巻き起こった。
私は、嬉しさのあまり、その場に崩れ込み、涙してしまった。
まどかが私を抱き寄せ、涙声でこう言う。
「よかった…よかったね、ほむらちゃん…!ね、私達のしてきたことは無駄なんかじゃなかったでしょ?皆、ほむらちゃんの本当の良さを分かってくれたんだよ!」
「うん…うん…!私、ここまで頑張って、本当によかった…!」
「ほら、ほむらちゃん。マミさんが待ってるよ。」
壇上には、新生徒会メンバーが集まっている。
そして、マミさんは生徒会長のバッジを手に持っている。
「行ってくるわね、まどか。」
「うん!いってらっしゃい!」
私は、壇上へと向かう。
途中、何度も声援が掛けられる。
その言葉はどれも暖かいもので、私はまた泣いてしまう。
壇上に上がると、マミさんが話す。
「このバッジは、生徒会長のみに与えられた、名誉あるものです。今までの歴代生徒会長の、すべてが詰まっています。暁美さんも、その歴代生徒会長に恥じることのない、素晴らしい見滝原中学を作り上げることを目標とし、頑張ってください。…さぁ。」
マミさんに一歩前に進むよう催促され、私は前に出る。
そして、私にしか聞こえない小声でこう言った。
「…ホント、よかったわ。このバッジをつける人が暁美さんで…。応援してるから、頑張って。」
そして、つけ終わると前を向くように催促される。
お辞儀をすると、歓声と拍手に包まれる。
「では、新たな生徒会長となった暁美さんにインタビューをしてみましょう!」
どこからか、新聞部のメンバーが現れて、私は囲まれてしまった。
「暁美さん、今回の当選おめでとございます!」
「あ、ありがとうございます…。」
「今の気持ちをお聞かせください!」
まるでスキャンダルを起こした芸能人への質問に苦笑いしつつ、答える。
「えっと…そう、ですね。嬉しいです。こうやって、当選して、バッジをつけて…!」
涙が溢れてくる。
「後は…とにかく、ここまで応援してくれた仲間たちに、感謝しています…!私が、挫けずにゴールテープを切れたのは、彼らのお陰です。」
「だから、こう伝えたいです。ありがとう!」
私がそう叫ぶと、体育館には歓声が響く。
「ありがとうございました!では、写真を一枚!こっち向いてくださーい!」
言われるがまま、カメラの方を向く。
涙を拭いて、笑ってみせる。
きっと、素晴らしい笑顔をしているんだろうな。
だって、こんなにも幸せなんだから。
「かんぱーい!」
カン、と小気味良い音が響く。
「んぐ…んぐ…ぷはぁー!コーラがうまい!」
「もう、さやかさん?そんな下品な飲み方してはいけませんわよ?」
「いいじゃーん!どうせここに男なんて中沢くらいしかいないんだからさー!」
「美樹さん、佐藤くんだっているわよ?」
「あー、あれはちょっとタイプじゃないんで!」
「あらそう…。だそうよ、佐藤くん!」
「…わかっていますから。」
「大変ですね、佐藤さんも。」
「中沢さんこそ。」
「男子は男子で寂しく飲んでろ!」
私達は、まどかの家を借りて、祝勝会をしていた。
「すみません、お母様、お父様…。私の為にこのような会を開いて頂いて…。」
「いいんだよ、ほむらちゃん。あたしらだって嬉しいからね!」
「そうだよ。ほら、まだまだ料理はあるんだから食べてよ。」
「ほむらちゃん、はい、あーん!」
「ま、まどか…あーん…。」
「どう?美味しいでしょ?」
「ええ、とても。」
「だって!よかったね、パパ!」
「はは、喜んで貰えたみたいでよかったよ。」
「あー、杏子、それあたしが食べようと思ってたのにー!」
「いいじゃんか、こういうのは早いもの勝ちだよ!」
「ほらほら、さやかちゃん、杏子ちゃん。料理の追加だよ、どんどん食べてね。」
「おっ、ありがとうございます、まどかのパパ!」
「あざーす!よっしゃー、食うぞ!」
「ほら、佐藤くん、中沢君も。食べて。」
「あ、ありがとうございます、巴先輩。」
「会長もお食べになられないのですか?」
「んー?私は食べるっていうよりも、食べてる人を見てるほうが好きかなー。ふふ、変でしょ。」
「そ、そんなことないです!」
「ええ、変ですね。」
「佐藤さん!?」
「ふふ、佐藤くんらしいわ。ほら、あーん。」
「…なんですか、会長?」
「いいじゃないの、あーんくらい。それに、たまには名前で呼んでほしいな。」
「…あー、僕、邪魔みたいなんで、向こう行ってますね…。」
「ほら、中沢君だって気遣ってくれたんだから。ね、あーん。」
「はぁ…あーん…。ん…美味しいですね。」
「ふふ、よかった。」
「あの、マミさん。」
「ん、なぁに?」
「こういう事は、あの二人のように、恋人とするものではないのですか?」
佐藤はまどかとほむらを指さしながら言う。
「うーん…そうね、そうだわ。…にしても、よく気がついたわね、二人のこと。」
「ええ、まぁ。なんとなくですが。…というか、おかしいとは思わないのですか?」
「何が?」
「…マミさんが私にこのような行為をすることが、です…。」
佐藤はやや顔を赤く染め、マミに言う。
「おかしくなんかないわよ。」
「しかし…。」
「もう…あんまり鈍感だと、私、佐藤くんのこと、嫌いになっちゃうわよ?」
「…マミさん…。」
「ほら、あーん…。」
「ん…。」
「…なぁ、なんかあの二人、変な雰囲気じゃないか?」
「いいじゃん、マミさんにも春が来たってことでしょ。」
「はぁー…。流石に目の前でいちゃいちゃされたら僕の居場所がなくなるよ…。」
「確かに、ここ最近の巴先輩は佐藤先輩に積極的でしたわね…。まさか、恋…!?」
「あー、あー…仁美がぶっ壊れた…。」
「はぁぁ…僕にはそんな人いないしなぁ…。」
「中沢、どんまい。いつかあんたにもいい人が来るよ。」
「あぁ…優しさはありがたいけど、その肩の手を退けてくれ…ただの同情は傷つくだけだからぁ…!」
「ほむらちゃん、ほむらちゃん。」
まどかはほむらを手招きする。
「どうしたの、まどか?」
「あのね、ちょっと見せたいものがあるんだ。着いてきて!」
ほむらはまどかにされるがまま、手を引いてかれる。
「ちょっとまどか、どこに行くの?」
「んー、秘密!」
私は、まどかと家を抜け出していた。
外も随分と冷え込み、上着が欲しくなる。
それはまどかも同じなようで、寒いね、と呟く。
「あ!」
まどかは声を上げ、私を見る。
「寒いから…えい!」
まどかは体をくっつけてくる。
「わっ!?」
「えへへ、こうすれば暖かいでしょ?」
「…うん。暖かいね、まどか。」
「ほむらちゃん、甘えん坊さんの口調だね…。」
「今日くらいはいいでしょ?」
「えへ、いつだっていいのに…。ほむらちゃんが、私だけに見せてくれる、かわいいところなんだから…。」
「…恥ずかしいんだもん。」
「やっぱり、かわいいよ…。」
「まどかだってかわいいもん…。」
「…このままじゃ終わらないね。」
「うん…。」
「バカップルだと思われちゃうね…。」
「私は、まどかとならいいけど…。」
「実は、私もほむらちゃんとならいいかなって思うんだ。」
「えへへ…似てるね、私達…。」
「うん…。」
「あ、ここだよ、ほむらちゃん。」
「え?わっ…!?」
まどかに目を塞がれてしまう。
「ま、まどか、これじゃ何も見えないよ…?」
「ふふ、それでいいの。私がいいよって言うまで、こうしてるから。」
「え、え?」
私は手を引かれて、どこかに腰掛ける。
「うん。もう目を開けていいよ。」
私はおそるおそる目を開く。
「わぁ…!綺麗…!」
目の前に広がっていたのは、あたり一面に色とりどりの花が咲いて、月と星がよく見える場所だった。
月明かりに照らされ、花々は煌々と光り輝いていた。
まさに、神秘だった。
そして、本来なら見ることのできない、宙に咲く、満天の星たち。
都会の光から隔絶され、見放された場所。
「えへへ…ここね、私のお気に入りなんだ。ほむらちゃん以外には見せたことないの。」
まどかはそう言って微笑む。
まどかも月明かりに照らされ、いつもよりも美しく見える。
「私と、ほむらちゃんだけの秘密、だよ?」
そう言って、片目をわざとらしく閉じてみせる。
私には、その行為がとても魅力的に写った。
だから、直ぐに行動に移してしまった。
「わっ…もう、ほむらちゃん…。いきなり抱きつくと、危ないよ?」
「だって…まどかがかわいすぎるから…。」
「えへ、ありがとう…。ほむらちゃんも、かわいいよ…。」
「…綺麗、だね…。」
「うん…。」
私とまどかは寄り添うようにして、一面の花畑を見つめる。
「時間なんて忘れて、ずっとこうしてたいよ…。」
「私も、まどかとここにいたい…。」
「…でも、もう戻らなきゃ。さやかちゃんからメールが来てるし…。」
「もう少し、ここにいちゃ、ダメかな…?」
「もー…そんな言い方されたら断れないよぉ…。…うん、もう少しだけ、このままで…。」
私は幸せだ。
まどかと、最愛の人と寄り添って世界で一番綺麗な景色を見て。
時の流れさえも、私達の邪魔なんてできないほどに。
私とまどかと花畑と。
それ以外には何もなかった。少なくとも私にとっては。
永久の狭間に迷い込んだように、いつまでも。
いかがでしたか?
遂に!
マミさんに!!
彼氏が!!?!?
新キャラ佐藤くんです。
あ、中沢君は君ですけど、佐藤くんはくんです。
なぜかって?
特にりゆーはないです。
彼も、かなりキャラが濃いですねぇ。
こんなやつ、現実にはいませんわ。
あと、追記でーす。
佐藤くんは、菅田将暉似です。はい。
メガネかけてて、タブレット持ってて、いかにもーな真面目っ子です。
声は…まぁ、好きな声を想像させててくださいな。
あとは、久々にまどほむしてましたね。
そこだけは満足ですわ。ええ。
あーとはハチャメチャしてましたね。
次回予告〜!
魔法少女たちに忍び寄る、怪しげな影。
マミは佐藤と急接近!?
久々にインキュベーター登場(予定だからね。もう一回言うよ、予定だからね。しないかもしれないよ。)!?
中沢、恋をするの巻です。